JP2017002261A - 燃料油用潤滑性向上剤および燃料油組成物 - Google Patents

燃料油用潤滑性向上剤および燃料油組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】低温時に生じる結晶を微細化し、低硫黄分のディーゼル燃料油に添加した際の潤滑性を向上させ、ディーゼル燃料油に水が混入した場合の抗乳化性を改善することである。【解決手段】ディーゼル燃料油用潤滑性向上剤は、脂肪酸(A)を1.0〜5.0重量%、脂肪酸(B)を1.0〜5.0重量%、脂肪酸(C)を90.0〜98.0重量%含有する脂肪酸混合物と、3〜4個のヒドロキシル基を有する多価アルコールとの反応から得られるモノエステル体を含有する。【選択図】 図1

Description

本発明は、ディーゼル燃料油用潤滑性向上剤およびそれを含有する燃料油組成物に関する。詳しくは低温時に生じる結晶を微細化することができると共に、低硫黄分のディーゼル燃料油に添加した際の潤滑性を向上させ、かつディーゼル燃料油に水が混入した場合の抗乳化性を改善できる、ディーゼル燃料油用潤滑性向上剤およびそれを含有する燃料油組成物に関する。
近年、トラック輸送の増大と共に軽油中に含まれる硫黄分が環境問題の原因物質の一つとして取り上げられるようになった。わが国の軽油においては、自動車排出ガス規制によって、硫黄分が10ppm以下であることが義務付けられている。
軽油中の硫黄分の低減は、通常、石油精製における接触水素化処理による脱硫工程によって行われている。しかしながら、上記軽油中の硫黄分の低減においては、脱硫時に硫黄分以外の極性の高い化合物も同時に除去されてしまうことが知られており、結果的に軽油自体が本来持っている潤滑性を喪失させてしまう。
喪失した軽油の潤滑性を補うため、通常、軽油にはエステル型の潤滑性向上剤が添加されている。例えば、特許文献1には、炭素原子を2〜50有するカルボン酸とアルコールとのエステルを含有する潤滑性向上剤が軽油の潤滑性向上に優れていることが示されている。さらに、特許文献2にはオレイン酸を主成分とする酸とグリセリンのモノエステルを主成分とする潤滑性向上剤が軽油の潤滑性向上に優れていることが示されている。
エステル型の潤滑性向上剤は、直鎖不飽和脂肪酸と多価アルコールとを反応させることにより得られるモノエステル体を主成分とするものが広く使われているが、動植物油脂を加水分解して得られる直鎖不飽和脂肪酸には、通常、炭素数16〜20程度の直鎖飽和脂肪酸が副成分として含有される。そのため、直鎖不飽和脂肪酸と多価アルコールとを反応させることにより得られるモノエステル体を主成分とするエステル型の潤滑性向上剤にも、炭素数16〜20程度の直鎖飽和脂肪酸と多価アルコールとが反応することによって生成したモノエステル体が副成分として含有されている。
特表平8−505893号公報 特開平9−111266号公報
この炭素数16〜20程度の直鎖飽和脂肪酸と多価アルコールとが反応することによって生成したモノエステル体は、冬期に製油所の添加剤貯蔵タンク内で冷却されることによって析出し、軽油への添加時に、配管中に設置される目開き100μm程度の不純物除去用フィルターを閉塞させる問題を生じる事が知られている。フィルターが閉塞し、潤滑性向上剤を軽油へ所定量添加できなかった場合、軽油の潤滑性が不十分となり、ディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプ等で焼き付きを起こす原因となる。また、フィルターの閉塞を防ぐためにフィルター目開きを大きくした場合、本来除去すべき不純物が軽油に混入し、これがディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプ等での焼き付きや摺動部の金属磨耗を起こす原因となる。そのため、冷却時に析出してくる結晶を微細化する技術が求められていた。
また、軽油は貯蔵中に水が混入することがあり、その水が軽油中にスラッジを発生させ、燃料フィルターの目詰まりを起こしたり、金属部分を腐食させたりする恐れがある。したがって、軽油には水が混入した場合に速やかに水をはじき出して分離させる性質、すなわち、抗乳化性に優れることも要求される。
