(関連出願の相互参照)
本出願は、2013年8月1日に出願された米国仮出願シリアル番号61/861,291号、及び2013年8月7日に出願された米国仮出願シリアル番号61/863,118号の利益を主張し、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
(配列表)
本明細書と同時に提出される以下の通り特定されるコンピュータで可読なヌクレオチド/アミノ酸配列表は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:xxxバイトASCII(テキスト)ファイル1件、名称「filename.txt」2014年7月22日作成。
(発明の分野)
いくつかの形態において、本発明は、白血病を治療するための医薬組成物及びその使用方法に関する。特に、本発明は、溶解性及び生物学的利用能を改善したチエノトリアゾロジアゼピン化合物の分散体を含む組成物、及びBCR−ABL陽性急性リンパ芽球性白血病及び/又はCD34陽性急性骨髄性白血病の治療方法に関する。
本明細書の下記に記載される式(1)の化合物は、BRD2、BRD3及びBRD4を含むBET(bromodomains and extraterminal)タンパク質として知られるタンデムブロモドメイン(BRD)を含有する転写制御因子ファミリーに対するアセチル化ヒストンH4の結合を阻害することが示された。米国特許出願公開2010/0286127 A1号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照。BETタンパク質は、増殖及び分化のエピジェネティックな主要な制御因子として出現し、また、脂質異常症又は脂肪生成の不適切な調節、高い炎症性プロファイル及び心血管疾患及び2型糖尿病のリスク、及び関節リウマチ及び全身性エリテマトーデスのような自己免疫疾患に対する感受性の増大の傾向に関連している。これは、Denis, G.V.により「癌、肥満症、2型糖尿病及び炎症におけるブロモドメイン共活性化因子」Discov Med 2010;10:489−499(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で報告されている。従って、式(II)の化合物は、様々な癌、心血管疾患、2型糖尿病及び自己免疫障害(例えば、関節リウマチ及び全身性エリテマトーデス)の治療に有用であり得る。
本明細書の下記に記載される式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、一般的な投与及びガレヌス組成物の調製が非常にとりわけ困難である。それは、特に、薬物の生物学的利用能の特定の問題及び患者間及び患者内の用量反応の違いの特定の問題を含む。チエノトリアゾロジアゼピンのほぼ水に溶けない性質から、従来にない剤形の開発が必要とされている。
これまでに、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物を、担体アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル−トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド共重合体(オイドラギット RS,ローム社製)を用いて製剤化して、炎症性腸疾患(例えば潰瘍性大腸炎及びクローン病)の治療のために腸管下部で優先的に医薬成分を放出する経口製剤が提供可能であることが明らかとなった。これは、米国特許出願公開20090012064 A1号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる。)で報告されている。動物実験を含む様々な実験によって、炎症性腸疾患に対しては、病変における式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物の放出及び炎症性病変に対するその直接的な作用が、胃腸管からの循環への式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物の吸収と比較して、より重要であることが明らかとなった。しかしながら、多くの他の疾患状態に対しては、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物の胃腸管から循環への高い吸収が必要である。従って、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物の胃腸管から循環への高い吸収を実現できる式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物の製剤に対する要求がある。
ある実施形態では、本発明は、医薬上許容される量のチエノトリアゾロジアゼピン化合物若しくはその医薬上許容される塩又はその水和物若しくはその溶媒和物を含む組成物を患者に投与することを含み、上記チエノトリアゾロジアゼピン化合物が、下記式(1):
[式中、R1は、1〜4の炭素数を有するアルキルであり、R2は、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子又はヒドロキシル基で置換されていてもよい1〜4の炭素数を有するアルキルであり、R3は、ハロゲン原子;ハロゲン原子、1〜4の炭素数を有するアルキル、1〜4の炭素数を有するアルコキシ又はシアノで置換されていてもよいフェニル;−NR5−(CH2)m−R6(式中、R5は、水素原子又は1〜4の炭素数を有するアルキルであり、mは、0〜4の整数であり、R6は、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。);又は−NR7−CO−(CH2)n−R8(式中、R7は、水素原子又は1〜4の炭素数を有するアルキルであり、nは、0〜2の整数であり、R8は、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。)であり、R4は、−(CH2)a−CO−NH−R9(式中、aは、1〜4の整数であり、R9は、1〜4の炭素数を有するアルキル;1〜4の炭素数を有するヒドロキシアルキル;1〜4の炭素数を有するアルコキシ;又は1〜4の炭素数を有するアルキル、1〜4の炭素数を有するアルコキシ、アミノ又はヒドロキシル基で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。)又は−(CH2)b−COOR10(式中、bは、1〜4の整数であり、R10は、1〜4の炭素数を有するアルキルである。)である。]
で表され、チエノトリアゾロジアゼピン化合物が、非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物及び医薬上許容されるポリマーを含む固体分散体を形成し、固体分散体が、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す、急性リンパ芽球性白血病の治療方法を提供する。1つのこのような実施形態において、医薬上許容されるポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)に対して1:3ないし1:1の重量比でチエノトリアゾロジアゼピン化合物を有する。)である。
ある実施形態では、式1で表されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、独立して:(i) (S)−2−[4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ−[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル]−N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド又はその二水和物、(ii) メチル(S)−{4−(3’−シアノビフェニル−4−イル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリ−アゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテート、(iii) メチル(S)−{2,3,9−トリメチル−4−(4−フェニルアミノフェニル)−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアズ−オロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテート;及び(iv) メチル(S)−{2,3,9−トリメチル−4−[4−(3−フェニルプロピオニルアミノ)フェニル]−6H−チエノ[3,2−f−][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテートからなる群から選ばれる。
他の実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、(S)−2−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)−N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド二水和物である。
さらになお他の実施形態では、固体分散体は、約130℃ないし約140℃の範囲でガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。
本開示は、さらに、医薬上許容される量のチエノトリアゾロジアゼピン化合物若しくはその医薬上許容される塩又はその水和物若しくはその溶媒和物を含む組成物を患者に投与する工程を含み、上記チエノトリアゾロジアゼピン化合物が、下記式(1):
[式中、R1は、1〜4の炭素数を有するアルキルであり、R2は、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子又はヒドロキシル基で置換されていてもよい1〜4の炭素数を有するアルキルであり、R3は、ハロゲン原子;ハロゲン原子、1〜4の炭素数を有するアルキル、1〜4の炭素数を有するアルコキシ又はシアノで置換されていてもよいフェニル;−NR5−(CH2)m−R6(式中、R5は、水素原子又は1〜4の炭素数を有するアルキルであり、mは、0〜4の整数であり、R6は、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。);又は−NR7−CO−(CH2)n−R8(式中、R7は、水素原子又は1〜4の炭素数を有するアルキルであり、nは、0〜2の整数であり、R8は、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。)であり、R4は、−(CH2)a−CO−NH−R9(式中、aは、1〜4の整数であり、R9は、1〜4の炭素数を有するアルキル;1〜4の炭素数を有するヒドロキシアルキル;1〜4の炭素数を有するアルコキシ;又は1〜4の炭素数を有するアルキル、1〜4の炭素数を有するアルコキシ、アミノ又はヒドロキシル基で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。)又は−(CH2)b−COOR10(式中、bは、1〜4の整数であり、R10は、1〜4の炭素数を有するアルキルである。)である。]
で表され、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物及び医薬上許容されるポリマーを含む固体分散体を形成し、固体分散体は、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す、急性骨髄性白血病の治療方法を提供する実施形態を提供する。1つのこのような実施形態において、医薬上許容されるポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)に対して1:3ないし1:1の重量比でチエノトリアゾロジアゼピン化合物を有する。)である。
ある実施形態では、式1で表されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、独立して:(i) (S)−2−[4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ−[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル]−N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド又はその二水和物、(ii) メチル(S)−{4−(3’−シアノビフェニル−4−イル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリ−アゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテート、(iii) メチル(S)−{2,3,9−トリメチル−4−(4−フェニルアミノフェニル)−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアズ−オロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテート;及び(iv) メチル(S)−{2,3,9−トリメチル−4−[4−(3−フェニルプロピオニルアミノ)フェニル]−6H−チエノ[3,2−f−][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテートからなる群から選ばれる。
他の実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、(S)−2−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)−N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド二水和物である。
ある実施形態では、固体分散体は、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。さらになお他の実施形態では、固体分散体は、約130℃ないし約140℃の範囲でガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。
ある形態では、本発明は、医薬上許容される量のチエノトリアゾロジアゼピン化合物若しくはその医薬上許容される塩又はその水和物若しくはその溶媒和物を含む組成物を患者に投与する工程を含むBCR−ABL陽性急性リンパ芽球性白血病の治療方法を提供する。BCR−ABL陽性急性リンパ芽球性白血病の治療方法のいくつかの好ましい実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、式(1):
[式中、R1は、1〜4の炭素数を有するアルキルであり;R2は、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子又はヒドロキシル基で置換されていてもよい1〜4の炭素数を有するアルキルであり;R3は、ハロゲン原子;ハロゲン原子、1〜4の炭素数を有するアルキル、1〜4の炭素数を有するアルコキシ又はシアノで置換されていてもよいフェニル;−NR5−(CH2)m−R6(式中、R5は、水素原子又は1〜4の炭素数を有するアルキルであり、mは、0〜4の整数であり、R6は、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。);又は−NR7−CO−(CH2)n−R8(式中、R7は、水素原子又は1〜4の炭素数を有するアルキルであり、nは、0〜2の整数であり、R8は、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。)であり、R4は、−(CH2)a−CO−NH−R9(式中、aは、1〜4の整数であり、R9は、1〜4の炭素数を有するアルキル;1〜4の炭素数を有するヒドロキシアルキル;1〜4の炭素数を有するアルコキシ;又は1〜4の炭素数を有するアルキル、1〜4の炭素数を有するアルコキシ、アミノ又はヒドロキシル基で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。)又は−(CH2)b−COOR10(式中、bは、1〜4の整数であり、R10は、1〜4の炭素数を有するアルキルである。)である。]
の構造で表される。
BCR−ABL陽性急性リンパ芽球性白血病の治療方法のいくつかの好ましい実施形態では、式1で表されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、独立して:
(i) (S)−2−[4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ−[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル]−N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド又はその二水和物、
(ii) メチル(S)−{4−(3’−シアノビフェニル−4−イル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリ−アゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテート、
(iii) メチル(S)−{2,3,9−トリメチル−4−(4−フェニルアミノフェニル)−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアズ−オロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテート;及び
(iv) メチル(S)−{2,3,9−トリメチル−4−[4−(3−フェニルプロピオニルアミノ)フェニル]−6H−チエノ[3,2−f−][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテート
からなる群から選ばれる。
