JP2017007940A - ガラス及びガラス基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルカリ成分が少なく、密度や熱膨張係数が低く、歪点やヤング率が高く、耐失透性、溶融性、成形性等に優れるガラス及びガラス基板の提案。
【解決手段】ガラス組成として、質量%で、SiO:58〜70%、Al:16〜25%、B:3〜8%、MgO:0〜5%、CaO:3〜13%、SrO:0〜6%、BaO:0〜6%、ZnO:0〜5%、ZrO:0〜5%、TiO:0〜5%、P:0〜5%を含有し、質量比CaO/MgOが4以上であるガラス。実質的Li,Na成分を含有せず、密度が2.43〜2.52g/cmであり30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数が30〜40×10−7/℃、ヤング率が70GPa以上、歪点が680〜740℃未満、105.0dPa・sにおける温度が1250℃以下、102.5dPa・sにおける温度が1650℃以下、液相粘度が105.0dPa・s以上であるガラス。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガラス及びガラス基板に関し、具体的には、有機EL(OLED)ディスプレイ、液晶ディスプレイに好適なガラス及びガラス基板に関する。更に、酸化物TFT、低温p−Si・TFT(LTPS)駆動のディスプレイに好適なガラス及びガラス基板に関する。
従来から、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、ハードディスク、フィルター、センサー等の基板として、ガラス基板が広く使用されている。近年では、従来の液晶ディスプレイに加えて、OLEDディスプレイが、自発光、高い色再現性、高視野角、高速応答、高精細等の理由から、盛んに開発されると共に、一部では既に実用化されている。また、スマートフォン等のモバイル機器のディスプレイは、小面積でありながら、多くの情報を表示することが要求されるため、超高精細の画面が必要になり、且つ動画表示も行うため、高速応答も必要になる。
このような用途では、OLEDディスプレイ、或いはLTPSで駆動する液晶ディスプレイが好適である。OLEDディスプレイは、画素を構成するOLED素子に電流が流れることで発光する。このため、駆動TFT素子として、低抵抗、高電子移動度の材料が使用される。この材料として、上記のLTPS以外に、IGZO(インジウム、ガリウム、亜鉛酸化物)に代表される酸化物TFTが着目されている。酸化物TFTは、低抵抗、高移動度であり、且つ比較的低温で形成が可能である。従来のp−Si・TFT、特にLTPSは、非結晶Si(a−Si)の膜を多結晶化する際に用いるエキシマレーザの不安定性に起因して、大面積のガラス基板に素子を形成する際にTFT特性がばらつき易く、TV用途等では、画面の表示ムラが生じ易かった。一方、酸化物TFTは、大面積のガラス基板に素子を形成する場合に、TFT特性の均質性に優れるため、有力なTFT形成材料として注目されており、一部では既に実用化されている。
高精細のディスプレイに用いられるガラス基板には、多くの要求特性がある。特に、以下の(1)〜(5)の特性が要求される。
(1)ガラス中のアルカリ成分が多いと、熱処理中にアルカリイオンが成膜された半導体物質中に拡散し、膜の特性の劣化を招く。よって、アルカリ成分(特に、Li成分、Na成分)の含有量が少ないこと、或いは実質的に含有しないこと。
(2)フォトリソグラフィーエッチング工程では、種々の酸、アルカリ等の薬液が使用される。よって、耐薬品性に優れていること。
(3)成膜、アニール等の工程で、ガラス基板は数100℃に熱処理される。熱処理の際に、ガラス基板が熱収縮すると、パターンズレ等が発生し易くなる。よって、熱収縮し難いこと、特に歪点が高いこと。
(4)熱膨張係数が、ガラス基板上に成膜される部材(例えば、a−Si、p−Si)に近いこと。例えば、熱膨張係数が30〜40×10−7/℃であること。なお、熱膨張係数が40×10−7/℃以下であると、耐熱衝撃性も向上する。
(5)ガラス基板の撓みに起因する不具合を抑制するために、ヤング率(又は比ヤング率)が高いこと。
更に、ガラス基板を製造する観点から、ガラスには、以下の(6)、(7)の特性が要求される。
(6)泡、ブツ、脈理等の溶融欠陥を防止するために、溶融性に優れていること。
(7)ガラス基板中の異物発生を避けるために、耐失透性に優れていること。
本発明は上記事情に鑑み成されたものであり、その技術的課題は上記要求特性(1)〜(7)を満たし、LTPS、酸化物TFT素子で駆動するOLEDディスプレイ、液晶ディスプレイに好適なガラス及びガラス基板を創案することである。具体的には、アルカリ成分が少なく、密度や熱膨張係数が低く、歪点やヤング率が高く、且つ耐失透性、溶融性、成形性等に優れるガラス及びガラス基板を創案することである。
