JP2017011068A - 蓄電デバイス用電極の製造方法および前記電極の製造装置 - Google Patents

蓄電デバイス用電極の製造方法および前記電極の製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】蓄電デバイス用の電極に金属イオンのプレドープを行うと、プレドープの進行につれて電気抵抗が増加し、プレドープ処理の速度が低下する。【解決手段】蓄電デバイス用の電極に、該蓄電デバイスの組み立て前に、電解液を介してイオン源電極から電気化学的に金属イオンを挿入するプレドープにおいて、蓄電デバイス用電極となる長尺の電極準備体を第1のイオン源電極と対向させて行う第1のプレドープ工程と、第1のプレドープ工程の後に電極準備体を第2のイオン源電極と対向させて行う第2のプレドープ工程とを行い、第1のプレドープ工程における第1のイオン源電極と電極準備体間の電位差よりも、第2のプレドープ工程における第2のイオン源電極と電極準備体間の電位差の方を大きくする。【選択図】図2

Description

本発明は、二次電池やキャパシタなどの蓄電デバイス用の電極の製造方法および該電極の製造装置に関する。
二次電池やキャパシタなどの蓄電デバイスは、携帯型電子機器やパソコン等の広い用途に多く利用されており、大容量化が望まれている。どちらも一般的な構造は、正極および負極、場合によってはさらに検査用電極などの2系統以上の電極を有し、それぞれを絶縁体(以降、「セパレータ」と記述する)で分離した構造を有する。このような蓄電デバイスの中には、例えばアルカリ金属二次電池、電解コンデンサ、リチウムイオン電気二重層キャパシタのように、金属イオンが正極電極や負極電極を出入りして充放電に寄与する構造のものがある。
一般的にこれら電極での金属イオンの出入りに際し、電極活物質や電解質と金属イオンの反応などにより一部の金属イオンが失われ、不可逆容量と呼ばれる損失が発生する。これに対し、前もって電極にこの金属をドープしておくことで、金属イオンの消失分を補い、不可逆容量を小さくする「プレドープ」と呼ばれる技術がある。プレドープを行うことにより、蓄電デバイス内の金属イオンの損失分を補填でき、大きな容量を利用できるようになる。
プレドープ方法としては、(1)プレドープを行う電極とイオン源となる金属を、その金属イオンを含む電解液に浸し、両者を所望の電位で接続することで、金属イオンを電気化学的に電極内に挿入する方法や、(2)電極上に貼り付けやメッキ法によりイオン源となる金属の膜を形成あるいはイオン源金属と接触させ、熱処理によりイオン源金属を物理的に電極内に挿入する方法などがある。
(1)の方法としては、特許文献1〜3などの方法が知られている。また、(2)の方法としては特許文献4の方法が知られている。
特開平5−41249号公報 特開平10−308212号公報 特開2008−16199号公報 特開2007−214109号公報
蓄電デバイスの製造においては、蓄電デバイスの性能向上とともに、各構成要素の製造の容易化や時間短縮によるコスト削減が求められている。
先に挙げた(2)のプレドープ方法は、電極表面にイオン源金属が形成された状態の工程があったり、未消費の金属が残留したりすることがある。蓄電デバイスに使用されるイオン源金属はリチウムなどの水との反応性が高いものが主であり、金属状態のままでは吸湿などによる発火など安全管理上の課題がある。(1)のプレドープ方法は、イオン源金属が電極内に直接挿入されるため、(2)方法に比べれば安定であり、扱いやすい方法である。
また、蓄電デバイス製造前の電極は、長尺のフィルム状であり、組み立て前に所望の形状に切断されるのが一般的である。このため、保管や搬送などを考慮して、この長尺フィルム状の電極はロール状に巻かれている。プレドープも長尺フィルム状のまま行うことが有利であり、プレドープ処理済みの電極もロール状に巻かれた状態で組み立て工程に供給されることが望ましい。前述の特許文献1〜3には、長尺の負極電極に電気化学的に連続してリチウムを注入する装置が示されている。特許文献1では、集電ローラの表面にリチウムを貼り付け、さらにセパレータで覆ったローラ部材によりリチウムイオンを注入する構成である(図3参照)。特許文献2では、電解槽内に一対のリチウムイオン供給部材が複数配置され、帯状の負極準備体を順次通過させ、プレドープ処理する装置が開示されている。特許文献2の装置ではリチウムイオン供給部材の領域に流入する電流値を個々の値に制御することができ、電極板が最初に通過するリチウムイオン供給部材に対し、この領域の単位面積当たりの電流を電極板の単位面積当たりの容量に対して1/5C以下となるように制御することが開示されている。特許文献3には、ロール状の負極前駆体を繰り出して、非水電解液が充填された電解槽に搬送し、イオン源金属(リチウム板)と対向させ、両者に所望の電位を与えながら電極前駆体を一定速度で移動させて金属イオンを挿入し、このようにしてプレドープした電極をロール状に巻き取る装置が開示されている。特許文献3の図1では、二個一組のリチウム板を用いて、帯状の電極前駆体の両面に形成された活物質層にそれぞれ2回プレドープを行う装置が示されている。
電極への電気化学的手法による金属イオンのドープでは、ドープが進むにつれ、電極・イオン源金属間の電気抵抗が上昇するという特徴がある。これは、電解液濃度が一定であれば電気抵抗が変化することはなく、一定電圧で一定速度のメッキが可能な電解メッキ法とは大きく異なる現象である。この特徴のため、印加電圧が一定の場合、ドープ開始時はドープが速く進むが、その後遅くなることを意味する。そのため、印加電圧を一定としたプレドープ処理では、所定のプレドープ量に達するまでの処理時間が長くなるという課題がある。処理時間を短くすれば、所定のプレドープ量に達せず、高容量の蓄電デバイスが得られなくなる。
電気抵抗の上昇を見越して、印加電圧を高く設定することで、処理時間の短縮はできる。しかしながら、電位を高くすると、プレドープ初期では大きな電流が流れるため、発熱による電解液の分解など問題が発生する。したがって、印加電圧の増大にも限界があるため、処理時間の短縮も自ずと限界がある。
特許文献2では、ドープ処理時間が多少犠牲となっても最初の電流値を所定値よりも下げて電極層の破壊を抑制しているが、処理時間の短縮にさらに改善の余地がある。
本発明は、所定のプレドープ量に達するまでのプレドープの処理時間を短縮し、コスト削減を図ることができ、性能向上を図ることができる、蓄電デバイス用電極の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
本発明の一実施形態に係る蓄電デバイス用電極の製造方法は、蓄電デバイス用の電極に、該蓄電デバイスの組み立て前に、電解液を介してイオン源電極から電気化学的に金属イオンを挿入するプレドープ工程を備える蓄電デバイス用電極の製造方法において、前記プレドープ工程が前記蓄電デバイス用電極となる長尺の電極準備体を第1のイオン源電極と対向させて行う第1のプレドープ工程と、第1のプレドープ工程の後に前記電極準備体を第2のイオン源電極と対向させて行う第2のプレドープ工程とを有し、前記第1のプレドープ工程における前記第1のイオン源電極と前記電極準備体間の電位差よりも、前記第2のプレドープ工程における前記第2のイオン源電極と前記電極準備体間の電位差の方が大きいことを特徴とする。
また、本発明の一実施形態に係る蓄電デバイス用電極の製造装置は、蓄電デバイス用の電極に、該蓄電デバイスの組み立て前に、電解液を介してイオン源電極から電気化学的に金属イオンを挿入するプレドープを行う装置であって、金属イオンを放出可能な第1及び第2のイオン源電極と、前記蓄電デバイス用電極となる長尺の電極準備体を前記第1のイオン源電極と前記第2のイオン源電極に対向する位置に順次配置、移動させる機構と、前記各イオン源電極と電極準備体とを電気的に直接接触させないようにする機構と、前記各イオン源電極と前記電極準備体との間に金属イオンが移動可能な電解液を保持する機構と、前記電極準備体に所定の電位を与える機構と、前記各イオン源電極にそれぞれ所定の電位を与える機構とを有し、前記各イオン源電極にそれぞれ所定の電位を与える機構は、前記第1のイオン源電極と前記電極準備体間の電位差よりも、前記第2のイオン源電極と前記電極準備体間の電位差の方が大きくなる電位を与える機構であることを特徴とする。