BCR−ABL陽性急性リンパ芽球性白血病の治療方法のいくつかの好ましい実施形態では、式1で表されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、(S)−2−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)−N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド二水和物である。
BCR−ABL陽性急性リンパ芽球性白血病の治療方法のいくつかの好ましい実施形態では、式1で表されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、式(1)の非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物及びその医薬上許容される塩又はその水和物;及び医薬上許容されるポリマーを含む固体分散体を形成する。
BCR−ABL陽性急性リンパ芽球性白血病の治療方法のいくつかの好ましい実施形態では、式1で表されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、式(1)の非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物及びその医薬上許容される塩又はその水和物;及び医薬上許容されるポリマーを含む固体分散体を形成し、医薬上許容されるポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)に対して1:3ないし1:1の重量比でチエノトリアゾロジアゼピン化合物を有する。)である。
BCR−ABL陽性急性リンパ芽球性白血病の治療方法のいくつかの好ましい実施形態では、式1で表されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物を含む固体分散体は、約130℃ないし約140℃の範囲でガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。ある実施形態では、固体分散体は、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。
他の形態では、本発明は、CD34陽性急性骨髄性白血病の治療方法を提供する。CD34陽性急性骨髄性白血病の治療方法のいくつかの代表的な実施形態では、方法は、医薬上許容される量のチエノトリアゾロジアゼピン化合物を含む組成物を患者に投与することを含む。CD34陽性急性骨髄性白血病の治療方法のいくつかの好ましい実施形態では、方法は、医薬上許容される量の式(1):
[式中、R1は、1〜4の炭素数を有するアルキルであり、R2は、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子又はヒドロキシル基で置換されていてもよい1〜4の炭素数を有するアルキルであり、R3は、ハロゲン原子;ハロゲン原子、1〜4の炭素数を有するアルキル、1〜4の炭素数を有するアルコキシ又はシアノで置換されていてもよいフェニル;−NR5−(CH2)m−R6(式中、R5は、水素原子又は1〜4の炭素数を有するアルキルであり、mは、0〜4の整数であり、R6は、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。);又は−NR7−CO−(CH2)n−R8(式中、R7は、水素原子又は1〜4の炭素数を有するアルキルであり、nは、0〜2の整数であり、R8は、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。)であり、R4は、−(CH2)a−CO−NH−R9(式中、aは、1〜4の整数であり、R9は、1〜4の炭素数を有するアルキル;1〜4の炭素数を有するヒドロキシアルキル;1〜4の炭素数を有するアルコキシ;又は1〜4の炭素数を有するアルキル、1〜4の炭素数を有するアルコキシ、アミノ又はヒドロキシル基で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。)又は−(CH2)b−COOR10(式中、bは、1〜4の整数であり、R10は、1〜4の炭素数を有するアルキルである。)である。]
の構造を有するチエノトリアゾロジアゼピン化合物若しくはその医薬上許容される塩又はその水和物若しくはその溶媒和物を含む組成物を患者に投与することを含む。
CD34陽性急性骨髄性白血病の治療方法のいくつかの好ましい実施形態では、式1で表されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、独立して:
(i) (S)−2−[4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ−[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル]−N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド又はその二水和物、
(ii) メチル(S)−{4−(3’−シアノビフェニル−4−イル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリ−アゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテート、
(iii) メチル(S)−{2,3,9−トリメチル−4−(4−フェニルアミノフェニル)−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアズ−オロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテート;及び
(iv) メチル(S)−{2,3,9−トリメチル−4−[4−(3−フェニルプロピオニルアミノ)フェニル]−6H−チエノ[3,2−f−][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテート
からなる群から選ばれる。
CD34陽性急性骨髄性白血病の治療方法のいくつかの好ましい実施形態では、式1で表されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、(S)−2−(4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル)−N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド二水和物である。
CD34陽性急性骨髄性白血病の治療方法のいくつかの好ましい実施形態では、式1で表されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、式(1)の非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物及びその医薬上許容される塩又はその水和物;及び医薬上許容されるポリマーを含む固体分散体を形成する。ある実施形態では、固体分散体は、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。
いくつかの好ましい実施形態では、CD34陽性急性骨髄性白血病の治療方法は、医薬上許容される量の式(1)の非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物及びその医薬上許容される塩又はその水和物を患者に投与することを含み、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、式(1)の非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物及びその医薬上許容される塩又はその水和物;及び医薬上許容されるポリマーを含む固体分散体を形成し、医薬上許容されるポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)に対して1:3ないし1:1の重量比でチエノトリアゾロジアゼピン化合物を有する。)である。
いくつかの好ましい実施形態では、CD34陽性急性骨髄性白血病の治療方法は、医薬上許容されるポリマーの固体分散体中の医薬上許容される量の式(1)の非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物及びその医薬上許容される塩又はその水和物を患者に投与することを含み、固体分散体は、約130℃ないし約140℃の範囲でガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。ある実施形態では、固体分散体は、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。
本発明のチエノトリアゾロジアゼピン製剤を含む医薬組成物及び本発明の方法の実施形態の上述の要約及び以下の詳細な説明は、代表的な実施形態の添付図面と併せて読むことによりよく理解されるであろう。しかしながら、本発明が、図示された厳密な配置及び手段に限定されるものではないということを理解されたい。
図面において:
図1Aは、25%の化合物(1−1)及びオイドラギットL100−55を含む固体分散体を含む比較製剤の溶解プロファイルを説明する。
図1Bは、50%の化合物(1−1)及びオイドラギットL100−55を含む固体分散体を含む比較製剤の溶解プロファイルを説明する。
図1Cは、25%の化合物(1−1)及びポリビニルピロリドン(PVP)を含む固体分散体を含む実施例製剤の溶解プロファイルを説明する。
図1Dは、50%の化合物(1−1)及びPVPを含む固体分散体を含む実施例製剤の溶解プロファイルを説明する。
図1Eは、25%の化合物(1−1)及びPVP−酢酸ビニル(PVP−VA)を含む固体分散体を含む実施例製剤の溶解プロファイルを説明する。
図1Fは、50%の化合物(1−1)及びPVP−VAを含む固体分散体を含む実施例製剤の溶解プロファイルを説明する。
図1Gは、25%の化合物(1−1)及びヒプロメロースアセテートスクシナート(HPMCAS−M)を含む固体分散体を含む実施例製剤の溶解プロファイルを説明する。
図1Hは、50%の化合物(1−1)及びHPMCAS−Mを含む固体分散体を含む実施例製剤の溶解プロファイルを説明する。
図1Iは、25%の化合物(1−1)及びヒプロメロースフタレート(HPMCP−HP55)を含む固体分散体を含む実施例製剤の溶解プロファイルを説明する。
図1Jは、50%の化合物(1−1)及びHMCP−HP55を含む固体分散体を含む実施例製剤の溶解プロファイルを説明する。
図2Aは、25%の化合物(1−1)及びPVPの固体分散体を含む実施例製剤のin vivoスクリーニングの結果を説明する。
図2Bは、25%の化合物(1−1)及びHPMCAS−Mの固体分散体を含む実施例製剤のin vivoスクリーニングの結果を説明する。
図2Cは、50%の化合物(1−1)及びHPMCAS−Mの固体分散体を含む実施例製剤のin vivoスクリーニングの結果を説明する。
図3は、化合物(1−1)の固体分散体の粉末X線回析プロファイルを説明する。
図4Aは、周囲条件下で平衡化させた25%の化合物(1−1)及びPVPの固体分散体の改良型示差走査熱量計のトレースを説明する。
図4Bは、周囲条件下で平衡化させた25%の化合物(1−1)及びHPMCAS−Mの固体分散体の改良型示差走査熱量計のトレースを説明する。
図4Cは、周囲条件下で平衡化させた50%の化合物(1−1)及びHPMCAS−Mの固体分散体の改良型示差走査熱量計のトレースを説明する。
図5は、25%の化合物(1−1)及びPVP又はHMPCAS−Mの固体分散体、及び50%の化合物(1−1)及びHPMCAS−MGの固体分散体についてのガラス転移温度(Tg)の相対湿度(RH)に対するプロットを説明する。
図6は、75%の相対湿度下で平衡化させた25%の化合物(1−1)及びPVPの固体分散体の改良型示差走査熱量計のトレースを説明する。
図7A及び7Bは、1mg/kg静脈内投与(黒四角)後、及び25%の化合物(1−1):PVP(白丸)、25%の化合物(1−1):HPMCAS−MG(白三角)、及び50%の化合物(1−1):HPMCAS−MG(白逆三角)としての3mg/kg経口投与後の化合物(1−1)の血漿濃度の時間に対する曲線を説明する。挿入図は、片対数目盛に対してプロットされた同じデータを示す。
図8A及び8Bは、25%の化合物(1−1):PVP(白丸)、25%の化合物(1−1):HPMCAS−MG(白三角)及び50%の化合物(1−1):HPMCAS−MG(白逆三角)としての3mg/kg経口投与後の化合物(1−1)の血漿濃度の時間に対する曲線を説明する。挿入図は、片対数目盛に対してプロットされた同じデータを示す。
図9は、HPMCAS−MG中の化合物(1−1)の固体分散体の安定性試験のゼロ時間における粉末X線回析プロファイルを説明する。
図10は、40℃及び相対湿度75%での1か月後におけるHPMCAS−MG中の化合物(1−1)の固体分散体の粉末X線回析プロファイルを説明する。
図11は、40℃及び相対湿度75%での2か月後におけるHPMCAS−MG中の化合物(1−1)の固体分散体の粉末X線回析プロファイルを説明する。
図12は、40℃及び相対湿度75%での3か月後におけるHPMCAS−MG中の化合物(1−1)の固体分散体の粉末X線回析プロファイルを説明する。
図13A〜13Cは、処置後に異なる時点で回収したALL細胞株(Jurkat細胞、RS4−11細胞及びTOM−1細胞)での化合物(1−1)により誘導されるアポトーシスの動態を説明する。アポトーシス細胞は、アネキシンV+PI吸収の有無として定義された。X軸は化合物(1−1)の用量を示し、Y軸はアポトーシス細胞の割合を示す。3つのうち1つの代表的な実験を示す。
図14A〜14Dは、処置後異なる時点で回収したAML細胞株(HL60細胞、K562細胞、KG1細胞及びKG1a細胞)での化合物(1−1)により誘導されるアポトーシスの動態を説明する。アポトーシス細胞は、アネキシンV+PI吸収の有無として定義された。X軸は化合物(1−1)の用量を示し、Y軸はアポトーシス細胞の割合を示す。2つのうち1つの代表的な実験を示す。
図15A〜15Cは、ALL細胞株及びAML細胞株における化合物(1−1)により誘導される細胞周期の変化を説明する。非処置のHL60及び100nMの化合物(1−1)で24時間処置した細胞のフローサイトメトリーのプロファイルの代表的なヒストグラム(A)。細胞を、細胞周期分析前にPIでインキュベートした。ALL細胞株(図15B)及びAML細胞株(図15C)についての細胞周期の変化。X軸は細胞株を示し、Y軸は細胞周期相における細胞の割合を示す。
図16は、低用量の化合物(1−1)により誘導されるアポトーシスを説明する。KGl細胞を10nMの化合物(1−1)でインキュベートした。アポトーシス細胞は、シネキシンV+PI吸収の有無として定義された。代表的なドットプロットを示す(PI:FL2,アネキシンV:FLl)。
図17A〜17Cは、白血病細胞株及び患者試料におけるBRD遺伝子発現を説明する。ALL(図17B)及びAML(図17C)からの患者試料及び白血病細胞株(図17A)におけるBRD2、BRD3及びBRD4の発現レベル。X軸は細胞株を示し、Y軸はABLに対するcDNA量を示す。磁気ビーズによる陽性選択によりCD34+細胞を得た。
図18A及び18Bは、化合物(1−1)処置時のBRDタンパク質及びc−MYCのダウンレギュレーションを説明する。細胞溶解物及びcDNA抽出物を、異なるALL細胞株及びAML細胞株から得た。タンパク質レベル及びcDNAレベルは、イムノブロット(図18A)及びQT−PCR(図17B)により研究した。
図19A〜19Dは、化合物(1−1)での処置後のBRD2、BRD3、BRD4のcDNA動態を説明する。cDNA抽出物を異なるALL細胞株及びAML細胞株から得た。発現レベルをQT−PCRにより研究した。
図20は、化合物(1−1)の初代細胞に対する影響を説明する。磁気抗体標識ビーズによる陽性選択によりCD34+臍帯血細胞及びCD34−臍帯血細胞及びAML細胞を得た。細胞を、異なる用量の化合物(1−1)で処理して、24時間後に回収した。Y軸はアネキシンV及びPI吸収の有無を示す。
図21A〜21Tは、10nM及び100nMの濃度での化合物(1−1)への短い曝露の96時間後でのALL細胞株(Jurkat及びRS4−11)及びAML細胞株(HL60及びK562)におけるアポトーシスのフローサイトメトリー分析を説明する。
図22A〜22Lは、0nM、1nM及び10nMの濃度での化合物(1−1)への短い曝露後のAML細胞株HL60におけるアポトーシスのフローサイトメトリー分析を説明する。
図23A、23B及び23Cは、図22A〜22LのHL60細胞株のアポトーシスを説明する。
図24A及び24Bは、HL60細胞株及びK562細胞株のアポトーシスを説明する。
図25A及び25Bは、KG1細胞株及びKG1a細胞株のアポトーシスを説明する。
図26A及び26Bは、Jurkat細胞株及びRS4−11細胞株のアポトーシスを説明する。
図27は、TOM1細胞株のアポトーシスを説明する。
図28は、Jurkat細胞株から薬剤を洗い出した後のアポトーシスのプロットである。
図29A及び29Bは、HL60細胞及びK562細胞から薬剤を洗い出した後のアポトーシスのプロットである。
図30A及び30Bは、Jurkat細胞及びRS4−11細胞から薬剤を洗い出した後のアポトーシスのプロットである。
図31A及び31Bは、3種のALL細胞株(Jurkat、RS4−11、TOM−1)及び4種のAML細胞株(HL60、K562、KG1及びKG1a)でのMTTアッセイを説明する。
図32A〜32Cは、化合物(1−1)での処置後のAML患者におけるアポトーシスパターンを示す。
図33A〜33Gは、AML患者におけるアポトーシスパターンを示す。
図34A及び34Bは、AML患者におけるアポトーシスパターンを示す。
図35は、化合物(1−1)での処置時のAML細胞株及びALL細胞株におけるc−MYC動態を説明する。
図36は、化合物(1−1)での処置時のAML細胞株及びALL細胞株におけるBRD4動態を説明する。
図37は、化合物(1−1)での処置時のAML細胞株及びALL細胞株におけるBRD2動態を説明する。
図38は、化合物(1−1)での処置時のAML細胞株及びALL細胞株におけるBRD3動態を説明する。
