JP2017002388A - 高強度アルミニウム合金熱間鍛造材 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた耐食性を有することを前提に、高い引張強度と高い耐力、そして高い伸びを有する6000系アルミニウム合金熱間鍛造材の提供。【解決手段】質量%で、Si:0.7〜1.5%、Mg:0.6〜1.2%、Fe:0.01〜0.5%を含有し、更に、Mn:0.05〜0.8%、Cr:0.01〜0.5%、Zr:0.01〜0.2%のうちの一種又は二種以上を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金熱間鍛造材であって、方位差が2°以上と小さな結晶粒までを含めて微細化し、前記結晶粒の平均方位差であるKAM値を0.6〜2.0°の範囲に制御することにより、図1の試験方法で評価される応力腐食割れ性が優れ、高い引張強度と高い耐力、そして高い伸びを有する6000系アルミニウム合金熱間鍛造材。【選択図】図1
Description
本発明は高強度なアルミニウム合金熱間鍛造材に関するものである。以下、アルミニウムを単にAlとも言う。
近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されている。このため、自動車などの輸送機の構造材や構造部品、特に、アッパーアーム、ロアーアームなどの自動車足回り部品として、AA乃至JIS の規格で言う6000系(Al−Mg−Si系)アルミニウム合金熱間鍛造材が使用されている。
これらの構造材や構造部品として、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材は、高強度高靱性であり、耐食性にも比較的優れている。以下、輸送機の構造材や構造部品として、自動車足回り部品を例にとって説明する。
これらの構造材や構造部品として、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材は、高強度高靱性であり、耐食性にも比較的優れている。以下、輸送機の構造材や構造部品として、自動車足回り部品を例にとって説明する。
自動車の一層の軽量化のために、自動車足回り部品には、より薄肉化させた上での高強度化や高靱性化が求められている。また、保安部品としての信頼性から、粒界腐食や応力腐食割れなどに対しての高耐食性化も求められている。このため、従来から、素材としての6000系アルミニウム合金熱間鍛造材の組成やミクロ組織を改善することが種々行われている。
例えば、6000系アルミニウム合金鍛造材の結晶粒の微細化のために、Mn、Zr、Crなどの結晶粒微細化効果を有する遷移元素を添加することや、450〜570℃程度の比較的高温で熱間鍛造を行うことなどが周知である。また、高強度と高靭性を得るために、熱間鍛造用の素材として、鋳塊を一旦熱間押出加工した押出材を用い、鍛造材の組織における未再結晶領域を微細化させることも提案されている(特許文献1参照)。
一方、熱間鍛造材の分野ではないが、アルミニウム合金材の高強度化の冶金的な手法として、6000系アルミニウム合金鋳造材に溶体化処理をした後で、150〜250℃程度の温間鍛造加工を繰り返し行い、その後人工時効処理することが提案されている(特許文献2、3参照)。
また、これもアルミニウム合金の分野ではないが、コルソン合金(Cu−Ni−Si系銅合金)の圧延板の分野において、SEM−EBSD法により測定された結晶粒の平均方位差であるKAM値(Kernel Average Misorientation値)を制御して、強度異方性が小さく、特に圧延直角方向の耐力が高く、また、曲げ加工性のバランスに優れたコルソン合金が提案されている(特許文献4、5参照)。
ちなみに、このKAM値は、鋼板の分野などでも、高強度冷延鋼板(ハイテン)の強度と伸びと伸びフランジ性のバランスを確保する指標として公知である(特許文献6参照)。
前記特許文献1のように、熱間鍛造用素材として押出材を用いた場合、押出方向に平行な方向では高い耐力が得られるものの、強度異方性が高いという問題がある。
また、前記した従来の6000系アルミニウム合金熱間鍛造材における結晶粒の微細化技術は、より高い引張強度と高い耐力とするためには未だ改善の余地がある。
また、前記した従来の6000系アルミニウム合金熱間鍛造材における結晶粒の微細化技術は、より高い引張強度と高い耐力とするためには未だ改善の余地がある。
前記特許文献2、3のような、6000系アルミニウム合金鋳造材に温間鍛造加工を繰り返し行い、その後人工時効処理することで、高強度化を行う手法も、500℃などと温度が高い熱間鍛造を行っては、高強度化の効果が小さいとしており、この手法が、6000系アルミニウム合金の熱間鍛造材の機械的特性の向上に有効かどうかは不明である。
そして、前記結晶粒の平均方位差であるKAM値も、前記特許文献3〜6のような、銅合金板や鋼板などの圧延板の機械的特性の向上には有効であったとしても、合金組成や特性、そして製法が全く異なる、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材の機械的特性の向上に有効かどうかは不明である。
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、優れた耐食性を有することを前提に、高い引張強度と高い耐力、そして高い伸びを有する6000系アルミニウム合金熱間鍛造材を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明の要旨は、質量%で、Si:0.7〜1.5%、Mg:0.6〜1.2%、Fe:0.01〜0.5%を各々含有するとともに、更に、Mn:0.05〜0.8%、Cr:0.01〜0.5%、Zr:0.01〜0.2%のうちから一種または二種以上を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金熱間鍛造材であって、SEM−EBSD法により測定された板厚中心部における組織として、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径が30μm以下であるとともに、前記結晶粒の平均方位差であるKAM値が0.6〜2.0°の範囲であることとする。
本発明では、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材の結晶粒の微細化とともに、前記結晶粒の平均方位差を定量化したKAM値が、この鍛造材の引張強度や耐力と強く相関していることを、新しく知見した。
このKAM値自体は、前記特許文献3〜6に記載されている通り、SEM−EBSD法により測定される結晶粒の平均方位差の量であり、結晶粒の残存ひずみ量の計算手法としても、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材以外の分野で公知である。
このKAM値自体は、前記特許文献3〜6に記載されている通り、SEM−EBSD法により測定される結晶粒の平均方位差の量であり、結晶粒の残存ひずみ量の計算手法としても、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材以外の分野で公知である。
