JP2017000948A - コア−シェル触媒およびこれを利用したアルケンの製造方法 - Google Patents

コア−シェル触媒およびこれを利用したアルケンの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アルキンをアルケンに選択的に水素化するための触媒反応において、パラジウム触媒のように高転化率かつ、銀触媒のように高選択率の反応を、高温雰囲気や高圧水素を使用することなく、穏やかな条件でも迅速に達成できる触媒反応技術を提供する。
【解決手段】核(コア)がパラジウムおよび殻(シェル)が銀からなることを特徴とするコア−シェル触媒およびこれを利用したアルケンの製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、核(コア)がパラジウムおよび殻(シェル)が銀からなるコア−シェル触媒、また、当該触媒を利用したアルキンの選択的な水素化によるアルケンの製造方法に関する。
アルキンの水素化反応によってアルケンを得る反応においては、触媒としてパラジウムや銀が使用されることが知られていて、アルキンの水素化活性としてはパラジウムが銀より優れていることも知られている(非特許文献1)。
また、非特許文献1ではパラジウムや銀について、アルケンに対する水素化反応の活性についても記載されている。この場合も、アルキンの水素化反応における触媒活性としては、パラジウムが銀よりも優れていることが記載されている。
このような触媒反応における触媒の性能は活性として表されるが、この活性は、主に転化率と選択率という基準により評価される。転化率とは反応した基質の割合であり、選択率とは全反応物中における目的物質の割合として表される。
アルキンのアルケンへの選択的な水素化において触媒として銀、パラジウムを使用した場合、非特許文献1に記載のとおり、転化率はパラジウムが勝り、選択率は銀が勝っていることが知られている。
しかし、パラジウムはアルキンの水素化能力が高いと同時にアルケンの水素化能力にも優れている。つまり、パラジウムを使用してアルキンからアルケンへの選択的な水素化を試みた場合、目的反応物であるアルケンをも水素化してアルカンを生成してしまい、転化率は高いもののアルケンの選択率は悪くなる。
これに対して銀についてはアルケンからアルカンへの反応は進み難く選択率は高いと予測されるものの、アルキンからアルケンへの水素化についても反応が進み難いことが分かり、転化率は低いものとなる。
このような水素化反応における銀の転化率の低さを補い、選択率と共に転化率の向上を図るためには、高圧条件で水素を供給したり、反応時間を長くしたり、反応温度を高温にするなど、反応条件をもってその促進を図ることも考えられる。しかし、高温、高圧条件では反応系の安全性を確保することが課題となり、反応時間を長くすることはコストの上昇を招き産業上好ましくない。
アルキンの選択的な水素化によりアルケンを得る反応では、前記のような課題を有するパラジウムや銀以外の金属を触媒として使用することで高転化率で、高選択率な反応が可能なようにも思われる。しかし、そのような触媒反応は未だ見出されていない。
また、単に触媒反応に使用する金属を選択するだけでは、アルキンを高転化率、高選択率で選択的に水素化することは困難である。例えば、非特許文献1にはアルキンの水素化反応における触媒能の序列が「Pd>Pt>Rh、Ir>Co>Fe>Cu、Ag、Au」であることが記載されている。このような序列を踏まえると、仮にアルキンの水素化能力が中程度とされているコバルトを触媒として使用すれば、アルキンの水素化においては銀よりも高い活性が期待できる。
しかし一方、アルケンの水素化反応における触媒能の序列としては「Rh>Pt>Pd>Ni>Ir>Co>Fe>Cu>Au>Ag」であることが記載されている。つまりコバルトはアルケンに対して銀よりも高い水素化活性を有することからアルケンの選択性には劣ることが分かる。
このように、触媒能の序列のみを見て触媒を選択したとしても、依然アルキンの選択的な水素化においては、転化率、選択率が共に高い触媒反応を実現することは困難であった。
「貴金属元素の化学と応用」、講談社、1984年4月1日発行、116頁〜121頁
従って、本発明は、アルキンをアルケンに選択的に水素化するための触媒反応において、パラジウム触媒のように高転化率かつ、銀触媒のように高選択率を、高温雰囲気や高圧水素を使用することなく、穏やかな条件でも迅速に達成できる触媒反応技術を得ることを課題とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、核(コア)がパラジウムおよび殻(シェル)が銀からなるコア−シェル構造の触媒が、アルキンの水素化反応において、穏やかな条件であっても、高転化率と共に、アルケンについて高選択率を発揮することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、核(コア)がパラジウムおよび殻(シェル)が銀からなることを特徴とするコア−シェル触媒である。
また、本発明は、以下の工程(a)および(b)、
(a)パラジウムナノコロイドを溶液中に分散させる工程
(b)上記で得られた溶液に銀前駆体を添加し、これを還元することにより核がパラジウムおよび殻が銀からなるコア−シェル触媒を溶液中に生成させる工程
