燃料噴射弁100は、エンジンのシリンダヘッドに挿入搭載され、コモンレールから供給される燃料をエンジンの各気筒の燃焼室へ直接噴射するものである。
図1,2に示すように、この燃料噴射弁100は、インジェクタボディ1、ロアボディ10、ノズルボディ15、ニードル17、アクチュエータ2、及び駆動部33等より構成される。
ノズルボディ15は、略筒状体に形成され、インジェクタボディ1の図示下側(噴孔側)に、ロアボディ10を介してリテーニングナット18により固定されている。ノズルボディ15には、円柱状のニードル17を摺動自在に収容するガイド孔(ニードル収容室)43と、ニードル17のリフトアップ時に燃料を噴射する噴孔(噴射孔に該当)19等が形成されている。なお、インジェクタボディ1とロアボディ10とノズルボディ15とは本体に該当する。本明細書では、インジェクタボディ1に対するノズルボディ15側(図1の下側)を「下側」、その反対側(図1の上側)を「上側」と呼ぶ。
ガイド孔43は、ノズルボディ15の上端面からノズルボディ15の先端部に向かって穿設され、ガイド孔43内周面とニードル17外周面との隙間により、噴孔19へ高圧燃料を導く第一高圧通路41が形成されている。また、ガイド孔43の途中には、ノズルボディ15の内径が拡大する燃料溜室42が形成されている。
ノズルボディ15内周面のうち第一高圧通路41の先端部分、すなわち噴孔19側の先端部分には円錐状の着座面221が形成されている。ニードル17の先端部には、着座面221に着座するシート面331が形成されている。シート面331が着座面221に着座することにより、噴孔19へ通じる第一高圧通路41をニードル17が閉塞遮断することとなる。
ノズルボディ15には、さらに第一流路44が形成されている。この第一流路44は、第一高圧通路41とロアボディ10内に形成される高圧室(第一室に該当)30とを接続するものである。高圧室30には後述する高圧ポート3より導入された高圧燃料(第一圧力の燃料に該当)が貯蓄されているため、第一流路44を介して第一高圧通路41に高圧燃料が流入する。このため、ニードル17のシート面331が着座面221から離座すると、第一高圧通路41に流入した高圧燃料が噴射される。
ロアボディ10は、略筒状体に形成されており、ノズルボディ15の上端部(噴孔19側とは反対側に面した端部)の一部は、ロアボディ10の内部に入り込んでいる。ロアボディ10の内部にはバルブシリンダ9及び大径ピストン12を収容する高圧室30が形成されている。この高圧室30には第二流路29が接続されており、高圧ポート3から流入した高圧燃料が第二流路29を介して高圧室30に貯蓄される。
大径ピストン12(伝達機構を構成する所定部材に該当)の内部には、押圧室34が形成されている。押圧室34は、ニードル17の一部を収容している。また大径ピストン12には、高圧室30から高圧燃料が流入するように第一連通路26が設けられており、この第一連通路26は押圧室34と接続している。
ニードル17は、小径ピストン部27と押圧部35と円形柱状部45とを備えている。大径ピストン12に設けられている押圧室34の内部には、ノズルスプリング14が収容されている。このノズルスプリング14の内部に、小径ピストン部27が挿入されている。この小径ピストン部27の下端部には押圧部35の上端部が連結しており、押圧部35の下端部は円形柱状部45と連結されている。
押圧室34内の上端側(ノズルスプリング14上側)にはニードルシリンダ(制御室部材に該当)13が設けられている。このニードルシリンダ13は略円筒状に形成され、ニードルシリンダ13の内部に制御室11が形成されている。この制御室11に小径ピストン部27の上端部が挿入されている。小径ピストン部27は、ニードルシリンダ13により摺動自在に支持されている。押圧室34に収容されているノズルスプリング14により、ニードルシリンダ13は噴孔19とは反対方向(上方向)に付勢され、押圧部35は噴孔19方向に付勢される。
ニードル17における押圧部35の下端付近の部分と、大径ピストン12の下部と、ノズルボディ15におけるロアボディ10内に突出した部分とで区画される空間により、油密室16が形成されている。
高圧室30には、下端部が大径ピストン12の上端部と当接可能なように略円筒状のバルブシリンダ9が収容されている。このバルブシリンダ9には、高圧室30に貯蓄されている高圧燃料がバルブシリンダ9内部に流入するように第二連通路28が設けられている。バルブシリンダ9内部にはシリンダスプリング(シリンダ付勢部材に該当)20が設けられている。このシリンダスプリング20により、バルブシリンダ9は噴孔19とは反対方向(図1の上方向)に付勢される。
大径ピストン12には、制御室11とバルブシリンダ9の内部とを接続可能なようにコモンオリフィス25が設けられている。このため、高圧室30に貯蓄されている高圧燃料は、第二連通路28及びコモンオリフィス25を介して制御室11に流入可能となっている。
インジェクタボディ1は略筒状に形成されており、インジェクタボディ1の内部の下部にバルブボディ(弁室部材に該当)8が収容されている。このうちバルブボディ8−bの下端部は、バルブシリンダ9の上端部と当接している。下端部がバルブボディ8−bの上端部と当接しているバルブボディ8−aの内部に、略円筒状のバルブ室(弁室に該当)3−bが形成されている。バルブボディ8−bには、バルブシリンダ9の内部とバルブ室3−bとに連通する孔が形成されている。また、バルブボディ8−aには、低圧室4−bに連通する孔が形成されている。
バルブ室3−b内部には、バルブスプリング(弁体付勢部材に該当)7が収容されている。そして、このバルブスプリング7の内部に制御弁体6の一部が挿入されている。また、バルブスプリング7により、制御弁体6は噴孔19とは反対方向(上方向)に付勢される。制御弁体6は、第二バルブボディ8−b及びバルブシリンダ9により摺動自在に支持されている。制御弁体6は、バルブボディ8及びバルブシリンダ9内に収容されている。
また、制御弁体6内部には、中間室23と呼ばれる燃料が流れる流路が設けられている。この中間室23の下部は制御弁体6の下端部に開口しており、バルブシリンダ9の内部と連通している。制御弁体6の上部はアウトオリフィス24を介すことでバルブ室3−bと接続している。つまり、制御弁体6は中間室23及びアウトオリフィス24を介すことで、バルブシリンダ9の内部とバルブ室3−bとを接続可能としている。また、制御弁体6の下端部と大径ピストン12の上端部との間には隙間が形成されている。このため、高圧室30は第二連通路28を介して制御室11と接続されることになる。
バルブボディ8−aに形成されている孔には、駆動伝達ピン5が挿入されている。この駆動伝達ピン5とバルブボディ8−aに形成されている孔との間には隙間が形成されている。駆動伝達ピン5の下端部には、制御弁体6の上端部が当接している。駆動伝達ピン5の上端部は、バルブボディ8−aから突出している。
インジェクタボディ1の内部には、アクチュエータ2が収容されている。アクチュエータ2の下端部には、鍔部2aが接続されている。鍔部2aは、上記駆動伝達ピン5と接触可能となっている。本実施形態では、アクチュエータ2は多数の圧電素子を積層した積層体(ピエゾ素子)により構成されている。
この構成により、アクチュエータ2が駆動(伸長)すると、アクチュエータ2と接続された鍔部2aが駆動伝達ピン5と接触し、それにより制御弁体6がニードル17方向に移動させられる。
インジェクタボディ1の内部において、バルブボディ8−aと鍔部2aとの間に、低圧室(第二室に該当)4−bが形成されている。低圧室4−bは、低圧通路4に連通している。このため、低圧室4−b内に貯蓄されている低圧燃料(第二圧力の燃料に該当)は低圧室4−bから低圧通路4に流出し、最終的には燃料タンクに排出される。
駆動部33は電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)33−a、電子駆動装置(EDU:Electronic Driving Unit)33−b等から構成されている。ECU33−aは、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等の書換可能な不揮発性メモリ、入出力インタフェース等を中心とするマイクロコンピュータ(マイコン)から主に構成されている。
ECU33−aは、より上位のECUより受信した信号に基づいてROMまたはフラッシュメモリに記憶されている制御プログラムを実行する。これにより、燃料噴射弁100を駆動するための各種制御を実行する。例えば、ECU33−aは、アクチュエータ2の伸縮を制御する制御信号をECU33−bに出力する。
EDU33−bは、アクチュエータ2に印加させる高電圧を発生する高電圧発生回路を備えている。さらに、EDU33−bに備えられた複数のスイッチング素子は、ECU33−aからの制御信号である噴射信号によりON/OFF作動し、アクチュエータ2への電力供給状態を制御する。これにより、EDU33−bは、ECU33−aが出力する制御信号に基づいて、アクチュエータ2の駆動状態を制御する。
従来の直動式の燃料噴射弁では、ニードル17をリフトさせるのに必要な駆動エネルギが大きく、燃料噴射圧の高圧化が制限されていた。この課題を解決するため、本実施形態では、大径ピストン12の下端部とノズルボディ15とニードル17との間に油密室16を設け、大径ピストン12の内部に制御室11を設けた。すなわち、燃料噴射弁100は、直動式の燃料噴射弁に準ずる構成と併せて、油圧サーボ式の燃料噴射弁に準ずる構成を備えている。以下にその作用効果を示す。
図3には、ニードル17の閉弁時及び開弁時の各部材の動作が示されている。ニードル17の閉弁時は、アクチュエータ2は伸長していない為、アクチュエータ2と接続している鍔部2aと駆動伝達ピン5との間に隙間が存在する。この状態では、大径ピストン12と制御弁体6との間には隙間が形成されている。よって、第二連通路28を介して高圧室30より流入した高圧燃料は制御室11及びバルブ室3−bに流入する。これにより、バルブ室3−bにおいて、バルブ室3−b内の燃料圧が増加し、制御弁体6をアクチュエータ2方向に押圧する力が発生する。この制御弁体6をアクチュエータ2方向に押圧する力は、低圧室4−bに貯蓄されている低圧燃料が制御弁体6を噴孔19方向に押圧する力よりも大きいため、制御弁体6はバルブ室3−bのシート部36に着座する。これにより、制御弁体6がシート部36に着座していない場合に生じるシート部36と制御弁体6との間の隙間を塞ぐことができる。このとき、制御弁体6にはバルブスプリング7による制御弁体6をアクチュエータ2方向(上方向)に付勢する付勢力も加わるため、制御弁体6をシート部36に着座させる応答性を高くすることができる。
つまり、バルブ室3−b及び制御室11内の燃料圧は、高圧室30内の高圧燃料の圧力と等しくなる。図4において仮に、制御室11について、小径ピストン部27において制御室11内の燃料の圧力を受ける部分の、ニードル17の移動方向からの投影面積(制御室面積)Sctrlが、ニードル17が噴孔19に露出する部分の、ニードル17の移動方向からの投影面積(露出面積)Sseatよりも大きいように設計されている場合を想定する。この場合、ニードル17に対して下方向から高圧燃料の圧力が作用する部分の、ニードル17の移動方向からの投影面積は、ニードル17に対して上方向から高圧燃料の圧力が作用する部分の投影面積Sctrlよりも大きくなる。このため、制御室11内の燃料の圧力が低下した場合に、ニードル17を噴孔19方向に押圧する力よりもニードル17をアクチュエータ2方向に押圧する力の方が上回り、アクチュエータ2からの油密室16内の燃料を介した力の伝達なしでニードル17が噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に移動するおそれがある。この対策として、本実施形態では、図4に記載されるように制御室面積Sctrlは露出面積Sseatよりも小さいように設計している。これにより、アクチュエータ2から油密室16内の燃料を介した力の伝達を行うまでは、ニードル17が噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に移動しないようにすることができる。