本発明によれば、プレドープの進行とともに電気抵抗が高くなることによるドープ速度の低下を抑制できることから、蓄電デバイス用電極を効率良く製造でき、その結果、蓄電デバイスの高容量化などの性能向上、コストダウンを達成できる。
本発明の一実施形態による二次電池の構造を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態によるプレドープ装置の構造を模式的に示す断面図である。 本発明の実施例1によるプレドープ装置の構造を模式的に示す断面図である。 本発明の実施例2によるプレドープ装置の構造を模式的に示す断面図である。
以下に本発明の実施形態例を掲げて、本発明を具体的に説明する。
本発明に係る蓄電デバイスとしては、金属イオンが充放電に寄与する蓄電デバイスであり、金属イオンをプレドープすることで金属イオンの不足分を補うことが可能な蓄電デバイスであれば、特に限定されない。例えば、リチウムイオン二次電池やナトリウムイオン二次電池などのアルカリ金属イオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池などのアルカリ土類金属イオン二次電池、リチウムイオンを用いた電気二重層キャパシタ(リチウムイオンキャパシタ)などが挙げられる。
これらの蓄電デバイスは、電極の構造や形状等により、円筒型、扁平捲回角型、積層角型、コイン型、扁平捲回ラミネート型等、種々のタイプがある。本発明はこれらの何れのタイプにも適用可能である。
すなわち、本発明の一実施形態例に係る蓄電デバイス用電極の製造方法は、蓄電デバイス用の電極に、該蓄電デバイスの組み立て前に、電解液を介してイオン源電極から電気化学的に金属イオンを挿入するプレドープ工程を備える蓄電デバイス用電極の製造方法において、前記プレドープ工程が前記蓄電デバイス用電極となる長尺の電極準備体を第1のイオン源電極と対向させて行う第1のプレドープ工程と、第1のプレドープ工程の後に前記電極準備体を第2のイオン源電極と対向させて行う第2のプレドープ工程とを有し、前記第1のプレドープ工程における前記第1のイオン源電極と前記電極準備体間の電位差よりも、前記第2のプレドープ工程における前記第2のイオン源電極と前記電極準備体間の電位差の方が大きいことを特徴とする。
なお、本実施形態例に係る蓄電デバイス用電極の製造方法において、プレドープ工程は第1及び第2のプレドープ工程の2回に限定されるものではなく、3回以上のプレドープ工程であっても良い。例えば、第2のプレドープ工程の後に第3のプレドープ工程が存在する場合、第2のプレドープ工程と第3のプレドープ工程の関係は、第1のプレドープ工程と第2のプレドープ工程との関係と同じとすることができる。
ここで、本実施形態例に係る方法でプレドープの対象となる蓄電デバイス用電極となる電極準備体としては、通常、充電状態において金属イオンが貯えられる電極となる電極準備体であるが、蓄電デバイスの種類によっては、プレドープしたい対象電極に対向する電極となる電極準備体に金属イオンを挿入して、蓄電デバイス組み立て後に充電もしくは放電処理を行うことにより、金属イオンをプレドープしたい対象電極に挿入することも可能である。
以下の説明ではリチウムイオン二次電池を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明が適用されるデバイスの種類に応じて、形状、構造および材料を適宜変更することができる。
(リチウムイオン二次電池)
以下、リチウムイオン二次電池の構成要素について説明する。
(正極)
正極は、正極集電体と正極活物質とを有することができる。正極活物質は、正極用結着剤によって正極集電体を覆うように結着される。正極活物質としては、LiMnあるいはLiCoOなどの4V級の材料を用いることができる。
また、高エネルギー密度を得る観点から、リチウム金属に対して4.5V以上の電位でリチウムイオンを吸蔵または放出可能な正極活物質を含むこともできる。この正極活物質は、その充放電曲線の少なくとも充電曲線が、リチウム金属に対して4.5V以上の領域を少なくとも一部に有するものを用いることができる。すなわち、充電曲線のみにリチウム金属に対して4.5V以上の領域を少なくとも一部に有する活物質、または充電曲線および放電曲線の両方にリチウム金属に対して4.5V以上の領域を少なくとも一部に有する活物質を用いることができる。
この充放電曲線の測定条件としては、充放電電流を正極活物質の質量あたりで5mA/g、充電終止電圧を4.7V、放電終止電圧を3Vに設定することができる。
このような正極活物質としては、スピネル系材料、層状系材料、オリビン系材料が挙げられる。
スピネル系材料としては、LiNi0.5Mn1.5、LiCoMnO、LiCrMnO、LiFeMnO、LiCu0.5Mn1.5などのリチウムに対して4.5V以上の高電位で動作する材料;LiMnのMnの一部を他元素で置換して寿命を高めた、LiM1Mn2−x−yM2(M1はNi、Fe、Co、CrおよびCuから選ばれる少なくとも1種であり、0.4<x<1.1であり、M2は、Li、Al、B、Mg、Si、遷移金属から選ばれる少なくとも一種であり、0<y<0.5);およびこれらの材料の酸素の一部をフッ素や塩素で置換したものが挙げられる。
スピネル系材料は、特に下記式(1)で示されるものが好ましい。
Li(M1Mn2−x−y)(O4−w) (1)
(式中、0≦x≦1.2、0≦y、x+y<2、0≦a≦1.2、0≦w≦1であり、M1はCo、Ni、Fe、Cr、Cuから選ばれる少なくとも一種であり、YはLi、B、Na、Al、Mg、Ti、Si、K、Caから選ばれる少なくとも一種であり、ZはFおよびClの少なくとも一方である。)
特に0.4≦x≦1.1が好ましい。
層状系材料は、一般式LiMOで表され、具体的には、LiCoO、LiNi1−xM3(M3は少なくともCoまたはAlを含む元素、0.05<x<0.3)で表される材料、Li(NiCoMn2−x−y)O(0.1<x<0.7、0<y<0.5)、Li(M41−zMn)O(0.7≧z≧0.33、M4がLi、CoおよびNiのうちの少なくとも一種である。)で表される材料が挙げられる。
また、層状系材料としては、下記式(2):
Li(LiM51−x−zMn)O (2)
(0≦x<0.3、0.3≦z≦0.7、M5はCoおよびNiの少なくとも一種である)
で表される材料が特に好ましい。この材料の式中のxは0≦x<0.2が好ましい。
オリビン系材料は、一般式:
LiM6PO (3)
(式中、M6はFe、Mn、Co、Niの少なくとも一種である)
で表され、具体的には、LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPOが挙げられる。これらの遷移金属の一部を別の元素で置換したり、酸素部分をフッ素で置き換えられたりしたものも使用できる。高エネルギー密度の観点から、高電位で動作するLiM7PO(M7はCoおよびNiの少なくとも一方である)で表される材料が好ましい。
このほかにも、NASICON型、リチウム遷移金属シリコン複合酸化物、などを使用することができる。
上記の高電位で動作する正極活物質は、その他の公知の正極活物質と組み合わせてもよいが、正極活物質全体における高電位で動作する上記正極活物質の含有率は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