を含むことを特徴とする核がパラジウムおよび殻が銀からなるコア−シェル触媒の製造方法である。
更に、本発明は、有機溶媒中、上記コア−シェル触媒の存在下、基質であるアルキンと、水素とを接触させ、アルキンの炭素間三重結合を選択的に水素化することを特徴とするアルケンの製造方法である。
本発明の核(コア)がパラジウムおよび殻(シェル)が銀からなるコア−シェル触媒は、室温、水素1気圧というような穏やかな条件下のもと、アルキンの部分水素化反応を選択的に進行させることができるものであり、また、このような選択的な水素化反応に重要な前記触媒中におけるパラジウムに対する銀モル比も容易に調整することができるものである。
また、本発明の触媒においては高価なパラジウムの溶出も抑制することができる。例えば、反応系においてリン原子、窒素原子あるいは2座配位子が存在する場合では、銀原子は直線2配位のためキレート化しづらく反応系に溶出し難い。これに対してパラジウムは4配位でキレート構造を取り易く反応系に溶出し易い。このようなパラジウムの表面を銀で覆うことにより、反応系中にパラジウムの溶出を抑制できる場合がある。
そのため、本発明のコア−シェル触媒は、アルキンの炭素間三重結合を選択的に水素化し、アルケンを効率よく製造することができる。
本発明触媒の模式図である。 実施例1で製造した[Pd@Ag/HAP−a0.20]のTEM画像である。 実施例1で製造した[Pd@Ag−a0.20]のTEM画像である。 実施例1で製造した[Pd@Ag−a0.20]のSTEM画像を処理して得られたパラジウムの分布を表す画像である。 実施例1で製造した[Pd@Ag−a0.20]のSTEM画像を処理して得られた銀の分布を表す画像である。
本発明の核(以下、「コア」という)がパラジウムおよび殻(以下、「シェル」という)が銀からなるコア−シェル触媒(以下、「本発明触媒」という)の模式図を図1に示す。図1中、濃い色の粒子は銀原子であり、シェルを形成している、薄い色の粒子はパラジウム原子であり、コアを形成している。なお、図1では表面の銀シェルの一部を取り除いてコアとなるパラジウムの存在を明らかにしているが、本発明触媒におけるシェルの厚み、コアの大きさ、コア並びにシェルの密度などコア−シェルの形状については本発明の趣旨の範囲であれば図1の模式図の状態に限定されるものではない。
本発明触媒は、コアがパラジウムおよびシェルが銀からなるものである。本発明触媒の大きさは、本発明触媒の作用を阻害するものでなければ特に限定されるものではないが、一般的にナノサイズといわれるような微細な大きさであることが好ましい。具体的な大きさとしては、平均粒子径が3〜50nmであることが好ましく、10〜30nmであることがより好ましい。本発明触媒の粒子の大きさが小さいことで反応に利用される触媒の表面積も大きくなり、反応における転化率の向上が見込まれる。なお、本明細書において平均粒子径は、複数の本発明触媒の大きさの平均値のことをいい、具体的には、倍率38,000倍の電子顕微鏡で観察し、200個の本発明触媒の大きさ(長径)を求め、それを平均することにより算出される。
本発明触媒において、パラジウムからなるコアはパラジウム原子の状態は特に限定されるものでは無いが、複数のパラジウム粒子が集まって形成された粒子よりも均一な一つ粒子を形成することが好ましい。また、その形状についても粒子状であれば特に限定されるものでは無いが、球状であることが好ましい。また、このようなコア粒子の平均粒子径が2〜40nmであることが好ましく、10〜30nmであることがより好ましい。なお、このコアには、白金、ロジウム等のパラジウム以外の白金族元素や、ニッケル、コバルト、鉄等の遷移金属元素等が含まれていてもよい。
また、本発明触媒において、銀からなるシェルの状態は特に限定されるものでは無いが、銀原子が結晶性を持ってパラジウムコアを被覆していることが好ましい。本発明においても図3のTEM画像に示されるとおり、ひとつの銀の格子面が広い範囲で観察されている。このようなシェルの厚さは厚過ぎると転化率が低下することがあり、薄すぎると銀のシェルの欠損を生じる恐れもあり、選択率も低下することがあるため、1〜20nmが好ましく、5〜10nmがより好ましい。なお、パラジウムによる選択率の向上という意味では、銀のシェルは、パラジウムのコアの表面を均質かつ全体的に被覆していることが好ましい。
本発明触媒における銀のシェルの状態は、パラジウムコアの表面を銀のシェルが完全に覆っている状態であることが好ましい。また、パラジウムコアの表面を銀のシェルが完全に覆っている状態である場合、銀モル比(銀/パラジウム)については小さい方が望ましいことがある。銀モル比(銀/パラジウム)が小さい場合、パラジウムの活性が発揮され易く転化率が良くなることがある。ただし、銀モル比(銀/パラジウム)が小さすぎると、コアであるパラジウムが露出してしまうことがあり、選択率が低下してしまうことがある。
本発明触媒として好ましい態様としては、例えば、パラジウムのコアの平均粒子径が10〜30nm、銀のシェルの厚さが5〜10nmであり、シェルがコアの表面を均質かつ全体的に被覆していて、本発明の触媒の調製の際に使用した銀およびパラジウムのモル比(銀/パラジウム)が0.2〜1のものであることが好ましく、0.2〜0.6がより好ましい。
