JP2017001417A - インホイール型サスペンション装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】サスペンション部材の上下ストローク時に摺動軸に作用するこじりモーメントを抑制し、フリクションを低減できるインホイール型サスペンション装置を提供すること。【解決手段】サスペンション構成要素の少なくとも一部がタイヤ4を装着するホイール9内に配置されたインホイール型サスペンション装置IWS1において、サスペンション部材2を、ホイール9に固定された車輪支持部材1に設けられた主摺動軸3a、副摺動軸3bに対し摺動可能に連結すると共に、車輪支持部材1とサスペンション部材2との間に弾性要素5を配置する。そして、この弾性要素5として、ホイールセンタ7よりも車両前側位置に配置された第1スプリング51と、ホイールセンタ7よりも車両後側位置に配置された第2スプリング52と、を有する。【選択図】図3A

Description

本発明は、サスペンション構成要素の少なくとも一部がタイヤを装着するホイール内に配置されたインホイール型サスペンション装置に関する発明である。
従来、1本の摺動軸を有する車輪支持部材をタイヤに設けると共に、車体に取り付けたサスペンション部材を摺動軸に対して摺動可能に連結した上、車輪支持部材とサスペンション部材との間に弾性要素を配置したインホイール型サスペンション装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許第4305429号
ところで、タイヤが接地した際に作用する接地反力は、タイヤの接地点から上向きに生じるが、このときの接地反力の作用方向(接地反力線)はホイールセンタを通過する。また、タイヤの接地に伴って弾性要素が変形すると、このときのバネ反力の作用方向(バネ反力線)は、弾性要素の変形方向に沿う。
ここで、従来のインホイール型サスペンション装置では、弾性要素の上端部が車両後方に傾斜している。すなわち、弾性要素の変形方向は、タイヤ接地点から斜め後方に向かう方向に設定されている。
そのため、サスペンション部材が上下方向にストロークする際、タイヤ接地点から上向きに生じる接地反力線に対し、バネ反力線はタイヤ接地点から斜め後方に向かう方向になってしまい、接地反力線とバネ反力線とが全く異なる方向となる。そのため、ホイールセンタ高さにおいて、接地反力線が通過する位置とバネ反力線が通過する位置が大きく離れてしまい、この位置ずれによって摺動軸にこじりモーメントが作用してしまうという問題が生じていた。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、サスペンション部材が上下方向にストロークする際に摺動軸に作用するこじりモーメントを抑制し、フリクション(摺動抵抗)を低減させることができるインホイール型サスペンション装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のインホイール型サスペンション装置は、タイヤを装着するホイールに設けられた車輪支持部材に一端が連結され、他端が車体に弾性支持されるサスペンション部材を有し、サスペンション構成要素の少なくとも一部がホイール内に配置されている。
このインホイール型サスペンション装置において、サスペンション部材を、車輪支持部材に設けられた少なくとも1本以上の摺動軸に対し摺動可能に連結すると共に、車輪支持部材とサスペンション部材との間に弾性要素を配置する。
そして、この弾性要素を、ホイールセンタよりも車両前側位置に配置された第1弾性部材と、ホイールセンタよりも車両後側位置に配置された第2弾性部材と、によって構成する。
よって、弾性要素が、ホイールセンタよりも車両前側位置に配置された第1弾性部材と、ホイールセンタよりも車両後側位置に配置された第2弾性部材と、を有するため、二つの弾性部材がホイールセンタを挟んで配置される。これにより、タイヤ接地時に生じるバネ反力がホイールセンタを挟んで分散して作用し、その平均的なバネ反力の作用線(バネ反力線)がその中央を通過する。一方、タイヤの接地反力は、タイヤの接地点から上向きに生じるが、このときの接地反力の作用線(接地反力線)はホイールセンタを通過する。
これにより、平均的なバネ反力線と接地反力線とを近接させることができ、そのずれによって摺動軸に作用するこじりモーメントを抑制して、フリクションを低減させることができる。
実施例1のインホイール型サスペンション装置が適用された左後輪を車両内側の斜め後方から視た全体斜視図である。 実施例1のインホイール型サスペンション装置のサスペンション構成要素を示す斜視図である。 実施例1のインホイール型サスペンション装置においてサスペンション構成要素の配置を車両内側から見たときの模式図である。 実施例1のインホイール型サスペンション装置においてサスペンション構成要素の配置を車両上方から見たときの模式図である。 実施例1のインホイール型サスペンション装置におけるサスペンション部材と摺動軸の連結部分の構造を示す断面図である。 実施例1のインホイール型サスペンション装置において主摺動軸と副摺動軸の取り付けとタイヤとの位置関係を車両後方から見たときの断面図である。 比較例のインホール型サスペンション装置に作用する接地反力線とバネ反力線とこじりモーメントを示す説明図である。 実施例1の第1変形例のインホイール型サスペンション装置に作用する接地反力線とバネ反力線を示す説明図である。 実施例1の第2変形例のインホイール型サスペンション装置に作用する接地反力線とバネ反力線を示す説明図である。 実施例1の第3変形例のインホイール型サスペンション装置に作用する接地反力線とバネ反力線を示す説明図である。 図7A〜図7Cにおけるホイールセンタ高さにおける各バネ反力線上が通る位置に生じるこじりモーメントの大きさを示すグラフである。 バネ反力線と摺動軸との位置関係を示す説明図である。 実施例1のインホイール型サスペンション装置に作用する接地反力線とバネ反力線を示す説明図である。 インホイール型サスペンション装置において、接地荷重が入力したときの摺動軸の変形状態を示す摺動軸変形作用説明図である。 インホイール型サスペンション装置において、タイヤ横力が入力したときの摺動軸の変形状態を示す摺動軸変形作用説明図である。 インホイール型サスペンション装置において、制動力が入力したときの摺動軸の変形状態を示す摺動軸変形作用説明図である。 インホイール型サスペンション装置において、前後力が入力したときの摺動軸の変形状態を示す摺動軸変形作用説明図である。 インホイール型サスペンション装置において、軸傾斜ずれが生じたときの摺動軸を示す変形状態説明図である。 インホイール型サスペンション装置において、軸間距離ずれが生じたときの摺動軸を示す変形状態説明図である。 インホイール型サスペンション装置において、軸傾斜ずれによる摺動抵抗の増加メカニズムを示す説明図である。 インホイール型サスペンション装置において、軸間距離ずれによる摺動抵抗の増加メカニズムを示す説明図である。 実施例1のインホイール型サスペンション装置において、軸傾斜ずれが生じたときの副摺動軸の状態変化を示す説明図である。 実施例2のインホイール型サスペンション装置におけるサスペンション部材と副摺動軸の連結部分の構造(スライド構造)を示す断面図である。 図18に示すスライド構造を示す斜視図である。 実施例3のインホイール型サスペンション装置におけるサスペンション部材と副摺動軸の連結部分の構造(相対回転構造)を示す断面図である。 実施例3のインホイール型サスペンション装置において、軸傾斜ずれが生じたときの副摺動軸の状態変化を示す説明図である。 実施例4のインホイール型サスペンション装置におけるサスペンション部材と副摺動軸の連結部分の構造(スライド構造+相対回転構造)を示す断面図である。 実施例4のインホイール型サスペンション装置における軸受け部の配置構造を示す説明図である。 実施例1の第4変形例のインホイール型サスペンション装置におけるサスペンション構成要素の配置を示す模式図である。 実施例1の第5変形例のインホイール型サスペンション装置におけるサスペンション構成要素の配置を示す模式図である。