本発明者等は、種々の実験を繰り返した結果、ガラス組成を所定範囲に規制することにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明のガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 58〜70%、Al 16〜25%、B 3〜8%、MgO 0〜5%、CaO 3〜13%、SrO 0〜6%、BaO 0〜6%、ZnO 0〜5%、ZrO 0〜5%、TiO 0〜5%、P 0〜5%を含有することを特徴とする。
本発明者等は、上記の要求特性(1)〜(7)を満たすガラスとして、SiO−Al−B−RO(RO:アルカリ土類金属酸化物、MgO+CaO+SrO+BaO)系ガラスに着目し、SiOの含有量を58%以上、Alの含有量を16〜25%、Bの含有量を3〜8%に規制すると、高歪点と良好な耐薬品性を両立し得ることを見出した。また、SiO、Al、B、ROの含有量を適正化すれば、ヤング率、耐失透性等が向上することを見出した。更に、B、MgO、CaOの含有量を適正化すれば、溶融性、成形性、耐失透性等が向上することを見出した。
第二に、本発明のガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 58〜70%、Al 16〜25%、B 3〜8%、MgO 0〜5%、CaO 3〜13%、SrO 0〜6%、BaO 0〜6%、ZnO 0〜5%、ZrO 0〜5%、TiO 0〜5%、P 0〜5%を含有し、実質的にLi成分、Na成分を含有せず、密度が2.43〜2.52g/cmであり、且つ歪点が680℃以上であることを特徴とする。ここで、「実質的に含有しない」とは、明示の成分の含有量が0.1%以下(好ましくは0.05%以下)の場合を指し、例えば、「実質的にLi成分を含有しない」とは、Li成分の含有量が0.1%以下(好ましくは0.05%以下)の場合を指す。「密度」は、周知のアルキメデス法によって測定可能である。「歪点」は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値を指す。
第三に、本発明のガラスは、実質的にLi成分、Na成分を含有せず、密度が2.43〜2.52g/cm、熱膨張係数が30〜40×10−7/℃、ヤング率が75GPa以上、歪点が680℃以上740℃未満、105.0dPa・sにおける温度が1250℃以下、102.5dPa・sにおける温度が1650℃以下、液相粘度(液相線粘度)が105.0dPa・s以上であることを特徴とする。ここで、「熱膨張係数」は、30〜380℃の温度範囲で測定した平均熱膨張係数を指し、例えばディラトメーターで測定可能である。「ヤング率」は、JIS R1602に基づく動的弾性率測定法(共振法)により測定した値を指す。「105.0dPa・sにおける温度」は、例えば白金球引き上げ法で測定可能である。「102.5dPa・sにおける温度」は、例えば白金球引き上げ法で測定可能である。「液相粘度」は、液相温度(液相線温度)におけるガラスの粘度を指し、例えば白金球引き上げ法で測定可能である。「液相温度」は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、温度勾配炉中に24時間保持した後、白金ボートを取り出し、ガラス中に失透(結晶異物)が認められた温度とする。
第四に、本発明のガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 59〜67%、Al 17〜22%、B 4〜7%、MgO 0〜4%、CaO 3〜12%、SrO 0〜5%、BaO 0.1〜5%、ZnO 0〜5%、ZrO 0〜5%、TiO 0〜5%、P 0〜5%、SnO 0〜5%含有し、実質的にLi成分、Na成分を含有しないことが好ましい。
第五に、本発明のガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 60〜65%、Al 17〜20%、B 4〜7%、MgO 0〜3%、CaO 4〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0.1〜5%、ZnO 0〜1%、ZrO 0〜1%、TiO 0〜1%、P 0〜3%、SnO 0.01〜1%含有し、実質的にLi成分、Na成分を含有しないことが好ましい。
第六に、本発明のガラス基板は、上記何れかのガラスを備えることを特徴とする。
第七に、本発明のガラス基板は、OLEDディスプレイに用いることが好ましい。第八に、本発明のガラス基板は、液晶ディスプレイに用いることが好ましい。