このKAM値は、鍛造材の既に規格化されている6000系アルミニウム合金組成を変更することなく、熱間鍛造にて製造した鍛造材に、更に冷間から温間の領域での比較的軽度の鍛造と人工時効処理とを繰り返し施すことによって、好適に制御できる。
本発明は、前記した方位差が2°以上の結晶粒の微細化と、前記KAM値の制御によって、耐食性を低下させず、高い引張強度と高い耐力、そして高い伸びを有する、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材が提供できる。このため、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材の自動車足回り部品の保安部品としての信頼性が増す。
以下に、本発明の実施態様につき具体的に説明する。
(化学成分組成)
先ず、本発明鍛造材や、鋳造材の素材である鋳塊の、アルミニウム合金の化学成分組成について、以下に説明する。
先ず、本発明鍛造材や、鋳造材の素材である鋳塊の、アルミニウム合金の化学成分組成について、以下に説明する。
本発明における6000系(Al−Mg−Si系)アルミニウム合金の化学成分組成は、前記した足回り鍛造部品などとして、高強度、耐応力腐食割れ性などの高い耐食性乃至耐久性を保証する必要がある。このため、6000系アルミニウム合金組成範囲の中でも、本発明におけるアルミニウム合金組成は、質量%で、Si:0.7〜1.5%、Mg:0.6〜1.2%、Fe:0.01〜0.5%を各々含有するとともに、更に、Mn:0.05〜0.8%、Cr:0.01〜0.5%、Zr:0.01〜0.2%のうちの一種または二種以上を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金とする。
また、強度などの特性向上のために、前記アルミニウム合金が、更に、質量%で、Cu:0.05〜1.0%、Ti:0.01〜0.1%、Zn:0.005〜0.2%の一種または二種以上を含有しても良い。なお、各元素量における%表示はすべて質量%の意味である。
ここで、溶解原料スクラップなどから必然的に混入される、他の不純物元素も、前記組成残部のうちの不可避的不純物として、本発明の諸特性を阻害しない範囲で、JIS規格の上限規定などに基づく通常の量を含むことは許容される。次に、各元素の含有量について、臨界的意義や好ましい範囲について説明する。
Si:0.7〜1.5%、
Siは、Mgとともに人工時効処理により、主として針状β' 相として析出して、自動車足回り部品使用時の高強度、高耐力を付与するために必須の元素である。
Siの含有量が少な過ぎると、人工時効処理時の析出量が少なくなりすぎ、高強度が得られない。
一方、Siの含有量が多過ぎると、鋳造時および溶体化処理後の焼き入れ途中で、粗大な単体Si粒子が晶出および析出して、耐食性と靱性を低下させる。また、過剰Siが多くなって、高耐食性と高靱性高疲労特性を得ることができない。更に伸びが低くなるなど、熱間鍛造性や加工性も阻害する。
したがって、Siの含有量は0.7〜1.5%の範囲とする。
Siは、Mgとともに人工時効処理により、主として針状β' 相として析出して、自動車足回り部品使用時の高強度、高耐力を付与するために必須の元素である。
Siの含有量が少な過ぎると、人工時効処理時の析出量が少なくなりすぎ、高強度が得られない。
一方、Siの含有量が多過ぎると、鋳造時および溶体化処理後の焼き入れ途中で、粗大な単体Si粒子が晶出および析出して、耐食性と靱性を低下させる。また、過剰Siが多くなって、高耐食性と高靱性高疲労特性を得ることができない。更に伸びが低くなるなど、熱間鍛造性や加工性も阻害する。
したがって、Siの含有量は0.7〜1.5%の範囲とする。
Mg:0.6〜1.2%
Mgも、人工時効硬化処理(時効処理)により、Siとともに、主として針状β' 相として結晶粒内に析出し、自動車足回り部品の高強度、高耐力を付与するために必須の元素である。
Mgの含有量が少な過ぎると、人工時効処理時の析出量が少なくなりすぎ、高強度が得られない。
一方、Mgの含有量が多過ぎると、粗大なMg含有の化合物が、結晶の粒内や粒界に生成してしまい、耐食性、靱性を低下させる。また、強度 (耐力) が高くなりすぎ、熱間鍛造性や加工性を阻害する。
したがって、Mg含有量は0.6〜1.2%の範囲とする。
Mgも、人工時効硬化処理(時効処理)により、Siとともに、主として針状β' 相として結晶粒内に析出し、自動車足回り部品の高強度、高耐力を付与するために必須の元素である。
Mgの含有量が少な過ぎると、人工時効処理時の析出量が少なくなりすぎ、高強度が得られない。
一方、Mgの含有量が多過ぎると、粗大なMg含有の化合物が、結晶の粒内や粒界に生成してしまい、耐食性、靱性を低下させる。また、強度 (耐力) が高くなりすぎ、熱間鍛造性や加工性を阻害する。
したがって、Mg含有量は0.6〜1.2%の範囲とする。
Fe:0.01〜0.5%
Feは、Siと金属間化合物を生成して分散粒子 (分散相) を生成し、再結晶後の粒界移動を妨げ、再結晶を抑制し、結晶粒の粗大化を防止するとともに、結晶粒を微細化させる効果がある。
一方で、Feの含有量が多すぎると、結晶粒内および結晶粒界に粗大な化合物を形成しやすくなり、耐食性とじん性を低下させやすい。また、Feが形成する金属間化合物中にSiを含有しやすいため、Siを必要とする人工時効処理で生成する針状のβ’が低減してしまい、強度が低下しやすくなる。
したがって、Fe含有量は0.01〜0.5%の範囲とする。
Feは、Siと金属間化合物を生成して分散粒子 (分散相) を生成し、再結晶後の粒界移動を妨げ、再結晶を抑制し、結晶粒の粗大化を防止するとともに、結晶粒を微細化させる効果がある。
一方で、Feの含有量が多すぎると、結晶粒内および結晶粒界に粗大な化合物を形成しやすくなり、耐食性とじん性を低下させやすい。また、Feが形成する金属間化合物中にSiを含有しやすいため、Siを必要とする人工時効処理で生成する針状のβ’が低減してしまい、強度が低下しやすくなる。
したがって、Fe含有量は0.01〜0.5%の範囲とする。
Mn:0.05〜0.8%、Cr:0.01〜0.5%、Zr:0.01〜0.2%のうちから一種または二種以上
Mn、Cr、Zrは、Feと同様、Siと金属間化合物を生成して分散粒子 (分散相) を生成し、再結晶後の粒界移動を妨げ、再結晶を抑制し、結晶粒の粗大化を防止するとともに、結晶粒を微細化させる効果がある。
一方で、Mn、Cr、Zrの含有量が多すぎると、結晶粒内および結晶粒界に粗大な化合物を形成しやすくなり、耐食性とじん性を低下させやすい。また、これらの元素が形成する金属間化合物中にSiを含有しやすいため、Siを必要とする人工時効処理で生成する針状のβ’が低減してしまい、強度が低下しやすくなる。
したがって、これらの元素の一種または二種以上を含有させる場合の、各々の含有量は、Mn:0.05〜0.8%、Cr:0.01〜0.5%、Zr:0.01〜0.2%の範囲とする。
Mn、Cr、Zrは、Feと同様、Siと金属間化合物を生成して分散粒子 (分散相) を生成し、再結晶後の粒界移動を妨げ、再結晶を抑制し、結晶粒の粗大化を防止するとともに、結晶粒を微細化させる効果がある。