本発明の課題は、低温時に生じる結晶を微細化することができると共に、低硫黄分のディーゼル燃料油に添加した際の潤滑性を向上させ、かつディーゼル燃料油に水が混入した場合の抗乳化性を改善できるディーゼル燃料油用潤滑性向上剤およびそれを含有する燃料油組成物を提供することである。
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、エステル型潤滑性向上剤を特定の脂肪酸組成にすることで、低温時に析出してくる結晶を微細化でき、また、低硫黄分のディーゼル燃料油に添加した際の潤滑性を向上させることができ、かつディーゼル燃料油に水が混入した場合の抗乳化性を改善できることを見出した。
すなわち本発明は、以下の脂肪酸(A)を1.0〜5.0重量%、脂肪酸(B)を1.0〜5.0重量%、および脂肪酸(C)を90.0〜98.0重量%含有する脂肪酸混合物と、3〜4個のヒドロキシル基を有する多価アルコールとの反応から得られるモノエステル体を含有することを特徴とする、ディーゼル燃料油用潤滑性向上剤である。

(A) 炭素数16〜20の直鎖飽和脂肪酸
(B) 不飽和結合を1〜2個有し、前記不飽和結合の全てがトランス型である炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸
(C) 不飽和結合を1〜2個有し、前記不飽和結合の少なくとも1つがシス型である炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸
好ましくは、前記多価アルコールがグリセリンである。
また、本発明は、前記ディーゼル燃料油用潤滑性向上剤を0.001〜0.5重量%含有することを特徴とする、燃料油組成物に係るものである。
本発明のディーゼル燃料油用潤滑性向上剤は、低温時に生じる結晶を微細化することができると共に、低硫黄分のディーゼル燃料油に添加した際の潤滑性を向上させ、かつディーゼル燃料油に水が混入した場合の抗乳化性を改善することができる。また、本発明のディーゼル燃料油用潤滑性向上剤を含有する燃料油組成物は、低硫黄分であっても潤滑性に優れ、かつ水が混入した場合の抗乳化性にも優れる。
実施例1の組成物において、徐冷条件下で析出する結晶を示す顕微鏡写真である。 実施例2の組成物において、徐冷条件下で析出する結晶を示す顕微鏡写真である。 実施例3の組成物において、徐冷条件下で析出する結晶を示す顕微鏡写真である。 実施例4の組成物において、徐冷条件下で析出する結晶を示す顕微鏡写真である。 実施例5の組成物において、徐冷条件下で析出する結晶を示す顕微鏡写真である。 比較例4の組成物において、徐冷条件下で析出する結晶を示す顕微鏡写真である。 比較例6の組成物において、徐冷条件下で析出する結晶を示す顕微鏡写真である。 比較例7の組成物において、徐冷条件下で析出する結晶を示す顕微鏡写真である。 比較例9の組成物において、徐冷条件下で析出する結晶を示す顕微鏡写真である。 比較例10の組成物において、徐冷条件下で析出する結晶を示す顕微鏡写真である。
以下本発明の実施形態を説明する。
本発明は、低温時に生じる結晶を微細化することができると共に、低硫黄分のディーゼル燃料油に添加した際の潤滑性を向上させ、かつディーゼル燃料油に水が混入した場合の抗乳化性を改善できるディーゼル燃料油用潤滑性向上剤およびそれを含有する燃料油組成物である。
本発明におけるディーゼル燃料油とは、硫黄分規制に対応するために極度の水素化により精製された低硫黄分の中間留出油である。ここに中間留出油とは石油の蒸留における中間流出油であり、ガソリン、灯油、軽油、重油等が挙げられ、好ましくは軽油である。硫黄分含有量は500ppm以下であり、好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。例えば、日本国内においては、日本工業規格(JIS K2204)において規定されている、特1号軽油、1号軽油、2号軽油、3号軽油又は特3号軽油が挙げられる。
