関連出願の相互参照
本出願は、2013年7月15日に出願された米国仮出願第61/846,386号の優先権を主張し、これはその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
本発明は黒鉛加熱器に関する。特に、本発明は、半導体加工装置中の半導体ウエハの加熱用を含むがこれらに限定されない多種多様な用途に適切な被覆黒鉛加熱器の構造に関する。
半導体デバイスまたは半導体材料の製作において、半導体ウエハは1000℃を超える比較的高い温度で反応槽を画定する筺体内で加工され、ウエハは、電源と連結する抵抗加熱器の近くに、または接触して配置される。筒状加熱器には、ウエハを支持体に置き、その支持体は加熱器によって加熱することができる。この工程において、半導体ウエハの温度は、約1℃〜10℃の範囲で変化させながら、実質的に一定で一様に保たれる。
特許文献1は、半導体ウエハ加工工程において用いるための、熱分解窒化ホウ素基材の上に重ねた熱分解黒鉛(「PG」)の加熱エレメントを含む加熱ユニットを開示している。黒鉛層は、加熱される領域を画定する渦巻構造または蛇行構造に機械加工され、両端は外部電源に接続されている。そのとき、加熱集合体全体は熱分解窒化ホウ素(「pBN」)層で被覆されている。特許文献2は、加熱エレメント、ウエハ担体またはpBN基板に搭載されたPGエレメントを含む静電チャックを開示し、後に、集合体全体が、化学攻撃から集合体を保護するために、AlNの外側被膜によってCVD被覆されている。
黒鉛は経済的で温度耐性のある耐火材料であるが、ウエハ加工の化学的環境のいくつかによって腐食し、粒子および塵を発生しがちである。従来の機械加工された黒鉛加熱器の不連続な表面のために、加熱されるべき領域にわたって出力密度が劇的に変化する。さらに、黒鉛体は、特に蛇行形状に機械加工された後、もろく、機械的完全性に乏しい。したがって、例えば半導体黒鉛加熱器の用途に典型的である約0.1インチを超える比較的大きい断面厚であっても、加熱器はなおも極端に弱く、注意して扱わねばならない。さらに、黒鉛加熱器は、湾曲またはミスアラインメントを誘発するアニールのため、時間とともに寸法を変え、その結果、電気短絡を起こす。電気伝導性となり得る半導体上に膜を堆積することもまた、半導体ウエハ加工において普通である。そのような膜は加熱器上に揮散性の被膜として堆積することがあり、電気短絡、電気的性質の変化の一因となり、またはさらなる湾曲もしくは歪みを誘発し得る。
黒鉛加熱器の安定性の改善に向けた1つの手法は、窒化ホウ素などの窒化物で黒鉛体を被覆するか、加熱エレメント間の窒化ホウ素橋かけを与えることである。これらの設計は、なお、高い運転温度での熱膨張係数(CTE)ミスマッチ応力(黒鉛と窒化ホウ素材料の間で)からの大きい応力および熱応力を示し得る。大きい応力は、結果として、加熱装置の初期故障を引き起こし得る。
米国特許第5,343,022号明細書
米国特許第6,410,172号明細書
本発明は、加熱器において、熱応力、CTEミスマッチ応力またはそのような応力両方を緩和するために改作した構造を有する加熱器集合体を提供する。
一態様において、本発明は、上側表面および下側表面を有し、上側表面によって画定された面に水平に配向した大部分(major portion)を含む複数の加熱ラング(rung)を備える加熱器を提供する。
本発明の別の態様において、加熱器集合体は被覆黒鉛体を含む。被覆黒鉛体は上側表面および下側表面を有する。黒鉛体には、複数の加熱ラングを画定する所定の通路を画定する構造があってもよく、ここで、各加熱ラングの大部分は上側表面に実質的に平行に配向している。
実施形態において、黒鉛体は、B、Al、Si、Ga、耐火硬質合金、遷移金属および希土類金属からなる群から選択される元素の窒化物;炭化物;炭窒化物;もしくは酸窒化物またはその2種以上の組み合わせから選択される被膜で被覆された黒鉛体である。
別の実施形態において、黒鉛体の被膜は、熱分解窒化ホウ素(pBN)、窒化アルミニウム、窒化チタンアルミニウム、窒化チタン、チタンアルミニウム炭窒化物、炭化チタン、炭化ケイ素および窒化ケイ素から選択される。一実施形態において、被膜は熱分解窒化ホウ素であってもよい。
