以下、実施形態に係るICカード処理装置100について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
まず、図1を参照して、実施形態に係るICカード処理装置100について説明する。図1は、実施形態に係るICカード処理装置100の構成例を示す模式的断面図である。ここで、ICカード処理装置100は、鉄道の窓口処理装置等に併設され、IC定期券の再発行を行うICカード処理装置100を例として説明する。
ICカード処理装置100は、挿入口1と、搬送モータ2と、複数個の駆動ローラ3と、複数個のピンチローラ4と、保留部5と、ソレノイド6(図示せず)と、データ処理部7と、印刷処理部8と、印字ヘッド9と、消字ヘッド10と、ホッパ11と、繰出モータ12と、繰出ローラ13と、第1乃至第7のセンサ14〜20と、制御部21(図示せず)と、を備えるものである。
挿入口1は、駅係員等であるICカード処理装置100の操作者が、ICカードを挿入する部分である。また、挿入口1は、ICカード処理装置100内での処理が終了したICカードが排出される部分である。挿入口1は、操作者がICカードの出し入れを行い易いよう、装置手前に配置される。
この例においては、長方形状のICカードが長手方向に、操作者によって挿入口1へ挿入される。また、処理が施されたICカードが、同じく長手方向に、挿入口1から排出されるので、この外へ排出されたICカードの部分を掴むことで、操作者はICカードを抜き取ることができる。
搬送モータ2と、複数個の駆動ローラ3と、複数個のピンチローラ4と、は、ICカードを搬送する搬送路を構成するものである。ICカードは、複数個の駆動ローラ3と、複数個のピンチローラ4と、各駆動ローラ3を駆動させる搬送モータ2と、により構成される搬送路を通って、ICカード処理装置100内を往復移動する。
駆動ローラ3とピンチローラ4は互いに対向して搬送路の上下に配置され、それぞれ、摩擦係数が高いゴムローラで構成されている。駆動ローラ3は、搬送モータ2の駆動により、ICカードを正方向(図1中、紙面に対し左向きの方向、すなわちICカード処理装置100の奥側)または負方向(図1中、紙面に対し右向きの方向、すなわちICカード処理装置100の挿入口側)に搬送するように回転する。駆動ローラ3が回転することで、駆動ローラ3と当接するピンチローラ4も併せて同じ方向へ回転する。ICカードは、上下に配置された駆動ローラ3とピンチローラ4との間で、摩擦力により、回転方向へ送り出される。搬送モータ2は、例えば、ステッピングモータが用いられ、後述する制御部21により制御される。以上の仕組みにより、搬送路が構成される。
保留部5は、ICカード処理装置100内にICカードが2枚ある場合に、そのうちの1枚を搬送路から退避させて保持し、もう1枚のICカードを、ICカード処理装置100内で搬送させるための機構である。図示しないソレノイド6を駆動させることで、上下、すなわち搬送路の搬送面と直交する方向に、後述する保留部5の本体55を移動させることで、ICカードの退避及び保持がなされる。
データ処理部7は、ICカードに内蔵されたICチップとの間で非接触通信によるデータ伝送を行い、所定の処理を施すものである。この例では、データ処理部7は、ICカードからデータを読み取る読取処理と、ICカードに対しデータを書き込む書込処理と、ICカードからデータを消去する消去処理と、を行う。なお、読取処理は、読み取ったデータを、装置内部または装置外部の上位システムにある記憶部(図示せず)に保存する。また、書込処理は、保存したデータをこの記憶部から受け取り、ICカードに書き込む。データ処理部7は、後述する制御部21により制御される。
印刷処理部8は、ICカードの表面の定期区間等の表面印字に関する処理を施すものである。この例では、印刷処理部8は、印字ヘッド9と、消字ヘッド10と、を有する。印字ヘッド9は、表面印字を印字する印字処理を施すものである。消字ヘッド10は、印字済みの表面印字を消字する消字処理を施すものである。印刷処理部8は、後述する制御部21により制御される。
なお、印刷処理部8は、消字ヘッド10が省略される場合がある。表面印字を消字する代わりに、印字ヘッド9が表面印字に×印を印刷する場合等である。また、印刷処理部8は、一つのサーマルヘッドが、印字ヘッド9と消字ヘッド10の両方の役割を果たす場合もある。サーマルヘッドが発する熱のエネルギーの高低によって発色、すなわち印字処理と、消色、すなわち消字処理と、の両方が行える場合等である。