以下、本発明のインホイール型サスペンション装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1〜実施例4に基づいて説明する。
(実施例1)
まず、構成を説明する。
実施例1におけるインホイール型サスペンション装置の構成を、「全体構成」、「弾性要素の詳細構成」、「サスペンション部材と摺動軸の連結構成」に分けて説明する。
[全体構成]
図1は、実施例1のインホイール型サスペンション装置が適用された左後輪(従動輪)を車両内側の斜め後方から視た斜視図を示し、図2は、サスペンション構成要素を示す。以下、図1及び図2に基づき、全体構成を説明する。なお、図1は、向かって右が車両前方となる。
前記インホイール型サスペンション装置IWS1は、図1に示すように、車輪支持部材1と、サスペンション部材2と、摺動軸3と、タイヤ4と、弾性要素5と、弾性ブッシュ6と、ホイールセンタ7と、車体取付部材8と、ホイール9と、減衰要素10と、を備えている。
ここで、単にサスペンション装置ではなく、「インホイール型サスペンション装置」という理由は、上記サスペンション構成要素の少なくとも一部がタイヤ4を装着するホイール9内に配置された構成であることによる。
前記車輪支持部材1は、タイヤ4を装着するホイール9の内側空間に設けられたナックルプレートにより構成され、メインプレート1aと、上側プレート1bと、下側プレート1cと、を有している(図2参照)。ここで、メインプレート1aがホイールセンタ7においてホイール9に固定されている。また、上側プレート1bはメインプレート1aの上端部から車両内側に延在され、下側プレート1cはメインプレート1aの下端部から車両内側に延在されている。
この車輪支持部材1の上側プレート1bには、図2に示すように、摺動軸3を構成する平行配置の主摺動軸3a及び副摺動軸3bの上端部が固定され、下側プレート1cには、主摺動軸3a及び副摺動軸3bの上端部が固定される。
前記サスペンション部材2は、一端が車輪支持部材1に連結され、他端が車体に弾性支持される懸架構成要素である。このサスペンション部材2は、図1に示すように、前側車体支持ブラケット2aと、後側車体支持ブラケット2bと、主摺動軸受けパイプ2cと、弾性要素支持ブラケット2dと、副摺動軸受けパイプ2eと、を一体に有する。
そして、主摺動軸受けパイプ2cは、サスペンション部材2の車輪連結部であり、車輪支持部材1に固定された主摺動軸3aに対し摺動可能に連結される。また、副摺動軸受けパイプ2eは、サスペンション部材2の車輪連結部であり、車輪支持部材1に固定された副摺動軸3bに対し摺動可能に連結される。すなわち、車輪支持部材1とサスペンション部材2とは、摺動軸3を介して連結される。
一方、前側車体支持ブラケット2a及び後側車体支持ブラケット2bは、車両前後方向に並んで配置されると共に、いずれも主摺動軸受けパイプ2cから車両内側に向かって延在され、車体側の端部に弾性ブッシュ6が設けられている。さらに、前側車体支持ブラケット2aには副摺動軸受けパイプ2eが連結されている。また、弾性要素支持ブラケット2dは、主摺動軸受けパイプ2cの上端部から車両前後方向に突出形成されている。
つまり、サスペンション部材2は、全体として一体に動作し、かつ、運動自由度として主摺動軸3a及び副摺動軸3bに沿った上下運動に規制される。
前記摺動軸3は、図2に示すように、車輪支持部材1に上端部と下端部が固定され、互いに平行状態で上側プレート1bと下側プレート1cの間に立設配置された主摺動軸3a(第1摺動軸部)と、副摺動軸3b(第2摺動軸部)と、により構成される。ここで、主摺動軸3aと副摺動軸3bとは、ホイールセンタ7を挟んで車両前後方向に並んで配置されており、主摺動軸3aがホイールセンタ7よりも車両後側位置に配置されている。さらに、主摺動軸3aは、副摺動軸3bよりも大径となっている。
前記弾性要素5は、サスペンション部材2の弾性要素支持ブラケット2dと、車輪支持部材1の下側プレート1cとの間に介装されたコイルスプリングである。この弾性要素5は、サスペンション部材2の上下方向の摺動動作に対してバネ付勢力を付与することで、サスペンション部材2を弾性支持する。
前記弾性ブッシュ6は、サスペンション部材2の前側車体支持ブラケット2a及び後側車体支持ブラケット2bと車体取付部材8との間に設けられた円筒ブッシュである。ここでは、前側車体支持ブラケット2aに取り付けられた第1,第2弾性ブッシュ6a,6bと、後側車体支持部ブラケット2bに取り付けられた第3弾性ブッシュ6cと、を有している。
前記第1弾性ブッシュ6aは、ホイールセンタ7より上方位置に配置され、第2,第3弾性ブッシュ6b,6cは、ホイールセンタ7より下方位置に配置されている。
前記車体取付部材8は、図1に示すように、サスペンション部材2の第1〜第3弾性ブッシュ6a,6b,6c、及び、減衰要素10の上端部を車体に対して取り付けるための車体側プレート部材である。つまり、サスペンション部材2と車体とは、弾性ブッシュ6及び車体取付部材8を介して連結される。
前記減衰要素10は、図1に示すように、下端部が車輪支持部材1の下側プレート1cに固定され、上端部が車体取付部材8に取り付けられていて、いわゆるショックアブソーバにより構成される。この減衰要素10は、タイヤ4が上下ストロークするとき、車体に伝達される力を減衰させる。
[弾性要素の詳細構成]
図3Aは、実施例1のサスペンション構成要素の配置を車両内側から見たときの模式図であり、図3Bは、車両上方から見たときの模式図である。以下、図3A,図3Bに基づき、弾性要素の詳細構成を説明する。
前記弾性要素5は、図2及び図3Aに示すように、第1スプリング51(第1弾性部材)と、第2スプリング52(第2弾性部材)と、を有している。この第1スプリング51及び第2スプリング52は、いずれも金属によって形成されると共に、自然長が同一の長さに設定されたコイル形状の圧縮バネである。
ここで、弾性要素5を支持する弾性要素支持ブラケット2dは、主摺動軸3aに連結された主摺動軸受けパイプ2cから車両前後方向に延在されており、車両前方に向かって延在した一方の端部は、ホイールセンタ7よりも車両前側位置であって副摺動軸3bよりも車両後側位置まで延びている。
そのため、車両を側面視した際、第1,第2スプリング51,52は、主摺動軸3aを挟んで車両前後方向に並んで配置される。また、第1スプリング51は、ホイールセンタ7よりも車両前側位置であって、副摺動軸3bよりも車両後側位置、つまりホイールセンタ7と副摺動軸3bとの間に配置される。第2スプリング52は、ホイールセンタ7よりも車両後側位置に配置される。この結果、図3Bに示すように、車両前方側から副摺動軸3b→第1スプリング51→ホイールセンタ7→主摺動軸3a→第2スプリング52の順に並ぶこととなる。
なお、主摺動軸3aと第1,第2スプリング51,52との車幅方向の位置は一致し、副摺動軸3bは、これらよりも車両内側に入り込んでいる。
また、第1スプリング51の変形方向(軸方向)と、第2スプリング52の変形方向(軸方向)は、いずれも主摺動軸3a及び副摺動軸3bの軸方向に対して平行に設定されている。さらに、主摺動軸3a、副摺動軸3b、第1,第2スプリング51,52のそれぞれの軸方向は、車両静止時において、路面に対して直交する方向に設定されている。
さらに、この実施例1では、ホイールセンタ7から第1スプリング51までの車両前後方向距離Lと、ホイールセンタ7から第2スプリング52までの車両前後方向距離Lとの比が、第1スプリング51のバネ定数Kの逆数と、第2スプリング52のバネ定数Kの逆数との比に一致するように設定されている。すなわち、距離L,Lとバネ定数K,Kは、下記式(1)及び式(2)が成立する関係となっている。
:L = 1/K:1/K …(1)
