JP2017002713A - 柱の補強工法および柱の補強構造 - Google Patents

柱の補強工法および柱の補強構造 Download PDF

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Abstract

【課題】作業空間と作業時間の極めて限定的な状況下での柱の補強作業を簡便かつ効率的になし得る柱の補強工法を提供する。【解決手段】柱の補強工法は、補強対象柱10の周囲に鋼板3を配置する工程、および接着剤の含浸された補強シート8を鋼板3の外面に巻き付ける工程、を包含する。補強シート8の接着剤含浸量が、250g/m2〜350g/m2であるように、接着剤含浸シートを予め作成しその上で現場に搬入する。柱の補強構造は、補強対象柱10の周囲に配置された鋼板3と、鋼板3の外面に複数回巻き付けられた接着剤含浸補強シート8とを備えた。【選択図】図2

Description

本発明は、地下鉄の中柱、高架橋、駐車場での柱、建物の災害発生直後の柱の補強など、作業空間と作業時間の極めて限定的な状況下での補強対象柱の補強工法と補強構造に関する。
地下鉄のトンネル内の中柱、高架橋、駐車場での柱、建物の災害発生直後の柱などの補強工事は、作業空間と作業時間が極めて制約された状況下で行われる。
例えば、地下鉄のトンネル内の中柱を補強する場合、運転営業時間外の夜間の短時間に施工しなければならない。具体的には、地下鉄のレールに供給する電流を止めてから30分間はレールに電流が流れていることを考慮すると、一日の作業時間は、電車を止めている夜間の数時間、午前1時から4時までの約3時間の工事時間しかない。
しかも、中柱と電車との間隙が狭く、作業空間が極めて限られている。このように地下鉄のトンネル内に確保できる作業空間は狭いため、重機および大型の装置は使用できない。高架橋、駐車場での柱、災害発生建物現場の柱を補強する場合も、時間的、空間的制限において全く同様である。
ところで、従来より、建造物の柱の耐震性を高めるために、柱の周囲を補強材で囲って補強する方法が提案されている。
例えば、特開平9−177334号公報(特許文献1)には、コンクリート柱の補強工法が開示されている。この特許文献1に開示の補強方法は、図7に示すように、複数の鋼板40をコンクリート柱1を囲むように配置し、隣接する鋼板40の端部同士を重ね合わせてボルト・ナット41で連結し、コンクリート柱1と鋼板40との隙間部42内にグラウト材を充填するという方法である。
また、特開2005−23745号公報(特許文献2)にも、コンクリート柱の補強工法が開示されている。この特許文献2に開示の補強方法は、図8に示すように、断面がL字形に形成された鋼板45をコンクリート柱1を囲むようにコンクリート柱1の4隅に配置し、これらの鋼板45の外周に帯状繊維シート46を巻きつけることによってこれらの鋼板45を結束し、4枚の鋼板45とコンクリート柱1との隙間部42内にグラウト材を充填するという方法である。
しかし、これらの補強工法では、コンクリート柱と鋼板との隙間部に充填されたグラウト材が固化するのに要する養生期間が長い。そのため、これらの特許文献に開示の補強方法は、上記のように地下鉄のトンネルの中柱を補強する場合のように短時間で補強作業を行わなければならない状況下での補強方法として採用することはできない。しかも、これらの補強方法では、柱と鋼板との間の隙間部内にグラウト材を注入するための注入装置が狭い作業空間で使用されるため、現場での作業が非常に難しいものとなる。
本願発明者は、グラウト材を使用することなく補強対象柱(例えば、コンクリート柱)を補強する方法として、補強対象柱の周囲を囲むように横方向に複数枚の鋼板を配置し、その鋼板の外周面に接着剤を塗布しながら帯状繊維シートを巻き付ける方法を検討した。この方法では、グラウト材を使わないので作業が早く、しかも耐震の強度もグラウト材を使用する場合と比べて変わらないものの(例えば、非特許文献1参照:なおこの文献はクラウド材でもあるモルタルを用いて補強鋼板の耐震強度性能を調べている。)、塗布した接着剤が接着剤として十分に機能するには、それなりの硬化時間が必要で、そのために限られた作業時間内に手早く補強作業を効率よく完結させることが難しい。より接着力を高めるべく、接着剤の塗布量を増やしても接着剤が適度に硬化するまでに接着剤が下方に垂れ落ち、地面や床に垂れ落ちた接着剤の除去にも手間と時間を要した。