第九に、本発明のガラス基板は、酸化物TFT駆動のディスプレイに用いることが好ましい。
熱収縮値の測定方法を説明するための概略図である。
上記のように、各成分の含有量を規制した理由を以下に説明する。なお、各成分の説明において、下記の%表示は、質量%を指す。
SiOの含有量が少な過ぎると、耐薬品性、特に耐酸性が低下すると共に、歪点が低下し、また低密度化を図り難くなる。一方、SiOの含有量が多過ぎると、高温粘度が高くなり、溶融性が低下し易くなると共に、クリストバライトの失透が生じ易くなって、ガラス中に失透異物の欠陥が生じ易くなる。SiOの好ましい上限含有量は70%、68%、66%、65%、特に64%であり、好ましい下限含有量は58%、59%、60%、特に61%である。最も好ましい含有範囲は61〜64%である。
Alの含有量が少な過ぎると、歪点が低下し、熱収縮値が大きくなると共に、ヤング率が低下して、ガラス基板が撓み易くなる。一方、Alの含有量が多過ぎると、耐BHF(バッファードフッ酸)性が低下し、ガラス表面に白濁が生じ易くなると共に、耐クラック抵抗性が低下し易くなる。更にガラス中にムライト又はアノーサイトの失透が生じ易くなる。Alの好ましい上限含有量は25%、23%、22%、21%、特に20%であり、好ましい下限含有量は17%、17.5%、特に18%である。最も好ましい含有範囲は18〜20%である。
は、融剤として働き、粘性を下げて溶融性を改善する成分である。Bの含有量は、好ましくは3〜8%、3〜7%、特に4〜7%である。Bの含有量が少な過ぎると、融剤として十分に作用せず、耐BHF性や耐クラック性が低下し易くなる。また液相温度が上昇し易くなる。一方、Bの含有量が多過ぎると、歪点、耐熱性、耐酸性が低下し易くなる。特に、Bの含有量が7%以上になると、その傾向が顕著になる。また、Bの含有量が多過ぎると、ヤング率が低下して、ガラス基板の撓み量が大きくなり易い。
歪点と溶融性のバランスを考慮すると、質量比Al/Bは、好ましくは1〜5、1.5〜4.5、2〜4、特に2.5〜3.5である。
MgOは、歪点を下げずに高温粘性を下げて、溶融性を改善する成分である。また、MgOは、RO中では最も密度を下げる効果が有するが、過剰に導入すると、液相温度が上昇し易くなる。更に、MgOは、BHF又はフッ酸と反応して生成物を形成し易い成分である。この反応生成物は、ガラス基板表面の素子上に固着したり、ガラス基板に付着したりして、素子やガラス基板を白濁させるおそれがある。よって、MgOの含有量は、好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜4%、更に好ましくは0〜3%、最も好ましくは0〜2.5%である。
CaOは、MgOと同様にして、歪点を下げずに高温粘性を下げて、溶融性を顕著に改善する成分である。CaOの含有量が多過ぎると、失透が生じ易くなると共に、耐BHF性が低下して、反応生成物がガラス基板表面の素子上に固着したり、ガラス基板に付着したりして、素子やガラス基板を白濁させるおそれがある。CaOの好ましい上限含有量は12%、11%、10.5%、特に10%であり、好ましい下限含有量は3%、3.5%、特に4%である。最も好ましい含有範囲は4〜10%である。
SrOは、耐薬品性、耐失透性を高める成分であるが、ROの中で、その割合を高め過ぎると、溶融性が低下し易くなると共に、密度、熱膨張係数が上昇し易くなる。よって、SrOの含有量は、好ましくは0〜6%、0〜5%、特に0〜4.5%である。
BaOは、耐薬品性、耐失透性を高める成分であるが、その含有量が多過ぎると、密度が上昇し易くなる。また、BaOは、ROの中では、溶融性を高める効果が乏しい。本発明に係るSiO−Al−B−RO系ガラスは、一般的に溶融し難いため、高品質のガラス基板を安価、且つ大量に供給する観点から、溶融性を高めて、泡、異物等による不良率を軽減することが非常に重要になる。よって、BaOの含有量は、好ましくは0〜6%、0.1〜5%、特に0.5〜4%である。なお、本発明に係るSiO−Al−B−RO系ガラスでは、SiOの含有量を低減すると、溶融性が効果的に向上するが、SiOの含有量を低減すると、耐酸性が低下し易くなると共に、密度、熱膨張係数が上昇し易くなる。
MgO、SrO、BaOは、CaOに比べて、耐クラック性を高める性質がある。従って、MgO+SrO+BaOの含有量(MgO、SrO及びBaOの合量)は、好ましくは2%以上、3%以上、特に3%超である。しかし、MgO+SrO+BaOの含有量が多過ぎると、密度、熱膨張係数が上昇し易くなる。よって、MgO+SrO+BaOの含有量は、好ましくは9%以下、8%以下である。