さらに、本発明においては、原油を蒸留して得られる軽油以外のディーゼル燃料に対しても、使用することが可能である。上記燃料の例としては、天然ガス、石炭、バイオマス等を合成ガスに変換し、フィッシャー・トロプシュ反応により得られた、又はそれをさらに異性化したフィッシャー・トロプシュ燃料などが挙げられる。GTL軽油、CTL軽油、BTL軽油などがこれらに該当する。本発明において使用できる他の燃料としては、動植物油脂を水素化して得られる水素化油脂燃料や藻類などから得られる炭化水素分であり、軽油と同等の物性や粘度を有する燃料なども挙げられる。
本発明のディーゼル燃料油用潤滑性向上剤は、以下の脂肪酸(A)、脂肪酸(B)、脂肪酸(C)を含有する脂肪酸混合物と、3〜4個のヒドロキシル基を有する多価アルコールとの反応から得られるモノエステル体を構成成分として、含有する。

(A) 炭素数16〜20の直鎖飽和脂肪酸
(B) 不飽和結合を1〜2個有し、前記不飽和結合の全てがトランス型である炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸
(C) 不飽和結合を1〜2個有し、前記不飽和結合の少なくとも1つがシス型である炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸
脂肪酸(A)は、炭素数16〜20の直鎖飽和脂肪酸である。
炭素数16〜20の直鎖飽和脂肪酸とは、具体的にはヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸が挙げられ、好ましくはヘキサデカン酸、オクタデカン酸である。
脂肪酸(A)の割合は1.0〜5.0質量%である。脂肪酸(A)の割合が1.0質量%未満の場合は、結晶を十分に微細化することが出来なくなる恐れがある。この観点から、脂肪酸(A)の割合は1.0質量%以上であるが、1.1質量%以上が更に好ましい。また、脂肪酸(A)の割合が5.0重量%を超える場合には、脂肪酸(A)の析出量が多くなり、結晶を微細化出来なくなる恐れがある。この観点から、脂肪酸(A)の割合は5.0質量%以下であるが、4.5質量%以下が更に好ましく、1.5質量%以下が一層好ましい。
脂肪酸(B)は、不飽和結合を1〜2個有し、前記不飽和結合の全てがトランス型である炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸である。
不飽和結合を1〜2個有し、前記不飽和結合の全てがトランス型である炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸において、不飽和結合の位置は特に限定されない。例えば、trans−2−オクタデセン酸、trans−3−オクタデセン酸、trans−4−オクタデセン酸、trans−6−オクタデセン酸、trans−7−オクタデセン酸、trans−8−オクタデセン酸、trans−9−オクタデセン酸、trans−11−オクタデセン酸、trans−8,trans−10−オクタデカジエン酸、trans−9,trans−11−オクタデカジエン酸、trans−9,trans−12−オクタデカジエン酸、trans−10,trans−12−オクタデカジエン酸である。
また、脂肪酸(B)は、不飽和結合を1個有する脂肪酸と不飽和結合を2個有する脂肪酸の両方が含まれていることが好ましい。不飽和結合を1個有する脂肪酸と不飽和結合を2個有する脂肪酸の質量比は90/10〜30/70であることが好ましく、70/30〜50/50であることがより好ましい。
脂肪酸(B)の割合は1.0〜5.0重量%である。脂肪酸(B)の割合が1.0質量%未満の場合は、結晶を十分に微細化することが出来なくなる恐れがある。また、水が混入した場合に速やかに分離することが困難となる恐れがある。この観点から、脂肪酸(B)の割合は1.0質量%以上であるが、1.2質量%以上が更に好ましく、1.5質量%以上が一層好ましい。また、脂肪酸(B)の割合が5.0重量%を超える場合には、脂肪酸(B)そのものの結晶が析出・成長してフィルターを閉塞させる恐れがある。この観点から、脂肪酸(B)の割合は5.0質量%以下であるが、4.5質量%以下が更に好ましく、2.0質量%以下が一層好ましい。