本発明触媒は、更に、担体に担持されていてもよい。本発明触媒を担体に担持させ、担体表面に分散することによって、反応に使用する触媒の粒径が大きくなり反応系からの触媒の分離も容易になる。また、本発明触媒同士が凝集することも防ぐことができ、反応に寄与できる触媒表面を保ち、繰り返し使用時にも転化率、選択率の低下を防ぐこともできる。
上記担体は、特に限定されるものではなく、例えば、ハイドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、チタニア、マグネシア、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア等の無機酸化物担体またはこれらの複合酸化物担体、活性炭等のカーボン担体等、広く触媒分野で使用されている担体が使用可能である。これらの担体の中でも、反応系中における安定性、安全性の観点からは無機酸化物担体が好ましい。また、このような無機酸化物担体には主成分の他、希土類等他の添加成分が配合されていてもよい。
このような担体の物性としては、平均粒径、比表面積値(BET値)等が挙げられるが、本発明触媒についてはこれら物性については特に限定されるものではなく、広く触媒分野で採用されている物性値の担体を使用可能であるが、比表面積値(BET値)としては、例えば、30〜3000m/gで特定されるような、比較的大きな表面積を有する担体を使用することが好ましい。例えば、ハイドロキシアパタイトであれば、好ましくはBET比表面積が10〜150m/g、より好ましくは20〜100m/g、特に好ましくは30〜80m/gのものが使用可能であり、ハイドロアパタイトであれば好ましくはBET比表面積が1〜1000m/g、より好ましくは10〜500m/g、特に好ましくは100〜300m/gのものが使用可能であり、チタニアであれば好ましくはBET比表面積が1〜500m/g、より好ましくは100〜300m/gのものが使用可能であり、マグネシアであれば好ましくはBET比表面積が1〜500m/g、より好ましくは100〜300m/gのものが使用可能である。
なお、本発明触媒の担体にハイドロキシアパタイトを使用する場合、天然物からの精製により得られたものでもよく、合成により得られたものであってもよい。合成により得られたものであれば、品質も安定しており、廉価な材が市場から調達可能である。このようなハイドロキシアパタイトとしては、例えば以下のような組成式によって表されるものが挙げられる。このようなヒドロキシアパタイトとしては、例えば、リン酸三カルシウム(和光純薬工業株式会社製)等として市販されている。
また、本発明触媒の担体にハイドロタルサイトを使用する場合も天然物からの精製により得られたものでもよく、合成により得られたものであってもよい。合成により得られたものであれば、品質も安定しており、廉価な材が市場から調達可能である。このようなハイドロタルサイトとしては、例えば、以下のような組成式によって表されるものが挙げられる。
以上説明した本発明触媒は、例えば、次の工程(a)および(b)
(a)パラジウムナノコロイドを溶液中に分散させる工程
(b)上記で得られた溶液に銀前駆体を添加し、これを還元することにより核がパラジウムおよび殻が銀からなるコア−シェル触媒を溶液中に生成させる工程
を含む方法により製造することができる。
工程(a)で用いられるパラジウムナノコロイドは、パラジウムがナノ粒子の状態で、使用する溶媒に対して高分散か均質に分散し、このようなパラジウムナノ粒子が溶媒分子に対して親和性を持っているもの、あるいは、溶媒中にパラジウムナノ粒子に対して親和性を持つ成分でパラジウムナノ粒子を覆い、均質な分散状態になるものである。パラジウムナノコロイドの大きさは特に限定されないが、例えば、平均粒子径が2〜40nmであることが好ましく、10〜30nmであることがより好ましい。
このようなパラジウムナノコロイドは、市販のものを利用してもよいし、例えば、パラジウム前駆体と、パラジウムナノコロイドの凝集を防ぐための分散剤を、溶媒に溶解後、還元剤を用いて還元する方法等で調製してもよい。
上記方法で用いられるパラジウム前駆体は、特に限定されるものではなく、このパラジウムナノコロイドの凝集を防ぐ分散剤との組合せや、後に続く工程を勘案して適宜選択されるものである。このようなパラジウム前駆体としては、例えば、塩化パラジウム酸、塩化パラジウム酸ナトリウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、テトラニトロパラジウム(II)酸カリウム、テトラシアノパラジウム(II)酸カリウム、テトラアンミンパラジウム(II)塩化物、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)硫酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)酢酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)炭酸塩や、酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、2−エチルヘキサン酸パラジウム、オクタン酸パラジウム、安息香酸パラジウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウム(II)、ビス(ジメイルグリオキシマト)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、トリス(ジベンザルアセトン)二パラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。これらパラジウム前駆体は、適宜水や有機溶媒に溶解したものであってもよい。