ROを混合して導入すると、液相温度が大幅に低下し、ガラス中に結晶異物が生じ難くなり、溶融性、成形性が改善する。しかし、ROの含有量が多過ぎると、密度が上昇して、ガラス基板の軽量化を図り難くなる。よって、ROの含有量は、好ましくは15%未満、14%未満、特に2〜13%未満である。
ROの混合比を最適化するために、質量比CaO/(MgO+SrO+BaO)は、好ましくは0.7以上、0.8以上、0.9以上、特に1以上であり、質量比CaO/MgOは、好ましくは2以上、3以上、4以上、特に5以上である。
ZnOは、溶融性、耐BHF性を改善する成分であるが、その含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなったり、歪点が低下したりして、耐熱性を確保し難くなる。よって、ZnOの含有量は、好ましくは0〜5%、特に0〜1%である。
ZrOは、化学的耐久性を高める成分であるが、その導入量が多くなると、ZrSiOの失透ブツが発生し易くなる。ZrOの好ましい下限含有量は1%、0.5%、0.3%、0.2%、特に0.1%であり、化学的耐久性の観点から0.005%以上導入することが好ましい。最も好ましい含有範囲は0.005〜0.1%である。なお、ZrOは、原料から導入してもよいし、耐火物からの溶出により導入してもよい。
TiOは、高温粘性を下げて溶融性を高め、また化学的耐久性を高める効果があるが、導入量が過剰になると、紫外線透過率が低下し易くなる。TiOの含有量は、好ましくは3%以下、1%以下、0.5%以下、0.1%以下、0.05%以下、特に0.03%以下である。なお、TiOを極少量導入(例えば0.001%以上)すると、紫外線による着色を抑制する効果が得られる。
は、歪点を高める成分であると共に、アノーサイト等のアルカリ土類アルミノシリケート系の失透結晶の析出を抑制し得る成分である。但し、Pを多量に含有させると、ガラスが分相し易くなる。Pの含有量は、好ましくは0〜5%、0〜3%、0〜2%、0〜1%、特に0〜0.5%である。
清澄剤として、As、Sb、SnO、SO、Fe、CeO、F、Cl、C、或いはAl、Si等の金属粉末等を用いることができる。これらの含有量は、合量で3%以下が好ましい。
As、Sbは、環境負荷化学物質であるため、できるだけ使用しないことが望ましい。As、Sbの含有量は、それぞれ0.3%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.05%未満、0.03%未満、0.01%未満、0.005%未満、特に0.003%未満が好ましい。
SnOは、ガラス中の泡を低減する清澄剤としての働きを有すると共に、Fe又はFeOと共存する際に、紫外線透過率を比較的に高く維持する効果を有する。一方、SnOの含有量が多過ぎると、ガラス中にSnOの失透ブツが発生し易くなる。SnOの好ましい上限含有量は0.5%、0.4%、特に0.3%であり、好ましい下限含有量は0.01%、0.05%、特に0.1%である。最も好ましい含有範囲は0.1〜0.4%である。また、Fe換算でFe又はFeOの含有量が0.01〜0.05%に対して、SnOを0.01〜0.5%導入すれば、泡品位と紫外線透過率を高めることができる。ここで、「Fe換算」は、価数によらず全Fe量をFe量に換算した値を指す。
SnOを0.01〜0.5%含む場合、Rhの含有量が多過ぎると、ガラスが着色し易くなる。なお、Rhは、白金の製造容器から混入する可能性がある。Rhの含有量は、好ましくは0〜0.0005%、より好ましくは0.00001〜0.0001%である。
SOは、不純物として、原料から混入する成分であるが、SOの含有量が多過ぎると、溶融や成形中に、リボイルと呼ばれる泡を発生させて、ガラス中に欠陥を生じさせるおそれがある。SOの好ましい上限含有量は0.005%、0.003%、0.002%、特に0.001%であり、好ましい下限含有量は0.0001%である。最も好ましい含有範囲は0.0001%〜0.001%である。
鉄は、不純物として、原料から混入する成分であるが、鉄の含有量が多過ぎると、紫外線透過率が低下する恐れがある。紫外線透過率が低下すると、TFTを作製するフォトリソグラフィー工程や紫外線による液晶の配向工程で不具合が発生するおそれがある。よって、鉄の好ましい上限含有量は、Feに換算して、0.001%であり、好ましい下限含有量は、Feに換算して、0.05%、0.04%、0.03%、特に0.02%である。最も好ましい含有範囲は0.001%〜0.02%である。
Crは、不純物として、原料から混入する成分であるが、Crの含有量が多過ぎると、ガラス基板端面から光を入射して散乱光により、ガラス基板内部の異物検査を行う場合に、光の透過が生じ難くなり、異物検査に不具合が生じるおそれがある。特に、基板サイズが730mm×920mm以上の場合に、この不具合が発生し易くなる。また、ガラス基板の板厚が小さい(例えば0.5mm以下、0.4mm以下、特に0.3mm以下)と、ガラス基板端面から入射する光が少なくなるため、Crの含有量を規制する意義が大きくなる。Crの好ましい上限含有量は0.001%、0.0008%、0.0006%、0.0005%、特に0.0003%であり、好ましい下限含有量は0.00001%である。最も好ましい含有範囲は0.00001〜0.0003%である。
