(5.詳細な説明)
(5.1 概説)
本明細書に提供されるのは、GDF11のレベル及び/又は活性を、アクチビンII型受容体インヒビターによる治療に対する患者の応答性、アクチビンII型受容体インヒビターによる治療の効力、又はアクチビンII型受容体インヒビターによる治療のための適切な投薬量の指標として使用することにより、貧血、又は貧血もしくは無効造血と関連する疾患もしくは状態を治療する方法である。本明細書に記載の方法に従って治療することができる貧血又は無効造血と関連する疾患としては、限定するものではないが、サラセミア(例えば、βサラセミア)、骨髄異形成症候群、慢性悪性貧血、鎌状赤血球貧血、及びダイアモンドブラックファン貧血が挙げられる。本明細書に記載の方法に従って治療することができる貧血又は無効造血と関連する状態としては、限定するものではないが、赤血球レベルの減少、ヘモグロビンレベルの減少、ヘマトクリットレベルの減少、及び正染性赤芽球(Ery-C)の減少が挙げられる。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、貧血を治療する方法である。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、サラセミア(例えば、βサラセミア)を治療する方法である。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、赤血球レベルの減少を治療する方法又は赤血球レベルを増加させる方法である。本明細書に記載の方法で使用されるアクチビンII型受容体インヒビターは、ActRIIA及び/又はActRIIBのインヒビター、例えば、本明細書に記載の又は当技術分野で公知のインヒビターのいずれかであることができる。好ましい実施態様において、アクチビンII型受容体インヒビターは、ActRIIAの細胞外ドメイン及びヒトIgG1 Fcドメインからなるヒト化融合タンパク質(「ActRIIA-Fc」、例えば、配列番号7)である。
本明細書に提供される方法は、一つには、GDF11のレベルがβ-サラセミアを有するヒト患者の血液中で、及びβ-サラセミアのマウスモデルで増加しているという発見、並びにActRIIA-mFc(ActRIIAがマウスIgGに融合したもの)がβ-サラセミアのマウスモデルでGDF11のレベルの増加を低下させるという発見に基づいている(実施例参照)。さらに、理論により限定されるものではないが、ActRIIA-mFcによるリガンド捕捉は、無効造血を解消し、中間型サラセミアの実験的マウスモデル(Hbbth1/th1マウス)で貧血を改善させる。本明細書に提示される実施例で示されているように、ActRIIA-mFcによるサラセミアマウス(Hbbth1/th1)の処置は、赤血球数、ヘマトクリット、ヘモグロビン、平均細胞容積(MCV)、及び平均細胞ヘモグロビンを増加させ、正染性赤芽球(Ery-C)を増加させ、骨髄及び脾臓細胞充実度を低下させ、脾臓及び骨髄中の後期好塩基性/多染性赤芽球(Ery-B)を減少させ、ビリルビンレベルのレベルを低下させ(赤血球破壊の減少を示す)、アポトーシス細胞を減少させた。さらに、本明細書に提供される方法は、一つには、インビトロ培養系において、GDF-11がヒト骨髄由来赤血球前駆細胞の成長を阻害し、ActRIIA-mFcがこの阻害効果をレスキューするという発見に基づいている(実施例参照)。総合すると、本明細書に提示されるデータは、GDF-11レベル、例えば、GDF11の血液及び/又は血清レベルが、どの患者がActRIIA-Fcに応答し得るかを特定することができ、薬物に対する臨床応答をモニタリングするために使用することができることを示している。本明細書に提示されるデータは、ActRIIA-Fc(例えば、ActRIIA-mFc、又はActRIIA-hFc、例えば、配列番号7)が、無効造血と関連する貧血を治療するのに有用であることも示している。
実施例で例証される、本明細書に記載の知見は、GDF11のレベル及び/又は活性の検出を、(i)患者における無効造血の度合いのマーカー(例えば、血清バイオマーカー)として、(ii)アクチビンII型受容体インヒビター(例えば、ActRIIA-Fc)に対する患者の応答を測定するためのマーカーとして、又は(iii)治療後の患者におけるアクチビンII型受容体インヒビター(例えば、ActRIIA-Fc)の薬力学的効果を評価するために使用することができることを示しており、ここで、該患者は、貧血又は貧血もしくは無効造血と関連する疾患(例えば、サラセミア、例えば、β-サラセミア)を有する患者である。したがって、ある実施態様において、GDF11は、本明細書に記載の方法において、ActRIIA-Fc(例えば、ActRIIA-hFc、例えば、配列番号7)治療の効力の指標として及び/又はActRIIA-Fc(例えば、ActRIIA-hFc、例えば、配列番号7)による治療に対する応答の欠如の指標として使用することができる。さらに、本明細書に記載されているように、GDF11は、ActRIIA-Fc(例えば、ActRIIA-hFc、例えば、配列番号7)の経時的治療効力を評価するための信頼できる分子マーカーとして使用することができる。さらに、具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、血液中のGDF11のレベル及び/又は活性の検出(例えば、無効造血と関連する疾患における異常発現の検出)、並びにGDF11のレベル及び/又は活性に応じた用量でのアクチビンII型受容体インヒビター、例えば、ActRIIA-Fcの投与を含む方法である。
(5.2 診断法/予後判定法/治療法)
一態様において、本明細書に提供される方法は、対象の組織試料(例えば、血清又は血液)中のGDF11のレベル及び/又は活性を決定すること、GDF11の正常なレベル及び/又は活性と比べてGDF11のレベル及び/又は活性が上昇している対象を選択すること、並びにGDF11のレベル及び/又は活性が上昇している対象をアクチビンII型受容体インヒビターで治療することを含む。対象の組織試料(例えば、血清又は血液)中のGDF11のレベル及び/又は活性の上昇は、患者がアクチビンII型受容体インヒビターによる治療に応答し得ることを示すことができる。本明細書に記載の方法の一実施態様において、アクチビンII型受容体インヒビターは、ActRIIA-Fc、例えば、ActRIIA-hFc(例えば、配列番号7)である。
GDF11レベル及び/又は活性をさらに用いて、アクチビンII型受容体インヒビターで治療すべき候補となる対象に対する適切な投与を評価し、治療期間中にアクチビンII型受容体インヒビターの投薬量を調整すべきかどうかを評価し、及び/又はアクチビンII型受容体インヒビターの適切な維持用量を評価することができる。GDF11レベル及び/又は活性が正常なレベル及び/又は活性の範囲外である場合、GDF11のレベル及び/又は活性に応じて、アクチビンII型受容体インヒビターの投与を開始し、増大させ、低下させ、遅延させ、又は終了することができる。例えば、GDF11レベル及び/又は活性が正常なレベル及び/又は活性と比べて上昇している場合、アクチビンII型受容体インヒビターの投与を開始し又は増大させることができ、GDF11レベル及び/又は活性が正常なレベル及び/又は活性と比べて減少している場合、アクチビンII型受容体インヒビターの投与を低下させ、遅延させ、又は終了することができる。
一態様において、本明細書に記載の方法は、対象にアクチビンII型受容体インヒビターを投与すること、並びに対象におけるGDF11のレベル及び/又は活性をモニタリングすることを含む。(アクチビンII型インヒビターの投与前のレベル及び/又は活性と比べた)アクチビンII型受容体インヒビターの投与後のGDF11のレベル及び/又は活性の減少は、対象がアクチビンII型受容体インヒビターによる治療に応答すること、及び/又はアクチビンII型受容体インヒビターによる治療が有効であることを示すことができる。(アクチビンII型インヒビターの投与前のレベル及び/又は活性と比べた)アクチビンII型受容体インヒビターの投与後のGDF11のレベル及び/又は活性の無変化又は増加は、対象がアクチビンII型受容体インヒビターによる治療に応答しないこと、又は対象が効力のためにより高用量のアクチビンII型受容体インヒビターを必要とすることを示すことができる。
他の態様において、(アクチビンII型インヒビターの投与前のレベル及び/もしくは活性と比べた又はGDF11の正常なレベル及び/もしくは活性と比べた)アクチビンII型受容体インヒビターの投与後のGDF11のレベル及び/又は活性の変化の度合いは、アクチビンII型受容体インヒビターの適切な投薬又は投与レジメンを示すことができる。例えば、(アクチビンII型インヒビターの投与前のレベル及び/又は活性と比べて)ある用量のアクチビンII型受容体インヒビターの投与後にGDF11のレベル及び/又は活性が減少しないこと又はわずかにしか減少しないこと(例えば、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、もしくは25%未満、又は30%未満の減少)は、効力のためにより高用量のアクチビンII型受容体インヒビターが必要とされるか又は望ましいをこと示すことができる。したがって、いくつかの実施態様において、GDF11のレベル及び/又は活性の評価によって、患者へのある用量のアクチビンII型受容体インヒビターの投与後にGDF11のレベル及び/又は活性が減少しないこと又は望ましくない程度にわずかしか減少しないこと(例えば、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、もしくは25%未満、又は30%未満の減少)が示される場合、該患者に、より高用量のアクチビンII型受容体インヒビター(例えば、20%、25%、30%、50%、75%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、又は1000%高い用量)を投与する。
他の実施態様において、(アクチビンII型インヒビターの投与前のレベル及び/又は活性と比べた)ある用量のアクチビンII型受容体インヒビターの投与後のGDF11のレベル及び/又は活性の減少(例えば、わずかな又は平均的な減少、例えば、10%未満、15%未満、20%未満、もしくは25%未満、30%未満、50%未満、又は75%未満の減少、或いは10%〜75%の減少、又は25%〜50%の減少)は、アクチビンII型受容体インヒビターによる治療が所与の用量及び/又は投与レジメンで有効であることを示すことができる。したがって、いくつかの実施態様において、GDF11のレベル及び/又は活性の評価によって、患者へのある用量のアクチビンII型受容体インヒビターの投与後のGDF11のレベル及び/又は活性の減少(例えば、わずかな又は平均的な減少、例えば、10%未満、15%未満、20%未満、もしくは25%未満、30%未満、50%未満、又は75%未満の減少、或いは10%〜75%の減少、又は25%〜50%の減少)が示される場合、該患者に、同じ用量のアクチビンII型受容体インヒビターを投与する。特定の実施態様において、GDF11のレベル及び/又は活性の評価によって、患者へのある用量のアクチビンII型受容体インヒビターの投与後のGDF11のレベル及び/又は活性の平均的な又は望ましい減少(例えば、20%〜75%、25%〜75%、又は30%〜60%の減少)が示される場合、該患者に、同じ用量のアクチビンII型受容体インヒビターを投与する。(アクチビンII型インヒビターの投与前のレベル及び/又は活性と比べた)ある用量のアクチビンII型受容体インヒビターの投与後のGDF11のレベル及び/又は活性の大きな(又は望ましくない程度に大きな)減少(例えば、50%を上回る、60%を上回る、70%を上回る、75%を上回る、80%を上回る、90%を上回る、95%を上回る減少)は、(例えば、治療の副作用、例えば、高血圧を回避するために)より低用量のアクチビンII型受容体インヒビターが望ましいことを示すことができる。したがって、いくつかの実施態様において、GDF11のレベル及び/又は活性の評価によって、患者へのある用量のアクチビンII型受容体インヒビターの投与後のGDF11のレベル及び/又は活性の大きな(又は望ましくない程度に大きな)減少(例えば、50%を上回る、60%を上回る、70%を上回る、75%を上回る、80%を上回る、90%を上回る、95%を上回る減少)が示される場合、該患者に、より低用量のアクチビンII型受容体インヒビター(例えば、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、又は95%低い用量)を投与する。
GDF11のレベル及び/又は活性のモニタリングは、GDF11のレベル及び/又は活性を、患者へのアクチビンII型受容体インヒビターの投与から1日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、又は1年後に評価することによって実施することができる。患者へのアクチビンII型受容体インヒビターの投与後のGDF11のレベル及び/又は活性は、患者へのアクチビンII型受容体インヒビターの投与の適切な又は望ましい頻度の指標として使用することもできる。例えば、アクチビン受容体II型インヒビターの投与後のGDF11のレベル及び/又は活性の減少がある期間(例えば、1日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、10週間、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、又は1年)にわたって維持される場合、アクチビンII型受容体インヒビターを該期間中に1回(例えば、1日に1回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、8週間に1回、3カ月に1回、4カ月に1回、5カ月に1回、6カ月に1回、又は1年に1回)投与することができる。具体的な実施態様において、アクチビン受容体II型インヒビターの投与後のGDF11のレベル及び/又は活性の減少が、例えば、1カ月、2カ月、又は3カ月にわたって維持される場合、アクチビンII型受容体インヒビターを、それぞれ、1カ月、2カ月、又は3カ月に1回投与することができる。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)対象(例えば、貧血を有する対象)の組織(例えば、血液、血清、血漿、肝臓、骨髄、及び/又は脾臓)中のGDF11のレベルを評価すること;(ii)アクチビンII型受容体インヒビターを該対象に投与すること;並びに(iii)アクチビンII型受容体インヒビターの投与後の対象(例えば、貧血を有する対象)の組織(例えば、血液、血清、血漿、肝臓、骨髄、及び/又は脾臓)中のGDF11のレベルを評価することを含む方法である。工程(ii)の投与は、アクチビンII型受容体インヒビターの単回投与を含む(すなわち、単一用量を一度に対象に投与する)か、又はアクチビンII型受容体インヒビターの複数回投与を含むことができる(例えば、投与は、完全な投与レジメンを含み得る)。工程(iii)の評価は、工程(ii)の投与後の任意の時点で実施することができる。例えば、工程(iii)の評価は、工程(ii)の投与から1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、10週間、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、又は1年後に実施することができる。別の例として、工程(iii)の評価は、工程(ii)の投与から1〜3日、2〜4日、3〜5日、5〜7日、1〜2週間、2〜3週間、3〜4週間、1〜2カ月、2〜3カ月、3〜4カ月、4〜5カ月、5〜6カ月、又は6〜12カ月後に実施することができる。治療レジメンは、工程(i)及び(iii)における評価の結果に基づいて調整することができる。例えば、工程(i)の評価において決定された対象の組織中のGDF11のレベルが工程(iii)の評価において決定された対象の組織中のGDF11のレベルと比べて減少している場合、該対象に投与されるアクチビンII型受容体インヒビターの用量を維持するか又は減少させることができる。逆に、工程(i)の評価において決定された対象の組織中のGDF11のレベルが工程(iii)の評価において決定された対象の組織中のGDF11のレベルと比べて増加している場合、該対象に投与されるアクチビンII型受容体インヒビターの用量を増加させることができる。前記の方法の工程を必要に応じて反復/改変して、治療を受けている対象に適している適切な用量/治療レジメンを決定することができる。
別の態様において、本明細書に提供されるのは、(a)アクチビンII型受容体インヒビターの第一の用量を患者に投与すること、(b)該患者の組織試料(例えば、血清)中のGDF11のレベル及び/又は活性を決定すること、並びに(c)アクチビンII型受容体インヒビターの第二の用量を投与することを含み、ここで、該GDF11のレベル及び/又は活性が正常と比べて上昇している場合、アクチビン受容体II型インヒビターの該第二の用量は、該第一の用量よりも大きく(例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、又は1000%大きい)、該GDF11のレベル及び/又は活性が正常と比べて減少している場合、アクチビン受容体II型インヒビターの該第二の用量は、該第一の用量よりも小さい(例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%小さい)、方法である。これらの実施態様において、組織試料中のGDF11のレベル及び/又は活性を、GDF11の正常なレベル及び/又は活性(例えば、健常対象、例えば、貧血を有しない同じ年齢層の対象の同じ組織由来の試料中のGDF11の平均的なレベル及び/又は活性)と比較する。ある実施態様において、GDF11のレベル及び/又は活性は、それが、GDF11の正常なレベル及び/又は活性と比べて、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、又は少なくとも500%上昇しているとき、GDF11の正常なレベル及び/又は活性と比べて上昇しているとみなされる。ある実施態様において、GDF11のレベル及び/又は活性は、それが、GDF11の正常なレベル及び/又は活性と比べて、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、又は少なくとも200%上昇しているとき、GDF11の正常なレベル及び/又は活性と比べて上昇しているとみなされる。いくつかの実施態様において、GDF11のレベル及び/又は活性は、それが、GDF11の正常なレベル及び/又は活性と比べて、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%減少しているとき、GDF11の正常なレベル及び/又は活性と比べて減少しているとみなされる。いくつかの実施態様において、GDF11のレベル及び/又は活性は、それが、GDF11の正常なレベル及び/又は活性と比べて、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、又は少なくとも90%減少しているとき、GDF11の正常なレベル及び/又は活性と比べて減少しているとみなされる。
本明細書に記載の方法は、一つには、GDF11が赤血球の前駆細胞の成長を阻害し、したがって、GDF11のレベルが赤血球のレベルと相関し得るという発見に基づいている。赤血球、ヘモグロビン、又はヘマトクリットのレベルの減少が無効造血及び貧血と関連しているのに対し、赤血球、ヘモグロビン、又はヘマトクリットのレベルの過剰な増加は、(最適よりも高い用量のアクチビンII型受容体インヒビターによる治療によって生じ得る)血圧の上昇及び他の望ましくない副作用と関連しているので、患者の赤血球の最適なレベルを維持することが望ましい。したがって、患者のGDF11のレベル及び/又は活性をGDF11の正常なレベル及び/もしくは活性又はその付近(例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、又は75%以内)に維持する投与レジメンでアクチビンII型受容体インヒビターを投与することが望ましいことがある。
ある実施態様において、GDF11のレベル及び/又は活性がGDF11の正常なレベル及び/又は活性未満に低下していることが明らかにされた場合、アクチビンII型受容体インヒビターの投与をそれに応じて調整し、例えば、GDF11のレベル及び/又は活性が正常又はGDF11の正常なレベル及び/もしくは活性の5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、もしくは75%に戻るまで遅延させるか、或いは一時的に又は恒久的に終了させる。GDF11のレベル及び/又は活性がGDF11の正常なレベル及び/又は活性未満に低下していることが明らかにされる他の実施態様において、アクチビンII型受容体インヒビターの投与を遅延させるのではなく、該インヒビターの投薬量又は投与頻度を、赤血球、ヘモグロビン、もしくはヘマトクリットの許容されない増加のリスクを軽減する量に設定するか、又はその代わりに、インヒビターの使用を赤血球、ヘモグロビン、もしくはヘマトクリットの許容されない増加に対処する薬剤(例えば、血圧降下剤)と組み合わせる治療レジメンを患者のために開発する。
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、それを必要とする個体における貧血を、該個体におけるGDF11のレベル及び/又は活性を決定し、該GDF11のレベル及び/又は活性が上昇している場合、該個体に治療有効量のアクチビンII型受容体インヒビター、特に、ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIa-hFc)を投与し、任意に、GDF11のレベル及び/又は活性をさらにモニタリングし(又は決定し)、アクチビンII型受容体インヒビターの用量を調整する(ここで、例えば、GDF11が正常なレベル及び/又は活性と比べて上昇している場合、アクチビンII型受容体インヒビターの用量を増加させ、GDF11のレベル及び/又は活性が正常なレベル及び/又は活性よりも低い場合、アクチビンII型受容体インヒビターを減少させる)ことにより治療する方法である。
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、それを必要とする個体におけるβ-サラセミアを、該個体におけるGDF11のレベル及び/又は活性を決定し、該GDF11のレベル及び/又は活性が上昇している場合、該個体に治療有効量のアクチビンII型受容体インヒビター、特に、ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIa-hFc)を投与し、任意に、GDF11のレベル及び/又は活性をさらにモニタリングし(又は決定し)、アクチビンII型受容体インヒビターの用量を調整する(ここで、例えば、GDF11レベル及び/又は活性が正常と比べて上昇している場合、アクチビンII型受容体インヒビターの用量を増加させ、GDF11のレベル及び/又は活性が正常よりも低い場合、アクチビンII型受容体インヒビターを減少させる)ことにより治療する方法である。
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、それを必要とする個体における赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、又はEry-Cレベルを、該個体におけるGDF11のレベル及び/又は活性を決定し、該GDF11のレベル及び/又は活性が上昇している場合、該個体に治療有効量のアクチビンII型受容体インヒビター、特に、ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIa-hFc)を投与し、任意に、GDF11のレベル及び/又は活性をさらにモニタリングし(又は決定し)、アクチビンII型受容体インヒビターの用量を調整する(ここで、例えば、GDF11の正常なレベル及び/又は活性が正常と比べて上昇している場合、アクチビンII型受容体インヒビターの用量を増加させ、GDF11のレベル及び/又は活性が正常よりも低い場合、アクチビンII型受容体インヒビターを減少させる)ことにより増加させる方法である。
ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、貧血、無効造血、赤血球レベルの減少、又は本明細書に記載の任意の他の血液障害を治療又は改善する方法と関連させて利用される。ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、ヘマトクリットレベル、又は貧血、無効造血、赤血球レベルの減少、もしくは本明細書に記載の任意の他の血液障害を有する患者におけるコロニー形成単位のレベルを増加させる方法と関連させて利用される。ある実施態様において、赤血球レベルを、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、又は少なくとも500%増加させる。ある実施態様において、ヘモグロビンレベルを、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、又は少なくとも500%増加させる。ある実施態様において、ヘマトクリットレベルを、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、又は少なくとも500%増加させる。ある実施態様において、コロニー形成単位レベルを、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、又は少なくとも500%増加させる。ある実施態様において、本明細書に提供される方法は、赤血球始原細胞及び前駆細胞のアポトーシスレベルを減少させる方法と関連させて利用される。
(5.3 患者集団)
本明細書に記載の方法に従って治療される対象は、任意の哺乳動物、例えば、齧歯類及び霊長類、好ましい実施態様において、ヒトであることができる。ある実施態様において、本明細書に記載の方法を用いて、任意の哺乳動物、例えば、齧歯類及び霊長類において、好ましい実施態様では、ヒト患者において、貧血もしくは無効造血を治療し、又は赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、もしくはEry-Cレベルをモニタリングし、及び/もしくは増加させることができる。
一態様において、本明細書に提供される方法は、治療法と関連させて利用される。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、貧血(例えば、無効造血によって生じる貧血)を治療する方法である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、無効造血(例えば、サラセミア、骨髄異形成症候群、慢性悪性貧血、又は鎌状赤血球貧血)と関連する疾患を治療する方法である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、遺伝性骨髄不全症候群(例えば、限定されないが、無巨核球性血小板減少症、ダイアモンド-ブラックファン貧血、先天性角化異常症、ファンコーニ貧血、ピアソン症候群、重度先天性好中球減少症、シュワックマン-ダイアモンド症候群、血小板減少橈側列無形成)を治療する方法である。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、特に赤血球に影響を及ぼす遺伝性骨髄不全症候群を治療する方法である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、末期腎疾患と関連する貧血及び/又は骨障害を治療する方法である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、サラセミア(例えば、β-サラセミア)、骨髄異形成症候群、慢性悪性貧血、鎌状赤血球貧血、又はダイアモンド-ブラックファン貧血を治療する方法である。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、β-サラセミアを治療する方法である。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、ダイアモンド-ブラックファン貧血を治療する方法である。
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、貧血を有する(例えば、そのように診断された)患者を治療する方法である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、サラセミア、骨髄異形成症候群、慢性悪性貧血、又は鎌状赤血球貧血などの無効造血と関連する疾患を有する(例えば、そのように診断された)患者を治療する方法である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、無巨核球性血小板減少症、ダイアモンド-ブラックファン貧血、先天性角化異常症、ファンコーニ貧血、ピアソン症候群、重度先天性好中球減少症、シュワックマン-ダイアモンド症候群、血小板減少橈側列無形成、又は特に赤血球に影響を及ぼす骨髄不全症候群などの遺伝性骨髄不全症候群を有する(例えば、そのように診断された)患者を治療する方法である。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、末期腎疾患と関連する貧血及び/又は骨障害を有する(例えば、そのように診断された)患者を治療する方法である。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、サラセミア(例えば、β-サラセミア)、骨髄異形成症候群、慢性悪性貧血、鎌状赤血球貧血、又はダイアモンド-ブラックファン貧血を有する(例えば、そのように診断された)患者を治療する方法である。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、β-サラセミアを有する(例えば、そのように診断された)患者を治療する方法である。
貧血は、限定するものではないが:慢性腎不全、骨髄異形成症候群、関節リウマチ、骨髄移植、固形腫瘍(例えば、乳癌、肺癌、結腸癌)、リンパ系の腫瘍(例えば、慢性リンパ性白血病、非ホジキン及びホジキンリンパ腫)、造血系の腫瘍(例えば、白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫)、放射線療法、化学療法(例えば、白金を含むレジメン)、炎症性疾患及び自己免疫疾患(限定されないが、関節リウマチ、他の炎症性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、急性又は慢性皮膚疾患(例えば、乾癬)、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)を含む)、特発性又は先天性疾患を含む急性又は慢性腎疾患又は腎不全、急性又は慢性肝疾患、急性又は慢性出血、患者の同種抗体もしくは自己抗体が原因で及び/又は宗教上の理由のために赤血球の輸血が不可能な状況、感染症(例えば、マラリア、骨髄炎)、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球病、サラセミアを含む)、薬物の使用又は乱用(例えば、アルコール乱用;何らかの原因で貧血を有し、輸血を回避すべき小児患者)、並びに基礎心肺疾患を有する高齢の貧血患者が循環過負荷に対する懸念のために輸血を受けることができない状況を含む、種々の障害及び状態と関連している。ある実施態様において、本明細書に記載の方法を用いて、上記の障害又は状態のうちの1つ又は複数を有する任意の患者において、貧血を治療するか、又は赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、もしくはEry-Cレベルをモニタリングし、及び/もしくは増加させる。
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象がエリスロポエチンの投与に応答しない貧血を治療する方法である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象が、鉄、ビタミンB-12、及び/又は葉酸塩の投与に応答しない貧血を治療する方法である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、赤血球始原細胞及び前駆細胞がアポトーシスによる死に感受性が高い結果として生じる貧血を治療する方法である。
ある実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される(例えば、治療に選択される)対象は、GDF11の正常レベルと比べて、GDF11のレベル及び/又は活性が上昇している。例えば、本明細書に記載の方法に従って治療される(例えば、治療に選択される)対象は、同じ年齢区分の健常対象由来の同じ組織中のGDF11の平均的なレベル及び/又は活性と比べて、組織中のGDF11のレベル及び/又は活性が上昇している。GDF11のレベル及び/又は活性は、当技術分野で公知の又は本明細書に記載の任意の方法によって評価することができる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される対象は、GDF11の正常なレベル及び/又は活性(例えば、健常対象の平均的なレベル)と比べて、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、又は1000%であるGDF11のレベル及び/又は活性を有する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される対象は、GDF11の正常なレベル及び/又は活性と比べて、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも200%、又は少なくとも500%であるGDF11のレベル及び/又は活性を有する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法を用いて、GDF11のレベルが上昇していることが明らかにされた対象における赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリットのレベル、又はEry-Cレベルをモニタリングし、調節し、又は増加させる。
ある実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される(例えば、治療に選択される)対象は、(i)(例えば、血清、骨髄、肝臓、及び/又は脾臓中の)GDF11の正常レベルと比べて上昇したGDF11のレベル及び/又は活性、並びに(ii)貧血又は貧血もしくは無効造血と関連する疾患又は状態(例えば、貧血と診断された対象)を有する。ある実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される(例えば、治療に選択される)ヒト患者は、GDF11の正常レベルと比べて上昇したGDF11の血清レベル及び/又は活性を有し、かつ貧血を有する(例えば、貧血と診断されている)。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される対象は、望ましくない程度に少ない赤血球数、望ましくない程度に低いレベルのヘモグロビン、望ましくない程度に低いレベルのヘマトクリット、及び/又は望ましくない程度に低いレベルのEry-Cを有する。本明細書に記載の方法を用いて、選択された患者集団における赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、又はEry-Cレベルをモニタリングし、調節し、及び/又は増加させることができる。他の実施態様において、本明細書に提供されるのは、望ましくない程度に低い赤血球又はヘモグロビンレベルを生じるリスクのある患者、例えば、大手術又は相当な失血を生じ得る他の処置を受けようとしている患者を治療する方法である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される対象は、大手術又は相当な失血を生じ得る別の処置を受けようとしている。
ヘモグロビンのレベルが望ましくない程度に低いかどうかを決定する場合、適当な年齢及び性別区分についての正常未満のレベルは、個人差が考慮されるものの、貧血を示すものとなり得る。例えば、12g/dlというヘモグロビンレベルは、一般に、成人における正常の下限と考えられる。ヘモグロビンのレベルの低さの潜在的原因としては、失血、栄養不良、薬物に対する反応、骨髄の様々な問題、及び多くの疾患が挙げられる。患者を、通常、約10g/dl〜約12.5g/dl、典型的には、約11.0g/dlの目標ヘモグロビンレベルにまで該患者を回復させることを意図した投与レジメンで治療することができるが(Jacobsらの文献(2000) Nephrol Dial Transplant 15, 15-19も参照されたい)、より低い目標レベルによって、より少ない心血管副作用が生じる可能性がある。最適なのは、目標ヘモグロビンレベルを各々の患者のために個別化することができることである。ある実施態様において、本明細書に記載の方法で治療される患者は、13g/dl未満、12.5g/dl未満、12g/dl未満、11.5g/dl未満、11g/dl未満、10.5g/dl未満、10g/dl未満、9.5g/dl未満、又は9g/dl未満のヘモグロビンレベルを有する。
赤血球のレベルが望ましくない程度に低いかどうかを決定する場合、ヘマトクリットレベル(細胞によって占められる血液試料の容積の割合)を用いて、赤血球の状態を評価することができる。健常個体のヘマトクリットレベルは、成人男性では41〜51%の範囲、成人女性では35〜45%の範囲である。目標ヘマトクリットレベルは、通常、30〜33%付近であるが、ヘマトクリットレベルは人によって様々である。最適なのは、目標ヘマトクリットレベルを各々の患者のために個別化することができることである。
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法を用いて、最適よりも高い用量のアクチビンII型受容体インヒビター、特に、ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIa-hFc)を投与したときに有害作用を受けやすい患者における貧血、又は貧血もしくは無効造血と関連する疾患もしくは状態を治療する。最適よりも高い用量のアクチビンII型受容体インヒビターの投与と関連し得る有害作用としては、限定するものではないが、赤血球レベル、ヘマトクリットレベル、又はヘモグロビンレベルの過剰増加、鉄貯蔵の過剰増加、及び骨髄又は脾臓過形成が挙げられる。さらに、赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、又はヘマトクリットレベルの過剰増加は、血圧及び/又は他の望ましくない副作用の増加を引き起こし得る。具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、高血圧(例えば、収縮期血圧、拡張期血圧、及び/もしくは平均動脈血圧の上昇)又は赤血球レベルの過剰増加に関連し得る別の状態(例えば、頭痛、インフルエンザ様症候群、もしくは血管血栓症)になりやすい。具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、アクチビンII型受容体インヒビター(例えば、ActRIIA-hFc、例えば、配列番号7)で治療されたとき、高血圧又は赤血球レベルの過剰増加に関連し得る別の状態になりやすい。
任意の年齢の対象を本明細書に記載の方法に従って治療することができる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される対象は、55歳超である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される対象は、3歳又は10歳未満である。他の実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される対象は、18歳未満である。また他の実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される対象は、18〜55歳である。
(5.4 GDF11レベル及び/又は活性の評価)
GDF11のレベル又は活性は、当技術分野で公知の又は本明細書に記載の任意の方法により決定することができる。例えば、組織試料中のGDF11のレベルは、例えば、ノーザンブロッティング、PCR解析、リアルタイムPCR解析、又は当技術分野で公知のもしくは本明細書に記載の任意の他の技術を用いて該試料中のGDF11の転写されたRNAを評価する(例えば、定量する)ことにより決定することができる。一実施態様において、組織試料中のGDF11のレベルは、該試料中のGDF11のmRNAを評価する(例えば、定量する)ことにより決定することができる。
組織試料中のGDF11のレベルは、例えば、免疫組織化学的解析、ウェスタンブロッティング、ELISA、免疫沈降、フローサイトメトリー解析、又は当技術分野で公知のもしくは本明細書に記載の任意の他の技術を用いて該試料中のGDF11のタンパク質発現のレベルを評価する(例えば、定量する)ことにより決定することができる。特定の実施態様において、GDF11のレベルは、患者の組織試料中(例えば、ヒト血清中)に存在するGDF11の量を定量することができ、及び/又はアクチビンII型受容体インヒビターによる治療後のGDF11のレベルの補正を検出することができる方法により決定される。一実施態様において、組織試料中のGDF11のレベルは、ELISAを用いて該試料中のGDF11のタンパク質発現を評価する(例えば、定量する)ことにより決定される。例えば、GDF11は、実施例に記載のサンドイッチELISA法を用いてヒト血清中で同定及び定量することができる。組織試料中のGDF11のレベルの決定に使用されるサンドイッチELISA法は、ELISAプレートを(例えば、ActRIIA-mFc、又はActRIIA-hFc、例えば、配列番号7を用いて)ActRIIA-Fcでコーティングすること、該プレートを組織試料(例えば、ヒト血清)と接触させること、及びActRIIA-Fcに結合する組織試料(例えば、ヒト血清)中のActRIIAリガンド(例えば、GDF11)を特異的抗体によって検出することを含むことができる。いくつかの実施態様において、GDF11のレベル及び/又は活性を決定する際に使用される本明細書に記載の方法(例えば、サンドイッチELISA)は、ActRIIAに結合した100pg/mlの組換えGDF11、アクチビンA、及び/又はアクチビンBから検出することができる。
試料中(例えば、組織試料、例えば、血液、血清、血漿、肝臓、脾臓、及び/又は骨髄の試料中)のGDF11のレベルを測定するアッセイで使用される抗体は、当技術分野で公知であるか、又は当業者に公知の手法を用いて容易に開発することができる。試料中のGDF11のレベルを測定するアッセイで使用することができるモノクローナル抗体の例としては、LifeSpan Biosciences社(Seattle, WA)製のカタログ番号LS-C121127、LS-C138772、LS-C105098の抗体; Santa Cruz Biotechnology社(Santa Cruz, CA)から入手可能なカタログ番号(X-19)の抗体: sc-81952;及びSigma-Aldrich Co. LLCから入手可能な製品番号: WH0010220M3の抗体が挙げられる。
GDF11の活性は、限定するものではないが、コロニー形成アッセイ、レポーター遺伝子アッセイ(例えば、GDF11応答性レポーター遺伝子コンストラクトを含む)、アルカリホスファターゼアッセイ、又は任意の他の生物活性アッセイを含む、当技術分野で公知の任意のアッセイにより測定することができる。GDF11の活性を測定するために使用することができる例示的なアッセイは、Souzaらの文献、2008, Mol. Endocrinology 22(12):2689-2702;及びBessaらの文献、2009, Protein Expression and Purification 63:89-94に記載されている。
GDF11のレベル及び/又は活性は、本明細書に記載の方法に従って治療される患者から得られた任意の組織試料で評価することができる。ある実施態様において、GDF11レベル及び/又は活性は、本明細書に記載の方法に従って治療される患者の血清、肝臓、脾臓、又は骨髄から得られた試料で評価される。一実施態様において、GDF11レベル及び/又は活性は、本明細書に記載の方法に従って治療される患者の血清から得られた試料で評価される。別の実施態様において、GDF11レベル及び/又は活性は、本明細書に記載の方法に従って治療される患者の脾臓から得られた試料で評価される。また別の実施態様において、GDF11レベル及び/又は活性は、本明細書に記載の方法に従って治療される患者の骨髄から得られた試料で評価される。
いくつかの実施態様において、患者の組織試料中のGDF11のレベル及び/又は活性は、健常対象(例えば、貧血を有しない対象)、例えば、同じ年齢層の、任意に、同じ性別の対象の組織試料中(例えば、同じ組織由来の試料中)のGDF11の平均的なレベル及び/又は活性と比較される。いくつかの実施態様において、患者の組織試料中のGDF11のレベル及び/又は活性は、より早い時点(例えば、疾患の発症前、治療の開始前、又は治療期間中)の対象の組織試料中(例えば、同じ組織由来の試料中)のGDF11のレベル及び/又は活性と比較される。いくつかの実施態様において、患者の組織試料(例えば、血清、脾臓、肝臓、又は骨髄)中のGDF11のレベル及び/又は活性は、該患者の別の組織試料中のGDF11のレベル及び/又は活性と比較される。いくつかの実施態様において、患者の組織試料中のGDF11のレベル及び/又は活性は、該患者の組織試料中の別の遺伝子産物(例えば、b-アクチン、アクチビンA、アクチビンB)のレベル及び/又は活性と比較される。
いくつかの実施態様において、患者の組織試料中のGDF11のレベル及び/又は活性は、該組織試料中のGDF11の正常なレベル及び/又は活性と比較される。組織試料中のGDF11の正常なレベル及び/又は活性は、1人以上の健常対象(例えば、貧血を有しない対象)、例えば、同じ年齢層の、任意に、同じ性別の対象の組織試料(例えば、同じ組織由来の試料中)のGDF11の平均的なレベル及び/又は活性であることができる。いくつかの実施態様において、GDF11の正常なレベル及び/又は活性と比較したGDF11のレベル及び/又は活性の上昇の検出後、アクチビン受容体インヒビター(例えば、本明細書に記載の1以上のアクチビン受容体インヒビター)を投与する。いくつかの実施態様において、アクチビン受容体インヒビター(例えば、本明細書に記載の1以上のアクチビン受容体インヒビター)の投与後、GDF11のレベル及び/又は活性をモニタリングし、任意に、GDF11のレベル及び/又は活性をGDF11の正常なレベル及び/又は活性と比較する。いくつかの実施態様において、第一の用量のアクチビンII型受容体インヒビター(例えば、ActRIIA-hFc、例えば、配列番号7)の投与後、GDF11のレベル及び/又は活性を決定し、GDF11のレベル及び/又は活性が正常なレベル及び/又は活性と比べて上昇している場合、第一の用量よりも大きい(例えば、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍大きい)第二の用量のアクチビンII型受容体インヒビターを投与し、GDF11のレベル及び/又は活性が正常なレベル及び/又は活性と比べて減少している場合、第一の用量よりも小さい(例えば、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍小さい)第二の用量のアクチビンII型受容体インヒビターを投与する。
本明細書で使用されるように、ある実施態様において、GDF11の正常なレベル及び/又は活性は、1人以上の健常対象(例えば、同じ年齢区分及び/又は同じ性別の健常対象)の組織試料中のGDF11の平均的なレベル及び/又は活性である。いくつかの実施態様において、治療された対象の組織試料中のGDF11のレベル及び/又は活性は、1人以上の健常対象の同じ組織由来の試料中のGDF11のレベル及び/又は活性と比較される。いくつかの実施態様において、GDF11のレベル及び/又は活性が評価される組織は、血液血清、骨髄、肝臓、又は脾臓である。一実施態様において、GDF11のレベル及び/又は活性が評価される組織は、血清である。