これらの正極活物質の比表面積は、例えば0.01〜5m/gであり、0.05〜4m/gが好ましく、0.1〜3m/gがより好ましく、0.2〜2m/gがさらに好ましい。比表面積をこのような範囲とすることにより、電解液との接触面積を適当な範囲に調整することができる。つまり、比表面積を0.01m/g以上とすることにより、リチウムイオンの挿入脱離がスムーズに行われ易くなり、抵抗をより低減することができる。また、比表面積を5m/g以下とすることにより、電解液の分解が促進することや、活物質の構成元素が溶出することをより抑制することができる。比表面積は、通常のBET比表面積測定法により測定できる。
前記正極活物質の中心粒径は、0.01〜50μmであることが好ましく、0.02〜40μmがより好ましい。粒径を0.01μm以上とすることにより、正極活物質の構成元素の溶出をより抑制でき、また、電解液との接触による劣化をより抑制できる。また、粒径を50μm以下とすることにより、リチウムイオンの挿入脱離がスムーズに行われ易くなり、抵抗をより低減することができる。中心粒径は、50%累積径D50(メジアン径)であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定できる。
正極用結着剤としては、従来公知のものを用いることができる。中でも、汎用性や低コストの観点から、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。使用する正極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある結着力とエネルギー密度の観点から、正極活物質100質量部に対して2〜10質量部が好ましい。
ポリフッ化ビニリデン(PVdF)以外の結着剤としては、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミドが挙げられる。
正極活物質を含む正極活物質層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子が挙げられる。
(負極)
負極は、負極集電体と負極活物質とを有することができる。負極活物質は、負極用結着剤によって負極集電体を覆うように結着される。負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る炭素材料(a)、リチウムと合金可能な金属(b)、またはリチウムイオンを吸蔵、放出し得る金属酸化物(c)等が挙げられる。
炭素材料(a)としては、黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、またはこれらの複合物を用いることができる。ここで、結晶性の高い黒鉛は、電気伝導性が高く、銅などの金属からなる正極集電体との接着性および電圧平坦性が優れている。一方、結晶性の低い非晶質炭素は、体積膨張が比較的小さいため、負極全体の体積膨張を緩和する効果が高く、かつ結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する劣化が起きにくい。炭素材料(a)は、それ単独でまたはその他の負極活物質と併用して用いることができる。他の負極活物質と併用する場合、炭素材料(a)は、負極活物質全体の2質量%以上80質量%以下の範囲であることが好ましく、2質量%以上30質量%以下の範囲であることがより好ましい。
金属(b)としては、Al、Si、Pb、Sn、Zn、Cd、Sb、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、La等から選択される金属を、単体またはこれらの2種以上の合金、あるいはこれら金属単体または合金にさらにリチウムを添加した合金として用いることができる。特に、金属(b)としてシリコン(Si)を含むことが好ましい。金属(b)は、それ単独でまたはその他の負極活物質と併用して用いることができる。他の負極活物質と併用する場合、金属(b)は、負極活物質全体の5質量%以上90質量%以下の範囲であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下の範囲であることがより好ましい。
金属酸化物(c)としては、上記金属(b)の酸化物またはこれらの複合物を用いることができる。金属酸化物(c)の具体例としては、例えば、酸化シリコン(SiO(0<x≦2))、酸化アルミニウム(Al)、酸化スズ(SnO(0<x≦2))、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化リチウム(LiO)、LiFe、WO、MoO、CuO、Nb、LiTi2−x(1≦x≦4/3)、PbO、Pb等が挙げられる。特に、金属酸化物(c)として酸化シリコン(SiO)を含むことが好ましい。これは、酸化シリコンは、比較的安定で他の化合物との反応を引き起こしにくいからである。また、金属酸化物(c)に、窒素、ホウ素およびイオウの中から選ばれる一種または二種以上の元素を、例えば0.1〜5質量%添加することもできる。こうすることで、金属酸化物(c)の電気伝導性を向上させることができる。金属酸化物(c)は、それ単独でまたはその他の負極活物質と併用して用いることができる。他の負極活物質と併用する場合、金属酸化物(c)は、負極活物質全体の5質量%以上90質量%以下の範囲であることが好ましく、40質量%以上70質量%以下の範囲であることがより好ましい。
また、負極活物質としては、他にも、例えば、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る金属硫化物(d)が挙げられる。金属硫化物(d)としては、例えば、SnSやFeS等が挙げられる。また、負極活物質としては、他にも、例えば、金属リチウム若しくはリチウム合金、ポリアセン若しくはポリチオフェン、またはLi(LiN)、LiMnN、LiFeN、Li2.5Co0.5N若しくはLiCoN等の窒化リチウム等を挙げる事ができる。
以上の負極活物質は、単独でまたは二種以上を混合して用いることができる。
また、負極活物質は、炭素材料(a)、金属(b)、および金属酸化物(c)を含む構成とすることができる。以下、この負極活物質について説明する。
金属酸化物(c)はその全部または一部がアモルファス構造を有することが好ましい。アモルファス構造の金属酸化物(c)は、炭素材料(a)や金属(b)の体積膨張を抑制することができ、電解液の分解を抑制することができる。このメカニズムは、金属酸化物(c)がアモルファス構造であることにより、炭素材料(a)と電解液の界面への被膜形成に何らかの影響があるものと推定される。また、アモルファス構造は、結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する要素が比較的少ないと考えられる。なお、金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造を有することは、エックス線回折測定(一般的なXRD測定)にて確認することができる。具体的には、金属酸化物(c)がアモルファス構造を有しない場合には、金属酸化物(c)に固有のピークが観測されるが、金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造を有する場合が、金属酸化物(c)に固有のピークがブロードとなって観測される。
この組み合わせにおいて、金属酸化物(c)は、金属(b)を構成する金属の酸化物であることが好ましい。また、金属(b)および金属酸化物(c)は、それぞれシリコン(Si)および酸化シリコン(SiOx)であることが好ましい。
