しかしながら、上記従来の道路検査方法は、赤外線映像で検出される温度分布形状が、日照状況や天候の影響を受けるので、点検精度が安定し難く、点検効率を向上し難いという問題がある。
そこで、本発明の課題は、橋梁を、日照状況や天候の影響を受けることなく、安定的かつ効率的に点検できる橋梁の点検方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の橋梁の点検方法は、鋼床版と、この鋼床版を支持する桁とを有する橋梁の点検方法であって、
上記鋼床版上に設置された舗装の損傷又は損傷補修跡を検出する舗装損傷検出工程と、
上記検出された舗装の損傷又は損傷補修跡が存在する損傷位置と、上記鋼床版又は桁を構成する部材の配置位置とを照らし合わせる照合工程と、
上記舗装の損傷位置と一致する配置位置にある上記部材を、点検対象に設定する点検位置設定工程と
を備えることを特徴としている。
上記構成によれば、舗装損傷検出工程で、橋梁の鋼床版上に設置された舗装の損傷又は損傷補修跡を検出し、照合工程で、上記検出された舗装の損傷又は損傷補修跡が存在する損傷位置と、上記鋼床版又は桁を構成する部材の配置位置とを照らし合わせる。上記舗装の損傷位置に、上記部材の配置位置が一致する場合、点検位置設定工程において、上記損傷位置と一致する配置位置にある部材を、点検対象に設定する。橋梁の鋼床版上に設置された舗装には、舗装上を走行する車両の荷重が繰り返して作用することにより、ひび割れや、ポットホールや、陥没や、わだち掘れ等の損傷が生じる。これらの損傷は、鋼床版を構成する部材や、桁を鋼製する部材の変形に起因する場合がある。このような鋼床版や桁の部材の変形は、例えばデッキプレートに生じた亀裂や、リブに生じた亀裂や、主桁又は横桁に生じた亀裂や、これらの部材を接続する溶接部分に生じた亀裂が原因である場合がある。したがって、舗装の損傷又は損傷補修跡に関する損傷位置が、鋼床版又は桁の部材の配置位置と一致すれば、この部材に、亀裂等の問題が生じている可能性が高い。したがって、点検位置設定工程で設定された部材を点検することにより、この部材に、亀裂等の損傷が発見される可能性が高い。すなわち、舗装に生じた損傷をマーカーとして利用することにより、この舗装を支持する鋼床版や桁の損傷を、効率的に発見することができる。したがって、橋梁の点検を効率的に行うことができるのである。舗装に生じた損傷や損傷補修跡は、赤外線画像を用いることなく、可視光画像や目視により容易に発見することができる。したがって、本発明の橋梁の点検方法は、従来の道路検査方法のように日照状況や天候の影響を受けることなく、安定的かつ効率的に点検を行うことができる。
本発明において、橋梁は、道路の用途に供される道路橋であるのが好ましい。また、鋼床版は、一般的に、鋼製のデッキプレートと、このデッキプレートを補強するリブを有し、上記デッキプレートの上に、直接又は間接に舗装が設置される。デッキプレートと舗装の間には、例えば鋼繊維補強コンクリート(SFRC;Steel Fiber Reinforced Concrete)や、接着剤等が配置されていてもよい。また、桁は、平面視において互いに実質的に直交して配置される主桁及び横桁を有してもよく、また、主桁は箱桁でもI桁でもよい。
一実施形態の橋梁の点検方法は、上記舗装損傷検出工程は、上記舗装を撮影した撮影画像を用いて損傷又は損傷補修跡を検出する。
上記実施形態によれば、舗装を撮影した撮影画像を用いることにより、舗装に生じた損傷や損傷補修跡を容易に検出することができる。ここで、撮影画像は、太陽光や可視光線帯域の電磁波で照らした舗装を、可視光域の撮像装置で撮影した可視光画像が好ましい。
一実施形態の橋梁の点検方法は、上記照合工程は、少なくとも上記舗装を撮影した撮影画像と、上記鋼床版又は桁の部材の配置位置を示した図面とを重ね合せて行う。
上記実施形態によれば、少なくとも舗装を撮影した撮影画像と、鋼床版又は桁の部材の配置位置を示した図面とを重ね合せることにより、舗装の撮影画像に含まれる損傷又は損傷補修跡と、鋼床版又は桁の部材の配置位置とを効果的に照らし合わせることができる。
一実施形態の橋梁の点検方法は、上記撮影画像は、上記舗装の上を走行する車両から撮影されたものである。
上記実施形態によれば、舗装の上を走行する車両から撮影された撮影画像を用いることにより、舗装の損傷又は損傷補修跡を効果的に検出することができる。また、撮影画像は、舗装の上を走行する車両から撮影されたものであるので、道路の交通に与える影響を抑えながら、舗装の撮影画像が得られる。
一実施形態の橋梁の点検方法は、上記撮影画像は、上記橋梁に設置された道路構造物の像を含み、
上記図面は、上記橋梁に設置された道路構造物の配置位置を含み、
上記照合工程は、上記撮影画像に含まれる道路構造物の像と、上記図面に含まれる道路構造物の配置位置とに基づいて、上記撮影画像と図面を重ね合せる。