特開平9−177334号公報 特開2005−23745号公報
土木学会第51回年次学術講演会(平成8年9月)V−529「鋼板巻き補強におけるディテールの影響に関する実験的研究」 p1056〜p1057 JR東海 正員 田畑 裕 鉄道総合技術研究所 正員 佐藤 勉 鉄道総合技術研究所 正員 渡邉忠朋 鉄道総合技術研究所 正員 安原真人
この補強対象柱を囲む鋼板の周りに帯状繊維シートを巻き付ける補強工法では、帯状繊維シートによる強度を上げるためには、鋼板の周りに接着剤を塗布しながら帯状繊維シートを二重、三重に巻き付けるということが必要となるが、その際、接着剤がシートから垂れ落ちることを防ぐことができないため、帯状繊維シートに保持されるはずの接着剤の量が不十分となり、強度不足を生じることがわかった。
例えば、充分な強度を持たせるためには、帯状繊維シートにつき300g/mの接着剤を保持させる必要があるが、現場で鋼板の周りに接着剤を塗布しながらシートを巻き付けると、接着剤が垂れ落ちるため、接着剤が帯状繊維シートにつき200g/m程度しか保持されないことがわかった。
しかも、接着剤を帯状繊維シートに塗布する際、上記したように、帯状繊維シートから垂れ落ちた接着剤が地下鉄のトンネル内の床面を汚す。この接着剤で汚れた床面は清掃する必要があるが、上記のとおり工事時間が限られているため、床面を清掃することができない。
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、作業空間と作業時間の極めて限定的な状況下で補強対象柱の補強作業を簡便かつ効率的になし得る柱の補強工法および柱の補強構造を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下を特徴とする。
本発明の柱の補強工法は、補強対象柱の周囲に鋼板を配置する工程、および接着剤の含浸された補強シートを該鋼板の外面に巻き付ける工程、を包含し、そのことにより上記目的が達成される。
前記鋼板は前記補強対象柱に対し、縦方向に複数配置されたのが好ましい。
前記補強シートは前記鋼板を介して前記補強対象柱に対し横方向に巻き付けられるのが好ましい。
前記鋼板が複数枚に分割される形で、前記補強対象柱を包囲するのが好ましい。
前記1つの補強シートの巻終わり端面が、縦方向に隣接する他の補強シートの巻終わり端面と、補強対象柱の周方向で異なる位置に来るよう巻き付けられたのが好ましい。
前記包囲鋼板の分割端面は、隣接する分割鋼板の端面と縦方向に重なるのが好ましい。
前記補強シートの接着剤含浸量が、250g/m〜350g/mであるように、接着剤含浸シートを予め作成しその上で現場に搬入するのが好ましい。
前記鋼板を前記補強対象柱の周囲の壁面に配置する工程の前に、該壁面にグラウト材を適用して該壁面を平坦にする工程、をさらに包含するのが好ましい。
前記鋼板を前記補強対象柱の周囲の壁面に配置する工程の後に、該壁面にグラウト材を適用して該壁面を平坦にする工程、をさらに包含するのが好ましい。
本発明の柱の補強構造は、補強対象柱の周囲に配置された鋼板と、該鋼板の外面に複数回巻き付けられた接着剤含浸補強シートとを備えており、そのことにより上記目的が達成される。
前記鋼板は前記補強対象柱に対し、縦方向に複数配置されたのが好ましい。
前記補強シートは前記鋼板を介して前記補強対象柱に対し横方向に巻き付けられたのが好ましい。
前記鋼板が複数枚に分割される形で、前記補強対象柱を包囲するのが好ましい。
前記1つの補強シートの巻終わり端面が、縦方向に隣接する他の補強シートの巻終わり端面と、補強対象柱の周方向で異なる位置に来るよう巻き付けられたのが好ましい。
前記包囲鋼板の分割端面は、隣接する分割鋼板の端面と縦方向に重なるのが好ましい。
前記補強シートの接着剤含浸量が、250g/m〜350g/mであるのが好ましい。
前記補強対象柱の周囲の壁面にグラウト材が適用されたのが好ましい。
本発明の補強工法によれば、接着剤の含浸された補強シートを鋼板の外面に巻き付けるので、工場などで接着剤含浸シートを予め作成しておき、この接着剤含浸シートを現場に搬入し現場の鋼板に巻き付けるだけで、接着剤含浸シートの巻き付け作業が完了する。従って、現場で補強シートを接着剤によって鋼板の外面に貼り付ける作業が不要となり、現場で接着剤塗布のための時間を省略することができる。
