以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に、本発明に係る実施形態の電気掃除機の外観斜視図を示し、図2に、掃除機本体1から集塵装置10や吸引ホース2を取り外した状態の外観斜視図を示す。なお、上下方向、左右方向、前後方向については図1に示す方向とする。なお、左右方向は、掃除機本体1側から見たものである。
電気掃除機Sは、掃除機本体1と、掃除機本体1に着脱自在に設けられるサイクロン方式の集塵装置10とを備えている。
掃除機本体1は、吸引ホース2を介して手元ハンドル3と接続され、手元ハンドル3は延長管6を介して、塵埃などを吸込む吸口体7と接続されている。集塵装置10には、吸口体7から吸い込まれた塵埃などのごみが集塵される。
掃除機本体1には掃除機本体1を自在に移動するための左右の一対の車輪15aと、前部に一つのキャスタ15bとが備えられている。なお、後部には、掃除機本体1を後ろ側に傾けた際にその後部を傷めないように、一つのローラ15cが備わっている(図4参照)。
手元ハンドル3には、掃除機本体1に内蔵される電動送風機14(図4参照)や、吸口体7に設けられる電動回転ブラシ(図示せず)などの駆動制御を担う操作部4を備えている。操作部4には、運転を開始する際、押下する(強・中・弱)ボタンや、運転を停止する際に押下する(切)ボタンなどの操作ボタン5が配置されている。
<掃除機本体1>
図2に示すように、掃除機本体1は、上ケース1aと下ケース1bとが組み合わされ外殻が形成されている。上ケース1aおよび下ケース1bは、軽量な樹脂材料で形成されている。下ケース1bの前部には、塵埃を含む空気が吸い込まれるホース取り付け口(本体吸気口)11が開口されている。
図3に、掃除機本体1の上ケース1aを取り外した状態の斜視図を示し、図4に、掃除機本体1を側方から見た掃除機本体1の中央断面図を示す。
ホース取り付け口11は、掃除機本体1内の塵埃を含む空気が通過する導入管20(図3、図4参照)に接続されている。
掃除機本体1の内部には、図4に示すように、モータケース16内に、吸口体7(図1参照)での吸引力を発生する電動送風機14が収納されている。また、電動送風機14で吸引した塵埃を除去した後の空気の流路には排気を清浄化するプリーツ状の高捕塵フィルタ29が配置されている。
図2に示す掃除機本体1の正面である前側には、ホース取り付け口11を備え、掃除機本体1内の左側には、導入管20を介して内部を気体が流通するように流体的に接続される導入管出口12が備わっている。導入管出口12は、掃除機本体1にセットされる集塵装置10に気体が流通するように流体的に接続される。集塵装置10は、吸口体7で吸込んだ塵埃などを含む空気から塵埃を分離し、塵埃を収容するものである。
一方、掃除機本体1の正面上部には、電動送風機14と連通するダクト21(図3参照)へのダクト入口部13が備わっている。ダクト入口部13は、集塵装置10で塵埃を除去した後の空気が吸い込まれる口である。ダクト入口部13には、電動送風機14への異物の侵入を抑制するために保護フィルタ(図示せず)が設けられている。保護フィルタは格子状のフィルタカバー17(図2参照)に設けられている。
<集塵装置10>
集塵装置10は、図2の矢印α1に示すように、掃除機本体1の前上部が後側に傾斜した状態で着脱自在に取り付けられる(図4参照)。集塵装置10は、塵埃が外筒30内に溜まった際に、図2に示す矢印α1と反対方向に移動させることで、掃除機本体1から取り外され、塵埃排出(ごみ捨て)後に矢印α1方向に移動させることで、掃除機本体1に取り付けられる。
掃除機本体1には、集塵装置10を掃除機本体1に取り付けた際に容易に気密を保持できるように、集塵装置10の位置決めのための構造や固定するための構造を備えている。
図2に示す掃除機本体1における凹状の取っ手収納部22には、集塵装置10の後方に備えている取っ手35が収納される(図4参照)。これは、集塵装置10を掃除機本体1にセットする際の集塵装置10の位置決めのための構造となっている。
また、掃除機本体1における集塵装置10の取り付け箇所の下部には、集塵装置10の底蓋31(図2参照)の底面との嵌合部1a1が設けられ、集塵装置10の固定のための構造としている。そして、掃除機本体1の上部に設けた蓋体19で、集塵装置10の上部を固定する構成である。
図4に示すように、集塵装置10が掃除機本体1に取り付けられた状態では、集塵装置10は、ダクト21と流体的に接続されている。ダクト21は、ホース取り付け口11に隣接する導入管20およびフィルタカバー17で覆われる保護フィルタに隣接する。
電動送風機14は、上流側に塵埃を除去後の保護フィルタを通った空気が流れるダクト21が流体的に接続される一方、下流側に高捕塵フィルタ29が流体的に接続されている。
<掃除機本体1内に吸い込まれた塵埃を含む空気の流路>
集塵装置10が掃除機本体1に取り付けられた状態では、縦断面図の図4に示すように、ホース取り付け口11から高捕塵フィルタ29に至るまで、一連の流路となっている。
電気掃除機Sの掃除機本体1において、吸口体7から掃除機本体1に吸込まれた空気は図4に示す矢印β1〜β8のように流れる。
具体的には、吸口体7(図1参照)で吸い込まれた塵埃などを含む空気は、ホース取り付け口11から掃除機本体1内の導入管20に流入し(図4の矢印β1)、導入管20内を通って導入管出口12を通って集塵装置10に至る(図4の矢印β2)。集塵装置10内に入った塵埃などを含む空気は内筒40の廻りを回る気流となる(図4の矢印β3)。この気流により発生する遠心力で空気と塵埃を分離し、空気は内筒40内に吸い込まれ、一部の気流(図4の矢印β4)は集塵装置10の下部へ流れる。塵埃は、この気流(図4の矢印β4)により、外筒30内面に沿って落下し、集塵装置10の下部に溜まる。
集塵装置10の下部への気流(図4の矢印β4)は、円筒状の傘部44の外周面に沿って上昇し(図4の矢印β5)、内筒40内に吸い込まれる。内筒40内には、後記するメッシュ部材42aを通過した遠心分離しきれなかった微細な塵埃を含む空気が流れ、集塵装置10に設けた捕塵フィルタ32で微細な塵埃が除去される。そして、塵埃が除去された空気は、ダクト21を通過して、電動送風機14に吸い込まれる(図4の矢印β6)。そして、電動送風機14に吸い込まれた空気は、高捕塵フィルタ29を通過して残留する異物などが除去され(図4の矢印β7)、掃除機本体1の後下部の排出口76から外部に排出される(図4の矢印β8)。