脂肪酸(C)は、不飽和結合を1〜2個有し、少なくとも1つの不飽和結合がシス型である炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸である。直鎖不飽和脂肪酸が不飽和結合を2個有する場合には、そのうちの一つがシス型で残り一つがトランス型であるか、あるいは二つの不飽和結合がシス型である。
不飽和結合を1〜2個有し、少なくとも1つの不飽和結合がシス型である炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸において、不飽和結合の位置は特に限定されない。例えば、cis−9−オクタデセン酸、cis−9,cis−12−オクタデカジエン酸、trans−9,cis−12−オクタデカジエン酸、cis−9,trans−12−オクタデカジエン酸である。
また、脂肪酸(C)は、不飽和結合を1個有する脂肪酸と不飽和結合を2個有する脂肪酸の両方が含まれていることが好ましい。不飽和結合を1個有する脂肪酸と不飽和結合を2個有する脂肪酸の質量比は70/30〜30/70であることが好ましく、60/40〜40/60であることがより好ましい。
脂肪酸(C)の割合は、100質量%から脂肪酸(A)の割合と脂肪酸(B)の割合とを引いた残部であり、従って90.0〜98.0質量%となる。脂肪酸(C)の割合が90.0質量%未満の場合には、結晶を十分に微細化することが出来なくなる恐れがある。この観点から、脂肪酸(C)の割合は、90.0質量%以上であるが、好ましくは91.0質量%以上であり、より好ましくは95.0質量%以上である。また、脂肪酸(C)の割合が98.0質量%を超える場合には、結晶を十分に微細化することが出来なくなる恐れがある。この観点から、脂肪酸(C)の割合は、98.0質量%以下であるが、97.5質量%以下が好ましい。
本発明の脂肪酸混合物は、上述の脂肪酸(A)、(B)および(C)を各脂肪酸が所定の範囲になるように混合して調製することにより得られる。また、天然油脂由来の脂肪酸やそれらの分別、水素添加などを行なった精製脂肪酸を混合して調製してもよい。
天然油脂由来の脂肪酸としては、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、とうもろこし油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ごま油脂肪酸、大豆油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、あまに油脂肪酸、魚油脂肪酸、硬化魚油脂肪酸、トール油脂肪酸などが挙げられる。
一方、3〜4個のヒドロキシル基を有する多価アルコールとは、具体的には、3個のヒドロキシル基を有するものとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、4個のヒドロキシル基を有するものとしては、ペンタエリスリトールが挙げられ、好ましくは3個のヒドロキシル基を有するグリセリン、トリメチロールプロパンであり、さらに好ましくはグリセリンである。これらは1種または2種以上を併用してもよい。
モノエステル体とは、多価アルコールの1つのヒドロキシル基のみがエステル化された化合物を示す。モノエステル体は当該技術分野において周知の方法により調製することができ、特に限定されないが、例えば、脂肪酸と多価アルコールとの縮合反応によりエステル化を行なう方法、油脂などの多価アルコールの完全エステルや2価以上の部分エステルと多価アルコールとを混合して、エステル交換反応にて調製する方法などが挙げられる。