また、上記方法で用いられるパラジウムナノコロイドの凝集を防ぐための分散剤は、特に限定されるものではなく、パラジウム前駆体との組合せや、後に続く工程を勘案して適宜選択されるものであるが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)溶液、ポリビニルピロリドン、クエン酸、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等を使用することができる。なお、このような分散剤は前記パラジウム前駆体を還元してパラジウムナノコロイドを生成する還元剤としての機能を有していてもよい。
更に、上記方法で用いられる溶媒は、特に限定されないが、水の他、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、エチレングリコール、ジエチルエーテル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
上記したパラジウムナノコロイドは、パラジウム前駆体と分散剤を、例えば、パラジウムに対して分散剤をモル比で1:1以上の割合で溶媒に溶解後、溶液を還元することにより得ることができる。なお、分散剤がポリマーの場合は、前記モル比はモノマー換算とする。還元の方法については、適宜還元剤を添加することで行われるが、必要に応じて加熱をしてもよい。このような還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)エチレングリコール(EG)、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸、グリセリン、ヒドラジン等が挙げられる。
上記のようにして生成されたパラジウムナノコロイドは、後述する銀によるシェル形成の前に精製されていることが好ましい。パラジウムナノコロイドの精製は、特に限定されないが、例えば、パラジウムナノコロイドが生成した溶液を冷却後、アセトン、セチルメチルアンモニウム塩酸塩(CTAC)、2−ブタノン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、モルホリン、エタノール、メタノール、2−メトキシエタノール等の有機溶媒を添加し、不純物を溶解、捕集した後、攪拌し遠心分離機等により分離する方法等で行うことができる。
上記したパラジウムナノコロイドを溶液中に分散させるには、パラジウムナノコロイドが均質な分散状態となる量の分散剤を、パラジウムナノコロイドと共に水等の溶媒に溶解させればよいが、分散剤の量はパラジウムナノコロイドに対して5当量以上であることが好ましい。分散剤には、パラジウムナノコロイドの凝集を防ぐための分散剤と同じものを用いることができる。また、この分散にあたっては溶媒を加熱してもよい。
上記のようにしてパラジウムナノコロイドを溶液中に分散させた溶液は、次に、これに銀前駆体を添加し、これを還元することによりコアがパラジウムおよびシェルが銀からなるコア−シェル触媒を溶液中に生成させることができる。より具体的には、銀前駆体を添加した後、還元剤を添加し、必要により撹拌や加熱を行って、還元させることによりコアがパラジウムおよびシェルが銀からなるコア−シェル触媒を溶液中に生成させることができる。
上記で用いられる銀前駆体は、特に限定されるものではなく、例えば、硝酸銀、硫酸銀、酢酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、ジシアノ銀(I)酸カリウム、ジアンミン銀(I)硝酸塩、エチレンジアミン銀(I)硝酸塩、プロピレンジアミン銀(I)硝酸塩、ビスピグアニド銀(III)硫酸塩、ビス(イミダゾール)銀(I)硝酸塩等や、2−エチルヘキサン酸銀等が挙げられる。これらパラジウム前駆体は、適宜水や有機溶媒に溶解したものであってもよい。また、この銀前駆体の添加量は特に限定されるものではなく、所望のシェル層の厚さ、またコアの幾何学的な形状やサイズに応じて適宜設定すればよいが、例えば、パラジウムに対する銀モル比(銀/パラジウム)を0.05〜2、好ましくは0.2〜1、より好ましくは0.2〜0.6となる量である。
また、上記で用いられる還元剤としてはメタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸、グリセリン、ヒドラジン、アスコルビン酸等が挙げられる。また、この還元剤の添加量は特に限定されるものではないが、還元処理する銀成分と当量以上、好ましくは5倍当量以上であればよい。
上記のようにして得られる本発明触媒は、遠心分離することにより単離することができる。
なお、本発明触媒が生成されたかどうかは、例えば、TEM−EDX[TEM:Transmission Electron Microscope(透過型電子顕微鏡),EDX:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy(エネルギー分散型X線分光法)]等で確認することができる。
更に、本発明触媒が生成した溶液中に担体を添加することにより、前記コア−シェル触媒を担体に担持させることもできる。より具体的には、本発明触媒が生成した溶液中に担体を添加して、前記コア−シェル触媒を担体に担持させ、溶液を除去することにより得られる。