(5.5 治療的使用)
ある実施態様において、アクチビンII型受容体インヒビターは、本明細書に記載の方法において、貧血、又は貧血もしくは無効造血と関連する疾患もしくは状態を有する患者の治療に使用される。いくつかの実施態様において、アクチビンII型受容体インヒビターは、貧血、又は貧血もしくは無効造血と関連する疾患もしくは状態を有する患者に投与される。いくつかの実施態様において、アクチビンII型受容体インヒビターは、貧血、又は貧血もしくは無効造血と関連する疾患もしくは状態を有し、かつ(例えば、患者の血清、骨髄、肝臓、及び/又は脾臓中の)GDF11のレベル及び/又は活性が上昇している患者に投与される。本節に記載の及び当技術分野で公知のアクチビンII型受容体インヒビターを本明細書に提供される方法で使用することができる。ある実施態様において、本節に記載のアクチビンII型受容体インヒビターを本明細書に提供される方法で使用することができる。
本明細書に包含されるActRII受容体のインヒビターとしては、ActRIIAインヒビター及びActRIIBインヒビターが挙げられる(下記参照)。ある実施態様において、ActRII受容体インヒビターは、ActRIIAに特異的である。他の実施態様において、ActRII受容体インヒビターは、ActRIIBに特異的である。ある実施態様において、ActRII受容体インヒビターは、ActRIIAを優先的に阻害する。他の実施態様において、ActRII受容体インヒビターは、ActRIIBを優先的に阻害する。ある実施態様において、ActRII受容体インヒビターは、ActRIIAとActRIIBの両方を阻害する。
ある実施態様において、ActRII受容体のインヒビターは、ActRIIのアクチビン結合ドメインを含むポリペプチドであることができる。理論によって束縛されるものではないが、そのようなアクチビン結合ドメインを含むポリペプチドは、アクチビンを捕捉し、それにより、アクチビンシグナル伝達を妨げる。これらのアクチビン結合ドメインを含むポリペプチドは、ActRII受容体の細胞外ドメインの全て又は一部(すなわち、ActRIIAの細胞外ドメインの全てもしくは一部又はActRIIBの細胞外ドメインの全てもしくは一部)を含み得る。具体的な実施態様において、ActRII受容体の細胞外ドメインは、可溶性である。
ある実施態様において、アクチビン結合ドメインを含むポリペプチドは、抗体のFc部分に連結される(すなわち、ActRII受容体のアクチビン結合ドメインを含むポリペプチドと抗体のFc部分とを含むコンジュゲートが作製される)。理論によって束縛されるものではないが、抗体部分は、コンジュゲートに増大した安定性を付与する。ある実施態様において、アクチビン結合ドメインは、リンカー、例えば、ペプチドリンカーを介して、抗体のFc部分に連結される。
本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRII受容体のインヒビターは、細胞外又は細胞内のどちらかで直接的又は間接的にActRIIA及び/又はActRIIBを阻害する分子を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIA及び/又はActRIIBのインヒビターは、受容体それ自体との相互作用を介して、ActRIIA及び/又はActRIIBを阻害する。他の実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIA及び/又はActRIIBのインヒビターは、ActRIIA及び/又はActRIIBリガンド、例えば、アクチビンとの相互作用を介して、ActRIIA及び/又はActRIIBを阻害する。
(5.5.1 ActRIIAのインヒビター)
本明細書で使用されるように、「ActRIIA」という用語は、任意の種由来のアクチビン受容体IIa型(ActRIIA)タンパク質のファミリー及び突然変異生成又は他の修飾によってそのようなActRIIAタンパク質から得られた変異体を指す。本明細書中でのActRIIAに対する言及は、現在同定されている形態のいずれか1つに対する言及であると理解される。ActRIIAファミリーのメンバーは、一般に、システインに富む領域を含むリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び予想上のセリン/トレオニンキナーゼ活性を有する細胞質ドメインから構成される、膜貫通タンパク質である。
本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIAインヒビターとしては、限定するものではないが、アクチビン結合可溶性ActRIIAポリペプチド;アクチビン(特に、βA又はβBとも呼ばれる、アクチビンA又はBサブユニット)に結合し、ActRIIA結合を破壊する抗体; ActRIIAに結合し、アクチビン結合を破壊する抗体;アクチビン又はActRIIA結合について選択された非抗体タンパク質(そのようなタンパク質並びにその設計及び選択方法については、例えば、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、WO/2002/088171号、WO/2006/055689号、WO/2002/032925号、WO/2005/037989号、US 2003/0133939号、及びUS 2005/0238646号を参照);並びにFcドメインにコンジュゲートすることができる、アクチビン又はActRIIA結合について選択されたランダム化ペプチドが挙げられる。
ある実施態様において、アクチビン又はActRIIA結合活性を有する2以上の異なるタンパク質(又は他の部分)、特に、それぞれI型(例えば、可溶性I型アクチビン受容体)及びII型(例えば、可溶性II型アクチビン受容体)結合部位を遮断するアクチビンバインダーを1つに連結させて、ActRIIAを阻害し、したがって、本明細書に記載の組成物及び方法で使用することができる、二機能性又は多機能性結合分子を作出することができる。ある実施態様において、ActRIIAを阻害するアクチビン-ActRIIAシグナル伝達軸アンタゴニストとしては、核酸アプタマー、小分子、並びに本明細書に記載の組成物及び方法で使用される他の薬剤が挙げられる。
((a)ActRIIAポリペプチドを含むActRIIAインヒビター)
「ActRIIAポリペプチド」という用語には、ActRIIAファミリーメンバーの任意の天然のポリペプチド並びに有用な活性を保持するその任意の変異体(突然変異体、断片、融合体、及びペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドが含まれる。例えば、ActRIIAポリペプチドには、ActRIIAポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一な、及び任意に、少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、又はそれを上回って同一な配列を有する任意の公知のActRIIAの配列に由来するポリペプチドが含まれる。例えば、ActRIIAポリペプチドは、ActRIIAタンパク質及び/又はアクチビンに結合し、それらの機能を阻害することができる。ActRIIBポリペプチドは、骨成長及び骨石灰化を促進するその能力について選択することができる。ActRIIAポリペプチドの例としては、ヒトActRIIA前駆ポリペプチド(配列番号1)並びに可溶性ヒトActRIIAポリペプチド(例えば、配列番号2、3、7、及び12)が挙げられる。そのアミノ酸配列が配列番号1に示されているActRIIA前駆ポリペプチドに関して、ヒトActRIIA前駆ポリペプチドのシグナルペプチドは、アミノ酸位置1〜20に位置し;細胞外ドメインは、アミノ酸位置21〜135に位置し、ヒトActRIIA前駆ポリペプチド(配列番号1)のN結合型グリコシル化部位は、配列番号1のアミノ酸位置43及び56に位置する。配列番号1のヒトActRIIB前駆ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号4(GenbankエントリーNM_001616のヌクレオチド164〜1705)として開示されている。配列番号2の可溶性ヒトActRIIAポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号5として開示されている。配列の説明については、表1を参照されたい。
具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIAポリペプチドは、可溶性ActRIIAポリペプチドである。ActRIIAタンパク質の細胞外ドメインは、アクチビンに結合することができ、かつ通常、可溶性であり、したがって、可溶性アクチビン結合ActRIIAポリペプチドと呼ぶことができる。したがって、本明細書で使用される場合、「可溶性ActRIIAポリペプチド」という用語は、通常、ActRIIAタンパク質の任意の天然の細胞外ドメインを含む、ActRIIAタンパク質の細胞外ドメインを含むポリペプチド並びにその任意の変異体(突然変異体、断片、及びペプチド模倣形態を含む)を指す。可溶性ActRIIAポリペプチドは、アクチビンに結合することができる;しかしながら、野生型ActRIIAタンパク質は、アクチビンへの結合に関してGDF8/11と比べて顕著な選択性を示さない。天然又は改変ActRIIAタンパク質を第二のアクチビン選択的結合剤とカップリングさせることにより、該タンパク質に、アクチビンに対する特異性の付加を与えることができる。可溶性アクチビン結合ActRIIAポリペプチドの例としては、配列番号2、3、7、12、及び13に示される可溶性ポリペプチドが挙げられる。可溶性アクチビン結合ActRIIAポリペプチドの他の例は、ActRIIAタンパク質の細胞外ドメインに加えて、シグナル配列、例えば、ミツバチメリチンリーダー配列(配列番号8)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)リーダー(配列番号9)、又は天然のActRIIAリーダー(配列番号10)を含む。配列番号13に示されるActRIIA-hFcポリペプチドでは、TPAリーダーが使用されている。
ある実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIAのインヒビターは、抗体のFc部分に連結されたActRIIAのアクチビン結合ドメインを含むコンジュゲート/融合タンパク質を含む。ある実施態様において、該アクチビン結合ドメインは、リンカー、例えば、ペプチドリンカーを介して、抗体のFc部分に連結される。任意に、Fcドメインは、Asp-265、リジン322、及びAsn-434などの残基に1以上の突然変異を有する。ある場合には、これらの突然変異のうちの1つ又は複数(例えば、Asp-265突然変異)を有する突然変異体Fcドメインは、野生型Fcドメインと比べてFcγ受容体に結合する能力が低下している。他の場合には、これらの突然変異のうちの1つ又は複数(例えば、Asn-434突然変異)を有する突然変異体Fcドメインは、野生型Fcドメインと比べてMHCクラスI関連Fc受容体(FcRN)に結合する能力が増大している。Fcドメインに融合したActRIIAの可溶性細胞外ドメインを含む例示的な融合タンパク質は、配列番号6、7、12、及び13に示されている。
具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIAインヒビターは、抗体のFc部分に連結されたActRIIAの細胞外ドメイン、又はその一部を含み、ここで、該ActRIIAインヒビターは、配列番号6、7、12、及び13から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIAインヒビターは、抗体のFc部分に連結されたActRIIAの細胞外ドメイン、又はその一部を含み、ここで、該ActRIIAインヒビターは、配列番号6、7、12、及び13から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。
ある実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIAのインヒビターは、ActRIIAの細胞外ドメインの切断形態を含む。切断は、ActRIIAポリペプチドのカルボキシ末端及び/又はアミノ末端にあることができる。ある実施態様において、切断は、成熟したActRIIBポリペプチドの細胞外ドメインと比べて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25アミノ酸長いものであることができる。ある実施態様において、切断は、成熟したActRIIAポリペプチドの細胞外ドメインの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25個のN末端アミノ酸であることができる。ある実施態様において、切断は、成熟したActRIIAポリペプチドの細胞外ドメインの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25個のC末端アミノ酸であることができる。例えば、ActRIIAの切断形態としては、アミノ酸20〜119; 20〜128; 20〜129; 20〜130; 20〜131; 20〜132; 20〜133; 20〜134; 20〜131; 21〜131; 22〜131; 23〜131; 24〜131;及び25〜131を有するポリペプチドが挙げられ、ここで、該アミノ酸位置は、配列番号1におけるアミノ酸位置を指す。
ある実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIAのインヒビターは、1以上のアミノ酸置換を有するActRIIAの細胞外ドメインを含む。ある実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIAのインヒビターは、アミノ酸置換も保有するActRIIA細胞外ドメインの切断形態を含む。
具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIAインヒビターは、ヒトActRIIA受容体の細胞外ドメインとIgG1のFc部分の融合タンパク質である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIAインヒビターは、ヒトActRIIA受容体の切断された細胞外ドメインとIgG1のFc部分の融合タンパク質である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIAインヒビターは、ヒトActRIIA受容体の切断された細胞外ドメインとIgG1のFc部分の融合タンパク質であり、ここで、該ヒトActRIIA受容体の切断された細胞外ドメインは、1以上のアミノ酸置換を保有する。
ActRIIAポリペプチドの機能的に活性のある断片は、例えば、ActRIIAポリペプチドをコードする核酸の対応する断片から組換え産生されたポリペプチドをスクリーニングすることにより得ることができる。さらに、断片を、従来のメリフィールド固相f-Moc又はt-Boc化学などの当技術分野で公知の技術を用いて化学合成することができる。該断片を(組換えによるか又は化学合成によって)産生し、試験して、ActRIIAタンパク質又はアクチビンによって媒介されるシグナル伝達のアンタゴニスト(インヒビター)として機能し得るペプチジル断片を同定することができる。
さらに、ActRIIAポリペプチドの機能的に活性のある変異体は、例えば、ActRIIAポリペプチドをコードする対応する突然変異核酸から組換え産生された修飾ポリペプチドのライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる。該変異体を産生し、試験して、ActRIIAタンパク質又はアクチビンによって媒介されるシグナル伝達のアンタゴニスト(インヒビター)として機能し得るものを同定することができる。ある実施態様において、ActRIIAポリペプチドの機能的変異体は、配列番号2又は3から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む。ある場合には、該機能的変異体は、配列番号2又は3から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一なアミノ酸配列を有する。
機能的変異体は、例えば、ActRIIAポリペプチドの構造を、治療効力、又は安定性(例えば、エクスビボでの保存期間及びインビボでのタンパク質分解に対する抵抗性)を増強するような目的で修飾することにより作製することができる。アクチビン結合を保持するように選択された場合のそのような修飾ActRIIAポリペプチドは、天然のActRIIAポリペプチドの機能的等価物とみなすことができる。修飾ActRIIAポリペプチドは、例えば、アミノ酸置換、欠失、又は付加により産生することもできる。例えば、ロイシンとイソロイシンもしくはバリンとの、アスパラギン酸とグルタミン酸との、トレオニンとセリンとの単独置換、又はあるアミノ酸と構造的に関連するアミノ酸との同様の置換(例えば、保存的突然変異)によって、得られる分子の生物活性が大きく影響を受けることはないであろうと予想するのは合理的である。保存的置換は、その側鎖において関連があるアミノ酸のファミリー内で起こる置換である。ActRIIAポリペプチドのアミノ酸配列の変化によって機能的ホモログが生じるかどうかは、野生型ActRIIAポリペプチドと同様の様式で細胞内の応答を引き起こす変異体ActRIIAポリペプチドの能力を評価することにより容易に決定することができる。
ある実施態様において、本明細書に提供される、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIAインヒビターは、該ポリペプチドのグリコシル化を改変することができる1以上の特定の突然変異を有するActRIIAポリペプチドを含むことができる。そのような突然変異は、1以上のグリコシル化部位、例えば、O結合型又はN結合型グリコシル化部位を導入し又は消失させることができる。アスパラギン結合型グリコシル化認識部位は、通常、適当な細胞グリコシル化酵素によって特異的に認識されるアスパラギン-X-トレオニン(又はアスパラギン-X-セリン)(ここで、「X」は、任意のアミノ酸である)という3ペプチド配列を含む。改変は、野生型ActRIIAポリペプチドの配列への1以上のセリンもしくはトレオニン残基の付加、又は該残基による置換によって行うこともできる(O結合型グリコシル化部位の場合)。グリコシル化認識部位の1番目もしくは3番目のアミノ酸位置のうちの一方もしくは両方における種々のアミノ酸置換もしくは欠失(及び/又は2番目の位置におけるアミノ酸欠失)は、修飾された3ペプチド配列中での非グリコシル化をもたらす。ActRIIAポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、ActRIIAポリペプチドへのグリコシドの化学的又は酵素的カップリングによるものである。使用されるカップリング様式に応じて、糖(複数可)を、(a)アルギニン及びヒスチジン;(b)遊離カルボキシル基;(c)遊離スルフヒドリル基、例えば、システインの遊離スルフヒドリル基;(d)遊離ヒドロキシル基、例えば、セリン、トレオニン、もしくはヒドロキシプロリンの遊離ヒドロキシル基;(e)芳香族残基、例えば、フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンの芳香族残基;又は(f)グルタミンのアミド基に結合させることができる。これらの方法は、引用により本明細書中に組み込まれる、1987年9月11日に公開されたWO 87/05330号、及びAplin及びWristonの文献(1981) CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306に記載されている。ActRIIAポリペプチド上に存在する1以上の炭水化物部分の除去は、化学的に及び/又は酵素的に達成することができる。化学的脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸、又は同等の化合物へのActRIIAポリペプチドの暴露を含み得る。この処理は、結合糖(N-アセチルグルコサミン又はN-アセチルガラクトサミン)を除くほとんど又は全ての糖の切断をもたらすが、アミノ酸配列は無傷のまま残す。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddinらの文献(1987) Arch. Biochem. Biophys. 259:52及びEdgeらの文献(1981) Anal. Biochem. 118:131によりさらに記載されている。ActRIIAポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraらの文献(1987) Meth. Enzymol. 138:350により記載されているような種々のエンドグリコシダーゼ及びエキソグリコシダーゼの使用により達成することができる。ActRIIAポリペプチドのアミノ酸配列は、適切な場合、使用される発現系の種類に応じて調整することができるが、それは、哺乳動物、酵母、昆虫、及び植物の細胞が全て、該ペプチドのアミノ酸配列によって影響され得る異なるグリコシル化パターンを導入することができるためである。一般に、ヒトで使用されるActRIIAタンパク質は、適切なグリコシル化を提供する哺乳動物細胞株、例えば、HEK293又はCHO細胞株で発現させることができるが、他の発現系、例えば、他の哺乳動物発現細胞株、グリコシル化酵素が改変されている酵母細胞株、及び昆虫細胞も同様に有用であると考えられる。
本明細書にさらに提供されるのは、突然変異体、特に、ActRIIAポリペプチドのコンビナトリアル突然変異体のセット、及び切断突然変異体を作製する方法であり;コンビナトリアル突然変異体のプールは、機能的変異体配列を同定するのに特に有用である。そのようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、アゴニストもしくはアンタゴニストのいずれかとして作用することができるか、又はその代わりに、新規の活性を全て併せ持つ、ActRIIAポリペプチド変異体を作製することであり得る。種々のスクリーニングアッセイは以下に提供されており、そのようなアッセイを用いて、変異体を評価することができる。例えば、ActRIIAポリペプチド変異体を、ActRIIAリガンドに結合する能力、ActRIIAリガンドのActRIIAポリペプチドへの結合を妨げる能力、又はActRIIAリガンドによって引き起こされるシグナル伝達に干渉する能力についてスクリーニングすることができる。
天然のActRIIAポリペプチドと比べて選択的な又は全般的に増大した効力を有する、コンビナトリアル由来の変異体を作製することができる。同様に、突然変異生成により、対応する野生型ActRIIAポリペプチドとは劇的に異なる細胞内半減期を有する変異体を生じさせることができる。例えば、改変タンパク質を、タンパク質分解、又は天然のActRIIAポリペプチドの破壊、さもなければ、不活化をもたらす他の細胞プロセスに対してより安定な状態又はあまり安定でない状態にするにすることができる。そのような変異体、及びそれらをコードする遺伝子を用いて、ActRIIAポリペプチドの半減期を調節することにより、ActRIIAポリペプチドレベルを改変することができる。例えば、短い半減期は、より一時的な生物学的効果を生じることができ、患者内の組換えActRIIAポリペプチドレベルのより厳しい制御を可能にすることができる。Fc融合タンパク質では、突然変異をリンカー(存在する場合)及び/又はFc部分中で生成させて、タンパク質の半減期を変化させることができる。