一方で、Mn、Cr、Zrの含有量が多すぎると、結晶粒内および結晶粒界に粗大な化合物を形成しやすくなり、耐食性とじん性を低下させやすい。また、これらの元素が形成する金属間化合物中にSiを含有しやすいため、Siを必要とする人工時効処理で生成する針状のβ’が低減してしまい、強度が低下しやすくなる。
したがって、これらの元素の一種または二種以上を含有させる場合の、各々の含有量は、Mn:0.05〜0.8%、Cr:0.01〜0.5%、Zr:0.01〜0.2%の範囲とする。
Cu:0.05〜1.0%、Ti:0.01〜0.1%、Zn:0.005〜0.2%の一種または二種以上
Cu、Ti、Znは、鍛造材の強度や靱性を向上させる同効元素であるので、これらの効果を期待する場合には、一種または二種以上選択的に含有させる。
Cuは固溶強化にて鍛造材の強度、靱性の向上に寄与する他、時効処理に際して、最終製品の時効硬化を著しく促進する効果も有する。Cuの含有量が少な過ぎると、これらの強度向上効果が無い。一方、Cuの含有量が多過ぎると、アルミニウム合金熱間鍛造材の組織の応力腐食割れや粒界腐食の感受性を著しく高め、アルミニウム合金熱間鍛造材の耐食性や耐久性を低下させる。したがって、含有させる場合のCuの含有量は0.05〜1.0%の範囲とする。
Cu、Ti、Znは、鍛造材の強度や靱性を向上させる同効元素であるので、これらの効果を期待する場合には、一種または二種以上選択的に含有させる。
Cuは固溶強化にて鍛造材の強度、靱性の向上に寄与する他、時効処理に際して、最終製品の時効硬化を著しく促進する効果も有する。Cuの含有量が少な過ぎると、これらの強度向上効果が無い。一方、Cuの含有量が多過ぎると、アルミニウム合金熱間鍛造材の組織の応力腐食割れや粒界腐食の感受性を著しく高め、アルミニウム合金熱間鍛造材の耐食性や耐久性を低下させる。したがって、含有させる場合のCuの含有量は0.05〜1.0%の範囲とする。
Znは、人工時効処理において、Zn−Mg析出物を、微細かつ高密度に析出、形成して、強度、靱性を向上させる。また、固溶したZnは粒内の電位を下げ、腐食形態を粒界からではなく、全面的な腐食として、粒界腐食や応力腐食割れを結果として軽減する効果もある。しかし、Znの含有量が多過ぎると、耐食性が顕著に低下する。したがって、含有する場合のZnの含有量は0.005〜0.2%の範囲とする。
Tiは、鋳塊の結晶粒を微細化し、鍛造材組織を微細な結晶粒として、強度、靱性を向上させる効果がある。Tiの含有量が少な過ぎるとこの効果が発揮されない。しかし、Tiの含有量が多過ぎると、粗大な晶出物を形成し、前記加工性を低下させる。したがって、含有させる場合のTiの含有量は0.01〜0.1%の範囲とする。
この他、以下に記載する元素は不純物であり、各々、以下に各々記載する含有量まで許容される。水素は不純物として混入しやすく、特に、鍛造材の加工度が小さくなる場合、水素に起因する気泡が鍛造等加工で圧着せず、ブリスターが発生し、破壊の起点となるため、靱性や疲労特性を著しく低下させる。特に、高強度化した足回り部品などにおいては、この水素による影響が大きい。したがって、Al 100g 当たりの水素濃度は0.25ml以下の、できるだけ少ない含有量とすることが好ましい。
Sc、V、Hfも不純物として混入しやすく、足回り部品の特性を阻害するので、これらの合計で0.3%未満とする。また、BはTiと化合してTiの鋳塊結晶粒微細化効果を高める。しかし、300ppmを越えて含有されると、やはり粗大な晶出物を形成し、前記加工性を低下させる。したがって、B は300ppm以下の含有まで許容する。
(組織)
以上の合金組成を前提に、本発明では、自動車などの輸送機の構造材や構造部品、特に自動車足回り鍛造部品などとしての鍛造材につき、SEM−EBSD法により測定された板厚中心部における組織として、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径を30μm以下とするとともに、前記方位差が2°以上の結晶粒の平均方位差を定量化したKAM値を0.6〜2.0°(deg)の範囲とする。
本発明は、このような結晶粒の微細化と前記KAM値の制御によって、耐食性を低下させずに、高い引張強度と高い耐力、そして高い伸びを有する、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材とすることができる。KAM値が0.6°未満と小さすぎる場合には、高い引張強度や耐力とすることができず、2.0°を超えて大きすぎる場合にも、高い引張強度や耐力とすることができず、伸びも低下する。
以上の合金組成を前提に、本発明では、自動車などの輸送機の構造材や構造部品、特に自動車足回り鍛造部品などとしての鍛造材につき、SEM−EBSD法により測定された板厚中心部における組織として、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径を30μm以下とするとともに、前記方位差が2°以上の結晶粒の平均方位差を定量化したKAM値を0.6〜2.0°(deg)の範囲とする。
本発明は、このような結晶粒の微細化と前記KAM値の制御によって、耐食性を低下させずに、高い引張強度と高い耐力、そして高い伸びを有する、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材とすることができる。KAM値が0.6°未満と小さすぎる場合には、高い引張強度や耐力とすることができず、2.0°を超えて大きすぎる場合にも、高い引張強度や耐力とすることができず、伸びも低下する。
ここで、SEM−EBSD法により測定される「方位差が2°以上の結晶粒」とは、「方位差が2°以上の粒界(境界)を有する結晶粒」であり、例えば2°、15°、20°など、2°以上の方位差を有する数多くの結晶粒がその範疇に含まれる。
本発明では、このような方位差が2°など、比較的方位差が小さいものまで含めた、結晶粒の微細化が、強度(引張強度や0.2%耐力)の向上に大きく影響することを知見して、規定している。すなわち、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径を30μm以下と微細化することによって、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材の高強度化が可能となる。
この詳細な理由は未だ不明であるが、2°以上の方位差がある粒界(境界)であれば、転位の運動を妨げる効果があるため、前記平均粒径を30μm以下に微細化することにより、前記転位の運動を妨げる粒界が著しく増して、鍛造材が高強度化されるのではないかと推考される。
本発明では、このような方位差が2°など、比較的方位差が小さいものまで含めた、結晶粒の微細化が、強度(引張強度や0.2%耐力)の向上に大きく影響することを知見して、規定している。すなわち、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径を30μm以下と微細化することによって、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材の高強度化が可能となる。