ホッパ11と、操出モータ12と、操出ローラ13と、は、集積したICカードを、所定のタイミングに応じて、搬送路へ1枚ずつ繰り出す機構を構成するものである。ホッパ11は、複数枚集積されたICカードを収容するスペースである。この例では、未使用のICカードが集積されている。操出モータ12は、操出ローラ13を負方向(図1中、ICカードを紙面に対し右向きの方向に移動させる方向)に回転させるものである。操出ローラ13は、繰出モータ12の駆動により負方向へ回転し、ホッパ11に集積されたICカードの最下段にあるICカード1枚を、搬送路へ繰り出すものである。
操出モータ12は、例えば、ステッピングモータが用いられ、後述する制御部21により制御される。操出ローラ13は、例えば、摩擦係数が高いゴムローラが用いられる。
第1乃至第7のセンサ14〜20は、ICカード処理装置100内における、ICカードの通過位置を検知するセンサである。各センサは、透過型センサが用いられる。透過型センサは、搬送路の搬送面と直交する方向にそれぞれ所定の距離だけ離れた位置に、投光器と受光器とが上下に対となって設置される。センサが明から暗となると、ICカードが、センサ設置箇所を通過中であることを検知でき、センサが暗から明となると、ICカードが、センサ設置箇所を通過し終えたことを検知できる。また、各センサの検知結果は、後述する制御部21へ入力される。
第1のセンサ14は、操作者がICカード端部を掴んだ状態で挿入口1からICカードを長手方向に挿入した際に、ICカードが所定の長さ分だけ装置内部に挿入された位置に、設置されている。第1のセンサ14は、挿入口1からICカードがこの所定の長さ分だけ挿入されると、明から暗となる。すなわち、第1のセンサ14により、ICカードが挿入されたことが検知される。
また、ICカードを排出する際に、ICカード端部が挿入口1からこの所定の長さ分だけ装置外部へ飛び出る位置にICカードがあるときは、第1のセンサ14が暗であり、操作者によってICカードが抜き取られると、第1のセンサ14が明となる。すなわち、第1のセンサ14により、ICカードが排出され、操作者によって抜き取られたことが検知される。
第2のセンサ15及び第3のセンサ16は、第3のセンサ16が明から暗となり、続いて第2のセンサ15が明から暗となることで、正方向から搬送されてきたICカードが、保留部5の所定の位置まで到達したことを検知できる。
第4のセンサ17及び第5のセンサ18は、第5のセンサ18が明から暗となり、続いて第4のセンサ17が暗から明となることで、正方向から搬送されてきたICカードが、印刷処理部8の所定の位置まで到達したことを検知できる。
第6のセンサ19及び第7のセンサ20は、第7のセンサ20が明から暗となり、続いて第6のセンサ19が暗から明となることで、正方向から搬送されてきたICカードが、データ処理部7の所定の位置まで到達したことを検知できる。また、第6のセンサ19が明から暗となり、続いて第7のセンサ20が暗から明となることで、負方向から搬送されてきたICカードが、データ処理部7の所定の位置まで到達したことを検知できる。
制御部21は、これまでに挙げてきた各部と情報の授受を行い、また、各部の制御を行うものである。詳細については、図8を参照して、後述する。
ここで、図2を参照して、ICカード処理装置100の保留部5について説明する。図2は、ICカード処理装置100の保留部5が待機状態を示す図1のa−a’で示す断面図である。
ICカード処理装置100の保留部5は、下側基板50と上側基板51とを有し、これら下側基板50と上側基板51とは、複数本の支柱52(図2では2本のみ図示)によって、所定の距離離間して支持されている。上側基板51にはU字状のアーム53が固定されており、このU字状アーム53には、駆動ローラ3aのシャフト54が回転自在に支持されている。このシャフト54には、駆動ローラ3aが固定されている。搬送モータ2の回転軸とシャフト54には駆動ベルト(図示せず)が架け渡されており、搬送モータ2を回転することにより、駆動ローラ3aも回転させられる。この駆動ローラ3aの下端が、ICカードの搬送路に対向するようになっている。
支柱52には、保留部5の本体55が摺動自在に固定されている。保留部5の本体55は、搬送路を構成する一対の切欠で構成された第1のガイド部56と、同じく搬送路を構成する一対の切欠で構成された第2のガイド部57とを有している。また、この保留部5の本体55には、ピンチローラ4aのシャフト58が、保留部5の本体55に埋め込まれた状態で、回転自在に支持されている。このピンチローラ4aのシャフト58には、保留部5のピンチローラ4aが固定されている。保留部5の本体55が上方(後述する第1の位置)に位置するとき、ピンチローラ4aの上端が、ICカードの搬送路に対向するようになっている。
駆動ローラ3aと対向してピンチローラ4aが設けられており、搬送路を搬送されてきたICカードはこれらの駆動ローラ3aとピンチローラ4aとで挟持されて搬送されるようになっている。