上記実施形態によれば、橋梁に設置された道路構造物の像が、舗装の像と共に撮影画像に含まれる。また、橋梁に設置された道路構造物の設置位置が、鋼床版又は桁の部材の配置位置と共に図面に含まれる。照合工程において、上記撮影画像の道路構造物の像と、上記図面の道路構造物の配置位置とに基づくことにより、撮影画像と図面を正確に重ね合せることができる。したがって、撮影画像に含まれる舗装の損傷又は損傷補修跡の位置と、図面に含まれる鋼床版又は桁の部材の配置位置とを正確に照らし合わせることができる。ここで、道路構造物とは、道路に付帯して橋梁に設置される構造物を広く意味する。
一実施形態の橋梁の点検方法は、上記道路構造物は、高欄、区画線、継手、橋脚番号標、照明設備、標識設備及び排水設備の少なくとも1つである。
上記実施形態によれば、舗装と共に撮影画像に含まれ、また、鋼床版又は桁の部材と共に図面に含まれる道路構造物は、高欄、区画線、継手、橋脚番号標、照明設備、標識設備及び排水設備の少なくとも1つである。これらの道路構造物のうちの少なくとも1つを基準にすることにより、撮影画像と図面を正確に重ね合せることができる。その結果、撮影画像に含まれる舗装の損傷又は損傷補修跡の位置と、図面に含まれる鋼床版又は桁の部材の配置位置とを、正確に照らし合わせることができる。
一実施形態の橋梁の点検方法は、上記撮影画像は、上記車両からの側方視像を含む。
上記実施形態によれば、撮影画像が、舗装と共に、車両からの側方視像を含むことにより、効果的に道路構造物の像を含んだ撮影画像を得ることができる。
一実施形態の橋梁の点検方法は、上記撮影画像は、上記車両から側方を撮影してなる側方画像と関連付けられている。
上記実施形態によれば、舗装を含む撮影画像が、車両から側方を撮影してなる側方画像と関連付けられることにより、側方画像に含まれる道路構造物の像を介して、撮影画像と図面を正確に重ね合せることができる。
一実施形態の橋梁の点検方法は、上記撮影画像は、上記舗装の橋軸直角方向を主走査方向として撮像するラインスキャンカメラで撮影された画像である。
上記実施形態によれば、撮影画像として、舗装の橋軸直角方向を主走査方向として撮像するラインスキャンカメラで撮影された画像を用いることにより、比較的高精細であり、かつ、連続した舗装の画像を、容易に得ることができる。
一実施形態の橋梁の点検方法は、上記撮影画像の橋軸方向の異なる位置に存在する複数の道路構造物の像と、これらの道路構造物に関する上記図面の配置位置とに基づいて、上記撮影画像の橋軸方向の縮尺を調整する。
上記実施形態によれば、撮影画像と図面を重ね合せる際に、上記撮影画像の橋軸方向の異なる位置に存在する複数の道路構造物の像が、上記図面に含まれる上記複数の道路構造物の配置位置に一致するように、上記撮影画像の橋軸方向の縮尺を調整する。これにより、上記撮影画像と図面を正確に重ね合せることができ、上記撮影画像に含まれる損傷又は損傷補修跡と、上記図面に含まれる鋼床版又は桁の部材の配置位置とを正確に照らし合わせることができる。ここで、上記撮影画像の橋軸方向は、舗装及び鋼床版の延在方向と一致する。また、上記撮影画像が、舗装上を走行する車両に設置されたラインスキャンカメラで撮影された画像である場合、上記撮影画像の橋軸方向の縮尺の調整を、走査周期と車両の走行速度が実質的に一定の範囲内で行うのが好ましい。これにより、撮影画像の縮尺を、道路構造物に基づいて、均一かつ正確に調整することができる。
一実施形態の橋梁の点検方法は、上記撮影画像の橋軸直角方向の異なる位置に存在する複数の道路構造物の像と、これらの道路構造物に関する上記図面の配置位置とに基づいて、上記撮影画像の橋軸直角方向の縮尺を調整する。
上記実施形態によれば、撮影画像と図面を重ね合せる際に、上記撮影画像の橋軸直角方向の異なる位置に存在する複数の道路構造物の像と、上記図面に含まれる上記複数の道路構造物の配置位置とが一致するように、上記撮影画像の橋軸直角方向の縮尺を調整する。これにより、上記撮影画像と図面を正確に重ね合せることができ、上記撮影画像に含まれる損傷又は損傷補修跡と、上記図面に含まれる鋼床版又は桁の部材の配置位置とを正確に照らし合わせることができる。ここで、上記撮影画像の橋軸直角方向は、舗装及び鋼床版の延在方向に直交する方向と一致する。
一実施形態の橋梁の点検方法は、上記撮影画像を構成する複数のスキャンラインが、上記舗装が橋軸方向に等間隔おきに走査されて生成されたものである。
上記実施形態によれば、舗装の上を走行する車両に搭載されたラインスキャンカメラにより、舗装の橋軸直角方向を主走査方向として撮像された画像は、この撮影画像を構成する複数のスキャンラインが、舗装を橋軸方向に等間隔おきに走査されて生成されたものであるので、橋軸方向に歪みの無い画像が得られる。ここで、ラインスキャンカメラが舗装の走査を行ってスキャンラインを生成するタイミングは、車両の速度又は走行距離を検出し、車両が所定距離だけ走行する毎に、走査を行うようにすればよい。車両の速度又は走行距離は、例えば空間フィルタ式やレーザードップラ式の非接触走行距離計により高精度に検出することができる。これにより、正確に一定の距離毎に舗装を走査できるので、実質的に橋軸方向と一致する走行方向において、歪みの無い撮影画像が得られる。
一実施形態の橋梁の点検方法は、上記撮影画像を構成する複数のスキャンラインの配置角度を、各スキャンラインが撮影された時の上記車両の速度と加速度に基づいて算出した角度に変更することにより、上記撮影画像を調整する。