ここで、高捕塵フィルタ29は、捕塵フィルタ32で捕集できなかった微細な塵埃や電動送風機14のカーボンブラシ(図示せず)の摩耗屑を、塵埃除去後の空気から取り除き、ほぼ塵埃を含まないきれいな空気にして、掃除機本体1の外部へ排出する。
なお、詳細は省略するが、上述の掃除機本体1に吸い込まれた空気の流路付近の各部品の接続部(接触部)にはパッキング(図示せず)が設けられ、運転中の気密が保持されている。
<コードリール23と導入管20>
図4に示す電動送風機14を収納するモータケース16は、図3に示すように、掃除機本体1右側後方に配置され、左側後方にはコンセント等から電動送風機14などへ電力を供給するための電源コード23aを収納するためのコードリール23が配置されている。本実施形態では、モータケース16およびコードリール23の配置の関係上、導入管20および導入管出口12を左側に配置しているがこの限りではなく、右側に配置しても構わない。
導入管20を掃除機本体1の中央ではなく、左右の側部どちらかに寄せて配置するのは、詳細は後記するが集塵装置10の外筒30の内周面の接線方向(掃除機本体1の左右の側部何れかに位置する)から、吸込んだ空気を流入させることにより旋回流を発生させ易くするためである。したがって、導入管20の配置により旋回流の回転方向は異なるが、回転方向は時計廻りまたは反時計廻りのどちらでも構わない。例えば、導入管20を左側に配置した場合は時計回りの旋回流となる。本実施形態では、導入管20を左側に配置し、時計回りの旋回流としている。
なお、例えば、導入管を左側(若しくは中央)に配置し、導入管出口が右側になるような曲がり部の多い導入管の形状にしても構わないが、圧力損失が増加する。そのため、導入管20は、図3に示すような配置とし、導入管20での圧力損失の増加を極力抑えるため、ホース取り付け口11から可能な限り大きな半径で導入管出口12と繋がるような形状としている。また、導入管20内の容積や断面積も、圧力損失の増加を極力抑えるために可能な限り大きく形成している。
<集塵装置10>
次に、集塵装置10について図5から図12を用いて説明する。図5に集塵装置10の正面図を示し、図6に集塵装置10の左側面図を示す。また、図7に集塵装置10の背面図を示し、図8に集塵装置10の分解図を示す。図9および図10には、後述する捕塵フィルタ32、フィルタケース34の着脱を図示している。図11は、図6に示すB-B断面図を示し、図12に後述する内筒40の分解図を示す。なお、図5以降で集塵装置10を単体で説明するときは、底蓋31側を下方向とする。
集塵装置10は、吸口体7で吸込んだ塵埃などを含む空気から塵埃を分離し、塵埃を集める機能をもつ。
集塵装置10は、概ね外筒30、内筒40、捕塵フィルタ32(図4参照)を収納するフィルタケース33、および底蓋31で形成されている。外筒30の上部にフィルタケース33、下部に底蓋31が配置されている。そして、外筒30内に外筒30と同心状に内筒40を備えている。
詳細は後記するが、集塵装置10は、外筒30と内筒40との間に塵埃の分離・集塵のための空間を有している。つまり、外筒30と内筒40とで形成される空間のうち、上部に塵埃分離部10Aを備え、下部に塵埃収容部10Bを備える。
塵埃分離部10Aは、塵埃を運んだ空気から塵埃を分離する空間である。塵埃収容部10Bは、塵埃を溜めて収容する空間である。
<外筒30>
外筒30は、図8に示すように、上下が開口した略円筒形状を有し、側面に導入管出口12から塵埃を含む空気(気体)が流入される流入管38を備えている。流入管38の外側内面(図7では左側に位置する内面)は、外筒30の内周面30nと略接線方向で繋がるように形成されている。流入管38には、導入管12への接続部であり、導入管出口12から塵埃を含む空気が流入される開口部38aが形成されている(図7参照)。また、流入管38の開口部38aとの対面(流入管38と外筒30が接続する部分の開口)には絞り部38bを備えており、開口部38aよりも開口面積を小さくしている。
流入管38の絞り部38bは、外筒30の円弧形状に沿った絞り壁30bによって形成されており、鉛直方向の第1の縦辺38b1と、鉛直方向から上部が外側に下部が内側に傾斜する第2の縦辺38b2と、水平方向の第1の横辺38b3と、第2の横辺38b4と、から形成される略台形形状の開口である。第1の縦辺38b1は、上述したように、外筒30の内周面30nの略接線方向に形成されている。開口部38aが外筒30の内周面30nの接線に沿った形状であることで、塵埃などを含んだ空気が外筒30の内周面30nに沿った旋回状の気流となる。
加えて、第2の縦辺38b2を上部が外側に下部が内側に傾斜する構成として、絞り部38bを上部に比べて下部が広がった開口とすることで、塵埃収容部10Bへ流れる風量を調整することができ、塵埃収容部10Bに塵埃が堆積した場合でも、塵埃を圧縮し塵埃収容部10Bに搬送できる。
絞り部38bの形状により、導入管出口12から集塵装置10の外筒30内に流入する空気は、外筒30の中心軸O(集塵装置10の中心軸)廻りの気流となり、中心軸Oを中心として時計廻りに外筒30内を旋回する。この旋回する気流により、塵埃分離部10Aにおいて、空気に含まれる塵埃が遠心力によって分離される。
本実施形態では、絞り部38bを構成する絞り壁30bには、図7に示すように絞り壁30bの左端から右端に渡り、開口部38a側に凸となるようなリブ(整流部)30cを複数設けている。換言すると、絞り部38bを構成する絞り壁30bに、整流部30cを配置している。なお、本実施形態では、外筒30の円弧形状に沿った絞り壁30bに整流部30cを設けているが、これに限定されず、第1の縦辺38b1に沿う面、第2の縦辺38b2に沿う面、第1の横辺38b3に沿う面、及び第2の横辺38b4に沿う面を含む複数面又はいずれか単一面に設ける構成であっても良い。
リブ30cの断面形状は、絞り壁30bからの高さが約2mmの三角形又は正三角形に近似した形状であり、絞り壁30b上に8本設けている。このリブ30cは、空気の流れを整流する効果がある。導入管38内に流入した空気の流れをリブ30cにより整流し、外筒30の内周面30nに沿わせるような流れとすることで、開口部38aから流入した空気が外筒30内を旋回する気流と合流する際の衝突を抑制し、気流により発生する流体音を低減することなどができる。