第1のガイド部56は、第2のガイド部57より、ICカードの搬送面に直交する方向(上下方向)へ距離d1分下方に位置する。
保留部5の本体55は、ソレノイド6(図示せず)の非駆動時は支柱52の外側に実装された第1の圧縮バネ59によって第1の位置に保持され、ソレノイド6の駆動よって第2の位置に移動させられるようになっている。第1のガイド部56と、第2のガイド部57と、シャフト58と、ピンチローラ4aとは、保留部5の本体55と一体となって上下方向に移動する。すなわち、ソレノイド6が非駆動時には第1のガイド部56が搬送路と対向する第1の位置に移動させられ、ソレノイド6が駆動されたときには第2のガイド部57が搬送路と対向する第2の位置に移動させられる。
ソレノイド6が駆動されていないときは、保留部5の本体55が、支柱52の外側に実装された第1の圧縮バネ59により上方である第1の位置にあり、第1のガイド部56が構成する搬送路が、保留部5の駆動ローラ3aの下端及び保留部5のピンチローラ4aの上端が当接する位置にある。保留部5の本体55がこの第1の位置にあるとき、ICカードを駆動ローラ3a及びピンチローラ4aで挟持して搬送可能とする。
第1のICカードが第1のガイド部56に保持された状態でソレノイド6が駆動されると、保留部5の本体55が、第1の位置から、距離d1分降下した第2の位置に移動し、第2のガイド部57が構成する搬送路が、保留部5の駆動ローラ3aの下端が第2のICカードに当接する位置にある。保留部5のピンチローラ4aは、本体55とともに降下するため、第2のICカードは、駆動ローラ3aの摩擦力によってのみ搬送可能とする。
また、保留部5の本体55が第2の位置にあるとき、第1のガイド部56に保持されたICカードは、保留部5のピンチローラ4aの上端が当接し、ICカードを保持可能とする。後述するようにピンチローラ4aは第2の圧縮バネ60によって上方に付勢されているため、ICカードを第1のガイド部56に保持した状態を維持することができる。
なお、第1のガイド部56及び第2のガイド部57の切欠は、挿入されるICカードの幅と同じまたはその幅よりも少し大きい幅を有する。すなわち、ICカードが長手方向に挿入される場合、切欠の端部からもう一方の切欠の端部までの距離d2が、ICカードの短手方向の辺の幅と同じまたはその幅よりも少し大きい値をとる。
以上のように構成されたICカード処理装置100の動作を、ICカードの再発行を例にとって説明する。
ICカード処理装置100の操作者は、劣化や破損したICカードである第1のICカード(ここでは、旧ICカードと称する。)を、挿入口1に、挿入する。旧ICカードが挿入されると、第1のセンサ14が、旧ICカードが挿入されたことを検知する。これに伴い、搬送モータ2は、旧ICカードを正方向へ搬送する。データ処理部7が配置された位置に旧ICカードが到達したことを第7のセンサ20が検知すると、データ処理部7は、旧ICカードに記録されたデータを読み取り、読み取ったデータを記憶部に保存する。
読取処理を終了すると、搬送モータ2は、旧ICカードを負方向へ搬送させる。第2のセンサ15及び第3のセンサ16が、旧ICカードが保留部5の所定の位置へ到達したことを検知する。これに伴い、保留部5は、旧ICカードを保留する。
続いて、旧カードが保留されると、操出モータ12は、ホッパ11から、新規のICカードである第2のICカード(ここでは、新ICカードと称する。)を負方向へ繰り出す。新ICカードが繰り出され、搬送され、データ処理部7が配置された位置に新ICカードが到達したことを第6のセンサ19が検知すると、データ処理部7は、旧ICカードから読み取って保存したデータを、新ICカードに書き込む。
印字処理を終了すると、搬送モータ2は、新ICカードを負方向へ搬送し、新ICカードを挿入口1から排出する。新ICカードが排出され、操作者によって抜き取られたことを第1のセンサ14が検知すると、保留部5は、旧ICカードの保留を解除する。
これに伴い、搬送モータ2は、旧ICカードを正方向へ搬送する。データ処理部7が配置された位置に旧ICカードが到達したことを第7のセンサ20が検知すると、データ処理部7は、旧ICカードに記録されたデータを消去する。
消去処理を終了すると、搬送モータ2は、旧ICカードを負方向へ搬送させる。印刷処理部8に旧ICカードが到達したことを第4のセンサ17が検知すると、印刷処理部8は、印字済みの表面印字を消字する。
消字処理を終了すると、搬送モータ2は、旧ICカードを負方向へ搬送し、旧ICカードを挿入口1から排出する。旧ICカードが排出され、操作者によって抜き取られたことを第1のセンサ14が検知すると、ICカード処理装置100は、ICカードの再発行を終了する。