上記実施形態によれば、舗装の上を走行する車両に搭載され、舗装の橋軸直角方向を主走査方向として撮像するラインスキャンカメラで撮影された画像は、この撮影画像を構成するスキャンラインが、主走査方向の直交方向に順次配列されて形成される。したがって、ラインスキャンカメラが搭載された車両が走行した舗装が、曲線形状であっても、撮影画像のスキャンラインは副走査方向に直線状に配列されるので、撮影画像の舗装は、直線形状に表れる。ここで、撮影画像を構成する複数のスキャンラインの配置角度を、各スキャンラインが撮影された時の車両の速度と加速度に基づいて算出した角度に変更する。例えば、所定のスキャンラインが撮影された時の車両の速度と加速度から、車両の走行経路の曲率半径を求め、この曲率半径と速度に基づいて算出した角度だけ、当該スキャンラインの配置角度を変更する。これにより、撮影画像のスキャンラインを、車両が走行した経路に対応する方向に向けることができ、こうしてスキャンラインの角度が変更された撮影画像により、上記車両が走行した舗装の形状を、実際の形状に近づけて示すことができる。したがって、撮影画像を、鋼床版又は桁の部材の配置位置を示した図面と重ね合せて、撮影画像に含まれる舗装の損傷又は損傷補修跡の損傷位置と、図面に含まれる鋼床版又は桁の部材の配置位置とを正確に照合することができる。
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の点検方法を適用する橋梁を示す斜視図である。この橋梁は道路の用途に用いられる道路橋であり、図1に示す上部工は、鋼床版1と、この鋼床版1を支持する主桁4及び横桁5で大略構成されている。この上部工は、鋼製又はコンクリート製の橋脚によって支持される。鋼床版1は、橋軸方向の両端部が図示しない橋脚によって支持されており、橋軸方向に隣合う橋脚と橋脚との間の1径間につき、1つの鋼床版1が配置されている。鋼床版1は、鋼板で形成されたデッキプレート2と、このデッキプレート2の下面に配置された補強用の横リブ6及び縦リブ7を有する。縦リブ7は、バルブプレートやUトラフ等で形成することができる。鋼床版1のデッキプレート2の上面には、一般的にアスファルトで形成された舗装3が敷設されている。鋼床版1は、橋軸方向に延在する主桁4と、橋軸直角方向に延在する横桁5で支持されている。主桁4のウェブには、鉛直方向に延在する垂直補剛材8が設けられている。主桁4、横桁5、横リブ6及び縦リブ7は鋼で形成され、これらの部材はデッキプレート2に溶接で固定されている。
図2は、Uトラフを縦リブとする鋼床版1の構成部材と、鋼床版1を支持する主桁4及び横桁5に生じる疲労亀裂を示す斜視図である。図2に示すように、鋼床版を有する橋梁では、鋼床版1のデッキプレート2に、垂直補剛材8の上端が溶接された部分に沿って亀裂11が生じる。また、横リブ6に、この横リブ6に形成されてトラフリブ7を貫通させる切欠き部の縁から延びる亀裂12が生じる。また、トラフリブ7の上端縁とデッキプレート2の下面とを溶接する溶接部に沿って、亀裂13が生じる。また、トラフリブ7に、横リブ6の切欠き部との間の溶接部分の近傍に、亀裂14が生じる。また、トラフリブ7に、このトラフリブ7を構成するトラフ部材の突き合わせ溶接部分に沿って、亀裂15が生じる。これらのデッキプレート2、横リブ6及びトラフリブ7等に生じる亀裂11,12,13,14,15は、舗装3上を走行する車両の荷重が繰り返し作用することにより発生し、伸展する。
上記亀裂11,12,13,14,15は、デッキプレート2の下面から目視、浸透探傷試験及び磁粉探傷試験等の点検を行うことにより、発見が可能である。しかし、一般的に、疲労亀裂は幅が小さく、また、塗膜に覆われているため、発見は容易ではない。さらに、箱桁の内側で鋼床版へ接近することは比較的容易であるが、箱桁の外側で鋼床版へ接近するためには、足場を設置する必要がある。図3は、デッキプレート2とトラフリブ7との溶接部分に生じる亀裂を示す断面図である。図3(a)に示すのは、トラフリブ7の上端縁とデッキプレート2の下面との間の溶接ビード17に生じた亀裂13である。図3(b)に示すのは、溶接ビード17の内側から進展してデッキプレート2を貫通した亀裂18である。この亀裂18は、トラフリブ7の外側から容易に観察することができない。このようなトラフリブ7の内側の亀裂18は、フェイズドアレイ超音波探傷により発見が可能であるが、目視、浸透探傷試験及び磁粉探傷試験と比較して、大変な手間と時間を要する。このため、上記亀裂18の観察は、舗装3を除去し、デッキプレート2の上側面から、目視、浸透探傷試験及び磁粉探傷試験を行って検出するのが通例である。この場合、大がかりな交通規制を伴うため、検査コストが高く、検査期間の長期化を招くとともに、道路交通への影響が大きいという不都合がある。以上のように、鋼床版の疲労亀裂の点検には多くの困難を伴うので、損傷の可能性がある全ての箇所を対象に検査を行うのは、手間と時間を要するうえに、道路利用者の利便を損なう不都合がある。そこで、実施形態の橋梁の点検方法は、舗装3の損傷又は損傷補修跡をマーカーとして利用することにより、デッキプレート2やトラフリブ7を含む鋼床版1の構成部材の損傷が疑われる箇所を、効率的に発見するものである。