図3に戻り、制御室11内の燃料圧の増加により、ニードル17は噴孔19方向に押圧され、ニードル17のシート面331は着座面221に着座することになる。それに伴って、ニードル17を構成する押圧部35は、油密室16の一部分を押圧する。押圧部35は油密室16内の燃料を押圧することで、油密室16内の燃料の圧力は大径ピストン12の油密室16に面した部分に作用し、大径ピストン12をアクチュエータ2方向(上方向)に移動させる。
ニードル17の開弁時、ECU33−aの駆動信号に基づいてEDU33−bは、アクチュエータ2に対し駆動電圧を供給する。この駆動電圧によりアクチュエータ2は伸長する。これにより、アクチュエータ2と接続している鍔部2aは駆動伝達ピン5と接触し、駆動伝達ピン5が制御弁体6を大径ピストン12に接触させる。制御弁体6が大径ピストン12に接触することで、第二連通路28を介しての制御室11と高圧室30との接続は遮断され、制御室11と制御弁体6内に設けられた中間室23とが接続される。一方で、駆動伝達ピン5が制御弁体6を押し込むことにより、制御弁体6はバルブ室3−bのシート部36から離座し、シート部36と制御弁体6との間に隙間が生じる。これにより、制御室11は接続された制御弁体6内の中間室23を介して低圧室4−bと連通する。よって、アクチュエータ2が非駆動時に高圧室30よりバルブ室3−bへ流入した高圧燃料は、低圧室4−bに流出する。このため、バルブ室3−b内の燃料圧は低下し、制御室11に貯蔵されている高圧燃料はバルブ室3−bを介して低圧室4−bへ流出することになる。よって、制御室11内部の燃料圧が低下し、押圧部35がニードル17を噴孔19方向に押圧する力は小さくなる。
しかし、制御室面積Sctrlは露出面積Sseatよりも小さいために、制御室11がニードル17を噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向へ押圧する力が制御室11内部の減圧により小さくなっても、ニードル17を噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に移動させる力よりもまだ大きい。このため、ニードル17を噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に押圧する力は小さくなっているが、ニードル17のシート面331は着座面221に着座している。
この状態で、制御弁体6は、アクチュエータ2の伸長に伴い大径ピストン12を噴孔19方向に押圧する。これにより、大径ピストン12が接している油密室16内の燃料が押圧され、油密室16内の燃料の圧力は押圧部35の油密室16に面した部分に作用し、押圧部35をアクチュエータ2方向(上方向)に移動させる。これにより、ニードル17はリフト(上昇)を開始する。
本実施形態では図5に記載されるように、大径ピストン12が油密室16内の燃料を押圧する面積Slargeは、油密室16内の燃料が押圧部35を押圧する面積Ssmallよりも大きいように設計する。これにより、大径ピストン12が油密室16を押圧した際の移動量と比べて押圧部35をアクチュエータ2方向に移動させる移動量をより大きくすることが出来る。ひいては、アクチュエータ2の伸長量が小さくても噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向にニードル17を十分に移動させることができる。
このように、本実施形態では、ニードル17が噴孔19からの燃料噴射を停止させる方向へ押圧される力を低減した状態で、ニードル17に噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向への直動式の力を生じさせている。このため、図6に示すように、従来の直動式の燃料噴射弁と比較してニードル17を開弁するのに必要なエネルギは少なくてすむ。
ECU33−aは、アクチュエータ2に充電するための充電制御モードを複数有している。本実施形態では、これら充電制御モードとして、アクチュエータ2に充電を開始してからニードル17が噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に移動するために必要な充電エネルギに到達する時期としての充電エネルギ到達時期が互いに異なる直動アシストモード(第一充電制御モードに該当)及び油圧サーボモード(第二充電制御モード)を有している。
以下、ECU33−aが実行する図7の燃料噴射弁100の噴射率波形制御の制御内容を説明する。図7に示す燃料噴射弁100の噴射率波形制御は、ECU33−aが電源オンしている期間中にECU33−aによって所定周期で繰り返し実行される。
本制御が起動されると、まずステップS100にて、より上位のECUから受信した噴射信号及び運転条件の読み込みを行う。噴射信号とは、燃料の噴射量、噴射時期、噴射期間、及び噴射率を指定するための信号である。これらは、そのときの車両の運転条件に依存するものである。具体的には、ECU33−aよりも上位のECUにより、エンジン回転速度やアクセル開度等のエンジン運転情報に基づいて最適な燃料の噴射量及び噴射時期が求められる。また、その噴射量とコモンレール内の燃料圧とに応じた燃料噴射率(弁開度)及び噴射期間が決定される。ECU33−aは、これらの情報をより上位のECUから受信する。
ステップS110では、ステップS100で受信した噴射信号に応じて、直動アシストモードを実施すべきか否かを判定する。具体的には、立ち上がり角度が所定値よりも大きい(高矩形の)噴射率を噴射信号が指定している場合には、直動アシストモードを実施する。一方で、立ち上がり角度が所定値よりも小さい(低矩形の)噴射率を噴射信号が指定している場合には、油圧サーボモードを実施する。
直動アシストモードを実施すべきであると判定した場合には(S110:YES)、ステップS120に進み、直動アシストモードを実施し、本制御を終了する。直動アシストモードを実施しないと判定した場合には(S110:NO)、ステップS130に進み、油圧サーボモードを実施して、本制御を終了する。
次に、図8を参照して直動アシストモード及び油圧サーボモードの動作を説明する。なお、ここでは、直動アシストモードにおいても、油圧サーボモードにおいても、アクチュエータ2に充電する期間を一定としている。
図8において、「噴射指令」は燃料噴射を実施することを指令する噴射信号を受信したか否かをハイ/ローで表すものである。「充電エネルギ」はアクチュエータ2に充電されたエネルギ量を示している。「バルブリフト」は制御弁体6がどれだけリフトしたかを表している。「制御室圧」は、制御室11内の燃料圧を示している。「ニードルリフト」は、ニードル17がどれだけリフトしたかを表している。「噴射率」は、燃料噴射弁100から噴射された燃料の噴射率を表している。
本実施形態では、アクチュエータ2に蓄積される充電エネルギがニードル開弁エネルギEndlに達することと、制御室11内の燃料圧がリターン圧にまで減圧されること、これら二つの条件が達成されることで、ニードル17が噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向(上昇)に移動を開始する。
まず、直動アシストモードを説明する。噴射指令がローからハイに切り替わると(時間t1参照)、アクチュエータ2に充電が開始される。そしてアクチュエータ2への充電エネルギがバルブ開弁エネルギ(接続実施エネルギに該当)Evlvに達すると、制御弁体6はアクチュエータ2の伸長により下降を開始する(時間t2参照)。そして、制御弁体6が下降を完了すると、制御弁体6内部に設けられた中間室23と制御室11とが接続され、制御室11と高圧室30との接続が遮断される(時間t3参照)。これにより、制御室11内に貯蔵されている高圧燃料が中間室23及びバルブ室3−bを介して低圧室4−bに排出され、制御室11が減圧を始める。そして、時間経過により制御室11内の圧力がリターン圧(所定圧に該当)にまで達すると減圧を完了する(時間t4参照)。
その後、アクチュエータ2への充電エネルギがニードル開弁エネルギEndlに達すると(時間t5参照)、ニードル17は噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に移動する(上昇する)。このとき、充電期間は終わっていないために、充電期間が終わるまでアクチュエータ2への充電エネルギは依然上昇を続け、その上昇に伴いニードル17の上昇速度もまた増加することになる。直動アシストモードにおける矩形度の大きさの具体例は図9に記載されており、直動アシストモードにおける噴射は例えばメイン噴射に適用される。
次に、油圧サーボモードを説明する。噴射指令がローからハイに切り替わると(時間t1参照)、アクチュエータ2に充電が開始される。そしてアクチュエータ2への充電エネルギがバルブ開弁エネルギEvlvに達すると、制御弁体6はアクチュエータ2の伸長により下降を開始する(時間t6参照)。そして、制御弁体6が下降を完了すると、制御室内の燃料圧が下降し始める(時間t7参照)。
アクチュエータ2への充電エネルギがバルブ開弁エネルギEvlvに達してから充電期間の終了までに、アクチュエータ2への充電エネルギがニードル開弁エネルギEndlに到達するように充電速度を高める(時間t6〜t8参照)。このとき、アクチュエータ2への充電エネルギがニードル開弁エネルギEndlに到達しても、制御室11の燃料圧がリターン圧にまで減圧していない為、ニードル17は上昇を開始しない(時間t8参照)。その後、制御室11の燃料圧がリターン圧まで減圧を完了すると、ニードル17は上昇を開始する(時間t9参照)。このとき、アクチュエータ2に最終的に充電される最終充電エネルギは、直動アシストモードにおける最終充電エネルギよりも少ないため、ニードル17の上昇速度は直動アシストモードよりも低く、噴射率の矩形度も小さい。油圧サーボモードにおける矩形度の大きさの具体例は図9に記載されており、油圧サーボモードにおける噴射は例えばパイロット噴射に適用される。
直動アシストモードにおいて、アクチュエータ2への充電エネルギがバルブ開弁エネルギEvlvに到達するとしてのバルブ開弁エネルギ到達時期(接続実施エネルギ到達時期に該当)は、油圧サーボモードにおいてのバルブ開弁エネルギ到達時期よりも早くなるように設定されている。制御室11の減圧速度はどちらも同じ速度であるため、直動アシストモードにおいて制御室11室内の燃料圧が減圧完了する時期(時間t4参照)は、油圧サーボモードにおいて制御室11室内の燃料圧が減圧完了する時期(時間t9参照)よりも早くなる。
上記構成により、本実施形態に係る燃料噴射弁100及びECU33−aは、以下の効果を奏する。