×L = K×L …(2)
[サスペンション部材と摺動軸の連結構成]
図4は、実施例1のインホイール型サスペンション装置におけるサスペンション部材と摺動軸の連結部分の構造を示し、図5は、主摺動軸と副摺動軸の取り付けとタイヤとの位置関係を簡略に示す。以下、図4及び図5に基づき、実施例1のサスペンション部材と摺動軸の連結構成を説明する。
実施例1では、摺動軸3として、2本の主摺動軸3aと副摺動軸3bを有し、図5に示すように、車両後方から見た際、主摺動軸3aはタイヤ4から近い位置に設定され、副摺動軸3bは、主摺動軸3aよりも入力が小さくなるタイヤ4から遠い位置に設定されている。つまり、路面入力があるとき、タイヤ4を介しての入力は、副摺動軸3bより主摺動軸3aが大きくなるというように、主摺動軸3aと副摺動軸3bの入力は異なる。このため、入力差に応じて、主摺動軸3aの軸径を、副摺動軸3bの軸径よりも大きな径としている。
そして、図4に示すように、サスペンション部材2の主摺動軸受けパイプ2c(車輪連結部)と主摺動軸3aの連結部分には、滑りブッシュ11のみを介装している。一方、サスペンション部材2の副摺動軸受けパイプ2e(車輪連結部)と副摺動軸3bの連結部分には、滑りブッシュ11と、弾性体ブッシュ12(変位吸収機構)と、を順に介装している。
すなわち、サスペンション部材2と副摺動軸3bの連結構成は、副摺動軸3bの軸中心CLから順に、滑りブッシュ11→弾性体ブッシュ12→副摺動軸受けパイプ2eを同軸配置で設けた構成としている。
ここで、主摺動軸受けパイプ2c及び副摺動軸受けパイプ2eは、サスペンション部材2の前側車体支持ブラケット2aに連結された金属素材による円筒パイプである。
また、前記滑りブッシュ11は、副摺動軸3bの軸表面と接する滑り軸受け部であり、滑りを促進させる樹脂材による円筒ブッシュにより構成される。なお、主摺動軸3aの軸表面と接する位置に設けた滑りブッシュ11も同じものである。
前記弾性体ブッシュ12は、副摺動軸受けパイプ2eと滑りブッシュ11との間に介装された弾性変形可能な円筒ブッシュである。この弾性体ブッシュ12は、副摺動軸受けパイプ2eと副摺動軸3bの軸方向がずれたとき、変形することで副摺動軸受けパイプ2eと副摺動軸3bとの間のずれ変位を吸収する。この弾性体ブッシュ12は、高い弾性変形性を持つゴム等を素材とする。
次に、作用を説明する。
まず、実施例1の作用を説明するにあたり、本発明の背景技術と課題を説明する。
近年、エネルギー資源の効率的活用の観点から電気自動車に対する期待が高まっている。しかし、電気自動車は、航続距離がユーザーの期待に対して短く、満充電での航続距離を延長することが必要となっている。そして、航続距離を延長するためには、限られたスペースにできるだけ多くのバッテリを搭載することが一つの解決手段として有望視されており、サスペンション装置の省スペース化が重要な技術課題となっている。
そして、この「サスペンション装置の省スペース化」といった技術領域では、サスペンションリンクのないインホイール型サスペンション装置が知られている。
このインホイール型サスペンション装置は、車輪を支持する車輪支持部材と、この車輪支持部材に連結されると共に車体に取り付けられるサスペンション部材と、を備え、サスペンション部材の少なくとも一部が、前記車輪のホイール内に配置されている。
さらに、このようなインホイール型サスペンション装置として、車輪を上下ストロークさせるため、サスペンション部材を車輪支持部材に設けられた摺動軸に摺動可能に連結すると共に、車輪支持部材とサスペンション部材との間に弾性要素及び/又は減衰要素とを備えたものが考えられる。
ここで、サスペンションリンクを用いたサスペンション装置の場合、サスペンションリンクの長さを短くすると、サスペンション部材の占有スペースは削減できるものの、車輪の上下ストロークにともなう姿勢変化(ステア変化やキャンバー変化)などが大きくなってしまう。つまり、車輪の姿勢変化を小さくするためには長いサスペンションリンクが必要となるため、サスペンション装置の占有スペースを削減することができなかった。
一方、車輪支持部材の摺動軸にサスペンション部材を摺動可能に連結したインホイール型サスペンション装置では、タイヤは摺動軸に沿って上下ストロークすることができる。また、弾性要素を摺動軸に対して傾斜して配置することで、省スペースを実現することができる。
しかしながら、車両の快適性、特に車両振動の観点では、路面不整による衝撃力を車体に伝えないことが必要である。そのためには、サスペンション部材と摺動軸との間の相対的な上下ストロークを滑らかにして路面入力を吸収することが必要である。また、旋回中の車体安定性確保のためには、車体がロールする際、内輪タイヤの浮きを防止してしっかりと接地させておくことも必要である。そのためには、特に内輪リバウンド(伸び側)方向に滑らかにストロークさせることも重要である。
そして、これらの要求を満足させるためには、サスペンション部材と摺動軸とが相対的に上下ストロークする際のフリクション(摺動抵抗)を低減させておく必要がある。
一方、実施例1のようなインホイール型サスペンション装置では、サスペンション部材と摺動軸とを相対的に上下ストロークさせるため、サスペンション部材を摺動軸に対して上下摺動可能に連結している。ここで、車両が接地したときに路面からタイヤに作用する上向きの接地反力の作用方向と、荷重を支持するサスペンション部材の弾性要素のバネ反力の作用方向とにずれが生じると、摺動軸にこじりモーメント(摺動軸の軸線をこじる方向に作用するモーメント)が作用する。そして、このこじりモーメントが摺動軸に作用したことで、サスペンション部材と摺動軸との間に上下ストローク時のフリクションが増大するという問題が生じる。
さらに、サスペンション部材を上下ストロークさせるために2本の摺動軸を用いる摺動機構を採用した場合では、サスペンション部材が2カ所で摺動軸に連結されることになり、2カ所の連結部分が各々2本の摺動軸に沿って上下摺動する。このため、この2本の摺動軸の平行度を保つことが重要となる。
然るに、サスペンション部品の加工精度や組み付け精度により、その平行度を保つことは容易ではない。また、接地荷重、タイヤ横力、制動力等が作用した場合には、ホイール周りにこじられるような外力が作用するため、それぞれの摺動軸にこじりモーメントが作用して二軸間の距離が変化する、或いは、摺動軸が曲げ変形して二軸間の傾斜角度にずれが生じる、といったことが発生する。
そして、このような結果、サスペンション部材の上下ストローク時のフリクションが増大するといった問題が発生する。なお、本発明では、上記二軸間距離の変化や傾斜角度変化をミスアライメントと呼ぶ。
次に、実施例1のインホイール型サスペンション装置における作用を、「こじりモーメント低減作用」、「摺動軸のミスアライメント吸収作用」、「他の特徴作用」に分けて説明する。
[こじりモーメント低減作用]
車両が路面に接地すると、接地点から上向きに作用する接地反力がタイヤに入力する。この接地反力の作用方向(接地反力線)は、図6に示すように、路面に対して直交する方向(鉛直方向)となり、ホイールセンタを通過する。これに対し、サスペンション部材を弾性支持する弾性要素は、変形方向に沿ったバネ反力を生じる。つまり、サスペンション部材に入力するバネ反力の作用方向(バネ反力線)は、弾性要素の変形方向に沿った方向となる。
そして、この接地反力線とバネ反力線とがずれている場合、このずれ量に応じたモーメントがホイールセンタ周りに発生する。このモーメントは、車輪支持部材を車軸周りに回転させ、車体側からサスペンション部材を介して支持されている摺動軸(実施例1では主に主摺動軸3a)をこじるモーメント(こじりモーメント)となる。
また、実施例1のように、弾性要素5を、主摺動軸3aを挟んで車両前後方向に並ぶ2本のコイルスプリング(第1,第2スプリング51,52)によって構成した場合では、サスペンション部材2に作用するバネ反力は、第1スプリング51によって生じるバネ反力と、第2スプリング52によって生じるバネ反力との平均的なバネ反力となる。