図4は、実施形態の橋梁の点検方法で用いる点検車両20を示す模式図であり、図5は、点検車両に搭載される道路点検システムSを示す模式図である。この道路点検システムSは、ラインスキャンカメラ21と、速度センサ22と、加速度センサ23と、GPS(Global Positioning System)受信機24と、距離センサ25と、CPU(Central Processing Unit)31と、メモリ32と、記憶装置33と、通信装置34と、入力装置35と、出力装置36と、読取装置37を含んで構成されている。上記CPU31、メモリ32、記憶装置33、通信装置34、入力装置35、出力装置36及び読取装置37は、ノート型パーソナルコンピュータ(以下、ノートPCという)26に内蔵されている。図4に示すように、ラインスキャンカメラ21と、速度センサ22と、加速度センサ23と、GPS受信機24と、距離センサ25とがノートPC26に接続されて車両に搭載され、点検車両20を構成している。なお、点検車両20は、舗装3の表面形状を検出する表面形状センサや、走行音を収集するマイクロフォンや、舗装3のわだち掘れを測定するわだち掘れ測定器等を備えてもよい。
ラインスキャンカメラ21は、撮影する対象を、フォトダイオードが1列に並んで形成されたフォトダイオードアレイにより、主走査方向と、主走査方向と直角の副走査方向とに走査して、副走査方向に連続する画像を出力するものである。ラインスキャンカメラ21は、点検車両20の背面部分に配置されている。点検車両20が走行しながら、背面部分に設置されたラインスキャンカメラ21で舗装3を連続的に撮影することにより、連続した舗装3の画像を取得するように形成されている。後に詳述するように、ラインスキャンカメラ21による撮影画像は、舗装3の表面の像と共に、点検車両20の側方視像を含むのが好ましい。また、点検車両20に、舗装3の表面を撮影する第1ラインスキャンカメラと、点検車両20の側方を撮影する第2ラインスキャンカメラとを設置し、上記第1ラインスキャンカメラの撮影画像と第2ラインスキャンカメラの撮影画像とを撮影時刻で関連付けてもよい。
速度センサ22は、道路を走行する点検車両20の速度を検出し、検出した速度は、ラインスキャンカメラ21の撮影画像に対応付けられて保存される。速度センサ22は、空間フィルタ式等の非接触速度計であるのが好ましく、後述の距離センサ25と兼用することができる。
加速度センサ23は、道路を走行する際に点検車両20に作用する加速度を測定するものであり、少なくとも、点検車両20の幅方向の加速度を検出する。点検車両20の幅方向は、車軸と平行をなす方向であり、前後方向と直角をなす方向である。また、この点検車両20が走行する橋梁の橋軸直角方向と実質的に同じである。前後方向とは、点検車両20の全面と背面を結ぶ方向であって、点検車両20が水平面を走行するときの進行方向と一致する方向である。後に詳述するように、加速度センサ23で検出された幅方向の加速度と、速度センサ22で検出された速度に基づいて、点検車両20の走行経路の曲率が算出される。算出された曲率に基づいて、ラインスキャンカメラ21で撮影された撮影画像を形成するスキャンラインの角度を調整することにより、撮影画像を、実際の走行経路に近い形状に調整することができる。加速度センサ23は、点検車両20の幅方向の加速度のほか、前後方向と上下方向の加速度を検出してもよい。点検車両20の上下方向は、前後方向と幅方向とで定義される平面に対して直角をなす方向であり、点検車両20が水平面を走行するときに鉛直方向と一致する方向である。点検車両20の上下方向の加速度に基づいて、舗装3の凹凸の程度を検知することができる。
GPS受信機24は、GPS衛星から発信されたGPS信号を受信する。このGPS信号に基づいて、点検車両20の概略の走行位置が検出される。
距離センサ25は、点検車両20の走行距離を検出する。距離センサ25は、速度センサ22と一体に形成され、例えば空間フィルタにより非接触で点検車両20の走行速度と走行距離を測定するのが好ましい。なお、速度センサ22とは別体の距離センサ25を設けてもよい。
CPU31は、記憶装置33に格納されたプログラムを読み出して実行し、道路点検システムSの各機能を実現する。メモリ32は、CPU31がプログラムを実行する際にデータを一時的に保存するために用いられる。記憶装置33には、ラインスキャンカメラ21で撮影された画像データや、速度センサ22、加速度センサ23、GPS受信機24及び距離センサ25で収集された各種のデータや、プログラム本体が記憶される。なお、記憶装置33は、ノートPC26に内蔵されたもののほか、ノートPC26にUSB(Universal Serial Bus)等で接続された外付けのものでもよい。
通信装置34は、移動体通信によるインターネット回線を通じて、道路の管理施設に設置されたサーバとデータの送受信を行う。