・アクチュエータ2が伸長した状態において、制御室11に貯蔵された燃料が制御弁体6を介して低圧室4−bに排出され、制御室11が減圧される。このため、噴孔19からの燃料噴射を停止させる方向へニードル17を押圧する力が低減される。この状態で、アクチュエータ2が伸長することで制御弁体6を変位させる力を、大径ピストン12により、ニードル17に噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向の力として伝達させる。したがって、制御室11の減圧により噴孔19からの燃料噴射を停止させる方向へニードル17を押圧する力が低減されているため、大径ピストン12によってニードル17に伝達させる噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向の力を従来よりも小さくすることができる。その結果、直動式の燃料噴射弁の利点を得つつ、ニードル17をリフトさせるのに必要なアクチュエータ2への充電エネルギを小さくし、燃料噴射圧の高圧化を容易とすることが可能となる。
・ニードル17の小径ピストン部27において制御室11内の燃料の圧力を受ける部分の、ニードル17の移動方向からの投影面積Sctrlは、ニードル17が噴孔19に露出する部分の、ニードル17の移動方向からの投影面積Sseatよりも小さいように設計されている。このため、制御室11内の燃料の圧力が低下しても、ニードル17に噴孔19からの燃料噴射を停止させる方向の力が作用し、ニードル17が上昇することを抑制する事が可能となる。
・バルブスプリング7により制御弁体6が低圧室4−bの方向に付勢されている。これにより、制御弁体6を低圧室4−bの方向に付勢させることで、制御弁体6により低圧室4−bとバルブ室3−bとの接続を遮断する応答性、及び動作の安定性を向上させることが可能となる。さらに、アクチュエータ2が非駆動時に、制御弁体6を低圧室4−bの方向に付勢させることで、低圧室4−bとバルブ室3−bとの接続をより確実に遮断することが可能となる。
・コモンオリフィス25により制御室11に流入してくる燃料の燃料流入量が規定され、かつ制御室11から流出する燃料の燃料流出量が規定される。これにより、コモンオリフィス25を備えていない燃料噴射弁100と比較して、制御室11の圧力の増減速度を調節することが可能となる。ひいては、ニードル17のリフト速度を調節することが可能となる。
・アウトオリフィス24により、制御室11から中間室23を介してバルブ室3−bに流出する燃料の燃料流出量が規定される。これにより、例えば高圧室30から供給される燃料供給量と比較して燃料流出量を少なく規定することで、制御室11の減圧速度を低くし、噴射率が低矩形である燃料噴射の実施を容易とすることが可能となる。
・バルブボディ8と共に、制御弁体6と高圧室30とを分離するように設けられた略円筒状のバルブシリンダ9が備わっている。これにより、高圧室30からバルブシリンダ9の外周面に圧力がかかる。したがって、バルブシリンダ9の内周面にかかる圧力によりバルブシリンダ9と制御弁体6との隙間が大きくなることが抑制される。ひいては、バルブ室3−b内の燃料圧力が低下した際に、バルブシリンダ9内の燃料がバルブ室3−bに漏れるリーク量の増加を抑制することが可能となる。
・シリンダスプリング20によりバルブシリンダ9をアクチュエータ2方向に付勢させる。これにより、アクチュエータ2が駆動時に、高圧室30とバルブ室3−bとを遮断し易くなる。
・ニードル17における押圧部35の下端付近の部分部と、大径ピストン12の下部と、ノズルボディ15におけるロアボディ10内に突出した部分とで区画される空間により、油密室16が形成されている。このような構成の為、アクチュエータ2の駆動力を油密室16内の燃料を介して大径ピストン12に伝達し、ニードル17をリフトさせることが可能となる。
・大径ピストン12において油密室16内の燃料を押圧する部分の面積Slargeが、油密室16内の燃料が押圧室34を押圧する部分の面積Ssmallよりも大きくなるよう設計されている。このため、アクチュエータ2の伸長量に対して、ニードル17のリフト量を大きくすることが可能となる。
・アクチュエータ2はピエゾ素子で構成される。これにより、磁歪素子などと比較して、応答性高く且つコンパクトに形成することが可能となる。
・ECU33−aは、アクチュエータ2に充電を行う充電制御モードを二つ有している。このうち、直動アシストモードでは、制御室11内の燃料圧がリターン圧に達する時期(減圧完了時期)よりも充電エネルギ到達時期が遅く設定されている。ニードル17は、アクチュエータ2に蓄積される充電エネルギと制御室11の圧力との双方の条件が満たされることで、噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に移動する。よって、充電エネルギ到達時期に達した時点で、ニードル17により噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に移動させることができる。また、油圧サーボモードでは、充電エネルギ到達時期が減圧完了時期よりも早く設定されている。よって、減圧完了時期に達した時点で、ニードル17により噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に移動させることができる。
・直動アシストモードは油圧サーボモードよりも最終充電エネルギが大きくなるように設定されている。このため、直動アシストモードでは、ニードル17による噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向の力の大きさが油圧サーボモードよりも大きくなる。よって、直動アシストモードでは、油圧サーボモードよりも噴射率が高矩形な燃料噴射を実施することが可能となる。
・直動アシストモードにおいて、バルブ開弁エネルギ到達時期は、油圧サーボモードにおいてのバルブ開弁エネルギ到達時期よりも早くなるように設定されている。バルブ開弁エネルギEvlvに到達するまでの時間が短くなれば、その差分だけ早く制御室11の減圧を実施することが可能となる。
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。
・アクチュエータ2は、ピエゾ素子で構成されていた。このことについて、例えば磁歪素子で構成されてもよい。
・上記実施形態では、シリンダスプリング20により、バルブシリンダ9はアクチュエータ2方向に付勢されることとしていた。このことについて、シリンダスプリング20はなくてもよい。その場合であっても、アクチュエータ2が駆動時に、制御室11を減圧することはできる。
・上記実施形態では、バルブスプリング7により、制御弁体6は低圧室4−b側に付勢されることとしていた。このことについて、バルブスプリング7はなくてもよい。その場合であっても、高圧室30より中間室23を介してバルブ室3−bに流入する高圧燃料により、制御弁体6を閉じる力が作用する。
・ニードル17の小径ピストン部27において制御室11内の燃料の圧力を受ける部分の、ニードル17の移動方向からの投影面積Sctrlは、ニードル17が噴孔19に露出する部分の、ニードル17の移動方向からの投影面積Sseatよりも小さいように設計されている。このことについて、例えば投影面積Sctrlは投影面積Sseatと等しいように設計してもよい。その場合であっても、制御弁体6により大径ピストン12が押されなければ、ニードル17は噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に移動しない。あるいは、投影面積Sctrlは投影面積Sseatよりも大きいように設計してもよい。この場合、制御室11の減圧によってニードル17が開弁してしまうおそれがあるが、ニードル17をリフトさせるのに必要なアクチュエータ2への充電エネルギを更に小さくすることが可能となる。
・大径ピストン12には、燃料の流入量及び流出量を規定するコモンオリフィス25が設けられていた。このことについて、コモンオリフィス25を設けず、中間室23と同程度の断面積の通路としてもよい。この場合でも、アクチュエータ2に最終的に充電される充電エネルギの大きさを制御することで、ニードル17のリフト速度を調節することができる。
・制御弁体6には、中間室23を流れる燃料を規定するアウトオリフィス24が設けられていた。このことについて、アウトオリフィス24が設けず、中間室23と同程度の断面積の通路としてもよい。この場合でも、アクチュエータ2に最終的に充電される充電エネルギの大きさを制御することで、噴射率の立ち上がり角度を低く調節することができる。
・大径ピストン12が油密室16内の燃料を押圧する部分の面積Slargeは、油密室16内の燃料が押圧室34を押圧する部分の面積Ssmallよりも大きいように設計されていた。このことについて、例えば、大径ピストン12が油密室16内の燃料を押圧する部分の面積Slargeは、油密室16内の燃料が押圧室34を押圧する部分の面積Ssmallと等しく又は小さくしてもよい。その場合は、押圧部35が油密室16内の燃料により押圧される力(つまり、ニードル17を噴孔19が開く方向に移動させる力)を増加させることができる。すなわち、アクチュエータ2が大径ピストン12を駆動するのに必要な力を小さくすることができる。
・ECU33−aは、アクチュエータ2に充電を開始してからニードル17が噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に移動するために必要な充電エネルギに到達する時期としての充電エネルギ到達時期が互いに異なる直動アシストモード及び油圧サーボモードを有していた。このことについて、それ以外にも充電制御モードを有していてもよい。
・直動アシストモードにおいても、油圧サーボモードにおいても、アクチュエータ2に充電する期間は一定としていた。このことについて、アクチュエータ2に最終的に充電される最終充電エネルギが、直動アシストモードの方が油圧サーボモードよりも大きくなるならば、直動アシストモードと油圧サーボモードとでアクチュエータ2に充電する期間が互いに異なっていてもよい。
・直動アシストモードにおいて、バルブ開弁エネルギ到達時期は、油圧サーボモードにおいてのバルブ開弁エネルギ到達時期よりも早くなるように設定されていた。このことについて、アクチュエータ2に最終的に充電される最終充電エネルギが、直動アシストモードの方が油圧サーボモードよりも大きくなるならば、バルブ開弁エネルギ到達時期を油圧サーボモードよりも遅く設定しなくてもよい。
・上記実施形態では、油密室16内の燃料を介してニードル17を押圧する構成に代えて、例えば高圧室30内にて大径ピストン12及び押圧部35の直下にてこ部材を設けてもよい。この場合、アクチュエータ2が駆動すると、制御弁体6が大径ピストン12をニードル17方向に押圧することになる。それにより大径ピストン12がてこ部材の一端を押圧し、他端がてこの原理により押圧部35をアクチュエータ2方向に持ち上げるように動く。これにより、ニードル17が噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に移動することが可能となる。
・上記実施形態では、バルブスプリング7とノズルスプリング14とシリンダスプリング20とは、スプリング(ばね)で構成していた。このことについて、その他の弾性部材(例えばゴム)で構成してもよい。
・噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向へニードル17が移動する場合に、その移動量が、最大移動量よりも低く設定される第一所定量よりも大きくなることで、小径ピストン部27のアクチュエータ2側の端面と、該端面と対向する大径ピストン12の内面と、が当接するように設計してもよい。このように設計されることで、小径ピストン部27のアクチュエータ2側の端面と、該端面と対向する大径ピストン12の内面と、が当接して以降は、アクチュエータ2の駆動力が大径ピストン12を介してニードル17に直接伝達される。つまり、アクチュエータ2の伸縮を制御することで、ニードル17の移動を制御することが可能となる。