次に、図2乃至図5を参照して、ICカード処理装置100の保留部5の動作について詳細に説明する。図2は、保留部5が待機状態を示す図1のa−a’で示す断面図である。
ICカード処理装置100内にICカードが1枚も挿入されていないとき、ICカード処理装置100の保留部5は待機状態にあり、ソレノイド6(図示せず)が非駆動状態であるので、本体55は第1の位置にある。このとき、保留部5のピンチローラ4aは、保留部5の駆動ローラ3aに当接する。保留部5のピンチローラ4aは、後述する保留部5の本体55に埋め込まれた第2の圧縮バネ60により、上方向へ付勢されている。
図3は、保留部5が第1のICカードを搬送時の状態を示す図1のa−a’で示す断面図である。
ICカード処理装置100の保留部5を 第1のICカードが通過中のとき、保留部5の本体55は、第1の位置にある。保留部5の本体55が第1の位置にあるとき、保留部5の駆動ローラ3aと保留部5のピンチローラ4aとが接する線が、他の駆動ローラ3とピンチローラ4とにより構成される搬送路の搬送面と略同じ高さに並ぶ。よって、第1のICカードは、第1のガイド部56により構成される搬送路を通過し、装置内を往復搬送される。
このとき、保留部5の駆動ローラ3aと保留部5のピンチローラ4aとが、搬送中の第1のICカードに当接する。保留部5の駆動ローラ3aが正方向(図3中紙面の奥方向)に回転することで、駆動ローラ3aとピンチローラ4aとで挟持された第1のICカードは、正方向に搬送される。また、保留部5の駆動ローラ3aが負方向(図3中紙面の手前方向)に回転することで、第1のICカードは負方向に搬送される。
図4は、保留部が第1のICカードを保留時の状態を示す図1のa−a’で示す断面図である。
第1のICカードを保留部5の本体55の第1のガイド部56に保持した状態でソレノイド6を駆動し、保留部5の本体55が第2の位置に移動した状態にある。保留部5の本体55が第2の位置にあるとき、保留部5の駆動ローラ3aの下端が、第2のガイド部57により構成される搬送路の搬送面と略同じ高さに並ぶ。一方、第1のガイド部56により構成される搬送路は、第1のICカードを第1のガイド部56の切欠間に保持した状態で、搬送路の搬送面の高さから距離d1分降下した位置にある。
またこのとき、保留部5のピンチローラ4aの上端は、第1のガイド部56に保持された第1のICカードに当接し、第1のICカードを、後述する第2の圧縮バネ60により、第1のガイド部56の上側に対して付勢している。この付勢力により、第1のICカードが保持されている間、第1のICカードが上下方向や搬送面内でずれてしまうのを防ぐことができる。
図5は、保留部5が第2のICカードを搬送時の状態を示す図1のa−a’で示す断面図である。
ICカード処理装置100の保留部5に第1のICカードを保留中かつ第2のICカードを保留部5が搬送中であるとき、保留部5の本体55は、第2の位置にある。具体的には、第1のガイド部56に1枚のICカードを保持し、第2のガイド部57が構成する搬送路を第2のICカードが搬送される。
このとき、保留部5の駆動ローラ3aの下端が、第2のICカードと当接する。保留部5の駆動ローラ3aが正方向(図5中紙面の奥方向)に回転することで、駆動ローラ3aの摩擦力により、第2のICカードは正方向に搬送される。また、保留部5の駆動ローラ3aが負方向(図5中紙面の手前方向)に回転することで、駆動ローラ3aの摩擦力により、第2のICカードは負方向に搬送される。
このとき、第2のガイド部57により構成される搬送路は、保留部5の駆動ローラ3aと保留部5のピンチローラ4aとの間で第2のICカードを挟持するのではなく、保留部5の駆動ローラ3aと、第2のガイド部57の切欠の端部下側2箇所とで第2のICカードを支持してICカードを搬送する。
このように、第2のICカードを処理する際、第1のICカードが、第1のガイド部56に保持された状態で、第2のICカードの搬送の妨げにならない位置に退避しているため、ICカード処理装置100内で、2枚のICカードを処理することが可能となる。
ここで、図6を参照して、保留部5のピンチローラ4a及び第2の圧縮バネ60の詳細構造について説明する。図6は、第1のICカードの搬送時の状態及び保留時の状態を示す一部断面図である。
保留部5のピンチローラ4a及び第2の圧縮バネ60は、保留部5の本体55にピンチローラ4aのシャフト58ごと埋め込まれており、本体55の上下移動と一体となって上下方向に移動する。
付勢手段である第2の圧縮バネ60は、保留部5のピンチローラ4aのシャフト58に、上方向への力を付勢するものである。シャフト58は上方に付勢されるが、所定の距離を超えて移動することはない。これにより、保留部5のピンチローラ4aに当接する物に、保留部5のピンチローラ4aを介して、上方向への力が加わる。