入力装置35は、ノートPC26のキーボードや、タッチパネル、タッチパッド及びマウス等のポインティングデバイスであり、操作者により、道路点検システムSの動作に関する指令や設定が入力される。
出力装置36は、ノートPC26のディスプレイであり、道路点検システムSの操作に関するGUI(Graphical User Interface)や、速度センサ22や加速度センサ23で検出された検出情報や、ラインスキャンカメラ21で撮影された撮影画像や、CPU31による演算結果を表示する。また、他の出力装置36として、道路点検システムSの走査に関する音を出力するスピーカや、種々の検出結果を紙媒体に出力するプリンタを備えてもよい。
読取装置37は、ノートPC26で実行されて道路点検システムSの機能を実現するためのプログラムを、CD―ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体等から読み取るものである。
図6は、点検車両20の走行中に、ラインスキャンカメラ21で舗装3や橋梁を撮影する様子を模式的に示した平面図である。図6に示すように、点検車両20が、矢印Aで示すように前進方向に走行するに伴い、点検車両20の背面に設置されたラインスキャンカメラ21により、橋梁の舗装3の橋軸直角方向に延びる線状の撮像領域28の様子が撮影される。撮像領域28は、橋梁上の舗装3の表面から橋梁の側方へ亘るように設定されている。ラインスキャンカメラ21で撮像領域28を撮影しながら点検車両20が走行することにより、舗装3の像と、点検車両20の側方に位置する高欄10等の道路構造物の像とを含んで走行方向に連続したラインスキャン画像が得られる。ラインスキャン画像は可視光画像であり、モノクロ又はカラーのいずれでもよい。点検車両20の走行中にラインスキャンカメラ21で撮影されたラインスキャン画像のデータは、速度センサ22で検出された速度データと、加速度センサ23で検出された加速度データと、GPS受信機24で検出された位置データと、距離センサ25で検出された距離データに関連付けられて、記憶装置33に保存される。
図7は、舗装3上を走行する点検車両20からラインスキャンカメラ21で撮影された撮影画像であるラインスキャン画像の一部を示す模式図である。図7に示すように、ラインスキャン画像40は、橋梁の舗装3に沿って延在する細長矩形状を有し、舗装3の橋軸直角方向がラインスキャンカメラ21による主走査方向に一致すると共に、延在方向が副走査方向と一致する。このラインスキャン画像40には、舗装3と実質的に同一面に設置された道路構造物として、例えば、舗装3を横断する継手41と、舗装3の側部の排水口46と、舗装3の橋軸方向に連続する車道外側線47と、舗装3の橋軸方向に断続的に表れる車線境界線48の像が含まれる。また、このラインスキャン画像40には、舗装3の側方に位置し、点検車両20からの側方視像として、例えば、高欄10と、高欄10に設置され、継手41に対応して橋梁の下部に位置する橋脚の番号を示す橋脚番号標42と、高欄10の上部に設置された防音壁44と、防音壁44の支柱43の像が含まれる。
本実施形態の橋梁の点検方法は、まず、舗装3の損傷又は損傷補修跡を検出する舗装損傷検出工程を行う。舗装損傷検出工程では、点検対象の道路橋を走行して得たラインスキャン画像40に基づいて、舗装3のひび割れやポットホールや陥没等の損傷、又は、これらの損傷の補修跡を検出する。図7のラインスキャン画像40において、このような損傷として、舗装3の延在方向に延びるひび割れ51や、舗装3の橋軸直角方向に延びるひび割れ52を抽出できる。また、損傷補修跡として、アスファルト乳剤等で形成され、数センチメートルの幅を有して舗装3の延在方向に延びる帯状のひび割れ補修跡53がある。これらの舗装3の損傷又は損傷補修跡は、ラインスキャン画像40を操作者が目視することにより検出できる。
図8は、道路点検システムSのディスプレイに表示される損傷検出画面を示す模式図である。この損傷検出画面は、記憶装置33に格納されたプログラムがCPU31で実行されて表示され、以下に説明する処理が行われる。図8に示すように、損傷検出画面60には、道路の側方のラインスキャン画像を表示する側方画像表示窓61と、舗装3のラインスキャン画像を表示する舗装画像表示窓62と、各表示窓61,62に表示された画像の撮影位置を地図により表示する地図表示窓63と、各表示窓61,62に表示された画像の撮影位置を橋脚番号と継手41からの距離で表示する撮影位置表示窓64が設定されている。
側方画像表示窓61と舗装画像表示窓62は、撮影時刻が同期されており、同一時刻に撮影された同一位置の画像を表示するように設定されている。側方画像表示窓61と舗装画像表示窓62に表示する画像は、入力装置35、地図表示窓63及び撮影位置表示窓64を通じて変更可能に形成されている。例えば、入力装置35としてのキーボードの矢印キーを押下することにより、現在表示されている画像の位置に対して、矢印キーの方向に移動した位置の画像を、表示窓61,62に表示することができる。また、地図表示窓63に表示された地図の所望の位置をポインタで指定することにより、指定された位置で撮影された画像を、表示窓61,62に表示することができる。また、撮影位置表示窓64に、橋脚番号と、この橋脚番号から測定された距離とを入力装置35で入力することにより、入力された橋脚番号及び距離で特定される位置で撮影された画像を、表示窓61,62に表示することができる。