図39A〜39Cは、AML細胞株及びALL細胞株において異なる用量の化合物(1−1)により誘導されるアポトーシスの動態を説明する。化合物(1−1)の用量を増加させて処置した後72時間で骨髄細胞株及びリンパ細胞株を回収した。アポトーシス細胞は、アネキシンV+PI吸収の有無として定義される。X軸は化合物(1−1)の用量を示し、Y軸はアポトーシス細胞の割合を示す。結果は、化合物(1−1)での処置時のAML細胞株及びALL細胞株における3つの独立した実験の繰り返しからの平均±SDで示す。
図40A〜40Hは、白血病細胞株において化合物(1−1)(OTX015)で誘導された細胞周期の変化を説明する。図40A〜40Fは、48時間、OTX015の用量を増加させて処置したRS4−11細胞のフローサイトメトリーのプロファイルの代表的なヒストグラムを示す。細胞は、細胞周期分析の前にPIで1時間インキュベートした。全てのAML細胞株及びALL細胞株での細胞周期の変化は、図40Gにおいて48時間で分析された。X軸は細胞株を示し、Y軸はG1相及びS相における細胞の割合を示す。結果は、3つの独立した実験の繰り返しからの平均±SDで示す。
図41A及び41Bは、白血病細胞株におけるブロモドメインの遺伝子発現及び化合物(1−1)(OTX015)による調節を説明する。異なる細胞株は、RQ−PCRで検出されるように、異なるレベルでBRD2、BRD3及びBRD4を発現し、bcr−abl駆動型細胞株BV−173及びK562は、最も低い遺伝子発現レベルを有した(図41A)。
図41C−41Hは、48時間における250nM及び500nMそれぞれでのOTX015の処置によるcDNAレベルのBRD4、BRD2及びBRD3の調節を説明する。KG1、K562及びJurkatにおけるBRD3及びBRD2の有意なアップレギュレーション、及びKG1及びHL60におけるBRD2の増加が検出された。ベースラインレベルでの白血病細胞株におけるBRD4、BRD2及びBRD3の遺伝子発現レベルを、図41A及び41Bに示す。250nM及び500nMのOTX015に対する48時間曝露後の遺伝子発現レベル:BRD4のもの(図41C及び41D)、BRD3のもの(図41E及び41F)及びBRD2のもの(図41G及び41H)。X軸は細胞株を示し、Y軸はABLに対するcDNA量を示す。結果を2つの独立した実験の繰り返しからの平均±SDで示す。
図42A〜42Dは、すべての細胞株においてc−MYCのダウンレギュレーションを誘導するOTX015を説明する。異なる白血病細胞株におけるc−MYCの基礎遺伝子発現レベルを図42A及び42Bに示す。異なる白血病細胞株を、250nM及び500nMのOTX015で処理した。48時間にてQT−PCRにより検出されたc−MYCダウンレギュレーションを図42C及び42Dに示す。
図43A〜43Lは、BRD4、BRD2及びBRD3並びにc−MYCに対するタンパク質レベルのOTX015の効果を説明する。選択されたAML細胞株HL60では、BRD4及びBRD3が、500nMでの72時間OTX015曝露後に影響を受けないままであり、c−MYCの一時的なダウンレギュレーションが、処置24時間後に観察された(図43A〜43C)。その一方で、殆どの抵抗性AML細胞株K562は、24時間曝露後に始まるBRD4、BRD3及びc−MYCのダウンレギュレーションを示した(図43D〜43F)。感受性ALL細胞株については、Jurkatは、48時間及び72時間でc−MYCのダウンレギュレーションを示した(図43G〜43I)。その一方で、BRD4、BRD3及びc−MYCは、RS4−11で影響を受けないままであった(図4JD〜43L)。AML細胞株のHL60、K562(図43A〜43C;図43D〜43F)並びにALL細胞株のJurkat及びRS4−11(図43G〜43I;図4JD〜43L)を、500nMのOTX015で処理し、対応のDMSOに曝露した対照と比較した。指定の時点で、タンパク質を抽出し、ゲル電気泳動後にBRD4、BRD3、BRD2又はc−MYC抗体でイムノブロットした。ブロットにより、ODYSSEY(LiCor)技術を用いてBRD4、BRD3、c−MYC及びGAPDHそれぞれを可視化した。その技術は、GAPDH又はBRD2に関連するタンパク質の正確な定量化を可能にし、化学発光により可視化した。この技術はタンパク質の定量化を可能にしなかった。3つのうち1つの代表的な実験を示す。
図44A〜44Dは、主な患者の細胞に対するOTX015の効果を示す。AML患者からの5つの試料、及び1つのALLのPh+患者を含む2つのALL患者の試料を、OTX015を用いてex vivoで処理した。患者の特徴を図44Dに示す。OTX015は、35〜85%の範囲内の様々な程度で主なAML患者の試料においてアポトーシスを誘導した(図6)。Ph+のALL患者は抵抗性があるようであった。OTX015は、AML患者及びALL患者の初代細胞でアポトーシスを誘導した。単核細胞は、AML患者及びALL患者の骨髄(BM)又は末梢血(PB)から得た。細胞を250nM及び500nMのOTX015で72時間曝露し、アポトーシスをアネキシンV及びPI染色で評価した。結果を1つの実験の繰り返しからの平均±SDで示す。
図45A〜45Eは、患者試料におけるタンパク質レベルでのc−MYCの調節を説明する。タンパク質抽出物を、250nM及び500nMのOTX015それぞれでのex vivo処置の際における患者5の骨髄(BM)細胞から得た(図44D;図45A−45D)。BM細胞は、OTX015に対する72時間曝露後にc−MYCのダウンレギュレーションを示した。患者5の骨髄細胞を250nM及び500nMのOTX015で処置し、対応する濃度のDMSOに曝露した対照と比較した。タンパク質を72時間抽出し、ゲル電気泳動後に適切なc−MYC抗体でイムノブロットした。ブロットをODYSSEY(LiCor)技術で可視化した。その技術は、GAPDHに関連するタンパク質の正確な定量化を可能にする(図45A)。ABLに対するcMYCの発現レベルを、24、48及び72時間の3時点でのRQ−PCRにより認識した(図45B)。図45Bの結果を繰り返しからの平均±SDで示す。
図46は、OTX015の生物学的効果の概要を説明する。
図47A〜47Dは、RQ−PCR分析で評価される患者試料におけるBRD2、BRD3及びBRD4の基本的な遺伝子発現を説明する。ALL患者のうち、Ph+のALL患者は、低いBRD発現レベルを示した(図47A及び47B;図47Eの患者3ないし6)。その一方で、AML患者のうちBRD発現レベルはより不均一であった(図47C及び47D)。
図47Eは、試料を評価して、図47A〜47Dで結果を与えた患者の特徴の概要を示す。
発明の詳細な説明
本主題は、以下において、代表的な実施形態が示される添付の図面及び実施例を参照することによって、直ちにより十分に開示されるであろう。しかしながら、本主題は異なる形式で実施可能であり、本明細書に明記される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、開示し、当業者が実施可能とするために提供される。別段の定めがない限り、本明細書で用いられている全ての技術用語及び科学用語は、主題が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同様の意味を有する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許及びその他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。
本明細書に記載されている本発明は、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、BCR−ABL陽性急性リンパ芽球性白血病及びCD34陽性急性骨髄性白血病の治療方法を提供する。詳細な説明は、様々な部分:I.チエノトリアゾロジアゼピン化合物;II.製剤;III.剤形;IV.用量;V.プロセス;及びVI.実施例における開示を明らかにする。当業者には、治療方法の様々な実施形態のそれぞれが、本明細書に記載のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、製剤、剤形、用量及びプロセスの様々な実施形態を含むということが理解されるであろう。
ある形態では、本発明は、非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物及びその医薬上許容される塩又はその水和物;及び医薬上許容されるポリマーを含む固体分散体を形成する医薬上許容される量の本明細書に記載のチエノトリアゾロジアゼピン化合物を含む組成物を患者に投与する工程を含む急性リンパ芽球性白血病の治療方法を提供する。このような固体分散体の様々な実施形態が、本明細書で開示され、それに従って用いることができる。
ある形態では、本発明は、非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物及びその医薬上許容される塩又はその水和物;及び医薬上許容されるポリマーを含む固体分散体を形成する、医薬上許容される量の本明細書に記載のチエノトリアゾロジアゼピン化合物を含む組成物を患者に投与する工程を含む急性骨髄性白血病の治療方法を提供する。このような固体分散体の様々な実施形態が、本明細書で開示され、それに従って用いることができる。
ある形態では、本発明は、本明細書に記載の様々な実施形態に従う医薬上許容される量のチエノトリアゾロジアゼピン化合物を含む組成物を患者に投与する工程を含むBCR−ABL陽性急性リンパ芽球性白血病の治療方法を提供する。BCR−ABL陽性急性リンパ芽球性白血病の治療方法のいくつかの実施形態では、本明細書に記載のチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物及びその医薬上許容される塩又はその水和物;及び医薬上許容されるポリマーを含む固体分散体を形成する。このような固体分散体の様々な実施形態が、本明細書で開示され、それに従って用いることができる。
ある形態では、本発明は、本明細書に記載の様々な実施形態に従う医薬上許容される量のチエノトリアゾロジアゼピン化合物を含む組成物を患者に投与する工程を含むCD34陽性急性骨髄性白血病の治療方法を提供する。CD34陽性急性骨髄性白血病の治療方法のいくつかの実施形態では、本明細書に記載のチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物及びその医薬上許容される塩又はその水和物;及び医薬上許容されるポリマーを含む固体分散体を形成する。このような固体分散体の様々な実施形態が、本明細書で開示され、それに従って用いることができる。
(I.チエノトリアゾロジアゼピン化合物)
ある実施形態では、本発明の製剤で用いられるチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、式(1):
[式中、R1は、1〜4の炭素数を有するアルキルであり、R2は、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子又はヒドロキシル基で置換されていてもよい1〜4の炭素数を有するアルキルであり、R3は、ハロゲン原子;ハロゲン原子、1〜4の炭素数を有するアルキル、1〜4の炭素数を有するアルコキシ又はシアノで置換されていてもよいフェニル;−NR5−(CH2)m−R6(式中、R5は、水素原子又は1〜4の炭素数を有するアルキルであり、mは、0〜4の整数であり、R6は、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。);又は−NR7−CO−(CH2)n−R8(式中、R7は、水素原子又は1〜4の炭素数を有するアルキルであり、nは、0〜2の整数であり、R8は、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。)であり、R4は、−(CH2)a−CO−NH−R9(式中、aは、1〜4の整数であり、R9は、1〜4の炭素数を有するアルキル;1〜4の炭素数を有するヒドロキシアルキル;1〜4の炭素数を有するアルコキシ;又は1〜4の炭素数を有するアルキル、1〜4の炭素数を有するアルコキシ、アミノ又はヒドロキシル基で置換されていてもよいフェニル又はピリジルである。)又は−(CH2)b−COOR10(式中、bは、1〜4の整数であり、R10は、1〜4の炭素数を有するアルキルである。)である。]
で表され、その任意の塩、その異性体、そのエナンチオマー、そのラセミ化合物、その水和物、その溶媒和物、その代謝物及びその多形体を含む。
ある実施形態では、適切なアルキル基としては、1個の炭素原子から4個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル基が挙げられる。ある実施形態では、適切なアルキル基としては、1個の炭素原子から3個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル基が挙げられる。ある実施形態では、適切なアルキル基としては、1個の炭素原子から2個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル基が挙げられる。ある実施形態では、代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル及び2−メチル−2−プロピルが挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載のチエノトリアゾロジアゼピン化合物の医薬上許容される塩、溶媒和物(水和物を含む)及び同位体標識体を提供する。ある実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物の医薬上許容される塩としては、無機酸類と形成する酸付加塩が挙げられる。ある実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピンの医薬上許容される無機酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸の塩が挙げられる。ある実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物の医薬上許容される塩としては、有機酸類と形成する酸付加塩が挙げられる。ある実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピンの医薬上許容される有機酸付加塩としては、酒石酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、マレイン酸、コハク酸、カンファースルホン酸、イソチオン酸、粘液酸、ゲンチジン酸、イソニコチン酸、サッカリン酸、グルクロン酸、フロ酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸及びアリールスルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸及び4−メチルベンゼンスルホン酸)の塩が挙げられる。
式(1)の代表的なチエノトリアゾロジアゼピン化合物としては、以下の表Aで挙げられるチエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)〜(1−18)が挙げられるが、これらに限定されない。
表Aの化合物(1−1)は、OTX−015又はY803として本明細書で言及されるだろう。
表A:代表的な本発明の化合物:
いくつかの実施形態では、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物としては、(i) (S)−2−[4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアゾロ−[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル]−N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド又はその二水和物、(ii) メチル(S)−{4−(3’−シアノビフェニル−4−イル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリ−アゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテート、(iii) メチル(S)−{2,3,9−トリメチル−4−(4−フェニルアミノフェニル)−6H−チエノ[3,2−f][1,2,4]トリアズ−オロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテート;及び(iv) メチル(S)−{2,3,9−トリメチル−4−[4−(3−フェニルプロピオニルアミノ)フェニル]−6H−チエノ[3,2−f−][1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル}アセテートが挙げられる。
いくつかの実施形態において、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物としては、(S)−2−[4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,−4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル]−N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド二水和物が挙げられる。
いくつかの実施形態において、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物としては、(S)−2−[4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノ[3,2−f][1,2,−4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル]−N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミドが挙げられる。
(II.製剤)
式(1)の化合物は、一般的な投与及びガレヌス組成物の調製が非常にとりわけ困難である。特に、薬物の生物学的利用能の特定の問題及び患者間及び患者内の用量反応の違いの特定の問題を含む。化合物のほぼ水に溶けない性質から従来にない剤形の開発が必要とされている。