金属(b)は、その全部または一部が金属酸化物(c)中に分散していることが好ましい。金属(b)の少なくとも一部を金属酸化物(c)中に分散させることで、負極全体としての体積膨張をより抑制することができ、電解液の分解も抑制することができる。なお、金属(b)の全部または一部が金属酸化物(c)中に分散していることは、透過型電子顕微鏡観察(一般的なTEM観察)とエネルギー分散型X線分光法測定(一般的なEDX測定)を併用することで確認することができる。具体的には、金属(b)粒子を含むサンプルの断面を観察し、金属酸化物(c)中に分散している金属(b)粒子の酸素濃度を測定し、金属(b)粒子を構成している金属が酸化物となっていないことを確認することができる。
上述のように、炭素材料(a)、金属(b)、および金属酸化物(c)の合計に対するそれぞれの炭素材料(a)、金属(b)、および金属酸化物(c)の含有率は、2質量%以上80質量%以下、5質量%以上90質量%以下、および5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。また、それぞれの含有率は、炭素材料(a)が2質量%以上30質量%以下、金属(b)が20質量%以上50質量%以下、および金属酸化物(c)が40質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造であり、金属(b)の全部または一部が金属酸化物(c)中に分散し、さらに炭素材料(a)を含むような負極活物質は、例えば、特開2004−47404号公報で開示されているような方法で作製することができる。すなわち、金属酸化物(c)をメタンガスなどの有機物ガスを含む雰囲気下でCVD処理を行うことで、金属酸化物(c)中の金属(b)がナノクラスター化し、かつ表面が炭素材料(a)で被覆された複合体を得ることができる。また、炭素材料(a)と金属(b)と金属酸化物(c)とをメカニカルミリングで混合することでも、上記負極活物質を作製することができる。
また、炭素材料(a)、金属(b)、および金属酸化物(c)は、特に制限するものではないが、それぞれ粒子状のものを用いることができる。例えば、金属(b)の平均粒子径は、炭素材料(a)の平均粒子径および金属酸化物(c)の平均粒子径よりも小さい構成とすることができる。このようにすれば、充放電にともなう体積変化の大きい金属(b)が相対的に小粒径となり、体積変化の小さい炭素材料(a)や金属酸化物(c)が相対的に大粒径となるため、デンドライト生成および合金の微粉化がより効果的に抑制される。また、充放電の過程で大粒径の粒子、小粒径の粒子、大粒径の粒子の順にリチウムが吸蔵、放出されることとなり、この点からも、残留応力、残留歪みの発生が抑制される。このような観点から、金属(b)の平均粒子径は、例えば20μm以下とすることができ、15μm以下とすることが好ましい。
また、金属酸化物(c)の平均粒子径が炭素材料(a)の平均粒子径の1/2以下であることが好ましく、金属(b)の平均粒子径が金属酸化物(c)の平均粒子径の1/2以下であることが好ましい。さらに、金属酸化物(c)の平均粒子径が炭素材料(a)の平均粒子径の1/2以下であり、かつ金属(b)の平均粒子径が金属酸化物(c)の平均粒子径の1/2以下であることがより好ましい。平均粒子径をこのような範囲に制御すれば、金属および合金相の体積膨脹の緩和効果をより有効に得ることができ、エネルギー密度、サイクル寿命と効率のバランスに優れた二次電池を得ることができる。より具体的には、シリコン酸化物の平均粒子径を黒鉛の平均粒子径の1/2以下とし、シリコンの平均粒子径をシリコン酸化物の平均粒子径の1/2以下とすることが好ましい。
負極用結着剤としては、特に制限されるものではなく従来公知の材料が使用できる。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。
負極結着剤の含有率は、負極活物質と負極結着剤の総量に対して1〜30質量%の範囲であることが好ましく、2〜25質量%であることがより好ましい。1質量%以上とすることにより、活物質同士あるいは活物質と集電体との密着性が向上し、サイクル特性が良好になる。また、30質量%以下とすることにより、活物質比率が向上し、負極容量を向上することができる。
(電極集電体)
正極及び負極集電体(電極集電体という)としては、特に制限されるものではないが、電気化学的な安定性から、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、およびそれらの合金から適宜選択することが好ましい。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
正極及び負極は、電極集電体上に、正極もしくは負極活物質と結着剤を含む電極活物質層を形成することで作製することができる。電極活物質層の形成方法としては、ドクターブレード法、ダイコーター法、CVD法、スパッタリング法などが挙げられる。予め電極活物質層を形成した後に、蒸着、スパッタ等の方法で集電体金属の薄膜を形成して、電極集電体としてもよい。
(セパレータ)
セパレータとしては、有機材料もしくは無機材料からなるウェブおよびシートであり、正極及び負極の短絡を防止する機能を有し、かつ、金属イオンの移動が可能なものであればいずれのものも使用できる。
有機材料からなるセパレータ(有機セパレータ)としては、例えば、セルロースなどの織布、不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリイミド、多孔性ポリフッ化ビニリデン膜等の多孔性ポリマー膜、またはイオン伝導性ポリマー電解質膜等が挙げられる。これらは単独または組み合わせで使用することができる。
また、無機材料からなるセパレータ(無機セパレータ)としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミナ−シリカ、チタン酸カリウム等のセラミック短繊維からなる不織布セパレータ、または、織物、不織布などが挙げられる。
さらに、有機材料と無機材料との複合セパレータも使用できる。例えば、以下のものが挙げられる。
(1)紙または多孔質の樹脂フィルムからなる基材と耐熱性含窒素芳香族重合体およびセラミック粉末を含む層とからなるセパレータ;
(2)表面の一部に耐熱層が設けられており、この耐熱層が、セラミック粉末を含有する多孔質薄膜層、耐熱性樹脂の多孔質薄膜層、またはセラミック粉末と耐熱性樹脂の複合体からなる多孔質薄膜層セパレータ;
(3)セラミック物質の1次粒子の一部が焼結もしくは溶解再結晶結合されてなる2次粒子がバインダーによって結合されてなる多孔膜の層を備えるセパレータ;
(4)ポリオレフィン多孔質膜から成る基材層と、この基材層の片面又は両面に形成された耐熱絶縁層を備え、この耐熱絶縁層が、耐酸化性セラミックス粒子と耐熱性樹脂を含むセパレータ;
(5)セラミックス物質とバインダーが結合して形成される多孔性膜を含み、セラミックス物質として、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、チタン酸化物(TiO)、シリコン(Si)の窒化物、アルミニウム(Al)の水酸化物、ジルコニウム(Zr)のアルコキシド化物、チタン(Ti)のケトン化合物を用いたセパレータ;
(6)ポリマー基材と、このポリマー基材に形成されたAl、MgO、TiO、Al(OH)、Mg(OH)、Ti(OH)のセラミック含有コーティング層を含むセパレータ。
正極、負極とは別にセパレータを用意する形態にかぎらず、正極表面や負極表面にセパレータ材料を塗布するなどして形成する形態でもよい。。
(電解液)
本実施形態例のリチウムイオン二次電池で用いる電解液は、電池の動作電位において安定な溶剤と支持塩を含む。溶剤の具体例としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類;プロピレンカーボネート誘導体;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル等のエーテル類;リン酸エステル類などの非プロトン性有機溶媒が挙げられる。また、それらの一部をフッ素で置換したフッ素化非プロトン性有機溶媒が挙げられる。