本別例の構成では、アクチュエータ2の伸縮に応じて制御弁体6がニードル17方向又はアクチュエータ2方向に移動する。この移動の際に、低圧室4−bと高圧室30とがバルブ室3−bを介して連通する期間が発生し、高圧室30に存在する燃料が低圧室4−bに流れる(以下、スイッチングリークと呼称)おそれがある。これは、多段噴射を実施する場合に、幾度となく低圧室4−bと高圧室30とがバルブ室3−bを介して連通する期間が発生し、大量のスイッチングリークが生じる可能性があり、特に問題である。
したがって、多段噴射を行う場合に、初段噴射時は、制御室11内の燃料圧力が減圧されることでニードル17をアクチュエータ2方向に移動させる。そして、ニードル17が第一所定量を超えて大きくなることで、小径ピストン部27のアクチュエータ2側の端面が該端面と対向する大径ピストン12の内面と当接した当接状態となる。以降の最終噴射を除く燃料噴射では、該当接状態を維持しつつ、アクチュエータ2の伸縮駆動により大径ピストン12を介してニードル17の移動量が直接調節される。最終噴射時は、制御室11内の燃料圧力が増圧されることで、ニードル17が噴孔19方向に移動される。
これにより、初段噴射と最終段噴射とを除く燃料噴射では、制御弁体6をアクチュエータ2が押圧することでニードル17のアクチュエータ2側の端面が大径ピストン12と当接した状態を維持している。この期間、制御弁体6は、低圧室4−bとバルブ室3−bと制御室11とを接続し且つ高圧室30と制御室11とを遮断しているため、スイッチングリークを大幅に抑制することができる。
・上記実施形態では、アクチュエータ2の下端部に鍔部2aが接続され、鍔部2aの下端部は、駆動伝達ピン5と接触可能となっていた。このことについて、図10に記載されるように、鍔部2aと駆動伝達ピン5との間に、更に変位拡大室50が形成されてもよい。
具体的な構成を詳述する。アクチュエータ2の下端部に接続された鍔部55と、バルブシリンダ9を収容するバルブボディ8と、の間に形成される低圧室4−bの内部に、変位拡大機構51を設けている。変位拡大機構51は、固定部材52と、支持シリンダ53と、ピンスプリング54と、第二シリンダスプリング57と、を備えている。
支持シリンダ53はバルブボディ8の上方に設けられている。支持シリンダ53の上部は、アクチュエータ2の下端部に接続された鍔部55の下部を摺動可能に支持しており、支持シリンダ53の下部は駆動伝達ピン56の上端部を含めた一部を摺動可能に支持している。支持シリンダ53の上端部は、固定部材52により摺動可能に支持されている。この固定部材52の上端面は、アクチュエータ2全体を収容するハウジング部材58と当接している。支持シリンダ53の外周には、第二シリンダスプリング57が設けられている。この第二シリンダスプリング57は、上端が固定部材52と当接した状態で、支持シリンダ53を、支持シリンダ53の下端がバルブボディ8と当接する方向に付勢している。
駆動伝達ピン56は、中径部56−aと、大径部56−bと、小径部56−cと、で構成される。
中径部56−aは、駆動伝達ピン56の上端部を含む部分であり、下端部が大径部56−bの上端部と連結している。また、中径部56−aの外径は、鍔部55下部の外径よりも小さく構成されている。支持シリンダ53は、中径部56−aの上端部を含む一部を摺動可能に支持している。
大径部56−bは、上端部が中径部56−aの下端部と連結しており、下端部が小径部56−cの上端部と連結している。また、大径部56−bの外径は、中径部56−a及び小径部56−cの外径よりも大きく、より具体的には鍔部55下部の外径と同一に構成されている。大径部56−bは、支持シリンダ53により摺動可能に支持されている。
小径部56−cは、上端部が大径部56−bの下端部と連結している。また、小径部56−cの外径は、中径部56−aの外径よりも小さく構成されている。小径部56−cの下端部は、バルブボディ8に挿入されており、制御弁体6の上端部と当接可能となっている。
支持シリンダ53は、中径部56−aの上端部を含む一部を摺動可能に支持するため、中間部の内径が上部の内径及び下部の内径よりも小さく形成されている。このとき、大径部56−bの上端部と、中径部56−aの外周面と、支持シリンダ53の下部の内周面とで、空間が形成される。形成された空間には、ピンスプリング54が設けられている。このピンスプリング54により、駆動伝達ピン56は噴孔19方向に付勢される。
鍔部55の下端部と駆動伝達ピン56の上端部とは、対向する関係にある。また、鍔部55の下端部と、駆動伝達ピン56の上端部(中径部56−aの上端部)と、支持シリンダ53の上部の内周面と、で区画される空間により、変位拡大室50が形成されている。このとき、鍔部55の下端部の外径と中径部56−aの外径との関係により、鍔部55において変位拡大室50内の燃料を押圧する部分の面積が、変位拡大室50内の燃料が駆動伝達ピン56を押圧する部分の面積よりも大きく構成される。
上記構成によれば、鍔部55において変位拡大室50内の燃料を押圧する部分の面積が、変位拡大室50内の燃料が駆動伝達ピン56を押圧する部分の面積よりも大きく設計される。このため、パスカルの定理により、アクチュエータ2の駆動力を変位拡大室50内の燃料を介して駆動伝達ピン56に伝達した際における、アクチュエータ2の伸長量に対しての駆動伝達ピン56の変位量を大きくすることが可能となる。
・上記実施形態では、大径ピストン12の内部に、押圧室34が形成されており、押圧室34は、ニードル17の一部を収容していた。このことについて、図11に示すように、押圧室34は、ニードル17の一部を収容するほか、第二シリンダ60が収容されていてもよい。
ニードル17の構成は、上記実施形態に準じた構成となっている。具体的には、押圧室34の内部に収容されるノズルスプリング14の内部に、小径ピストン部27が挿入されている。この小径ピストン部27の下端部には押圧部35の上端部が連結しており、押圧部35の下端部は円形柱状部45と連結されている。
本別例では、押圧部35の下端部は、当接部材64の上端部と当接している。当接部材64は、円形柱状部45を囲う様に設けられており、下端部はノズルボディ15に挿入されている。
押圧室34内にはニードル17を囲うように第二シリンダ60が収容されている。第二シリンダ60の下部の内周面には、円形柱状部45方向に突出した環状の凸部60aが形成されている。
一方で、当接部材64の上部の外周面には、第二シリンダ60方向に突出した環状の凸部64aが形成されている。このため、ニードル17が噴孔19からの燃料噴射を停止させている状態(ニードル17のシート面331が着座面221に着座している状態)では、当接部材64の凸部64aと第二シリンダ60の凸部60aとが、ニードル17の軸方向で対向している。第二シリンダ60の凸部60aの内周面と当接部材64の外周面との間には、隙間が形成されている。
ロアボディ10と、大径ピストン12の下部と、第二シリンダ60の下部と、当接部材64と、ノズルボディ15の上端と、で油密室61が区画される。また、アクチュエータ2が縮んだ状態では、当接部材64により第二シリンダ60が噴孔19方向に押圧され、第二シリンダ60のアクチュエータ2側の端部と、大径ピストン12における該端部に対向する面との間に第一隙間62が形成される。
大径ピストン12には、高圧室30から高圧燃料が流入するように第一連通路26が設けられており、第二シリンダ60には第一連通路26を介して燃料が流入することが可能なように第三連通路63が設けられている。このように構成することで、第一連通路26と第三連通路62とが接続すると、高圧室30から押圧室34に燃料が流入する。
本別例において、アクチュエータ2が縮んだ状態では、第二シリンダ60のアクチュエータ2側の端部と、大径ピストン12における該端部に対向する面との間には第一隙間62が存在している。したがって、図12左図に記載されるように、アクチュエータ2が伸長した場合、第二シリンダ60は、大径ピストン12により油密室16内の燃料を介してアクチュエータ2の駆動力が伝達されることで、第一隙間62が埋まるまでニードル17と共にアクチュエータ2方向へと移動される。このとき、当接部材64の凸部64aと第二シリンダ60の凸部60aとは当接した状態となっている。しかし、第一隙間62が埋まると、図12中央図に記載されるように、第二シリンダ60は大径ピストン12によりアクチュエータ2方向に押圧される。これにより、第二シリンダ60の凸部60aは、当接部材64の凸部64aと離間し、大径ピストン12と共に油密室16内の燃料を押圧し、油密室16内の燃料を介してニードル17にアクチュエータ2の駆動力を伝達させる。
アクチュエータ2短縮時には、図12右図に記載されるように、アクチュエータ2により制御弁体6を押圧する力が消失するために、バルブスプリング7により、制御弁体6はアクチュエータ2方向に付勢される。これにより、制御弁体6が大径ピストン12を押圧する力もまた消失するため、押圧室34に収容されているノズルスプリング14により、ニードルシリンダ13を介して大径ピストン12はアクチュエータ2方向に付勢される。また、制御弁体6が大径ピストン12と離間することで、高圧室30と制御室11とが接続され、高圧室30から制御室11内へ燃料が流入し、制御室11内の圧力が高くなる。これにより、ニードル17は噴孔19方向へ移動し、押圧部35が当接部材64を噴孔19方向へ押圧することで、当接部材64の凸部64aが第二シリンダ60の凸部60aと当接する。そして、当接部材64が第二シリンダ60を噴孔19方向に押圧することで、第二シリンダ60もまた噴孔19方向に移動する。これにより、第二シリンダ60のアクチュエータ2側の端部と、大径ピストン12における該端部に対向する面との間には第一隙間62が形成される。
このような構成とすることで、大径ピストン12単体でニードル17を噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向へ移動させる状態から、アクチュエータ2の駆動力を増加させてニードル17に伝達させる状態へ変化させることができる。
本別例について、大径ピストン12のみで油密室16内の燃料を押圧する場合の変位拡大率αが、第二シリンダ60が大径ピストン12と共に油密室16内の燃料を押圧する場合の変位拡大率α’よりも小さくなるように構成すると、顕著な効果を期待できる。具体的には、図13に記載されるように、大径ピストン12において油密室16内の燃料を押圧する部分の面積S1を、第二シリンダ60及びニードル17において油密室16内の燃料により押圧される部分の総面積S2で割った商が、変位拡大率αに該当する。そして、大径ピストン12及び第二シリンダ60において油密室16内の燃料を押圧する部分の総面積S1’を、大径ニードルにおいてアクチュエータ2側へ油密室16内の燃料により押圧される部分の面積S2’で割った商が変位拡大率α’に該当する。上記により算出される変位拡大率αが変位拡大率α’よりも小さくなるように構成する。