このように、道路測定システムSの損傷検出画面によれば、ラインスキャンカメラ21で撮影されたラインスキャン画像40について、その撮影位置を、地図や、橋脚番号及び橋脚番号からの距離で特定することができる。また、地図や、橋脚番号及び橋脚番号からの距離により特定した位置のラインスキャン画像40を、容易に読み出して表示することができる。したがって、ラインスキャン画像40中の舗装3の損傷又は損傷補修跡を、容易に検出することができると共に、検出した損傷又は損傷補修跡の位置を容易に特定することができる。なお、舗装3の損傷又は損傷補修跡は、損傷検出画面を通してラインスキャン画像40を操作者が視認して検出する以外に、画像認識プログラムを実行するコンピュータが、ラインスキャン画像40に対して、色や形状に基づく画像認識処理を実行して検出してもよい。
舗装3の損傷又は損傷補修跡が検出されると、この損傷又は損傷補修跡が存在する損傷位置と、橋梁を構成する部材の配置位置とを照らし合わせる照合工程を行う。舗装3の損傷位置と、橋梁の部材の配置位置との照合は、舗装3を含むラインスキャン画像40と、橋梁の部材の配置位置を示した図面とを重ね合せて行う。橋梁の図面は、鋼床版1の製造ブロック毎に作製され、デッキプレート2や横リブ6やトラフリブ7等の構造部材及び継手41の配置位置が記載された製作図と、桁4,5の平面配置図と、橋梁に設置される各種の設備が記載された設備図と、舗装3に設けられる車道外側線47や車線境界線48等の区画線の配置位置が記載された区画線設置図と、橋脚番号標42の配置図とを組み合わせて作製された単一の図面である。設備図は、防護設備、照明設備、標識設備、及び/又は、排水設備の配置位置が記載されている。防護設備には、橋梁の端部に設置される高欄10や、ガードレールや、防護壁や、防音壁44や、支柱等43が含まれる。また、照明設備には、照明柱や、高欄照明や、ランプ等が含まれる。また、標識設備には、標識柱や、電光パネルや、標識板等が含まれる。また、排水設備には、排水口46や、排水桝や、排水管等が含まれる。このように、道路構造物として、高欄を含む防護設備、区画線、継手41、橋脚番号標42、照明設備、標識設備及び排水設備等の配置位置が、橋梁の図面に記載されている。このような図面を電子化して画像を作製し、この図面の画像と、ラインスキャン画像40とを、コンピュータの画像処理プログラムによって重ね合せる。これにより、舗装3の損傷位置と、橋梁の部材の配置位置との照合を行う。
ラインスキャン画像40と図面の画像とを重ねる画像処理プログラムとしては、市販の写真編集プログラムやCAD(computer aided design)プログラムを用いることができる。写真編集プログラムは、読み込んだラインスキャン画像40と図面の画像を、夫々異なるレイヤーに対応付け、各レイヤーに属する画像を互いに重複した状態で表示すると共に、各レイヤーの画像の縮尺及び位置を、レイヤー毎に独立して調整可能であるのが好ましい。また、図面の縮尺に対応し、所定の長さおきに交差したグリッドを、ラインスキャン画像40と図面に重複して表示可能であるのが好ましい。上記グリッドにより、ラインスキャン画像40や図面中の対象の寸法や距離を容易に把握することができる。
図9は、ラインスキャン画像40と、橋梁の図面50を、画像処理プログラムによって重ね合せた様子を示す図である。図9では、分かり易さのため、ラインスキャン画像40のうち、舗装3の1車線部分を取り出して、橋梁の図面50に重ね合せている。図面50は、鋼床版1の構成部材の配置位置と、この鋼床版1を支持する桁5の配置位置と、道路構造物の配置位置を示している。この図面50は、1径間分の鋼床版1に関する部材及び道路構造物の配置位置が記載されている。この図面50にラインスキャン画像40を重ね合せるとき、ラインスキャン画像40中の継手41と、鋼床版1の一方の端縁1aとに基づいて、ラインスキャン画像40と図面50の橋軸方向の位置合わせを行う。また、ラインスキャン画像40において、鋼床版1の他方の端縁1bに対応する位置は、舗装3の表面には現れない埋設継手である。そこで、図9には図示しないラインスキャン画像40の側方視像に含まれる高欄10に基づいて、鋼床版1の他方の端縁1bとの位置合わせを行う。すなわち、図7に示すように、鋼床版1の端部に設置された高欄10は、1つの鋼床版1に1つ又は複数のユニットで構成されて設置されており、隣り合う鋼床版1と鋼床版1の間の境界に、高欄10のユニットとユニットの間の境界10aが一致する。したがって、ラインスキャン画像40に含まれる側方視像を探索し、高欄10のユニットの境界10aを抽出して、この高欄10のユニットの境界10aと、鋼床版1の他方の端縁1bとを位置合わせする。なお、高欄10を探索は、ラインスキャン画像40に関連付けられた第2ラインスキャンカメラの画像を用いてもよい。このようにして、舗装30には現れない埋設継手であっても、ラインスキャン画像40に含まれる側方視像や、ラインスキャン画像40に関連付けられた側方視像を用いることにより、ラインスキャン画像40と図面50との位置合わせを行うことができる。以上のように、ラインスキャン画像40中の継手41及び高欄10の境界10aと、図面50中の鋼床版1の両方の端縁1a,1bとを位置合わせすることにより、ラインスキャン画像40と図面50の位置合わせと縮尺の調整を行うことができる。