この詳細な理由は未だ不明であるが、2°以上の方位差がある粒界(境界)であれば、転位の運動を妨げる効果があるため、前記平均粒径を30μm以下に微細化することにより、前記転位の運動を妨げる粒界が著しく増して、鍛造材が高強度化されるのではないかと推考される。
本発明のSEM−EBSD法により測定されるKAM値(Kernel Averaged Misorientation)は、前記「方位差が2°以上の結晶粒」の平均方位差である。
このKAM値自体は、残存ひずみと相関があることが、例えば、「材料」(Journal of the Society of Materials Science, Japan)Vol.58、No.7, P568-574,July 2009などで公知である。
また、KAM値は、隣接する測定点間の結晶方位の差である局所方位差を、平均方位差として定量化した値であることが、前記した特許文献などでも公知である。
そして、このようなKAM値は、結晶粒の数をn、それぞれの測定した各結晶粒の方位差(°)をyとしたとき、(Σy)/nで定義されている。
このKAM値自体は、残存ひずみと相関があることが、例えば、「材料」(Journal of the Society of Materials Science, Japan)Vol.58、No.7, P568-574,July 2009などで公知である。
また、KAM値は、隣接する測定点間の結晶方位の差である局所方位差を、平均方位差として定量化した値であることが、前記した特許文献などでも公知である。
そして、このようなKAM値は、結晶粒の数をn、それぞれの測定した各結晶粒の方位差(°)をyとしたとき、(Σy)/nで定義されている。
ただ、本発明のKAM値は、前記した結晶粒の定義の通り、方位差が2°などの比較的方位差が小さいものまで含めた、数多くの結晶粒を、KAM値測定の基準としている点が、従来と異なる。すなわち、KAM値は、その測定の基準あるいは対象となる結晶粒の方位差をどう規定するかによって、その値が大きく異なってくる。
本発明は、前記「方位差が2°以上の結晶粒」の平均方位差を定量化したKAM値が、この結晶粒の前記微細化とともに、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材の引張強度や0.2%耐力と強く相関していることを知見した。
本発明は、前記「方位差が2°以上の結晶粒」の平均方位差を定量化したKAM値が、この結晶粒の前記微細化とともに、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材の引張強度や0.2%耐力と強く相関していることを知見した。
このKAM値による高強度化は、熱間鍛造材の、前記自動車足回り部品などとして既に規格化されている6000系アルミニウム合金組成を変更することなく、熱間鍛造にて製造した鍛造材に、更に冷間から温間の領域での比較的軽度の鍛造と人工時効処理とを繰り返し施すことによって制御できる。
したがって、組成や熱間鍛造条件の変更によって生じる、耐食性の低下や、機械的特性の変化などを伴わずに、高い引張強度と高い耐力、そして高い伸びを有する、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材が製造できる。このため、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材の、自動車足回り部品などの保安部品用としての信頼性が増すこととなる。
したがって、組成や熱間鍛造条件の変更によって生じる、耐食性の低下や、機械的特性の変化などを伴わずに、高い引張強度と高い耐力、そして高い伸びを有する、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材が製造できる。このため、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材の、自動車足回り部品などの保安部品用としての信頼性が増すこととなる。
また、本発明は熱間鍛造条件の変更を伴わないため、このような組織や特性を、最小の肉厚減少率が25%を超える大きな加工率で熱間鍛造加工を行っても実現できる利点がある。
例えば、本発明の用途としての足回り鍛造部品は、汎用されている形状としては、略三角形の全体形状と、平面視で略Y型形状のアーム部と、このアーム部の3つの各端部に各々ボールジョイント部(3箇所)を有するような、複雑形状となっている。このため、必然的に、最小の肉厚減少率が25%を超える大きな加工率が必要となるが、このような大きな加工率で熱間鍛造加工を行っても実現できる。
例えば、本発明の用途としての足回り鍛造部品は、汎用されている形状としては、略三角形の全体形状と、平面視で略Y型形状のアーム部と、このアーム部の3つの各端部に各々ボールジョイント部(3箇所)を有するような、複雑形状となっている。このため、必然的に、最小の肉厚減少率が25%を超える大きな加工率が必要となるが、このような大きな加工率で熱間鍛造加工を行っても実現できる。
(SEM−EBSD法による測定部位)
これら方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径(μm)やKAM値の測定は、鍛造材の板厚中心部にて行うが、鍛造材が、円形や円柱などの単純な形状であれば、前記測定対象となる鍛造材の板厚中心部は、鍛造材の中心点を基準に特定できる。ただ、前記自動車足回り部品は、代表的には、平面視で略三角形の全体形状からなるとともに、この三角形の頂点部分となる3箇所のボールジョイントを、幅狭で厚い周縁部のリブと幅広で薄肉な中央部のウエブとからなる、断面が略H型または略U型のアームで繋いだ形状からなる。この場合の板厚中心部とは、前記厚肉のリブの任意の位置の板厚中央部の結晶粒組織を、SEM−EBSD法による測定対象とする。
これら方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径(μm)やKAM値の測定は、鍛造材の板厚中心部にて行うが、鍛造材が、円形や円柱などの単純な形状であれば、前記測定対象となる鍛造材の板厚中心部は、鍛造材の中心点を基準に特定できる。ただ、前記自動車足回り部品は、代表的には、平面視で略三角形の全体形状からなるとともに、この三角形の頂点部分となる3箇所のボールジョイントを、幅狭で厚い周縁部のリブと幅広で薄肉な中央部のウエブとからなる、断面が略H型または略U型のアームで繋いだ形状からなる。この場合の板厚中心部とは、前記厚肉のリブの任意の位置の板厚中央部の結晶粒組織を、SEM−EBSD法による測定対象とする。
(測定方法)
具体的な測定方法は、前記厚肉のリブの任意の位置の板厚中央部から採取した測定試料(3個)の断面を研磨する。そして、SEM−EBSDを用いて、前記試料の鍛造材の圧縮方向に平行な断面の、500μm×500μmの測定範囲に対して、1.0μmのピッチで電子線を照射し、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径(μm)と、この結晶粒の平均方位差を定量化したKAM値を測定し、更に、測定した試料数3個で平均化する。