脂肪酸と多価アルコールとの縮合反応によりエステル化を行なう方法においては、反応条件は特に限定されるものではないが、例えば脂肪酸と多価アルコールを反応器に導入し、無触媒あるいは触媒存在下で、系内の水分を除去しながら反応させるのが好ましい。脂肪酸と多価アルコールの仕込み比は、多価アルコール/脂肪酸(モル比)が1.0〜2.5であることが好ましい。反応は150〜300℃の温度範囲内で一定温度もしくは昇温しながら行なうのが好ましい。エステルの酸化劣化を防ぐため、反応器内を窒素パージしながら反応を行なうのが好ましい。エステル化反応後は、必要に応じて、未反応の脂肪酸や多価アルコールを除去するために、減圧留去や、アルカリ中和後の水洗処理等を行なっても良い。また、モノエステル体の純度を高めるため、少量ながら生成するジエステル体やトリエステル体を除去する目的で、蒸留等を行なってもよい。必要に応じて、重合禁止剤や酸化防止剤を添加しても良い。また、触媒や不純物を除去するため、吸着剤等を用いて、吸着処理を行なっても良い。
上記モノエステル体は、脂肪酸(A)由来のモノエステル体、脂肪酸(B)由来のモノエステル体、脂肪酸(C)由来のモノエステル体の順で結晶が析出する。脂肪酸(A)由来のモノエステル体の結晶が先に析出して結晶数を増加させ、先に析出した結晶を核として脂肪酸(C)由来のモノエステル体が共晶しながら結晶成長する。その際に脂肪酸(B)由来のモノエステル体が、脂肪酸(A)由来のモノエステル体と脂肪酸(C)由来のモノエステル体とを繋ぐ役割を果たすことにより、1つ1つの結晶を微細化することが出来る。
本発明の潤滑性向上剤の添加量は、燃料油に対して、0.001〜0.5重量%が好ましい。添加量が0.5重量%を超える場合は、添加効果が飽和状態に達し、添加量に見合うだけの潤滑性向上効果が得られにくい。また、本発明の潤滑性向上剤の添加量は、0.1質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以下が一層好ましい。添加量が0.001重量%よりも少ない場合には、十分な潤滑性向上効果を得ることが難しい。この観点からは、本発明の潤滑性向上剤の添加量は、燃料油に対して、0.001質量%以上添加することが好ましく、0.002質量%以上が更に好ましく、0.004質量%以上が一層好ましい。
本発明の燃料油組成物は、本発明に使用される潤滑性向上剤を単に上記のディーゼル燃料に添加することにより調製することができるが、該潤滑性向上剤をディーゼル燃料と相溶性のある有機溶媒で濃厚溶液の形態として添加することにより調製が容易になる。このような有機溶媒としては、ナフサ、灯油、軽油などの石油留分、芳香族炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素などが挙げられる。有機溶媒で希釈して用いる場合には、該潤滑性向上剤を30〜90重量%含むものが好ましく、50〜80重量%含むものがより好ましい。
次に、実施例および比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。
<混合脂肪酸>
表1、表2に実施例及び比較例で用いる混合脂肪酸(FA−1〜FA−16)の脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフィーを用いて以下の条件で分析した結果を示す。
各直鎖不飽和脂肪酸の同定は市販の標準品を用いて行なった。
ガスクロマトグラフィー分析条件
装置:株式会社 島津製作所製 GC−2014 ATF/SPL
カラム:SUPELCO製 SP−2560 100m
カラム温度:175℃
検出器:FID、温度=250℃
注入部:スプリット比(100:1)、温度=210℃
サンプル注入量:1μL
キャリアガス:ヘリウム、1.0mL/分
サンプルの前処理:
原料脂肪酸を基準油脂分析試験法2.4.1.2 メチルエステル化法(三フッ化ホウ素メタノール法)に従い、メチルエステル化した。
表1、表2に示すFA−1、FA−2、FA−6、FA−7、FA−9、FA−16は、それぞれ表1、2に示す組成の脂肪酸混合物であり、その他の脂肪酸混合物は、FA−1、FA−2、FA−6、FA−7、FA−9、FA−16を適宜混合することによって得られたものである。
また、FA−16は、FA−2のトランス異性化反応によって以下のようにして得られたものである。