しかも、従来のように、接着剤を鋼板あるいはシートの外面に塗布することはしないので、接着剤は適度に硬化し適切な接着力を生じているため、現場で接着剤が垂れて現場の床面を汚すことがない。
さらに、補強シートに接着剤を含浸させ適切な量を付着させることができるので、接着剤不足による強度低下もない。現場で垂れ落ちることもない。よって、補強シートの巻き付け回数を、現場で接着剤を塗布しながらシートを貼り付ける場合に比べて少なくすることができる。むしろ、例えば、従来の補強工法ではシートを3重巻きとする必要がある場合には、本発明では2重巻きとしても強度不足を生じない。
本発明の補強構造によれば、補強対象柱の周囲に配置された鋼板と、鋼板の外面に複数回巻き付けられた接着剤含浸補強シートとを備えたので、接着剤が硬化した補強シートが鋼板を介して補強対象柱を外側から拘束するため、柱の耐震性を向上させることができる。
補強対象柱の柱面は必ずしも平坦面を形成していない。ゆえに、その柱面に当てがう鋼板は安定的に柱面と接し得ない。両面効率よく接するように柱面にグラウト材を塗布するなどの手法で適用し平坦にすることが可能である。
地下鉄の構内を示す概略縦断面図である。 本発明の一実施例の地下鉄の構内の中柱部分の概略横断面図である。 図2に示す中柱部分の斜視図である。 図3に示す中柱の補強工法を示す説明図である。 図3に示す中柱の要部の縦断面図である。 中柱の概略断面図であり、図6(a)は1層の補強シートをL字形に鋼板の外面に巻き付けた実施例を示し、図6(b)は 1層の補強シートをコ字状に鋼板の外面に巻き付けた実施例を示し、図6(c)は2層の補強シートを鋼板の外面に巻き付けた実施例を示す。 従来のコンクリート柱の補強構造の断面図である。 他の従来のコンクリート柱の補強構造の斜視図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、地下鉄のトンネルの中柱、高架橋、駐車場での柱、建物の災害発生直後の柱などの補強対象柱を、作業空間と作業時間が極めて制限された状況下で行う補強対象柱の補強工法に適用することができる。
本発明でいう補強対象柱は、鉄筋コンクリート柱、鉄骨鉄筋コンクリート柱、鋼管コンクリート柱、鉄骨柱などを含む。
以下に、本発明の実施形態の一例として、地下鉄のトンネル内のコンクリート製中柱を補強する柱の補強方法と柱の補強構造とを説明する。
(実施形態1)
図1は地下鉄構内(地下鉄のトンネル内)の概略縦断面図、図2はその地下鉄構内の中柱部分の概略横断面図、図3はその中柱部分の斜視図である。
これらの図1〜図3に示されるように、地下鉄構内において、例えば、上り列車用軌道(レール)と下り列車用軌道(レール)14とを仕切る下床板12の上に複数本の中柱10がレールに沿って所定の間隔をおいて立設されている。
中柱10は横断面が例えば四角形状になるように形成されている。その中柱10の周囲には鋼板3が該中柱10を囲むよう配置されている。鋼板3は中柱10に対し、中柱10の縦方向(鉛直方向)に1枚あるいは複数枚配置することができる。また、鋼板3は、1枚あるいは複数枚に分割される形で中柱10を包囲することができる。この実施形態では、例えば、縦方向に4枚の鋼板3(鋼板の枚数は補強シートに隠れて図に表れない。)が該中柱10を囲むよう配置されている。
鋼板3は、例えば、厚み1.6mm程度の比較的薄い鋼板が用いられ、それを直接、補強
対象柱の周囲を1枚もので覆ってもよいが、複数に分割して横断面L字形に折り曲げて形成されたものを使用することもできる。L字形に形成される鋼板3の角部を挟む一方側の板状部と他方側の板状部の長さは同じとしてもよく、長さを変えてもよい。このような薄い鋼板3は軽量であるので、重機を使用することなく人手によって地下鉄構内の工事現場まで鋼板3を搬入することができる。
図4(a)に示すように、それぞれの鋼板3は中柱10の角部を囲むように配置されている。包囲鋼板3の分割端面は、隣接する分割鋼板3の端面と縦方向に重なる。つまり、中柱10を包囲する各分割鋼板3の端部が中柱10の壁面に沿って延び、かつ、その端部同士が壁面上で重なる。このようにして、一方の分割鋼板3の端部に、横方向に(中柱の周囲方向に)隣接する他方の分割鋼板3の端部が重ね合わせられる。