上記構成とすることで、大径ピストン12単体で油密室16内の燃料を押圧した場合のニードル17のアクチュエータ2側への移動量を少なくすることが出来る。その一方で、大径ピストン12及び第二シリンダ60の両方で油密室16内の燃料を押圧した場合のニードル17のアクチュエータ2側への移動量を多くすることが可能となる。また、大径ピストン12単体で油密室16内の燃料を押圧した場合のニードル17への駆動力を大きくすることが出来る。その一方で、大径ピストン12及び第二シリンダ60の両方で油密室16内の燃料を押圧した場合のニードル17への駆動力を小さくすることが可能となる。
・上記実施形態では、図2に示すように、ニードル17における押圧部35の下端付近の部分と、大径ピストン12の下部と、ノズルボディ15におけるロアボディ10内に突出した部分とで区画される空間により、油密室16が形成されていた。この場合、制御室11内の燃料圧力が減圧されるなどしてニードル17がアクチュエータ2方向に移動すると、油密室16内の容積が増加し油密室16内の燃料の圧力が低下する(図14上図参照)。油密室16内の燃料の圧力の低下に伴い、大径ピストン12が油密室16内の燃料の圧力の低下を抑制する方向に移動するため、制御弁体6による高圧室30と制御室11との遮断が解除されるおそれがある。この場合、制御室11内の燃料の圧力が増加し、噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向へのニードル17の移動が抑制される。
この対策として、図14下図に記載されるように、下部がノズルボディ15の内周面により密閉状態で支持され、上部が大径ピストン12の内周面により密閉状態で支持され、軸方向に移動する第三シリンダ70が備えられてもよい。具体的には、ノズルボディ15におけるロアボディ10内に突出した部分(以下、突出部と呼称)は、ニードル17に面する側面(内周面)において、軸方向とは直交する方向に段差状に凹んだ段差部が二段形成されている。このうち、ニードル17側且つ噴孔19側の段差部を第一段差部73と呼称し、ノズルボディ15の突出部上端側の段差部を第二段差部74と呼称する。
第三シリンダ70の下端部は、第一段差部73と当接可能となっている。大径ピストン12と、第三シリンダ70と、ノズルボディ15と、で油密室72が形成される。油密室72内には、上端部が第三シリンダ70の上部と、下端部が第二段差部74と当接している第三シリンダスプリング71が収容されており、第三シリンダ70をアクチュエータ方向に付勢している。
本別例の燃料噴射弁の動作を以下に説明する。アクチュエータ2が縮んだ状態では、制御室11内の燃料の圧力が高いため、ニードル17は噴孔19方向に移動し、噴孔19への燃料の流出を遮断している。この際、ニードル17は第三シリンダ70を押圧しており、第三シリンダ70が油密室72を押圧する力が大径ピストン12に伝達されるため、大径ピストン12はアクチュエータ2方向に移動している。
アクチュエータ2が伸長することで、制御弁体6により大径ピストン12が押圧される。大径ピストン12が油密室72を押圧する力が第三シリンダ70を介して、第三シリンダ70の上端面と当接しているニードル17に伝達されることで、ニードル17はアクチュエータ2方向に移動する。
このような構成とすることで、例え制御室11の減圧によりニードル17が噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に移動しても、油密室72はニードル17から隔離されているため、油密室72内の燃料の圧力に影響はない。したがって、あくまで大径ピストン12の移動に依存して油密室72内の燃料の圧力に変化が生じるため、ニードル17の移動の安定化を図ることが可能となる。
・上記実施形態において、図2に示すように、制御弁体6は、第二バルブボディ8−b及びバルブシリンダ9により摺動自在に支持されていた。このことについて、バルブシリンダ9は必要不可欠な構成ではなく、例えば図15に記載されるように、バルブシリンダ9を排除し、制御弁体6を二つに分割した構成としてもよい。
具体的には、制御弁体6は、第二室接続部材80と第一室接続部材81とで構成されている。第二室接続部材80は、第二バルブボディ8−bにより摺動自在に支持されている。第二室接続部材80の上端部は、駆動伝達ピン5の下端部と当接しており、第二室接続部材80の下端部は第一室接続部材81の上端部と当接可能に形成されている。
また、第一室接続部材81の周囲を大径ピストン86の上部が囲う様に大径ピストン86が構成されており、更に大径ピストン86の周囲に第一ピストンスプリング82が設けられている。この第一ピストンスプリング82は、第二バルブボディ8−bと固定部材88とを離間させるように付勢している。
第一ピストンスプリング82は、上端部が第二バルブボディ8−bに取り付けられ、下端部は後述の固定部材88の段差部88−aに取り付けられている。固定部材88の下端部は、後述の第二ロアボディ10−aと当接している。また、固定部材88の外周面において、段差状に凹んだ段差部88−aが形成されている。
第二ロアボディ10−aは、ロアボディ10内に収容され、且つ、ノズルボディ15の上端部と当接し、円形柱状部45の上部を摺動可能に支持している。第二ロアボディ10−aの外周面と、ロアボディ10の内周面とは、離間しており、また、第二ロアボディ10−aの下部には、高圧燃料連通路10−bが形成されている。したがって、高圧室30内の燃料は、高圧燃料連通路10−bを介して第一高圧通路41へと流入する。
大径ピストン86の下部の外径は上部の外径よりも小さく形成されている。また、大径ピストン86の下部は、固定部材88により摺動可能に支持されている。
第一ピストンスプリング82と、大径ピストン86の下部と、固定部材88の上端部と、の間に形成される空間には第二ピストンスプリング87が設けられている。この第二ピストンスプリング87は、大径ピストン86をアクチュエータ2方向に付勢させており、大径ピストン86の内周面に形成された環状の凸部86aと第一室接続部材81とを当接させている。したがって、アクチュエータ2が縮んでいる状態では、ニードルシリンダ13の上端部と、大径ピストン86の凸部86aの下端部と、の間に第二隙間89が存在する。
大径ピストン86の内部には押圧室34が形成されている。この押圧室34内の構成は上記実施形態と同様の構成であり、また、高圧室30から高圧燃料が流入するように大径ピストン86に第一連通路26が設けられていることもまた、上記実施形態と同様の構成である。
大径ピストン86の下端部と、ニードル17における押圧部35の下端付近の部分と、固定部材88と、第二ロアボディ10−aの上端部と、で油密室16が形成される。
第一室接続部材81の下端部は、一部がニードルシリンダ13の上面から離れるように、且つ別の一部がニードルシリンダ13と当接するように構成されている。本別例では、ニードルシリンダ13と当接する第一室接続部材81の下端部を底辺として、第一室接続部材81の略中央に頂点が設けられるように円錐状の空洞部84が形成される。このため、第一室接続部材81の下端部がニードルシリンダ13と当接している状態では、制御室11は空洞部84を含むことになり、制御室11の容積が増大することになる。
第一室接続部材81の内部には、第一中間室85と呼ばれる燃料が流れる流路が設けられている。この第一中間室85の下部は、第三コモンオリフィス85−aを介して、空洞部84の頂点にて開口している。また、第一中間室85の上部は第一室接続部材81の上端部に開口しており、第二室接続部材80の下端部と第一室接続部材81の上端部とが離間している場合には、第一中間室85及び第三コモンオリフィス85−aとを介して高圧室30と空洞部84とが接続する。
第二室接続部材80の内部には、第二中間室83と呼ばれる燃料が流れる流路が設けられている。この第二中間室83の下部は、第二室接続部材80の下端部に開口しており、第二室接続部材80の上部はアウトオリフィス24を介すことでバルブ室3−bと接続している。したがって、第二室接続部材80の下端部と第一室接続部材81の上端部とが離間している場合には、第二中間室83及びアウトオリフィス24を介して高圧室30とバルブ室3−bとが接続する。第二室接続部材80の下端部と第一室接続部材81の上端部とが当接している場合には、第二中間室83を介しての高圧室30とバルブ室3−bとの接続と、第一中間室85及び第三コモンオリフィス85−aを介しての高圧室30と空洞部84との接続と、をそれぞれ遮断する。その一方で、アウトオリフィス24と第二中間室83と第一中間室85と第三コモンオリフィス85−aとを介して、空洞部84とバルブ室3−bとが接続する。
本別例の構成では、制御室11の減圧によりニードル17が噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に移動すると、油密室16内の燃料の圧力が低下する。油密室16内の燃料の圧力の低下に伴い、第一室接続部材81が噴孔19の方向へ移動すると、第二室接続部材80と第一室接続部材81とが離間し、制御室11と高圧室30とが接続するおそれがある。制御室11と高圧室30とが接続されると、制御室11内の燃料の圧力が増加し、噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向へのニードル17の移動が抑制される。ここで、大径ピストン86と第一室接続部材81とは、第二ピストンスプリング87により当接させられているだけである。このため、油密室16内の燃料の圧力が低下すると、大径ピストン86が噴孔19の方向へ移動し、油密室16内の燃料の圧力の低下を抑制することができる。
ただし、大径ピストン86が油密室16内の燃料の圧力の低下を抑制する方向に移動すると、その際にニードルシリンダ13を押圧するおそれがある。この対策として、ニードルシリンダ13の上端部と、大径ピストン86の凸部86aの下端部と、の間には第二隙間89が存在している。このような構成とすることで、仮に大径ピストン86が油密室16内の燃料の圧力の低下を抑制する方向に移動しても、その第二隙間89が埋まるまでは、大径ピストン86によりニードルシリンダ13が押圧されることはない。また、第一室接続部材81と大径ピストン86とは独立した構成であるため、大径ピストン86の移動に応じ第一室接続部材81が移動することはない。したがって、大径ピストン86は第一室接続部材81やニードルシリンダ13に影響を与えることなく、油密室16内の圧力低下を抑制する事が可能となる。
本別例について、噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向へのニードル17の最大移動量を変位拡大率で割ることで算出される大径ピストン86の最大移動量よりも第二隙間89の幅が大きくなるように設計されてもよい。
大径ピストン86が油密室16内の燃料を押圧する部分の面積を、ニードル17において油密室16内の燃料により噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に押圧される部分の面積で割る。これにより算出された商は、大径ピストン86の移動量に対して、ニードル17が噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向へどれほど移動するか、その変位拡大率に該当する。したがって、大径ピストン86の移動量と変位拡大率との積から、噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向へのニードル17の移動量が算出できる。このことから、噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向へのニードル17の移動量を変位拡大率で割ることで、大径ピストン86の移動量を算出できることが分かる。一方で、ニードル17の噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向への移動量が最大となった時に、大径ピストン86の噴孔19方向への移動量が最大となる。以上を踏まえ、噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向へのニードル17の最大移動量を変位拡大率で割ることで算出される大径ピストン86の最大移動量よりも第二隙間89の幅が大きくなるように設計される。これにより、大径ピストン86がニードルシリンダ13方向に最大限移動した場合に、大径ピストン86とニードルシリンダ13とが接触する可能性を低くすることが可能となる。