具体的な測定方法は、前記厚肉のリブの任意の位置の板厚中央部から採取した測定試料(3個)の断面を研磨する。そして、SEM−EBSDを用いて、前記試料の鍛造材の圧縮方向に平行な断面の、500μm×500μmの測定範囲に対して、1.0μmのピッチで電子線を照射し、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径(μm)と、この結晶粒の平均方位差を定量化したKAM値を測定し、更に、測定した試料数3個で平均化する。
SEM−EBSD(EBSP)法は、電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope: FESEM)に、後方散乱電子回折像[EBSD: Electron Back Scattering (Scattered) Diffraction Pattern] システムを搭載した結晶方位解析法である。
より具体的に、SEM−EBSDの前記観察用試料の調整は、前記観察試料 (断面組織)を、更に機械研磨後電解エッチングして鏡面化する。そして、FESEM の鏡筒内にセットし、試料の鏡面化した表面に、電子線を照射してスクリーン上にEBSPを投影する。これを高感度カメラで撮影して、コンピュータに画像として取り込む。コンピュータでは、この画像を解析して、既知の結晶系を用いたシミュレーションによるパターンとの比較によって、結晶の方位が決定される。算出された結晶の方位は3次元オイラー角として、位置座標(x、y)などとともに記録される。このプロセスが全測定点に対して自動的に行なわれるので、測定終了時には、鍛造材の断面における数万〜数十万点の結晶方位データが得られる。
(製造方法)
次に、本発明におけるアルミニウム合金熱間鍛造材の製造方法について述べる。本発明におけるアルミニウム合金熱間鍛造材の製造工程自体は、前記組成を有するアルミニウム合金鋳塊を均質化熱処理後、熱間鍛造加工を行い、この鍛造材に溶体化および焼入れ処理と人工時効処理とを施す、常法により製造が可能である。すなわち、余分な工程となる鋳塊の熱間押出加工を行わずとも製造が可能である。但し、自動車足回り鍛造部品などとして、前記組織を有し、高強度化、高靱性化および高耐食性化させるための、以下に示す好ましい製造条件がある。
次に、本発明におけるアルミニウム合金熱間鍛造材の製造方法について述べる。本発明におけるアルミニウム合金熱間鍛造材の製造工程自体は、前記組成を有するアルミニウム合金鋳塊を均質化熱処理後、熱間鍛造加工を行い、この鍛造材に溶体化および焼入れ処理と人工時効処理とを施す、常法により製造が可能である。すなわち、余分な工程となる鋳塊の熱間押出加工を行わずとも製造が可能である。但し、自動車足回り鍛造部品などとして、前記組織を有し、高強度化、高靱性化および高耐食性化させるための、以下に示す好ましい製造条件がある。
(鋳造)
前記特定アルミニウム合金成分範囲内に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を鋳造する場合には、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)、ホットトップ鋳造法等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。
前記特定アルミニウム合金成分範囲内に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を鋳造する場合には、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)、ホットトップ鋳造法等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。
但し、前記特定アルミニウム合金成分範囲からなるアルミニウム合金溶湯を鋳造する際には、晶出物の微細化と、デンドライト二次アーム間隔(DAS) を微細化させるために、平均冷却速度を100 ℃/s以上とすることが好ましい。
(均質化熱処理)
鋳造した鋳塊の均質化熱処理は450〜580℃の温度範囲に2時間以上保持して行う。均質化熱処理温度が450℃未満では、温度が低すぎて鋳塊を均質化できず、均質化熱処理温度が580℃を超えると、鋳塊表面のバーニングが発生する。なお、均質化熱処理後で、熱間鍛造に先立つ押出加工は、不要であるが、所望であれば施しても良い。
鋳造した鋳塊の均質化熱処理は450〜580℃の温度範囲に2時間以上保持して行う。均質化熱処理温度が450℃未満では、温度が低すぎて鋳塊を均質化できず、均質化熱処理温度が580℃を超えると、鋳塊表面のバーニングが発生する。なお、均質化熱処理後で、熱間鍛造に先立つ押出加工は、不要であるが、所望であれば施しても良い。
(熱間鍛造)
均質化熱処理後の鋳塊を再加熱し、材料温度が430〜550℃の範囲、金型温度が100〜250℃の範囲、最小の肉厚減少率が25%以上であるとともに、最大の肉厚減少率が90%以下の条件で熱間鍛造加工を行うことが好ましい。
熱間鍛造は、メカニカルプレスによる鍛造や油圧プレスを用いて、自動車足回り部品の最終製品形状 (ニアネットシェイプ) に鍛造加工される。熱間鍛造は、鍛造途中の再加熱無しで、あるいは必要に応じて再加熱し、荒鍛造、中間鍛造、仕上げ鍛造と、熱間鍛造が複数回行われる。
均質化熱処理後の鋳塊を再加熱し、材料温度が430〜550℃の範囲、金型温度が100〜250℃の範囲、最小の肉厚減少率が25%以上であるとともに、最大の肉厚減少率が90%以下の条件で熱間鍛造加工を行うことが好ましい。
熱間鍛造は、メカニカルプレスによる鍛造や油圧プレスを用いて、自動車足回り部品の最終製品形状 (ニアネットシェイプ) に鍛造加工される。熱間鍛造は、鍛造途中の再加熱無しで、あるいは必要に応じて再加熱し、荒鍛造、中間鍛造、仕上げ鍛造と、熱間鍛造が複数回行われる。
熱間鍛造の加工率として、最小の肉厚減少率が25%未満では、前記した複雑形状の自動車足回り部品が、形状制度良く鍛造加工できなくなる可能性がある。一方、最大の肉厚減少率が90%を超える場合、再結晶を抑制することが難しく、粗大な再結晶粒が発生する可能性が高くなる。
最終の鍛造後の鍛造終了温度が300℃未満であれば、鍛造および溶体化処理工程において、再結晶を抑制することが難しく、加工組織が再結晶して粗大結晶粒が発生する可能性がある。これら粗大結晶粒が発生した場合、前記組織に制御しても、高強度化や高靱性化が果たせず、また、耐食性も低下する。しかも、低温の熱間鍛造では、鍛造材断面の前記全域を目標としている結晶粒を微細化させることが困難となる。一方、材料温度が550℃を超えた場合、鍛造材表面のバーニングが発生するとともに、粗大な再結晶粒が発生する可能性が高くなる。
(溶体化および焼き入れ処理)
この熱間鍛造後に、溶体化および焼き入れ処理を行う。溶体化処理は、好ましくは、530〜570℃の温度範囲に、1時間以上、8時間以下保持する。この溶体化処理温度が低過ぎるか、あるいは時間が短過ぎると、溶体化が不足して、MgSi化合物の固溶が不十分となり、続く人工時効硬化処理における化合物の析出量が少なすぎ、強度が低下する。保持時間は長くても良いが、8時間を超えても、効果が飽和する。
この熱間鍛造後に、溶体化および焼き入れ処理を行う。溶体化処理は、好ましくは、530〜570℃の温度範囲に、1時間以上、8時間以下保持する。この溶体化処理温度が低過ぎるか、あるいは時間が短過ぎると、溶体化が不足して、MgSi化合物の固溶が不十分となり、続く人工時効硬化処理における化合物の析出量が少なすぎ、強度が低下する。保持時間は長くても良いが、8時間を超えても、効果が飽和する。