これまでに、式(1)の化合物を、担体アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル−トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド共重合体(オイドラギット RS,ローム社製)を用いて固体分散体として製剤化して、炎症性腸疾患(例えば潰瘍性大腸炎及びクローン病)の治療のために腸管下部で優先的に医薬成分を放出する経口製剤が提供できることが明らかとなった(米国特許出願20090012064 A1(2009年1月8日公開))。動物実験を含む様々な実験により、炎症性腸疾患において、病変における薬剤の放出及び炎症性病変に対するその直接的な作用が、胃腸管から循環への薬剤の吸収と比較してより重要であることが明らかとなった。
今回、意外なことに、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、その医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー異性体及びその同位体標識体は、医薬上許容されるポリマーと共に、固体分散体として製剤化して、炎症性腸疾患以外の疾患の治療のための胃腸管から循環への医薬成分の高吸収をもたらす経口製剤を提供することができるということが明らかとなった。イヌ及びヒト両方の研究によって、これらの固体分散体は、これまでに炎症性腸疾患の治療のために開発されたオイドラギット固体分散体製剤と比較して、経口生物学的利用能が高いことが確認された。
固体分散体は、難水溶性薬剤の経口生物学的利用能を向上させる方策である。
本明細書で用いられる用語「固体分散体」とは、少なくとも2つの異なる成分である一般的な親水性担体及び疎水性薬剤の式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物を含む固体生成物の一群を言う。分散体中の薬剤の分子配置に基づいて、6つの異なる形態の固体分散体に区分することができる。一般的に、固体分散体は、単純共融混合物、固体溶液、ガラス溶液及び懸濁液、並びに結晶質担体中の非晶質沈殿物として分類される。さらに、特定の組み合わせとしては、例えば、同一試料内で、ある分子がクラスターとして存在する一方で、ある分子が分子として分散しているような組み合わせがあり得る。
ある実施形態では、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物が、非晶質粒子(クラスター)内で分子として分散していてもよい。他の実施形態では、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物が、結晶質粒子として分散していてもよい。ある実施形態では、担体が結晶質であってもよい。他の実施形態では、担体が非晶質であってもよい。
ある実施形態では、本発明は、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体;及び医薬上許容されるポリマーの固体分散体を含む医薬組成物を提供する。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーは、ヒプロメロースアセテートスクシナート(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート又はHPMCASとも言う)である。ある実施形態では、分散体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)に対して1:3ないし1:1の重量比でチエノトリアゾロジアゼピン化合物を有する。ある実施形態では、少なくともいくらかのチエノトリアゾロジアゼピン化合物が、固体分散体中で均質に分散している。他の実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。いくつかの実施形態では、固体分散体は、ガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。いくつかの実施形態では、単一のTgは、130℃ないし140℃の範囲内である。他のこのような実施形態では、単一のTgは、約135℃である。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体は、75%の相対湿度、40℃で少なくとも1か月間曝露された。いくつかの実施形態では、固体分散体は、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。本出願の目的において「実質的に含まない」とは、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する2シータの21°近傍の非晶質のハローを超える回析線が存在しないことを意味するものとする。いくつかの実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)としては、9%アセチル/11%スクシノイルを有するMグレード(例、5μmの平均粒径を有するHPMCAS(即ち、HPMCAS−MF,微粉末グレード)、又は1mmの平均粒径を有するHPMCAS(即ち、HPMCAS−MG,顆粒グレード))、12%アセチル/6%スクシノイルを有するHグレード(例、5μmの平均粒径を有するHPMCAS(即ち、HPMCAS−HF,微粉末グレード)、又は1mmの平均粒径を有するHPMCAS(即ち、HPMCAS−HG,顆粒グレード))、及び8%アセチル/15%スクシノイルを有するLグレード(例、5μmの平均粒径を有するHPMCAS(即ち、HPMCAS−LF,微粉末グレード)、又は1mmの平均粒径を有するHPMCAS(即ち、HPMCAS−LG,顆粒グレード))が挙げられ得る。
ある実施形態では、本発明は、医薬上許容されるポリマー中、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体の固体分散体を含む医薬組成物を提供する。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーは、ポリビニルピロリドン(ポビドン又はPVPとも言う)である。ある実施形態では、分散体は、PVPに対して1:3ないし1:1の重量比でチエノトリアゾロジアゼピン化合物を有する。ある実施形態では、少なくともいくらかのチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。他の実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。いくつかの実施形態では、固体分散体は、ガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。いくつかの実施形態では、単一のTgは、175℃ないし約185℃の範囲内である。他のこのような実施形態では、単一のTgは、約179℃である。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体は、75%の相対湿度、40℃で少なくとも1か月間曝露された。いくつかの実施形態では、固体分散体は、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。本出願の目的において「実質的に含まない」とは、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する2シータの21°近傍の非晶質のハローを超える回折線が存在しないことを意味するものとする。いくつかの実施形態では、ポリビニルピロリドンは、約2,500の分子量(Kollidon(登録商標)12PF,2,000〜3,000の範囲の量平均分子量)、約9,000の分子量(Kollidon(登録商標)17PF,7,000〜11,000の範囲の量平均分子量)、約25,000の分子量(Kollidon(登録商標)25,28,000〜34,000の範囲の量平均分子量)、約50,000の分子量(Kollidon(登録商標)30,44,000〜54,000の範囲の量平均分子量)、及び約1,250,000の分子量(Kollidon(登録商標)90又はKollidon(登録商標)90F,1,000,000〜1,500,000の範囲の量平均分子量)を有していてもよい。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、非晶質型の式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体及び医薬上許容されるポリマーの固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーは、ヒプロメロースアセテートスクシナートである。ある実施形態では、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物のヒプロメロースアセテートスクシナートに対する重量比は1:3から1:1の範囲内である。ある実施形態では、少なくともいくらかのチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。他の実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。いくつかの実施形態では、固体分散体は、ガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。いくつかの実施形態では、単一のTgは、130℃から140℃の範囲内である。他のこのような実施形態では、単一のTgは、約135℃である。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体は、75%の相対湿度、40℃で少なくとも1か月間曝露された。いくつかの実施形態では、固体分散体は、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。本出願の目的において「実質的に含まない」とは、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する2シータの21°近傍の非晶質のハローを超える回折線が存在しないことを意味するものとする。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、非晶質型の式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体及び医薬上許容されるポリマーの固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーは、ポリビニルピロリドンである。ある実施形態では、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物のポリビニルピロリドンに対する重量比は、1:3から1:1の範囲内である。ある実施形態では、少なくともいくらかのチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。他の実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。いくつかの実施形態では、固体分散体は、ガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。いくつかの実施形態では、単一のTgは、175℃から約185℃の範囲内である。他のこのような実施形態では、単一のTgは、約179℃である。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体は、75%の相対湿度、40℃で少なくとも1か月間曝露された。いくつかの実施形態では、固体分散体は、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。本出願の目的において「実質的に含まない」とは、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する2シータの21°近傍の非晶質のハローを超える回折線が存在しないことを意味するものとする。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、結晶質型の式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体及び医薬上許容されるポリマーの固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーは、ヒプロメロースアセテートスクシナートである。ある実施形態では、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物のヒプロメロースアセテートスクシナートに対する重量比は1:3から1:1の範囲内である。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、結晶質型の式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体及び医薬上許容されるポリマーの固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーはポリビニルピロリドンである。ある実施形態では、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物のポリビニルピロリドンに対する重量比は、1:3から1:1の範囲内である。
いくつかの実施形態では、固体分散体を含む医薬組成物は、噴霧乾燥により調製される。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体及び薬学的に許容されるポリマーの噴霧乾燥した固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーは、ヒプロメロースアセテートスクシナートである。ある実施形態では、化合物(1)のヒプロメロースアセテートスクシナートに対する重量比は、1:3から1:1の範囲内である。ある実施形態では、少なくともいくらかのチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。他の実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。いくつかの実施形態では、固体分散体は、ガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。いくつかの実施形態では、単一のTgは、130℃から140℃の範囲内である。他のこのような実施形態では、単一のTgは、約135℃である。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体は、75%の相対湿度、40℃で少なくとも1か月間曝露された。いくつかの実施形態では、固体分散体は、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。本出願の目的において「実質的に含まない」とは、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する2シータの21°近傍の非晶質のハローを超える回折線が存在しないことを意味するものとする。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体及び医薬上許容されるポリマーの噴霧乾燥した固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーはポリビニルピロリドンである。ある実施形態では、化合物(1)のポリビニルピロリドンに対する重量比は1:3から1:1の範囲内である。ある実施形態では、少なくともいくらかのチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。他の実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。いくつかの実施形態では、固体分散体は、ガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。いくつかの実施形態では、単一のTgは、175℃から185℃の範囲内である。他のこのような実施形態では、単一のTgは、約179℃である。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体は、75%の相対湿度、40℃で少なくとも1か月間曝露された。いくつかの実施形態では、固体分散体は、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。本出願の目的において「実質的に含まない」とは、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する2シータの21°近傍の非晶質のハローを超える回折線が存在しないことを意味するものとする。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、非晶質型の式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体、及び医薬上許容されるポリマーの噴霧乾燥した固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーは、ヒプロメロースアセテートスクシナートである。ある実施形態では、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物のヒプロメロースアセテートスクシナートに対する重量比は、1:3から1:1の範囲内である。ある実施形態では、少なくともいくらかのチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。他の実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。いくつかの実施形態では、固体分散体は、ガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。いくつかの実施形態では、単一のTgは、130℃から140℃の範囲内である。