特に、溶剤としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(MEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の環状または鎖状カーボネート類が好ましい。非水電解液は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
支持塩の具体例としては、LiPF、LiAsF、LiAlCl、LiClO、LiBF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、Li(CFSO、LiN(CFSO等のリチウム塩が挙げられる。支持塩は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。低コストの観点からLiPFが好ましい。
(形状および外装)
リチウムイオン二次電池における電極要素の形状としては、例えば、捲回型と積層型が挙げられる。いずれの形状でも、1つの正極と1つの負極とがセパレータを介して重ねられた構成を最小単位とする。また、この最小単位にさらに、正極と負極とがセパレータを介して交互に配置されるように少なくとも1つの正極および/または負極が重ねられた構成とすることもできる。また、二次電池の外形状としては、円筒形、角形、コイン形、ボタン形、ラミネート形が挙げられる。
積層型電極要素の場合、電極およびセパレータが平面形状のまま積層されており、曲率半径の小さい部分(捲回構造の巻き芯に近い領域または扁平型捲回構造の折り返す部位にあたる領域)が存在しない。そのため、充放電に伴う体積変化が大きい活物質を用いた場合、捲回構造を持つ電池に比べて、充放電に伴う電極の体積変化による悪影響を受けにくい。ただし、本発明においては、捲回型にも適用することが可能である。
二次電池の外装体としては、例えば、ステンレス、鉄、アルミニウム、チタン等の金属、またはこれらの合金の金属板、あるいはこれら金属板にメッキ処理を施した加工品が挙げられる。メッキとしては例えばニッケルメッキを用いることができる。これらの金属板を所望の形状に加工して缶体として使用することができる。また、外装体の形態としては、ラミネートフィルムも適用可能である。例えば、電池の形状が積層型の場合は、外装体としてラミネートフィルムを用いるラミネート形とすることが好ましい。
ラミネートフィルムとしては、熱溶着可能な樹脂基材層上に金属箔層を積層したフィルムを好ましく用いることができる。ラミネートフィルムの樹脂基材層上の金属箔層としては、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、チタン箔が挙げられる。熱溶着可能な樹脂基材層の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性高分子材料が挙げられる。また、耐熱性の樹脂層を外表面に形成してもよい。ラミネートフィルムの樹脂基材層や金属箔層はそれぞれ1層に限定されるものではなく2層以上であってもよい。汎用性やコストの観点から、アルミニウムラミネートフィルムが好ましい。また、熱溶着可能な樹脂からなる熱溶着層をラミネートフィルムの内面縁に設けたり、電極タブの封止部に予め設けたりして、耐熱性樹脂のラミネートフィルムを用いても良い。
外装体としてラミネートフィルムを用いた場合、外装体として金属缶を用いた場合に比べて、ガスが発生に起因する電池の体積変化や電極の歪みが生じやすい。これは、ラミネートフィルムが金属缶に比べて電池の内圧により変形しやすいためである。さらに、外装体としてラミネートフィルムを用いた二次電池を封止する際には、通常、電池内圧を大気圧より低くした状態で行われるので、内部に余分な空間が存在しない。そのため、電池内でガスが発生した場合に直ちに電池の体積変化や電極の変形につながりやすい。また、ラミネート型電池の場合は、捲回構造をもつ電池に比べて電極間にガスが発生した際に、発生したガスが電極間に滞留しやすいため、電極間の間隔が広がり易い傾向がある。この傾向は、ラミネートフィルム外装体を用いるとより顕著になる。
(電池の基本構造)
本実施形態による積層型のリチウムイオン二次電池の断面図を図1に示す。図1に示すように、本実施形態によるリチウムイオン二次電池は、アルミニウム箔等の金属からなる正極集電体3と、その上に設けられた正極活物質を含有する正極活物質層1とからなる正極、および銅箔等の金属からなる負極集電体4と、その上に設けられた負極活物質を含有する負極活物質層2とからなる負極を有する。
正極および負極は、正極活物質層1と負極活物質層2とが対向するように、不織布やポリプロピレン微多孔膜などからなるセパレータ5を介して積層されている。この電極対は、アルミニウムラミネートフィルム等の外装体6、7で形成された容器内に収容されている。正極集電体3には正極タブ9が接続され、負極集電体4には負極タブ8が接続され、これらのタブは容器の外に引き出されている。容器内には電解液が注入され封止される。
なお、図1に示す例では、正極活物質層1および負極活物質層2は、それぞれ、正極集電体3と負極集電体4の片面に形成されている構造を示しているが、これに限定されず、正極と負極を交互にそれぞれ複数積層する場合には、両面に形成してもよい。
(電池の製造)
次に、上述した構造を有する電池の製造方法について説明する。電極のプレドープ処理を伴う電池の製造方法は、一般的には、(A)電極にプレドープを行う工程、(B)セパレータを介して正極および負極を重ね合わせた電極要素を作製する工程と、(C)得られた電極要素を電解液とともに外装体内に封止する工程とを有する。
(A)電極にプレドープを行う工程
電極にプレドープを行う工程では、プレドープ対象となる電極準備体(正極準備体かつ/または負極準備体)が用意される。電極準備体は、前述したとおりの構成を有する電極が所定の形状に加工される前のものであり、例えば長尺のシートをロールに巻き、電極として加工する際には繰り出して使用される。これらの電極準備体は、集電体上に電極活物質(正極活物質または負極活物質)を主とする活物質層が塗布などの技術により形成され、場合によって引き続き加熱処理や表面処理、別の膜の形成などが行われる。プレドープ処理は、活物質層形成後であれば各工程間、もしくは電極準備体製造完了後に行うことが可能である。
プレドープ処理を行う装置について説明する。本実施形態例に係る装置は、蓄電デバイス用の電極に、該蓄電デバイスの組み立て前に、電解液を介してイオン源電極から電気化学的に金属イオンを挿入するプレドープを行う装置であって、金属イオンを放出可能な第1及び第2のイオン源電極と、前記蓄電デバイス用電極となる長尺の電極準備体を前記第1のイオン源電極と前記第2のイオン源電極に対向する位置に順次配置、移動させる機構と、前記各イオン源電極と電極準備体とを電気的に直接接触させないようにする機構と、前記各イオン源電極と前記電極準備体との間に金属イオンが移動可能な電解液を保持する機構と、前記電極準備体に所定の電位を与える機構と、前記各イオン源電極にそれぞれ所定の電位を与える機構とを有し、前記各イオン源電極にそれぞれ所定の電位を与える機構は、前記第1のイオン源電極と前記電極準備体間の電位差よりも、前記第2のイオン源電極と前記電極準備体間の電位差の方が大きくなる電位を与える機構であることを特徴とする。