本実施形態においては、8本のリブ30cの内、上側の5本は略水平方向に、下側の3本は右端から左端にかけて水平方向より下向きに傾斜するように設けている。略水平方向に設けたリブ30cは旋回流と合流する空気を整流する効果を、下向きに傾斜するように設けたリブ30cは塵埃収容部10Bへの流れを増やす効果を有している。従って、本実施形態のようにリブ30cの向きを変えて配置することで、旋回流の整流効果と塵埃の搬送効果を両立することができる。リブ(整流部)30cの向き、本数などは、流入する風量や絞り壁30bの大きさ等により変更可能であり、本実施形態の限りでない。また、リブ(整流部)30cの断面形状についてもこの限りでなく、半球状でも四角形でも同様の効果が得られる。なお、本実施形態のような三角形の場合は、隣り合うリブ30cの間が傾斜面になるため、リブ30cに微細な塵埃が堆積し難くいと効果がある。
また、本実施形態では絞り部38dにおける絞り壁30bの開口部38a側(掃除機本体1側)に凸状となるようなリブ30cを設けているが、図17に示すような開口部38a側に凹状となるような溝(整流部)30hを設けても同様の効果が得られる。図16には、図7に示す絞り壁30bの外観図(a)および、K-K断面の断面図(b)を示し、図17には開口部38a側に凹となるような溝30hを複数設けた状態を示す。図17も同様に、絞り壁30bのみの外観図(a)および、L-L断面の断面図(b)を示している。
また、空気の流れは絞り壁30bの端部(38b2の近傍)で剥離するため、絞り壁30bの開口部38a側に凸となるようなリブ30cに代えて、図18に示すように、絞り壁30bの端部(38b2の近傍)付近に鋸刃状(ひし形状の繰り返しパターン)の凹凸30eを設けた場合、気流により発生する流体音を低減する効果が得られる。
更には、図17には開口部38a側に凹となるような溝30hを絞り壁30bの全幅(左端から右端)に渡り複数設けているが、図19のように溝30hの深さが均一ではなく、図示左端(空気流れの下流側)が最も深く、図示右側(空気流れの上流側)へ向かい徐々に浅くなるような溝30hとしている。このような溝30hでも同様の効果が得られる。また、図示していないが、絞り壁30bの開口部38a側に、左端が最も高く右へ向かい徐々に低くなるような凸状のリブを設けても同様の効果が得られる。
また、外筒30は、図11に示すように上部は円筒形状を有し、下部がテーパ状の円錐台形状で下方に向かって拡大していく形状である。外筒30の下部は、中心軸Oを鉛直方向にした状態で中心軸Oに対し約9〜10度傾斜し、上部の円筒形状と下部の円錐台形状との境界には中心軸Oに対して略垂直方向に半径が段差状に変化する拡大部(段差)30dを設けている。拡大部30dは、外筒30の上部の円筒状の内周面から約2.5mm外径側へ拡大されている。なお、拡大部(段差)30dには、傾斜、テーパ、或いは曲面状などの形状も含む。本実施形態において、拡大部30dが外筒30上部の円筒状内周面からの拡大に応じて、外筒30の外周面も拡大している。
ここで、略垂直や略水平とは、形状を示すために用いたものであり、効果を奏する形状であれば厳密に垂直や水平に限るものではない。
拡大部30dは、外筒30に内筒40を装着した状態において、内筒40の傘部44の上面44cと略同一平面上に設けている。この塵埃舞い戻り防止面30dにより、吸引した塵埃は塵埃舞い戻り防止面30dよりも下側にある底蓋31側から堆積する。図11(b)のC部拡大図に、空気の流れと塵埃の動きを矢印で示しており、実線矢印(γ2、γ5a、γ6a、γ7、γ9)は空気の流れ、破線矢印(δ1〜δ3)は塵埃の動きである。吸引した塵埃を含む空気は、塵埃分離部10Aで発生する旋回流(γ1)により空気から塵埃が分離される。分離された塵埃は、塵埃収容部10Bへ流れるγ2により、塵埃収容部10Bに搬送される。空気(γ2の流れ)は、上昇する際に旋回しながら内筒40の傘部44および内傘部45を経て、塵埃分離部10Aに戻る流れγ7となる。
流れγ2から流れγ7に至るまでには、傘部44の側面に設けた第1円環リブ44a1、および内傘部45の側面に設けた第2円環リブ45b1を乗り越える流れγ5aおよびγ6aが発生する。この、γ5aおよびγ6aにより、塵埃は矢印δ2および矢印δ3のように遠心力で外筒30の内周面側へ押され、更に塵埃収容部10Bに流入する流れγ2により、底蓋31側に堆積する。塵埃の堆積量が増加すると、塵埃は塵埃分離部10Aに戻る流れγ7の旋回により矢印δ1のように遠心力で外筒30の内周面側へ押されるが、拡大部30dを設けたことでできる角部30d2には塵埃が堆積し難い。これにより、角部30d2近傍には空間Hが作られ、γ2の流れにより塵埃が圧縮されるため空間Hが保たれる。この空間Hにより、γ2の流れは下方に流れ易くなるため、塵埃を下方に圧縮する効果を保つことができる。
この時、堆積した塵埃により塵埃収容部10B内の通気抵抗が大きくなった際、塵埃を圧縮した後に空気の流れはγ9のように流れる。また、空間Hは、堆積した塵埃が外筒30の下部内周面30n1および傘部44外周面と接する面積を減少させ、ごみ捨て時の摩擦力を抑制できる。よって、本実施形態のように、内筒40の傘部44の上面44cと略同一平面上に拡大部30dを設けることで、ごみを排出し易くなる効果が得られる。
拡大部30dは、先述したように外筒30の下部内周面30n1と塵埃との間に空間Hを作る効果があればよく、本実施形態のように、内筒40の傘部44の上面44cと略同一平面上に拡大部30dを設ける以外に、傘部44の高さ範囲内に拡大部30dを設けても同様の効果が得られる。
また、本実施形態では、拡大部30dは、外筒30の上部の円筒状の内周面から約2.5mm拡大しているが、更に拡大しても同様の効果が得られる。
また、第1円環リブ44a1および第2円環リブ45b1を設けることで外筒30の内内周面側へ塵埃が押され、拡大部30dを設けることで流れγ2により塵埃が圧縮されることで、塵埃収容部10Bに堆積した塵埃や、塵埃収容部10Bから戻る空気に含まれる塵埃が塵埃分離部10Aに舞い戻ることを防止でき、内筒40側面のメッシュ部材42aへの塵埃の貼り付きや、メッシュ部材42aからの微細な塵埃の吹き抜けを抑制する効果がある。
すなわち、拡大部20dは、外筒30下部の円錐台形状部から上部の円筒形状部への塵埃流出を防止する機能を有する。
更に、拡大部30dから下方を略円錐状の下部内周面30n1とすることで、ごみ捨て時に塵埃が落ち易くなるとともに、塵埃収容部10Bの容積を拡大し、より多くの塵埃を堆積できるという効果を奏する。