なお別の実施形態において、黒鉛体は、直列に接続した2つの半分(two halves)をさらに含み、ここで、それぞれ半分は複数の加熱ラングを画定する所定の通路を画定する構造を有し、ここで、各加熱ラングの大部分は上側表面に実質的に平行に配向している。
一実施形態において、黒鉛体は筒状体である。
本発明の実施形態において、各加熱ラングは実質的に同じ幅を有する。別の実施形態において、少なくとも1つの加熱ラングの幅は、少なくとも1つの他の加熱ラングの幅より狭くてよい。黒鉛体の上側表面の頂部の最上加熱ラングの幅は、少なくとも1つの他の加熱ラングより狭くてよい。別の実施形態において、黒鉛体の上側表面の頂部の最上加熱ラングの幅は、少なくとも1つの他の加熱ラングの幅の半分以下である。
別の実施形態において熱膨張係数(CTE)ミスマッチ応力は、加熱器本体を形成する材料の曲げ強さ未満である。
本発明の別の態様において、加熱器集合体は被覆黒鉛体を含む。被覆黒鉛体は上側表面および下側表面を有する。黒鉛体には、複数の加熱ラングを画定する所定の通路を画定する構造があってもよく、ここで、各加熱ラングの大部分は上側表面に実質的に平行に配向している。少なくとも1つの加熱ラングの幅は、別の加熱ラングの幅より狭い。
本発明の別の態様において、加熱器集合体は被覆黒鉛体を含む。被覆黒鉛体は上側表面および下側表面を有する。黒鉛体には、複数の加熱ラングを画定する所定の通路を画定する構造があってもよく、ここで、各加熱ラングの大部分は上側表面に実質的に平行に配向している。黒鉛体の上側表面の頂部の加熱ラングの幅は、他の加熱ラングの幅の半分以下である。
図1は本発明の実施形態による加熱器の透視図である。
図2は図1の加熱器の平面図である。
図3は図1の加熱器の正面図である。
図4は図1の加熱器の側面図である。
図5は比較例1を具現する加熱器の透視図である。
特に明記しなければ、図面は同じ縮尺ではない。図面は、本発明の態様および実施形態を説明するためであり、本明細書に説明される態様に本発明を限定するようには意図されない。本発明の態様および実施形態は、以下の詳細な記載を参照してさらに理解することができる。
発明の詳細な説明
本発明は、窒化物、炭化物、炭窒化物、酸窒化物、またはその2種以上の組み合わせの1つまたは複数の層で被覆された黒鉛体を含む加熱器を提供する。
加熱器は、複数の加熱ラングを画定する所定の通路を画定する構造を有する黒鉛体を含む。加熱器は、通路が複数の加熱ラングを含む連続的通路になり得る完全体であってもよい。一実施形態において、加熱器は、直列に接続した2つの半分を含む黒鉛体を含み、ここで、それぞれ半分は所定の構造の複数の加熱ラングを含む。
本発明の態様によると、加熱器本体は、上側表面、下側表面を含み、加熱器本体は、複数の加熱ラングを画定する所定の通路を画定する構造を有し、ここで、加熱ラングは、加熱器本体の上側表面に実質的に平行に配向した大部分を有する。一実施形態において、加熱器本体は、直列に接続した2つの半分を含み、ここで、それぞれ半分は、複数の加熱ラングを画定する所定の通路を画定する構造を有し、ここで、加熱ラングは、加熱器本体の上側表面に実質的に平行に配向した大部分を有する。
加熱器本体の上側表面に実質的に平行に配向した加熱ラングの大部分を有する構造の提供によって、加熱器本体は、熱膨張が加熱ラングの全長に広がることを可能にするより大きな断面積を有し、このことが、加熱器本体にわたって応力集中を減少させることがわかった。そのような構造はまた、黒鉛体基板および被膜層の両方において応力を減少させることが見いだされた。一実施形態において、熱膨張係数(CTE)ミスマッチ応力は黒鉛の曲げ強さ未満である。
図1−4は、本技術の態様による実施形態を図示する。加熱器100は、第1の半分110および第2の半分120を含む。第1の半分は端子130から延在し、第2の半分は端子140から延在する。端子130および140は端子接続穴132および142をそれぞれ含み、これは電力源が加熱器に電流を供給する結合点である。