図5に示すように、鋼板3は、中柱10の外面に鋼板3の内面の少なくとも一部が接触するように中柱10の外側に配置される。
次に、接着剤の含浸された補強シート8を該鋼板3の外面に巻き付ける。このシート8は、鋼板3外面をはみ出して柱縦方向に隣接する鋼板3外面に巻き付けることも当然にあり得る。
補強シート8は、多数の繊維を有する繊維シートに接着剤を含浸させたものである。
繊維シートに使用可能な繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維などがあげられる。これらの繊維は単独で、または複数種の繊維を組み合わせて使用することができる。引張強度などの特性が優れている点および価格の点で、アラミド繊維が好ましい。繊維シートは、1層でも2層以上の形態でも使用することができる。補強強度と作業効率とに照らして通常は2層で十分である。
この繊維シートに接着剤を含浸させるには、工場で繊維シートに接着剤を刷毛やローラで塗り、あるいは接着剤が入れられた容器に繊維シートを浸漬することによって該シートに接着剤を含浸させることができる。これらの接着剤含浸方法によれば、所望量の接着剤をシートに含浸させることができる。しかも、工場内でシートに接着剤を含浸させると、ほぼ一定量の接着剤をシートに含浸させることができる。すなわち、工場内の温度はほぼ一定であるので、接着剤の粘度が季節を問わず一定となり、そのため、シートに含浸させた接着剤の量が季節に依存して大きく変動するということがない。
繊維シートに含浸される接着剤の種類は限定されないが、エポキシ系接着剤、メタクリル系接着剤、アクリル系接着剤などの接着剤を使用することが好ましい。
特に好ましい接着剤は、常温で硬化するタイプの接着剤である。共に合成化学成分でできている主剤と硬化剤とを混合することにより硬化が始まる2液タイプの接着剤と、1液タイプの接着剤を共に使用することができるが、一般に2液タイプの方が接着強度の高いものが多く、言い換えると、2液タイプの接着剤の方が所定の接着強度確保に対する信頼性が高いことから、2液タイプの接着剤を使用することが好ましい。
繊維シートへの接着剤の含浸量は、250g/m〜350g/mが好ましく、さらに好ましくは、280g/m〜330g/m、特に好ましくは、290g/m〜310g/mである。
接着剤の含浸量が250g/mより少なすぎると、補強シート8の鋼板3への接着強度が低下する傾向にある。接着剤の含浸量が350g/mを超えても接着強度がそれほど上がらず重量が増え、材料コストが高くなる。
このようにして工場で予め繊維シートに所定量の接着剤を含浸させて補強シート8を作成する。接着剤は適度に硬化して強固な接着能を有するに至る。その適度に硬化するのに要する時間は、外気温度20℃の時を標準にして2時間から3時間である。なお、接着剤の粘度は、接着剤のメーカーによっても、接着剤の種類によっても異なるものである。このようなことから、夏用と冬用の2種類の粘度の接着剤がメーカーによって用意されており、適切な粘度のものを用いることができる。
この接着剤含浸シート(補強シート)8を施工現場に搬入する。そして、中柱10の周囲に配置された鋼板3の外面に補強シート8を巻き付ける。
補強シート8は、鋼板3を介して中柱10に対しやや傾斜した状態で巻き付けてもよいが、通常は補強シート8は鋼板3を介して中柱10に対し横方向(水平方向)に巻き付ける。つまり、補強シート8に含まれる繊維の長手方向が中柱10の周方向(中柱の軸方向と直交する方向)とほぼ一致するように、1枚あるいは複数枚の補強シート8を鋼板3を介して柱面に巻き付ける。
中柱10に巻き付けた1つの補強シート8の巻終わり端面はその補強シート8の巻始め端面に重なるようにすることが好ましい。
図4(b)に示すように、複数枚の補強シート8を中柱10の周囲に巻き付ける場合は、隣接する補強シート8の端部が互いに重なるように、複数枚の補強シート8、8を中柱10の周囲に巻き付けるようにする。例えば、図6(a)に示すように、第1の補強シート8aを鋼板3を介して柱面に巻き付けた後、第1の補強シート8に隣接する第2の補強シート8bの端部が該第1の補強シート8aの端部に重なるように、該第2の補強シート8bを該鋼板3を介して柱面に巻き付ける。