図6(a)は、第1のICカードの搬送時の状態(図3参照)を示す一部断面図である。このとき、付勢手段である第2の圧縮バネ60による上方向への力は、保留部5のピンチローラ4aを介して、搬送中のICカードへ付勢される。同時に、高さが固定されている保留部5の駆動ローラ3aが、搬送中のICカードに上から当接している。保留部5の駆動ローラ3a及び保留部5のピンチローラ4aによりICカードは挟持され、所定の高さの搬送面において、搬送される。
図6(b)は、第1のICカードの保留時の状態(図4参照)を示す一部断面図である。このとき、付勢手段である第2の圧縮バネ60による上方向への力は、保留部5のピンチローラ4aを介して、保留中のICカードへ付勢される。また、このとき本体55が第2の位置にあるため、保留中のICカードには、駆動ローラ3aが上から当接しない。このため、ICカードは、第1のガイド部56の切欠の端部上側2箇所へ付勢され、ICカードが上下方向や搬送面内でずれてしまうのを防ぐことができる。
続いて、図7を参照して、ICカード処理装置100が、2枚のICカードに対し処理を実行する流れを説明する。図7は、2枚のICカードの処理の流れの概要を示すフローチャートである。
まず、ICカード処理装置100に第1のICカードが挿入されると、第1のICカードに対する第1の処理が実行される(ステップS1)。ここで、ICカードの再発行を例にとると、第1のICカードとは、旧ICカードに相当する。また、第1の処理とは、旧ICカードのデータの読取処理に相当する。
続いて、第1のICカードに対する保留処理が実行される(ステップS2)。ここで、ICカードの再発行を例にとると、旧ICカードを第1のガイド部56に保持し、第1のガイド部ごと退避する処理に相当する。
次に、ICカード処理装置100内に第2のICカードが投入されると、第2のICカードに対する第2の処理が実行される(ステップS3)。ここで、ICカードの再発行を例にとると、第2のICカードとは、新ICカードに相当する。新ICカードは、ホッパから繰り出されるか、操作者によって挿入されるかによって、ICカード処理装置100内に投入される。また、第2の処理とは、新ICカードのデータの書込処理及び表面印字の印字処理を実行し、新ICカードを排出する処理に相当する。
そして最後に、第1のICカードに対する第3の処理が実行される(ステップS4)。ここで、ICカードの再発行を例にとると、第3の処理とは、旧ICカードの保留を解除して再び搬送し、データの消去処理及び表面印字の消字処理を実行し、旧ICカードを排出する処理に相当する。
以上のステップによれば、第1のICカード(旧ICカード)の挿入及び排出を行う工程が、従来技術では2回必要であったのに対し、1回となり、業務効率が向上する。
ここで、図8のブロック図を参照して、ICカード処理装置100の制御部21が、各部をどのように制御しているかを説明する。
制御部21には、第1乃至第7のセンサ14〜20の検知結果が入力される。また、データ処理部7及び印刷処理部8からは、それぞれ、各種処理が開始した旨や終了した旨等の、処理ステータスが入力される。これらの入力値に応じて、制御部21は、ICカード処理装置100の搬送モータ2と、ソレノイド6と、操出モータ12と、データ処理部7と、印刷処理部8と、を制御する。
次に、図9のフローチャートを参照して、ICカード処理装置100が、ICカードを再発行する流れの詳細を、説明する。図9は、ICカード処理装置100の、ICカード再発行の流れを示すフローチャートである。なお、ここでは、ホッパ11から新ICカードが繰り出される場合を例とする。
まず、制御部21は、第1のセンサ14が明から暗となるかを判定する(ステップS101)。第1のセンサ14が暗となると(ステップS101でYES)、第1のICカードである旧ICカードが操作者によって挿入されたことが分かる。旧ICカードの挿入が検知されると、制御部21は、搬送モータ2を正方向へ駆動し、挿入された旧ICカードを正方向へ搬送する(ステップS102)。
続いて、制御部21は、第7のセンサ20が明から暗となるかを判定する(ステップS103)。第7のセンサ20が明の間(ステップS103でNO)は、搬送モータ2は正方向へ駆動したままである。第7のセンサ20が暗となると(ステップS103でYES)、旧ICカードがデータ処理部7へ到達したことが分かる。旧ICカードがデータ処理部7へ到達したことが検知されると、制御部21は、搬送モータ2の駆動を停止するとともに、データ処理部7に、旧ICカードからの読取処理を実行させる(ステップS104)。ここで読み取ったデータはICカード処理装置100内の記憶部に記憶するか、又は上位装置に送信して上位装置に記憶させる。