・上記実施形態では、図16に記載されるように、制御室11の上端部から小径ピストン部27の上端部にかけて、その面積は同一となるように形成されていた。この場合、アクチュエータ2が伸長し、高圧室30と制御室11とが遮断され、制御弁体6が低圧室4−bとバルブ室3−bと制御室91とが接続されることで、制御室11内の燃料がバルブ室3−bを介して低圧室4−bに流出する。このことについて、アクチュエータ2が伸長した場合に制御室11から燃料が流出する経路を、中間室23とアウトオリフィス24とを介す経路以外に別経路を設けてもよい。その例を、以下に複数挙げる。
[1]図17に記載されるように、ニードルシリンダ90の上端部を制御室91に露出するように構成してもよい。このとき、制御室91内のニードルシリンダ90の上端面において、大径ピストン112に当接しない部分が形成されるように構成する。このように構成することで、制御室91の上端面の径ds(面積)が、制御室91の下端面の径dc(面積)よりも大きく設計される。これにより、制御室91内の燃料の圧力が大きくなると、制御室91内の燃料圧力によりニードルシリンダ90を噴孔19方向へ移動させる力が発生する。
このような構成において、アクチュエータ2の伸長により制御弁体6が低圧室4−bとバルブ室3−bと制御室91とを接続し且つ高圧室30と制御室91とが遮断された際に、ニードル17又は制御弁体6により制御室91が圧迫され、制御室91内の燃料の圧力が上昇する。上昇した燃料の圧力は、図18上図に示されるように高圧室30内の燃料の圧力よりも高くなる期間が生じ、図19に記載されるように制御室91に露出しているニードルシリンダ90の上端部が噴孔19方向へ押圧されることになる。これにより、ニードルシリンダ90が噴孔19方向に移動し、そこから制御室91の燃料が漏れることになり、制御室91内の燃料の圧力を速やかに減圧することが可能となる。ひいては、図18下図に示されるように、上記実施形態と比較してニードル17のアクチュエータ2方向への移動速度を速くすることが可能となる。
[2]図20に記載される構成においても、ニードルシリンダ110の上端部は制御室111に露出している。ただし、大径ピストン112の上端面において、外縁部は大径ピストン112と当接し、内縁部は大径ピストン112と当接しないように形成される。つまり、ニードルシリンダ110の上端面は、外径側から内径側に向かって傾斜して形成される。また、大径ピストン112には高圧室30と接続されている第二アウトオリフィス113が設けられている。この第二アウトオリフィス113は、ニードルシリンダ110の上端部が大径ピストン112と当接した状態で、制御室111との接続が遮断される。一方で、ニードルシリンダ110の上端部が大径ピストン112と離間した状態となることで、第二アウトオリフィス113を介して制御室111と高圧室30とが接続される。
制御室111内の燃料の圧力が高圧室30の燃料圧力よりも高くなると、制御室111に露出しているニードルシリンダ110のアクチュエータ2側の端面が噴孔19方向に押圧される。これにより、ニードルシリンダ110が噴孔19方向に移動することで、ニードルシリンダ110の上端面が大径ピストン112と離間した状態となり、第二アウトオリフィス113を介して、制御室111と高圧室30とが接続される。この場合、図21に記載されるように、制御弁体6内に形成された中間室23及びアウトオリフィス24を介して制御室111の燃料が流出するとともに、第二アウトオリフィス113を介して、制御室111内の燃料を高圧室30に流出させることが可能となる。
また、制御室111内の燃料が減圧される場合には、ニードルシリンダ110がアクチュエータ2側に移動される。これにより、ニードルシリンダ110の上端部が大径ピストン112と当接した状態となり、ニードルシリンダ110により第二アウトオリフィス113と制御室111とが遮断される。したがって、第二アウトオリフィス113を介して高圧室30から制御室111に燃料が流入する可能性は低く、制御室111内の燃料圧力をスムーズに減圧することが可能となる。
[3]図22に記載されるように、大径ピストン120には、コモンオリフィス25の他に、制御室11と高圧室30とを接続する第二コモンオリフィス121が形成されている。このような構成とすることで、例えば、ニードル17が噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向へ移動する速度を低くする場合(低速開弁制御時)、アクチュエータ2の伸長量を少なく制御する。したがって、ニードル17又は制御弁体6により制御室11内の燃料圧力が高圧室30内の燃料圧力よりも高くなるほど制御室11が圧迫されない。このため、図23の左図に記載されるように制御室11の減圧に伴い高圧室30から第二コモンオリフィス121を通じて、高圧室30内の燃料が制御室11に流れるため、制御室11の減圧速度を遅く調節することが可能となる。一方で、ニードル17が噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向へ移動する速度を高くする場合には(高速開弁制御時)、アクチュエータ2を大きく伸長させることで、ニードル17及び制御弁体6の少なくとも一方が制御室11を圧迫する。これにより、制御室11内の燃料の圧力が高くなり、図23右図に記載されるように第二コモンオリフィス121を介して制御室11から高圧室30に燃料が流れることになる。このため、速やかに制御室11内の燃料を減圧することが可能となる。
本別例の構成において、低速開弁制御を実施した場合と高速開弁制御を実施した場合とで、そのニードル17のアクチュエータ2方向への移動量(ニードルリフト量)を比較した結果を図24上図に、噴射率を比較した結果を図24下図に示している。図24上図の結果によれば、高速開弁制御を実施した場合の方が低速開弁制御を実施した場合と比較して、より早期に最大リフト量に達していることが分かる。また、高速開弁制御を実施した場合の方がより早期に最大リフト量に達しているため、図24下図においても、早い段階から噴射率が低速開弁制御を実施した場合よりも高くなっている。
[3]において、第二コモンオリフィス121は大径ピストン120に形成されていた。このことについて、必ずしも第二コモンオリフィス121は大径ピストン120に形成される必要はなく、例えば、図25(a)に示されるように、ニードルシリンダ122に制御室11と高圧室30とを接続する第二コモンオリフィス121を形成してもよい。または、図25(b)に記載されるように、制御弁体123内において、中間室23と高圧室30とを接続する第二コモンオリフィス121を形成してもよい。あるいは、図25(c)に記載されるように、ニードル124を構成する小径ピストン部126の内部に第二中間室127と呼ばれる燃料が流れる流路を設ける。この第二中間室127の上部は小径ピストン部126の上端部に開口しており、制御室11と連通している。また、小径ピストン部126には第二中間室127の下部と高圧室30とを接続する第二コモンオリフィス121を設ける。このような構成によっても、小径ピストン部126は第二中間室127と第二コモンオリフィス121とを介すことで、制御室11と高圧室30とが接続される。
<別例1>上記実施形態において、図2に示すように、制御弁体6の上端部は低圧室4−bとバルブ室3−bとの接続関係を制御し、制御弁体6の下端部はバルブ室3−bと制御室11と高圧室30との接続関係を制御していた。このような構成では、制御弁体6が傾いたり軸ずれが生じたりすると、例えばアクチュエータ2が縮んだ状態での低圧室4−bとバルブ室3−bとの遮断や、アクチュエータ2が伸びた状態での高圧室30と制御室11との遮断が正常に実施できないおそれがある。この対策として、図26に記載されるように、制御弁体130を着座部131と摺動部132とで構成してもよい。この場合、着座部131の下端面が摺動部132の上端面と当接するように構成される。
着座部131の上端部は駆動伝達ピン5の下端部が当接している。アクチュエータ2が縮んだ状態では、着座部131の上端部はバルブ室3−bのシート部36に着座している。
摺動部132の内部には、第三中間室133と呼ばれる燃料が流れる流路が設けられている。この第三中間室133の下部は摺動部132の下端部に開口しており、バルブシリンダ9の内部と連通している。また、摺動部132には第三中間室133の上部とバルブ室3−bとを接続する第三アウトオリフィス134が形成されている。つまり、摺動部132は第三中間室133及び第三アウトオリフィス134を介すことで、バルブシリンダ9の内部とバルブ室3−bとを接続可能としている。
別例1における構成とすることで、着座部131の下端面が摺動部132の上端面と当接した状態で軸方向に移動することになり、一方に軸ずれが生じても、もう一方がその動きと連動することはないため、その影響を抑制する事が可能となる。
別例1について、図27に記載されるように、図27に記載されるように、アクチュエータ2が縮んだ状態でバルブ室3−bのシート部36と接する着座部131の面を球面状に形成してもよい。この場合、着座部131が仮に傾いても、バルブ室3−bのシート部36と接する面を球面状とすることで、その傾きを吸収することができる。ひいては、アクチュエータ2が縮んだ状態で低圧室4−bとバルブ室3−bとを遮断し、且つ、高圧室30とバルブ室3−b及び制御室11とを接続する状態を安定して維持することが可能となる。
別例1では、着座部131の下端面が摺動部132の上端面と当接するように構成されていた。このことについて、着座部131の下端部と摺動部132の上端部とが隙間のある状態で互いに凹凸嵌合するように構成してもよい。その例を、以下に挙げる。
[4]図28に記載されるように、着座部131の下端部中央には、アクチュエータ2方向に段差状に凹んだ凹み部が設けられている。そして摺動部132の上端部中央には、着座部131方向に突出した凸部が設けられている。このとき、着座部131に形成された凹み部の横幅は摺動部132に形成された凸部の横幅よりも広くなるように形成されており、着座部131の下端部と摺動部132の上端部とが隙間のある状態で互いに凹凸嵌合している。このような構成とした場合に、図29に記載されるように、アクチュエータ2が伸長してからニードル17が噴孔19を開弁する方向に移動するまでにおける全体の基準軸から摺動部132の軸がずれる軸ずれが生じる場合を想定する。この場合、摺動部132の上端部に設けられた凸部が着座部131に設けられた凹み部と接触しない範囲で、着座部131に摺動部132の軸ずれの影響が及ぶことを抑制する事が可能となる。