図2は、本発明の一実施形態例によるプレドープ装置の構造を模式的に示す断面図である。このプレドープ装置は、イオン源電極と電極準備体との間にドープする金属イオンを含む電解液を保持する機構として、電解液22を蓄えた電解槽21を備えており、電解液22中に2つのイオン源電極23A及び23Bが配置されている。ここでは、集電体の両面に活物質層が形成された電極準備体へプレドープするものとして、それぞれのイオン源電極23A及び23Bは上下に一対の構成としている。プレドープ対象となる電極準備体24は、ロール状に巻かれた状態で繰り出し部25から繰り出して、電解槽21内に配置されたイオン源電極23A及び23Bと対向してプレドープ処理を行い、処理後の電極準備体24は巻き取り部26で再びロール状に巻かれる。電極準備体24は、電解槽21内に配した搬送ローラ27、28などにより、紙面の左から右に移動しており、第1のイオン源電極23Aと上流側、第2のイオン源電極23Bと下流側でそれぞれ対向している。なお、イオン源電極の個数は図示する2組に限定されず、3組以上とすることができる。搬送ローラ27は、電極準備体24に所定の電位を与える機構としても機能しており、この例ではイオン源電極23A及び23Bのそれぞれの手前に2つの電位供給機能付きの搬送ローラ27A及び27bを設けている。搬送ローラ27及び28は、イオン源電極23A及び23Bと電極準備体24とを電気的に直接接触させないようにする機構としても機能している。29A及び29Bは、それぞれのイオン源電極23A及び23Bにそれぞれ所定の電位を与える機構である電圧源である。29Cは電極準備体24に所定の電位を与える電圧源である。電圧源29Cは便宜上2つ設けているが、1つで良い。また、電極準備体24をグラウンド電位とする場合、電圧源29Cを設けずに、電圧源29A及び29Bのグラウンド側に接続しても良い。
イオン源電極と電極準備体とを電気的に直接接触させないようにする機構としては、両電極の位置を測定して調整する機構や、両電極間の縁などに絶縁性のスペーサーを設けて物理的に接触を不可能とする方法がある。また、電極準備体かイオン源電極に電解液が浸透するポーラスな絶縁性膜、たとえば4μm程度のポリイミド膜や50nm程度のアルミナ膜などを形成しておけば、接触しても電気的には絶縁が保てるため、両電極を積極的に接触させて処理することも可能である。イオン源電極と電極準備体の間に、電解液を浸透させたセパレータを配置し、両電極で挟むことでも、接触を防ぎ、所望の距離を維持できる。
例えば、イオン源電極と電極準備体とを電気的に直接接触させないようにする機構として、図3に示すように絶縁板30を第1のイオン源電極23Aと電極準備体24との間に配置することができる。なお、図3においては、図2の第1のイオン源電極23A周辺の変更例を示しており、(a)は上面図を、(b)は(a)のC方向からの側面図、(d)は(a)のD方向からの側面図を示す。第2のイオン源電極23B周辺についても同様に絶縁板30を配することができる。このように電極板を配置することにより、より確実にイオン源電極と電極準備体との電気的接触を防止することができる。
図2に示す装置には、さらに電解液22を循環して、温度や金属イオン濃度を調節したり、水分を除去したりする機構を設けても良い。また、プレドープ済みの電極準備体を洗浄する洗浄機構、乾燥機構を巻き取り部26の前に設けて、清浄な状態で乾燥した電極準備体を巻き取ることが好ましい。
イオン源電極と電極準備体との間に電解液を保持する機構としては、図2に示すように両電極を含めて電解液を蓄えた電解槽に浸漬する以外に、イオン源電極表面に毛細管現象で電解液を保持する部材を設けたり、電極準備体にセパレータのような材料を配置しこれに電解液を浸透させて、電解槽に浸漬することなくプレドープを可能とする機構などがある。
イオン源電極の形状は、電極準備体との対向面が平坦な板状や、ローラ状で電極準備体の移動とともに回転する構造などが可能である。
図4は、ローラ状のイオン源電極を用いた装置の概略を示す図である。ここでは、電極準備体24は集電体の片面に活物質層を形成した構成とした。この装置では、上流側の第1導電ローラ45Aはローラ状の第1イオン源電極43Aの表面をポリイミドなどの絶縁性の多孔質膜44Aで被覆されており、第1電解槽41Aに貯留された第1電解液42Aが多孔質膜44Aに保持されて、第1イオン源電極43Aと電極準備体24との間に電位差V1となる電圧を印加することでプレドープが行われる。同様に、下流側の第2導電ローラ45Bでは、第2電解槽41Bに貯留された第2電解液42Bが多孔質膜44Bに保持されて、第2イオン源電極43Bと電極準備体24との間に電位差V2となる電圧を印加することでプレドープが行われる。第1導電ローラ45A及び第2導電ローラ45Bは、対向ローラ46A及び46Bとそれぞれ対向配置され、これらのローラが移動機構を構成している。また、電解槽を設けることなくスプレー塗布などの方法で直接第1導電ローラ45A及び第2導電ローラ45Bに電解液を付与しても良い。また、集電体の両面に活物質層を形成した電極準備体の場合は、対向ローラに代えてイオン源電極を含む導電ローラを用い、両面に同時にプレドープ処理を行うこともできる。電極準備体の移動は、図示するような水平方向に限定されず、垂直方向に移動する構成とすることもできる。
イオン源電極は、プレドープする金属イオンの金属そのもののブロック(インゴット)や、電極上に該金属が形成されたもの、または電圧印加により金属イオンを放出できる合金や金属化合物があげられる。金属イオンがリチウムである場合、リチウム金属ブロックや、ニッケル電極にリチウム金属を貼り付けたものや、リチウム硫黄合金や、リチウムイオンを含む前述のような正極材料が利用できる。ただし、リチウム金属そのものは反応性が高いために取り扱いに注意を要することから、他の材料を用いることは安全管理の観点から望ましい場合がある。
金属イオンを含む電解液は、蓄電デバイスに使用される電解液と同様のものが使用でき、金属イオン、例えばリチウムイオンであれば、蓄電デバイスの電解液に使用可能なリチウム塩を添加すれば良い。電解液中の金属イオン濃度は、蓄電デバイスに使用される電解液中の金属イオン濃度と同程度にすることが好ましい。場合によって、蓄電デバイスに使用される電解液中の金属イオン濃度より高濃度にしたり、低濃度にすることもできる。
次に、図2に示す装置を用いたプレドープ処理の手順について説明する。まず、電極準備体24の電位を、グラウンド電位、例えば0Vや0.1Vに設定する。電極準備体は集電体でつながっているため、1箇所で電位供給すれば、基本的には全体が同電位になるが、ドープ処理時にイオン源電極との間で電流が流れることによりイオン源電極と電極準備体との間に電位差が形成される。このため、図2に示したように複数箇所で電位を与えることが望ましい。次に電極準備体24をイオン源電極23A及び23Bと対向する位置に配置し、イオン源電極と電気的に接触しないように維持する。ここで、電解液22がイオン源電極23A及び23Bと電極準備体24との間を連続的に埋めるようにする。まず、第1のイオン源電極23Aに所望の電位、例えば3Vなどを与える。これにより、第1のイオン源電極23Aから金属イオンが電解液22に放出され、同時に電解液22中の金属イオンが電極準備体24にプレドープ処理(第1のプレドープ工程)される。ここで、第1のイオン源電極23Aと電極準備体24との間の電位差をV1とする。電極準備体24は搬送ローラ27,28などの移動機構により移動し続けており、次の第2のイオン源電極23Bとの対向部に移動される。ここでもプレドープ処理が行われるが、イオン源電極23Bと電極準備体24との電位差V2は電位差V1より高くなる(V2>V1)。本発明においては、V2>V1となる組み合わせが少なくとも1箇所以上あれば良い。例えば、3箇所以上でプレドープを行う場合、最初にV1でプレドープを行い、以降はV2でのプレドープでも良い。プレドープが進むごとにイオン源電極への印加電圧を徐々に上げて、電位差を徐々に大きくしていくことはより好ましい。ただし、イオン源電極への印加電圧は、際限なく高くできるものではなく、許容される範囲内で徐々に上げることが好ましい。電極準備体24の電位は同電位であることから、イオン源電極への印加電圧の最適な上昇によりプレドープ速度の低下を抑制でき、効率的なプレドープが可能となる。