補強シート8の形状およびサイズは限定されないが、例えば、帯状の補強シートまたは矩形状の補強シートを使用することができる。
中柱10の周方向における補強シート8の長さ寸法は、中柱10の周囲の長さに応じて適宜設定することができる。例えば、補強シート8の長さ寸法は、中柱10の幅寸法以上とすることができる。鋼板3を介して柱面に巻き付けた補強シート8は、横断面L型(図6(a))あるいは横断面コ字形(図6(b))などの形態で巻き付けるのがよい。補強シート8は、強度の観点からも中柱10の周方向に隣接する第1の鋼板3と第2の鋼板3にまたがるように、鋼板3の外面に巻き付けるのがよい。
補強シート8の縦方向(中柱の鉛直方向)における幅寸法は、補強シートの取り扱い性などを考慮して決定され、現場に容易に輸送できる限り任意である。
補強シート8を鋼板3を介して柱面に巻き付けた後、該補強シート8に含浸した接着剤が硬化するため、該複数枚の補強シート8が一体となり、補強シート8は複数枚の鋼板3を介して中柱10に固定される。
図3および図4(b)に示すように、中柱10の縦方向(鉛直方向)に複数枚の補強シート8を巻き付ける場合、1つの補強シート8の巻終わり端面が、縦方向に隣接する他の補強シート8の巻終わり端面と異なる位置に来るよう補強シート8を巻き付ける。中柱10の上側に位置する1つの補強シート8の端部の重なり部と、その補強シート8に隣接して下側に位置する補強シート8の端部の重なり部が、中柱10の周方向において異なるということである。効果的に強度を出す上で当然のことである。
補強シート8は、図4(b)、図6(a)および図6(b)に示すように1層巻き付けてもよく、あるいは図6(c)に示すように2層に巻き付けてもよい。それ以上でも勿論よい。
補強シート8を2層に鋼板3を介して柱面に巻き付ける場合、第1層の補強シート(下層の補強シート)8の上に第2層の補強シート((上層の補強シート)8を巻き付けるが、隣接する第1層の補強シート8の重なり部81と隣接する第2層の補強シート8の重なり部82が中柱10の周方向でずれるように、第2層の補強シート8を第1の補強シート8の上に巻き付けるのがよい。
このように補強シート8の重なり部81、82を中柱10の周方向でずらせることにより、補強シート8の全周にわたる厚みがほぼ等しくなり、かつ強度も均等になる。
補強シート8を外側から押さえ付ける押付け治具などを用い、補強シート8を鋼板3の外面に押し付けた状態で仮固定してもよい。
なお、巻き終えた補強シート8の外面に、必要に応じて塗装、仕上げモルタル、あるいはタイル張りなどの外装仕上げを行うこともできる。
この補強シート8においては、繊維シートに予め接着剤が所定量含浸されており、現場にて接着剤を含浸させることはないので、作業性に優れていると共に、補強シート8を現場に搬入したときは、接着剤は繊維シートから垂れ落ちない程度の半硬化状態となっている。よって、従来のように、接着剤の塗布時に接着剤が鋼板3あるいは補強シート8から垂れて現場の床面を汚すことがない。
図5に示すように、中柱10の表面に凹凸がある場合、中柱10の外面に鋼板3を配置すると、中柱10の表面の突部にのみ鋼板3の内面が接するため、中柱10の外面と鋼板3との間に間隙11を生じる。補強シート8の補強機能を高めるために、中柱10の壁面を鋼板面と高効率で接触させる目的で、中柱10と鋼板3との間に生じた間隙11にグラウト材6が適用される。それにより、中柱10の表面が平坦になり鋼板3が中柱10に安定して配置され、それによって補強シート8の補強機能を高めることができる。
グラウト材6は、鋼板3を中柱3の周囲に配置する前、あるいは鋼板3を中柱3の周囲に配置した後に、中柱10の表面に塗り、あるいは中柱10と鋼板3との間に生じた間隙11に注入することができる。
鋼板3を中柱10の周囲に配置する前にグラウト材6を中柱10の表面に塗布する場合には、ハケ、コテなどの工具を用いてグラウト材6を中柱10の表面に塗布すればよい。グラウト材6で中柱10と鋼板3との間の間隙11を埋めるには、鋼板3にあけた孔からグラウト材6を注入する。注入の際には、鋼板3をピンなどで中柱10に仮止めすることで鋼板3を中柱10に保持する。