コンビナトリアルライブラリーは、各々が潜在的ActRIIAポリペプチド配列の少なくとも一部を含むポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーによって生成させることができる。例えば、潜在的ActRIIAポリペプチドヌクレオチド配列の縮重セットが、個々のポリペプチドとして、又はその代わりに、より大きな融合タンパク質のセット(例えば、ファージディスプレイの場合)として発現可能となるように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的に連結することができる。
潜在的ホモログのライブラリーを縮重オリゴヌクレオチド配列から作製することができる多くの方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成を自動DNA合成装置で実行することができ、その後、合成遺伝子を発現用の適当なベクターに連結することができる。縮重オリゴヌクレオチドの合成は、当技術分野で周知である(例えば、Narang, S Aの文献(1983) Tetrahedron 39:3; Itakuraらの文献(1981) Recombinant DNA, Proc. 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules, AG Walton, Amsterdam編: Elsevier pp 273-289; Itakuraらの文献(1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323; Itakuraらの文献(1984) Science 198:1056; Ikeらの文献(1983) Nucleic Acid Res. 11:477を参照されたい)。そのような技術は、他のタンパク質の定方向進化において利用されている(例えば、Scottらの文献(1990) Science 249:386-390; Robertsらの文献(1992) PNAS USA 89:2429-2433; Devlinらの文献(1990) Science 249: 404-406; Cwirlaらの文献(1990) PNAS USA 87: 6378-6382;並びに米国特許第5,223,409号、第5,198,346号、及び第5,096,815号を参照されたい)。
或いは、他の形態の突然変異生成を用いて、コンビナトリアルライブラリーを作製することができる。例えば、ActRIIAポリペプチド変異体を、例えば、アラニンスキャニング突然変異生成などを用いるスクリーニングによって(Rufらの文献(1994) Biochemistry 33:1565-1572; Wangらの文献(1994) J. Biol. Chem. 269:3095-3099; Balintらの文献(1993) Gene 137:109-118; Grodbergらの文献(1993) Eur. J. Biochem. 218:597-601; Nagashimaらの文献(1993) J. Biol. Chem. 268:2888-2892; Lowmanらの文献(1991) Biochemistry 30:10832-10838;及びCunninghamらの文献(1989) Science 244:1081-1085)、リンカースキャニング突然変異生成によって(Gustinらの文献(1993) Virology 193:653-660; Brownらの文献(1992) Mol. Cell Biol. 12:2644-2652; McKnightらの文献(1982) Science 232:316);飽和突然変異生成によって(Meyersらの文献(1986)Science 232:613); PCR突然変異生成によって(Leungらの文献(1989) Method Cell Mol Biol 1:11-19);又は化学的突然変異生成などを含むランダム突然変異生成によって(Millerらの文献(1992) 細菌遺伝学の短期講座(A Short Course in Bacterial Genetics)、CSHL Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;及びGreenerらの文献(1994) Strategies in Mol Biol 7:32-34)、ライブラリーから作製し、単離することができる。特にコンビナトリアル設定でのリンカースキャニング突然変異生成は、ActRIIAポリペプチドの切断(生物活性)形態を同定する魅力的な方法である。
点突然変異及び切断によって作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための、さらに言うなら、特定の性質を有する遺伝子産物のcDNAライブラリーをスクリーニングするための、広範な技術が当技術分野で公知である。そのような技術は、一般に、ActRIIAポリペプチドのコンビナトリアル突然変異生成によって作製される遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニングに適用可能である。大きな遺伝子ライブラリーのスクリーニングに最も広く使用されている技術は、通常、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングすること、適当な細胞を得られたベクターのライブラリーで形質転換すること、及びコンビナトリアル遺伝子を、所望の活性の検出によって、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的簡単な単離が容易になる条件下で発現させることを含む。好ましいアッセイとしては、アクチビン結合アッセイ及びアクチビン媒介性細胞シグナル伝達アッセイが挙げられる。
ある実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物のインヒビターで使用されるActRIIAポリペプチドは、該ActRIIAポリペプチドに天然に存在する任意の修飾に加えて、翻訳後修飾をさらに含み得る。そのような修飾としては、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、及びアシル化を挙げることができるが、これらに限定されない。結果として、修飾されたActRIIAポリペプチドは、非アミノ酸要素、例えば、ポリエチレングリコール、脂質、多糖又は単糖、及びホスフェートを含有し得る。ActRIIAポリペプチドの機能性に対するそのような非アミノ酸要素の効果は、当業者に公知の任意の方法によって試験することができる。ActRIIAポリペプチドが、該ActRIIAポリペプチドの新生形態を切断することによって細胞内で産生される場合、翻訳後プロセシングもまた、該タンパク質の正確なフォールディング及び/又は機能に重要であり得る。様々な細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、W138、NIH-3T3、又はHEK293)は、そのような翻訳後活性のための特異的細胞装置及び特徴的機構を有しており、該細胞を、ActRIIAポリペプチドの正確な修飾及びプロセシングを保証するように選択することができる。
ある態様において、本明細書に記載の方法及び組成物のインヒビターで使用されるActRIIAポリペプチドの機能的変異体又は修飾形態には、ActRIIAポリペプチドの少なくとも一部及び1以上の融合ドメインを有する融合タンパク質が含まれる。そのような融合ドメインのよく知られた例としては、ポリヒスチジン、Glu-Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、又はヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。融合ドメインを、所望の特性を付与するように選択することができる。例えば、いくつかの融合ドメインは、親和性クロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。親和性精製の目的で、親和性クロマトグラフィー用の関連するマトリックス、例えば、グルタチオン、アミラーゼ、及びニッケル又はコバルトコンジュゲート樹脂が使用される。そのようなマトリックスの多くは、「キット」形態で入手可能であり、これには、例えば、(HIS6)融合パートナーと合わせて有用な、Pharmacia GST精製システム及びQIAexpress(商標)システム(Qiagen)がある。別の例として、融合ドメインを、ActRIIAポリペプチドの検出を容易にするように選択することができる。そのような検出ドメインの例としては、様々な蛍光タンパク質(例えば、GFP)及び通常、特異的抗体が利用可能な短いペプチド配列である「エピトープタグ」が挙げられる。特異的モノクローナル抗体がすぐに利用可能である周知のエピトープタグとしては、FLAG、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、及びc-mycタグが挙げられる。場合により、融合ドメインは、例えば、第Xa因子又はトロンビン用のプロテアーゼ切断部位を有し、該部位は、関連するプロテアーゼが融合タンパク質を部分消化し、それにより、組換えタンパク質をそれから遊離させることを可能にする。その後、遊離したタンパク質を、後続のクロマトグラフィー分離によって融合ドメインから単離することができる。ある好ましい実施態様において、ActRIIAポリペプチドを、インビボでActRIIAポリペプチドを安定化するドメイン(「スタビライザー」ドメイン)と融合させる。「安定化する」とは、血清半減期を延長する全てのことを意味し、これは、破壊の減少によるものか、腎臓によるクリアランスの減少によるものか、又は他の薬物動態作用によるものかを問わない。免疫グロブリンのFc部分との融合は、広範なタンパク質に望ましい薬物動態特性を付与することが知られている。同様に、ヒト血清アルブミンへの融合は、望ましい特性を付与することができる。選択され得る他のタイプの融合ドメインとしては、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメイン及び(望ましい場合、追加の生物学的機能、例えば、骨成長又は筋肉成長のさらなる刺激を付与する)機能ドメインが挙げられる。
融合タンパク質の様々なエレメントを、所望の機能と一致する任意の方法で配置し得ることが理解される。例えば、ActRIIAポリペプチドを異種ドメインのC末端に配置することができ、又はその代わりに、異種ドメインをActRIIAポリペプチドのC末端に配置することができる。ActRIIAポリペプチドドメイン及び異種ドメインは、融合タンパク質中で隣接している必要がなく、追加のドメイン又はアミノ酸配列を、どちらかのドメインのC末端もしくはN末端、又はこれらのドメインの間に含めることができる。
ある実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物のインヒビターで使用されるActRIIAポリペプチドは、ActRIIAポリペプチドを安定化することができる1以上の修飾を含むことができる。例えば、そのような修飾は、ActRIIAポリペプチドのインビトロ半減期を向上させるか、ActRIIAポリペプチドの循環半減期を向上させるか、又はActRIIAポリペプチドのタンパク質分解を低下させることができる。そのような安定化修飾としては、融合タンパク質(例えば、ActRIIAポリペプチド及びスタビライザードメインを含む融合タンパク質を含む)、グリコシル化部位の修飾(例えば、ActRIIAポリペプチドへのグリコシル化部位の付加を含む)、並びに炭水化物部分の修飾(例えば、ActRIIAポリペプチドからの炭水化物部分の除去を含む)を挙げることができるが、これらに限定されない。融合タンパク質の場合、ActRIIAポリペプチドを、スタビライザードメイン、例えば、IgG分子(例えば、Fcドメイン)に融合させる。本明細書で使用されるように、「スタビライザードメイン」という用語は、融合タンパク質の場合に見られる融合ドメイン(例えば、Fc)を指すだけでなく、炭水化物部分などの非タンパク質性修飾、又はポリエチレングリコールなどの非タンパク質性ポリマーも含む。
ある実施態様において、他のタンパク質から単離されているか、又は別の方法で他のタンパク質を実質的に含まない、単離及び/又は精製された形態のActRIIAポリペプチドを、本明細書に記載の方法及び組成物とともに使用することができる。ActRIIAポリペプチドは、通常、組換え核酸からの発現によって産生することができる。
ある態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIAポリペプチドは、本明細書に開示される断片、機能的変異体、及び融合タンパク質を含む、ActRIIAポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIAポリペプチド)のいずれかをコードする単離された及び/又は組換え核酸を用いて作製される。例えば、配列番号4は、天然のヒトActRIIA前駆ポリペプチドをコードし、一方、配列番号5は、ActRIIAのプロセシングされた細胞外ドメインをコードする。そのような核酸は、一本鎖又は二本鎖であり得る。そのような核酸は、DNA又はRNA分子であり得る。これらの核酸を、例えば、ActRIIAポリペプチドを作製する方法で、又は直接的な治療剤として(例えば、遺伝子療法の手法で)使用することができる。
ある態様において、ActRIIAポリペプチドをコードする核酸には、配列番号4又は5の変異体である核酸が含まれ得る。変異体ヌクレオチド配列には、1以上のヌクレオチド置換、付加、又は欠失によって異なる配列、例えば、アレル変異体が含まれる。
ある実施態様において、ActRIIAポリペプチドをコードする単離された又は組換え核酸配列は、配列番号4又は5と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一であり得る。当業者は、配列番号4又は5に相補的な核酸配列、及び配列番号4又は5の変異体を、本明細書に記載の方法及び組成物で使用するのに好適なActRIIAポリペプチドの産生に使用し得ることを理解するであろう。さらなる実施態様において、そのような核酸配列は、単離されたもの、組換え体、及び/もしくは異種ヌクレオチド配列に融合されたもの、又はDNAライブラリーに由来するものであることができる。
他の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物で使用するのに好適なActRIIAポリペプチドの産生で使用される核酸は、極めてストリンジェントな条件下で、配列番号4もしくは5に表記されたヌクレオチド配列、配列番号4もしくは5の相補配列、又はそれらの断片にハイブリダイズするヌクレオチド配列も含み得る。当業者は、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件を変化させることができることを理解するであろう。例えば、ハイブリダイゼーションを、約45℃での6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、次いで、50℃での2.0×SSCの洗浄で実施することができる。例えば、洗浄工程での塩濃度を、50℃で約2.0×SSCの低いストリンジェンシーから50℃で約0.2×SSCの高いストリンジェンシーまで選択することができる。さらに、洗浄工程での温度を、室温、約22℃での低いストリンジェンシー条件から約65℃での高いストリンジェンシー条件へと上昇させることができる。温度と塩の両方を変化させることができ、又は他の変数を変化させながら、温度もしくは塩濃度を一定に保つことができる。一実施態様において、室温での6×SSC、次に、室温での2×SSCでの洗浄の低いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸を、本明細書に記載の方法及び組成物とともに使用することができる。
遺伝暗号の縮重のために配列番号4又は5に示される核酸とは異なる単離された核酸も、本明細書に記載の方法及び組成物で使用するのに好適なActRIIAポリペプチドの産生で使用することができる。例えば、いくつかのアミノ酸は、複数のトリプレットによって指定される。同じアミノ酸を特定するコドン、又はシノニム(例えば、CAUとCACは、ヒスチジンについてのシノニムである)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント突然変異」を生じさせることができる。しかしながら、対象タンパク質のアミノ酸配列の変化を実際にもたらすDNA配列多型が哺乳動物細胞の間に存在すると考えられる。当業者は、特定のタンパク質をコードする核酸の1以上のヌクレオチドにおけるこれらの変異(variation)(ヌクレオチドの最大約3〜5%)が、天然のアレル変異(variation)が原因で、所与の種の個体間に存在し得ることを理解するであろう。
ある実施態様において、組換え核酸を、発現コンストラクト中の1以上の調節ヌクレオチド配列に機能的に連結することができる。調節ヌクレオチド配列は、通常、発現に使用される宿主細胞に適したものである。種々の宿主細胞について、数多くの種類の適切な発現ベクター及び好適な調節配列が当技術分野で公知である。一般に、該1以上の調節ヌクレオチド配列としては、プロモーター配列、リーダー又はシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始及び終結配列、翻訳開始及び終結配列、並びにエンハンサー又はアクチベーター配列が挙げられるが、これらに限定されない。当技術分野で公知の構成的又は誘導性プロモーターが本明細書で企図される。プロモーターは、天然プロモーター、又は複数のプロモーターのエレメントを組み合わせるハイブリッドプロモーターのどちらかであり得る。発現コンストラクトは、細胞内でプラスミドなどのエピソーム上に存在してもよく、又は発現コンストラクトは、染色体に挿入されてもよい。好ましい実施態様において、発現ベクターは、形質転換した宿主細胞の選択を可能にする選択可能マーカー遺伝子を含む。選択可能マーカー遺伝子は当技術分野で周知であり、使用される宿主細胞によって異なる。
ある態様において、本明細書に記載の方法及び組成物で使用するのに好適なActRIIAポリペプチドの産生で使用される核酸は、ActRIIAポリペプチドをコードし、少なくとも1つの調節配列に機能的に連結されているヌクレオチド配列を含む発現ベクター中に提供することができる。調節配列は当技術分野で認められており、ActRIIAポリペプチドの発現を導くように選択される。したがって、調節配列という用語は、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御エレメントを含む。例示的な調節配列は、Goeddelの文献;遺伝子発現技術:酵素学の方法(Gene Expression Technology: Methods in Enzymology), Academic Press, San Diego, Calif.(1990)に記載されている。例えば、それに機能的に連結されたときDNA配列の発現を制御する多種多様な発現制御配列のいずれかをこれらのベクター中で用いて、ActRIIAポリペプチドをコードするDNA配列を発現させることができる。そのような有用な発現制御配列としては、例えば、SV40の初期及び後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルス又はサイトメガロウイルス前初期プロモーター、RSVプロモーター、lacシステム、trpシステム、TAC又はTRCシステム、その発現がT7 RNAポリメラーゼによって誘導されるT7プロモーター、ラムダファージの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3-ホスホグリセレートキナーゼ又は他の解糖系酵素のプロモーター、酸ホスファターゼ、例えば、Pho5のプロモーター、酵母のα接合因子のプロモーター、バキュロウイルス系のポリヘドロンプロモーター、並びに原核もしくは真核細胞又はそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られている他の配列、並びにこれらの様々な組合せが挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択及び/又は発現が望まれるタンパク質の種類のような因子によって決まることが理解されるべきである。さらに、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、及び該ベクターによってコードされる任意の他のタンパク質、例えば、抗生物質マーカーの発現も考慮されるべきである。
本明細書に記載の方法及び組成物で使用するのに好適なActRIIAポリペプチドの産生で使用される組換え核酸は、クローニングされた遺伝子、又はその一部を、原核細胞、真核細胞(酵母、鳥類、昆虫、もしくは哺乳動物)、又はその両方における発現に好適なベクター中に連結することにより産生することができる。組換えActRIIAポリペプチドの産生用の発現ビヒクルとしては、プラスミド及び他のベクターが挙げられる。例えば、好適なベクターとしては、大腸菌(E. coli)などの原核細胞における発現用の、以下のタイプのプラスミド: pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミド、及びpUC由来プラスミドが挙げられる。
いくつかの哺乳動物発現ベクターは、細菌におけるベクターの増殖を促進する原核生物配列と、真核細胞で発現される1以上の真核生物転写ユニットの両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2-dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko-neo 及びpHyg由来ベクターは、真核細胞のトランスフェクションに好適な哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのうちのいくつかは、原核細胞と真核細胞の両方における複製及び薬物耐性選択を容易にするために、pBR322などの細菌プラスミド由来の配列で修飾されている。或いは、ウシパピローマウイルス(BPV-1)、又はエプスタイン-バーウイルス(pHEBo、pREP由来、及びp205)などのウイルスの派生物を、真核細胞におけるタンパク質の一過性発現に使用することができる。(レトロウイルスを含む)他のウイルス発現系の例は、以下の遺伝子療法送達系の記載において見出すことができる。プラスミドの増殖及び宿主生物の形質転換に利用される様々な方法は、当技術分野で周知である。原核細胞と真核細胞の両方に関する他の好適な発現系、及び一般的な組換え手順については、分子クローニング 実験マニュアル(Molecular Cloning A Laboratory Manual)、第3版、Sambrook、Fritsch、及びManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)を参照されたい。いくつかの例において、バキュロウイルス発現系の使用によって組換えポリペプチドを発現させることが望ましい場合がある。そのようなバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来ベクター(例えば、pVL1392、pVL1393、及びpVL941)、pAcUW由来ベクター(例えば、pAcUW1)、並びにpBlueBac由来ベクター(例えば、β-gal含有pBlueBac III)が挙げられる。
Pcmv-Scriptベクター(Stratagene, La Jolla, Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen, Carlsbad, Calif.)、及びpCI-neoベクター(Promega, Madison, Wis.)などのベクターを、CHO細胞内での対象ActRIIAポリペプチドの産生用に設計することができる。明らかになるように、対象遺伝子コンストラクトを用いて、例えば、精製用の、融合タンパク質又は変異体タンパク質を含む、タンパク質を産生するために、培養で増殖した細胞内での対象ActRIIAポリペプチドの発現を生じさせることができる。