ここで、ラインスキャン画像40に含まれる区画線としての車道外側線47や車線境界線48の像と、図面50に含まれる車道外側線47や車線境界線48の配置位置とに基づいて、ラインスキャン画像40の幅方向の縮尺を調整してもよい。また、ラインスキャン画像40と図面50との位置合わせを、ラインスキャン画像40中の継手41及び高欄10の境界10aと、図面50中の鋼床版1の両方の端縁1a,1bとで行ったが、ラインスキャン画像40中の排水口46と、画像50中の排水口46の配置位置とで行ってもよい。このように、排水口46等の道路構造物により、ラインスキャン画像40と図面50との位置合わせを行うことができる。また、複数の道路構造物により、ラインスキャン画像40の図面50に対する位置合わせを行うと共に、ラインスキャン画像40の縮尺を調整してもよい。
ラインスキャン画像40と図面50との位置合わせと、ラインスキャン画像40の縮尺の調整が完了すると、ラインスキャン画像40中の舗装3の損傷位置が、図面50中の鋼床版1の構成部材の配置位置と一致するかを確認し、損傷位置に配置位置が一致する構成部材を、点検対象に設定する点検位置設定工程を行う。詳しくは、舗装損傷検出工程で検出された損傷であるひび割れ51とひび割れ補修跡53について、これらの損傷位置と配置位置が一致する部材の有無を確認する。図10は、図9の領域Bを拡大して示した図である。図10において、ラインスキャン画像40の領域Bの部分に符号40aを付し、図面50の領域Bの部分に符号50aを付している。また、55は主桁の配置位置を示すウェブの位置であり、56はトラフリブの配置位置を示す溶接線であり、57は横桁の配置位置を示すウェブの位置であり、58は横リブの配置位置を示すウェブの位置である。図10に示すように、ラインスキャン画像40のひび割れ51が、主桁の配置位置55に沿って延在しており、主桁の配置位置55と一致している。また、ラインスキャン画像40のひび割れ補修跡53が、主桁の配置位置55、及び、トラフリブの配置位置56と一致している。これらの損傷位置と配置位置が一致する主桁4とトラフリブ7について、損傷位置と一致する部分及びその近傍を、点検対象に設定する。
点検位置設定工程で点検対象が設定されると、点検対象の主桁4とトラフリブ7の該当箇所に対して、点検を行う。点検は、交通規制を伴わない鋼床版1の下側面からの点検を優先して行う。鋼床版1の下側面からの点検は、箱桁の内側や、箱桁の外側に設置した足場や、地上に設置した高所作業車から、目視や非破壊検査により行うことができる。これらのいずれの点検も、点検対象の箇所が設定されているので、鋼床版1の全ての部分を点検するよりも、手間とコストと時間を大幅に削減できる。また、トラフリブ7の内側に貫通亀裂18の疑いがある場合でも、点検対象が限定されているため、フェイズドアレイ超音波探傷を適用することが可能となる。したがって、トラフリブ7の内側の貫通亀裂18を検出するために通常行われる舗装3の除去は、不要になる可能性がある。このようにして、本実施形態によれば、主桁4とトラフリブ7のうち、舗装3のひび割れ51とひび割れ補修跡53の損傷位置に対応する部分について点検を行う。したがって、主桁4やトラフリブ7の全部を点検するよりも、効率を高めることができる。また、舗装3を除去して渦流探傷検査や磁粉探傷検査等を行う場合においても、検査範囲を予め特定できるので、舗装3の除去範囲を少なくでき、検査コストを削減できると共に、検査に伴う道路の規制の範囲や期間を削減できて、道路交通への影響を少なくできる。
本実施形態において、ラインスキャンカメラ21による撮影画像であるラインスキャン画像は、点検車両20の進行方向に対して直角方向である舗装路の橋軸直角方向が主走査方向であると共に、点検車両20の進行方向が副走査方向である。したがって、図11(a)に示すように、点検車両20が直線状の舗装路70を、矢印Cで示すように、直線状の舗装路70に沿って走行する場合、副走査方向が直線であるため、撮影領域71は、ラインスキャンカメラ21による主走査領域が、直線状の副走査方向に連なって形成される。この撮影領域71を撮影して得られるラインスキャン画像72は、図11(b)に示されるように、各主走査領域を撮影してなるスキャンラインが、スキャンラインの直角方向に順次配列されて形成されるので、撮影領域71と相似形である。一方、図12(a)に示すように、点検車両20が、矢印Dで示すように、曲線状の舗装路75を走行する場合、副走査方向が曲線であるため、撮影領域76は、ラインスキャンカメラ21による主走査領域が、曲線状の副走査方向に連なって形成される。この撮影領域76を撮影して得られるラインスキャン画像77は、図12(b)に示されるように、各主走査領域を撮影してなるスキャンラインが、スキャンラインの直角方向に順次配列されて形成されるので、撮影領域76とは非相似形となる。したがって、点検車両20が曲線状の舗装路75を走行する場合や、走行経路が車線変更等によって湾曲する場合、ラインスキャンカメラ21による撮影画像は、橋梁の図面と一致しない。このような不都合を解消するため、本実施形態では、次のようにして、ラインスキャン画像の調整を行う。