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体は、75%の相対湿度、40℃で少なくとも1か月間曝露された。他のこのような実施形態では、単一のTgは、約135℃である。いくつかの実施形態では、固体分散体は、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。本出願の目的において「実質的に含まない」とは、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する2シータの21°近傍の非晶質のハローを超える回折線が存在しないことを意味するものとする。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、非晶質型の式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体、及び医薬上許容されるポリマーの噴霧乾燥した固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーは、ポリビニルピロリドンである。ある実施形態では、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物のポリビニルピロリドンに対する重量比は、1:3から1:1の範囲内である。ある実施形態では、少なくともいくらかのチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。他の実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。いくつかの実施形態では、固体分散体は、ガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。いくつかの実施形態では、単一のTgは、175℃から185℃の範囲内である。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体は、75%の相対湿度、40℃で少なくとも1か月間曝露された。他のこのような実施形態では、単一のTgは、約179℃である。いくつかの実施形態では、固体分散体は、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。本出願の目的において「実質的に含まない」とは、式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物に関連する2シータの21°近傍の非晶質のハローを超える回折線が存在しないことを意味するものとする。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、結晶質型の式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体、及び医薬上許容されるポリマーの噴霧乾燥した固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーは、ヒプロメロースアセテートスクシナートである。ある実施形態では、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物のヒプロメロースアセテートスクシナートに対する重量比は、1:3から1:1の範囲内である。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、結晶質型の式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体、及び医薬上許容されるポリマーの噴霧乾燥した固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーは、ポリビニルピロリドンである。ある実施形態では、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物のポリビニルピロリドンに対する重量比は、1:3から1:1の範囲内である。
ある好ましい実施形態において、本発明は、化合物(1−1):
の2−[(6S)−4−(4−クロロフェニル)−2,3,9−トリメチル−6H−チエノl[3,2−f]−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a][1,4]ジアゼピン−6−イル]−N−(4−ヒドロキシフェニル)アセトアミド二水和物又は医薬上許容される塩、溶媒和物(水和物を含む)、ラセミ化合物、エナンチオマー、異性体、又は同位体標識体、及び医薬上許容されるポリマーの固体分散体を含む医薬組成物を提供する。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーはHPMCASである。ある実施形態では、分散体は、1:3ないし1:1の重量比で化合物(1−1)及びHPMCASを有する。ある実施形態では、少なくともいくらかのチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。他の実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。ある実施形態では、固体分散体は噴霧乾燥される。いくつかの実施形態では、固体分散体は、ガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。いくつかの実施形態では、単一のTgは、130℃から140℃の範囲内である。他のこのような実施形態では、単一のTgは、約135℃である。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体は、75%の相対湿度、40℃で少なくとも1か月間曝露された。いくつかの実施形態では、固体分散体は、結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。本出願の目的において「実質的に含まない」とは、結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)に関連する2シータの21°近傍の非晶質のハローを超える回折線が存在しないことを意味するものとする。
他の実施形態では、医薬組成物は、化合物(1−1)又は医薬上許容される塩、溶媒和物(水和物を含む)、ラセミ化合物、エナンチオマー、異性体、又は同位体標識体;及び医薬上許容されるポリマーの固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーはPVPである。ある実施形態では、分散体が、1:3〜1:1の重量比で化合物(1−1)及びPVPを有する。ある実施形態では、少なくともいくらかのチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。他の実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。ある実施形態では、固体分散体は噴霧乾燥される。いくつかの実施形態では、固体分散体は、ガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。いくつかの実施形態では、単一のTgは、175℃から185℃の範囲内である。他のこのような実施形態では、単一のTgは、約179℃である。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体は、75%の相対湿度、40℃で少なくとも1か月間曝露された。いくつかの実施形態では、固体分散体は、結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。本出願の目的において「実質的に含まない」とは、結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)に関連する2シータの21°近傍の非晶質のハローを超える回折線が存在しないことを意味するものとする。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、非晶質型のチエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体;及び医薬上許容されるポリマーの固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーはHPMCASである。ある実施形態では、分散体は、1:3ないし1:1の重量比で化合物(1−1)及びHPMCASを有する。ある実施形態では、少なくともいくらかのチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。他の実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。ある実施形態では、固体分散体は噴霧乾燥される。いくつかの実施形態では、固体分散体は、ガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。いくつかの実施形態では、単一のTgは、130℃から140℃の範囲内である。他のこのような実施形態では、単一のTgは、約135℃である。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体は、75%の相対湿度、40℃で少なくとも1か月間曝露された。いくつかの実施形態では、固体分散体は、結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。本出願の目的において「実質的に含まない」とは、結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)に関連する2シータの21°近傍の非晶質のハローを超える回折線が存在しないことを意味するものとする。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、非晶質型のチエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体;及び医薬上許容されるポリマーの固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーはPVPである。ある実施形態では、分散体は、1:3ないし1:1の重量比で化合物(1−1)及びPVPを有する。ある実施形態では、少なくともいくらかのチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。他の実施形態では、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体中で均質に分散している。ある実施形態では、固体分散体は噴霧乾燥される。いくつかの実施形態では、固体分散体は、ガラス転移温度(Tg)の単一の変曲点を示す。いくつかの実施形態では、単一のTgは、175℃ないし185℃の範囲内である。他のこのような実施形態では、単一のTgは、約189℃である。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体は、75%の相対湿度、40℃で少なくとも1か月間曝露された。いくつかの実施形態では、固体分散体は、結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)に関連する回折線を実質的に含まない粉末X線回折パターンを示す。本出願の目的において「実質的に含まない」とは、結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)に関連する2シータの21°近傍の非晶質のハローを超える回折線が存在しないことを意味するものとする。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、結晶質型のチエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体;及び医薬上許容されるポリマーの固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーは、HPMCASである。ある実施形態では、分散体は、1:3ないし1:1の重量比で化合物(1−1)及びHPMCASを有する。ある実施形態では、固体分散体は噴霧乾燥される。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、結晶質型のチエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体;及び医薬上許容されるポリマーの固体分散体を含む。ある実施形態では、医薬上許容されるポリマーはPVPである。ある実施形態では、分散体は、1:3ないし1:1の重量比で化合物(1−1)及びPVPを有する。ある実施形態では、固体分散体は噴霧乾燥される。
本明細書に記載の本発明の固体分散体は、経口投与の際に特に有利な性質を示す。固体分散体の有利な性質の例としては、動物又はヒトにおける標準的な生物学的利用能試験で投与された場合の、一定の高いレベルの生物学的利用能が挙げられるが、これに限定されない。本発明の固体分散体としては、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物及びポリマー及び添加剤を含む固体分散体が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、固体分散体は、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物の薬剤の水及び殆どの水性媒体に対する溶解度がわずかであることから、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物を添加剤と単に混合するだけでは成し遂げられない、血流中への式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物の吸収を達成することができる。式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物又はチエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)の生物学的利用能は、さまざまなin vitro及び/又はin vivo研究を用いて測定され得る。in vivo研究は、例えば、ラット、イヌ又はヒトを用いて行ってもよい。
生物学的利用能は、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物又はチエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)の血清濃度又は血漿濃度を、縦座標(Y軸)に、横座標(X軸)の時間に対してプロットすることにより得られる曲線下面積(AUC)値によって測定してもよい。次いで、固体分散体の式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物又はチエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)のAUC値を、ポリマーを伴わない当量濃度の式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物又は結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)のAUC値と比較する。いくつかの実施形態では、固体分散体は、イヌに経口投与した場合に、等量の式Iの結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物を含む対照組成物をイヌに静脈投与することによって提供される対応するAUC値の少なくとも0.4倍、0.5倍、0.6倍、0.8倍、1.0倍から選ばれる曲線下面積(AUC)値を提供する。
生物学的利用能は、胃の環境及び腸の環境のpH値を模したin vitro試験により測定してもよい。測定は、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物又はチエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)の固体分散体を、1.0〜2.0の範囲のpHを有する水性のin vitro試験培地に分散させ、次いで、pHを、対照in vitro試験培地中で5.0及び7.0の範囲のpHに調整することにより行ってもよい。式(1)の非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物又は非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)の濃度は、pH調整に続く最初の二時間はいつでも測定してもよい。いくつかの実施形態では、固体分散体は、5.0〜7.0の範囲のpHの水性in vitro試験培地中で、ポリマーを伴わない式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物又は結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)の濃度に比べて、少なくとも5倍濃い濃度、少なくとも6倍濃い濃度、少なくとも7倍濃い濃度、少なくとも8倍濃い濃度、少なくとも9倍濃い濃度、又は少なくとも10倍濃い濃度から選ばれる、式(1)の非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物又は非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)の濃度を提供する。
他の実施形態では、1.0〜2.0のpHを有する水性in vitro試験培地中に置かれた固体分散体の式(1)の非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物又は非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)の濃度は、ポリマーを伴わない式(1)の結晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物の濃度と比べて少なくとも40%、少なくとも50%高く、少なくとも60%、少なくとも70%;少なくとも80%である。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体のポリマーはHPMCASである。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体のポリマーは、PVPである。