加熱器100は上側表面102を含む筒状体として図示される。それぞれの半分、110および120は、それぞれ底面112および122を画定する。加熱器本体100のそれぞれ半分は、複数の加熱器ラング150および160を画定する所定の通路に機械加工されている。図1〜4において、通路は、加熱器の上側表面と平行に配向した加熱ラング150、160(または通路)の大部分、および通路において折り返し点を画定する小部分を有する蛇行した配置で設けられる。図1、2および4に図示するように、それぞれの蛇行パターンは、各端子から直線的かつ垂直に延在し、次いで、折り返して、加熱器の上側表面の面に水平かつ平行に配向した大部分を形成する。
黒鉛体の電流の通路は、渦巻パターン、蛇行パターン、螺旋パターン、ジグザグパターン、連続迷路のパターン、渦巻コイル状パターン、旋回パターンまたはランダム回旋パターンを含むがこれらに限定されない任意の好適なパターンを形成してもよいことは認識されよう。さらに、加熱器本体は、特定の目的または意図した用途の要望に応じて任意の適切な形状で設けることができる。
図4の実施形態において、加熱器本体の上側表面の頂部の最上加熱ラングの幅300は、他の加熱ラングの幅310より狭い。一実施形態において、幅300は幅310の半分以下である。
図示されるように、連続した加熱ラング間に隙間または空間170、180がある。一実施形態において、隙間は、折り返し点を含む連続した加熱ラング間で一様であってもよい。別の実施形態において、大部分の加熱ラング間の隙間の寸法より大きな1つまたは複数の寸法を有する大きさになるように、蛇行した通路の折り返し点近くに画定された隙間を設けることができる。例えば、折り返し点の近くの隙間の高さまたは幅は、大部分の加熱ラング間の隙間より大きくてよい。図1、3および4に示されるように、通路の折り返し点近くの隙間172に、長方形、正方形、円形、三角形、五角形、六角形、七角形などを含むがこれらに限定されない幾何学的形状を設けることができる。より大きな隙間172は次第に細くするか、または加熱ラング間の隙間に導くことができる。図1、3および4に図示されるように、蛇行した通路の折り返し点近くの隙間172は、「キーホール」の隙間を設けるために円形である。加熱器の上側表面の面に水平に配向した大部分を含む加熱ラングの配置によって設けられた比較的大きな断面積を有する本設計は、蛇行した通路の折り返し点近くにより大きな隙間の包含を可能にする。折り返し点近くのより大きな隙間は、さらに加熱器の熱応力を減少させることができる。
加熱ラングの幅は特に限定されていない。一実施形態において、各加熱ラングは同じ幅を実質的に有していてもよい。別の実施形態において、複数の加熱ラングの幅は、互いに異なっていても様々であってもよい。例えば、少なくとも1つの加熱ラングの幅は、少なくとも1つの他の加熱ラングの幅より狭くてもよい。一実施形態において、加熱器本体の上側表面の頂部の最上加熱ラングは、少なくとも1つの他の加熱ラングより狭くてもよい。例えば、最上加熱ラングの幅は、その直下の加熱ラングの幅より狭くてもよい。最上ラングの幅は、他のラングのそれぞれより狭くてよく、他のラングのそれぞれの幅は同じでも異なっていてもよい。一実施形態において、各加熱ラングの幅は異なり、最下ラングから最上ラングまで減少する。別の実施形態において、最上加熱ラングの幅は、少なくとも1つの他の加熱ラングの幅の半分以下であってもよい。例えば、最上加熱ラングの幅は、直下の加熱ラングの幅の半分以下であってもよい。
一実施形態において、1つのラングは、別のラングの幅の約0.5倍;約0.4倍の幅;約0.3倍の幅;約0.2倍の幅;さらに別のラングの幅の約0.1倍である幅を有する。別の実施形態において、1つのラングは、別のラングの幅の約0.05〜約0.5倍;約0.1〜約0.4倍の幅;さらに別のラングの幅の約0.15倍〜約0.3倍である幅を有する。
加熱ラングの幅を変えると、出力密度に影響を与えることがわかった。例えば、他の加熱ラングの幅に対して最上加熱ラングの幅を減少させると、加熱器の頂部の出力密度は増加する。最上加熱ラングの幅がその直下の加熱ラングの幅の半分以下である場合、加熱器の頂部の出力密度は増加する。一般に、以下の式を使用して、出力密度中の変化を計算することができることを見いだした。