溶液を除去する方法としては、必要により、攪拌、分離、洗浄、乾燥等の工程を行い、場合によっては乾燥後に焼成工程を経てもよいが、焼成を行う場合は本発明触媒のコア−シェル構造を壊すことのないように、酸化性、還元性などの焼成雰囲気、温度を適宜調整することが望ましい。
以上説明した本発明触媒は、例えば、医農薬中間体合成のようにパラジウム触媒と同じ用途に用いることができる。本発明触媒はこれら用途の中でも特にアルキンの炭素間三重結合を選択的に水素化、好ましくはアルキンの炭素間三重結合を炭素間二重結合に選択的に水素化して、アルケンの製造に用いることが好ましい。
本発明触媒を用いてアルキンの炭素間三重結合を選択的に水素化してアルケンを製造する方法は、本発明触媒を用いてさえいれば特に限定されないが、例えば、有機溶媒中、本発明触媒の存在下、基質であるアルキンと、水素とを接触させ、アルキンの炭素間三重結合を選択的に水素化させてアルケンを製造すればよい。
上記アルケンの製造に用いられるアルキンは特に限定されるものではないが、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
上記式においてAは置換基があってもよい脂肪族または芳香族炭化水素基、Rは水素または炭素数6以下のアルキル基を表す。より具体的なアルキンとしては、2−オクチン、3−オクチン、1−デシン、2−デシン、3−デシン、4−デシン、プロパルギルアルコール、プロパルギルアミン等が挙げられる。
上記アルケンの製造に用いられる有機溶媒は、特に制限されず、反応条件における水素分子の溶解度などを基準に適宜選択可能である。このような溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、へプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、メタノール、エタノール、1−ブタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、四塩化炭素、クロロホルム、2−ブタノン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、モルホリン、2−メトキシエタノール等の中から適宜選択することができる。
上記アルケンの製造方法に用いられる水素の形態は特に限定されないが、例えば、分子状水素が好ましい。分子状水素は反応系中に気体状(バルーン状)でバブリングにより供給すればよい。
なお、水素として分子状水素(水素ガス)を使用する場合、使用する有機溶媒における水素の溶解度が高いと、アルキンの転化率が高くなることがある。ただし、水素の溶解度が高すぎると転化率は高くなることは期待できる反面、水素化が過剰に促進し、高効率でアルキンからアルケンを得るという本発明本来の目的を達成できないことがある。しかし、使用する有機溶媒における水素の溶解度が低すぎると、アルキンの転化率そのものが低下することがあり、この場合も発明本来の目的を達成できないことがある。このような有機溶媒の水素の溶解度としては、例えば、エタノールやヘキサンのような、25℃、1atmにおける水素のモル分率が2×10−4以上であることが好ましく、ヘキサンのような6×10−4以上であることがより好ましい。
このような傾向は後述する実施例においても示唆されている。実施例では溶媒としてヘキサンとエタノールを使用しているが、ヘキサンにおける水素の溶解度は、文献値によれば水素のモル分率で6.63×10−4(25℃,1atm)であるのに対し、エタノールは2.06×10−4(25℃)である。後述する実施例では、ヘキサンは本発明触媒のうち銀のシェルが厚い場合(銀/パラジウムのモル比が0.2〜0.6程度)において、アルキンの転化率、アルケンの選択率が共に極めて高く、エタノールでは本発明触媒のうち銀のシェルが厚過ぎない場合(銀/パラジウムのモル比が0.2〜1程度)において、アルキンの転化率、アルケンの選択率が共に極めて高い。
なお、どのような有機溶媒を使用する場合にも、使用する本発明触媒は適度なコア−シェルの構造を有している必要がある。シェルとなる銀の量が少なく、銀のシェルが薄過ぎたり、パラジウムのコアが触媒粒子の表面に露出しているような状態では、パラジウムによる水素化が促進してしまう恐れがあり、本発明の目的である高選択率で水素化が達成されないことがある。また、銀の量が多すぎる(シェルが厚過ぎる)触媒では活性表面におけるパラジウムの影響が小さくなり、この場合もアルケンの製造に使用する触媒としては適当とは言い難いことがある。そのため、本発明の反応条件の設定においては、銀からなるシェルの厚みと溶媒における水素の溶解度との兼ね合いで適宜調整し最適なものを使用することが好ましい。なお、このような反応条件の設定においては、温度や水素の圧力も重要な要素として考慮すべきなのは言うまでもない。
上記アルケンの製造における反応条件は、穏やかな条件でも高転化率でアルキンを水素化し、高選択率でアルキンからアルケンを得られるものである。ここで穏やかな条件とは、概ね室温、好ましくは20〜25℃の温度で、一気圧の水素をバブリングで供給する条件等が挙げられる。この条件であれば、転化率向上のために加熱や加圧をする必要がなく、選択率向上のために冷却する必要もない。