他の実施形態では、固体分散体の式(1)の非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物又は非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)の濃度は、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、及びヒプロメロースフタレート及びアクリル酸エチル−メタクリル酸メチル−トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド共重合体からなる群から選ばれる医薬上許容されるポリマーの固体分散体の式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物の濃度と比べて、それぞれの固体分散体を1.0〜2.0のpHを有する水性in vitro試験培地に置いた場合に、少なくとも40%、少なくとも50%高く、少なくとも60%、少なくとも70%;少なくとも80%である。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体のポリマーは、HPMCASである。いくつかのこのような実施形態では、固体分散体のポリマーは、PVPである。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の固体分散体は、湿度及び温度に長時間曝された場合に、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物又はチエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)の再結晶化に対して安定性を示す。ある実施形態では、非晶質のままである式(1)の非晶質チエノトリアゾロジアゼピン化合物又はチエノトリアゾロジアゼピン化合物(1−1)の濃度は、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%及び少なくとも99%から選ばれる。
(III.剤形)
本発明の固体分散体で用いることができる適切な剤形としては、カプセル剤、錠剤、ミニ錠剤、ビーズ剤、ビードレット剤、ペレット剤、顆粒剤、粒剤及び散剤が挙げられるが、これらに限定されない。適切な剤形はコーティングされていてもよく、例えば、腸溶コーティングでコーティングされていてもよい。適切なコーティング剤には、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリメチルアクリル酸コポリマー又はヒドロキシルプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)が含まれてもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、例えば、同一試料において、本発明のチエノトリアゾロジアゼピンのある分子は、クラスターとして存在してよい一方で、ある分子は、担体と共に分子として分散しているような特定の組み合わせがなされ得る。
いくつかの実施形態では、本発明の固体分散体は、錠剤、カプレット剤又はカプセル剤として製剤化されてもよい。1つのいくつかの実施形態では、本発明の固体分散体は、ミニ錠剤又は口腔内に流し込む顆粒剤、又は構成用経口散剤として製剤化してもよい。いくつかの実施形態では、本発明の固体分散体は、他の賦形剤(例、再結晶/沈殿阻害ポリマー、矯味成分等)と組み合わせて適切な希釈剤中で分散させ、すぐに使える懸濁製剤を得ることができる。いくつかの実施形態では、本発明の固体分散体 は、小児治療のために製剤化してもよい。
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、経口投与として製剤化される。ある実施形態では、医薬組成物は、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、又はその医薬上許容される塩、その溶媒和物(水和物を含む)、そのラセミ化合物、そのエナンチオマー、その異性体、又はその同位体標識体;及びポリマー担体を含む、本明細書に記載の様々な実施形態に従う固体分散体を含む。ある実施形態では、さらに、医薬組成物は、1以上の添加剤(例えば崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、結合剤及びフィラー)を含む。
医薬組成物で用いるための適切な医薬上許容される滑沢剤及び医薬上許容される流動促進剤の例としては、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、デンプン、タルク、三塩基性リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール、粉末セルロース、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸、水素化ひまし油、モノステアリン酸グリセリル及びフマル酸ステアリルナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
医薬組成物で用いるための適切な医薬上許容される結合剤の例としては、デンプン;セルロース及びその誘導体、例えば、微結晶性セルロース(例、FMCのAVICEL PH)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシルプロピルメチルセルロース(HPMC、例、ダウ・ケミカル製のMETHOCEL);スクロース、デキストロース、コーンシロップ;多糖類;及びゼラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
医薬組成物で用いられる適切な医薬上許容されるフィラー及び医薬上許容される希釈剤の例としては、粉砂糖、圧縮糖、デキストレート、デキストリン、デキストロース、ラクトース、マンニトール、微結晶性セルロース(MCC)、粉末セルロース、ソルビトール、スクロース及びタルクが挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、賦形剤は医薬組成物において1つ以上の機能を果たしてもよい。例えば、フィラー又は結合剤は、崩壊剤、流動促進剤、抗被着剤、滑沢剤、甘味料等であってもよい。
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、さらに、酸化防止剤(例、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシルアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、α−トコフェロール、没食子酸プロピル及びフマル酸)、抗菌剤、酵素阻害剤、安定剤(例、マロン酸)及び/又は保存剤のような添加剤又は成分を含んでいてもよい。
一般的に、本発明の医薬組成物は、任意の適切な固形剤に製剤化してもよい。いくつかの実施形態では、本発明の固体分散体は、投与のために、例えば、カプセル剤又は錠剤のような単位剤形、又は顆粒剤又は粒剤又は散剤のような複粒子系で調合される。
ある実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の固体分散体の様々な実施形態に従う、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)の固体分散体を含み、チエノトリアゾロジアゼピン化合物は、固体分散体において非晶質であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)に対して1:3ないし1:1の重量比でチエノトリアゾロジアゼピン化合物を有し;45〜50重量%のラクトース一水和物;35〜40重量%の微結晶性セルロース;4〜6重量%のクロスカルメロースナトリウム;0.8〜1.5重量%のコロイド状二酸化ケイ素;及び0.8〜1.5重量%のステアリン酸マグネシウムを有する。
(IV.用量)
ある実施形態では、本発明は、任意の適切な固形剤に製剤化されていてもよい医薬組成物を提供する。ある実施形態では、本発明に従う医薬組成物は、約10mg〜約100mgの範囲の用量である本明細書に記載の式(1)のチエノトリアゾロジアゼピンの様々な実施形態の1以上を含む。ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、約10mg〜約100mg、約10mg〜約90mg、約10mg〜約80mg、約10mg〜約70mg、約10mg〜約60mg、約10mg〜約50mg、約10mg〜約40mg、約10mg〜約30mg及び約10mg〜約20mgからなる群から選ばれる用量である本明細書に記載の式(1)のチエノトリアゾロジアゼピンの様々な実施形態の1以上を含む。ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、約10mg、約50mg、約75mg、約100mgからなる群から選ばれる用量の本明細書に記載の式(1)のチエノトリアゾロジアゼピンの様々な実施形態の1以上を含む。
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、週一回、六日ごとに一日一回、五日ごとに一日一回、四日ごとに一日一回、三日ごとに一日一回、一日おきに一日一回、一日一回、一日二回、一日三回、一日四回及び一日五回からなる群から選ばれる剤形で、約1mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、約4mg、約5mg、約7.5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg及び約150mgからなる群から選ばれる用量である本明細書に記載の式(I)のチエノトリアゾロジアゼピンの様々な実施形態の1以上を、それを必要とする対象に投与することを含む。他の実施形態では、上述の用量又は剤形のいずれかは、一定期間ごとに減少し、又は一定期間ごとに増加する。
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、週一回、六日ごとに一日一回、五日ごとに一日一回、四日ごとに一日一回、三日ごとに一日一回、一日おきに一日一回、一日一回、一日二回、一日三回、一日四回及び一日五回からなる群から選ばれる剤形で、約1mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、約4mg、約5mg、約7.5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg及び約150mgからなる群から選ばれる用量である、化合物(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)、(1−5)、(1−6)、(1−7)、(1−8)、(1−9)、(1−10)、(1−11)、(1−12)、(1−13)、(1−14)、(1−15)、(1−16)、(1−17)及び(1−18)からなる群から選ばれるチエノトリアゾロジアゼピンを、それを必要とする対象に投与することを含む。他の実施形態では、上述の用量又は剤形の何れかは、一定期間ごとに減少し、又は一定期間ごとに増加する。
このような単位剤形は、個々の治療目的、治療段階等に応じて一日1ないし5回投与することが好適である。ある実施形態では、剤形は、少なくとも二日間続けて少なくとも一日一回それを必要とする対象に投与してもよい。ある実施形態では、剤形は、一日おきに少なくとも一日一回それを必要とする対象に投与してもよい。ある実施形態では、剤形は、それを必要とする対象に、少なくとも週ごとに投与してもよいし、均等及び/又は不均等な用量に分割して投与してもよい。ある実施形態では、剤形は、週ごとに、三日おきに及び/又は週に6回としてそれを必要とする対象に投与してもよい。ある実施形態では、剤形は、一日おき、三日ごと、四日ごと、五日ごと、六日ごと及び/又は週ごとに分割された用量を、それを必要とする対象に投与してもよい。ある実施形態では、剤形は、月ごとに2以上に均等に又は不均等に分割した用量を、それを必要とする対象に投与してもよい。
例えば、カプセル剤、錠剤、ミニ錠剤、ビーズ剤、ビードレット剤、ペレット剤、顆粒剤、粒剤又は散剤で用いられる剤形はコーティングされていてもよく、例えば、腸溶コーティングでコーティングされていてもよい。適切なコーティング剤には、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリメチルアクリル酸共重合体又はヒドロキシルプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)が含まれてもよいが、これらに限定されない。
(V.プロセス)
本明細書で開示されたチエノトリアゾロジアゼピン化合物は、遊離塩基として存在してもよく、又は酸付加塩として存在してもよく、それらは、米国特許出願公開番号2010/0286127号(その全体が参照により本明細書に又は本出願に組み込まれる)に記載の手順に従って得ることができる。本発明のチエノトリアゾロジアゼピン化合物の個々のエナンチオマー及びジアステレオマーは、不斉中心又は立体中心を含む市販の出発原料からの合成により、或いはラセミ混合物を調製し、続いて当業者によく知られている方法で分割することにより調製することができる。
いくつかの実施形態では、式(1)のチエノトリアゾロジアゼピンの製剤に関する1以上の様々な実施形態は、溶媒エバポレーション法により調製される。ある実施形態では、溶媒エバポレーション法は、揮発性溶媒中に式(1)のチエノトリアゾロジアゼピン化合物、担体を溶解し、次いでその揮発性溶媒を留去させることを含む。ある実施形態では、揮発性溶媒は、1以上の賦形剤であってもよい。ある実施形態では、1以上の賦形剤としては、固着防止剤、不活性フィラー、界面活性剤、湿潤剤、pH調整剤及び添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、賦形剤は、揮発性溶媒中に、溶解してもよいし、或いは懸濁状態又は膨潤状態にしてもよい。
ある実施形態では、本発明に従う固体分散体の調製には、揮発性溶媒中に懸濁した1以上の賦形剤を乾燥させることが含まれる。ある実施形態では、乾燥には、真空乾燥、低温での揮発性溶媒の低速留去、ロータリーエバポレーターの使用、噴霧乾燥、噴霧造粒、凍結乾燥、又は超臨界流体の使用が含まれる。
ある実施形態では、式(1)に従うチエノトリアゾロジアゼピン組成物の製剤の噴霧乾燥調製は、小滴に組成物の懸濁液又は溶液を噴霧して、続いて、製剤から溶媒を迅速除去することを含むことが用いられる。ある実施形態では、本発明に従う製剤の調製は、溶媒中の組成物の溶液又は懸濁液を、適切な化学的に及び/又は物理的に不活性なフィラー(例えば、ラクトース又はマンニトール)に噴霧する噴霧造粒が含まれる。ある実施形態では、組成物の溶液又は懸濁液の噴霧造粒は、二方向ノズル又は三方向ノズルを介して達成される。
本発明は、以下の非限定的な実施例で説明される。
(VI.実施例)
本発明は、以下の非限定的な実施例で説明される。
実施例1:化合物(1−1)の固体分散体のin vitroスクリーニング
10種の固体分散体は、化合物(1−1)、並びにヒプロメロースアセテートスクシナート(HPMCAS−M)、ヒプロメロースフタレート(HPMCP−HP55)、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVP−酢酸ビニル(PVP−VA)、及びオイドラギットL100−55を含む5種のポリマーのうち1種を用い、各ポリマーに対して25%及び50%両方の化合物(1−1)を加えて調製した。固体分散体は、噴霧乾燥し、続いて低温コンベクションオーブン内で二次乾燥することを用いる溶媒エバポレーション法により調製された。それぞれの固体分散体のパフォーマンスは、薬剤の総量と、長時間溶液中に存在するフリーの薬剤の量の両方で測定する非沈降溶解パフォーマンス試験によって評価した。非沈降溶解が選択されたのは、低い溶解性の化合物のin vivo条件を最もよく表現するためである。この試験は、in vivo条件を模倣して、分散体を試験培地に導入してからおよそ30ないし40分後の胃のpH(0.1N NaCl, pH 1.0)から腸内のpH(FaFSSIF, pH 6.5)への分散体の「胃の移動」を含む[FaFSSIFは絶食状態の腸内を模した溶液(Fasted State Simulated Intestinal Fluid)であり、3mMタウロコール酸ナトリウム、0.75mMレシチン、0.174g NaOHペレット、1.977g NaH2PO4・H2O、3.093g NaCl及び精製水500mLからなる]。溶解した薬剤の量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法及びアジレント1100シリーズHPLCを用いて定量化した。製剤の溶解プロファイル(図1A−1J)は、同じ溶媒中の製剤化していない化合物と比較して全ての分散体候補中の薬剤の溶解度が大きく増加したことを示した。固体分散体の中で、PVPにおける25%化合物(1−1)、HPMCAS−Mにおける25%化合物(1−1)、及びHPMCAS−Mにおける50%化合物(1−1)の分散体は、腸内のpHで放出されたフリーの薬剤のレベルが高まったという知見に基づけば、製剤化されていない化合物に比べて経口吸収を高める最も有望な候補である。
実施例2:化合物(1−1)の固体分散体のin vivoスクリーニング
三つの最も有望な化合物(1−1)の固体分散体、即ち、PVPにおける25%化合物(1−1)、HPMCAS−MGにおける25%化合物(1−1)、及びHPMCAS−Mにおける50%化合物(1−1)の分散体を、in vivo研究のためにより大きなスケールで調製した。それぞれの製剤を、実施例1に記載のin vitro溶解試験で評価した。これらの分散体が非晶質であること及び均質であること両方を確認するために、それぞれの分散体を、粉末X線回析(PXRD)及び変調示差走査熱量計(mDSC)で評価した。さらに、それぞれの分散体のガラス転移温度(Tg)に対する水の影響を理解するために、予め設定相対湿度(即ち、25%、50%及び75%RH)で少なくとも18時間平衡化した試料についてmDSCを実行した(水は、固体分散体に対して可塑剤として作用することができ、活性化合物又はポリマーによる系の吸湿性は、これらの系による水の取り込み量に影響し得る。)。