ここで、外筒30の拡大部30dは、外筒内周面の全周に備えず、開口部38a側の一部に備えていない構成としても良い。流入した空気は、開口部38aの対面付近が最も流速が高くなり、徐々に流速が低下するような旋回流となっている。このため、本実施形態では流速が高い範囲に拡大部30dを設けている。
また、図6に示すように、集塵装置10には持ち運ぶための取っ手35を備えている。取っ手35の上部には、ごみを排出(廃棄)する際に押下するごみ捨てボタン35aを備えている。外筒30の前方下側には、後述する底蓋31が回動自在に支持される。取っ手35には、ごみ捨てボタン35aを押下した際の力を後述するスライドクランプ81に伝えるロッド80を内蔵しており、ロッド80およびスライドクランプ81をスムーズに動作させるためには、取っ手35を設ける外筒30の側面は、段差や傾斜面でなく略垂直(略上下方向を向いた)面が良い。つまり、本実施形態のように、外筒30を下方から見て開口部38a側を略D字状(図示せず)にした位置に後述するクランプ機構を設けることで、ロッド80が垂直方向に動作できるため、スライドクランプ81をスムーズに動作させることができ、塵埃の排出をより容易に行なえる。
<フィルタケース33>
外筒30の上部に設けられるフィルタケース33は、上面部が蓋構造となっており、フィルタケース上部(上蓋)33aとフィルタケース下部33bとに分割される。フィルタケース下部33bは外筒30上部と一体に形成され、捕塵フィルタ32(図8参照)を受けるフィルタ受け部34が収納されている。また、詳細は後述するが、フィルタケース下部33bとフィルタケース上部33aは上部ヒンジ機構70により接続されている。
フィルタ受け部34は、外筒30に設けたフィルタケース下部33bに全体が収まるようにフィルタケース下部33bの内壁面をオフセットした形状(フィルタケース下部33bの内壁面より縮径した形状)であり、フィルタケース下部33bに容易に着脱できる最大寸法で形成されている。
図8に示すように、フィルタ受け部34の略中心部は開口にしており、後記する内筒40と流体的に連通している。さらに、フィルタ受け部34の外殻の底面には、気密部材34aを備えている。気密部材34aはフィルタケース下部33bの底面と接することにより、フィルタ受け部34とフィルタケース下部33bとの気密を確保している。
図9にはフィルタケース上部33aを閉じた状態の集塵装置10の外観図(図9(a))、およびフィルタケース上部33aを開いた状態の集塵装置10の外観図(図9(b))を示す。また、図10には図9(b)において捕塵フィルタ32を取り外したときの外観図(図10(a))、およびフィルタ受け部34(内筒40含む)を取り外したときの外観図(図10(b))を示す。
フィルタ受け部34の外殻上部の外周に固定リブ34bが設けられている。図10の矢印α2に示すように、フィルタ受け部34をフィルタケース下部33bの所定の位置に装着した後、図10の矢印α3方向に回すことで、フィルタケース下部33bに設けた固定レール33c(図10参照)と固定リブ34b(図9参照)とが嵌合し、フィルタケース下部33bとフィルタ受け部34とを気密を保った状態で固定することができる。図8に示すように、フィルタ受け部34の上面は鍔状の捕塵フィルタ受け部34cを設けており、後記する捕塵フィルタ32の外周に設けたパッキング32aの下面側に圧接される。
捕塵フィルタ32は、通気面積を拡大するためにプリーツ状(山折状)に折られており、円状の枠体に接着されている。前記したように、フィルタ受け部34に捕塵フィルタ32を装着すると、パッキング32aの下面側とフィルタ受け部34に備えた捕塵フィルタ受け部34cとが接し、パッキング32aの上面側は、フィルタケース上部33aの気密面33a1と接する。こうして、フィルタケース上部33aとフィルタ受け部34とが外部空間に対して気密に封止される。
先述したように、フィルタケース上部33aは、フィルタケース下部33bと上部ヒンジ機構70により接続されている。上部ヒンジ機構70は、フィルタケース上部33aの後方に軸61を備え、フィルタケース下部33bの後方に備える軸穴(図示せず)にフィルタケース上部33aに備えた軸61を挿入することで構成している。この軸穴と軸61は、本実施形態とは逆の構成で、フィルタケース下部33bに軸61を設けても良い。また、フィルタケース上部33aの前方にはロック機構37を備えている。ロック機構37は、レール部37aおよびスライド部37bで構成されており、スライド部37bはレール部37aを覆うように装着されており左右にスライド可能である。フィルタケース上部33aは、軸61回りに回動し、フィルタケース上部33aとフィルタケース下部33bが嵌合した状態で、レール部37aとフィルタケース下部33bの前方に設けた係止部36が嵌合する。このとき、レール部37aと係止部36を覆う方向にスライド部37bをスライドさせることにより、フィルタケース上部33aは外筒30と固定される。図21(a)は図20(a)からフィルタケース上部33aを半分程閉じた状態を示す中央断面図、(b)は図21(a)のE部拡大図である。
集塵装置の組立ては、フィルタケース下部33bに、フィルタ受け部34を装着し、捕塵フィルタ32を置き、フィルタケース上部33aで蓋をするように装着する。捕塵フィルタ32を置く際は、外周に設けた合わせ部32aをフィルタケース下部33bの切欠部33b2に合わせる。捕塵フィルタ32外周のパッキング32aは、フィルタ受け部34に捕塵フィルタ32を置く際、パッキング32aのリップ形状による立ち上がりの影響で、捕塵フィルタ32の所定の位置よりも少し上側になる。この状態で、フィルタケース上部33aを閉じる方向に回動すると、フィルタケース上部33aの気密面33a1が捕塵フィルタ32のパッキング32aの外側に外れる軌跡となるため、気密が確保できない場合がある。
これを抑制するために、フィルタケース上部33aの気密面33a1の外側に捕塵フィルタ32を所定位置まで押し下げるリブ(押さえリブ62)を設けている。押さえリブ62は、フィルタケース上部33aを閉じる動作において、捕塵フィルタ32の外周に設けた合わせ部32aに最初に触れるように設定しており(図21参照)、これにより、捕塵フィルタ32を所定位置まで押し下げることが可能となる。
従って、押さえリブ62は、フィルタケース下部33bとフィルタケース上部33aを合わせた状態で、捕塵フィルタ32の外周に設けた合わせ部32aの上部にあたる位置に設け、またフィルタケース下部33bに設けた切欠部33b2の幅以内となっている。このような構造を設けることで、フィルタケース上部33aとフィルタケース下部33bとを上部ヒンジ機構70により接続した集塵装置において、捕塵フィルタ32前後の気密を保持することが可能となる。