この溶体化処理後、500℃から100℃までを25℃/s以上の平均冷却速度で焼入れ処理を行なうことが好ましい。この平均冷却速度を確保するために、焼き入れ処理時の冷却は、鍛造材の歪を防止した均一な冷却のためにも、水冷、特に、気泡をバブリングしつつ冷却水を循環させる、水冷(水槽浸漬)により行なうことが好ましい。この焼き入れ処理時の冷却速度が低くなると、粒界上にMgSi化合物、Si等が析出し、人工時効後の製品において、粒界破壊が生じ易くなり、靱性ならびに疲労特性を低くする。また、冷却途中に、粒内にも、安定相MgSi化合物、Siが形成され、人工時効時に析出するβ相、β' 相の析出量が減るため、強度が低下する。
ただ、一方で、冷却速度が高く(速く)なり過ぎると、焼入歪み量が多くなり、焼入後に、矯正工程が新たに必要になったり、矯正工程の工数が増す問題も新たに生じる。また残留応力も高くなり、製品の寸法、形状精度が低下する問題も新たに生じる。この点、製品製造工程を短縮し、低コスト化するためには、焼入歪みが緩和される30〜85℃の温湯焼入が好ましい。ここで、温湯焼入温度が30℃未満では焼入歪みが大きくなり、85℃を超えると冷却速度が低くなりすぎ、靱性ならびに疲労特性、強度が低くなる。
(冷間加工あるいは温間加工)
本発明では、このように得られた(溶体化および焼き入れ処理後の)熱間鍛造材を、規定する平均粒径やKAM値とするために、更に、合計の板厚減少率が5%以上で、かつ室温〜200℃の温度範囲(温度域)での冷間加工または温間加工を、これらの加工後の人工時効硬化処理との組合せとして、少なくとも2回以上繰り返して実施することが好ましい。
これらの冷間加工または温間加工と、その後の各人工時効硬化処理との組み合わせが、1回のみか、例え冷間加工または温間加工を2回行っても、これらの各加工後に各々人工時効処理を行わないような場合には、規定する平均粒径やKAM値とならない可能性がある。
言い換えると、このような冷間加工または温間加工と、その後の各人工時効硬化処理との組み合わせの2回以上の繰り返しは、得られた鍛造材を規定する方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径やKAM値とするための保証となる。
本発明では、このように得られた(溶体化および焼き入れ処理後の)熱間鍛造材を、規定する平均粒径やKAM値とするために、更に、合計の板厚減少率が5%以上で、かつ室温〜200℃の温度範囲(温度域)での冷間加工または温間加工を、これらの加工後の人工時効硬化処理との組合せとして、少なくとも2回以上繰り返して実施することが好ましい。
これらの冷間加工または温間加工と、その後の各人工時効硬化処理との組み合わせが、1回のみか、例え冷間加工または温間加工を2回行っても、これらの各加工後に各々人工時効処理を行わないような場合には、規定する平均粒径やKAM値とならない可能性がある。
言い換えると、このような冷間加工または温間加工と、その後の各人工時効硬化処理との組み合わせの2回以上の繰り返しは、得られた鍛造材を規定する方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径やKAM値とするための保証となる。
これら冷間加工または温間加工の1回当たりの板厚減少率が5%未満と小さくなると加工の効果が無くなり、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径が30μmを超えて粗大化する可能性がある。また、KAM値も0.6°未満と小さくなりやすく、所望の高強度が得られない可能性もある。
これは、温間加工の加工温度が200℃を超えて大きくなっても同じで、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径が30μmを超えて粗大化する可能性があり、KAM値も0.6°未満と小さくなりやすく、所望の高強度が得られない可能性もある。
これは、温間加工の加工温度が200℃を超えて大きくなっても同じで、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径が30μmを超えて粗大化する可能性があり、KAM値も0.6°未満と小さくなりやすく、所望の高強度が得られない可能性もある。
一方、これら冷間加工または温間加工の、1回当たりの板厚減少率の上限は、好ましくは50%、より好ましくは40%とする。この板厚減少率が高すぎて、ひずみ量が大き過ぎると、KAM値が大きくなりすぎ、伸びが著しく低くなる可能性がある。また、加工時の割れも発生しやすくなる。
この点、前記特許文献2では、相当ひずみ2以上で、板厚減少率換算で85%超、前記特許文献3では相当ひずみ2未満としているものの、その実施例では相当ひずみ0.8で、板厚減少率換算で55%の、いずれも非常に大きいひずみを温間鍛造で加えている。このため、本発明の6000系アルミニウム合金熱間鍛造材では、あるいは、これら特許文献2、3の6000系アルミニウム合金鋳造材でも、強度は高くなるものの、伸びが著しく低くなってしまう。
したがって、これら冷間加工または温間加工の1回当たりの板厚減少率の範囲は、好ましくは5%以上、50%以下、より好ましくは5%以上、40%以下とする。
この点、前記特許文献2では、相当ひずみ2以上で、板厚減少率換算で85%超、前記特許文献3では相当ひずみ2未満としているものの、その実施例では相当ひずみ0.8で、板厚減少率換算で55%の、いずれも非常に大きいひずみを温間鍛造で加えている。このため、本発明の6000系アルミニウム合金熱間鍛造材では、あるいは、これら特許文献2、3の6000系アルミニウム合金鋳造材でも、強度は高くなるものの、伸びが著しく低くなってしまう。
したがって、これら冷間加工または温間加工の1回当たりの板厚減少率の範囲は、好ましくは5%以上、50%以下、より好ましくは5%以上、40%以下とする。
(人工時効硬化処理)
以上の冷間あるいは温間の各加工後に、人工時効硬化処理(以下、人工時効処理とも言う)を、前記加工と組合せて、少なくとも2回以上繰り返して施す。室温時効を進めないためには、前記冷間あるいは温間の各加工後に、速やかに、例えば目安としては1時間以内に人工時効処理を行うことが好ましい。
この人工時効処理は、各々好ましくは、40℃以上、250℃以下の温度範囲と20分〜8hrの保持時間の範囲から条件を選択する。
但し、この条件範囲内であっても、組成や、熱間鍛造、溶体化焼き入れ処理、冷間あるいは温間加工などの前工程の条件に見合った最適条件を選択すべきで、これらの組成や前工程条件に見合わず、この人工時効温度が低すぎるか高すぎる、あるいは保持時間が短すぎると、所望の規定する組織や、高い引張強度と高い耐力、そして高い伸びが得られない可能性がある。
なお、前記した、均質化熱処理、溶体化処理には空気炉、誘導加熱炉、硝石炉などが適宜用いられる。更に、人工時効処理には空気炉、誘導加熱炉、オイルバスなどが適宜用いられる。