非沈降溶解の結果(図2A〜2C)は、実施例1における分散体で見られるものに匹敵した。PXRD結果(図3)は、分散体の何れでも結晶質の化合物の存在を示さず、mDSC結果(図4A〜4C)は、それぞれの分散体について単一のガラス転移温度(Tg)であり、それぞれ分散体が均質であることを示した。X線回折計はBruker D−2 Phaserであった。それぞれについて、Tg及び相対湿度の間で逆相関が観察された(図5)。とりわけ、75%RHで平衡化したPVP固体分散体における25%化合物(1−1)については、2つのTgが存在し、相分離が生じていることを示した。また、この分散体は、75%RHでの溶融を示し、RHの平衡化時に結晶化が起きることを示唆した(図6)。この発見は、PVP分散体における25%化合物(1−1)が、HPMCAS−M分散体より不安定であってもよいことを示唆する。
3種の分散体の生物学的利用能を評価するために、雄のビーグル犬のグループ(グループ毎に3頭)に、3mg/kgの用量の化合物(1−1)の固体分散体の水性懸濁液を経口強制投与し、或いは水:エタノール:ポリエチレングリコール(PEG)400(60:20:20)に1mg/kgの用量の化合物(1−1)を溶解して橈側皮静脈に静脈内ボーラスとして投与した。血液試料を、静脈内投与の0(投与前)、5、15及び30分後、並びに1、2、4、8、12及び24時間後に、経口強制投与の0(投与前)、15及び30分後、並びに1、2、4、8、12及び24時間後に各動物の頸静脈から回収した。それぞれ試料に存在する化合物(1−1)の量を、定量下限0.5ng/mLの適切なLC−MS/MS法を用いて検出した。血漿濃度時間曲線下面積(AUC)は、末端排出相を無限に外挿することなく最終の測定可能濃度までの直線台形公式の使用により決定した。排出半減期(t1/2)は、対数の濃度時間曲線の末端直線部分の最小二乗回帰分析により計算した。最大血漿濃度(Cmax)及びCmaxに対する時間(tmax)を、血漿濃度データから直接得た。経口生物学的利用能(F)を、経口投与後の投与標準化AUCを静脈投与後の投与標準化AUCで割って計算し、百分率(%)として報告した。下記表1でまとめた結果から、PVPにおける25%化合物(1−1)、HPMCAS−Mにおける25%化合物(1−1)、並びにHPMCAS−Mにおける50%化合物(1−1)の固体分散体のそれぞれ58%、49%及び74%の平均経口生物学的利用能が得られた。
表1:イヌへの経口(po)投与及び静脈内(iv)投与後の化合物(1−1)の薬物動態パラメーター(値は3頭の犬からの平均である)
AUC:血漿濃度時間曲線下面積;Cmax:最大血漿濃度;F:生物学的利用能;HPMCAS:ヒプロメロースアセテートナトリウム;IV:静脈内;PEG:ポリエチレングリコン;PO;per os、経口;PVP:ポリビニルピロリドン;tmax:Cmaxの時間;t1/2:血漿排出半減期
実施例3:化合物(1−1)の固体分散体を含むカプセルの調製及び臨床使用
10mg力価のゼラチンカプセルを、血液系悪性腫瘍を患う患者における初期臨床研究のために調製した。実施例1及び2に記載された化合物(1−1)の固体分散体のin vitro及びin vivo試験の結果に基づいて、HPMCAS−Mにおける50%化合物(1−1)の固体分散体が、カプセル開発のために選択された。サイズ3のゼラチンハードカプセル中で190mgの充填量を目標にカプセル開発を開始した。これは、この構造が、医薬組成物を維持させることができる一方で、より大きなサイズのカプセルを充填することで潜在的にカプセル力価を増加させることができるためである。経験に基づき、異なる量の崩壊剤を伴い且つ湿潤剤を伴って及び伴わずに、4種のカプセル製剤を設計した。全ての4種の製剤で同様の崩壊試験及び溶解試験の結果を示したため、最も単純な製剤(湿潤剤及び最小崩壊剤を伴わないもの)が、製造の観点から選択された。製造プロセスの開発及びスケールアップの研究が行われ、固体分散体の噴霧乾燥プロセス及び乾燥後の時間;混合パラメーター;目的の嵩密度のおよそ0.60g/ccを達成するための混合物の乾式圧縮造粒及び製粉;及びカプセルの充填条件を確認した。
結晶質の化合物(1−1)及びポリマーのヒプロメロースアセテートスクシネート(HPMCAS−M)を、アセトンに溶解し、噴霧乾燥し、装填する50%化合物(1−1)を含む固体分散体中間体(SDI)顆粒剤を製造した。SDIは、非晶質を示すPXRD分析、及び均質を示すmDSC分析(即ち、周囲条件下で単一のTg)により示された。HPMCAS−M固体分散体(1000g)における50%化合物(1−1)、及び賦形剤(微結晶性セルロースフィラー結合剤(4428g)、クロスカルメロースナトリウム崩壊剤(636g)、コロイド状二酸化ケイ素分散剤/滑沢剤156g)、ステアリン酸マグネシウム分散剤/滑沢剤(156g)及びラクトース一水和物フィラー(5364g)を含む)が、段階的にV−ブレンダーで配合された。次いで、混合物を、圧縮し、顆粒化し、およそ0.6g/mLの嵩密度を得た。混合物を、自動充填機を用いてサイズ3のゼラチンハードカプセル(目的の充填量:190mg)に分配し、出来上がったカプセルを、カプセル研磨機を用いて研磨した。
薬物動態評価を、HPMCASにおける50%化合物(1−1)の固体分散体を含む10mgのカプセルを経口投与した後に行い、結果を、化合物(1−1)のオイドラギット固体分散体を含む4x10mgのカプセルを健康なボランティアに経口投与した後に行われた薬物動態評価と比較した。
2種の医薬組成物の比較を下記の表2A及び2Bに示す。オイドラギット製剤は、以前に、2009年1月8日公開の米国特許出願2009/0012064A1の実施例5に記載されていた。その出願には、水及びエタノールの混合液中で、式(A)のチエノトリアゾロジアゼピン、及びアンモニオメタクリレート共重合体typeB(オイドラギットRS)、メタクリル酸共重合体typeC(オイドラギットL100−55)、タルク及びケイ酸アルミン酸マグネシウムを含むコーティング賦形剤を溶解すること及び/又は分散することにより、オイドラギット固体分散体製剤を調製することが記載されていた。次いでこの不均質混合物を、遠心流動床造粒機を用いて、微結晶性セルロース球(Nonpareil101,Freund)に塗布し、顆粒剤を製造し、サイズ2のヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルに分配した。
両方の臨床研究において、化合物(1−1)の血液レベルを、有効なLC−MS/MS法を用いて決定し、薬物動態分析を、カプセル投与後24時間にわたる様々な時点で測定した化合物(1−1)の血漿濃度に基づいて行った。以下の表3にまとめた結果は、HPMCAS−M固体分散体製剤が、ヒトにおいて、AUCに基づくオイドラギット固体分散体製剤よりも3倍以上高い生物学的利用能を有することを示した(924*4/1140,投与された用量の差に対して調整)。さらに、観察されたTmaxに基づけば、HPMCAS製剤は、オイドラギット製剤と比較してより急速に吸収する(1時間のTmaxに対して4〜6時間)。HPMCAS−Mの固体分散体製剤を用いた全身曝露における顕著な改善は予想外であった。
表2A:臨床使用のための化合物(1−1)の固体分散体
化合物(1−1)の50%HPMCASの固体分散体を含む医薬組成物:10mg力価、サイズ3のゼラチンハードカプセル
表2B:化合物(1−1)のオイドラギットL100−55固体分散体を含む医薬組成物:10mg力価、サイズ2のゼラチンハードカプセル
表3:ヒトに対する化合物(1−1)の固体分散体の経口投与後の薬物動態パラメーター
AUC0−24h:24時間にわたるOTX015血漿濃度対時間曲線下面積
Cmax:血漿中の最大濃度
hr:時間
HPMCAS:ヒプロメロースアセテートスクシナート
mL:ミリリッター
ng:ナノグラム
PO:per os,経口
Tmax:Cmaxの時間
実施例4.ラットにおける経口曝露
化合物(1−1)の固体分散体の3製剤の経口生物学的利用能をラットで決定した。選択された3種の分散体は、PVPにおける化合物(1−1)の25%分散体、HPMCAS−MGにおける化合物(1−1)の25%分散体、及びHPMCAS−MGにおける化合物(1−1)の50%分散体である。研究に用いた動物は、トゥルク大学(フィンランド)の中央動物実験室から入手した特定の病原体を有さない(SPF)Hsd:Sprague Dawley Ratであった。ラットは、もともとHarlan(オランダ)から購入された。ラットは10週齢の雌だった。12匹のラットが研究に用いられた。動物を、ポリカーボネート製のMakrolon IIケージに入れた(1ケージあたり3匹の動物)。動物室の温度は21±3℃であり、動物室の相対湿度は55±15%であり、動物室の照明は人工的であり、12時間明暗期間のサイクルとした(18:00時と06:00時の間の暗期)。Aspen chip(Tapvei Oy,エストニア)を寝床として使用し、寝床を少なくとも週一回交換した。食事及び水を動物に投与する前に供給したが、投与後はじめの2時間で除去した。
PVPにおける化合物(1−1)の25%分散体、HPMCAS−MGにおける化合物(1−1)の25%分散体、及びHPMCAS−MGにおける化合物(1−1)の50%分散体を含む経口投与液剤は、適切な量を用いた分散体を入れた容器に予め計算された量の滅菌注射用水を加えて調製し、化合物(1−1)を0.75mg/mLの濃度とした。経口投与液剤は、各投与の20秒前に渦流混合した。0.25mg/mLの化合物(1−1)を含む静脈内投与用の投与溶液は、4mLの平均分子量400Da(PEG400)のポリエチレングリコール、4mLのエタノール(96%純度)及び12mLの滅菌注射用水を含む混合物に5mgの化合物(1−1)を溶解することにより調製した。PVPにおける化合物(1−1)の25%分散体を含む投与溶液を、水の添加後30分以内に使用した。HPMCAS−MGにおける化合物(1−1)の25%分散体、及びHPMCAS−MGにおける化合物(1−1)の50%分散体を含む投与溶液を、水の添加後60分以内に使用した。4mL/kgの用量容積を用いて、静脈内投与のための1mg/kg及び経口投与のための3mg/kgの化合物(1−1)の用量レベルを得た。用量設定を表4に示す。
表4.ラットの経口曝露研究のための投与設定
投与後0.25、0.5、1、2、4、8、12及び24時間の時点で、5μLのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液を含むエッペンドルフチューブに、およそ50μLの血液試料を採取した。それぞれの試料を前述の時点から5分以内の時間幅で採取した。分析のために、それぞれの試料から、20μLの血漿を得、ドライアイスの温度で保存した。化合物(1−1)の各試料の濃度分析を、定量下限0.5ng/mLの有効な液体クロマトグラフ−タンデム型質量分析(LC−MS/MS)法を用いて行った。
薬物動態パラメーターを、標準的なノンコンパーメント法を用いてPhoenix WinNonlin software package(version 6.2.1,ファーサイト社,米国カリフォルニア州)で計算した。排出相半減期(t1/2)を、濃度時間対数曲線の末端の線形部の最小二乗回帰分析により計算した。血漿濃度時間曲線下面積(AUC)を、最終測定可能濃度までの線形台形公式を用い、その後、無限に末端排出相の外挿を用いて決定した。化合物がコンパートメント又は全身に滞留している時間の平均量を示す平均滞留時間(MRT)を、薬剤濃度プロファイルを無限に外挿することにより計算した。最大血漿濃度(Cmax)及びCmaxに対する時間(tmax)を血漿濃度データから直接導いた。試験的な経口生物学的利用能(F)を、経口投与後の用量標準化AUCを静脈内投与後の用量標準化AUCで割って計算し(即ち、F=(AUC(経口)/Dose(経口))/(AUC(静脈内)/Dose(静脈内)))、百分率(%)として報告する。
薬物動態パラメーターを表5に示す。時間プロットに対する血漿濃度を図7及び8に示す。
表5.経口投与及び静脈内投与後の化合物(1−1)の薬物動態パラメーター。値は三匹の動物の平均である。
実施例5.噴霧乾燥分散体の調製
化合物(1−1)の噴霧乾燥分散体を、5種の選択されたポリマー(HPMCAS−MG(信越化学株式会社)、HPMCP−HP55(信越化学株式会社)、PVP(ISP、アシュランド社の一部門)、PVP−VA(BASF社)、及びオイドラギットL100−55(エボニック インダストリーズAG))を用いて調製した。全ての噴霧乾燥溶液を、各ポリマーに対して25重量%及び50重量%で調製した。全ての溶液は、エタノール中で調製したPVP溶液を除いて、アセトン中で調製した。それぞれの溶液において、1.0gの固体(ポリマー及び化合物(1−1))を10gの溶媒中で調製した。溶液を1.5mmノズル及びBuchi B−295,P−002濃縮装置を備えたBuchi B−290,PE−024スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥した。スプレードライヤーのノズル圧力を80psiに設定し、目標吹出温度を40℃に設定し、チラー温度を−20℃に設定し、ポンプ速度を100%に設定し、アスピレーターを100%に設定した。噴霧乾燥後、固体分散体を回収し、低温コンベクションオーブン内で終夜乾燥し、残留溶媒を除去した。
実施例6:湿度及び温度に対する安定性
HPMCAS−MGにおける化合物(1−1)の噴霧乾燥分散体を、高温で水分に曝すことにより安定性を評価した。相対湿度に応じたガラス転移温度(Tg)を、1、2及び3カ月間において75%相対湿度、40℃で決定した。噴霧乾燥分散体は、量産品の包装を模してHDPE製のボトルに入れたLDPE製の袋の中で保管した。データを表6にまとめる。ゼロ時間でTgは134℃であり、1カ月でTgは134℃であり、2カ月でTgは135℃であり、3カ月でTgは134℃であった。それぞれの測定で単一の変曲点のみが観察された。また、各試料でX線回析パターンを得た。図9は、安定性試験のゼロ時間でのHPMCAS−MGにおける化合物(1−1)の固体分散体の粉末X線回析プロファイルを説明する。図10、11及び12は、相対湿度75%、40℃で曝露してから1か月後、2か月後、3か月後それぞれでのHPMCAS−MGにおける化合物(1−1)の固体分散体の粉末X線回析プロファイルを説明する。
そのパターンは、化合物(1−1)に関連するいかなる回折線も示さなかった。
実施例7:初代細胞の細胞株及び選択
ALL(Jurkat細胞(T−ALL)、RS4−11(MLL−AF4 B−プレカーサーALL)、TO’M−1、BV173(Ph+ALL両方)を含む)及びAML(K562(急性転化でのPh+ CML)、HL−60 (NRAS駆動AML2)、NOMO1(MLL−AF9駆動AML)、KG1(BMP−FGRF+AML6)及びそのより未成熟なサブタイプKG1aを含む)についての異なる代表的な細胞株を、10%又は20%熱不活性化ウシ胎児血清のそれぞれ、2mM L−グルタミン、100IU/mLペニシリン、及び100g/mLストレプトマイシンを補充したRPMI1640(ギブコインビトロゲン,スイスのバーゼル)中で培養した。
骨髄(BM)由来の単核細胞(MNC)を、Ficoll−Paque PLUS density gradient(アマシャムバイオサイエンス,米国サニーベール)で分離した。患者の細胞は、10%熱不活性化ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、100IU/mLペニシリン、及び100g/mLストレプトマイシン(成長因子を伴わない)を補充したIMDM(ギブコ)中で維持した。
実施例8:MTT−アッセイ、アポトーシス評価及び細胞周期分析
MTT−アッセイ:細胞を、より小さい体積での濃度のばらつきを避けるために1ウェルあたり106の密度で24ウェルプレートに最初に播種し、DMSO中の1mM原液から調製したばかりの異なる用量のOTX015で処理した。細胞を、MTT−アッセイのために96ウェルプレートに移した。未処理の細胞、及びOTX015の希釈のために使用される等量のDMSO(0.2−1%)で処理した細胞を、対照として使用した。3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)(モレキュラープローブス,米国ユージーン)をPBS中の5mg/mlのストックとして調製した。次いで、0.5mg/mLのMTT溶液をウェルごとに加え、暗所にて37℃で4時間インキュベートした。次いで、細胞を、25%SDS溶解バッファーで溶解し、吸光度を570nmで読み取った。2つの独立した実験を、各細胞株について行った。GI50値をPrism v5ソフトウエア(グラフパッド社,米国ラ・ホーヤ)で計算した。
アポトーシス評価:患者又は細胞株に由来する合計1x106個の細胞を1mL培地で再懸濁し、DMSO中の1mMストックソリューションから調製したばかりの指定の用量のOTX015でインキュベートした。対照細胞を、賦形剤の毒性を除くために対応する量のジメチルスルホキシド(DMSO 0.2−1%)でインキュベートした。アポトーシス細胞をFACScan(ベクトン・ディッキンソン,米国マウンテンビュー)を用いる細胞蛍光定量分析により検出した。メーカーの説明に従って、細胞をヨウ化プロピジウム(PI;5μg/mL;ベクトン・ディッキンソン)で染色し、同時に15分間室温でアネキシン−V−FITC(ベクトン・ディッキンソン)を用いて染色し、外膜ホスファチジルセリンの露出を測定した。データを、Flowjo(ツリースター社,米国アシュランド)フロー・サイトメトリー・ソフトウエアで分析した。
細胞周期分析:従来の細胞周期分析のために、1x106個の細胞を回収し、PBS中で洗浄し、70%氷冷エタノール中で固定した。細胞を100μg/mL RNAse(シグマ,仏国サンカンタンファラビエ)でインキュベートし、PI(25μg/mL,ベクトン・ディッキンソン)で染色し、続いて、37℃で30分の期間インキュベーションした。次いで、細胞周期分布を、細胞蛍光定量分析で決定した。データを、Flowjo(ツリースター社,米国アシュランド)フロー・サイトメトリー・ソフトウエアで分析した。