ここで、図7A〜図7Cに示すように、2本のコイルスプリング(第1スプリングα、第2スプリングβ)の設定方向によって、平均的なバネ反力の作用方向(平均バネ反力線A)は異なったものとなる。しかしながら、第1スプリングαによって生じるバネ反力のバネ反力線Bや、第2スプリングβによって生じるバネ反力のバネ反力線Cと比べると、ホイールセンタ高さで見たとき、平均バネ反力線Aが通過する位置は、接地反力線Xが通過する位置に近接する。
そのため、図7Dに示すように、2本のコイルスプリングの設定方向に拘らず、平均的なバネ反力によって生じるこじりモーメントの絶対値(ホイールセンタ高さにおける平均バネ反力線Aが通る位置aに生じるこじりモーメントの大きさ)が、第1スプリングαによって生じるこじりモーメントの絶対値(ホイールセンタ高さにおけるバネ反力線Bが通る位置bに生じるこじりモーメントの大きさ)や、第2スプリングβによって生じるこじりモーメントの絶対値(ホイールセンタ高さにおけるバネ反力線Cが通る位置cに生じるこじりモーメントの大きさ)よりも小さくなる。
これは、接地反力がホイールセンタを介して車体支持部材に入力されるためである。この結果、車両側方から見たときのホイールセンタ高さにおいて、バネ反力線が通過する位置と、接地反力線が通過する位置(ホイールセンタ位置)との位置ずれが小さくなるほど、こじりモーメントが小さくなることがわかる。
さらに、図8は、バネ反力線と摺動軸との位置関係を示した説明図である。この図8より、摺動軸の軸線(軸中心CL)の方向と、バネ反力線の方向との角度ずれがあると、バネ反力の分力のうち、摺動軸を横切る方向の「軸直方向反力」が生じてしまう。この「軸直方向反力」は、摺動軸を曲げる作用を有しており、サスペンション部材2が主摺動軸3aに沿って摺動する際のフリクション要因となる。
以上より、サスペンション部材2が車両上下方向にストロークする際、摺動軸3(特にここでは主摺動軸3a)に作用するこじりモーメントを抑制するには、サスペンション部材2を弾性支持する弾性要素5によって生じるバネ反力線が、ホイールセンタ7の高さ位置において接地反力線と一致していることが望ましいと言える。さらに、このバネ反力線は、摺動軸の軸方向に対して平行である方がよいと言える。
これに対し、実施例1のインホイール型サスペンション装置では、車輪支持部材1とサスペンション部材2の間に配置され、サスペンション部材2を弾性支持する弾性要素5が、ホイールセンタ7よりも車両前側位置に配置された第1スプリング51と、ホイールセンタ7よりも車両後側位置に配置された第2スプリング52と、を有している。
そのため、図9に示すように、タイヤ4が接地した際に生じるバネ反力線は、第1スプリング51の変形方向に沿った第1バネ反力線53と、第2スプリング52の変形方向に沿った第2バネ反力線54となり、ホイールセンタ7を挟んで車両前後方向に分散する。このため、第1,第2バネ反力線53,54に沿ったバネ反力の平均的なバネ反力の作用方向(平均バネ反力線55)は、ホイールセンタ7の近傍を通過することになる。
一方、タイヤ4に作用する接地反力は、タイヤ4の接地点4aから上向きに生じ、この接地反力の作用方向(接地反力線56)はホイールセンタ7を通過する。
これにより、平均バネ反力線55と接地反力線56とを、ホイールセンタ高さにおいて近接させることができ、そのずれを小さく抑えることができる。そのため、主摺動軸3aに作用するこじりモーメントを抑制することができる。そして、こじりモーメントが抑制された結果、サスペンション部材2が摺動する際のフリクション(摺動抵抗)を低減させることができる。
[摺動軸のミスアライメント吸収作用]
まず、実施例1の摺動軸のミスアライメント吸収作用を説明するにあたり、タイヤ4からの入力と主摺動軸3a、副摺動軸3bの変形形態について、図10〜図13を用いて説明する。
図10は、接地荷重がタイヤ4に作用した場合の主摺動軸3a及び副摺動軸3bの変形形態を示した図である。タイヤ4が接地したときに生じる接地荷重反力のうち、上下方向成分(図10の矢印)によって、車輪支持部材1(ナックル)は、下側が車幅方向外側に傾くように破線位置から実線位置へと変形する。このため、主摺動軸3aと副摺動軸3bには、それぞれ上端部を車幅方向内側に入り込ませ、下端部を車幅方向外側に張り出させる曲げモーメントM1,曲げモーメントM2が作用する。
一方、サスペンション部材2は、車体取付部材8に支持されており、接地荷重反力の影響を受けることはない。そのため、各摺動軸3a,3bは、サスペンション部材2の主摺動軸受けパイプ2c又は副摺動軸受けパイプ2eによって中間部の変位が規制されて、上端部が車体内側方向に変位し、下端部が車体外側方向に変位して「S字」に曲げられた状態になる。
図11は、旋回時のタイヤ横力がタイヤ4に作用した場合の主摺動軸3a及び副摺動軸3bの変形形態を示した図である。タイヤ横力の車幅方向成分(図11の矢印)によって、車輪支持部材1(ナックル)は、下側が車幅方向内側に傾くように破線位置から実線位置へと変形する。このため、主摺動軸3aと副摺動軸3bには、それぞれ上端部を車幅方向外側に張り出させ、下端部を車幅方向内側に入り込ませる曲げモーメントM3,曲げモーメントM4が作用する。
一方、サスペンション部材2はタイヤ横力の影響を受けることはない。このため、各摺動軸3a,3bは、サスペンション部材2の主摺動軸受けパイプ2c又は副摺動軸受けパイプ2eによって中間部の変位が規制されて、上端部が車体外側方向に変位し、下端部が車体内側方向に変位して「逆S字」に曲げられた状態になる。
図12は、制動力がタイヤ4に作用した場合の主摺動軸3a及び副摺動軸3bの変形形態を示した図である。制動力が作用すると、タイヤ4の接地点には進行方向逆向きに向かう力(図12の矢印)が作用する。この制動力の進行方向逆向き成分によって、車輪支持部材1(ナックル)は、上側が進行方向に傾くように破線位置から実線位置へと変形する。このため、主摺動軸3aと副摺動軸3bには、それぞれ上端部を進行方向側に変形させ、下端部を進行方向逆側に変形させる曲げモーメントM5,曲げモーメントM6が作用する。
一方、サスペンション部材2は制動力の影響を受けることはない。このため、各摺動軸3a,3bは、サスペンション部材2の主摺動軸受けパイプ2c又は副摺動軸受けパイプ2eによって中間部の変位が規制されて、上端部が車両前方に変位し、下端部が車両後方に変位して「S字」に曲げられた状態になる。
図13は、ホイールセンタ7に前後力が作用した場合の主摺動軸3a及び副摺動軸3bの変形形態を示した図である。これは、例えば車両が後退する際、縁石に乗り上げたような場合である。ホイールセンタ7へ前後力(図13の矢印)が作用すると、この前後力によって、車輪支持部材1(ナックル)は、全体が進行方向側に移動するように破線位置から実線位置へと変形する。一方、サスペンション部材2は前後力の影響を受けることはない。このため、主摺動軸3aには、主摺動軸受けパイプ2cで拘束された部分との上側境界と下側境界に軸線を横切る方向のせん断力M11,M12が作用し、上下端部が進行方向側に変位して「くの字」に曲げられる。また、副摺動軸3bには、副摺動軸受けパイプ2eで拘束された部分の上側境界と下側境界に軸線を横切る方向のせん断力M21,M22が作用し、上下端部が進行方向側に変位して「くの字」に曲げられる。
次に、主摺動軸3a及び副摺動軸3bの変形と、サスペンション部材2の摺動時のフリクション増大との関係を、図14A〜図16を用いて説明する。
図14Aには、摺動軸の上下端部が互いに反対方向に変位して「S字」に曲げられた状態、つまり図10、図11、図12に示す状態を拡大して模式的に示す。このような変形は軸傾斜角度にずれ(軸傾斜ずれ)を生じる要因となっている。
一方、図14Bには、摺動軸の上下端部が同じ方向に変位して「くの字」に曲げられた状態、つまり図13に示す状態を拡大して模式的に示す。このような変形は他方の摺動軸(主摺動軸)との軸間距離にずれ(軸間距離ずれ)を生じる要因となっている。