電極準備体24の移動速度や、電極準備体に印加する電位、第1及び第2のイオン源電極に印加する電位は、所望のプレドープ量が達成できるように適宜調整すればよい。通常、V1とV2との差(V2−V1)は、0.1V以上であることが好ましい。
プレドープ量は金属イオン量であるため、電流量と相関がある。電流量は、オームの法則に従い、印加電圧と電極間の距離とドープ量で変化する電極準備体の電気抵抗に関係する。距離が管理できれば電極準備体の移動時間と電圧設定により、ドープ量を推定することが可能である。また、電流量を評価する機能を有していれば、電流量の積算からドープ量が推定できる。電極準備体を移動させながらの処理であるため、どちらの方法においても、最終的なドープ量を測定し、推定値を補正することが望ましい。また、電極準備体の電気抵抗と総ドープ量の関係を事前に評価しておき、電極準備体の電気抵抗を評価すれば、ドープ済み量の大小に応じて、次のイオン源電極への印加電圧を調整し、ドープ量のばらつきを小さくすることが可能である。例えば、電極準備体と第1のイオン源電極との間の電気抵抗を評価し、評価された電気抵抗から、第1のイオン源電極から電極準備体への金属イオンのドープ量を推定し、この推定されたドープ量に基づき、第2のイオン源電極に印加する電圧を必要最小限の上昇幅に制御することができる。抵抗値の測定は、対象に交流電圧を印加して流れる電流の大きさと位相ずれからインピーダンスを測る交流インピーダンス法が適用できる。
電極準備体の送り方向に直交する幅方向で、イオン源電極と電極準備体との距離が異なる部分がある場合、例えば、イオン源電極の表面と電極準備体の表面が平行でない場合、印加電圧が幅方向に一様であるため、幅方向にドープ量のばらつきを形成してしまうことがある。このため、幅方向の電極間距離の調整は重要である。電極間距離の調整は、イオン源電極と電極準備体との距離を評価し、幅方向の電極間距離が一様になるように調整する機構を設けることで可能となる。イオン源電極と電極準備体との距離を評価する手段としては、たとえば、側面より両電極の画像を取得して距離を解析する方法や、両電極間の容量を活物質の充放電が影響しない周波数、たとえば100kHz以上で測定し、距離を推定するセンサーを幅方向の両端に設置する方法などが挙げられる。また、幅方向に複数のイオン源電極をならべ、それぞれの電圧を制御できるようにした機構を用意し、幅方向に電流量の分布を持たせられるようにして、幅方向の距離のずれに起因するドープ量のばらつきを補正しても良い。この機構は、ドープされた量が両電極間の電気抵抗で評価できることから、前もってドープ量と電極準備体の電気抵抗との相関関係を評価しておき、抵抗測定端子と電極準備体との間の局所抵抗を測定し、ドープ量にばらつきがあると判断した場合は相殺するような電位を与えることで、局所的なドープ量ばらつきを減らすことにも利用できる。
その他、第1及び第2のイオン源電極と電極準備体との間に保持される電解液中の金属イオン濃度を変える、第1のイオン源電極と電極準備体との距離と第2のイオン源電極と電極準備体との距離を変えるなど、ドープ速度を変更できる手法を組み合わせても良い。
負極の不可逆容量を相殺したい場合、負極にプレドープしても良いし、正極にプレドープしておき、セル形成後に充電処理により正極にプレドープされた金属イオンを負極にドープし直してもよい。例えば、正極活物質として前述のLiNi0.5Mn1.5は、4.5V以上で主な充放電が起きるが、2〜3Vあたりにも容量が存在することが知られている。このため、プレドープ処理をこの正極活物質を含む正極を図示しないイオン源電極との間で十分に放電処理を行ってから、第1及び第2のイオン源電極を用いて充電処理(プレドープ処理)を行い、セル形成後に2〜3Vあたりの容量と4.5Vの容量との充電を行い、負極プレドープ用のイオン源とすることができる。
電極準備体を前記第1のイオン源電極と前記第2のイオン源電極に対向する位置に順次配置、移動させる機構(移動機構という)については、各イオン源電極と対向する位置間で電極準備体が引っ張られたり、余ったりすることがないように連動して移動させる構造であることが好ましい。図1に示すように巻き取り部が駆動機構を有する場合、駆動機構が少なくて済み、最も単純である。また、複数のプレドープ装置を組み合わせて、さらに複数回のプレドープ処理を行うこともできる。その場合も、装置間の電極準備体の移動速度が同じとなるように調整することが好ましい。
(B)電極要素を作製する工程
電極要素を作製する工程では、正極準備体、負極準備体およびセパレータ準備体が用意される。
正極準備体、負極準備体およびセパレータ準備体は、ロールから繰り出されながら所定の形状に加工され、適宜手順で重ね合わせられて電極要素が作製される。
(C)電極要素を封止する工程
工程(B)によって作製された電池要素は、電解液とともに外装体内に封止される。外装体および電解液については前述したとおりである。
以上、本発明による電池の製造方法および製造装置の一形態を説明した。本発明は、上述した形態に限られるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変更が可能である。
また、電極要素の構成について、図1では一対の正極および負極がセパレータ5を介して対向した例を示すが、正極と負極とがセパレータを介して交互に積層されるように複数の電極対を積層した電極要素が容器内に収容された構造とすることもできる。電池には、一次電池と二次電池との種別、あるいは、非水電解液電池、全固体電池、ポリマー電池などの電解質の違いなどがあるが、電極とセパレータとを有する構造であれば、本発明はいずれの電池にも適用できる。電極の系統(種類)については、本形態では正極および負極の2系統の電極を有するものを示した。しかし、正極および負極の他に検査用電極など3系統以上の電極を備え、これらセパレータによって電気的に分離された状態で積層された構造を有する場合に、正極および負極以外の他の電極の製造にも本発明を適用することができる。
キャパシタの場合についても、電極とセパレータは電池と同様に積層される。電解質についても、液体電解質と固体電解質とがある。電極にはアルミニウムなどのバルブメタルが使用されるが、電解液を使用した電気二重層キャパシタでは、前述のリチウム二次電池で用いるような活物質(活性炭)を含む電極も使用されることがある。リチウムイオンキャパシタでは、負極にリチウム二次電池と同等の負極を用いることがある。これらにおいても、プレドープが好ましい形態であれば、本発明を適用することができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その主旨を超えない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
(実施例1)
正極活物質としてのLiMnNi複合酸化物と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、導電剤としてカーボンブラックとを質量比で92:4:4で混合して正極合剤とした。該正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、正極用スラリーを調製した。この正極用スラリーを厚さ20μmのアルミニウム製正極集電体の片面に、均一に塗布した。これを乾燥させた後、ロールプレスで圧縮成型することにより正極準備体を作製した。
負極活物質としては人造黒鉛を用いた。人造黒鉛と、N−メチル−2−ピロリドンにPVDFを溶かしたものに分散させ、負極用スラリーを調製した。負極活物質、結着剤の質量比は90/10とした。この負極用スラリーを厚さ10μmのCu製負極集電体上両面に均一に塗布した。これを乾燥させた後、ロールプレスで圧縮成型することにより負極準備体を作製した。