アルカリ成分、特にLi成分、Na成分(例えばLiO、NaO)は、ガラス基板上に形成される各種の膜や半導体素子の特性を劣化させるため、その含有量を低減することが好ましく、実質的に含有しないことが望ましい。
各成分の好ましい含有範囲を組み合わせて、好ましいガラス組成範囲とすることができる。その中でも特に好ましいガラス組成範囲は以下の通りである。
(1)ガラス組成として、質量%で、SiO 59〜67%、Al 17〜22%、B 4〜7%、MgO 0〜4%、CaO 3〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0.1〜5%、ZnO 0〜5%、ZrO 0〜5%、TiO 0〜5%、P 0〜5%、SnO 0〜5%含有し、実質的にLi成分、Na成分を含有しない。
(2)ガラス組成として、質量%で、SiO 60〜65%、Al 17〜20%、B 4〜7%、MgO 0〜3%、CaO 4〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0.1〜5%、ZnO 0〜1%、ZrO 0〜1%、TiO 0〜1%、P 0〜3%、SnO 0.01〜1%含有し、実質的にLi成分、Na成分を含有しない。
近年、OLEDディスプレイ、液晶ディスプレイ等のモバイル用途のフラットパネルディスプレイでは、軽量化の要求が高まっており、ガラス基板にも軽量化が求められている。この要求を満たすためには、低密度化によるガラス基板の軽量化が望ましい。密度は、好ましくは2.52g/cm以下、2.51g/cm以下、2.50g/cm以下、2.49g/cm以下、特に2.48/cm以下である。一方、密度が低過ぎると、溶融温度の上昇、液相粘度の低下が生じ易くなり、ガラス基板の生産性が低下し易くなる。また歪点も低下し易くなる。よって、密度は、好ましくは2.43g/cm以上、2.44g/cm以上、特に2.45g/cm以上である。
本発明のガラス及びガラス基板において、熱膨張係数は、好ましくは30〜40×10−7/℃、32〜39×10−7/℃、33〜38×10−7/℃、特に34〜37×10−7/℃である。このようにすれば、ガラス基板上に成膜される部材(例えば、a−Si、p−Si)の熱膨張係数に整合し易くなる。
OLEDディスプレイ又は液晶ディスプレイ等では、大面積のガラス基板(例えば、730×920mm以上、1100×1250mm以上、特に1500×1500mm以上)が使用されると共に、薄肉のガラス基板(例えば、板厚0.5mm以下、0.4mm以下、特に0.3mm以下)が使用される傾向にある。ガラス基板が大面積化、薄肉化すると、自重による撓みが大きな問題になる。ガラス基板の撓みを低減するためには、ガラス基板の比ヤング率を高める必要がある。比ヤング率は、好ましくは30.0GPa/g・cm−3以上、30.5GPa/g・cm−3以上、31.0GPa/g・cm−3以上、特に31.5GPa/g・cm−3以上である。また、ガラス基板が大面積化、薄肉化すると、定盤上での熱処理工程、或いは各種の金属膜、酸化物膜、半導体膜、有機膜等の成膜工程後に、ガラス基板の反りが問題になる。ガラス基板の反りを低減するためには、ガラス基板のヤング率を高めることが有効である。ヤング率は、好ましくは75GPa以上、特に76GPa以上である。
現在、超高精細のモバイルディスプレイに用いられるLTPSでは、その工程温度が約400〜600℃である。この工程温度での熱収縮を抑制するために、歪点は、好ましくは680℃以上、690℃以上、特に700℃以上である。
最近では、OLEDディスプレイが、モバイルやTV等の用途でも使用される。この用途の駆動TFT素子として、上記のLTPS以外に、酸化物TFTが着目されている。従来まで、酸化物TFTは、a−Siと同等の300〜400℃の温度プロセスで作製されていたが、従来よりも高い熱処理温度でアニールを行うと、より安定した素子特性が得られることが分かってきた。その熱処理温度は、400〜600℃程度であり、この用途でも低熱収縮のガラス基板が要求されるようになっている。