1以上の該対象ActRIIAポリペプチドのコード配列(例えば、配列番号4又は5)を含む組換え遺伝子でトランスフェクトされた宿主細胞を、本明細書に記載の方法及び組成物で使用するのに好適なActRIIAポリペプチドの産生で使用することができる。宿主細胞は、任意の原核又は真核細胞であり得る。例えば、本明細書に提供されるActRIIAポリペプチドを、大腸菌などの細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を用いる)、酵母、又は哺乳動物細胞で発現させることができる。他の好適な宿主細胞は、当業者に公知である。
したがって、本明細書に提供されるのは、ActRIIAポリペプチドを産生する方法である。例えば、ActRIIAポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞を、ActRIIAポリペプチドの発現が生じるのを可能にする適当な条件下で培養することができる。ActRIIAポリペプチドを分泌させ、細胞とActRIIAポリペプチドを含む培地の混合物から単離することができる。或いは、ActRIIAポリペプチドを細胞質内又は膜画分に保持し、細胞を回収し、溶解させ、タンパク質を単離することができる。細胞培養物には、宿主細胞、培地、及び他の副産物が含まれる。細胞培養用の好適な培地は、当技術分野で周知である。対象ActRIIAポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、ActRIIAポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体による免疫親和性精製、及びActRIIAポリペプチドに融合したドメインに結合する物質による親和性精製(例えば、プロテインAカラムを用いて、ActRIIA-Fc融合体を精製することができる)を含む、タンパク質を精製するための当技術分野で公知の技術を用いて、細胞培養培地、宿主細胞、又はその両方から単離することができる。好ましい実施態様において、ActRIIAポリペプチドは、その精製を容易にするドメインを含む融合タンパク質である。一実施態様において、精製は、例えば、以下のもの:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、及び陽イオン交換クロマトグラフィーのうちの3つ以上を、任意の順序で含む、一連のカラムクロマトグラフィー工程により達成される。精製は、ウイルス濾過及びバッファー交換で終了させることができる。本明細書で実証されるように、ActRIIA-hFcタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィーにより決定して98%を超える純度、SDS PAGEにより決定して95%を超える純度に精製された。この精製レベルは、マウスの骨に対する望ましい効果並びにマウス、ラット、及び非ヒト霊長類における許容し得る安全性プロファイルを達成するのに十分であった。
別の実施態様において、組換えActRIIAポリペプチドの所望の部分のN末端におけるポリ-(His)/エンテロキナーゼ切断部位配列などの精製リーダー配列をコードする融合遺伝子は、Ni2+金属樹脂を用いる親和性クロマトグラフィーによる発現された融合タンパク質の精製を可能にすることができる。次いで、精製リーダー配列をエンテロキナーゼによる処理によって後から除去し、精製ActRIIAポリペプチドを提供することができる(例えば、Hochuliらの文献(1987) J. Chromatography 411:177;及びJanknechtらの文献、PNAS USA 88:8972を参照されたい)。
融合遺伝子を作製する技術は周知である。本質的に、異なるポリペプチド配列をコードする様々なDNA断片の接続は、ライゲーションのための平滑末端又は互い違い末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要な場合の付着末端の充填(filling-in)、望ましくない接続を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、及び酵素的ライゲーションを利用する従来の技術に従って実施される。別の実施態様において、融合遺伝子は、自動化DNA合成装置を含む従来の技術によって合成することができる。或いは、後からアニーリングさせてキメラ遺伝子配列を生成させることができる2つの連続する遺伝子断片間の相補的突出を生じさせるアンカープライマーを用いて、遺伝子断片のPCR増幅を実施することができる(例えば、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、Ausubelら編、John Wiley & Sons: 1992を参照されたい)。
ActRIIA-Fc融合タンパク質は、安定にトランスフェクトされたCHO-DUKX Bl 1細胞で、配列番号9の組織プラスミノーゲンリーダー配列を用いて、pAID4ベクター(SV40 ori/エンハンサー、CMVプロモーター)から発現させることができる。Fc部分は、配列番号7に示されるヒトIgGl Fc配列である。ある実施態様において、発現させたとき、含まれるタンパク質は、ActRIIA-Fc融合タンパク質1分子当たり、平均で約1.5〜2.5モルのシアル酸を有する。
ある実施態様において、ActRIIA-Fc融合体の長い血清半減期は、ヒト患者で25〜32日であることができる。さらに、CHO細胞で発現される物質は、ヒト293細胞で発現されるActRIIA-hFc融合タンパク質について報告されたものよりも高いアクチビンBリガンドに対する親和性を有することができる(del Reらの文献、J Biol Chem. 2004 Dec 17;279(51):53126-35)。さらに、理論によって束縛されるものではないが、TPAリーダー配列の使用は、他のリーダー配列よりも大きな産生をもたらし、天然のリーダーで発現されるActRIIA-Fcとは異なり、極めて純粋なN末端配列を提供することができる。天然のリーダー配列の使用は、各々異なるN末端配列を有する2つの主要な種のActRIIA-Fcを生じさせることができる。
(5.5.2 ActRIIBのインヒビター)
本明細書で使用されるように、「ActRIIB」という用語は、任意の種由来のアクチビン受容体IIB型(ActRIIB)タンパク質のファミリー及び突然変異生成又は他の修飾によってそのようなActRIIBタンパク質から得られた変異体を指す。本明細書中でのActRIIBに対する言及は、該受容体の現在同定されている形態のいずれか1つに対する言及であると理解される。ActRIIBファミリーのメンバーは、一般に、システインに富む領域を含むリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び予想上のセリン/トレオニンキナーゼ活性を有する細胞質ドメインから構成される、膜貫通タンパク質である。
本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBインヒビターとしては、限定するものではないが、アクチビン結合可溶性ActRIIBポリペプチド;アクチビン(特に、βA又はβBとも呼ばれる、アクチビンA又はBサブユニット)に結合し、ActRIIB結合を破壊する抗体; ActRIIBに結合し、アクチビン結合を破壊する抗体;アクチビン又はActRIIB結合について選択された非抗体タンパク質;及びFcドメインにコンジュゲートすることができる、アクチビン又はActRIIB結合について選択されたランダム化ペプチドが挙げられる。
ある実施態様において、アクチビン又はActRIIB結合活性を有する2以上の異なるタンパク質(又は他の部分)、特に、それぞれI型(例えば、可溶性I型アクチビン受容体)及びII型(例えば、可溶性II型アクチビン受容体)結合部位を遮断するアクチビンバインダーを1つに連結させて、ActRIIBを阻害し、したがって、本明細書に記載の組成物及び方法で使用することができる、二機能性又は多機能性結合分子を作出することができる。ある実施態様において、ActRIIBを阻害するアクチビン-ActRIIBシグナル伝達軸アンタゴニストとしては、核酸アプタマー、小分子、並びに本明細書に記載の組成物及び方法で使用される他の薬剤が挙げられる。
((a)ActRIIBポリペプチドを含むActRIIBインヒビター)
本明細書で使用されるように、「ActRIIBポリペプチド」という用語は、ActRIIBファミリーメンバーの任意の天然のポリペプチド並びに有用な活性を保持するその任意の変異体(突然変異体、断片、融合体、及びペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドを指す。例えば、ActRIIBポリペプチドには、ActRIIBポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一な、及び任意に、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれを上回って同一な配列を有する任意の公知のActRIIB受容体の配列に由来するポリペプチドが含まれる。例えば、ActRIIBポリペプチドは、ActRIIBタンパク質及び/又はアクチビンに結合し、それらの機能を阻害することができる。ActRIIBポリペプチドの例としては、ヒトActRIIB前駆ポリペプチド(配列番号16又は配列番号28)が挙げられる。そのアミノ酸配列が配列番号16又は配列番号28に示されているActRIIB前駆ポリペプチド(すなわち、ヒトActRIIB前駆ポリペプチド)に関して、該ActRIIB前駆ポリペプチドのシグナルペプチドは、アミノ酸1〜18に位置し;細胞外ドメインは、アミノ酸19〜134に位置し、潜在的N結合型グリコシル化部位は、アミノ酸位置42及び65に位置する。配列番号16のヒトActRIIB前駆ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号19として開示されている(配列番号19は、アミノ酸位置64に対応するコドンでアラニンを提供するが、その代わりにアミノ酸位置64に対応するコドンでアルギニンを提供するように、当技術分野で公知の方法を用いて、当業者により、容易に修飾されることができる)。配列の説明については、表1を参照されたい。
別途、具体的に表記されない限り、本明細書に記載の全てのActRIIB関連ポリペプチドに関するアミノ酸の付番は、配列番号16及び配列番号28(これらは、位置64で発現されるアミノ酸だけが異なる)に関するアミノ酸付番に基づく。例えば、ActRIIBポリペプチドがアミノ酸位置79で置換/突然変異を有すると記載されている場合、位置79は、ActRIIBポリペプチドが由来する配列番号16又は配列番号28中の79番目のアミノ酸を指すものと理解されるべきである。同様に、ActRIIBポリペプチドがアミノ酸位置64でアラニン又はアルギニンを有すると記載されている場合、位置64は、ActRIIBポリペプチドが由来する配列番号16又は配列番号28中の64番目のアミノ酸を指すものと理解されるべきである。
ある実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBのインヒビターは、ActRIIBのアクチビン結合ドメインを含むポリペプチドを含む。いくつかの実施態様において、ActRIIBのアクチビン結合ドメインは、ActRIIBの細胞外ドメイン、又はその部分を含む。具体的な実施態様において、ActRIIBの細胞外ドメイン又はその部分は可溶性である。ActRIIBポリペプチドの例示的な修飾形態は、その開示が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、米国特許出願公開第20090005308号及び第20100068215号に開示されている。
具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBポリペプチドは、可溶性ActRIIBポリペプチドである。「可溶性ActRIIBポリペプチド」という用語は、通常、ActRIIBタンパク質の任意の天然の細胞外ドメインを含む、ActRIIBタンパク質の細胞外ドメインを含むポリペプチド並びにその任意の変異体(突然変異体、断片、及びペプチド模倣形態を含む)を指す。可溶性ActRIIBポリペプチドは、アクチビンに結合することができる;しかしながら、野生型ActRIIBタンパク質は、アクチビンへの結合に関してGDF8/11と比べて顕著な選択性を示さない。ある実施態様において、様々な結合特性を有するActRIIBの改変形態を本明細書に提供される方法で使用することができる。そのような改変形態は、例えば、その開示が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、国際特許出願公開第WO 2006/012627号及びWO 2010/019261号に開示されている。天然又は改変ActRIIBタンパク質を第二のアクチビン選択的結合剤とカップリングさせることにより、該タンパク質に、アクチビンに対する特異性の付加を与えることができる。例示的な可溶性ActRIIBポリペプチドとしては、ヒトActRIIBポリペプチドの細胞外ドメイン(例えば、配列番号17、18、23、26、27、29、30、31、32、33、36、37、42、及び43)が挙げられる。
ActRIIB前駆アミノ酸配列、すなわち、配列番号16のアミノ酸64に対応する位置のアラニン(本明細書中、「A64」と呼ばれる)を有する、Hildenらの文献(Blood, 1994, 83(8):2163-70)によって開示されたActRIIB細胞外配列を有するFc融合タンパク質は、アクチビン及びGDF-11に対する比較的低い親和性を保有することが示されている。対照的に、ActRIIB前駆アミノ酸配列の位置64のアルギニン(本明細書中、「R64」と呼ばれる)を有するFc融合タンパク質は、低ナノモル濃度からピコモル濃度の範囲のアクチビン及びGDF-11に対する親和性を有する(例えば、その開示が完全に本明細書中に組み込まれる、米国特許出願公開第20100068215号を参照されたい)。位置64のアルギニンを有するActRIIB前駆アミノ酸配列は、配列番号28に示されている。したがって、ある実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法に従って使用されるActRIIBポリペプチドは、(i)ActRIIB前駆アミノ酸配列、すなわち、配列番号16のアミノ酸64に対応する位置のアラニン;又は(ii)ActRIIB前駆アミノ酸配列、すなわち、配列番号28の位置64のアルギニンのどちらかを含み得る。他の実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法に従って使用されるActRIIBポリペプチドは、ActRIIB前駆アミノ酸配列、すなわち、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸64に対応する位置にアラニンでもアルギニンでもないアミノ酸を含み得る。
ActRIIBの細胞外ドメインのC末端におけるプロリンノットの欠失は、アクチビンに対する受容体の親和性を低下させることが示されている(例えば、Attisanoらの文献、Cell, 1992, 68(1):97-108を参照されたい)。配列番号28のアミノ酸20〜119を含むActRIIB-Fc融合タンパク質(すなわち、配列番号32)の「ActRIIB(20-119)-Fc」は、プロリンノット領域及び完全な膜近傍領域を含む、配列番号28のアミノ酸20〜134を含むActRIIB-Fc融合タンパク質(すなわち、配列番号31)の「ActRIIB(20-134)-Fc」と比べて、GDF-11及びアクチビンに対する結合が低下している。しかしながら、配列番号28のアミノ酸20〜129を含むActRIIB-Fc融合タンパク質の「ActRIIB(20-129)-Fc」は、プロリンノット領域が破壊されているにもかかわらず、ActRIIBの非切断型細胞外ドメインと比べて、同様の、しかし、若干低下した活性を保持している。したがって、配列番号28(又は配列番号16)のアミノ酸134、133、132、131、130、及び129で終結する細胞外ドメインを含むActRIIBポリペプチドは全て活性を有すると考えられるが、アミノ酸134又は133で終結するコンストラクトが最も高い活性を有し得る。同様に、配列番号28のP129及びP130の突然変異がリガンド結合をそれほど減少させないという事実によって示されるように、残基129〜134のいずれかでの突然変異は、リガンド結合親和性を大幅に変化させるとは考えられない。したがって、本明細書に記載の方法及び組成物に従って使用されるActRIIBポリペプチドは、配列番号28(又は配列番号16)のアミノ酸109(すなわち、最後のシステイン)で早くも終わり得るが、配列番号28(又は配列番号16)のアミノ酸位置109と119又はその間で終わる形態は、低下したリガンド結合能を有すると考えられる。
配列番号16及び配列番号28のアミノ酸29は、ActRIIB前駆体配列中の最初のシステインに相当する。配列番号16もしくは配列番号28のN末端のアミノ酸29、又はこれらのアミノ酸位置の前から始まるActRIIBポリペプチドは、リガンド結合活性を保持していると考えられる。配列番号16又は配列番号28の位置24におけるアラニンからアスパラギンへの突然変異は、リガンド結合にそれほど影響を及ぼすことなく、N結合型グリコシル化配列を導入する。これは、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸20〜29に対応するシグナル切断ペプチドとシステイン架橋領域の間の領域中の突然変異が良好に許容されることを裏付けるものである。特に、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸位置20、21、22、23、及び24から始まるActRIIBポリペプチドは活性を保持しており、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸位置25、26、27、28、及び29から始まるActRIIBポリペプチドも活性を保持すると考えられる。配列番号16又は配列番号28のアミノ酸位置22、23、24、又は25から始まるActRIIBポリペプチドは最も大きい活性を有する。
まとめると、本明細書に記載の方法及び組成物に従って使用されるActRIIB前駆タンパク質(すなわち、配列番号16又は配列番号28)の活性部分(すなわち、ActRIIBポリペプチド)は、通常、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸29〜109を含み、そのようなActRIIBポリペプチドは、例えば、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸19〜29のいずれか1つに対応する残基から始まり、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸109〜134のいずれか1つに対応する位置で終わることができる。本明細書に包含されるActRIIBポリペプチドの具体的な例としては、配列番号16又は配列番号28の19〜29、20〜29、又は21〜29のアミノ酸位置から始まり、配列番号16又は配列番号28の119〜134、119〜133、又は129〜134、129〜133のアミノ酸位置で終わるものが挙げられる。本明細書に包含されるActRIIBポリペプチドの他の具体的な例としては、配列番号16又は配列番号28の20〜24(又は21〜24、又は22〜25)のアミノ酸位置から始まり、配列番号16又は配列番号28の109〜134(もしくは109〜133)、119〜134(もしくは119〜133)、又は129〜134(もしくは129〜133)のアミノ酸位置で終わるものが挙げられる。これらの範囲に含まれる変異体ActRIIBポリペプチド、特に、配列番号16又は配列番号28の対応する部分との少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性又は配列相同性を有するものも企図される。
ある実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBのインヒビターは、ActRIIBの細胞外ドメインの切断形態を含む。切断は、ActRIIBポリペプチドのカルボキシ末端及び/又はアミノ末端にあることができる。ある実施態様において、切断は、成熟したActRIIBポリペプチド細胞外ドメインと比べて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25アミノ酸長いものであることができる。ある実施態様において、切断は、成熟したActRIIBポリペプチド細胞外ドメインの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25個のN末端アミノ酸であることができる。ある実施態様において、切断は、成熟したActRIIBポリペプチド細胞外ドメインの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25個のC末端アミノ酸であることができる。例えば、ActRIIBの切断形態としては、アミノ酸20〜119; 20〜128; 20〜129; 20〜130; 20〜131; 20〜132; 20〜133; 20〜134; 20〜131; 21〜131; 22〜131; 23〜131; 24〜131;及び25〜131を有するポリペプチドが挙げられ、ここで、該アミノ酸位置は、配列番号16又は配列番号28におけるアミノ酸位置を指す。
ActRIIBのさらなる例示的な切断形態としては、(i)配列番号16又は配列番号28のアミノ酸21〜29のいずれかのアミノ酸から始まり(任意に、配列番号16又は配列番号28の22〜25)、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸109〜134のいずれかで終わるポリペプチド;(ii)配列番号16又は配列番号28のアミノ酸20〜29のアミノ酸のいずれかから始まり(任意に、配列番号16又は配列番号28の22〜25から始まり)、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸109〜133のいずれかで終わるポリペプチド;(iii)配列番号16又は配列番号28のアミノ酸20〜24のアミノ酸のいずれかから始まり(任意に、配列番号16又は配列番号28の22〜25から始まり)、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸109〜133のいずれかで終わるポリペプチド;(iv)配列番号16又は配列番号28のアミノ酸21〜24のいずれかから始まり、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸109〜134のいずれかで終わるポリペプチド;(v)配列番号16又は配列番号28のアミノ酸20〜24のいずれかから始まり、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸118〜133のいずれかで終わるポリペプチド;(vi)配列番号16又は配列番号28のアミノ酸21〜24のいずれかから始まり、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸118〜134のいずれかで終わるポリペプチド;(vii)配列番号16又は配列番号28のアミノ酸20〜24のいずれかから始まり、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸128〜133のいずれかで終わるポリペプチド;(viii)配列番号16又は配列番号28のアミノ酸20〜24のいずれかから始まり、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸128〜133のいずれかで終わるポリペプチド;(ix)配列番号16又は配列番号28のアミノ酸21〜29のいずれかから始まり、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸118〜134のいずれかで終わるポリペプチド;(x)配列番号16又は配列番号28のアミノ酸20〜29のいずれかから始まり、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸118〜133のいずれかで終わるポリペプチド;(xi)配列番号16又は配列番号28のアミノ酸21〜29のいずれかから始まり、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸128〜134のいずれかで終わるポリペプチド;及び(xii)配列番号16又は配列番号28のアミノ酸20〜29のいずれかから始まり、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸128〜133のいずれかで終わるポリペプチドが挙げられる。具体的な実施態様において、ActRIIBポリペプチドは、配列番号16もしくは配列番号28のアミノ酸位置25から始まり、配列番号16もしくは配列番号28のアミノ酸位置131で終わるアミノ酸配列を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。別の具体的な実施態様において、ActRIIBポリペプチドは、配列番号17、18、23、26、27、29、30、31、32、33、36、37、42、もしくは43のアミノ酸配列からなるか、又はそれらから本質的になる。