したがって、約0.466の幅比は1.15の出力密度比をもたらし、これは、出力密度が約15%増えることを意味する。したがって、加熱ラングの幅を変えることで、加熱器の出力密度の制御を可能にする。
黒鉛形態の厚さは、例えば、内径および外径などの、加熱器の完成部品および寸法の制約についての電気計算から決定されてもよい。完成した加熱器の電気抵抗についての基本的な計算は、当業界で公知であり、すなわち、蛇行した電気通路の長さ、幅および厚さに基づき、電気通路の厚さは黒鉛基材に設計される。
黒鉛体には、少なくとも十分な厚さの実質的に連続の被膜層が設けられ、機械加工段階において構造的完全性および支持体だけでなく所望の耐食性も与える。一実施形態において、被膜層は、黒鉛基材体の露出した表面を実質的にすべて封入する。本発明の工程の別の実施形態において、被膜層は、耐食性および構造支持体のために黒鉛基材体の頂部または外側表面を単純に覆う。
一実施形態において、被膜層の厚さは0.005インチ〜0.10インチである。第2の実施形態において、この被膜層は約0.01インチ〜0.05インチである。第3の実施形態において、被膜層は、約0.02インチ未満の厚さを有する。なお第4の実施形態において、被膜層は、約0.01インチ〜約0.03インチの範囲の厚さを有する実質的に連続的な平坦で固体のpBNの表層を有する。
黒鉛体の被膜層は、B、Al、Si、Ga、耐火硬質合金、遷移金属および希土類金属、またはその錯体および/もしくは組み合わせからなる群から選択される元素の窒化物、炭化物、炭窒化物または酸窒化物の1つもしくは複数を含む。例としては、熱分解窒化ホウ素(pBN)、窒化アルミニウム、窒化チタンアルミニウム、窒化チタン、チタンアルミニウム炭窒化物、炭化チタン、炭化ケイ素および窒化ケイ素を含む。
一実施形態において、被膜層はpBNを含む。第2の実施形態において、層はAlNを含む。第3の実施形態において、被膜層は、AlNおよびBNの錯体を含む。第4の実施形態において、被膜層は、熱分解窒化ホウ素(PBN)と、その電気抵抗率が1014Ω−cm未満になるような約3重量%未満の量の炭素ドーパントとの組成物を含む。なお第5の実施形態において、被膜層は、少量のY2O3が、例えば窒化アルミニウム100重量%に対して5重量%の量で添加された窒化アルミニウムを含む。pBNおよびAlNはともに、優れた絶縁および導電特性を有し、気相から容易に堆積することができる。また、これらは高い温度安定性を有する。さらに、これらは、電気パターンを形成する段階において、被膜層をパターンと容易に目視で区別することができるような、熱分解黒鉛基材(黒色)とは異なる色(白色)を有する。なお別の実施形態において、被膜は炭化ケイ素(SiC)であってもよい。なお別の実施形態において、被膜は炭化タンタル(TaC)であってもよい。
一実施形態において、加熱器は、pBNの単一被膜を含む。一実施形態において、pBNの単一被膜は約0.01〜約0.04インチの範囲の厚さで設けられる。
異なる方法を、黒鉛体/基板上に被膜層(複数可)を堆積させるために使用することができる。一実施形態において、層の少なくとも1つは物理的気相成長法(PVC)によって適用することができ、ここで、被膜材料、例えば窒化ホウ素および/または窒化アルミニウムは、純粋に物理的方法によって気相中へ真空中で移動し、被覆される表面に堆積する。幾つかの変形方法を使用することができる。一実施形態において、被膜材料は高真空下で表面に堆積し、ここで、これは、電気抵抗加熱、電子またはレーザ衝撃、電気アーク蒸発などを使用して加熱されて固体から液体経由で気体状態にまたは固体から直接気体状態に移行する。スパッタリングも使用することができ、それぞれの被膜材料からなる固体ターゲットは、イオン源(例えば不活性ガスプラズマ)とともに、高エネルギーイオン(例えば不活性ガスイオン、特にアルゴンイオン)によって真空中で原子化される。最終的に、それぞれの被膜材料からなるターゲットも、真空下でイオンビームと激突させることができ、気相へ移動し、被覆される表面に堆積することができる。
上記のPVD法も組み合わせることができ、層の少なくとも1つは、例えばプラズマ支援気相成長法によって堆積させることができる。