ここまでが、制御部21の読取手段による読取処理である。また、図7における、第1の処理S1に相当する。
次に、制御部21は、読取処理が終了したか否かを判定する(ステップS105)。読取処理が終了すると(ステップS105でYES)、制御部21は、搬送モータ2を負方向へ駆動し、旧ICカードを負方向へ搬送する(ステップS106)。
続いて、制御部21は、第2のセンサ15が明から暗となるかを判定する(ステップS107)。第2のセンサ15が明の間(ステップS107でNO)は、搬送モータ2は負方向へ駆動したままである。第2のセンサ15が暗となると(ステップS107でYES)、旧ICカードが保留部5へ到達したことが分かる。旧ICカードが保留部5へ到達したことが検知されると、制御部21は、搬送モータ2の駆動を停止するとともに、ソレノイド6を駆動し、保留部5の本体55を第1の位置から第2の位置へ降下させる(ステップS108)。すなわち、保留部5の第1のガイド部56に旧ICカードを保持させ、搬送路から旧ICカードを退避させる。
ここまでが、制御部21の退避手段による退避処理である。また、図7における、保留処理S2に相当する。
次に、制御部21は、操出モータ12を駆動し、第2のICカードである新ICカードを1枚、搬送路へ繰り出す(ステップS109)。さらに、制御部21は、搬送モータ2を負方向へ駆動し、繰り出された新ICカードを負方向へ搬送する(ステップS110)。
続いて、制御部21は、第6のセンサ19が明から暗となるかを判定する(ステップS111)。第6のセンサ19が明の間(ステップS111でNO)は、搬送モータ2は負方向へ駆動したままである。第6のセンサ19が暗となると(ステップS111でYES)、新ICカードがデータ処理部7へ到達したことが分かる。新ICカードがデータ処理部7へ到達したことが検知されると、制御部21は、搬送モータ2の駆動を停止するとともに、データ処理部7に、旧ICカードから読み取り、記憶しておいたデータの、新ICカードへの書込処理を実行させる(ステップS112)。
ここまでが、制御部21の書込手段による書込処理である。また、図7における、第2の処理S3に相当する。
次に、制御部21は、書込処理が終了したか否かを判定する(ステップS113)。書込処理が終了すると(ステップS113でYES)、制御部21は、搬送モータ2を負方向へ駆動し、新ICカードを負方向へ搬送する(ステップS114)。
続いて、制御部21は、第4のセンサ17が明から暗となるかを判定する(ステップS115)。第4のセンサ17が明の間(ステップS115でNO)は、搬送モータ2は負方向へ駆動したままである。第4のセンサ17が暗となると(ステップS115でYES)、新ICカードが印刷処理部8へ到達したことが分かる。新ICカードが印刷処理部8へ到達したことが検知されると、制御部21は、搬送モータ2の駆動を停止するとともに、印刷処理部8に、新ICカードへの印字処理を実行させる(ステップS116)。
ここまでが、制御部21の印字手段による印字処理である。これもまた、図7における、第2の処理S3に相当する。
次に、制御部21は、印字処理が終了したか否かを判定する(ステップS117)。印字処理が終了すると(ステップS117でYES)、制御部21は、搬送モータ2を負方向へ駆動し、新ICカードを負方向へ搬送する(ステップS118)。
続いて、制御部21は、第1のセンサ14が明から暗となるかを判定する(ステップS119)。第1のセンサ14が明の間(ステップS119でNO)は、搬送モータ2は負方向へ駆動したままである。第1のセンサ14が暗となると(ステップS119でYES)、制御部21は、搬送モータ2をさらに所定ステップ数だけ負方向へ駆動し、所定距離の分、新ICカードを挿入口1に向けて搬送し、所定の位置で停止させる(ステップS120)。これにより、新ICカードが、挿入口1から所定長さの分飛び出た状態となる。
続いて、制御部21は、第1のセンサ14が暗から明となるかを判定する(ステップS121)。すなわち、操作者によって新ICカードが抜き取られたか否かが分かる。
ここまでが、制御部21の第1の排出手段による第1の排出処理である。これもまた、図7における、第2の処理S3に相当する。
次に、第1のセンサが明となると(ステップS121でYES)、新ICカードが抜き取られたことが分かる。新ICカードが抜き取られたことが検知されると、制御部21は、ソレノイド6の駆動を解除し、保留部5の本体55を第2の位置から第1の位置へ上昇させる(ステップS122)。すなわち、旧ICカードの保留を解除する。
続いて、制御部21は、搬送モータ2を正方向へ駆動し、旧ICカードを正方向へ搬送する(ステップS123)。