以上の冷間あるいは温間の各加工後に、人工時効硬化処理(以下、人工時効処理とも言う)を、前記加工と組合せて、少なくとも2回以上繰り返して施す。室温時効を進めないためには、前記冷間あるいは温間の各加工後に、速やかに、例えば目安としては1時間以内に人工時効処理を行うことが好ましい。
この人工時効処理は、各々好ましくは、40℃以上、250℃以下の温度範囲と20分〜8hrの保持時間の範囲から条件を選択する。
但し、この条件範囲内であっても、組成や、熱間鍛造、溶体化焼き入れ処理、冷間あるいは温間加工などの前工程の条件に見合った最適条件を選択すべきで、これらの組成や前工程条件に見合わず、この人工時効温度が低すぎるか高すぎる、あるいは保持時間が短すぎると、所望の規定する組織や、高い引張強度と高い耐力、そして高い伸びが得られない可能性がある。
なお、前記した、均質化熱処理、溶体化処理には空気炉、誘導加熱炉、硝石炉などが適宜用いられる。更に、人工時効処理には空気炉、誘導加熱炉、オイルバスなどが適宜用いられる。
本発明鍛造材は、自動車足回り部品用として、前記人工時効処理の前後に、機械加工や表面処理などが適宜施されても良い。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
次に、本発明の実施例を説明する。表1に示す各アルミニウム合金組成で、溶体化および焼入れ処理までは同じ製造条件とした熱間鍛造材を、表2に示す各異なる条件で冷間あるいは温間加工と人工時効処理とを施して、自動車足回り部品の素材となる熱間鍛造材を製造した。そして、この熱間鍛造材の組織、機械的特性、耐食性を表2に示すように測定、評価した。
具体的には、各例とも共通して、表1に示す6000系アルミニウム合金熱間鍛造材の化学成分からなる鋳塊を平均冷却速度を100 ℃/s以上とした半連続鋳造法により鋳造した。なお、表1に示す各アルミニウム合金例は、共通して100gのAl中の水素濃度は全て0.10〜0.15mlであった。
これら各アルミニウム合金鋳塊の外表面を、各例とも共通して、厚さ3mm 面削して、長さ120mm 、φ75mmの丸棒状ビレットに切断後、520℃×5時間、均質化熱処理し、この均質化熱処理後は、ファンを使用して、冷却速度が100℃/hr以上で鋳塊を強制空冷した。
均質化熱処理後の鋳塊の熱間鍛造は、各例とも共通して、最終の肉厚まで再加熱無しに3回鍛造し、鍛造開始時の温度が500〜520℃の範囲、金型温度が170〜200℃の範囲、鍛造材中央部の肉厚変化率が(25%を超える)75%の共通の条件で、上下金型を用いたメカニカルプレスにより行った。
均質化熱処理後の鋳塊の熱間鍛造は、各例とも共通して、最終の肉厚まで再加熱無しに3回鍛造し、鍛造開始時の温度が500〜520℃の範囲、金型温度が170〜200℃の範囲、鍛造材中央部の肉厚変化率が(25%を超える)75%の共通の条件で、上下金型を用いたメカニカルプレスにより行った。
製造した熱間鍛造材の形状は、各例とも共通して、前記した、平面視で略三角形の全体形状からなるとともに、この三角形の頂点部分となる3箇所のボールジョイントを、幅狭で肉厚(高さ)が60mmの周縁リブと、幅広で肉厚(高さ)が31mmの薄肉な中央部のウエブとからなる、断面が略H型のアームで繋いだ足回り部品形状とした。
これらの鍛造材を、各例とも共通して、空気炉を用い、550℃×5時間の溶体化処理後に、500℃から100℃までが25℃/s以上の平均冷却速度となる、前記水冷(水槽浸漬)を行った。
このように得られた(溶体化および焼き入れ処理後の)熱間鍛造材を、表2に示す条件で、冷間加工または温間加工と人工時効処理とを、2回繰り返すか、あるいは1回実施するなどして、前記結晶粒の平均粒径やKAM値を作り分けた。
以上のようにして、前記結晶粒の平均粒径やKAM値を作り分けた、熱間鍛造材の組織、機械的特性、粒界応力腐食割れ性を、以下の方法で測定、評価した。これらの結果を表2に示す。
(組織)
前記結晶粒の平均粒径やKAM値は、前記した測定方法により、鍛造材の、任意の前記略H型のアームにおける、前記厚肉のリブ部の任意の板厚中心部の縦断面から、試料を採取して、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径(μm)とKAM値を、前記した要領で測定した。
前記結晶粒の平均粒径やKAM値は、前記した測定方法により、鍛造材の、任意の前記略H型のアームにおける、前記厚肉のリブ部の任意の板厚中心部の縦断面から、試料を採取して、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径(μm)とKAM値を、前記した要領で測定した。
(機械的特性)
前記鍛造材の前記厚肉のリブ部の任意の板厚中心部から試料を採取し、この試料の長手任意の3箇所から、外径φ5mm、標点間距離25mm、引張試験片 (L方向) を3個作製して、引張強度(MPa) 、0.2%耐力(MPa) 、伸び(%) などの機械的性質を各々測定し、これら3個所(試験片3個)の各平均値を求めた。
前記鍛造材の前記厚肉のリブ部の任意の板厚中心部から試料を採取し、この試料の長手任意の3箇所から、外径φ5mm、標点間距離25mm、引張試験片 (L方向) を3個作製して、引張強度(MPa) 、0.2%耐力(MPa) 、伸び(%) などの機械的性質を各々測定し、これら3個所(試験片3個)の各平均値を求めた。
(耐応力腐食割れ性)
また、耐応力腐食割れ性の評価は、JIS H8711の交互浸漬法の規定に準じて行った。図1(a)に側面図、図1(b)に平面図にて、耐応力腐食割れ性評価用試験片(SCC試験用Cリング)を、その寸法を含めて示す。300MPa負荷時の耐応力腐食割れが30日未満は×、30日以上〜60日未満は○と評価した。
また、耐応力腐食割れ性の評価は、JIS H8711の交互浸漬法の規定に準じて行った。図1(a)に側面図、図1(b)に平面図にて、耐応力腐食割れ性評価用試験片(SCC試験用Cリング)を、その寸法を含めて示す。300MPa負荷時の耐応力腐食割れが30日未満は×、30日以上〜60日未満は○と評価した。
表1、2から明らかな通り、各発明例1、7〜12は、本発明の成分組成範囲内で、かつ好ましい条件範囲で冷間加工または温間加工と人工時効処理されている。このため、これら各発明例は、表2に示す通り、本発明で規定する通りの組織を有し、SEM−EBSD法により測定された板厚中心部における組織として、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径が30μm以下であるとともに、前記結晶粒のKAM値が0.6〜2.0°の範囲である。
この結果、これら各発明例は、優れた耐応力腐食割れ性を有し、引張強度が417MPa以上 、0.2%耐力が398MPa以上 、伸びが12.6%以上であり、高い引張強度と高い耐力、そして高い伸びを有し、足回り部品として必要な諸特性が兼備できている。
これに対し、表2の比較例2〜6のように、合金組成が範囲内だが、冷間加工または温間加工と人工時効処理とが、好ましい条件範囲から外れて製造されている場合は、SEM−EBSD法により測定された板厚中心部における組織規定を満たしていない。すなわち、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径が30μmを超えて粗大化するか、KAM値も0.6°未満と小さすぎるか、2.0°を超えて大きすぎている。