<FA−2のトランス異性化反応(Holdeの方法)>
温度計、窒素導入管、攪拌機を取り付けた3Lの4つ口フラスコに、FA−2(cis−9−オクタデセン酸、cis−9,cis−12−オクタデカジエン酸混合脂肪酸)400gならびに30%硝酸水溶液800gを仕込み、窒素気流下、35℃で攪拌した。そこへ、粉末亜硝酸カリウム160gを15分掛けて少量ずつ添加し、トランス異性化反応させた。亜硝酸カリウムを添加した後、30分間攪拌を続けた。その後、水洗・乾燥を行い、FA−2のトランス異性化反応物FA−16約320gを得た。
<製造例1 モノエステル体ME−1の合成>
温度計、窒素導入管、攪拌機および冷却管を取り付けた2Lの4つ口フラスコに、グリセリンを400g(4.34モル)と、FA−1を613g(2.17モル)仕込み、窒素気流下、220℃で反応水を留去しつつ常圧で反応し、酸価が1.0mgKOH/g以下となるまで反応した。その後、未反応のグリセリンを除去するため、重合禁止剤であるヒドロキノンを0.6g(0.005モル)投入後、30Torrで約1時間減圧留去した。さらに、蒸留によって、ジエステル体及びトリエステル体を除去した。反応物を冷却後、濾過を行い、モノエステル体ME−1を得た。
<製造例2〜16 モノエステル体ME−2〜ME−16の合成>
製造例1において、FA−1の代わりに表1、表2に示す原料脂肪酸を用いた以外は、同様の方法により、モノエステル体ME−2〜ME−16を得た。
<ハンドリング性の評価>
まず、表1、2の実施例1〜5、比較例1〜11のモノエステル体のハンドリング性を確認した。常温(25℃)において1時間静置後に、調製したモノエステル体ME−1〜ME−16が流動性を保っているか否かを目視で観察し、ハンドリング性の評価とした。
流動性を失い固体状態である場合には、燃料油に添加する際のハンドリング性が著しく悪いため、「×」とし、それ以外の評価を行わなかった。
<徐冷条件下で析出する結晶の観察>
ハンドリング性が良好であったモノエステル体を容量75ccのスクリュー管にそれぞれ50ccずつ入れ、密封した。このスクリュー管を空冷式の恒温槽の中で、徐冷条件下にて保管した。徐冷は、20℃で1時間静置し、次いで20℃から−10℃/時間の速度で10℃まで温度低下させ、次いで−1℃/時間の速度で−6℃まで温度低下させた。析出した結晶を顕微鏡で観察し、写真を撮影した。写真中の結晶の中から、結晶の一部が写真の枠外に達しているものは除外し、残りの結晶の中から、結晶の端から端まで直線を引いたとき、距離が最も大きくなるものを選び出し、最大粒径とした。
一方、常温(25℃)で流動性を失い、固体状態であるものについては、結晶を観察することが出来なかったため、「×」とした。また、以降の評価についても実施しなかった。
<抗乳化性の評価>
表1、表2の実施例1〜5、比較例1〜11のモノエステル体をそれぞれJIS 2号軽油の基材に0.05質量%(500ppm)添加し、日本工業規格JIS K2520に従い、抗乳化性試験を実施した。表に記された数値は、油層(ml)-水層(ml)-乳化層(ml)(経過時間)を示し、経過時間が短いほど、抗乳化性が優れていることを示す。
<潤滑性向上効果の評価>
表1、表2の実施例1〜5、比較例1〜11のモノエステル体をそれぞれJIS 2号軽油の基材に0.01質量%(100ppm)添加し、潤滑性摩耗試験機を用いて潤滑性の評価を行った。潤滑性摩耗試験機としては、振動摩擦摩耗試験機(HFRR試験機)を用い、試験体として、PCSインスツルメンツ社製10mm、厚さ3.0mmのディスク、及びφ6.0mmのベアリングボールを用いた。下記に示す条件で潤滑性を評価した。
試験機:PCSインスツルメンツ製HFR2
試験体材質:ディスク、ボール共にスティールAISIE−52100
温度(℃):60±2
振幅(mm):1.0±0.03
試料量(ml):2.0±0.20
運転時間(分):75±0.1
荷重(g):200±1
振動数(Hz):50±1
試料浴の表面積(cm2):6±1
顕微鏡観察により上部ボールの摩耗痕の振動方向と直行方向の直径を測定し、摩耗痕の平均径を求めた。