[4]の構成を用いた別例として、図30に示される構成が挙げられる。[4]では、制御弁体130を着座部131と摺動部132とで構成し、着座部131の下端部中央には、アクチュエータ2方向に段差状に凹んだ凹み部が設けられ、摺動部132の上端部中央には、着座部131方向に突出した凸部が設けられていた。図30では、制御弁体140を、着座部141と摺動部142と第二着座部143とで構成する。このような構成では、摺動部142の下端部中央に噴孔19方向に突出した凸部が設けられており、第二着座部143の上端部中央に噴孔19方向に段差状に凹んだ凹部が設けられている。このとき、第二着座部143の上端部中央に設けられた凹み部の軸方向と直交する方向の幅は、摺動部142の下端部中央に設けられた凸部の同一方向の幅よりも広くなるように形成されている。この状態で、摺動部142の下端部と第二着座部143の上端部とが隙間のある状態で互いに凹凸嵌合している。一方で、摺動部142の上端部と着座部141の下端部とは、[4]にて示した構成と同様の構成となっている。したがって、アクチュエータ2の伸縮に応じて、摺動部142の下端部と第二着座部143の上端部とが、摺動部142の上端部と着座部141の下端部とが、それぞれ凹凸嵌合した状態で軸方向に移動する。
アクチュエータ2が伸長することで、第二着座部143は大径ピストン12と当接する。この大径ピストン12と当接する第二着座部143の面を球面上に形成する。そして、第二着座部143の下端部が大径ピストン12の上端部と密着するように、第二着座部143の下端部が当接すると想定される大径ピストン12の上端部の所定箇所に、第二着座部143の下端部の形に対応するシート部材144を設ける。このとき、大径ピストン12内に形成されたコモンオリフィス25内を流れる燃料の流れを妨げないように配慮して、シート部材144はコモンオリフィス25の制御弁体140側の開口部を塞がぬように一部空洞化する。
図30に記載される構成とすることで、[4]にて記載した効果のみならず、アクチュエータ2が伸長した状態で、低圧室4−bとバルブ室3−bと制御室11とを接続し且つ高圧室30と制御室11とを遮断する状態を安定して維持することが可能となる。
[5]図31に記載されるように、着座部131の下端部中央には、摺動部132方向に突出した凸部が設けられており、摺動部132の上端部中央には、噴孔19方向に凹んだ凹部が設けられた構成としてもよい。このような構成では、[4]の別例と同様に、着座部131の下端部と摺動部132の上端部とが隙間のある状態で互いに凹凸嵌合しており、[4]の別例に記載の効果と同様の効果を奏すことが可能となる。
図32に記載されるように、着座部150の下端部の面積よりも摺動部151の上端部の面積が広くなるように形成し、更に摺動部151の上端部の外縁部に着座部150方向に突出した環状の凸部151aを設けてもよい。この凸部151aの内周面と着座部150の外周面との間には隙間が存在する。したがって、摺動部151に軸ずれが生じても、摺動部151の上端部に設けられた凸部151aの内周面が着座部150の外周面と接触しない範囲で、着座部150に摺動部151の軸ずれの影響が及ぶことを抑制する事が可能となる。
別例1では、制御弁体130を着座部131と摺動部132とで構成していた。このことについて、上記摺動部132と、上記大径ピストン12と、上記ニードルシリンダ13と、を、図33に記載されるように一体化して構成してもよい。一体化して設けられる部材を一体化部材162と呼称し、その具体的な構成を以下に記述する。
ノズルボディ160の上端面とロアボディ161の下端面とは、当接した状態でリテーニングナットなどにより固定されている。ロアボディ161の内部には、一体化部材162の一部と固定部材163と油密室形成部材164とを収容する高圧室169が形成されている。この高圧室169には第二流路176が接続されており、高圧燃料が第二流路176を介して高圧室169に貯蓄される。
高圧室169内部に収容される一体化部材162の内部には、押圧室165が形成されている。押圧室165は、ニードル17(上記実施形態に準じた構成)の一部を収容している。また一体化部材162には、高圧室169から高圧燃料が流入するように第四連通路166が設けられており、この第四連通路166は押圧室165と接続している。
押圧室165内の上端側には制御室167と呼ばれる、ニードル17と一体化部材162とで区画される空間が形成されている。また、一体化部材162には、高圧室169と制御室167とを接続する第二コモンオリフィス121([3]にて記述した第二コモンオリフィス121と同様の構成)が形成されている。
固定部材163は、一体化部材162の周囲を囲むように設けられており、第四連通路166に高圧室169の燃料が流入するように、複数の第五連通路175が設けられている。また、固定部材163の下端部は、油密室形成部材164(図15に記載の固定部材88と同様の構成)の段差部164−aに取り付けられており、油密室形成部材164が軸方向に移動しないように、油密室形成部材164を固定している。固定部材163の上端部は、バルブシリンダ174に取り付けられている。
ニードル17における押圧部35の下端付近の部分と、一体化部材162の下端部と、油密室形成部材164と、ノズルボディ160と、で区画される空間により、油密室168が形成されている。
ロアボディ161及びバルブシリンダ174の上端部は、バルブボディ170の下端部と当接している。バルブボディ170の内部に、略円筒状のバルブ室170−bが形成されている。バルブ室170−bには、バルブスプリング171が収容されている。そして、このバルブスプリング171の内部に一体化部材162の一部がバルブシリンダ174を介して挿入されている。また、バルブシリンダ174により、一体化部材162は摺動可能に支持されている。バルブスプリング171は、一体化部材162をアクチュエータ2方向に付勢している。
一体化部材162内部には、第四中間室172と呼ばれる燃料が流れる流路が設けられている。この第四中間室172の下部は制御室167と接続している。一体化部材162の上部は第四アウトオリフィス173を介すことでバルブ室170−bと接続している。つまり、一体化部材162は第四中間室172及び第四アウトオリフィス173を介すことで、制御室167とバルブ室170−bとを接続している。
バルブ室170−b内には、一体化部材162よりもアクチュエータ2側に、[4]に記載の別例に準じる構成の着座部131が設けられている。具体的には、着座部131の上端部は、駆動伝達ピン5と当接しており、アクチュエータ2が縮んだ状態ではバルブ室170−bのシート部170−cに着座している。また、着座部131の下端部中央には、アクチュエータ2方向に段差状に凹んだ凹部が設けられている。一方で、一体化部材162の上端部中央には、着座部131方向に突出した凸部が設けられている。このとき、凹部の軸方向と直交する方向の幅は一体化部材162の凸部の同一方向の幅よりも広くなるように形成されており、着座部131の下端部と一体化部材162の上端部とが隙間のある状態で互いに凹凸嵌合している。このとき、一体化部材162の凸部の高さH(軸方向の幅)は、アクチュエータ2が伸長することで変位する一体化部材162の最大変位量Lよりも大きくなるように設計する。これにより、着座部131と一体化部材162との凹凸嵌合が外れる可能性を低くすることができる。
図33に示される構成における動作を説明する。ニードル17の低速開弁制御時には、アクチュエータ2が伸長することで、駆動伝達ピン5により着座部131が押され、バルブ室170−bのシート部170−cから着座部131が離間する。これにより、低圧室4−bとバルブ室170−bとが接続され、制御室167内の燃料が第四中間室172及び第四アウトオリフィス173を介してバルブ室170−bに流出される。また、油密室168内の燃料が、一体化部材162により加圧される。これにより、ニードル17はアクチュエータ2方向に移動を開始する。アクチュエータ2の駆動を停止しても、一体化部材162は噴孔19の方向に移動可能である。このとき、第二コモンオリフィス121を介して、高圧室169から制御室167に燃料が流入するため(図23左図と同様の動作)、制御室167内の燃料の減圧速度は低下するため、ニードル17のアクチュエータ2方向への移動速度は低速となる。
ニードル17の高速開弁制御時には、アクチュエータ2が伸長することで、駆動伝達ピン5により着座部131が押され、バルブ室170−bのシート部170−cから着座部131が離間する。これにより、低圧室4−bとバルブ室170−bとが接続され、制御室167内の燃料が第四中間室172及び第四アウトオリフィス173を介してバルブ室170−bに流出される。その一方で、アクチュエータ2は伸長をし続けており、一体化部材162により油密室168が押圧され、ニードル17がアクチュエータ2方向に移動する。ニードル17がアクチュエータ2方向に移動することで、制御室167が圧迫される。このとき、制御室167内の燃料がバルブ室170−bに流出することで制御室167内の燃料圧力が減圧する速度よりも、ニードル17により制御室167が圧迫されることで上昇する制御室167内の圧力上昇速度の方が高くなる。これにより、制御室167内の燃料圧力が高圧室169の燃料圧力よりも高くなることで、制御室167からバルブ室170−bへと流出する経路とは別に、第二コモンオリフィス121を介して制御室167内の燃料が高圧室169に流出する(図23右図と同様の動作)。これにより、制御室167内の燃料の減圧速度が上昇し、それに伴って、ニードル17はアクチュエータ2方向に高速で移動する。
上記実施形態のように、ニードル17における押圧部35の下端付近の部分と、大径ピストン12の下部と、ノズルボディ15におけるロアボディ10内に突出した部分とで区画される空間により、油密室16が形成される場合を想定する。この場合、制御室11の減圧によりニードル17が噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向に移動すると、油密室16内の容積が増加し、油密室16内の燃料の圧力が低下する。このとき、図33に記載されるような一体化部材162の構成でなければ、油密室16内の燃料の圧力の低下に伴い、大径ピストン12のみが油密室16内の燃料の圧力の低下を抑制する方向に移動する。このため、制御弁体6による高圧室30と、制御室11との遮断が解除されるおそれがある。しかし、図33に記載される一体化部材162を備える構成であれば、一体化部材162の軸方向の移動に伴って制御室11もまた移動する。したがって、一体化部材162の移動に伴って制御室11と高圧室30とが接続することがないため、高圧室30内の燃料が制御室11に漏れることを抑制する事が可能となる。
上記実施形態において、図2に示すように、制御弁体6内部には、中間室23とアウトオリフィス24が形成され、中間室23及びアウトオリフィス24を介すことで、制御弁体6はバルブシリンダ9の内部とバルブ室3−bとを接続可能としていた。このことについて、図34に記載されるように、制御弁体192内において、フリーピストン180と呼ばれる制御弁体192内を軸方向に移動可能なピストンを設けてもよい。具体的な構成を以下に記述する。
ロアボディ181の内部にはバルブシリンダ182及び大径ピストン183を収容する高圧室184が形成されている。この高圧室184には第二流路185が接続されており、高圧燃料が第二流路185を介して高圧室184に貯蓄される。
大径ピストン183の内部には、押圧室186が形成されている。押圧室186は、ニードル200の一部を収容している。また大径ピストン183には、高圧室184から高圧燃料が流入するように第一連通路187が設けられており、この第一連通路187は押圧室186と接続している。