以下、本発明の実施例について記すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲の中で適宜変更可能であることは言うまでもない。なお、以下の実施例においては、本発明触媒のうち、担体に担持されていないものを[Pd@Ag]ということがあり、また、担体に担持されたものを[Pd@Ag/担体名、もしくは略称] のようにいうことがある。また、担体名、もしくは略称の後に[−a数字]や[−b数字]が続く場合があるが、これらの数字は本発明の触媒の調製の際に使用した銀およびパラジウムのモル比(銀/パラジウム)であり、この数字が大きいほど、本発明触媒における銀の量が多く、シェル(殻)が厚い触媒であることを示す。
実 施 例 1
Pd@Ag/HAP−aの製造(1):
本発明に使用される触媒を以下の手順で製造した。
1. エチレングルコール20mLにポリビニルアルコール(PVA)を0.055g、PdNPs(パラジウム ナノ パーティクル)前駆体としてパラジウムアセチルアセトナート(Pd(acac))を0.1mmol加え、前駆体が溶解するまで撹拌した。
2. 得られた溶液を150℃で撹拌し、PdNPsコロイド溶液を得た。このコロイド溶液を放冷し、アセトン20mLを加えた後、4000rpmで5分間遠心分離した。
3. 回収したPdNPsを水10mLに分散させ、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)溶液20mLを加えた。
4. 前記PdNPs溶液を60℃に加熱し、使用する銀に対してモル当量比で概ね10倍のアスコルビン酸と硝酸銀を加え、2時間撹拌し、パラジウム粒子表面を銀で被覆した[Pd@Ag]溶液を得た。なお、硝酸銀はパラジウムに対する銀モル比(銀/パラジウム)が0.10、0.15、0.20、0.25、0.50または1となる量で添加した。
5. このように調製した[Pd@Ag]溶液に担体となるハイドロキシアパタイト(HAP)1.0gを加え撹拌することで、Pd@AgをHAPに担持させ、これを濾過・洗浄・回収し、パラジウム表面を銀で被覆したコアシェル構造を有する[Pd@Ag/HAP−a0.10]、[Pd@Ag/HAP−a0.15]、[Pd@Ag/HAP−a0.20]、[Pd@Ag/HAP−a0.25]、[Pd@Ag/HAP−a0.50]および[Pd@Ag/HAP−a1]を得た。
また、銀/パラジウムのモル比を0.2として、5番目の工程を省略し、担体に担持されていない[Pd@Ag−a0.2]を得た。この[Pd@Ag−a0.2]はTEMによる触媒粒子の観察、STEMによるPd並びにAgの分布を観察するのに使用した。
実 施 例 2
Pd@Ag/HAP−bの製造(2):
本発明に使用される触媒を以下の手順で製造した。
1. 0.15MのCTAB溶液50mLに0.025mmolの塩化パラジウム(HPdCl)溶液を加え、氷冷しながら5分間撹拌した。
2. 得られた溶液に0.01mmolの水素化ホウ素ナトリウムを加え、氷冷したまま5分間撹拌した。
3. 室温で1時間撹拌した後、5.0mMのCTAC溶液を100mL用いて洗浄した。
4. 得られたコアとなるパラジウム粒子を10mLのCTAC溶液に分散させた。
5. 上記パラジウム粒子溶液を0.5mmolのCTAC、水20mLを加え60℃で5分間撹拌した。その後、使用する銀に対してモル当量比で概ね10倍のアルコルビン酸と硝酸銀を加え、60℃で5時間撹拌し、Pd@Agが含まれる溶液を得た。
6. 得られたPd@Ag溶液に担体となるヒドロキシアパタイト(HAP)を1.0g加え、さらに一時間室温下で撹拌した。
7. 上記溶液から固形分を濾過で回収し、1.0Lの脱イオン水で洗浄した後、乾燥させ、[Pd@Ag/HAP−b0.20]および[Pd@Ag/HAP−b0.6]を得た。
実 施 例 3
Pd@Ag−bの製造:
実施例2において、銀/パラジウムのモル比を0.6として、6番目の工程を省略し、担体に担持されていない[Pd@Ag−b0.6]を得た。
実 施 例 4
Pd@Ag/TiO−aの製造:
実施例1において、担体として二酸化チタン(TiO)を用いる以外は同様にして、[Pd@Ag/TiO−a0.20]を得た。
実 施 例 5
Pd@Ag/MgO−aの製造:
実施例1において、担体として酸化マグネシウム(MgO)を用いる以外は同様にして、[Pd@Ag/MgO−a0.20]を得た。
実 施 例 6
Pd@Ag/HT−aの製造:
実施例1において、担体としてハイドロタルサイト(HT)を用いる以外は同様にして、[Pd@Ag/HT−a0.20]を得た。
試 験 例 1
Pd@Ag/HAP コア−シェル構造の確認:
[TEMによる検証]
実施例1で製造した[Pd@Ag/HAP−a0.20]について、TEM(透過型電子顕微鏡)観察を行った。得られた画像を図2に示した。
TEM画像では棒状のHAP粒子の中に、球状の[Pd@Ag]が確認できた。このことから、本発明触媒は単分散なナノ粒子として調製できているとわかる。しかし、パラジウムと銀の原子番号が隣であることから、パラジウムと銀の明確なコントラストは得られなかった。