そして、摺動軸と軸受けとの間に滑りブッシュのみを介装した場合において、摺動軸にその軸線をこじる方向にモーメント(こじりモーメント)が作用し、摺動軸の傾斜ずれが生じると、図15に示すように、摺動軸は軸受け端部に近い部分(図中A部及びB部)が滑りブッシュに押し付けられる。そして、摺動軸と軸受けとの隙間(ギャップ)にばらつき(ギャップA>ギャップB)が生じ、ギャップが少ない部分(図中C部)では、面圧が高くなる。この状態で摺動軸が滑りブッシュに対して上下ストロークすると、面圧の高い部位(A部及びB部)の摩擦抵抗が増大して、サスペンションとしてのフリクション(摺動抵抗)が増大してしまう。
また、摺動軸と軸受けとの間に滑りブッシュのみを介装した場合において、摺動軸に軸線を横切る方向にせん断力が作用し、軸間距離ずれが生じると、図16に示すように、摺動軸は周面の一部(図中D部)が滑りブッシュに押し付けられる。そして、摺動軸と軸受けとの隙間(ギャップ)にばらつき(ギャップC>ギャップD)が生じ、ギャップが少ない部分(図中E部)では、面圧が高くなる。この状態で摺動軸が滑りブッシュに対して上下ストロークすると、面圧の高い部位(D部)の摩擦抵抗が増大して、サスペンションとしてのフリクション(摺動抵抗)が増大してしまう。
さらに、インホイール型サスペンション装置では、摺動軸に沿ってサスペンション部材が上下方向にストロークするが、複数の摺動軸を有している場合、路面入力の大きさや方向により、複数摺動軸には初期状態の平行の関係性や摺動軸の間隔についてずれが発生する。すなわち、2本の摺動軸を有するインホイール型サスペンション装置では、2本の摺動軸において同時にずれ変化が生じた場合には対応することができるが、それぞれの動作で発生するずれについては吸収しきれず、フリクションがさらに増加して正常にストロークするのが困難になる。
これに対し、実施例1では、サスペンション部材2と副摺動軸3bの連結部分に、副摺動軸3bと接する滑りブッシュ11と、副摺動軸3bのずれ変位を吸収する変位吸収機構としての弾性体ブッシュ12と、を有する構成とした。
つまり、摺動軸3として主摺動軸3aと副摺動軸3bを有する場合、上下ストローク作動の際、副摺動軸3bの傾き変化や主摺動軸3aからの軸間距離の変化等のようにミスアライメントがある。このミスアライメントは、部品を組み立てたときの寸法関係や位置関係が設計値からずれる製品ばらつきによっても生じる。このようなミスアライメントがあったとき、図17に示すように、弾性体ブッシュ12の弾性変形により、副摺動軸3bのずれ変位(=ミスアライメント)が吸収され、サスペンション部材2の副摺動軸受けパイプ2eと副摺動軸3bの連結部分におけるフリクションの増加が抑えられる。
このように、摺動作動時における軸傾きのばらつきや軸間距離の変化を、弾性体ブッシュ12による弾性変形にて許容できる。このため、常用走行中のサスペンション上下運動の際、2本の摺動軸(主摺動軸3a,副摺動軸3b)に対するサスペンション部材2の正常な摺動動作を可能にする。この結果、主摺動軸3aと副摺動軸3bを持つインホイール型サスペンション装置IWS1において、サスペンション部材2が摺動軸3に沿って摺動するとき、フリクションの増加を抑えた摺動動作を維持することができる。
特に、この実施例1では、副摺動軸3bを、主摺動軸3aよりもタイヤ4から遠い位置に設定して、接地反力の入力が比較的小さくなる構成とし、この入力が小さい方の副摺動軸3bに変位吸収機構としての弾性体ブッシュ12を設けている。
このように、入力が小さい方の副摺動軸3bにおいて変位吸収機能を実現させることで、摺動動作を支配するのは入力の大きい主摺動軸3aであり、軸の傾きや変形に対しては入力が小さい副摺動軸3bが追従する構造となる。そうすることにより、サスペンション装置として必要以上に剛性の低下を招くことなく、両摺動軸3a,3b間の傾きや軸間距離の変化を吸収することができる。
その結果、常用走行中、突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合のサスペンション上下運動に伴う摺動軸方向の作動を維持し、正常な摺動動作を可能にする。
また、摺動軸3として、主摺動軸3aと副摺動軸3bを有する場合、主摺動軸3aに対して副摺動軸3bの位置を規定することは、摺動動作を支配するのは入力の大きい主摺動軸3aであることを特定することになる。このため、主摺動軸3aが摺動動作を支配する軸であると特定されることで、タイヤ4の上下ストローク等の挙動を安定させることができる。
その結果、常用走行中、突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合のサスペンション上下運動に伴う摺動軸方向の作動を維持し、正常な摺動動作を可能にする。
さらに、実施例1では、変位吸収機構を、サスペンション部材2の副摺動軸受けパイプ2eと、副摺動軸3bと接する滑りブッシュ11との間に介装された弾性体ブッシュ12とする構成とした。
このように、変位吸収機構として、弾性変形する弾性体ブッシュ12を使用することにより、常用走行中のサスペンション上下運動に伴い、ミスアライメント等による軽微な副摺動軸3bの傾きや主摺動軸3aとの軸間距離の変化を吸収することができる。その結果、常用走行中のサスペンション上下運動に伴う摺動方向の作動を維持する効果があり、正常な摺動動作を可能にする。
[他の特徴作用]
インホイール型サスペンション装置において、実施例1のように、サスペンション部材2を弾性支持する弾性部材を、ホイールセンタ7を挟んで配置された2本のコイルスプリングで構成した場合、以下の式(3)、(4)が成り立つ。
M1 = K×L …(3)
M2 = K×L …(4)
なお、K:第1スプリング51のバネ定数
:第2スプリング52のバネ定数
:ホイールセンタ7から第1スプリング51までの車両前後方向距離
:ホイールセンタ7から第2スプリング52までの車両前後方向距離
M1:第1スプリング51のバネ反力がホイールセンタ周りに生じさせるモーメント
M2:第2スプリング52のバネ反力がホイールセンタ周りに生じさせるモーメント
ここで、第1スプリング51のバネ反力がホイールセンタ周りに生じさせるモーメントM1と、第2スプリング52のバネ反力がホイールセンタ周りに生じさせるモーメントM2とが打ち消しあうことで、ホイールセンタ周りに生じるモーメントが低減する。すなわち、ホイールセンタ周りに生じるモーメントを低減するためには、モーメントM1とモーメントM2との和をゼロにすればよく、次の式(5)を成立させる必要がある。
M = M1+M2
= K×L + K×L = ゼロ …(5)
これにより、二つのバネ定数K,Kの大きさに応じて、ホイールセンタ7から第1スプリング51までの車両前後方向距離Lと、ホイールセンタ7から第2スプリング52までの車両前後方向距離Lとを決めれば、第1,第2スプリング51,52のバネ反力がホイールセンタ周りに生じさせるモーメントM1,M2の和を常にゼロにすることができ、ホイールセンタ周りに生じるモーメントを低減することができる。
これに対し、実施例1では、ホイールセンタ7から第1スプリング51までの車両前後方向距離Lと、ホイールセンタ7から第2スプリング52までの車両前後方向距離Lとの比を、第1スプリング51のバネ定数Kの逆数と、第2スプリング52のバネ定数Kの逆数との比に一致するように設定している。
そのため、第1スプリング51によるこじりモーメントと、第2スプリング52によるこじりモーメントとが打ち消されて、ホイールセンタ周りに生じるモーメントを低減することができる。つまり、2本のコイルスプリング(第1スプリング51、第2スプリング52)におけるバネ定数K,Kが異なる場合であっても、ホイールセンタ周りに生じるこじりモーメントを小さくすることが可能となる。また、コイルスプリングの個体差や他の部品との干渉等が問題になる場合であっても、ホイールセンタ周りに生じるこじりモーメントを小さくすることができる。