ニードル200は、小径ピストン部201と係合部材201−aとリークバルブ202と押圧部203と円形柱状部204とを備えている。押圧部203と円形柱状部204とは一体であり、その他の部材はそれぞれ別体になっている。大径ピストン183に設けられている押圧室186の内部には、ノズルスプリング14が収容されている。このノズルスプリング14の内部に、小径ピストン部201が挿入されている。
押圧部203の上端部の中央には、凹部203−aが形成されている。凹部203−aの中央には、小径ピストン部201側に突出するように凸部203−bが形成されている。押圧部203の上端部内周には、円筒状の係合部材201−aが係合している。押圧部203の凹部203−aの内部には、リークバルブ202及びバルブスプリング205が収容されている。リークバルブ202は、バルブスプリング205によりアクチュエータ2方向へ付勢されている。これにより、リークバルブ202は、小径ピストン部201及び係合部材201−aの下端部に当接している。そして、リークバルブ202と押圧部203の凸部203−bとの間には隙間が形成されている。
押圧部203の下端部は円形柱状部204と連結されている。
押圧室186内の上端側には、ニードルシリンダ13が設けられている。このニードルシリンダ13は略円筒状に形成され、押圧室186に収容されているノズルスプリング14により、ニードルシリンダ13はアクチュエータ2方向に付勢され、押圧部203は係合部材201−aを介して噴孔19方向に付勢される。
また、ニードルシリンダ13の内部に制御室11が形成されている。この制御室11に小径ピストン部201の上端部が挿入されている。小径ピストン部201は、ニードルシリンダ13により摺動自在に支持されている。小径ピストン部201の内部には燃料が流れる第一リーク通路206が形成されており、小径ピストン部201の上部及び下部に開口している。また、係合部材201−aには、第二リーク流路207が形成される。第二リーク流路207は、一方はノズルスプリング14側の押圧室186に対して開口しており、他方はリークバルブ202側の押圧室186に対して開口している。バルブスプリング205によりアクチュエータ2方向に付勢されたリークバルブ202の上端部が小径ピストン部201の下端部と当接することで、リークバルブ202側の押圧室186から第二リーク流路207への燃料の流入は遮断される。
ニードル17における押圧部35の下端付近の部分と、大径ピストン12の下部と、ノズルボディ15におけるロアボディ10内に突出した部分とで区画される空間により、油密室16が形成されている。
高圧室184には、大径ピストン183よりもアクチュエータ2側に略円筒状のバルブシリンダ182が収容されている。また、バルブシリンダ182と大径ピストン183との間には、シリンダスプリング188が設けられている。このシリンダスプリング188により、バルブシリンダ182はアクチュエータ2方向に付勢され、大径ピストン183は噴孔19方向に付勢される。
ロアボディ181の上端部は、バルブボディ190の下端部の一部と当接している。バルブボディ190の下端部は、シリンダスプリング188によりアクチュエータ2方向に付勢されたバルブシリンダ182の上端部とも当接している。バルブボディ190の内部には、略円筒状のバルブ室191が形成されている。バルブボディ190には、バルブシリンダ182の内部とバルブ室191とに連通する孔が形成されている。また、バルブボディ190には、低圧室4−bに連通する孔が形成されている。
バルブ室191内部には、制御弁体192の一部が挿入されている。制御弁体192は、バルブシリンダ182により摺動自在に支持され、制御弁体192の下端部はシリンダスプリング188の内部に露出している。つまり、制御弁体192は、バルブボディ190とバルブシリンダ182とシリンダスプリング188との内部に収容されている。
大径ピストン183の上端部中央には、シリンダスプリング188の内部に突出するように凸部が形成されている。この凸部の上端部の面積は、制御弁体192の下端部の面積よりも小さくなるように形成されている。そして、大径ピストン183の上端部に形成された凸部と、シリンダスプリング188と、の間に形成された空間に弁体スプリング193が設けられている。この弁体スプリング193により、制御弁体192はアクチュエータ2方向に付勢され、大径ピストン183は噴孔19方向に付勢される。
このため、アクチュエータ2が縮んだ状態では、シリンダスプリング188及び弁体スプリング193により大径ピストン183が噴孔19方向に付勢されることで、制御弁体192の下端部と大径ピストン183の上端部中央に形成された凸部とは離間している。また、アクチュエータ2が伸長することで、制御弁体192の下端部と大径ピストン183の上端部中央に形成された凸部とは当接し合うことになる。
大径ピストン183には、上端部に形成された凸部を介して、制御室11と弁体スプリング193の内部とを接続可能なように第四コモンオリフィス189が設けられている。このため、制御弁体192の下端部と大径ピストン183の上端部中央に形成された凸部とが離間している状態において、高圧室184に貯蓄されている高圧燃料は、第四コモンオリフィス189を介して制御室11に流入可能となっている。
また、制御弁体192内部には、第五中間室194と呼ばれる燃料が流れる流路が設けられている。この第五中間室194の下部は制御弁体192の下端部に開口しており、シリンダスプリング188の内部と連通している。第五中間室194の上部は第五アウトオリフィス195を介すことでバルブ室191と接続している。つまり、制御弁体192は第五中間室194及び第五アウトオリフィス195を介すことで、シリンダスプリング188の内部とバルブ室191とを接続可能としている。
この第五中間室194は、小径室196と大径室197とで構成されている。
小径室196の上部は、第五アウトオリフィス195と接続しており、下端部が大径室197と接続している。
大径室197は、内径が小径室196よりも大きく構成されており、上部には小径室196へと開口している小開口部が形成され、下部には制御弁体192の下端部に開口している大開口部が形成されている。大径室197の内部には、小開口部を塞ぐ方向に移動可能なフリーピストン180が収容されている。このフリーピストン180は、上端部の外径が下端部の外径よりも小さくなるように構成されている。このとき、フリーピストン180の上端面の面積は、大径室197の上部に形成された小開口部を防ぐことが可能な面積となるように構成され、フリーピストン180の下端面の面積は、大径室197の断面積よりも若干小さくなるように構成される。
大径室197の上部において、フリーピストン180の外周面と大径室197の内周面との間の空間に、ピストンスプリング198が設けられている。このピストンスプリング198は、フリーピストン180を噴孔19方向に付勢しており、アクチュエータ2が縮んでいる状態では、フリーピストン180は大径室197の下部に形成された大開口部を一部塞ぐ状態となる。
アクチュエータ2が縮んでいる状態では、フリーピストン180の下端部と大径ピストン183に設けられた凸部の上端部との間には隙間が形成されている。よって、高圧室184は、大径室197の下部に形成された大開口部と、第五中間室194と、第五アウトオリフィス195と、を介して、バルブ室191と接続されることになる。また、高圧室184は、第四コモンオリフィス189を介して制御室11と接続されることになる。
バルブボディ190に形成されている孔には、駆動伝達ピン5が挿入されている。この駆動伝達ピン5とバルブボディ190に形成されている孔との間には隙間が形成されている。駆動伝達ピン5の下端部には、制御弁体192の上端部が当接している。駆動伝達ピン5の上端部は、バルブボディ190から突出している。
駆動伝達ピン5よりアクチュエータ2側の構成は上記実施形態と同様である為、説明を省略する。
上記構成によれば、第五中間室194を構成する大径室197には、大径室197の上部に形成された小開口部を塞ぐ方向に移動するフリーピストン180が収容されている。アクチュエータ2が縮んでいる状態では、図35左図に記載されるように、制御弁体192がバルブ室191の上部に着座することで、低圧室4−bとバルブ室191とが遮断されている。この状態では、ピストンスプリング198によりフリーピストン180が噴孔19方向に付勢されており、フリーピストン180は大径室197の上部に形成される小開口部を塞いでいない。よって、大径室197の下部に形成される大開口部から大径室197内へと高圧室184内の燃料が流入され、小径室196と第五アウトオリフィス195とを介して、流入した燃料がバルブ室191に流出される。
一方で、高圧室184の燃料は、大径ピストン183に形成された第四コモンオリフィス189を介して制御室11へと流入される。このため、制御室11内の燃料圧力が上昇し、ニードル200は噴孔19方向に押圧される。これにより、ニードル200を構成する押圧部203により油密室16が押圧されることで、大径ピストン183がアクチュエータ2方向に押圧される。このとき、バルブスプリング205によりアクチュエータ2方向に付勢されているリークバルブ202の上端部は小径ピストン部201の下端部と当接しているため、制御室11内の燃料は第一リーク通路206を介してリークバルブ202側の押圧室186へと流出することはない。
アクチュエータ2が伸長することで、大径室197の下端部と大径ピストン183に設けられた凸部の上端部とが当接した場合を想定する。この場合、図35右図に記載されるように、制御弁体192により、低圧室4−bとバルブ室191と制御室11とが接続され、高圧室184と制御室11とが遮断される。したがって、制御弁体192内の燃料が第五アウトオリフィス195を介して低圧室4−bに流出され、制御弁体192内の燃料の圧力が減圧される。減圧に伴い、大径室197の上部に形成された小開口部を塞ぐ方向にフリーピストン180が移動し、その間、制御室11内の燃料圧力は減圧される。そして、フリーピストン180が大径室197の上部に形成された小開口部を塞ぐことで、制御弁体192内の燃料が第五アウトオリフィス195を介して低圧室4−bに流出しなくなると、制御室11内の燃料圧力の減圧が停止する。これにより、制御室11内の燃料圧力を一定に保つことができ、噴孔19からの燃料噴射を実行させる方向へのニードル17の移動量を制限することが可能となる。
アクチュエータ2の伸長量が多い場合(ニードル200の高速開弁時)には、制御弁体192により大径ピストン183が押圧され、油密室16が大径ピストン183により押圧される。このため、油密室16内の燃料が油密室16と接している押圧部203をアクチュエータ2方向に押圧することで、小径ピストン部201がアクチュエータ2方向に移動する。これにより、小径ピストン部201により制御室11が圧迫され、制御室11内の燃料圧力が上昇する。このとき、フリーピストン180が大径室197の上部に形成された小開口部を塞いでいるため、制御室11内の圧力は低圧室4−bに流出されない。一方で、リークバルブ202が噴孔19方向に移動することで、小径ピストン部201の下端部とリークバルブ202の上端部との間に隙間が生じる。つまり、第一リーク通路206と該隙間と第二リーク流路207とを介して、制御室11は押圧室186と接続される。したがって、制御室11の燃料を第一リーク通路206と第二リーク流路207を介して押圧室186へと流出させることができ、ひいては制御室11内の燃料圧力を速やかに減圧することが可能となる。