代替として、本発明または追加の被膜層としての1つの実施形態において、層の1つは化学気相成長法(CVD)によって堆積することができる。PVD法とは対照的に、CVD法は化学反応と関係する。熱、プラズマ、光子またはレーザ活性化化学気相成長法によっておよそ200〜2000℃の温度で生じたガス状成分は、不活性担体ガス、例えばアルゴンと一緒に、通常、圧力下で化学反応が起こる反応槽へ移動する。それによって形成した固体成分は、被覆される黒鉛体に堆積する。揮発性の反応生成物は担体ガスと一緒に排出される。
一実施形態において、黒鉛体は、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第3,152,006号明細書に記載されているCVDプロセスによって熱分解窒化ホウ素の層で被覆される。このプロセスにおいて、適切な比のアンモニアの蒸気と三塩化ホウ素(BCl3)などのガス状ハロゲン化ホウ素が使用されて、黒鉛基材の表面に窒化ホウ素の堆積を形成する。
なお別の実施形態において、層の少なくとも1つは、熱注入法を用いて、例えばプラズマ注入法によって堆積することもできる。そこでは、固定ターゲットは、加熱され、高周波電磁場の印加、およびガス、例えば、空気、酸素、窒素、水素、不活性ガスなどの関連イオン化を介するプラズマ燃焼器によってガス相へと移動する。ターゲットは、例えば、窒化ホウ素または窒化アルミニウムからなり、ガス相へと移動し、純物理式に被覆される黒鉛体に堆積することができる。ターゲットはまたホウ素からなり、イオン化ガス、例えば窒素との反応によって、窒化ホウ素として被覆される表面に堆積することができる。
別の実施形態において、粉末被膜原料が、通常、酸素と他のガスの混合ガスの燃焼による燃焼炎によって溶融される溶射法、すなわちフレーム溶射法が用いられる。アークプラズマ溶射と呼ばれる別の溶射法において、DC電気アークがイオン化ガス(プラズマ)をつくり、これが、噴霧塗料と同じように溶融した粉末被膜材料を溶射するのに用いられる。なお別の実施形態において、被膜材料は、塗料/噴霧として適用され、空気噴霧器を用いて黒鉛体に噴霧される。
比較的「厚い」被膜層、すなわち0.03インチ以上の厚さの被膜層のための別の実施形態において、被膜材料は液体塗料として単純に塗布され、次いで、被膜が乾ききるのに十分に高い温度で乾燥される。BNが被膜として用いられる一実施態様において、BNでオーバーコートされた黒鉛構造は、少なくとも75℃、一実施態様において少なくとも100℃の温度で乾燥され、被膜が乾ききる。
上記の被覆工程のあとの一実施形態において、被覆黒鉛構造は、窒化物被膜を黒鉛体へとさらに結合するために少なくとも500℃の温度まで加熱される。
被覆される材料に応じて、他の被覆工程を使用することができる。例えば、TaCはCVR(化学気相反応)法によって堆積することができ、それによって黒鉛の頂部層は炭化物に変換される。
実質的に連続的なオーバーコートを用いるパターン化された黒鉛体の被覆:この段階では、パターン化された黒鉛体が、ウエハ加工の化学的環境に対する耐食性の向上のために、少なくとも別の層で被覆される。保護オーバーコート層はパターン化された黒鉛体の頂部表面と底部表面の両方を覆うことができ、またはオーバーコーティング層は露出した黒鉛を覆う保護層を単純に設けることができる。
外側被膜は、先の節に記載された第1の被膜層と同じ材料でも、または異なる材料のものでもよい。第1の被膜層のように、パターン化された黒鉛体を覆う外側被膜層は、B、Al、Si、Ga、耐火硬質金属、遷移金属および希土類金属またはその錯体および/もしくは組み合わせからなる群から選択される元素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物の少なくとも1つを含有してよい。一実施形態において、外側被覆層はpBN、AlN、SiCまたはSiNを含む。
オーバーコート層は第1の被膜層と同じ技法を用いて適用することができ、またはPVD、CVD、熱注入、溶射、アーク溶射、塗装および空気噴霧を介した粉末被覆を含むがこれらに限定されない、先の節に記載以外の当分野において公知の任意の他の技法を使用して適用することができる。