このような中柱10の補強工法では、中柱10の全周が複数枚の鋼板3、3によって囲まれ、その複数枚の鋼板3、3を介して柱面に複数枚の補強シート8が予め含浸させた接着剤により貼り付けられる。複数枚の補強シート8は接着剤が固まった状態で一体となる。よって、補強シート8が鋼板3を介して中柱10全体の動きを拘束するため、中柱10の耐震性を向上させることができる。
複数枚の鋼板3は補強シート8により中柱10に固定されるので、鋼板3同士を溶接したり連結具などで連結する必要がなく、鋼板3の柱への固定が容易である。
しかも補強シート8は所定寸法であるので、狭い現場への搬送が容易である。
補強シート8に接着剤が含浸されているが、補強シート8の柱への巻き付け作業が容易で、また巻き付け時に接着剤がシートから垂れ落ちることもない。
補強シート8を鋼板3を介して柱面に巻き付けるので、柱の表面に凹凸が生じているような場合でも、補強シート8の外観が平坦となり、美観を損なうことがない。
(他の実施形態)
上記実施形態では、補強対象柱の縦方向に4枚の鋼板を補強対象柱の周囲に配置したが、柱の周囲に配置される鋼板の数はこれに限定されない。1枚あるいは2枚以上の鋼板を柱の周囲に配置することができる。大きさの異なる柱に適合できるようにするために、鋼板を2枚以上に分割して使用するのが好ましい。さらに、鋼板の分割横断面形状はL字形に限らず、横断面形状がコ字形の鋼板を使用することもできる。
上記実施形態では、補強対象柱として、地下鉄の中柱について説明したが、本発明は中柱に限られるものではない。地下鉄の中柱の補強以外に、例えば、高架橋、駐車場、建物、災害発生直後の柱の補強にも好適に実施できる。
上記実施形態では、中柱の断面形状は四角形であるが、中柱は4角形以外の多角柱(例えば、5角柱、6角柱など)、円柱などであっても本発明は適用できる。その場合、鋼板は柱の外形に沿った形状とされる。鋼板を上下複数に分割し、各分割された鋼板を上下に連結して柱の周りに取り付けるようにしてもよい。
本発明は、地下鉄のトンネル中柱、高架橋、駐車場での支柱、建物の災害発生直後の柱などの補強対象柱を、短時間で補強を行わなければならない状況下での補強対象柱の補強工法と補強構造を提供する。
3 鋼板
8 補強シート
10 中柱

Claims (8)

  1. 補強対象柱の周囲に鋼板を配置する工程と、
    接着剤の含浸された複数枚の補強シートを該鋼板の外面に巻き付ける工程であって、該補強対象柱の周方向に隣接する補強シートの端部が互いに重なるように巻き付けられる、工程と
    を包含する柱の補強工法。
  2. 前記補強対象柱の周囲に鋼板を配置する工程は、
    複数枚の鋼板を、該補強対象柱の周方向に隣接する鋼板が互いに重なるように、かつ、該鋼板の内面の少なくとも一部が該補強対象柱の外面に接触するように、該補強対象柱の周囲に配置する工程を含む、請求項1に記載の柱の補強工法。
  3. 前記補強シートの巻終わり端面が、縦方向に隣接する他の補強シートの巻終わり端面と、前記補強対象柱の周方向で異なる位置に来るよう巻き付けられる、請求項1または2に記載の柱の補強工法。
  4. 前記補強シートの接着剤含浸量が250g/m〜350g/mである、請求項1〜3のいずれかに記載の柱の補強工法。
  5. 補強対象柱の周囲に配置された鋼板と、
    該鋼板の外面に巻き付けられた複数枚の接着剤含浸補強シートであって、該補強対象柱の周方向に隣接する補強シートの端部が互いに重なるように巻き付けられている、補強シートと
    を備えた柱の補強構造。
  6. 前記鋼板は複数枚の鋼板を備え、該複数枚の鋼板は、前記補強対象柱の周方向に隣接する鋼板が互いに重なるように、かつ、該鋼板の内面の少なくとも一部が該補強対象柱の外面に接触するように、該補強対象柱の周囲に配置されている、請求項5に記載の柱の補強構造。
  7. 前記補強シートの巻終わり端面が、縦方向に隣接する他の補強シートの巻終わり端面と、前記補強対象柱の周方向で異なる位置に来るよう巻き付けられている、請求項5または6に記載の柱の補強構造。
  8. 前記補強シートの接着剤含浸量が250g/m〜350g/mである、請求項5〜7のいずれかに記載の柱の補強構造。
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