<実施例1〜5、比較例1〜11>
上記の方法にて、表1、表2に記載した実施例1〜5、比較例1〜11について、まずハンドリング性を確認し、良好であった実施例1〜5、比較例4、6、7、9、10について徐冷条件下で析出する結晶の観察、抗乳化性の評価、及び潤滑性向上効果の評価を行った。これらの結果を図1〜図10および表1、表2に示す。
表1に示すように、実施例1〜実施例5では、低温で析出してくる結晶を十分に微細化出来ていることが分かる。また、水が混入した場合の抗乳化性に優れていることが分かる。そして、低硫黄分であっても潤滑性に優れていることが分かる。
一方、表2において、比較例1〜3、5、8、11については、常温(25℃)において、調製したモノエステル体が流動性を失っており、固体状態であった。
比較例1では、脂肪酸(B)(C)が含有されていないため、常温において流動性を失い、固体状態であった。そのため、ディーゼル燃料油に添加する際に、フィルターを閉塞してしまうため、使用できない。
比較例2では、脂肪酸(B)の量が多すぎるため、常温において流動性を失い、固体状態であった。そのため、ディーゼル燃料油に添加する際に、フィルターを閉塞してしまうため、使用できない。
比較例3では、脂肪酸(A)(B)の量が多すぎるため、常温において流動性を失い、固体状態であった。そのため、ディーゼル燃料油に添加する際に、フィルターを閉塞してしまうため、使用できない。
比較例4では、脂肪酸(A)の量が少なく、脂肪酸(B)が含まれないため、低温で析出してくる結晶を十分に微細化することが出来なかった。また、抗乳化性が悪化した。
比較例5では、脂肪酸(A)の量が多く、脂肪酸(B)が含まれていないので、常温において流動性を失い、固体状態であった。そのため、ディーゼル燃料油に添加する際に、フィルターを閉塞してしまうため、使用できない。
比較例6では、脂肪酸(A)の量が多いため、低温で析出してくる結晶を十分に微細化することが出来なかった。
比較例7では、脂肪酸(A)の量が多く、脂肪酸(C)の量が少ないため、低温で析出してくる結晶を十分に微細化することが出来なかった。
比較例8では、脂肪酸(B)の量が多すぎるため、常温において流動性を失い、固体状態であった。そのため、ディーゼル燃料油に添加する際に、フィルターを閉塞してしまうため、使用できない。
比較例9では、脂肪酸(B)の量が少ないため、低温で析出してくる結晶を十分に微細化することが出来なかった。また、抗乳化性が悪化した。
比較例10では、脂肪酸(B)の量が多いため、低温で析出してくる結晶を十分に微細化することが出来なかった。
比較例11では、脂肪酸(A)(B)の量が多すぎるため、常温において流動性を失い、固体状態であった。そのため、ディーゼル燃料油に添加する際に、フィルターを閉塞してしまうため、使用できない。

Claims (3)

  1. 以下の脂肪酸(A)を1.0〜5.0重量%、脂肪酸(B)を1.0〜5.0重量%、および脂肪酸(C)を90.0〜98.0重量%含有する脂肪酸混合物と、3〜4個のヒドロキシル基を有する多価アルコールとの反応から得られるモノエステル体を含有することを特徴とする、ディーゼル燃料油用潤滑性向上剤。

    (A) 炭素数16〜20の直鎖飽和脂肪酸
    (B) 不飽和結合を1〜2個有し、前記不飽和結合の全てがトランス型である炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸
    (C) 不飽和結合を1〜2個有し、前記不飽和結合の少なくとも1つがシス型である炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸
  2. 前記多価アルコールがグリセリンであることを特徴とする、請求項1記載のディーゼル燃料油用潤滑性向上剤。
  3. 請求項1または2に記載のディーゼル燃料油用潤滑性向上剤を0.001〜0.5重量%含有することを特徴とする、燃料油組成物。
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