そして、この結果、摺動軸3(ここでは、特に主摺動軸3a)に作用するこじりモーメントを抑制し、フリクションの低減を図ることができる。
また、実施例1では、サスペンション部材2が摺動可能に連結される摺動軸3として、車両前後方向に並ぶ主摺動軸3aと、副摺動軸3bと、を有している。
ここで、摺動軸が1本の場合では、タイヤに制動力や旋回横力が生じたときにサスペンション部材が摺動軸周りに回転変位してしまうことを防止するため、摺動軸を矩形断面にする等の方策が必要となる。この場合、加工精度の問題や、矩形断面の摺動軸表面に対してサスペンション部材が片当たりする等の問題により、フリクションの増大を招くおそれがある。
しかしながら、実施例1のように摺動軸3を2本(主摺動軸3a、副摺動軸3b)にした場合では、タイヤ4がステアした際の車輪支持部材1とサスペンション部材2との相対回転変位を、2本の摺動軸3(主摺動軸3a、副摺動軸3b)によって支持することができる。そのため、摺動軸3を矩形断面にする必要がなくなる上、サスペンション部材2の片当たりが生じにくくなる。そのため、フリクションの増大を抑制することができる。
なお、主摺動軸3aと副摺動軸3bの軸間距離を大きくするほど、各摺動軸3a,3bが支持するモーメントを低減することができる。
さらに、実施例1では、主摺動軸3aが、第1スプリング51と第2スプリング52の間に配置され、副摺動軸3bが、第1スプリング51よりも車両前側位置に配置されている。ここで、第1スプリング51と第2スプリング52とは、ホイールセンタ7を挟んで車両前後方向に並んでいる。そのため、主摺動軸3aは、副摺動軸3bよりもホイールセンタ7の近くに配置される。
一方、第1スプリング51と第2スプリング52の間に生じる平均的なバネ反力の平均バネ反力線と、ホイールセンタ7を通る接地反力線とがずれていると、このずれ量に応じたモーメントがホイールセンタ周りに生じる。
そのため、このホイールセンタ周りに生じたモーメントは、比較的近くに配置された主摺動軸3aに主に作用することになり、副摺動軸3bに作用するこじりモーメントを低減することが可能となる。この結果、副摺動軸3bの負担を軽減し、副摺動軸3bの軸径を細くする等の部品の軽減化が可能となる。
次に、効果を説明する。
実施例1のインホイール型サスペンション装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) タイヤ4を装着するホイール9に設けられた車輪支持部材1に一端が連結され、他端が車体(車体取付部材8)に弾性支持されるサスペンション部材2を有し、サスペンション構成要素の少なくとも一部がホイール9内に配置されたインホイール型サスペンション装置IWS1において、
サスペンション部材2を、車輪支持部材1に設けられた少なくとも1本以上の摺動軸3に対し摺動可能に連結すると共に、車輪支持部材1とサスペンション部材2との間に弾性要素5を配置し、
弾性要素5は、ホイールセンタ7よりも車両前側位置に配置された第1弾性部材(第1スプリング51)と、ホイールセンタ7よりも車両後側位置に配置された第2弾性部材(第2スプリング52)と、を有する構成とした。
これにより、サスペンション部材2が上下方向にストロークする際に摺動軸3に作用するこじりモーメントを抑制し、フリクションを低減させることができる。
(2) ホイールセンタ7から第1弾性部材(第1スプリング51)までの距離と、ホイールセンタ7から第2弾性部材(第2スプリング52)までの距離との比を、第1弾性部材(第1スプリング51)のばね定数の逆数と、第2弾性部材(第2スプリング52)のばね定数の逆数との比に一致させる構成とした。
これにより、(1)の効果に加え、2本の弾性部材(第1スプリング51、第2スプリング52)におけるバネ定数K,Kが異なる場合であっても、ホイールセンタ周りに生じるこじりモーメントを小さくし、摺動軸3に作用するこじりモーメントを抑制して、フリクションをさらに低減させることができる。
(3) 摺動軸3として、車両前後方向に並ぶ第1摺動軸部(主摺動軸3a)と第2摺動軸部(副摺動軸3b)と、を有する構成とした。
これにより、(1)又は(2)の効果に加え、車輪支持部材1に対するサスペンション部材2の回転変位を防止して、サスペンション部材2の片当たりを生じにくくし、フリクションの増大を抑制することができる。
(4) 第1摺動軸部(主摺動軸3a)を、第1弾性部材(第1スプリング51)と第2弾性部材(第2スプリング52)との間に配置し、第2摺動軸部(副摺動軸3b)を、第1弾性部材(第1スプリング51)よりも車両前側位置に配置する構成とした。
これにより、(3)の効果に加え、主摺動軸3aを副摺動軸3bよりもホイールセンタ7の近くに配置することができ、副摺動軸3bに作用するこじりモーメントを低減することが可能となって、副摺動軸3bの軸径を細くする等の部品の軽減化ができる。
(5) サスペンション部材2と第2摺動軸部(副摺動軸3b)の連結部分に、摺動軸(副摺動軸3b)のずれ変位を吸収する変位吸収機構(弾性体ブッシュ12)を有する構成とした。
これにより、(3)又は(4)の効果に加え、摺動作動時における軸傾きのばらつきや軸間距離の変化を、変位吸収機構(弾性体ブッシュ12)による弾性変形にて許容し、フリクションの増加を抑えた摺動動作を維持することができる。
(実施例2)
実施例2は、変位吸収機構として、摺動軸のずれ変位方向へのスライド動作を許容するスライドガイド構造を設けた例である。
まず、構成を説明する。
図18は、実施例2のサスペンション部材と副摺動軸の連結部分の構造(スライド構造)を示し、図19は、スライド構造を示す斜視図である。以下、図18及び図19に基づき、実施例2のサスペンション部材と摺動軸の連結構成を説明する。
実施例2は、変位吸収機構として、サスペンション部材2と副摺動軸3bとの間に介装され、副摺動軸3bに対しておよそ直角方向に作動するスライド構造を用いた例である。なお、実施例4も変位吸収機構としてスライド構造を有する。
実施例2では、スライド構造を、図18及び図19に示すように、スライドプレート14とスライドガイド15を用い、副摺動軸3bのずれ変位の吸収方向を規定したスライドガイド構造としている。ここで、スライドプレート14は、副摺動軸受けパイプ2eに固定された方形板である。スライドガイド15は、前側車体支持ブラケット2aにボルト16により固定される押えブラケット17により取り付けられた一対のガイド板であり、スライドプレート14を対向するスライドガイド15の凹部に沿ってスライド可能とする。
なお、副摺動軸3bのスライド方向(図19の矢印B方向)は、条件や要求に応じて自由に決めることができるが、実施例2では、ほぼ車幅方向に一致させた方向としている。
次に、作用を説明する。
実施例2では、副摺動軸3bに対しておよそ直角方向に作動するスライド構造を変位吸収機構とし、サスペンション部材2の前側車体支持ブラケット2aと、副摺動軸3bとの間に介装した。
ここで、突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合、2本の摺動軸(主摺動軸3a,副摺動軸3b)の軸傾きの方向が異なるし、軸間距離が変化する。これに対し、副摺動軸3bのスライド動作によりこれを吸収しながら、サスペンション上下運動に伴う各摺動軸3a,3bの摺動作動を滑らかに行うことができる。
その結果、突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合のサスペンション上下運動に伴う摺動軸方向の作動を維持する効果があり、正常な動作を可能にする。
また、実施例2では、スライド構造として、スライドプレート14とスライドガイド15を用い、副摺動軸3bのずれ変位の吸収方向を規定している。