まず、道路点検システムSの記憶装置33から、ラインスキャンカメラ21の撮影画像と、速度センサ22が検出した速度データと、加速度センサ23が検出した加速度データを読み出す。図13(a)は、曲線状の舗装路75を走行して撮影されたラインスキャン画像77を示す模式図であり、ラインスキャンカメラ21による主走査方向の走査により形成され、単位画像である複数のスキャンライン78が、スキャンライン78の直角方向に配列されて形成されている。続いて、ラインスキャン画像77に関連付けられた速度データ及び加速度データに基づいて、各スキャンライン78が撮影されたときの速度vと、曲線状の走行経路の遠心方向、すなわち、点検車両20の幅方向の加速度αを特定する。速度vと加速度αが特定されると、これらの速度v(m/sec)と加速度α(m/sec
2)を、次式(1)に代入して、曲率半径r(m)を算出する。
ここで、スキャンライン78が、点検車両20が走行する曲線経路の微小円弧Δsを成すとすると、この微小円弧Δsに対応する曲線の微小中心角Δθと、曲率半径r(m)との間に、次式(2)が成立する。
したがって、次式(3)により、所定のスキャンライン78が、隣接するスキャンライン78に対してなす角度Δθを算出することができる。
ここで、微小円弧Δsは、所定のスキャンライン78の撮影時刻と、隣接するスキャンライン78の撮影時刻との差分に、速度を乗じて算出できる。
上記数式(3)により求めた角度Δθだけ、隣接するスキャンライン78に対して、所定のスキャンライン78の配置角度を変更する。図13(b)は、隣り合うスキャンライン78の配置角度を、Δθだけ変更した様子を示している。スキャンライン78の配置角度を変更した場合、スキャンライン78の相互間に生じる隙間は、補完処理により埋める一方、スキャンライン78の相互の重複部は、必要に応じてスムージング等の処理を行うことができる。こうして、ラインスキャン画像77を構成する全てのスキャンライン78について、角度Δθを算出して配置角度を変更することにより、ラインスキャン画像77を、点検車両20の走行経路に沿った形状に調整することができる。したがって、調整されたラインスキャン画像77は、橋梁の図面と正確に重ね合せることができるので、ラインスキャン画像77に含まれる舗装3の損傷位置と、図面に含まれる鋼床版又は桁の部材の配置位置とを、正確に照合することができる。なお、道路線形には、直線部と円弧部との間に、緩和区間としてクロソイド部が設けられている。点検車両20が直線部から円弧部に走行する過程で、点検車両20の幅方向の加速度αは、直線部で0であり、クロソイド部で漸増し、円弧部で一定の値となる。したがって、式(1)の算出値が過大とならないように、代入する加速度αの値に閾値を設けるのが好ましい。
上記実施形態において、ラインスキャンカメラ21で撮影されたラインスキャン画像40,72,77は、舗装3が橋軸方向に等間隔おきに走査されて生成されたものである。このラインスキャンカメラ21が舗装3の走査を行ってスキャンラインを生成するタイミングは、空間フィルタ式の非接触走行距離計で点検車両20の走行距離を検知し、一定の走行距離毎に行う。例えば、非接触走行距離計により、点検車両20が1mm走行する毎に、ラインスキャンカメラ21が走査を1回行うように設定できる。このように、点検車両20の走行距離に応じてラインスキャンカメラ21が舗装3を走査することにより、実質的に橋軸方向と一致する走行方向に、歪みの無い撮影画像を得ることができる。
上記実施形態において、ラインスキャン画像のスキャンラインの配置角度の調整や、スキャンラインの配置間隔の調整や、スキャンラインカメラの走査周期の調整は、単一のスキャンライン毎に行ってもよく、また、複数のスキャンライン毎に行ってもよい。
また、上記実施形態において、舗装3の損傷は、ラインセンサを有するラインスキャンカメラ21で撮影されたラインスキャン画像40を用いて特定したが、エリアセンサを有するエリアカメラを用いて形成された画像を用いて特定してもよい。また、舗装3の損傷位置は、画像で特定する以外に、舗装3の存在する現地位置で検出して特定してもよい。
また、上記実施形態において、舗装3の損傷としてのひび割れ51,52及びひび割れ補修跡53について、損傷位置と部材の配置位置とを照らし合わせたが、ポットホール、陥没及びわだち等の他の損傷又は損傷補修跡について、損傷位置と部材の配置位置とを照らし合わせてもよい。
本発明は、陸に設置される高架橋や、河川又は海を跨いで設置される橋梁等の種々の橋梁について適用可能である。