この結果、比較例2〜6は、共通して、引張強度、0.2%耐力が発明例に比して著しく劣り、またKAM値が2.0°を超えて大きすぎる場合には、伸びも発明例に比して著しく劣る。
この結果、比較例2〜6は、共通して、引張強度、0.2%耐力が発明例に比して著しく劣り、またKAM値が2.0°を超えて大きすぎる場合には、伸びも発明例に比して著しく劣る。
比較例2は、温間加工と人工時効処理とを1回しか実施していない。このため、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径が30μmを超えて粗大化し、KAM値も0.6°未満と小さすぎる。
比較例3は、温間加工と人工時効処理とを、この順序で2回繰り返しているものの、温間加工の板厚減少率(加工率)が小さすぎる。このため、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径が30μmを超えて粗大化し、KAM値も0.6°未満と小さすぎる。
比較例4は、温間加工と人工時効処理とを、この順序で2回繰り返しているものの、2回とも温間加工の温度が高すぎる。このため、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径が30μmを超えて粗大化し、KAM値も0.6°未満と小さすぎる。
比較例5は、温間加工は2回繰り返しているものの、2回目の温間加工後に人工時効処理を行っていない。このため、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径は30μm以下だが、KAM値が2.0を超えて大きすぎる。
比較例6は、温間加工と人工時効処理とを、この順序で2回繰り返しているものの、2回とも人工時効処理の温度が高すぎる。このため、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径が30μmを超えて粗大化し、KAM値も0.6°未満と小さすぎる。
比較例3は、温間加工と人工時効処理とを、この順序で2回繰り返しているものの、温間加工の板厚減少率(加工率)が小さすぎる。このため、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径が30μmを超えて粗大化し、KAM値も0.6°未満と小さすぎる。
比較例4は、温間加工と人工時効処理とを、この順序で2回繰り返しているものの、2回とも温間加工の温度が高すぎる。このため、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径が30μmを超えて粗大化し、KAM値も0.6°未満と小さすぎる。
比較例5は、温間加工は2回繰り返しているものの、2回目の温間加工後に人工時効処理を行っていない。このため、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径は30μm以下だが、KAM値が2.0を超えて大きすぎる。
比較例6は、温間加工と人工時効処理とを、この順序で2回繰り返しているものの、2回とも人工時効処理の温度が高すぎる。このため、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径が30μmを超えて粗大化し、KAM値も0.6°未満と小さすぎる。
また、表1の合金番号8〜18のように、組成が外れる合金を用いた表2の比較例13〜24は、冷間加工または温間加工と人工時効処理とが、好ましい条件範囲で製造されている場合でも、SEM−EBSD法により測定された板厚中心部における組織規定を満たす、満たさないにかかわらず、引張強度、0.2%耐力、伸び、耐応力腐食割れ性のいずれかが発明例に比して低い。
すなわち、発明例並みに高引張強度や高耐力の例は、伸びが低いか耐応力腐食割れ性が発明例よりも著しく劣る。また、発明例並みに伸びが高いか、耐応力腐食割れ性が優れる例は、引張強度、0.2%耐力が発明例よりも著しく劣る。
すなわち、発明例並みに高引張強度や高耐力の例は、伸びが低いか耐応力腐食割れ性が発明例よりも著しく劣る。また、発明例並みに伸びが高いか、耐応力腐食割れ性が優れる例は、引張強度、0.2%耐力が発明例よりも著しく劣る。
比較例13はMgが過少(表1の合金番号8)である。
比較例14はMgが過多(表1の合金番号9)である。
比較例15、16はSiが過少(表1の合金番号10)である。また、比較例16は、温間加工と人工時効処理とを1回しか実施していない。
比較例17はSiが過多(表1の合金番号11)である。
比較例18、19は、Mn、Cr、Zrをいずれも含まないか、含んでも少なすぎる(表1の合金番号12、13)。
比較例20はMnが多すぎる(表1の合金番号14)。
比較例21、22、23、24はCr、Zr、Cu、Znが多すぎる(表1の合金番号15、16、17、18)。
比較例14はMgが過多(表1の合金番号9)である。
比較例15、16はSiが過少(表1の合金番号10)である。また、比較例16は、温間加工と人工時効処理とを1回しか実施していない。
比較例17はSiが過多(表1の合金番号11)である。
比較例18、19は、Mn、Cr、Zrをいずれも含まないか、含んでも少なすぎる(表1の合金番号12、13)。
比較例20はMnが多すぎる(表1の合金番号14)。
比較例21、22、23、24はCr、Zr、Cu、Znが多すぎる(表1の合金番号15、16、17、18)。
以上の結果から、優れた耐食性を有することを前提に、高い引張強度と高い耐力、そして高い伸びを有する6000系アルミニウム合金熱間鍛造材を実現できる、本発明組成、組織規定、の臨界的な意義が分かる。
本発明によれば、優れた耐食性を有することを前提に、高い引張強度と高い耐力、そして高い伸びを有する6000系アルミニウム合金熱間鍛造材を得ることができる。したがって、6000系アルミニウム合金熱間鍛造材の、自動車足回り部品など輸送機用への用途の拡大を図ることができる点で、多大な工業的な価値を有する。
Claims (3)
- 質量%で、Si:0.7〜1.5%、Mg:0.6〜1.2%、Fe:0.01〜0.5%を各々含有するとともに、更に、Mn:0.05〜0.8%、Cr:0.01〜0.5%、Zr:0.01〜0.2%のうちの一種または二種以上を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金熱間鍛造材であって、SEM−EBSD法により測定された板厚中心部における組織として、方位差が2°以上の結晶粒の平均粒径が30μm以下であるとともに、前記結晶粒の平均方位差であるKAM値が0.6〜2.0°の範囲であることを特徴とする、高強度アルミニウム合金熱間鍛造材。
- 前記アルミニウム合金熱間鍛造材が、更に、質量%で、Cu:0.05〜1.0%、Ti:0.01〜0.1%、Zn:0.005〜0.2%の一種または二種以上を含有する請求項1に記載の高強度アルミニウム合金熱間鍛造材。
- 前記アルミニウム合金熱間鍛造材の引張強度が420MPa以上、0.2%耐力が400MPa以上、伸びが12%以上である請求項1または2に記載の高強度アルミニウム合金熱間鍛造材。
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