このようにスライド方向について規定したことにより、突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合、図19に示すように、可動するスライド方向(B方向)と、拘束するスライド阻止方向(C方向)とを分離できる。すなわち、必要とされる条件で両摺動軸3a,3b間の傾き差異や軸間距離の変化等がある場合は、可動するスライド方向で吸収し、そうでない場合は、スライド阻止方向で剛性を確保することができる。
その結果、突起乗り越し等での路面からの入力が発生した場合のサスペンション上下運動に伴う摺動軸方向の作動を維持する効果があり、正常な動作を可能にすることができる。
次に、効果を説明する。
実施例2のインホイール型サスペンション装置にあっては、下記に挙げる効果を得ることができる。
(6) 変位吸収機構を、サスペンション部材2の前側車体支持ブラケット2aと、摺動軸(副摺動軸3b)との間に介装され、摺動軸(副摺動軸3b)に対しておよそ直角方向に作動するスライド構造(スライドプレート14,スライドガイド15)とする構成とした。
このため、(5)の効果に加え、副摺動軸3bのずれ変位に対しスライド動作によりこれを吸収することで、サスペンション上下運動に伴う副摺動軸3bの摺動作動を滑らかに行うことができる。
(実施例3)
実施例3は、変位吸収機構として、摺動軸の傾斜方向への傾き動作を許容する相対回転構造を設けた例である。
まず、構成を説明する。
図20は、実施例3のサスペンション部材と副摺動軸の連結部分の構造(相対回転構造)を示す。以下、図20に基づき、実施例3のサスペンション部材と摺動軸の連結構成を説明する。
実施例3は、変位吸収機構として、サスペンション部材2の前側車体支持ブラケット2aと副摺動軸3bとの間に介装され、副摺動軸受けパイプ2eに対して副摺動軸3bの傾斜方向への回転動作を許容する相対回転構造30を用いた例である。なお、実施例4も変位吸収機構として相対回転構造を有する。
実施例3では、相対回転構造30を、図20に示すように、ボール部31とボール支持部32を用いた、いわゆるスフィリカル軸受け(自己調心型軸受け)によって構成している。
ここで、ボール部31は、滑りブッシュ11の外側に嵌着した円筒部31aと、円筒部31aの外周面から半球状に膨出した球面部31bと、を有する。ボール支持部32は、副摺動軸受けパイプ2eの内側に嵌着した支持部本体32aと、支持部本体32aの内側に形成された球内面32bと、有する。そして、ボール部31の球面部31bがボール支持部32の球内面32bに対して球面接触することで、副摺動軸3bは前側車体支持ブラケット2aに支持された副摺動軸受けパイプ2eに対し、360°方向に傾斜可能となっている。
次に、作用を説明する。
実施例3では、ボール部31とボール支持部32を備えた相対回転構造30を変位吸収機構とし、サスペンション部材2の前側車体支持ブラケット2aと、副摺動軸3bとの間に介装した。
この構成により、接地荷重、タイヤ横力、制動力等によって発生するこじりモーメントによって副摺動軸3bが傾き、主摺動軸3aに対して軸傾斜角度がずれた場合、図21に示すように、ボール部31がボール支持部32に対して回転する。このため、副摺動軸3bが滑りブッシュ11に片当たりすることがなくなり、副摺動軸3bの周囲の面圧が部分的に高くなることを回避できる。この結果、摩擦抵抗の増大を防止し、サスペンションとしてのフリクションの増大を抑えることができる。
次に、効果を説明する。
実施例3のインホイール型サスペンション装置にあっては、下記に挙げる効果を得ることができる。
(7) 変位吸収機構を、サスペンション部材2の前側車体支持ブラケット2aと、摺動軸(副摺動軸3b)との間に介装され、摺動軸(副摺動軸3b)に対して傾斜方向に作動する相対回転構造30とする構成とした。
このため、(5)の効果に加え、副摺動軸3bの軸傾斜角度がずれた場合に、副摺動軸3bの周囲の面圧が部分的に高くなることを回避し、摩擦抵抗の増大を防止してサスペンションとしてのフリクションの増大を抑えることができる。
(実施例4)
実施例4は、変位吸収機構として、スライド構造と相対回転構造の併用機構を用いた例である。
まず、構成を説明する。
図22は、実施例4のサスペンション部材と副摺動軸の連結部分の構造(スライド構造+相対回転構造)を示す。以下、図22に基づき、実施例4のサスペンション部材と摺動軸の連結構成を説明する。
実施例4は、変位吸収機構として、サスペンション部材2と副摺動軸3bの間に介装されると共に、スライド構造(図18)と、相対回転構造(図20)とを併せ持つ構造を用いた例である。
前記スライド構造は、図22に示すように、スライドプレート14と、スライドガイド15とを用い、副摺動軸3bのずれ変位の吸収方向を規定したスライドガイド構造としている。ずれ変位の吸収量は、副摺動軸受けパイプ2eの外側に設定されたスライドプレート14のスライド量範囲としている。また、スライドプレート14とスライドガイド15との間に、水平方向の隙間Kを設けている。
前記相対回転構造30は、図22に示すように、サスペンション部材2の副摺動軸受けパイプ2eと副摺動軸3bと接する滑りブッシュ11との間に介装され、副摺動軸3bの傾斜変位の吸収方向を規定することなく、全周方向とした構造としている。傾斜変位の吸収量は、ボール部31の回転可能範囲としている。
また、この実施例4では、図23に示すように、スライド構造及び相対回転構造からなる変位吸収機構の高さ位置を、主摺動軸3aに連結した主摺動軸受けパイプ2cの上端2αと下端2βとの間の高さ領域H内に収まるように設定している。
次に、作用を説明する。
実施例4では、変位吸収機構として、サスペンション部材2と副摺動軸3bの間に有するスライド構造と相対回転構造30とを併せ持つ構造を用いた構成としている。
このように、2種類の変位吸収機構を併用する構造としたことにより、突起乗り越し等での路面からの入力が進行方向から斜めにずれて発生した場合、2本の摺動軸(主摺動軸3a,副摺動軸3b)の軸傾きや軸間距離の変化の増加が見込まれる。すなわち、スライド構造のスライド動作によるずれ変位の吸収作用と、相対回転構造30の回転動作による傾斜変位の吸収作用と、によって、ずれ変位量が大きくても十分にこれを吸収することができる。
さらに、水平方向の隙間Kを設けたことで、主摺動軸3aと副摺動軸3bとの間の軸間距離ずれが生じた場合には、スライドプレート14が水平方向に変位し、軸間距離ずれを許容することができる。
この結果、突起乗り越し等での進行方向から斜めにずれた路面入力によって軸傾斜ずれや軸間距離ずれが同時に生じた場合であっても、サスペンション上下運動に伴う摺動軸方向の作動を維持する効果があり、正常な動作を可能にする。これにより、フリクション低減効果をさらに高めることができる。
そして、車輪支持部材1の摺動軸3(主摺動軸3a、副摺動軸3b)にサスペンション部材2を摺動可能に連結した摺動スライド式のサスペンション構造では、摺動軸に沿った摺動ストローク量は、車体(車体取付部材8)から車輪連結部(主摺動軸受けパイプ2c、副摺動軸受けパイプ2e)までのサスペンション部材2の長さと、車輪連結部(主摺動軸受けパイプ2c、副摺動軸受けパイプ2e)における摺動軸支持長さとで決定される。
そのため、バウンド側(弾性要素5の縮み側)及びリバウンド側(弾性要素5の伸び側)でのサスペンション部材2の摺動ストロークを十分に確保することが必要になっている。
一方、主摺動軸3aにおいて確保されているサスペンション部材2の摺動ストロークは、バウンド側が車輪支持部材1の下側プレート1cと主摺動軸受けパイプ2cの下端部との距離で決まる。また、リバウンド側のサスペンション部材2の摺動ストロークは、車輪支持部材1の上側プレート1bと主摺動軸受けパイプ2cの上端部との距離で決まる。
このため、主摺動軸3aに沿ったサスペンション部材2の摺動ストローク量を維持するためには、副摺動軸3bに連結された副摺動軸受けパイプ2eの高さ位置を、主摺動軸受けパイプ2cの上端2αと下端2βとの間の高さ領域H内に収まるように設定しなければならない。