図8に示すように、フィルタケース上部33aの外観面には、上面に集塵装置10を持つための持ち手55、前方に掃除機本体1と固定するためのクランプ部50、及びクランプ部50を駆動するボタン60を備えている。フィルタケース上部33aの後方には、電動送風機14と流体的に接続される開口部39が設けられる。
図4に示すように、開口部39は保護フィルタ及びフィルタカバー17を介し、ダクト21と接続される。フィルタカバー17は、捕塵フィルタ32と同様に外周部の前後面にゴム部材等で成型されたパッキングが設けられ、開口部39とダクト21との間の気密が保持されている。
フィルタケース上部33aの持ち手55は、集塵装置10を掃除機本体1に装着する際に、掃除機本体1に設けられる蓋体19で覆われる。これは、掃除機本体1を持ち運ぶ際に、本体ハンドル18(図1参照)ではなく、持ち手55(図2参照)を持ち上げることを防止するためである。
<蓋体19>
蓋体19は、掃除機本体1上部に設けられる回転軸部に回転自在に支持され、該回転軸部に蓋体19が開く方向に付勢されるねじりバネ(図示せず)を備えている。
蓋体19は、図2の開いた状態(蓋体19が直立した状態)から前方へ倒す際にねじりバネの弾性による捩り力が加わり、蓋体19底面の前側に設けた爪部19aを、フィルタケース上部33aのクランプ部50に係合して蓋体19が閉じた状態となる。この際、蓋体19にねじりバネが元の状態に戻ろうとする弾性力が加わり、その反作用として集塵装置10を掃除機本体1側へ押し付けることができる。この構成により、集塵装置10と掃除機本体1との気密保持と、集塵装置10の掃除機本体1への固定とが両立されている。
蓋体19を閉じた状態において、フィルタケース上部33aのボタン60(図1参照)を押下すると、クランプ部50が解除され、蓋体19がねじりバネの弾性力で持ち上がり持ち手55が現われる。持ち手55が現われた状態で、ユーザが持ち手55を引き上げることで集塵装置10を掃除機本体1から容易に取り外すことができる(図2参照)。
換言すると、蓋体19が開いた状態では、持ち手55を引き上げることで集塵装置10が掃除機本体1から外れる。このように、蓋体19が閉じた状態では、持ち手55で掃除機本体1を持ち上げられない構造となっており、掃除機本体1を持ち上げる場合と集塵装置10を持ち上げる場合との誤動作の防止を図っている。
<内筒40>
次に、内筒40について説明する。
図11(a)に示すように、内筒40は略円筒状であり、前記したように、外筒30と同心状となるように集塵装置10に設けられている。
内筒40は、上部に設けられる吸気部42を有する上部円筒41と、下部に設けられる筒体46を内包した傘部44とを含み構成されている。
<上部円筒41>
図12に示すように、上部円筒41の吸気部42は、格子状の枠体(支骨)によって形成されている。本実施形態では上下方向の枠体(支骨)としているが、上下左右方向に枠体(支骨)のある格子状でも構わない。吸気部42は、外周面に亘ってメッシュ部材42aが掛け渡されている。メッシュ部材42aは被覆またはインサート成型などによって枠体(支骨)に保持されている。吸気部42にメッシュ部材42aを設けることで、上部内筒41はフィルタ機能を有し、内筒40内部への微細な塵埃の流入を抑制している。
本実施形態では、メッシュ部材42aは、ポリエステルを使用しているが、金属(例えば、ステンレスなど)でもよく、枠体(支骨)ではなく小径の貫通孔(金型で成型可能なφ2mm程度の孔)を複数設けた吸気部42でも構わない。貫通孔は、枠体(支骨)にメッシュ部材42aを掛け渡した場合と違い、強度や破れに対し有効であり、二次成型が不要といったメリットがある。しかし、貫通孔の径(開口面積)は、メッシュ部材42aの開口面積よりも大きくすると、内筒40の内部への微細な塵埃の流入に対しては不利となる。
前記したように、上部内筒41は、上方に隣接するフィルタ受け部34の略中心部の開口と連通している。本実施形態では、内筒40の上面部にフランジ部40aを有し、フランジ部40aをフィルタ受け部34の底面に固定する構成としているが、内筒40の上面とフィルタ受け部34の底面を一体に形成してもよい。或いは、フランジ部40aを設けずに、内筒40がフィルタ受け部34と着脱可能な構造にしても構わない。
<傘部44>
内筒40の下部には、傘部44を備えている。傘部44は、上部内筒41と同心状に一体に略円筒状に設けられ、上面が上部内筒41に連続して軸孔44dを除いて閉塞されている。傘部44の外周面44aには第1円環状リブ44a1が設けられる。
図11(a)に示すように、第1円環状リブ44a1は傘部44の外周面44aに対し略垂直方向に突出(凸設)して設けられ、また傘部44の全周に渡り集塵装置10の中心軸O(外筒の中心軸)に対し略垂直になるように設けている。
第1円環状リブ44a1の高さは、例えば傘部44の外周面44aから約4mm(=s1)(図11(b)参照)である。第1円環状リブ44a1は、外筒30内で吸込まれた塵埃を含む空気から分離された塵埃の舞い上がりを抑制または防止する。加えて、第1円環状リブ44a1は外筒30内の下部に分離された塵埃は下方に留まるため圧縮される。
傘部44は、底面が開口して、その内部に空間44kを有する形状である。
そして、傘部44内の空間44kを内包するように傘部44の形状を小さくした内傘上部45aを有する内傘部45が設けられている。
<内傘部45>
図11(a)に示すように、内傘部45は、傘部44の下端縁の下方に外方に突出する内傘下部45bを内傘上部45aの下方に有する円筒形状としている。
また、内傘部45には、内傘下部45bと内傘上部45aとの間であって傘部44の下端縁の下方の位置に、内傘下部45bから外方に突出して円環状に形成される第2円環状リブ45b1が凸設されている。第2円環状リブ45b1は内傘下部45bの外周面に対し略垂直に設けられ、また内傘下部45bの全周に渡り集塵装置10の中心軸Oに対し略垂直方向になるように設けられている。
図11(b)に示すように、第2円環状リブ45b1は、第1円環状リブ44a1よりも小さい径となっている。例えば、第2円環状リブ45b1は、傘部44の外周面44aから約2.5mm(=s2)の高さを有しており、傘部44の外周面44aに形成される第1円環状リブ44a1より約1.5mm(=s3)低い高さに形成されている。