本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBポリペプチドはいずれも、ホモ二量体として産生することができる。本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBポリペプチドはいずれも、IgG重鎖由来の定常領域、例えば、Fcドメインを含む異種部分を有する融合タンパク質として製剤化することができる。本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBポリペプチドはいずれも、任意に、配列番号16又は配列番号28に対する1以上の追加のアミノ酸置換、欠失、又は挿入と組み合わせて、配列番号16又は配列番号28の位置79に対応する位置に酸性アミノ酸を含むことができる。
具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBのインヒビターは、1以上のアミノ酸置換/突然変異を有するActRIIBの細胞外ドメインを含む。そのようなアミノ酸置換/突然変異は、例えば、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸位置79のロイシンからアスパラギン酸又はグルタミン酸などの酸性アミノ酸への交換であり得る。例えば、配列番号16又は配列番号28の位置L79をActRIIB細胞外ドメインポリペプチド中で改変して、改変されたアクチビン-ミオスタチン(GDF-11)結合特性を付与することができる。L79A及びL79P突然変異は、アクチビン結合よりも大きい程度にGDF-11結合を低下させる。L79E及びL79D突然変異はGDF-11結合を保持する一方で、大きく低下したアクチビン結合を示す。
ある実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBのインヒビターは、アミノ酸置換、例えば、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸位置79のロイシンからアスパラギン酸又はグルタミン酸などの酸性アミノ酸への交換も保有するActRIIB細胞外ドメインの切断形態を含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるアミノ酸置換も保有するActRIIBポリペプチドの細胞外ドメインの切断形態は、配列番号23である。切断され及び/又は1以上のアミノ酸置換を保有するActRIIBの形態は、上で論じられているような抗体のFcドメインに連結させることができる。
ActRIIBポリペプチドの機能的に活性のある断片は、例えば、ActRIIBポリペプチドをコードする核酸の対応する断片から組換え産生されたポリペプチドをスクリーニングすることにより得ることができる。さらに、断片を、従来のメリフィールド固相f-Moc又はt-Boc化学などの当技術分野で公知の技術を用いて化学合成することができる。該断片を(組換えによるか又は化学合成によって)産生し、試験して、ActRIIBタンパク質又はアクチビンによって媒介されるシグナル伝達のアンタゴニスト(インヒビター)として機能し得るペプチジル断片を同定することができる。
さらに、ActRIIBポリペプチドの機能的に活性のある変異体は、ActRIIBポリペプチドをコードする対応する突然変異核酸から組換え産生された修飾ポリペプチドのライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる。該変異体を産生し、試験して、ActRIIBタンパク質又はアクチビンによって媒介されるシグナル伝達のアンタゴニスト(インヒビター)として機能し得るものを同定することができる。ある実施態様において、ActRIIBポリペプチドの機能的変異体は、配列番号17、18、23、26、27、29、30、31、32、33、36、37、42、及び43から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、該機能的変異体は、配列番号17、18、23、26、27、29、30、31、32、33、36、37、42、及び43から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一なアミノ酸配列を有する。
機能的変異体は、例えば、ActRIIBポリペプチドの構造を、治療効力、又は安定性(例えば、エクスビボでの保存期間及びインビボでのタンパク質分解に対する抵抗性)を増強するような目的で修飾することにより作製することができる。アクチビン結合を保持するように選択された場合のそのような修飾ActRIIBポリペプチドは、天然のActRIIBポリペプチドの機能的等価物とみなすことができる。修飾ActRIIBポリペプチドは、例えば、アミノ酸置換、欠失、又は付加により産生することもできる。例えば、ロイシンとイソロイシンもしくはバリンとの、アスパラギン酸とグルタミン酸との、トレオニンとセリンとの単独置換、又はあるアミノ酸と構造的に関連するアミノ酸との同様の置換(例えば、保存的突然変異)によって、得られる分子の生物活性が大きく影響を受けることはないであろうと予想するのは合理的である。保存的置換は、その側鎖において関連があるアミノ酸のファミリー内で起こる置換である。ActRIIBポリペプチドのアミノ酸配列の変化によって機能的ホモログが生じるかどうかは、野生型ActRIIBポリペプチドと同様の様式で細胞内の応答を引き起こす変異体ActRIIBポリペプチドの能力を評価することにより容易に決定することができる。
ActRIIBポリペプチド突然変異体、特に、ActRIIBポリペプチドのコンビナトリアル突然変異体のセット、及び切断突然変異体;コンビナトリアル突然変異体のプールは、機能的変異体配列を同定するのに特に有用であり、本明細書に記載の方法及び組成物で使用することができる。そのようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、アゴニストもしくはアンタゴニストのいずれかとして作用することができるか、又はその代わりに、新規の活性を全て併せ持つ、ActRIIBポリペプチド変異体を作製することであり得る。
ActRIIBのリガンド結合ポケットは、配列番号16又は配列番号28の残基Y31、N33、N35、L38〜T41、E47、E50、Q53〜K55、L57、H58、Y60、S62、K74、W78〜N83、Y85、R87、A92、及びE94〜F101によって規定されることが示されている。これらの位置では、保存的突然変異は許容されるが、K74A突然変異は、R40A、K55A、F82A、及び位置L79での突然変異がそうであるように、良好に許容されると考えられる。R40は、ゼノパス(Xenopus)ではKであり、この位置の塩基性アミノ酸が許容されることを示している。Q53は、ウシActRIIBではR、及びゼノパスActRIIBではKであり、それゆえ、R、K、Q、N、及びHを含むアミノ酸がこの位置で許容される。したがって、本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるActRIIBポリペプチドの一般式は、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸29〜109を含むが、任意に、配列番号16又は配列番号28の20〜24又は22〜25の範囲のアミノ酸位置から始まり、配列番号16又は配列番号28の129〜134の範囲のアミノ酸位置で終わり、リガンド結合ポケット内に1、2、5、又は15以下の保存的アミノ酸変化を含み、かつリガンド結合ポケット内の配列番号16又は配列番号28のアミノ酸位置40、53、55、74、79、及び/又は82に0、1、又はそれより多くの非保存的変化を含むものである。そのようなActRIIBポリペプチドは、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸29〜109の配列との80%、90%、95%、又は99%を超える配列同一性又は配列相同性を保持し得る。ばらつきが特に良好に許容され得る結合ポケットの外側の部位としては、ActRIIBの細胞外ドメインのアミノ末端及びカルボキシ末端、並びに位置42〜46及び65〜73が挙げられる。配列番号16又は配列番号28の位置65におけるアスパラギンからアラニンへの変化(N65A)は、A64バックグラウンドでのリガンド結合を実際に改善し、したがって、R64バックグラウンドでのリガンド結合に悪影響を及ぼさないと考えられる。この変化は、おそらくは、A64バックグラウンドでのN65におけるグリコシル化を消失させ、したがって、この領域での顕著な変化が許容される可能性が高いことを示している。R64A変化はあまり許容されないが、R64Kは良好に許容され、したがって、Hなどの別の塩基性残基は、位置64で許容され得る。
リガンド結合ドメイン内に突然変異を有するActRIIBポリペプチドの具体的な例として、変異体ActRIIBポリペプチドが、アクチビンではなく、GDF8に優先的に結合するように、ActRIIBのリガンド結合ドメインの正電荷を有するアミノ酸残基Asp(D80)を異なるアミノ酸残基に突然変異させることができる。具体的な実施態様において、D80残基を、非荷電アミノ酸残基、負電荷を有する(negative)アミノ酸残基、及び疎水性アミノ酸残基:からなる群から選択されるアミノ酸残基に変化させる。さらなる具体的な例として、疎水性残基L79を酸性アミノ酸のアスパラギン酸又はグルタミン酸に改変して、GDF11結合を保持したまま、アクチビン結合を大きく低下させることができる。当業者によって認識されるように、記載された突然変異、変異体、又は修飾の大部分は、核酸レベルで、又は場合によっては、翻訳後修飾もしくは化学合成により生成させることができる。そのような技術は、当技術分野で周知である。
具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBのインヒビターは、抗体のFc部分に連結したActRIIB受容体の細胞外ドメイン(例えば、アクチビン結合ドメイン)を含むコンジュゲート/融合タンパク質を含む。そのようなコンジュゲート/融合タンパク質は、本明細書に開示されるActRIIBポリペプチドのいずれか(例えば、配列番号17、18、23、26、27、29、30、31、32、33、36、37、42、もしくは43のいずれか)、当技術分野で公知の任意のActRIIBポリペプチド、又は当技術分野で公知の及び/もしくは本明細書に提供される方法を用いて作製される任意のActRIIBポリペプチドを含み得る。
ある実施態様において、該細胞外ドメインは、リンカー、例えば、ペプチドリンカーを介して、抗体のFc部分に連結される。例示的なリンカーとしては、短いポリペプチド配列、例えば、2〜10個、2〜5個、2〜4個、2〜3個のアミノ酸残基(例えば、グリシン残基)、例えば、Gly-Gly-Glyリンカーなどが挙げられる。具体的な実施態様において、該リンカーは、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly(GGG)を含む。別の具体的な実施態様において、該リンカーは、アミノ酸配列Thr-Gly-Gly-Gly(TGGG)を含む。任意に、Fcドメインは、Asp-265、リジン322、及びAsn-434などの残基に1以上の突然変異を有する。ある場合には、これらの突然変異のうちの1つ又は複数(例えば、Asp-265突然変異)を有する突然変異体Fcドメインは、野生型Fcドメインと比べて、Fcγ受容体に結合する能力が低下している。他の場合には、これらの突然変異のうちの1つ又は複数(例えば、Asn-434突然変異)を有する突然変異体Fcドメインは、野生型Fcドメインと比べて、MHCクラスI関連Fc-受容体(FcRN)に結合する能力が増大している。Fcドメインに融合したActRIIBの可溶性細胞外ドメインを含む例示的な融合タンパク質は、配列番号20、21、24、25、34、35、38、39、40、41、44、46、及び47に示されている。
具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBインヒビターは、抗体のFc部分に連結されたActRIIBの細胞外ドメイン、又はその部分を含み、ここで、該ActRIIBインヒビターは、配列番号20、21、24、25、34、35、38、39、40、41、44、46、及び47から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBインヒビターは、抗体のFc部分に連結されたActRIIBの細胞外ドメイン、又はその部分を含み、ここで、該ActRIIBインヒビターは、配列番号20、21、24、25、34、35、38、39、40、41、44、46、及び47から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。
具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBインヒビターは、ヒトActRIIB受容体の細胞外ドメインとIgG1のFc部分の融合タンパク質である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBインヒビターは、ヒトActRIIB受容体の切断された細胞外ドメインとIgG1のFc部分の融合タンパク質である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBインヒビターは、ヒトActRIIB受容体の切断された細胞外ドメインとIgG1のFc部分の融合タンパク質であり、ここで、該ヒトActRIIB受容体の切断された細胞外ドメインは、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸79に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を保有する。一実施態様において、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸79に対応するアミノ酸位置でのアミノ酸置換は、ロイシンからアスパラギン酸への置換(すなわち、L79D突然変異)である。
具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBインヒビターは、配列番号24又は25であり、これらは、ヒトActRIIB受容体の細胞外ドメインとIgG1のFc部分の融合タンパク質を表し、ここで、該ActRIIB細胞外ドメインは、配列番号28のアミノ酸25〜131を含み、L79D突然変異を有する。配列番号24のActRIIB-Fc融合タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号45に示されている。
別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRIIBインヒビターは、配列番号34又は35であり、これらは、ヒトActRIIB受容体の細胞外ドメインとIgG1のFc部分の融合タンパク質を表し、ここで、該ActRIIB細胞外ドメインは、配列番号16のアミノ酸25〜131を含み、L79D突然変異を有する。
アスパラギン結合型グリコシル化認識部位は、通常、適当な細胞グリコシル化酵素によって特異的に認識されるアスパラギン-X-トレオニン(又はアスパラギン-X-セリン)(ここで、「X」は、任意のアミノ酸である)という3ペプチド配列を含む。改変は、野生型ActRIIBポリペプチドの配列への1以上のセリンもしくはトレオニン残基の付加、又はそれらによる置換によって行うこともできる(O結合型グリコシル化部位の場合)。グリコシル化認識部位の1番目もしくは3番目のアミノ酸位置のうちの一方もしくは両方における種々のアミノ酸置換もしくは欠失(及び/又は2番目の位置におけるアミノ酸欠失)は、修飾された3ペプチド配列中での非グリコシル化をもたらす。ActRIIBポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、ActRIIBポリペプチドへのグリコシドの化学的又は酵素的カップリングによるものである。使用されるカップリング様式に応じて、糖(複数可)を、(a)アルギニン及びヒスチジン;(b)遊離カルボキシル基;(c)遊離スルフヒドリル基、例えば、システインの遊離スルフヒドリル基;(d)遊離ヒドロキシル基、例えば、セリン、トレオニン、もしくはヒドロキシプロリンの遊離ヒドロキシル基;(e)芳香族残基、例えば、フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンの芳香族残基;又は(f)グルタミンのアミド基に結合させることができる。これらの方法は、引用により本明細書中に組み込まれる、1987年9月11日に公開されたWO 87/05330号、並びにAplin及びWristonの文献(1981) CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306に記載されている。ActRIIBポリペプチド上に存在する1以上の炭水化物部分の除去は、化学的に及び/又は酵素的に達成することができる。化学的脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸、又は同等の化合物へのActRIIBポリペプチドの暴露を含み得る。この処理は、結合糖(N-アセチルグルコサミン又はN-アセチルガラクトサミン)を除くほとんど又は全ての糖の切断をもたらすが、アミノ酸配列は無傷のまま残す。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddinらの文献(1987) Arch. Biochem. Biophys. 259:52によって、及びEdgeらの文献(1981) Anal. Biochem. 118:131によってさらに記載されている。ActRIIBポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraらの文献(1987) Meth. Enzymol. 138:350により記載されているような種々のエンドグリコシダーゼ及びエキソグリコシダーゼの使用により達成することができる。ActRIIBポリペプチドのアミノ酸配列は、適切な場合、使用される発現系の種類に応じて調整することができるが、それは、哺乳動物、酵母、昆虫、及び植物の細胞が全て、該ペプチドのアミノ酸配列によって影響され得る異なるグリコシル化パターンを導入することができるためである。一般に、ヒトで使用されるActRIIBタンパク質は、適切なグリコシル化を提供する哺乳動物細胞株、例えば、HEK293又はCHO細胞株で発現されるが、他の発現系、例えば、他の哺乳動物発現細胞株、グリコシル化酵素が改変されている酵母細胞株、及び昆虫細胞も同様に有用であると考えられる。
具体的な実施態様において、ActRIIB(R64)-Fc形態と比べてActRIIB-Fc融合タンパク質の血清半減期を延長するさらなるN結合型グリコシル化部位(N-X-S/T)の付加を含む突然変異ActRIIBポリペプチドを本明細書に記載の方法及び組成物で使用することできる。具体的な実施態様において、配列番号16又は配列番号28の位置24におけるアスパラギン(A24N)の導入は、より長い半減期を付与するNXT配列の生成をもたらす。他のNX(T/S)配列は、42〜44(NQS)及び65〜67(NSS)に見出すことができるが、後者は、位置64のRでは(すなわち、R64ポリペプチド中では)効率的にグリコシル化することができない。N-X-S/T配列は、通常、上で詳述されている、ActRIIBのリガンド結合ポケットの外側の位置で導入することができる。非内在性N-X-S/T配列の導入のための特に好ましい部位としては、配列番号16又は配列番号28のアミノ酸20〜29、20〜24、22〜25、109〜134、120〜134、又は129〜134が挙げられる。N-X-S/T配列は、ActRIIB配列とFc又は他の融合体成分との間のリンカーに導入することもできる。そのような部位は、既存のSもしくはTに対して正しい位置にNを導入することによるか、又は既存のNに対応する位置にSもしくはTを導入することにより、最小限の労力で導入することができる。したがって、N結合型グリコシル化部位を生成させる望ましい改変は: A24N、R64N、S67N(おそらくは、N65A改変と併存する)、E106N、R112N、G120N、E123N、P129N、A132N、R112S、及びR112Tである(これらの位置に対応する全てのアミノ酸位置について、それらを配列番号16又は配列番号28に見出すことができる)。グリコシル化によって保護が生じるので、グリコシル化されると予測される任意のSを、免疫原性部位を生成させることなく、Tに改変することができる。同様に、グリコシル化されると予測される任意のTをSに改変することができる。したがって、改変S67T及びS44Tは本明細書に包含される。同様に、A24N変異体において、S26T改変を使用することができる。したがって、ActRIIBポリペプチドは、1以上の追加の非内在性N結合型グリコシル化コンセンサス配列を含むことができる。
種々のスクリーニングアッセイを用いて、ActRIIBポリペプチド変異体を評価することができる。例えば、ActRIIBポリペプチド変異体を、ActRIIBリガンドに結合する能力、ActRIIBリガンドのActRIIBポリペプチドへの結合を妨げる能力、又はActRIIBリガンドによって生じるシグナル伝達に干渉する能力についてスクリーニングすることができる。ActRIIBポリペプチド又はその変異体の活性を、細胞ベースのアッセイ又はインビボアッセイで試験することもできる。
天然のActRIIBポリペプチドと比べて選択的な又は全般的に増大した効力を有する、コンビナトリアル由来の変異体を作製することができる。同様に、突然変異生成により、対応する野生型ActRIIBポリペプチドとは劇的に異なる細胞内半減期を有する変異体を生じさせることができる。例えば、改変タンパク質を、タンパク質分解、又は天然のActRIIBポリペプチドの破壊、さもなければ、不活化をもたらす他の細胞プロセスに対してより安定な状態又はあまり安定でない状態にするにすることができる。そのような変異体、及びそれらをコードする遺伝子を用いて、ActRIIBポリペプチドの半減期を調節することにより、ActRIIBポリペプチドレベルを改変することができる。例えば、短い半減期は、より一時的な生物学的効果を生じることができ、患者内の組換えActRIIBポリペプチドレベルのより厳しい制御を可能にすることができる。Fc融合タンパク質では、突然変異をリンカー(存在する場合)及び/又はFc部分中で生成させて、タンパク質の半減期を改変することができる。