続いて、制御部21は、第7のセンサ20が明から暗となるかを判定する(ステップS124)。第7のセンサ20が明の間(ステップS124でNO)は、搬送モータ2は正方向へ駆動したままである。第7のセンサ20が暗となると(ステップS124でYES)、旧ICカードがデータ処理部7へ到達したことが分かる。旧ICカードがデータ処理部7へ到達したことが検知されると、制御部21は、搬送モータ2の駆動を停止するとともに、データ処理部7に、旧ICカードへの消去処理を実行させる(ステップS125)。
ここまでが、制御部21の消去手段による消去処理である。また、図7における、第3の処理S4に相当する。
次に、制御部21は、消去処理が終了したか否かを判定する(ステップS126)。消去処理が終了すると(ステップS126でYES)、制御部21は、搬送モータ2を負方向へ駆動し、旧ICカードを負方向へ搬送する(ステップS127)。
続いて、制御部21は、第4のセンサ17が明から暗となるかを判定する(ステップS128)。第4のセンサ17が明の間(ステップS128でNO)は、搬送モータ2は負方向へ駆動したままである。第4のセンサ17が暗となると(ステップS128でYES)、旧ICカードが印刷処理部8へ到達したことが分かる。旧ICカードが印刷処理部8へ到達したことが検知されると、制御部21は、搬送モータ2の駆動を停止するとともに、印刷処理部8に、旧ICカードへの消字処理を実行させる(ステップS129)。
ここまでが、制御部21の消字手段による消字処理である。これもまた、図7における、第3の処理S4に相当する。
次に、制御部21は、消字処理が終了したか否かを判定する(ステップS130)。消字処理が終了すると(ステップS130でYES)、制御部21は、搬送モータ2を負方向へ駆動し、旧ICカードを負方向へ搬送する(ステップS131)。
続いて、制御部21は、第1のセンサ14が明から暗となるかを判定する(ステップS132)。第1のセンサ14が明の間(ステップS132でNO)は、搬送モータ2は負方向へ駆動したままである。第1のセンサ14が暗となると(ステップS132でYES)、制御部21は、搬送モータ2をさらに所定ステップ数だけ負方向へ駆動し、所定距離の分、旧ICカードを挿入口1に向けて搬送し、所定の位置で停止させる(ステップS133)。これにより、新ICカードが、挿入口1から所定長さの分飛び出た状態となる。
続いて、制御部21は、第1のセンサ14が暗から明となるかを判定する(ステップS134)。すなわち、操作者によって旧ICカードが抜き取られたか否かを判定する。第1のセンサ14が明となると(ステップS134でYES)、旧ICカードが抜き取られたことが分かる。
ここまでが、制御部21の第2の排出手段による第2の排出処理である。これもまた、図7における、第3の処理S4に相当する。
これで、再発行の処理を終了する。
(第2の実施形態)
ここで、図10のフローチャートを参照して、第2の実施形態のICカードの再発行をする流れの詳細を説明する。図10は、ICカード処理装置100の、ICカード再発行の流れを示すフローチャートである。なお、ここでは、新ICカードが操作者により挿入される場合を例とする。
制御部21の読取処理(ステップS201〜S208)と、退避処理(ステップS201〜S208)と、印字処理(ステップS214〜S217)と、第1の排出処理(ステップS218〜S222)と、消去処理(ステップS223〜S226)と、消字処理(ステップS227〜S230)と、第2の排出処理(ステップS231〜S235)と、は、図9で説明した処理の流れと同様であるため、説明を省略する。
制御部の書込処理(ステップS209〜S213)は、新ICカードが搬送路上に送り出される手段が異なる。
制御部21の退避処理(〜S208)の後、制御部は、例えば、ICカード処理装置100に併設される図示しない窓口処理装置の画面上に、新ICカードの挿入を促す案内を表示させる(ステップS209)。
続いて、制御部21は、第1のセンサ14が明から暗となるかを判定する(ステップS210)。すなわち、操作者によって新ICカードが挿入口1から挿入されたか否かを判定する。第1のセンサ14が暗となると(ステップS210でYES)、新ICカードが挿入されたことが分かる。新ICカードが挿入されたことが検知されると、制御部21は、搬送モータ2を正方向へ駆動し、挿入された新ICカードを正方向へ搬送する(ステップS211)。
続いて、制御部21は、第7のセンサ20が明から暗となるかを判定する(ステップS212)。第7のセンサ20が明の間(ステップS212でNO)は、搬送モータ2は正方向へ駆動したままである。第7のセンサ20が暗となると(ステップS212でYES)、新ICカードがデータ処理部7へ到達したことが分かる。新ICカードがデータ処理部7へ到達したことが検知されると、制御部21は、搬送モータ2の駆動を停止するとともに、データ処理部7に、新ICカードへの書込処理を実行させる(ステップS213)。