プレドープ装置は、図2及び図3に示すように、電解液22としてLiPFを1mol/L溶解したエチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=3/7(vol.%)溶液を蓄えた電解槽21内に、2組のリチウム板が固定された絶縁板が第1及び第2のイオン源電極23A及び23Bとして配置される。絶縁板のリチウム板の外側には導電性のローラ27A及び27Bがあり、上下のローラの間をリチウム板に活物質層が対向した状態で電極準備体(負極準備体)が通り、リチウム板と電極準備体(電極活物質層)との距離が1mmになるように設定される。リチウム板にはそれぞれ電圧源29A、29Bが接続される。集電体の活物質が塗布されていない部分に接触するローラ27Aは同一電位(0V)の電圧源29Cに接続される。
最初のリチウム板(第1のイオン源電極23A)は3V、次のリチウム板(第2のイオン源電極23B)は4Vの電位に設定する。電極準備体は2組のリチウム板間を一定速度で通過し、リチウムイオンのプレドープを行う。ここで、電位差V1は3V、電位差V2は4Vとなり、V1<V2となる。
プレドープ処理後、プレドープ済みの電極準備体はDEC溶液を満たした槽をくぐらせて洗浄後、乾燥し、ロール状に巻き取られる。
正極準備体及び、以上のようにしてプレドープされた負極準備体を所定の形状に加工し、セパレータを介して交互に複数積層した電極要素を得た。セパレータには、厚さ25μmの微多孔性ポリプロピレンフィルムを用いた。
得られた電極要素を、外装体であるアルミ製ラミネートフィルムで包み、内部に電解液を注液した後、101.3hPa(0.1気圧)の減圧雰囲気下で封止することによって、リチウムイオン二次電池を作製した。電解液としては、EC、DECを体積比3/7で構成した溶媒に、リチウム塩LiPF を1mol/lになるよう加えたものを用いた。また、正極および負極にはタブを接続し、外装体の外部から電気的に接続され得る状態とした。
本実施形態により、所定のプレドープ量に達するまでの時間を短縮することができる。また、このように効率的にプレドープを行った電極を用いて、容量が大きいリチウムイオン二次電池を作製できた。
(実施例2)
実施例2では、イオン源電極として、図4に示すような、金属ローラ上にLiNi0.5Mn1.5を形成し、その表面に10μm厚のポリイミド膜を形成した導電ローラを用いてプレドープを行った。ポリイミド膜には電解液が浸透させてあり、導電ローラと対向ローラの間に負極準備体を挟んで移動させる。各導電ローラはそれぞれの電圧源と接続されており、イオン源電極に所定の電圧を印加できる。第1の導電ローラには4.5Vを、第2の導電ローラには4.7Vを印加する。本実施例によって、大きな電解槽を使用することなく、また、負極準備体を電解液中に浸漬することなくプレドープを実施することができた。
本発明により得られる蓄電デバイスは、電源を必要とするあらゆる産業分野、ならびに電気的エネルギーの輸送、貯蔵および供給に関する産業分野にて利用することができる。具体的には、携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル機器の電源、電気自動車、ハイブリッドカー、電動バイク、電動アシスト自転車などの電動車両、電車や衛星や潜水艦などの移動・輸送用媒体の電源、UPSなどのバックアップ電源、太陽光発電、風力発電などで発電した電力を貯める蓄電設備、などに利用することができる。
1 正極活物質層
2 負極活物質層
3 正極集電体
4 負極集電体
5 セパレータ
6、7 ラミネート外装体
8 負極タブ
9 正極タブ
21 電解槽
22 電解液
23A 第1のイオン源電極
23B 第2のイオン源電極
24 電極準備体
25 繰り出し部
26 巻き取り部
27A、27B、28 搬送ローラ
29A、29B、29C 電圧源
30 絶縁板
41A 第1電解槽
41B 第2電解槽
42A 第1電解液
42B 第2電解液
43A 第1のイオン源電極
43B 第2のイオン源電極
44A 第1多孔質膜
44B 第2多孔質膜
45A 第1導電ローラ
45B 第2導電ローラ
46A、46B 対向ローラ

Claims (10)

  1. 蓄電デバイス用の電極に、該蓄電デバイスの組み立て前に、電解液を介してイオン源電極から電気化学的に金属イオンを挿入するプレドープ工程を備える蓄電デバイス用電極の製造方法において、
    前記プレドープ工程が、前記蓄電デバイス用電極となる長尺の電極準備体を第1のイオン源電極と対向させて行う第1のプレドープ工程と、第1のプレドープ工程の後に前記電極準備体を第2のイオン源電極と対向させて行う第2のプレドープ工程とを有し、前記第1のプレドープ工程における前記第1のイオン源電極と前記電極準備体間の電位差よりも、前記第2のプレドープ工程における前記第2のイオン源電極と前記電極準備体間の電位差の方が大きいことを特徴とする、蓄電デバイス用電極の製造方法。
  2. 前記電解液は、プレドープする金属イオンをプレドープ工程の開始前に含む請求項1に記載の蓄電デバイス用電極の製造方法。
  3. 前記電極準備体と前記第1のイオン源電極との間の電気抵抗を評価する工程をさらに有し、評価された前記電気抵抗から、前記第1のイオン源電極から前記電極準備体への前記金属イオンのドープ量を推定する請求項1または2に記載の蓄電デバイス用電極の製造方法。
  4. 前記推定されたドープ量に基づき、前記第2のイオン源電極に印加する電圧を制御する請求項3に記載の蓄電デバイス用電極の製造方法。
  5. 前記電極準備体の幅方向に、前記イオン源電極との距離を評価する工程を有する請求項1〜4に記載の蓄電デバイス用電極の製造方法。
  6. 前記第1及び第2のイオン源電極は、前記電極準備体の幅方向に、それぞれの印加電圧が制御可能な複数の個別イオン源電極を有し、前記評価された距離に基づき、前記複数の個別イオン源電極への印加電圧を制御する請求項5に記載の蓄電デバイス用電極の製造方法。
  7. 蓄電デバイス用の電極に、該蓄電デバイスの組み立て前に、電解液を介してイオン源電極から電気化学的に金属イオンを挿入するプレドープを行う装置であって、
    金属イオンを放出可能な第1及び第2のイオン源電極と、
    前記蓄電デバイス用電極となる長尺の電極準備体を前記第1のイオン源電極と前記第2のイオン源電極に対向する位置に順次配置、移動させる機構と、
    前記各イオン源電極と電極準備体とを電気的に直接接触させないようにする機構と、
    前記各イオン源電極と前記電極準備体との間に金属イオンが移動可能な電解液を保持する機構と、
    前記電極準備体に所定の電位を与える機構と、
    前記各イオン源電極にそれぞれ所定の電位を与える機構と
    を有し、前記各イオン源電極にそれぞれ所定の電位を与える機構は、前記第1のイオン源電極と前記電極準備体間の電位差よりも、前記第2のイオン源電極と前記電極準備体間の電位差の方が大きくなる電位を与える機構であることを特徴とする装置。
  8. 前記電解液を保持する機構は、前記電解液を貯留する電解槽であり、前記第1及び第2のイオン源電極と前記電極準備体を前記電解液中に浸漬してプレドープを行う請求項7に記載の装置。
  9. 前記各イオン源電極と電極準備体とを電気的に直接接触させないようにする機構が、前記第1及び第2のイオン源電極と前記電極準備体との間に配置した絶縁板である請求項8に記載の装置。
  10. 前記第1及び第2のイオン源電極がローラ状であり、該ローラ状のイオン源電極の表面に絶縁性の多孔質膜が形成され、該多孔質膜が前記電解液を保持する機構と、前記各イオン源電極と電極準備体とを電気的に直接接触させないようにする機構とを兼ね、前記電極準備体の移動と共に前記ローラ状のイオン源電極を回転させてプレドープを行う請求項7に記載の装置。
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