第2円環状リブ45b1は、内傘部45の内傘下部45bから約4.2mm(=s4)の高さを有している。
ここで、傘部44の外周面44aの円環状リブ44a1と外筒30の下部内周面30n1との間の距離s5は、例えば約9mmである。
第1円環状リブ44a1の高さや第2円環状リブ45b1の高さは、傘部44および内傘部45と外筒30の下部内周面30n1との間の距離によって適宜変更されるものである。
内傘部45内には、下方に凸状の円錐形状を有する筒体46(図11(a)参照)が設けられている。
また、内傘部45には、上部から底面46tに向かって先細りになるようなテーパ形状を有した、筒体46を内傘部45と同心状に備えている。筒体46の底面46tは閉塞され略半球状に形成されている。本実施形態においては、筒体46の底面46tに約φ3.5mmの孔を設けており、集塵装置を水洗いした際の水抜き孔の役割をしている。筒体46を先細りになるテーパ形状にすることで、外筒30下部の先太りのテーパ部と合わせて下向きに拡大する空間を有する容器形状となるため、ごみ捨ての際にごみが落下しやすくなる(図15参照)。
前記したように、内傘部45は、傘部44内に一部が内包されている。詳細は後記するが、内傘部45が上下方向に摺動する機構を設けることで、ごみ捨て時の排出のアシストが行われている。
内傘部45は、吸口体7からのごみの吸引時などのごみ捨て時以外は傘部44内に収まっている。内傘部45は、ごみ捨て時に圧縮ばね47の伸長方向の弾性力により下方へ摺動し、外筒30内の塵埃を下方の外部空間(ごみ箱など)に向けて押し出す。
内傘部45の上下の摺動距離は、傘部44の空間44kの高さ未満(図15参照)としている。換言すると、内傘部45の上面45a1(図11(a)参照)は、傘部44の底面44bを下方に越えないようにしている。これは、ごみ捨て時の傘部44の底面44bと内傘部45の上面45a1との間に隙間ができないようにすることで、傘部44の底面44bと内傘部45の上面45a1との間への塵埃が挟まる可能性を低減するためである。また、内傘部45は、傘部44内の空間44kを容易に摺動できる必要最小限のクリアランス(空間)を設けている。
また、傘部44は塵埃が堆積する部分であるため、内傘部45とのクリアランスが小さすぎるとクリアランス内に塵埃が噛み込み、摺動しにくくなることも考えられる。本実施形態では、塵埃の噛み込みを考慮したクリアランスを設け、内傘部45の外周に複数のリブ45r(図12参照)を設けることで内傘部45に対する案内とし、傘部44、内傘部45間のクリアランスを大きくしたことによる摺動する際のガタつきを低減している。
更に、内傘部45の内傘下部45bに設けた第2円環状リブ45b1は、内傘部45が傘部44の空間44kに収まった状態で、第2円環状リブ45b1の上面と傘部44の底面44bが接するようにしている。これにより、塵埃吸引時の傘部44と内傘部45内との隙間への塵埃の入り込みを抑制している。
<内傘部45の摺動機構>
次に、集めたごみの排出をアシストする内傘部45の摺動機構について説明する。
図11(a)に示すように、内傘部45の摺動機構は、内傘部45の内方にバネ座を形成したベース部材48を有している。ベース部材48は、圧縮ばね47の受けとなり、圧縮ばね47の下方への弾性力を、内傘部45に伝達する部材である。
ベース部材48は、その略中央に圧縮ばね47を収容するバネケース48cと、圧縮ばね47が挿通されるバネ軸48jとを有している。そして、傘部44にはバネケース48cに入れ子状となるピストン部44pを備えている。ベース部材48のバネ軸48jには、内傘部45の摺動機構のストッパ49をネジn1で締結して固定できる構造となっている。
図12に示すように、ベース部材48のバネケース48c内に上方から圧縮ばね47を、バネ軸48jを挿通して挿入し、上部円筒41および傘部44と一体になった入れ子状のピストン部44p(図11(a)参照)で圧縮ばね47を上方から押すように装着する。その後、ストッパ49を、バネ軸48jにネジn1で固定する。そして、構造の詳細は省略するが、内傘部45の天面に設けたロック機構部とベース部材48を嵌合させることで内傘部45の摺動機構が構成される。このとき、ベース部材48に設けたバネケース48cの外周は、内傘部45と一体で成形され同心状に設けられた筒体46で覆われている。本実施形態のバネケース48cは側面にスリット48c1を設けており、バネケース48c内に塵埃が入り込んだ場合でも除去できるようにしているため、バネケース48cは筒体46で覆う必要がある。従って、バネケース48cにスリット48c1を設けず、バネケース48cで筒体46の役割を兼ね、略中空円筒状の内傘部45とベース部材48で摺動機構を構成することも可能である。このような構成によれば、摺動機構部の軽量化が可能となる。しかしながら、バネケース48c内への塵埃の入り込みを無くすことは困難であるため、本実施形態の構成が望ましい。
また、ストッパ49は傘部44の上面44cに備えたストッパ受け部44u(図11(a)、図12参照)まで摺動する。そのため、前記したように、内傘部45の摺動距離は傘部44の空間44kの高さ未満であるため、内傘部45の摺動機構のストッパ49の高さも摺動距離と略同等となっている。
このような摺動機構において、圧縮ばね47が最も自然長に近い状態が、内傘部45が最も外筒30から飛び出した状態であり(図15参照)、図11(a)に示すように、底蓋31を閉じると圧縮ばね47が圧縮された状態になる。そのため、ごみ捨て時に後記の底蓋31のロックを解除すると、図15に示すように、圧縮ばね47が自然長に近い伸長状態になることから内傘部45が下向きに飛び出し、内傘部45、筒体46などで塵埃を外部空間に押し出す。
<底蓋31>
図11(a)に示すように、底蓋31は、中央部が下方に突出した深さをもった皿状に形成され、中央部に突出した部分の反対側に凹みとなる窪み部31bを有している。底蓋31は皿状にすることで構造体に曲率をもたせて強度を向上させている。また、底蓋31の窪み部31bは、筒体46の底面46tの球形状の球半径(曲率)よりも大きくしており、窪み部31bの深さは、底蓋31が開状態(外筒30の底面に対して垂直状態となる開状態)(図15参照)で窪み部31bに水平になる面ができないようにしている。換言すると、窪み部31bの深さは極力浅くしている。これは、ごみ排出の際に窪み部31bに塵埃が残らないようにするためである。