コンビナトリアルライブラリーは、各々の潜在的ActRIIBポリペプチド配列の少なくとも一部を含むポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーによって生成させることができる。例えば、潜在的ActRIIBポリペプチドヌクレオチド配列の縮重セットが、個々のポリペプチドとして、又はその代わりに、より大きな融合タンパク質のセット(例えば、ファージディスプレイの場合)として発現可能となるように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素的に連結して遺伝子配列にすることができる。
潜在的ホモログのライブラリーを縮重オリゴヌクレオチド配列から作製することができる多くの方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成を自動DNA合成装置で実行することができ、その後、合成遺伝子を発現用の適当なベクターに連結することができる。縮重オリゴヌクレオチドの合成は、当技術分野で周知である(例えば、Narang, S Aの文献(1983) Tetrahedron 39:3; Itakuraらの文献(1981) Recombinant DNA, Proc. 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules, AG Walton, Amsterdam編: Elsevier pp 273-289; Itakuraらの文献(1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323; Itakuraらの文献(1984) Science 198:1056; Ikeらの文献(1983) Nucleic Acid Res. 11:477を参照されたい)。そのような技術は、他のタンパク質の定方向進化において利用されている(例えば、Scottらの文献(1990) Science 249:386-390; Robertsらの文献(1992) PNAS USA 89:2429-2433; Devlinらの文献(1990) Science 249: 404-406; Cwirlaらの文献(1990) PNAS USA 87: 6378-6382;並びに米国特許第5,223,409号、第5,198,346号、及び第5,096,815号を参照されたい)。
或いは、他の形態の突然変異生成を用いて、コンビナトリアルライブラリーを作製することができる。例えば、ActRIIBポリペプチド変異体を、例えば、アラニンスキャニング突然変異生成などを用いるスクリーニングにより(Rufらの文献(1994) Biochemistry 33:1565-1572; Wangらの文献(1994) J. Biol. Chem. 269:3095-3099; Balintらの文献(1993) Gene 137:109-118; Grodbergらの文献(1993) Eur. J. Biochem. 218:597-601; Nagashimaらの文献(1993) J. Biol. Chem. 268:2888-2892; Lowmanらの文献(1991) Biochemistry 30:10832-10838;及びCunninghamらの文献(1989) Science 244:1081-1085)、リンカースキャニング突然変異生成により(Gustinらの文献(1993) Virology 193:653-660; Brownらの文献(1992) Mol. Cell Biol. 12:2644-2652; McKnightらの文献(1982) Science 232:316);飽和突然変異生成により(Meyersらの文献(1986)Science 232:613); PCR突然変異生成により(Leungらの文献(1989) Method Cell Mol Biol 1:11-19);又は化学的突然変異生成などを含むランダム突然変異生成により(Millerらの文献(1992) 細菌生物学の短期講座(A Short Course in Bacterial Genetics)、CSHL Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;及びGreenerらの文献(1994) Strategies in Mol Biol 7:32-34)、ライブラリーから作製し、単離することができる。特にコンビナトリアル設定でのリンカースキャニング突然変異生成は、ActRIIBポリペプチドの切断(生物活性)形態を同定する魅力的な方法である。
点突然変異及び切断によって作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための、さらに言うなら、特定の性質を有する遺伝子産物のcDNAライブラリーをスクリーニングするための、広範な技術が当技術分野で公知である。そのような技術は、一般に、ActRIIBポリペプチドのコンビナトリアル突然変異生成によって作製される遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニングに適用可能である。大きな遺伝子ライブラリーのスクリーニングに最も広く使用されている技術は、通常、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングすること、適当な細胞を得られたベクターのライブラリーで形質転換すること、及びコンビナトリアル遺伝子を、所望の活性の検出によって、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的簡単な単離が容易になる条件下で発現させることを含む。好ましいアッセイとしては、アクチビン結合アッセイ及びアクチビン媒介性細胞シグナル伝達アッセイが挙げられる。
ある実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるActRIIBポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドに天然に存在する任意の修飾に加えて、翻訳後修飾をさらに含み得る。そのような修飾としては、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、及びアシル化が挙げられるが、これらに限定されない。結果として、修飾されたActRIIBポリペプチドは、非アミノ酸要素、例えば、ポリエチレングリコール、脂質、多糖又は単糖、及びホスフェートを含有し得る。ActRIIBポリペプチドの機能性に対するそのような非アミノ酸要素の効果は、当業者に公知の任意の方法によって試験することができる。ActRIIBポリペプチドが、ActRIIBポリペプチドの新生形態を切断することによって細胞内で産生される場合、翻訳後プロセシングもまた、タンパク質の正確なフォールディング及び/又は機能に重要であり得る。様々な細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、W138、NIH-3T3、又はHEK293)は、そのような翻訳後活性のための特異的細胞装置及び特徴的機構を有しており、該細胞を、ActRIIBポリペプチドの正確な修飾及びプロセシングを保証するために選択することができる。
ある態様において、ActRIIBポリペプチドの機能的変異体又は修飾形態には、ActRIIBポリペプチドの少なくとも一部及び1以上の融合ドメインを有する融合タンパク質が含まれる。そのような融合ドメインのよく知られた例としては、ポリヒスチジン、Glu-Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、又はヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。融合ドメインを、所望の特性を付与するように選択することができる。例えば、いくつかの融合ドメインは、親和性クロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。親和性精製の目的で、親和性クロマトグラフィー用の関連するマトリックス、例えば、グルタチオン、アミラーゼ、及びニッケル又はコバルトコンジュゲート樹脂が使用される。そのようなマトリックスの多くは、「キット」形態で入手可能であり、これには、例えば、(HIS6)融合パートナーと合わせて有用な、Pharmacia GST精製システム及びQIAexpress(商標)システム(Qiagen)がある。別の例として、融合ドメインを、ActRIIBポリペプチドの検出を容易にするように選択することができる。そのような検出ドメインの例としては、様々な蛍光タンパク質(例えば、GFP)及び通常、特異的抗体が利用可能な短いペプチド配列である「エピトープタグ」が挙げられる。特異的モノクローナル抗体がすぐに利用可能である周知のエピトープタグとしては、FLAG、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、及びc-mycタグが挙げられる。場合により、融合ドメインは、例えば、第Xa因子又はトロンビン用のプロテアーゼ切断部位、を有し、該部位は、関連するプロテアーゼが融合タンパク質を部分消化し、それにより、組換えタンパク質をそれから遊離させることを可能にする。その後、遊離したタンパク質を、後続のクロマトグラフィー分離によって融合ドメインから単離することができる。ある好ましい実施態様において、ActRIIBポリペプチドを、インビボでActRIIBポリペプチドを安定化するドメイン(「スタビライザー」ドメイン)と融合させる。「安定化する」とは、血清半減期を延長する全てのことを意味し、これは、破壊の減少によるものか、腎臓によるクリアランスの減少によるものか、又は他の薬物動態作用によるものかを問わない。免疫グロブリンのFc部分との融合は、広範なタンパク質に望ましい薬物動態特性を付与することが知られている。同様に、ヒト血清アルブミンへの融合は、望ましい特性を付与することができる。選択され得る他のタイプの融合ドメインとしては、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメイン及び(望ましい場合、追加の生物学的機能、例えば、骨成長又は筋肉成長のさらなる刺激を付与する)機能ドメインが挙げられる。
融合タンパク質の様々なエレメントを、所望の機能と一致する任意の方法で配置し得ることが理解される。例えば、ActRIIBポリペプチドを異種ドメインのC末端に配置することができ、又はその代わりに、異種ドメインをActRIIBポリペプチドのC末端に配置することができる。ActRIIBポリペプチドドメイン及び異種ドメインは、融合タンパク質中で隣接している必要がなく、追加のドメイン又はアミノ酸配列を、どちらかのドメインのC末端もしくはN末端、又はこれらのドメインの間に含めることができる。
ある実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるActRIIBポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドを安定化することができる1以上の修飾を含む。例えば、そのような修飾は、ActRIIBポリペプチドのインビトロ半減期を向上させるか、ActRIIBポリペプチドの循環半減期を向上させるか、又はActRIIBポリペプチドのタンパク質分解を低下させる。そのような安定化修飾としては、融合タンパク質(例えば、ActRIIBポリペプチド及びスタビライザードメインを含む融合タンパク質を含む)、グリコシル化部位の修飾(例えば、ActRIIBポリペプチドへのグリコシル化部位の付加を含む)、並びに炭水化物部分の修飾(例えば、ActRIIBポリペプチドからの炭水化物部分の除去を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。融合タンパク質の場合、ActRIIBポリペプチドを、スタビライザードメイン、例えば、IgG分子(例えば、Fcドメイン)に融合させる。本明細書で使用されるように、「スタビライザードメイン」という用語は、融合タンパク質の場合に見られる融合ドメイン(例えば、Fc)を指すだけでなく、炭水化物部分などの非タンパク質性修飾、又はポリエチレングリコールなどの非タンパク質性ポリマーも含む。
ある実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物は、単離及び/又は精製されたActRIIBポリペプチドを使用する、すなわち、他のタンパク質から単離されているか、又は別の方法で他のタンパク質を実質的に含まない、ActRIIBポリペプチドを本明細書に記載の方法及び組成物とともに使用することができる。ActRIIBポリペプチドは、通常、組換え核酸からの発現によって産生される。
ある態様において、本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるActRIIBポリペプチドは、本明細書に開示される断片、機能的変異体、及び融合タンパク質を含む、単離された及び/又は組換え核酸によりコードされる。例えば、配列番号19は、天然のヒトActRIIB前駆ポリペプチドをコードする。対象核酸は、一本鎖又は二本鎖であり得る。そのような核酸は、DNA又はRNA分子であり得る。これらの核酸を、例えば、ActRIIBポリペプチドを作製する方法で、又は直接的な治療剤として(例えば、遺伝子療法の手法で)使用することができる。
ある態様において、本明細書に記載の方法及び組成物で使用するのに好適なActRIIBポリペプチドを産生するために使用することができる核酸は、配列番号19の変異体並びに可溶性ActRIIBポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、配列番号17、18、23、26、27、29、30、31、32、33、36、37、42、及び43をコードする核酸)の変異体である核酸を含むことがさらに理解される。変異体ヌクレオチド配列には、1以上のヌクレオチド置換、付加、又は欠失によって異なる配列、例えば、アレル変異体が含まれる。
ある実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物で使用するのに好適なActRIIBポリペプチドを産生するために使用することができる単離された又は組換え核酸配列は、配列番号19又は可溶性ActRIIBポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、配列番号17、18、23、26、27、29、30、31、32、33、36、37、42、及び43をコードする核酸)と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である。当業者は、配列番号19又は可溶性ActRIIBポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、配列番号17、18、23、26、27、29、30、31、32、33、36、37、42、及び43をコードする核酸)に相補的な核酸配列、並びに配列番号19又は可溶性ActRIIBポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、配列番号17、18、23、26、27、29、30、31、32、33、36、37、42、及び43をコードする核酸)の変異体を、本明細書に記載の方法及び組成物とともに使用することができることを理解するであろう。さらなる実施態様において、該核酸配列は、単離されたもの、組換え体、及び/もしくは異種ヌクレオチド配列と融合したもの、又はDNAライブラリー中のものであることができる。
他の実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物で使用するのに好適なActRIIBポリペプチドを産生するために使用することができる核酸は、配列番号19に表記されるヌクレオチド配列もしくは可溶性ActRIIBポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、配列番号17、18、23、26、27、29、30、31、32、33、36、37、42、及び43をコードする核酸)、配列番号19もしくは可溶性ActRIIBポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、配列番号17、18、23、26、27、29、30、31、32、33、36、37、42、及び43をコードする核酸)の相補的配列、又はそれらの断片に高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。当業者は、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件を変化させることができることを理解するであろう。例えば、ハイブリダイゼーションを、約45℃での6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、次いで、50℃での2.0×SSCの洗浄で実施することができる。例えば、洗浄工程での塩濃度を、50℃で約2.0×SSCの低いストリンジェンシーから50℃で約0.2×SSCの高いストリンジェンシーまで選択することができる。さらに、洗浄工程での温度を、室温、約22℃での低いストリンジェンシー条件から約65℃での高いストリンジェンシー条件へと上昇させることができる。温度と塩の両方を変化させることができ、又は他の変数を変化させながら、温度もしくは塩濃度を一定に保つことができる。一実施態様において、室温での6×SSC、次に、室温での2×SSCでの洗浄の低いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸を、本明細書に記載の方法及び組成物とともに使用することができる。
遺伝暗号の縮重のために配列番号19又は可溶性ActRIIBポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、配列番号17、18、23、26、27、29、30、31、32、33、36、37、42、及び43をコードする核酸)に示される核酸とは異なる単離された核酸を用いて、本明細書に記載の方法及び組成物で使用するのに好適なActRIIBポリペプチドを産生することもできる。例えば、いくつかのアミノ酸は、複数のトリプレットによって指定される。同じアミノ酸を特定するコドン、又はシノニム(例えば、CAUとCACは、ヒスチジンについてのシノニムである)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント突然変異」を生じさせることができる。しかしながら、対象タンパク質のアミノ酸配列の変化を実際にもたらすDNA配列多型が哺乳動物細胞の間に存在すると考えられる。当業者は、特定のタンパク質をコードする核酸の1以上のヌクレオチドにおけるこれらの変異(variation)(ヌクレオチドの最大約3〜5%)が、天然のアレル変異(variation)が原因で、所与の種の個体間に存在し得ることを理解するであろう。ありとあらゆるそのようなヌクレオチド変異(variation)及び結果として生じるアミノ酸多型を本明細書に記載の方法及び組成物とともに使用することができる。
ある実施態様において、本明細書に記載の方法及び組成物で使用するのに好適なActRIIBポリペプチドを産生するために使用することができる組換え核酸を、発現コンストラクト中の1以上の調節ヌクレオチド配列に機能的に連結することができる。調節ヌクレオチド配列は、通常、発現に使用される宿主細胞に適したものである。種々の宿主細胞について、数多くの種類の適切な発現ベクター及び好適な調節配列が当技術分野で公知である。一般に、該1以上の調節ヌクレオチド配列としては、プロモーター配列、リーダー又はシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始及び終結配列、翻訳開始及び終結配列、並びにエンハンサー又はアクチベーター配列が挙げられるが、これらに限定されない。当技術分野で公知の構成的又は誘導性プロモーターを本明細書に記載の方法及び組成物とともに使用することができる。プロモーターは、天然プロモーター、又は複数のプロモーターのエレメントを組み合わせるハイブリッドプロモーターのどちらかであり得る。発現コンストラクトは、細胞内でプラスミドなどのエピソーム上に存在してもよく、又は発現コンストラクトは、染色体に挿入されてもよい。好ましい実施態様において、発現ベクターは、形質転換した宿主細胞の選択を可能にする選択可能マーカー遺伝子を含む。選択可能マーカー遺伝子は当技術分野で周知であり、使用される宿主細胞によって異なる。
ある態様において、本明細書に記載の方法及び組成物で使用するのに好適なActRIIBポリペプチドを産生するために使用することができる核酸は、ActRIIBポリペプチドをコードし、少なくとも1つの調節配列に機能的に連結されているヌクレオチド配列を含む発現ベクター中に提供される。調節配列は当技術分野で認められており、ActRIIBポリペプチドの発現を導くように選択される。したがって、調節配列という用語は、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御エレメントを含む。例示的な調節配列は、Goeddelの文献;遺伝子発現技術:酵素学の方法(Gene Expression Technology: Methods in Enzymology), Academic Press, San Diego, Calif.(1990)に記載されている。例えば、それに機能的に連結されたときDNA配列の発現を制御する多種多様な発現制御配列のいずれかをこれらのベクター中で用いて、ActRIIBポリペプチドをコードするDNA配列を発現させることができる。そのような有用な発現制御配列としては、例えば、SV40の初期及び後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルス又はサイトメガロウイルス前初期プロモーター、RSVプロモーター、lacシステム、trpシステム、TAC又はTRCシステム、その発現がT7 RNAポリメラーゼによって誘導されるT7プロモーター、ラムダファージの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3-ホスホグリセレートキナーゼ又は他の解糖系酵素のプロモーター、酸ホスファターゼ、例えば、Pho5のプロモーター、酵母のα接合因子のプロモーター、バキュロウイルス系のポリヘドロンプロモーター、並びに原核もしくは真核細胞又はそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られている他の配列、並びにこれらの様々な組合せが挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択及び/又は発現が望まれるタンパク質の種類のような因子によって決まることが理解されるべきである。さらに、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、及び該ベクターによってコードされる任意の他のタンパク質、例えば、抗生物質マーカーの発現も考慮されるべきである。
組換え核酸は、クローニングされた遺伝子、又はその一部を、原核細胞、真核細胞(酵母、鳥類、昆虫、もしくは哺乳動物)、又はその両方における発現に好適なベクター中に連結することにより産生することができる。組換えActRIIBポリペプチドの産生用の発現ビヒクルとしては、プラスミド及び他のベクターが挙げられる。例えば、好適なベクターとしては、大腸菌(E. coli)などの原核細胞における発現用の、以下のタイプのプラスミド: pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミド、及びpUC由来プラスミドが挙げられる。