これに対し、実施例4では、副摺動軸受けパイプ2e及び変位吸収機構の高さ位置を、主摺動軸受けパイプ2cの上端2αと下端2βとの間の高さ領域H内に収まるように設定している。そのため、サスペンション部材2が上下方向にストロークした際、副摺動軸受けパイプ2eが主摺動軸受けパイプ2cよりも先に車輪支持部材1に干渉することはない。
そのため、主摺動軸3aに沿って設定されたサスペンション部材2のストローク量を維持することができ、サスペンション部材2の十分なストロークを保証することができる。
次に、効果を説明する。
実施例4のインホイール型サスペンション装置にあっては、下記に挙げる効果を得ることができる。
(8) 変位吸収機構を、サスペンション部材2と摺動軸(副摺動軸3b)との間に介装され、摺動軸(副摺動軸3b)に対しておよそ直角方向に作動するスライド構造(スライドプレート14,スライドガイド15)と、摺動軸(副摺動軸3b)の傾斜方向に作動する相対回転構造30とを併せ持つ構成とした。
このため、(5)の効果に加え、吸収したい摺動軸のずれ方向が斜め方向を含むとき、或いは、特定のずれ変位量が大きいとき、スライド動作と回転動作によるずれ変位吸収作用によって、充分にこれを吸収することができる。
以上、本発明のインホイール型サスペンション装置を実施例1〜実施例4に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、第1スプリング51からホイールセンタ7までの距離Lが、第2スプリング52からホイールセンタ7までの距離Lよりも小さくなるように設定された例を示した。この場合、上述の式(1)を成立させるためには、K<Kの関係となる。
しかしながら、これに限らず、図24Aに示すように、L=Lとしてもよいし、図24Bに示すように、L>Lとしてもよい。いずれの場合であっても、上述の式(1)が成立するように第1,第2スプリング51,52のバネ定数K,Kを設定することで、式(2)が成立する。これにより、第1,第2スプリング51,52のバネ反力がホイールセンタ周りに生じさせるモーメントM1,M2の和を常にゼロにすることができ、ホイールセンタ周りに生じるモーメントを低減することができる。
また、実施例1〜4では、摺動軸3として、主摺動軸3aと副摺動軸3bを用いる例を示した。しかし、摺動軸としては、1本の摺動軸を用いるものであっても良いし、また、3本以上の摺動軸を用いるものであっても良い。
また、実施例1〜4では、主摺動軸3aと副摺動軸3bのうち、副摺動軸3bにずれ変位を吸収する変位吸収機構を適用した例を示した。しかし、主摺動軸と副摺動軸の両方にずれ変位を吸収する変位吸収機構を適用しても良い。この場合、主摺動軸によるずれ変位吸収量と副摺動軸によるずれ変位吸収量を異ならせるようにしてもよい。
さらに、実施例1〜4では、本発明のインホイール型サスペンション装置を後輪(従動輪)に適用する例を示した。しかし、本発明のインホイール型サスペンション装置は、駆動輪に対しても適用することができる。要するに、サスペンション構成要素の少なくとも一部がタイヤを装着するホイール内に配置されたインホイール型サスペンション装置であれば適用できる。
IWS1 インホイール型サスペンション装置
1 車輪支持部材
2 サスペンション部材
2a 前側車体支持ブラケット
2b 後側車体支持ブラケット
2c 主摺動軸受けパイプ
2d 弾性要素支持ブラケット
2e 副摺動軸受けパイプ
3 摺動軸
3a 主摺動軸(第1摺動軸部)
3b 副摺動軸(第2摺動軸部)
4 タイヤ
5 弾性要素
51 第1スプリング(第1弾性部材)
52 第2スプリング(第2弾性部材)
6 弾性ブッシュ
7 ホイールセンタ
8 車体取付部材
9 ホイール
10 減衰要素
11 滑りブッシュ(滑り軸受け部)
12 弾性体ブッシュ(変位吸収機構)
14 スライドプレート(変位吸収機構)
15 スライドガイド(変位吸収機構)
30 相対回転構造(変位吸収機構)

Claims (8)

  1. タイヤを装着するホイールに設けられた車輪支持部材に一端が連結され、他端が車体に弾性支持されるサスペンション部材を有し、サスペンション構成要素の少なくとも一部が前記ホイール内に配置されたインホイール型サスペンション装置において、
    前記サスペンション部材を、前記車輪支持部材に設けられた少なくとも1本以上の摺動軸に対し摺動可能に連結すると共に、前記車輪支持部材と前記サスペンション部材との間に弾性要素を配置し、
    前記弾性要素は、ホイールセンタよりも車両前側位置に配置された第1弾性部材と、前記ホイールセンタよりも車両後側位置に配置された第2弾性部材と、を有する
    ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。
  2. 請求項1に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
    前記ホイールセンタから前記第1弾性部材までの距離と、前記ホイールセンタから前記第2弾性部材までの距離との比を、前記第1弾性部材のばね定数の逆数と、前記第2弾性部材のばね定数の逆数との比にほぼ一致させる
    ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
    前記摺動軸として、車両前後方向に並ぶ第1摺動軸部と第2摺動軸部と、を有する
    ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。
  4. 請求項3に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
    前記第1摺動軸部を、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間に配置し、前記第2摺動軸部を、前記第1弾性部材よりも車両前側位置に配置する
    ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。
  5. 請求項3又は請求項4に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
    前記サスペンション部材と前記第1摺動軸部の連結部分と、前記サスペンション部材と前記第2摺動軸部の連結部分との少なくとも一方に、前記摺動軸のずれ変位を吸収する変位吸収機構を有する
    ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。
  6. 請求項5に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
    前記変位吸収機構は、前記サスペンション部材と前記摺動軸との間に介装され、前記摺動軸に対しておよそ直角方向に作動するスライド構造である
    ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。
  7. 請求項5に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
    前記変位吸収機構は、前記サスペンション部材と前記摺動軸との間に介装され、前記摺動軸に対して傾斜方向に作動する相対回転構造である
    ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。
  8. 請求項5に記載されたインホイール型サスペンション装置において、
    前記変位吸収機構は、前記サスペンション部材と前記摺動軸との間に介装され、前記摺動軸に対しておよそ直角方向に作動するスライド構造と、前記摺動軸に対して傾斜方向に作動する相対回転構造とを併せ持つ構造である
    ことを特徴とするインホイール型サスペンション装置。
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