また、底蓋31内には、図8などに示すような底面リブ31cを設けている。これは、外筒30内の下部テーパ内を旋回する塵埃の回転を阻止し、底面リブ31cを基点に塵埃を下方に向けて圧縮するためである。底面リブ31cは、底蓋31内の外周側に底蓋31の深さと略同等の高さから、中心に向うほど低くなるような略三角形状をしており、前側と左右に配置している。このような底面リブ31cは、集塵容積や傘部44の形状等により調整を行っているため、形状はこの限りではない。
また、本実施形態では、窪み部31bを底蓋31とは別体で形成しており、底蓋31の開閉での筒体46との摩擦による部材の磨耗を低減するようにPOM(polyoxymethylene:ポリアセタール)などの材料を用いているが、底蓋31と一体で成形しても構わない。
底蓋31は、外周に回転軸31aを有し、回転軸31aと対向する位置にクランプ受け31dを備えている。回転軸31aは、下部ヒンジ機構71のヒンジカバー75と回転自在に装着される。下部ヒンジ機構71は、底蓋31に備える回転軸31aをヒンジカバー75に装着し、ヒンジカバー75を外筒30の前方下側に設けたヒンジカバー固定部30fにネジ等により固定する構造となっている。底蓋31の開閉については後述するが、底蓋31は回転軸31aにねじりバネを備えることで、底蓋31が開いた状態(図15参照)に付勢している。
図20には、底蓋31を閉じ、フィルタケース上部33aを開いた図10(b)の中央断面図(図20(a))を示している。また、図20(a)の破線で囲んだ部分の拡大図を図20(b)に示す。この図は、捕塵フィルタ32および内筒40と一体のフィルタ受け部34を取り外し、フィルタケース上部33aを略90度回動し、略水平床面に集塵装置10を置いた状態である。フィルタケース上部33aは、外筒30の背面上部に設けた突起部30gをフィルタケース上部33aの底面に設けた後部リブ33b3を乗り越えていることで、フィルタケース上部33aが略90度回動した安定的な固定が可能となる。また、後部リブ33b3は、突起部30gの高さにより、略90度になるよう回動を制限している。
ここで、一般的に、外筒の重心位置は中心軸近傍となる。しかし、本実施形態では、フィルタケース上部(上蓋)33aがヒンジを介して外筒30に接続した構成のため、フィルタケース上部(上蓋)33aを回動させて、例えばフィルタケース上部(上蓋)33aが略90度以上回動すると、外筒30はフィルタケース上部(上蓋)33aからモーメントが作用する。その結果、外筒30の中心軸Oを上下方向から左右方向に傾ける力が作用するので、外筒30が自立した状態(中心軸Oが上下方向の状態)からバランスが崩れて、外筒30が転倒することとなる。
本実施形態の外筒30は、図20(a)に示すように、フィルタケース上部(上蓋)33aを閉位置から上部ヒンジ部70を介して略90度(90度以上でも可)回動させた状態で、捕塵フィルタ32および内筒40を取り外しても自立する構造としている。すなわち、フィルタケース上部(上蓋)33aを上部ヒンジ部70を介して回動させて、フィルタケース上部(上蓋)33aが外筒30の中心軸O(集塵装置10の中心軸)上方より外側の位置で開状態を維持して、かつ外筒30から捕塵フィルタ32および内筒40を取り外した状態で、外筒30が自立する位置(中心軸Oが上下方向の状態を維持する位置)に重心を配置している。
また、外筒30の上部後方のフィルタケース上部33aの上部ヒンジ機構70に対し、外筒30の下部前方の底蓋31のヒンジ構造(下部ヒンジ機構71)を設けた略対角の位置にすることで、重心バランスをより保っている。重心バランスは、フィルタケース上部33aの重さ、上部ヒンジ機構70の軸位置、外筒30の外径、底蓋31のヒンジ構造(下部ヒンジ機構71)の大きさ等により異なるため、フィルタケース上部33aの回動角度等は本実施形態の限りではない。
また、底蓋31の底面には、クランプ受け31d側にリブ31eを設けている(図15、20参照)。換言すると、底蓋31の下部ヒンジ機構71と反対側の底面端部にリブ31eを有する。これは、底蓋31底面が床面と接する範囲を、フィルタケース上部33aの上部ヒンジ機構70側に拡大することで重心を前方に移動することができ、よりバランスを取りやすくするためである。
このように、集塵装置10を床面等に置く際、フィルタケース上部33aを回動した状態で集塵装置10を自立させる構造により、捕塵フィルタ32を取り外した状態での自立、更には内筒40全体を取り外した状態での自立が可能となる。これにより、集塵装置10の手入れを容易に行うことができ、使い勝手の良い集塵装置10を提供することができる。
<集塵装置10内でのごみの集積作用>
次に、集塵装置10内でのごみの集積作用について説明する。
ユーザが操作部4に設けられた操作ボタン5を押下して運転を開始すると、電動送風機14が作動し空気を吸口体7(図1参照)から吸い込む。前記したように、吸口体7(図1参照)で吸い込まれた塵埃などを含む空気は、図4に示すように、ホース取り付け口11から掃除機本体1内の導入管20に流入し(図4の矢印β1)、導入管20内を通って導入管出口12を介して集塵装置10に至る(図4の矢印β2)。
集塵装置10に至った塵埃などを含む空気は、図7に示す開口部38aを通過して集塵装置10内に流入する。このとき、開口部38aの下流側に設けた絞り壁30bにより、流速を増加させつつ、外筒30の内周面に向かい接線方向に流入する。絞り壁30bには、リブ30cを設けているため、絞り壁30bに衝突する流れを整流し、空気流により発生する流体音の増加を抑制する。
図13に集塵装置10内の気流を表わした図6のB−B断面図を示す。
集塵装置10内の外筒30の接線方向に流入した塵埃などを含む空気は、図13の矢印γ1のように、旋回流となり、外筒30内で外筒30内面に沿って上部内筒41廻りを旋回する。これにより、塵埃に遠心力が働き、空気から塵埃が分離される。塵埃などのごみは空気に比べ重いので、図13の矢印γ2のように、外筒30の内周面30nに沿って落下する。つまり、塵埃集塵部10内の上部である塵埃分離部10Aにて、空気から塵埃は分離される。塵埃が分離された空気の多くは上部内筒41に設けた吸気口42より内筒40の内部に流入する(図13の矢印γ8)。
一方、遠心力で分離された塵埃は、重力と一部の空気流により外筒30と傘部44との間の塵埃集塵部10Bの入口を通り、塵埃集塵部10B内に搬送される。このとき、塵埃には遠心力が働いているため、塵埃集塵部10B内の微細なごみを含む空気は、底蓋31の上を、図13の矢印γ3のように旋回する。