化合物(1−1)により、3種のALL細胞株(Jurkat、RS4−11、TOM−1)及び4種のAML細胞株(HL60、K562、KG1及びKG1a)でアポトーシスが誘導され、それらを、異なる時点での外膜ホスファチジルセリンの露出及びヨウ化プロピジウムの結合で検出するように異なる用量の薬剤で処理した(図13A〜13C及び図14A〜14D)。化合物(1−1)は、試験した全ての細胞株中でアポトーシスを誘導したが、K562細胞及びKGla細胞ではより少ない程度であった(図14B、D)。他の全ての細胞株において、50%の細胞が、100nMの化合物(1−1)での処理後12ないし24時間以内にアポトーシスとなった。
さらに、化合物(1−1)は、全ての細胞株において細胞周期停止を誘導した(図15A−15C)。アポトーシスのデータは、K562、KG1a及びTOM−1について、化合物(1−1)の曝露後の細胞周期低下に対して感受性が低いことを示した。注目すべきは、低用量の式2(10nM)が、長期のインキュベーション(即ち72時間)後にアポトーシスを誘導した点である(KG1細胞において試験され、図16において示すように。)。
表7:72時間でのMTTアッセイ及びGI50値
AML細胞株及びALL細胞株を、増大する濃度の化合物(1−1)(0.1nM〜10μM)に曝露した。増殖性細胞の割合を、72時間でのMTTアッセイにより決定し、GI50値を、五回一組での平均±SDからPrismソフトウエアにより算出した。GI50値を、3回の独立した実験の平均として表した。
表7で示すように、化合物(1−1)は、図39A〜39Cで説明されるように、これらの細胞を72時間での外膜ホスファチジルセリンの曝露及びヨウ化プロピジウムの結合により検出されるように異なる用量の化合物(1−1)で処理した場合に増加する用量依存的様式で、AML細胞株(KG1a及びNOMO1参照)及びALL細胞株(RS4−11、BV−173、Jurkat及びTOM−1参照)でアポトーシスを誘導した。AML細胞株のうち、2つは、それぞれ198.3及び229.1nMのGI50値で感受性が高いことを示した(KG1及びNOMO1)。2つの細胞株は、それぞれ1.3μMのGI値で感受性が低く(HL60及びKG1a)、一方で、K562は、1.3μMのGI50値で抵抗性と考えられる。OTX015は、34.2〜249.7nMの間のGI50で、全てのALL細胞株における細胞生存率の用量依存減少をもたらす。
一般的に、化合物の半最大阻害濃度(IC−50値)は、生物学的機能又は生化学的機能を阻害する化合物の有効性の尺度である。従って、IC−50値は、一定の生物学プロセスを半分(50%)阻害するために必要な特定の薬剤又は任意の化学物質が如何程なのかということを示す定量的な尺度とみなすことができる。しかしながら、時として、GI−50は、50%増殖阻害をもたらす濃度の値を表すために用いられる。GI−50の使用は、ゼロ時間で細胞数の補正がなされたことを示している。GI−50値を計算する1つの式の例は、100x(T−T0)/(C−T0)=50(式中、Tは、試験薬剤の曝露48時間の期間の後の試験ウェルの光学濃度である。)である場合に、試験化合物の濃度がTであるとしてGI−50を定義する(例えば;T0は、ゼロ時間での試験ウェルの光学濃度である。)。
さらに、化合物(1−1)は、殆どの全ての細胞株でS相フラクションを減少させた(図40A〜40H)。この効果は、それらの細胞株において、G1における蓄積を伴うALL細胞株RS4−11及びBV−173でより顕著であった。
実施例9:ブロモドメインの発現
ブロモドメインの発現は、定量的リアルタイムポリメラーゼ鎖反応(QT−PCR)分析を用いて異なる細胞株及び患者試料で研究した。フェノール及びグアニジンイソチオシアネートの試薬溶液を用いて抽出物(TRIzol(登録商標)ブランド試薬,インビトロゲン,ニューヨーク州グランドアイランド)を1μg/μLに滴定した後、全RNAを得、−80℃で保存した。相補的DNA(cDNA)を1μgRNAから合成した。QT−PCR反応を、標準的なモードのサーモサイクラーABI7900HTで、10分の1のcDNA(100ngのRNAに対する当量)から25μLの体積で行った(2分50℃〜10分95℃の1サイクル、続いて、15秒95℃〜1分6℃の50サイクル)。
異なる細胞株は、QT−PCRで検出されるような異なるレベルでBRD2、BRD3及びBRD4を発現した(図17A〜17C)。三つの異なる型のBRD4(コンセンサス型(BRD4c)、中間型、及びショート型(BRD4s))を研究した。細胞株の間での異なる型の発現に差異はなかった。アポトーシス及びBRD発現の間に明らかな相関はなかった。AML細胞株K562は最も低い発現レベルを有し、化合物(1−1)の処置に対して低い感受性を有した。乳癌細胞株MCF−7と比較してBRD発現レベルの間に差異はなかった。非常に高いレベルのBRDが、臍帯血由来の選択されたCD34+細胞において観察された。BRD2、BRD3及びBRD4の発現を患者試料で研究した。患者特徴を表8にまとめる。ALL患者のうち、Ph+ALLは、低いBRD発現レベルを示した。その一方で、AML患者のBRD発現レベルは、より不均一であった(図17A〜17C)。
表8:ALL患者及びAML患者の特徴
化合物(1−1)での処置を研究し、BRD2、BRD3、BRD4及びc−MYCのダウンレギュレーションを誘導する場合に測定した。癌遺伝子c−MYCは、白血病維持のためのBRD4のダウンストリームパートナーである(Delmore,J.E,et al.Cell.2011;146:904−917)。他の小さな阻害剤(例えばJQ1)は、BRD4のダウンレギュレーションを誘導し、次いでc−MYCのダウンレギュレーションを誘導する。異なる白血病細胞株を、100nMの式2で処理した。タンパク質レベルで3時間以内に、c−MYCのダウンレギュレーションに関連するBRD2、BRD3及びBRD4の急速なダウンレギュレーションが観察された(図18A及び18B)。KG1及びKGlaタンパク質において、ダウンレギュレーションは、3時間以内では、TOM−1細胞(図19A〜19D)と比較して、cDNA減少(図18A及び18B)には関連しなかった。Jurkat及びRS4−11細胞において、BRD2〜4のcDNAは、はじめにダウンレギュレーションするが、3時間前に増加した(図19A〜19D)。結果は、式2が、BRD2、BRD3、BRD4及びc−MYCの急速なダウンレギュレーションを誘導することを示す。
さらに、図41A〜41Hで説明されるように、異なる細胞株は、最も低い遺伝子発現レベルを有するbcr−abl駆動細胞株BV−173及びK562を用いるRQ−PCRで検出されるように、不均一なレベルでBRD2、BRD3及びBRD4を発現した(図41A〜41B)。MTT、アポトーシス又は細胞周期停止及びBRD遺伝子発現を含む生物学的効果の間に明確な相関は認められなかった。我々は、48時間における250nM及び500nMそれぞれでのOTX015処置によるcDNAレベルでのBRD4、BRD2及びBRD3の変調を調べた。我々は、化合物(1−1)の処置によるBRD4、BRD2又はBRD3の一貫したダウンレギュレーションを検出することができなかった(図41C〜41H)。その一方で、KG1、K562及びJurkatにおけるBRD3及びBRD2の大幅なアップレギュレーション、並びにKG1及びHL60におけるBRD2の増加を検出する。
実施例10:CD34+及びCD34−細胞におけるアポトーシスの誘導に対する化合物(1−1)の有効性
初代細胞におけるアポトーシスの誘導に対する化合物(1−1)の有効性を調査した。臍帯血(健常対照)及び1人のAML患者からCD34+マイクロビーズを用いてCD34+及びCD34−細胞を陽性選択により得た。ルーチン免疫表現型検査は30%の芽球細胞がCD34+に対して陽性であると示した。CD34+及びCD34−臍帯血細胞の処置は、500nMの用量レベルでの未熟なCD34+細胞に対する毒性を証明した。その一方で、成熟したコンパートメントは影響しないままであった(図20)。CD34+及びCD34−AML細胞の処置は、用量に依存してアポトーシスのin vitro誘導を示した。
異なる濃度の化合物(1−1)の24時間でのCD34−に対するアポトーシスパターンを図32A〜32Cにおいて説明する。
実施例11:化合物(1−1)への短い曝露後のアポトーシス
図21A〜21Tは、化合物(1−1)への短い曝露後の96時間でのアポトーシスを示す。HL60、KS62、Jurkat及びRS4−11細胞を10nM及び100nMの化合物(1−1)それぞれで処理した。細胞を、6時間(10nM及び100nM)及び24時間(10nM)にて洗浄し、上澄みを廃棄し、細胞を新鮮培地に再び播種した。アポトーシス細胞を、96時間(24ないし72時間は図示せず)でのFACS分析により評価し、PI取り込みを伴う或いは伴わないアネキシンV+として定義した。2つのうち1つの代表的な実験を図21A〜21Tに示す。
実施例12:様々な濃度の化合物(1−1)に曝露した後のアポトーシス
図22A〜22Lは、0nM、1nM及び10nMの化合物(1−1)に曝露した場合のAML細胞株HL60におけるアポトーシスデータのフローサイトメトリー分析を説明する。図23A、23B及び23Cは、図22A〜22LのHL60細胞株についてのアポトーシスを説明する。
化合物(1−1)を用いた処置は、HL60及びK562細胞で有意にアポトーシスを誘導した(それぞれ図24A及び24B)。また、有意なアポトーシスを、KG1及びKG1a細胞(図25A及び25B)、Jurkat及びRS4−11細胞(図26A及び26B)、並びにTOM1細胞(図27)において観察した。K562は、24時間で観察された20%のアポトーシス細胞での化合物(1−1)による処置に対する感受性が低かった。1及び10nMの濃度での長時間曝露では、異なる応答パターンが得られた:10nMのみで96時間暴露後、HL60、KG1及びJurkat細胞は、>90%のアポトーシスを示し及びTOM−1で70%のアポトーシスを示した;対照的に、KG1a、MLL融合RS4−11及びK562細胞は、より低いアポトーシス(それぞれ45%、30%及び20%)を示した。その一方で、アポトーシスが、対照で15%〜20%のレベルで観察された。
実施例13:薬剤洗浄後のアポトーシス
6時間の短い曝露後の薬剤洗浄は、感受性のあるHL60及びJurkat株では96時間での有意な遅延型アポトーシスにも関連したが(それぞれ図28及び29A、29B)、あまり感受性のないK562及びRS4−11細胞株では、関連しなかった(図30A及び30B)。
3種のALL細胞株でのMTTアッセイデータを図31A及び31Bに示す。
実施例14:血液及び骨髄におけるアポトーシス
図33A〜33G及び34A〜34Bは、血液細胞及び骨髄細胞についての様々な濃度の化合物(1−1)に対するアポトーシスを説明する。
実施例15:c−MYC動態
AML細胞株及びALL細胞株におけるc−MYC動態を、化合物(1−1)で処置して測定した。それを図35に示す。また、AML細胞株及びALL細胞株におけるBRD4動態を、化合物(1−1)で処置して測定した。それを図36に示す。図37は、化合物(1−1)で処置した場合のAML細胞株及びALL細胞株でのBRD2動態を説明する。図38を、化合物(1−1)で処置した場合のAML細胞株及びALL細胞株でのBRD3動態を説明する。
癌遺伝子c−MYCは、BRD4により活性化されると考えられ、白血病の維持のために重要である。他の小さなBRD阻害剤(即ちJQ1)は、BRD4のダウンレギュレーションを誘導し、次いで異なる設定でc−MYCのダウンレギュレーションを誘導した。我々は、異なる白血病細胞株におけるc−MYCの基本的な遺伝子発現レベルが、MTT、アポトーシス又は細胞周期効果についての化合物(1−1)の生物学の効果に対する明確な相関なく不均一な結果を示すことを見出した(図42A及び42B)。これらの細胞株を250nM及び500nMの化合物(1−1)で処理した。c−MYCのダウンレギュレーションが、48時間にてQT−PCRで検出されるように、全ての細胞株で観察された(図42C及び42D)。
RQ−PCRで検出される化合物(1−1)によるBRDとc−MYCの基礎遺伝子の発現及び調節に明確な相関は存在しないため、次に、我々は、BRD4、BRD2及びBRD3並びにc−MYCについてタンパク質レベルで化合物(1−1)のポテンシャル効果を調べた。
選択されたAML細胞株HL60において、BRD4及びBRD3は、500nMでの化合物(1−1)の曝露72時間後で、影響を受けないままであり、c−MYCの一時的なダウンレギュレーションが、24時間処置後に観察された(図43A〜43C)。その一方で、殆どの抵抗性AML細胞株K562は、24時間の曝露後にBRD4、BRD3及びc−MYCのダウンレギュレーションの開始を示した(図43D〜43F)。感受性のあるALL細胞株について、Jurkatは、48時間及び72時間でc−MYCのダウンレギュレーションを示した(図43G〜43I)。その一方で、BRD4、BRD3及びc−MYCは、RS4−11において影響を受けないままであった(図43J〜43L)。
実施例16:イムノブロット
タンパク質抽出物を7x106個の細胞から調製した;30μgを、4〜15%グラジエントゲル剤(バイオラド,仏国マルヌ−ラ−コケット)を用いてナトリウムドデシル硫酸塩(SDS)−ポリアクリルアミドゲル剤で分離し、Mini Trans−Blot Electrophoretic Transfer cell(バイオラド)を用いてニトロセルロース膜に移した。膜を、LiCorブロッキングバッファー(LiCor,米国ネブラスカ州リンカーン)を用いてブロックし、各一次抗体(抗BRD4(Epitomics5716−1,米国バーリンゲーム)、抗BRD3(ab56342,アブカム,英国)、抗BRD2(ab37633,アブカム,英国)、抗c−MYC(sc−764(N262),米国サンタクルーズ)及び抗GAPDH(Invitrogen398600,米国グランドアイランド))でインキュベートした。ブロットを、ヤギ抗ウサギInfraRedDye680RD又はヤギ抗マウスInfraRedDye800CWの二次抗体(LiCor)の何れかで染色した。膜をLiCor Odysseyスキャナを用いて画像化した。ボックスを、関心のある各バンドの周りに手動で配置した。Odyssey3.0解析ソフトウエア(LiCor)を用いてイントラレーンのバックグラウンドを差し引いて生強度の近赤外蛍光値を戻した。
BRD2のブロットを、ヤギ(BRD2)抗ウサギペルオキシダーゼ標識二次抗体又はヤギ抗マウス(GAPDH)ペルオキシダーゼ標識二次抗体(バイオラッド,米国ヘラクレス)の何れかで染色し、増強化学発光検出系を用いて明らかにした(ECL及びECLプラス,GEヘルスケア,英国バッキンガムシャー)。
実施例17:定量的リアルタイムポリメラーゼ鎖反応(RQ−PCR)
TRIZOL(インビトロゲン,米国グランドアイランド)での抽出物を1μg/uLに滴定した後、全RNAを得、−80℃で保存した。相補的DNA(cDNA)を1μgのRNAから合成した。RQ−PCR反応(BRD2、BRD3、BRD4、c−MYC及びABL)を、標準モードでサーモサイクラーABI7900HTを用いて10分の1のcDNA(RNAの100ngに対して等量)から25μlの体積で行った(2分50℃〜10分95℃の1サイクル、続いて、15秒95℃〜1分60℃の50サイクル)。使用したプライマーを表9にまとめる。
表9:PCRに使用するプライマー
実施例18:初代細胞中の化合物(1−1)の効果
我々は、さらに、初代患者細胞に対する化合物(1−1)の効果を研究した。我々は、AMLの患者の5つの試料及び2人のALL(1人のALLのPh+患者を含む)の試料をex vivoで処理した。患者特徴を図44Dに示す。化合物(1−1)は、35〜85%の様々な程度の範囲で、初代AML患者試料でアポトーシスを誘導した(図44A〜44C)。Ph+ALL患者は、抵抗性であるように思われた。
患者試料におけるBRD2、BRD3及びBRD4の基礎遺伝子の発現を、RQ−PCR分析により評価した。患者特徴を表10にまとめる。ALL患者のうち、Ph+ALLは、より低いBRD発現レベルを示した(図47A及び47B;患者3〜6)。その一方で、AML患者のうちBRD発現レベルは、より不均一であった(図47C及び47D)。
表10:BRD発現について研究した異なるALL患者及びAML患者の特徴
タンパク質抽出物を、250及び500nMのOTX015それぞれでのex vivo処置により患者5のBM細胞から得た(表10;図44)。これらの細胞は、OTX015に対する72時間暴露後にc−MYCのダウンレギュレーションを示す(45A〜45C)。
その広い発明の概念から逸脱することなく上記に示され且つ記載された代表的な実施形態で、変更がなされもよいということが当業者によって理解されるであろう。従って、本発明は、示され且つ記載された代表的な実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定義された本発明の精神及び範囲内で変更を網羅することを意図していると理解される。例えば、代表的な実施形態の具体的な特徴は、特許請求の範囲に係る発明の一部であってもよいし、或いは一部でなくてもよく、開示された実施形態の特徴を組み合わせてもよい。具体的に本明細書に記載されていない限り、用語「a」、「an」及び「the」は、1つの要素に限定されるものではなく、その代わりに、「少なくとも1つ」を意味するものとして解釈されるべきである。
本発明の図及び詳細な説明の少なくとも一部は、本発明の明確な理解に関連する要素に焦点を合わせるために簡略化され、その一方で、明確にするため、当業者が発明の一部を含んでいてもよいと理解するであろう他の要素が除外されていると理解される。しかしながら、これらの要素が当技術分野でよく知られていること、そして、本発明をより理解することを必ずしも容易にしないことを理由として、そのような要素の説明は本明細書で提供されない。
さらに、方法が本明細書に記載された工程の特定の順序に依存しないという範囲のために、工程の特定の順序が特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明に方法に関する請求項は、記載の順序のこれらの工程の実施に限定するべきではなく、当業者は、工程を変えることができ、本発明の精神及び範囲に留まると容易に理解することができる。