[Pd@Ag−a0.2]中の[Pd@Ag]粒子の格子面間隔から金属種の同定を試みた(図3)。図3の画像中の格子縞の間隔を計測した結果、銀の(111)面について格子定数とミラー指数から計算で求めた格子面間隔に相当する0.233nm間隔の格子縞と、同様に計算で求めた銀(200)面の格子面間隔に相当する0.201nm間隔の格子縞も観察された。また、同様に求めたパラジウム(111)面の格子面間隔の計算値に相当する0.228nm間隔の格子縞も観察された。この結果から、図3の粒子はパラジウムと銀からなることが示唆された。
[STEMによる検証]
TEMによる検証と同様に[Pd@Ag−a0.2]についてSTEM(走査透過電子顕微鏡)による観察を行った。得られた画像を処理したものを図4および図5に示した。
図4、図5は同一粒子を観察した結果であり、図4はパラジウムの分布を表し、図5は銀の分布を表している。図4を見ても分かるように、パラジウムは銀に比べて分布が均一であり、その粒径も若干小さくなっているのが分かった。これに対して銀は触媒粒子の外周近傍に濃い分布が見られ、パラジウムに比べて粒径がやや大きいことが分かった。これらのことから、[Pd@Ag−a0.2]はパラジウムのコア、銀のシェルからなるコアシェルの構造を有していることが分かる。なお、実施例1以外で製造されたPd@Agにおいてもパラジウムのコア、銀のシェルからなるコアシェルの構造を有している。
実 施 例 7
アルケンの製造(1):
実施例1で製造した[Pd@Ag/HAP−a0.20]、実施例4で製造した[Pd@Ag/TiO−a0.20]、実施例5で製造した[Pd@Ag/MgO−a0.20]または実施例6で製造した[Pd@Ag/HT−a0.20]を使用し、以下の条件でアルキンの水素化を行い、アルケンを製造した。この水素化の反応式を下記に示した。また、アルケンの収率やアルキンの転化率はガスクロマトグラフを用いて算出した。その結果を表1に示した。
[反応条件]
基質:ヘキシルアセチレン
パラジウム量:基質に対して3.3mol%
銀量:基質に対して0.66mol%
パラジウム:銀モル比:5:1
溶媒:エタノール 2mL
反応温度:30℃
反応時間:30分
水素化成分:分子状水素(1atm)
以上の結果から、本発明触媒では、担体の種類に関わらず、アルキンの炭素間三重結合を高選択率で水素化し、アルケンにできることが分かった。
比 較 例 1
Pd/HAPの製造:
実施例1の1.および2.と同様にして、パラジウム量が0.025mmolまたは0.010mmolであるPdNPsコロイド溶液を調製し、これにHAPを1.0g加えて、撹拌した後、濾過、洗浄してPd/HAPを得た。
比 較 例 2
Ag/HAPの製造:
銀量が0.31mmolまたは0.010mmolである硝酸銀水溶液(50mL)を調製し、これにHAPを加えて、室温で6時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過、洗浄することで銀イオンがHAP上に固定化された粉末を得た。更にこの粉末をKBH水溶液(50mL、1mmol)で還元することでAg/HAPを得た。
比 較 例 3
PdAg/HAP(alloy)の製造:
銀量が0.015mmolおよびパラジウム量が0.025mmolである硝酸銀−トリフルオロ酢酸パラジウム混合水溶液(50mL)を調製し、これにHAP1.0gを加えて、室温で6時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過、洗浄することで金属イオンがHAP上に固定化された粉末を得た。更にこの粉末をKBH水溶液(50mL、1mmol)で還元することでPdAg/HAPを得た。
実 施 例 8
アルケンの製造(2):
以下の表2に記載された触媒を使用し、以下の条件でアルキンの水素化を行い、アルケンを製造した。この水素化の反応式を下記に示した。また、アルケンの収率やアルキンの転化率はガスクロマトグラフを用いて算出した。その結果も表2に示した。
[反応条件]
基質:ヘキシルアセチレン
Pd@Ag:基質に対して0.33mol%
触媒1g中のPd量:表2中に記載
触媒1g中のAg量:表2中に記載
Ag/Pdモル比:表2中に記載
担体:ハイドロキシアパタイト(HAP)
溶媒:表2中に記載
溶剤量:2mL
反応温度:表2中に記載
反応時間:表2中に記載
水素化成分:分子状水素(1atm,ballonとして供給)
以上の結果から、本発明触媒(Pd@Agであるもの)では、溶媒としてエタノールを使用した時も、ヘキサンを使用した時も、高い収率でアルキンが得られていることが分かった。また、銀とパラジウムのモルが0.2の時に、穏やかな条件下でもアルキンの転化率、アルケンの収率共に最も優れた結果を示した。更に、本発明触媒は多様な銀とパラジウムのモル比において高選択率となるが、銀の量が多すぎない場合(シェル層が厚過ぎない)にパラジウムの活性の高さが有効に作用し転化率も特に優れることが分かった。一方、銀量が少なすぎず、相当の銀シェル層の厚みを有することでパラジウムによる過剰な活性を抑制することが可能になり選択率も向上することが分かった。
また、[Pd@Ag/HAP−a0.20]について、反応終了後の触媒を同様の反応に繰り返し用い触媒の再利用性能(耐久性能)について検証したところ、本発明の触媒は、2回の再使用においても高転化率、高選択率、高収率となることが分かった。
更に、[Pd@Ag/HAP−a0.20]について、水素圧を50atmに変更して反応させた。一般に水素化反応においては水素圧を増すと副反応も進行することが多いが、本発明触媒では50atmにおいても副反応物としてのアルカンの生成が確認できなかった。この結果から、本発明触媒は過酷な条件の下でも安定した水素化能力を発揮することが分かった。