そして、電気掃除機1の使用を続けると、徐々に塵埃が堆積し、底蓋31に設けた底面リブ31cを基点に塵埃の旋回が止まり、塵埃収容部10B内の塵埃が満量になった状態で、塵埃はドーナツ状に堆積する。この際、内傘部45と筒体46との間にも塵埃は堆積する。塵埃集塵部10B内に流入した空気は、筒体46、内傘部45の形状に沿って、傘部44の外周付近から上部内筒41側へ流れる。具体的には、逆三角錐状の筒体46の壁面に沿って旋回しつつ上昇して内傘部45の内部を通過して内傘部45の内傘下部45bの外周面に沿って旋回しつつ上昇する(図13の矢印γ4)。
矢印γ4は、内傘部45の内傘下部45bの上縁の第2円環状リブ45b1に当たり、第2円環状リブ45b1近傍廻りの旋回流が発生する(図13の矢印γ5)。旋回流によりごみが遠心力により分離され落下して外筒30内の下部に堆積する。加えて、第2円環状リブ45b1を越え、上方への気流が発生する(図13の矢印γ5a)。
さらに、内傘下部45bの上縁の第2円環状リブ45b1を乗り越えた微細なごみを含む空気はさらに上方の傘部44の外周面44aに沿って上昇するが、傘部44の第1円環状リブ44a1に当たって、第1円環状リブ44a1近傍廻りの旋回流が発生する(図13の矢印γ6)。旋回流によりごみが遠心力により分離され落下して外筒30内の下部に堆積する(図13の矢印γ6a)。
これら矢印γ5および矢印γ6の流れにより、塵埃は遠心力で外筒30の内周面側へ押され、また、塵埃収容部10Bに流入する矢印γ2の流れにより、塵埃は塵埃収容部10Bの下方に堆積する。また、先述したように、塵埃分離部10Aと塵埃収容部10Bとの境界に設けた拡大部30dを設けることで、塵埃分離部10Aと塵埃収容部10Bとの境界に塵埃が溜まり難い角部30d2に空間Hができる。この空間Hにより、塵埃収容部10Bに流入する矢印γ2で塵埃を圧縮し、効率よく堆積することができ、更に、塵埃分離部10Aへ戻る塵埃の量が低減する。
そして、塵埃が第2円環状リブ45b1、第1円環状リブ44a1で除去された空気が、図13の矢印γ7のように、上部円筒41の吸気部42に吸い込まれ、掃除機本体1のダクト入口部13(図3、図4参照)に流入し、前記したように、掃除機本体1の外部空間に排気される。
従って、内傘部45の第2円環状リブ45b1と傘部44の第1円環状リブ44a1、外筒30拡大部30dとを設けることにより、塵埃の舞い上がりを抑制でき、塵埃を下方に向けて圧縮することができる。
そして、塵埃が所定のごみ捨て基準ラインまで達したら、ごみ捨てを行う。ごみ排出機構は、前記したように、吸引した塵埃の量が少ない場合でも、内傘部45のごみ排出機構、および外筒30の下方に向けて開く態様のテーパ形状により、塵埃の排出が促進され円滑に行われる。また、塵埃収容部10Bに満量に堆積した状態では、拡大部30dにより角部30d2に空間ができるため、外筒30の内周面と塵埃との接触面が減少し、塵埃排出の際外筒30の内周面と塵埃との摩擦力を軽減することができ、塵埃の排出が円滑に行われる。
<ごみ捨て時の動作>
図14に底蓋31を閉じた状態の図5のA−A断面図を示し、図15に塵埃を排出する際(底蓋31が開いた状態)の図5に示すA−A断面図を示す。
以上のようなごみ排出機構において、ごみ捨て時の動作を説明する。
底蓋31は、集塵装置10に設けた取っ手35上部に備えたごみ捨てボタン35aを押下することで解除される(図15参照)。
底蓋31は取っ手35の反対側に掃除機本体1に回転自在に支持される回転軸31aが設けられる一方、取っ手35側には底蓋31の開閉機構が設けられている。
取っ手35の上部に備えたごみ捨てボタン35aが押下されると、取っ手35内のロッド80が下向きに移動し、スライドクランプ81の爪部83が外れ、底蓋31が開口する構成である。
底蓋31の回転軸31aには、底蓋31を開く方向に付勢するねじりバネが備わっており、爪部83が外れることで底蓋21はねじりバネの弾性力で開く(図15参照)。ごみ捨てボタン35aの押下を解除すると、スライドクランプ81に設けたバネ80bが自然長に戻るため、ロッド80は上方に戻り、スライドクランプ81はごみ捨てボタン35aの押下前の位置に戻る。
底蓋31が開くと同時に、圧縮ばね47によって内傘部45および筒体46が下向きに飛び出す。これにより、内筒40の一部である内傘部45は、底蓋31が閉じた状態の位置よりも底蓋31が開いた状態の位置が、外筒30の下面の開口30a寄りの位置となる(図15参照)。
ごみ捨て後、底蓋31を閉じる際、下方に飛び出した筒体46の底面46tと、底蓋31の中央に設けた窪み部31bが接触し、内傘部45および筒体46は上方へ押される。
筒体46の底面46tと窪み部31bは球状の曲率をもって接するため、底蓋31を閉じる動作で底蓋31の角度が変わっても、筒体46の底面47と窪み部31bとの接触面積を一定に保つことができ、また、曲面同士を接触させることで常に垂直方向に力が加わるため、内傘部45は傘部内44にスムーズに収まる。
そして、底蓋31を略水平状態まで閉じると、クランプ受け31dが爪部83と接触し、スライドクランプ81は、スライドクランプ81に設けたバネが縮む方向に移動し、爪部83がクランプ受け31dを乗り越えた時点でバネが戻り、底蓋31は気密を保持した状態でロックされる。
<集塵装置10の手入れ時の動作>
ごみ捨て後、集塵装置10内に塵埃が残留した場合や捕塵フィルタ32のメンテナンスなど、集塵装置10の手入れが必要な際は、フィルタケース上部33aを開ける必要がある。フィルタケース上部33aは上部ヒンジ機構70により外筒30と接続されており、フィルタケース上部33aを略90度回動した状態で安定的に固定される。よって、フィルタケース上部33aを押さえることなく、捕塵フィルタ32の取り外し、内筒40の取り外しが可能である。また、集塵装置10から捕塵フィルタ32、および内筒40を取り外した状態において、フィルタケース上部33aを略90度回動した状態でも外筒30を床面に置いても安定的に自立する。このため、捕塵フィルタ32および内筒40の取り付け・取り外しが容易で、手入れし易く使い勝手が良い。
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものでなく、様々な実施形態が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分り易く説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、説明した構成の一部を含むものであっても良い。