本発明のガラス及びガラス基板において、室温(25℃)から10℃/分の速度で500℃まで昇温し、500℃で1時間保持した後、10℃/分の速度で室温まで降温したとき、熱収縮値は、好ましくは30ppm以下、25ppm以下、23ppm以下、22ppm以下、特に21ppm以下である。このようにすれば、LTPSの製造工程で熱処理を受けても、画素ピッチズレ等の不具合が生じ難くなる。なお、熱収縮値が小さ過ぎると、ガラスの生産性が低下し易くなる。よって、熱収縮値は、好ましくは5ppm以上、特に8ppm以上である。なお、熱収縮値は、歪点を高める以外にも、成形時の冷却速度を低下させることでも低減することができる。
オーバーフローダウンドロー法では、楔形の耐火物(或いは白金族金属で被覆された耐火物)の表面を溶融ガラスが流下し、楔の下端で合流して、板状に成形される。スロットダウンドロー法では、例えば、スリット状の開口部を持つ白金族金属製のパイプからリボン状の溶融ガラスを流下させ、冷却して板状に成形する。成形装置に接触している溶融ガラスの温度が高過ぎると、成形装置の老朽化を招き、ガラス基板の生産性が低下し易くなる。よって、高温粘度105.0dPa・sにおける温度は、好ましくは1300℃以下、1280℃以下、1270℃以下、1260℃以下、1250℃以下、1240℃以下、特に1230℃以下である。なお、高温粘度105.0dPa・sにおける温度は、成形時の溶融ガラスの温度に相当している。
本発明に係るSiO−Al−B−RO系ガラスは、一般的に、溶融し難い。このため、溶融性の向上が課題になる。溶融性を高めると、泡、異物等による不良率が軽減されるため、高品質のガラス基板を大量、且つ安価に供給することができる。一方、高温域でのガラスの粘度が高過ぎると、溶融工程で脱泡が促進され難くなる。よって、高温粘度102.5dPa・sにおける温度は、好ましくは1650℃以下、1640℃以下、1630℃以下、1620℃以下、特に1610℃以下である。なお、高温粘度102.5dPa・sにおける温度は、溶融温度に相当しており、この温度が低い程、溶融性に優れている。
ダウンドロー法等で成形する場合、耐失透性が重要になる。本発明に係るSiO−Al−B−RO系ガラスの成形温度を考慮すると、液相温度は、好ましくは1250℃以下、1230℃以下、1220℃以下、1210℃以下、1200℃以下、特に1190℃以下である。また、液相粘度は、好ましくは105.0dPa・s以上、105.2dPa・s以上、105.3dPa・s以上、105.4dPa・s以上、105.5dPa・s以上、特に105.6dPa・s以上である。
高精細のディスプレイに用いられるガラス基板には、透明導電膜、絶縁膜、半導体膜、金属膜等が成膜される。更に、フォトリソグラフィーエッチング工程によって種々の回路、パターンが形成される。これらの成膜工程、フォトリソグラフィーエッチング工程において、ガラス基板は、種々の薬液処理を受ける。例えば、TFT型アクティブマトリックス液晶ディスプレイでは、ガラス基板上に絶縁膜や透明導電膜を成膜し、更にアモルファスシリコンや多結晶シリコンのTFT(薄膜トランジスタ)がフォトリソグラフィーエッチング工程によりガラス基板上に多数形成される。このような工程では、硫酸、塩酸、アルカリ溶液、フッ酸、BHF等の種々の薬液処理を受ける。特に、BHFは、絶縁膜のエッチングに広く用いられるが、BHFは、ガラス基板を侵食して、ガラス基板の表面を白濁させ易く、またその反応生成物が、製造工程中のフィルターを詰まらせたり、ガラス基板上に付着するおそれがある。上記事情から、ガラス基板の耐薬品性を高めることが重要になる。
本発明のガラス及びガラス基板は、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。オーバーフローダウンドロー法とは、楔形の耐火物の両側から溶融ガラスを溢れさせて、溢れた溶融ガラスを楔形の下端で合流させながら、下方に延伸成形してガラス基板を成形する方法である。オーバーフローダウンドロー法では、ガラス基板の表面となるべき面は耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形される。このため、未研磨で表面品位が良好なガラス基板を安価に製造することができ、大面積化や薄肉化も容易である。なお、オーバーフローダウンドロー法で用いる耐火物の材質は、所望の寸法や表面精度を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行う際に、力を印加する方法も特に限定されない。例えば、十分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラスの端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。
オーバーフローダウンドロー法以外にも、例えば、ダウンドロー法(スロットダウン法、リドロー法等)、フロート法等でガラス基板を成形することも可能である。