ここまでが、操作者が新ICカードを挿入する場合の、制御部の書込手段による書込処理である。その後の処理は第1の実施形態で説明した動作と同一であるので説明を省略する。
(その他の実施形態)
保留部5は、図1においては、挿入口1と、印刷処理部8との間に配置されているが、搬送路中であれば、ICカード処理装置100内のどこにあってもよい。なお、挿入口1付近は、ICカードがICカード端部から挿入され、ICカード全体が装置内部へ投入されるまで、ICカード1枚分のスペースを要する。同様にして、挿入口1付近は、ICカードがICカード端部から排出され、ICカード全体が装置外部へ抜き取られるまで、ICカード1枚分のスペースを要する。また、印刷処理部8付近は、印刷処理部がICカードを少しずつずらしながら印字処理や消字処理を行うため、ICカード1枚分のスペースを要する。これらの事情を踏まえると、付近にスペースを要する挿入口1と印刷処理部8との間に保留部5を設けることで、元々生じてしまうスペースが有効活用され、省スペース化につながる。
また、データ処理部7は、図1においては、印刷処理部8と、ホッパ11との間に配置されているが、搬送路中であれば、ICカード処理装置100内のどこにあってもよい。
また、印刷処理部8は、図1においては、保留部5と、ホッパ11との間に配置されているが、搬送路中であれば、ICカード処理装置100内のどこにあってもよい。
なお、第1乃至第7のセンサ14〜20は、各部の位置や、ICカードに対し各種処理を行う順番や、ICカードを搬送する方向等によって、省略できるセンサもある。
これまでに説明したICカード処理装置100の保留部5の本体55は、一対の切欠で構成されたガイド部を2つ(第1のガイド部56と第2のガイド部57)有する。これらのうち一つのガイド部をICカードの保留に用い、もう一方のガイド部をICカードの搬送に用いることで、ICカード処理装置100内で同時に2枚のICカードを取り扱える。
実施形態に係るICカード処理装置100は、一対の切欠で構成されたガイド部の数を増やすことで、保留できるICカードの枚数を増やすことができる。例えば、ガイド部を3つ有する保留部5の本体55であれば、うち2つのガイド部はICカードの保留に用いることができ、ICカード処理装置100内で同時に3枚のICカードを取り扱える。
なお、ガイド部の数を増やした場合、ガイド部の数に対応して、保留部5の本体55を異なる位置(第1の位置、第2の位置、第3の位置、等)へ移動可能とするため、上下移動の制御は、ソレノイド6ではなく、ステッピングモータで行う。
従来技術は別の搬送路を設けた保留部を追加していたためICカード処理装置が大型化していたが、本実施形態に係るICカード処理装置100は、保留部5の本体55に設けたガイド部を搬送路の構成とし、容易に搬送路の切替を可能としたことで、同時に2枚のICカードを取り扱える、コンパクトなICカード処理装置100の提供を可能とした。
これにより、例えば、駅務のIC定期券の再発行の際、旧ICカードにデータの読取処理を実行し、新ICカードにデータの書込処理を実行し、旧ICカードにデータの消去処理を実行し、という順番で行われる3つの処理を、旧ICカードの挿入及び排出のセットを2回繰り返すことなく1回で行えるため、業務効率が向上する。また、旧ICカードを新ICカードの処理の後に再度挿入する必要がなくなるため、セキュリティの観点から必須である旧ICカードの廃券を駅係員が忘れてしまうことを防げる。
保留部5そのものは、保留部5の本体55を上下させることで搬送路(ガイド部)を切り替えられ、省スペースである。特に、保留部5が、挿入口1と印刷処理部8との間にある場合、印刷処理部8は、ICカードをずらしながら印字処理や消字処理を行うため、その移動分のスペースを活用でき、より一層省スペース化に寄与できる。
また、保留部5の本体55のガイド部の数を増やすことで、取り扱えるICカードの枚数を増やすことができる。
また、ここでは、駅務のIC定期券の再発行を例にとって説明したが、本実施形態に係るICカード処理装置100が取り扱うICカードは、駅務のICカードに限らず、バス乗車用のICカード、クレジットカード、プリペイドカードや、これらの組み合わせ等であっても良い。また、これらICカードに実行する処理も、再発行に限らず、複数枚のICカードに対して所定のデータの書き換えを行う場合等、種々の態様が想定される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。