一実施形態において、オーバーコート層は0.005インチ〜0.20インチの厚さを有する。別の実施形態においては、約0.01インチ〜0.10インチである。第3の実施形態において、オーバーコート層は、約0.05インチ未満の厚さを有する。なお第4の実施形態において、オーバーコート層は、約0.01インチ〜約0.03インチの範囲の厚さを有するpBNの平坦で固体の実質的に連続な表面層である。
pBNがオーバーコート層に使用される一実施形態において、層の厚さは、pBNに本来備わる高度の熱伝導度異方性を利用して熱の均一性を促進するために最適化される。なお別の実施形態において、pBNならびに熱分解黒鉛のオーバーコート多層が、熱均一性を促進するために用いられる。
本発明の加熱器の構造は、加熱器にかかる熱応力、CTEミスマッチ応力またはそのような応力の両方を緩和するように適合される。加熱器の上側表面と実質的に平行な各加熱器ラングの大部分の配向は、上側表面に実質的に垂直な加熱器ラングの配向と比較したとき、熱応力およびCTEミスマッチ応力を緩和することがわかった。(表1を参照)。本構造は、一実施形態において、加熱器本体を形成する材料の曲げ強さ未満であるCTEミスマッチ応力を有する加熱器を提供する。一実施形態において、本発明の加熱器のCTEミスマッチ応力は、加熱器本体を形成する黒鉛の曲げ強さ未満であることがわかった。
電気接点の形成。この最終段階において、外部電源への接続のための接触位置において、電気接点は頂部被膜層をぬけて機械加工されて黒鉛を露出させる。代替として、電気接点の延在は、最終被覆工程前に最初に黒鉛基材へと機械加工することができ、または、オーバーコーティング作業に先立って付加することができる。
本発明の加熱器は、特にウエハ担体としての半導体加工用途と異なる用途に用いてもよい。本発明の加熱器の機械的強度は、従来の黒鉛加熱器の強度に比べて劇的に向上することが見いだされた。
半導体用途において、異なる大きさおよび/または形状のウエハが一般に加工される。したがって、幅広い実施における本発明の加熱器が、特定の使用または企図される用途で必要とされる任意の適切な大きさおよび形状/構成であってもよいことは認識されよう。加熱器は、筒形、平坦なディスク、プラテンなどであってもよい。加熱器は、最長寸法(例えば径、長さなど)で約2〜20インチと0.05″〜0.50″インチの厚さの寸法を有していてよい。一実施形態において、加熱器は、長さ2″×幅2″×厚さ0.01″の寸法を有するディスクであってもよい。筒の一実施形態において、加熱器は、2″〜20″の内径、0.10″〜0.50″の壁、および2″〜40″の長さの寸法を有する。
本明細書において参照された引用はすべて、参照によって本明細書に明確に組み込まれる。
記載された技術の態様および実施形態による加熱器の特性を評価し、先行の加熱器設計の特性と比較する。実施例1は図1〜4によって表される加熱器である。比較例1は図5で図示する構造を有する加熱器である。図5の加熱器200は、黒鉛体から形成し、pBNで被覆する。加熱器は互いに平行な2つの半分を含む。通路は、加熱器の上側表面に垂直に配向した大部分210を有する加熱ラングを含む蛇行した通路において端子から延在する。加熱器は、蛇行した通路の折り返し点230間の隙間または空間220を含み、加熱ラング間に熱分解窒化ホウ素によって形成された橋かけ240を含む。比較例2では熱分解窒化ホウ素橋かけが取り除かれたという点を除いて、比較例2は比較例1と類似する。
20℃で固定された端子での20℃〜1500℃まで加熱したときの加熱器の熱応力を、Ansys(有限要素分析ソフトウェアツール)を使用して評価する。有限要素分析、および一次元応力の理論値を求める式にAnsysを使用して、加熱器が1800℃から20℃に冷えるときのCTEミスマッチ応力を評価する。
表1に示されるように、本加熱器の構造は、先行の加熱器設計と比較して熱応力が減少しCTEミスマッチ応力が減少した設計を提供することができる。このことは、さらに、黒鉛を封入する被覆層の厚さが減少するときに見られる。
本発明の実施形態を上に記載したが、本明細書を読んで理解すれば改変および変更が他の者に思い付き得る。改変および変更が特許請求の範囲またはその均等物の範囲内に含まれる限り、請求項はそれらをすべて含むように意図される。