本発明のガラス及びガラス基板において、板厚(肉厚)は、特に限定されないが、好ましくは0.5mm以下、0.4mm以下、0.35mm以下、特に0.3mm以下である。板厚が小さい程、デバイスを軽量化し易くなる。一方、板厚が小さい程、ガラス基板が撓み易くなるが、本発明のガラス及びガラス基板は、ヤング率や比ヤング率が高いため、撓みに起因する不具合が生じ難い。なお、板厚は、ガラス製造時の流量や板引き速度等で調整可能である。
本発明のガラス及びガラス基板において、β−OH値を低下させると、歪点を高めることができる。β−OH値は、好ましくは0.5/mm以下、0.45/mm以下、0.4/mm以下、特に0.35/mm以下である。β−OH値が大き過ぎると、歪点が低下し易くなる。なお、β−OH値が小さ過ぎると、溶融性が低下し易くなる。よって、β−OH値は、好ましくは0.01/mm以上、特に0.05/mm以上である。
β−OH値を低下させる方法として、以下の方法が挙げられる。(1)含水量の低い原料を選択する。(2)ガラス中の水分量を減少させる成分(Cl、SO等)を添加する。(3)炉内雰囲気中の水分量を低下させる。(4)溶融ガラス中でNバブリングを行う。(5)小型溶融炉を採用する。(6)溶融ガラスの流量を速くする。(7)電気溶融法を採用する。
ここで、「β−OH値」は、FT−IRを用いてガラスの透過率を測定し、下記の式を用いて求めた値を指す。
β−OH値 = (1/X)log(T/T
X:ガラス肉厚(mm)
:参照波長3846cm−1における透過率(%)
:水酸基吸収波長3600cm−1付近における最小透過率(%)
本発明のガラス及びガラス基板は、OLEDディスプレイに用いることが好ましい。OLEDは、一般に市販されつつあるが、大量生産によるコストダウンが強く望まれている。本発明のガラス及びガラス基板は、生産性に優れており、且つ大面積化や薄肉化が容易であるため、このような要求を的確に満たすことができる。
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は以下の実施例に何ら限定されない。
表1〜3は、本発明の実施例(試料No.1〜30)を示している。
次のように、各試料を作製した。まず表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合したガラスバッチを白金坩堝に入れ、1600℃で24時間溶融した。ガラスバッチの溶解に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、板状に成形した。得られた各試料について、密度、熱膨張係数、ヤング率、比ヤング率、歪点、軟化点、高温粘度105.0dPa・sにおける温度、高温粘度102.5dPa・sにおける温度、液相温度、液相粘度logηTL、耐薬品性を評価した。
密度は、周知のアルキメデス法によって測定した値である。
熱膨張係数は、30〜380℃の温度範囲において、ディラトメーターで測定した平均熱膨張係数である。
ヤング率は、JIS R1602に基づく動的弾性率測定法(共振法)により測定した値を指し、比ヤング率は、ヤング率を密度で割った値である。
歪点、軟化点は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値である。
高温粘度105.0dPa・s、102.5dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
次に、各試料を粉砕し、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、温度勾配炉中に24時間保持した後、白金ボートを取り出し、ガラス中に失透(結晶異物)が認められた温度を液相温度とした。更に、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定し、これを液相粘度とした。
また、各試料の両面を光学研磨した上で、所定の濃度に設定された薬液中で、所定の温度で所定の時間浸漬した後、得られた試料の表面を観察することにより、耐薬品性を評価した。具体的には、薬液処理後に、ガラス表面が白濁したり、クラックが入っているものを「×」、弱い白濁、荒れが見られるものを「△」、全く変化の無いものを「○」とした。薬液処理の条件として、耐酸性は、10%塩酸を用いて、80℃、3時間処理で評価し、耐BHF性は、周知の130BHF溶液を用いて、20℃、30分間処理で評価した。