また更に、担体に担持されていない[Pd@Ag−b0.6]は、反応時間を長くすることで、アルキンの転化率、アルケンの選択率についても担体に担持されたものと同等の結果が得られた。
一方、パラジウムのみの触媒であるPd/HAPは、水素化を促進し過ぎて、アルケンを得ることができなかった。また、銀のみの触媒であるAg/HAPは、水素化能力が劣り、Pd@Agのような穏やかな条件では反応は促進せず、高温、高圧力、長時間という激しい条件の下でも、アルケンの収率は向上したものの、転化率は低いものであった。更に、パラジウムと銀の単純な合金化により得られた触媒であるPdAg/HAP(alloy)(銀/パラジウム=0.6)は、後述する同じ銀/パラジウム比の[Pd@Ag/HAP−b0.60]とは異なり、4時間でほぼ全てのアルキンがアルカンに転化されてしまい、実施例のようなアルケンの高選択率は得られなかった。
実 施 例 9
アルケンの製造(3):
実施例1で製造した[Pd@Ag/HAP−b0.60]を使用し、以下の条件で多様なアルキンの水素化を行い、アルケンを製造した。この水素化の反応式を下記に示した。また、アルケンの収率やアルキンの転化率はガスクロマトグラフを用いて算出した。その結果を表3に示した。
[反応条件]
基質:表3中に記載
基質に対するパラジウム量:表3中に記載
基質に対する銀量:表3中に記載
溶媒:ヘキサン
溶剤量:2mL
反応温度:表3中に記載
反応時間:表3中に記載
水素化成分:分子状水素(1atm)
以上の結果から、本発明触媒は多様なアルキンに対して、高転化率と共に、高選択率で水素化性能を発揮し、穏やかな条件の下、短時間で、アルキンを効率よく水素化し、収率高くアルケンを得ることができることが分かった。
実 施 例 10
アルケンの製造(4):
実施例1で製造した[Pd@Ag/HAP−a0.20]を使用し、以下の条件で多様なアルキンの水素化を行い、アルケンを製造した。この水素化の反応式を下記に示した。また、アルケンの収率やアルキンの転化率はガスクロマトグラフを用いて算出した。その結果を表4に示した。なお、表4中[E/Z ratio]はトランス (trans) 型/シス (cis) 型の比を表す。
[反応条件]
基質:表4中に記載
基質に対するパラジウム量:表4中に記載
基質に対する銀量:表4中に記載
溶媒:表4中に記載
溶剤量:2mL
反応温度:表4中に記載
反応時間:表4中に記載
水素化成分:分子状水素(1atm)
以上の結果から、本発明触媒は多様なアルキンに対して、高転化率と共に、高選択率で水素化性能を発揮し、穏やかな条件の下、短時間で、アルキンを効率よく水素化し、収率高くアルケンを得ることができることが分かった。
本発明の触媒は、アルキンの水素化反応において、穏やかな条件であっても、高転化率と共に、高選択率でアルケンが得られるものである。
従って、本発明の触媒はアルケンの製造に好適に用いることができる。

以 上

Claims (11)

  1. 核(コア)がパラジウムおよび殻(シェル)が銀からなることを特徴とするコア−シェル触媒。
  2. 無機酸化物担体に担持されたものである請求項1記載のコア−シェル触媒。
  3. アルキンの炭素間三重結合を選択的に水素化するものである請求項1または2記載のコア−シェル触媒。
  4. 以下の工程(a)および(b)、
    (a)パラジウムナノコロイドを溶液中に分散させる工程
    (b)上記で得られた溶液に銀前駆体を添加し、これを還元することにより核がパラジウムおよび殻が銀からなるコア−シェル触媒を溶液中に生成させる工程
    を含む製造方法により得られる請求項1〜3の何れかに記載のコア−シェル触媒。
  5. 工程(b)において、パラジウムに対する銀モル比(銀/パラジウム)が0.2〜1となるように銀前駆体を添加する請求項4記載のコア−シェル触媒。
  6. 以下の工程(a)および(b)、
    (a)パラジウムナノコロイドを溶液中に分散させる工程
    (b)上記で得られた溶液に銀前駆体を添加し、これを還元することにより核がパラジウムおよび殻が銀からなるコア−シェル触媒を溶液中に生成させる工程
    を含むことを特徴とする核がパラジウムおよび殻が銀からなるコア−シェル触媒の製造方法。
  7. 更に、工程(c)
    (c)前記コア−シェル触媒が生成した溶液中に担体を添加し、前記コア−シェル触媒を担体に担持させる工程
    を含むものである請求項6に記載のコア−シェル触媒の製造方法。
  8. 工程(b)において、パラジウムに対する銀モル比(銀/パラジウム)が0.2〜1となるように銀前駆体を添加する請求項6または7記載のコア−シェル触媒の製造方法。
  9. 有機溶媒中、請求項1〜5の何れかに記載のコア−シェル触媒の存在下、基質であるアルキンと、水素とを接触させ、アルキンの炭素間三重結合を選択的に水素化することを特徴とするアルケンの製造方法。
  10. 有機溶媒が、25℃、1atmにおける水素のモル分率が2×10−4以上となるものである請求項9記載のアルケンの製造方法。
  11. 有機溶媒が、エタノールまたはヘキサンである請求項9記載のアルケンの製造方法。

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