更に、表中の試料No.12、20、23、24について、オーバーフローダウンドロー法にて、板厚0.5mmのガラス基板を試作し、その熱収縮値を測定した。まずガラス基板から30mm×160mm×0.5mmの試料を切り出し、下記の要領にて、各試料の熱収縮値を測定した。図1(a)に示すように、ガラス基板25の所定の部位に、直線状のマークM1、M2を所定間隔で2カ所記入した後に、図1(b)に示すように、マークMと垂直な方向にガラス基板25を分断することにより、ガラス板片25aと、ガラス板片25bとを得た。そして、ガラス板片25aのみを、常温から10℃/分の速度で500℃まで昇温し、500℃で1時間保持した後、10℃/分の速度で常温まで冷却した。その後、図1(c)に示すように、熱処理を施したガラス板片25aと、熱処理を施していないガラス板片25bとを並べて接着テープTで固定した状態で、ガラス板片25aのマークM1、M2と、ガラス板片25bのマークM1、M2とのずれ量を測定し、下記数式1に基づいて熱収縮値を算出した。
数式1において、lは、ガラス基板25におけるマークM間の距離、lは、ガラス板片25aのマークM1とガラス板片25bのマークM1との間の距離、lは、ガラス板片25aのマークM2とガラス板片25bのマークM2との間の距離である。
試料No.1〜30は、何れも密度が2.43〜2.52g/cmであり、ガラス基板の軽量化を図ることができる。また熱膨張係数が30〜40×10―7/℃、歪点が680℃以上740℃未満であり、熱収縮値も小さい。またヤング率が75GPa以上、比ヤング率が30GPa/(g/cm)以上であり、撓みや変形が生じ難い。また高温粘度105.0dPa・sにおける温度が1250℃以下、102.5dPa・sにおける温度が1650℃以下であり、且つ液相温度が1300℃以下、液相粘度が105.0dPa・s以上であるため、溶融性や成形性に優れており、大量生産に向いている。更に耐薬品性も優れている。
本発明のガラス及びガラス基板は、アルカリ成分が少なく、密度や熱膨張係数が低く、歪点やヤング率が高く、且つ耐失透性、溶融性、成形性等に優れる。よって、本発明のガラス及びガラス基板は、OLEDディスプレイ、液晶ディスプレイ等のディスプレイに好適であり、LTPS、酸化物TFTで駆動するディスプレイに好適である。

Claims (9)

  1. ガラス組成として、質量%で、SiO 58〜70%、Al 16〜25%、B 3〜8%、MgO 0〜5%、CaO 3〜13%、SrO 0〜6%、BaO 0〜6%、ZnO 0〜5%、ZrO 0〜5%、TiO 0〜5%、P 0〜5%を含有することを特徴とするガラス。
  2. ガラス組成として、質量%で、SiO 58〜70%、Al 16〜25%、B 3〜8%、MgO 0〜5%、CaO 3〜13%、SrO 0〜6%、BaO 0〜6%、ZnO 0〜5%、ZrO 0〜5%、TiO 0〜5%、P 0〜5%を含有し、実質的にLi、Na成分を含有せず、密度が2.43〜2.52g/cmであり、且つ歪点が680℃以上であることを特徴とするガラス。
  3. 実質的にLi成分、Na成分を含有せず、密度が2.43〜2.52g/cm、熱膨張係数が30〜40×10−7/℃、ヤング率が75GPa以上、歪点が680℃以上740℃未満、105.0dPa・sにおける温度が1250℃以下、102.5dPa・sにおける温度が1650℃以下、液相粘度が105.0dPa・s以上であることを特徴とするガラス。
  4. ガラス組成として、質量%で、SiO 59〜67%、Al 17〜22%、B 4〜7%、MgO 0〜4%、CaO 3〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0.1〜5%、ZnO 0〜5%、ZrO 0〜5%、TiO 0〜5%、P 0〜5%、SnO 0〜5%含有し、実質的にLi成分、Na成分を含有しないことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のガラス。
  5. ガラス組成として、質量%で、SiO 60〜65%、Al 17〜20%、B 4〜7%、MgO 0〜3%、CaO 4〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0.1〜5%、ZnO 0〜1%、ZrO 0〜1%、TiO 0〜1%、P 0〜3%、SnO 0.01〜1%含有し、実質的にLi成分、Na成分を含有しないことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のガラス。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載のガラスを備えることを特徴とするガラス基板。
  7. OLEDディスプレイに用いることを特徴とする請求項6に記載のガラス基板。
  8. 液晶ディスプレイに用いることを特徴とする請求項6に記載のガラス基板。
  9. 酸化物TFT駆動のディスプレイに用いることを特徴とする請求項6に記載のガラス基板。
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