いくつかの哺乳動物発現ベクターは、細菌におけるベクターの増殖を促進する原核生物配列と、真核細胞で発現される1以上の真核生物転写ユニットの両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2-dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko-neo 及びpHyg由来ベクターは、真核細胞のトランスフェクションに好適な哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのうちのいくつかは、原核細胞と真核細胞の両方における複製及び薬物耐性選択を容易にするために、pBR322などの細菌プラスミド由来の配列で修飾されている。或いは、ウシパピローマウイルス(BPV-1)、又はエプスタイン-バーウイルス(pHEBo、pREP由来、及びp205)などのウイルスの派生物を、真核細胞におけるタンパク質の一過性発現に使用することができる。(レトロウイルスを含む)他のウイルス発現系の例は、以下の遺伝子療法送達系の記載において見出すことができる。プラスミドの増殖及び宿主生物の形質転換に利用される様々な方法は、当技術分野で周知である。原核細胞と真核細胞の両方に関する他の好適な発現系、及び一般的な組換え手順については、分子クローニング 実験マニュアル(Molecular Cloning A Laboratory Manual)、第3版、Sambrook、Fritsch、及びManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)を参照されたい。いくつかの例において、バキュロウイルス発現系の使用によって組換えポリペプチドを発現させることが望ましい場合がある。そのようなバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来ベクター(例えば、pVL1392、pVL1393、及びpVL941)、pAcUW由来ベクター(例えば、pAcUW1)、並びにpBlueBac由来ベクター(例えば、β-gal含有pBlueBac III)が挙げられる。
一実施態様において、Pcmv-Scriptベクター(Stratagene, La Jolla, Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen, Carlsbad, Calif.)、及びpCI-neoベクター(Promega, Madison, Wis.)などのベクターを、CHO細胞内での本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるActRIIBポリペプチドの産生用に設計することができる。明らかになるように、対象遺伝子コンストラクトを用いて、例えば、精製用の、融合タンパク質又は変異体タンパク質を含む、タンパク質を産生するために、培養で増殖した細胞内での対象ActRIIBポリペプチドの発現を生じさせることができる。
1以上の該対象ActRIIBポリペプチドのコード配列(例えば、配列番号19又は可溶性ActRIIBポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、配列番号17、18、23、26、27、29、30、31、32、33、36、37、42、及び43をコードする核酸))を含む組換え遺伝子でトランスフェクトされた宿主細胞を用いて、本明細書に記載の方法及び組成物で使用するのに好適なActRIIBポリペプチドを産生することができる。宿主細胞は、任意の原核又は真核細胞であり得る。例えば、ActRIIBポリペプチドを、大腸菌などの細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を用いる)、酵母、又は哺乳動物細胞で発現させることができる。他の好適な宿主細胞は、当業者に公知である。
したがって、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるActRIIBポリペプチドを産生する方法である。例えば、ActRIIBポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞を、ActRIIBポリペプチドの発現が生じるのを可能にする適当な条件下で培養することができる。ActRIIBポリペプチドを分泌させ、細胞とActRIIBポリペプチドを含む培地の混合物から単離することができる。或いは、ActRIIBポリペプチドを細胞質内又は膜画分に保持し、細胞を回収し、溶解させ、タンパク質を単離することができる。細胞培養物には、宿主細胞、培地、及び他の副産物が含まれる。細胞培養用の好適な培地は、当技術分野で周知である。対象ActRIIBポリペプチドを、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、ActRIIBポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体による免疫親和性精製、及びActRIIBポリペプチドに融合しているドメインに結合する物質による親和性精製(例えば、プロテインAカラムを用いて、ActRIIB-Fc融合体を精製することができる)を含む、タンパク質を精製するための当技術分野で公知の技術を用いて、細胞培養培地、宿主細胞、又はその両方から単離することができる。好ましい実施態様において、ActRIIBポリペプチドは、その精製を容易にするドメインを含む融合タンパク質である。好ましい実施態様において、精製は、例えば、以下のもの:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、及び陽イオン交換クロマトグラフィーのうちの3つ以上を、任意の順序で含む、一連のカラムクロマトグラフィー工程により達成される。精製は、ウイルス濾過及びバッファー交換で終了させることができる。本明細書で実証されるように、ActRIIB-hFcタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィーにより決定して98%を超える純度、SDS PAGEにより決定して95%を超える純度に精製された。この精製レベルは、マウスの骨に対する望ましい効果並びにマウス、ラット、及び非ヒト霊長類における許容し得る安全性プロファイルを達成するのに十分であった。
別の実施態様において、組換えActRIIBポリペプチドの所望の部分のN末端におけるポリ-(His)/エンテロキナーゼ切断部位配列などの精製リーダー配列をコードする融合遺伝子は、Ni2+金属樹脂を用いる親和性クロマトグラフィーによる発現された融合タンパク質の精製を可能にすることができる。次いで、精製リーダー配列をエンテロキナーゼによる処理によって後から除去し、精製ActRIIBポリペプチドを提供することができる(例えば、Hochuliらの文献(1987) J. Chromatography 411:177;及びJanknechtらの文献、PNAS USA 88:8972を参照されたい)。
融合遺伝子を作製する技術は周知である。本質的に、異なるポリペプチド配列をコードする様々なDNA断片の接続は、ライゲーションのための平滑末端又は互い違い末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要な場合の付着末端の充填(filling-in)、望ましくない接続を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、及び酵素的ライゲーションを利用する従来の技術に従って実施される。別の実施態様において、融合遺伝子は、自動化DNA合成装置を含む従来の技術によって合成することができる。或いは、後からアニーリングさせてキメラ遺伝子配列を生成させることができる2つの連続する遺伝子断片間の相補的突出を生じさせるアンカープライマーを用いて、遺伝子断片のPCR増幅を実施することができる(例えば、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、Ausubelら編、John Wiley & Sons: 1992を参照されたい)。
ActRIIB-Fc融合タンパク質は、安定にトランスフェクトされたCHO-DUKX Bl 1細胞で、配列番号8の組織プラスミノーゲンリーダー配列を用いて、pAID4ベクター(SV40 ori/エンハンサー、CMVプロモーター)から発現させることができる。Fc部分は、配列番号7に示されるヒトIgGl Fc配列を含むことができる。ある実施態様において、発現させたとき、含まれるタンパク質は、ActRIIB-Fc融合タンパク質1分子当たり、平均で約1.5〜2.5モルのシアル酸を有する。
ある実施態様において、ActRIIB-Fc融合体の長い血清半減期は、ヒト患者で25〜32日であることができる。さらに、CHO細胞で発現される物質は、ヒト293細胞で発現されるActRIIB-hFc融合タンパク質について報告されたものよりも高いアクチビンBリガンドに対する親和性を有することができる(del Reらの文献、J Biol Chem. 2004 Dec 17;279(51):53126-35)。さらに、理論によって束縛されるものではないが、TPAリーダー配列の使用は、他のリーダー配列よりも大きな産生をもたらし、天然のリーダーで発現されるActRIIB-Fcとは異なり、極めて純粋なN末端配列を提供することができる。天然のリーダー配列の使用は、各々異なるN末端配列を有する2つの主要な種のActRIIB-Fcを生じさせることができる。
(5.5.3 他のActRII受容体インヒビター)
ある実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRII受容体のインヒビターは、核酸化合物である。
ActRII受容体を阻害する核酸化合物のカテゴリーの例としては、アンチセンス核酸、siRNA又はRNAiコンストラクト、及び触媒核酸コンストラクトが挙げられる。核酸化合物は、一本鎖又は二本鎖であり得る。二本鎖化合物は、鎖のどちらか一方が一本鎖である突出又は非相補性領域を含むこともできる。一本鎖化合物は、自己相補性領域を含むことができ、これは、該化合物が、二本鎖らせん構造の領域を含む、いわゆる「ヘアピン」又は「ステムループ」構造を形成し得ることを意味する。
ある実施態様において、ActRII受容体を阻害する核酸化合物は、1000以下、500以下、250以下、100以下、又は50、35、30、25、22、20、もしくは18以下のヌクレオチドの全長ActRII受容体核酸配列又はアクチビン核酸配列(例えば、βA又はβBとも呼ばれる、アクチビンA又はアクチビンBサブユニットの核酸配列)からなる領域に相補的であるヌクレオチド配列を含み得る。具体的な実施態様において、相補性領域は、少なくとも8ヌクレオチド、任意に、少なくとも10又は少なくとも15ヌクレオチド、任意に、15〜25ヌクレオチドである。相補性領域は、標的転写物のイントロン、コード配列、又は非コード配列、例えば、コード配列部分に含まれ得る。一般に、ActRII受容体を阻害する核酸化合物は、約8〜約500ヌクレオチド又は塩基対長の長さを有し、任意に、長さは、約14〜約50ヌクレオチドである。ActRII受容体を阻害する核酸化合物は、DNA(特にアンチセンスとして使用される)、RNA、又はRNA:DNAハイブリッドであり得る。どの1つの鎖も、DNAとRNAの混合物、及びDNA又はRNAのどちらかに容易に分類することができない修飾形態を含み得る。同様に、二本鎖核酸化合物は、DNA:DNA、DNA:RNA、又はRNA:RNAであり得、どの1つの鎖も、DNAとRNAの混合物、及びDNA又はRNAのどちらかに容易に分類することができない修飾形態も含み得る。
ActRII受容体を阻害する核酸化合物は、骨格(ヌクレオチド間結合を含む、天然の核酸の糖-リン酸部分)又は塩基部分(天然の核酸のプリンもしくはピリミジン部分)に対する1以上の修飾を含む、種々の修飾のいずれかを含み得る。ある実施態様において、アンチセンス核酸化合物は、約15〜約30ヌクレオチドの長さを有し、多くの場合、特定の特徴、例えば、血清中での安定性、細胞内での安定性、又は例えば、経口送達化合物の場合は胃、及び吸入化合物の場合は肺などの、該化合物が送達される可能性が高い場所での安定性を改善する1以上の修飾を含む。RNAiコンストラクトの場合、標的転写物に相補的な鎖は、通常、RNA又はその修飾物である。他の鎖は、RNA、DNA、又は任意の他の変形物であり得る。二本鎖又は一本鎖「ヘアピン」RNAiコンストラクトの二重鎖部分は、ある実施態様において、それがDicer基質としての役割を果たす限り、18〜40ヌクレオチド長、及び任意に、約21〜23ヌクレオチド長の長さを有する。触媒的又は酵素的核酸は、リボザイム又はDNA酵素であり得、修飾形態も含み得る。ある実施態様において、ActRII受容体を阻害する核酸化合物は、生理的条件下で及び非センス又はセンス対照がほとんど又は全く効果がない濃度で、その標的の発現を約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又はそれより大きく阻害し得る。核酸化合物の効果を試験するための濃度としては、1、5、10マイクロモル濃度、又はそれを上回る濃度が挙げられる。
他の実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRII受容体のインヒビターは、抗体である。そのような抗体としては、アクチビン(特に、βA又はβBとも呼ばれる、アクチビンA又はBサブユニット)に結合し、ActRII受容体結合を破壊する抗体;及びActRII受容体ポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIA又は可溶性ActRIIBポリペプチド)に結合し、アクチビン結合を破壊する抗体が挙げられる。
ActRII受容体ポリペプチド又はアクチビンポリペプチドに由来する免疫原を使用することにより、抗タンパク質/抗ペプチド抗血清又はモノクローナル抗体を標準的なプロトコルによって作製することができる(例えば、抗体:実験マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)、Harlow及びLane編(Cold Spring Harbor Press: 1988)を参照されたい)。哺乳動物、例えば、マウス、ハムスター、又はウサギを、ActRII受容体ポリペプチドの免疫原性形態、抗体応答を誘発することができる抗原性断片、又は融合タンパク質で免疫することができる。タンパク質又はペプチドに免疫原性を付与する技術には、担体へのコンジュゲーション又は当技術分野で周知の他の技術が含まれる。ActRII受容体又はアクチビンポリペプチドの免疫原性部分は、アジュバントの存在下で投与することができる。免疫の進捗は、血漿又は血清中の抗体力価の検出によりモニタリングすることができる。標準的なELISA又は他の免疫アッセイを抗原としての免疫原とともに用いて、抗体のレベルを評価することができる。
動物をActRII受容体ポリペプチドの抗原性調製物で免疫した後、抗血清を得ることができ、望ましい場合、ポリクローナル抗体を血清から単離することができる。モノクローナル抗体を産生するために、抗体産生細胞(リンパ球)を免疫動物から回収し、標準的な体細胞融合法によって骨髄腫細胞などの不死化細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を得ることができる。そのような技術は当技術分野で周知であり、例えば、ハイブリドーマ技術(Kohler及びMilstein(1975) Nature, 256: 495-497により最初に開発されたもの)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbarらの文献(1983) Immunology Today, 4: 72)、及びヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Coleらの文献(1985) モノクローナル抗体及び癌療法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)、Alan R. Liss, Inc. pp. 77-96)を含む。ハイブリドーマ細胞を、ActRII受容体ポリペプチドと特異的に反応する抗体の産生について免疫化学的にスクリーニングし、モノクローナル抗体を、そのようなハイブリドーマ細胞を含む培養物から単離することができる。
本明細書で使用される「抗体」という用語は、その断片を含むことが意図され、該断片もまた、対象ポリペプチドと特異的に反応する。抗体を従来の技術を用いて断片化し、該断片を、全抗体について上で記載されているのと同じ方法で、有用性についてスクリーニングすることができる。例えば、F(ab)2断片は、抗体をペプシンで処理することにより作製することができる。得られたF(ab)2断片を処理して、ジスルフィド架橋を還元し、Fab断片を産生することができる。抗体は、抗体の少なくとも1つのCDR領域によって付与されるActRII受容体又はアクチビンポリペプチドに対する親和性を有する二重特異性、単鎖、キメラ、ヒト化、及び完全ヒト分子を含むことがさらに意図される。抗体は、それに付着し、検出されることができる標識をさらに含むことができる(例えば、該標識は、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、又は酵素補因子であることができる)。
ある実施態様において、抗体は組換え抗体であり、この用語は、一部は分子生物学の技術によって作製される任意の抗体を包含し、これには、CDR移植又はキメラ抗体、ライブラリー選択抗体ドメインから組み立てられたヒト抗体又は他の抗体、単鎖抗体、並びに単ドメイン抗体(例えば、ヒトVHタンパク質又はラクダ科VHHタンパク質)が含まれる。ある実施態様において、抗体はモノクローナル抗体であることができ、及びある実施態様において。例えば、ActRII受容体ポリペプチド又はアクチビンポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を作製する方法は、検出可能な免疫応答を刺激するのに有効な量の抗原ポリペプチドを含む免疫原性組成物をマウスに投与し、該マウスから抗体産生細胞(例えば、脾臓由来の細胞)を取得し、該抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させて、抗体産生ハイブリドーマを取得し、該抗体産生ハイブリドーマを試験して、該抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定することを含み得る。ひとたび取得されれば、ハイブリドーマを、細胞培養物中で、及び任意に、ハイブリドーマ由来細胞が抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する培養条件で増殖させることができる。モノクローナル抗体は、該細胞培養物から精製してもよい。
抗体に関して使用される「と特異的に反応する」という形容詞は、当技術分野で一般に理解されているように、抗体が特定のタイプの生物学的試料中の関心対象の抗原の存在を最小限検出するのに有用であるほど、抗体が関心対象の抗原(例えば、ActRII受容体ポリペプチド)と関心対象ではない他の抗原との間で十分に選択的であることを意味することが意図される。治療への応用などの、抗体を利用する特定の方法において、より高度の結合特異性が望ましい場合がある。モノクローナル抗体は、通常、所望の抗原と交差反応性ポリペプチドとを効果的に識別する傾向が(ポリクローナル抗体と比較して)より高い。抗体:抗原相互作用の特異性に影響を及ぼす1つの特徴は、抗原に対する抗体の親和性である。所望の特異性は様々な異なる親和性を伴って達成され得るが、通常、好ましい抗体は、約10-6、10-7、10-8、10-9、又はそれ未満の親和性(解離定数)を有する。アクチビンとActRII受容体の異常に強力な結合を考慮すると、中和抗アクチビン又は抗ActRII受容体抗体は、通常、10-10以下の解離定数を有すると考えられる。
さらに、望ましい抗体を同定するために抗体をスクリーニングするために使用される技術は、得られる抗体の特性に影響を及ぼし得る。例えば、抗体を溶液中の抗原に結合させるのに使用する場合、溶液結合を試験することが望ましい場合がある。抗体と抗原の相互作用を試験して、特に望ましい抗体を同定するために、種々の異なる技術が利用可能である。そのような技術としては、ELISA、表面プラズモン共鳴結合アッセイ(例えば、Biacore(商標)結合アッセイ、Biacore AB, Uppsala, Sweden)、サンドイッチアッセイ(例えば、IGEN International社, Gaithersburg, Md.の常磁性ビーズシステム)、ウェスタンブロット、免疫沈降アッセイ、及び免疫組織化学が挙げられる。
ある実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRII受容体インヒビターには、別の形態のアクチビン、特に、I型受容体結合ドメイン中に改変を有し、II型受容体に結合することができ、かつ活性のある三重複合体を形成しないものが含まれる。ある実施態様において、アクチビンA、B、C、もしくはE、又は特に、ActRII受容体発現を阻害する核酸、例えば、アンチセンス分子、siRNA、又はリボザイムを、本明細書に記載の組成物及び方法で使用することができる。ある実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRII受容体インヒビターは、特に、GDF8及びアクチビンに関して、TGF-βファミリーの他のメンバーと比べて、GDF11媒介性シグナル伝達の阻害に選択性を示す。
他の実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRII受容体のインヒビターは、ActRII受容体アンタゴニスト活性を有する非抗体タンパク質であり、これには、インヒビン(すなわち、インヒビンαサブユニット)、フォリスタチン(例えば、フォリスタチン-288及びフォリスタチン-315)、ケルベロス(Cerberus)、フォリスタチン関連タンパク質(「FSRP」)、エンドグリン、アクチビンC、α(2)-マクログロブリン、並びにM108A(位置108におけるメチオニンからアラニンへの変化)突然変異体アクチビンAが含まれる。
具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRII受容体インヒビターは、アクチビン生物活性に拮抗し、及び/又はアクチビンに結合するフォリスタチンポリペプチドである。「フォリスタチンポリペプチド」という用語には、フォリスタチンの任意の天然のポリペプチド並びに有用な活性を保持するその任意の変異体(突然変異体、断片、融合体、及びペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドが含まれ、フォリスタチンの任意の機能的単量体又は多量体がさらに含まれる。アクチビン結合特性を保持するフォリスタチンポリペプチドの変異体は、フォリスタチンとアクチビンの相互作用に関する以前の研究に基づいて同定することができる。例えば、引用により完全に本明細書中に含まれるWO2008/030367号には、アクチビン結合に重要であることが示されている具体的なフォリスタチンドメイン(「FSD」)が開示されている。フォリスタチンポリペプチドには、フォリスタチンポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一な、及び任意に、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれを上回って同一な配列を有する任意の公知のフォリスタチンの配列に由来するポリペプチドが含まれる。フォリスタチンポリペプチドの例としては、成熟フォリスタチンポリペプチドもしくはより短いアイソフォーム、又は例えば、引用により完全に本明細書中に含まれるWO2005/025601号に記載されているヒトフォリスタチン前駆ポリペプチドの他の変異体が挙げられる。
具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるActRII受容体インヒビターは、アクチビン生物活性に拮抗し、及び/又はアクチビンに結合するフォリスタチン様関連遺伝子(FLRG)である。「FLRGポリペプチド」という用語には、FLRGの任意の天然のポリペプチド並びに有用な活性を保持するその任意の変異体(突然変異体、断片、融合体、及びペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドが含まれる。アクチビン結合特性を保持するFLRGポリペプチドの変異体は、FLRGとアクチビンの相互作用をアッセイするルーチンの方法を用いて同定することができる。例えば、引用により完全に本明細書中に含まれる米国特許第6,537,966号を参照されたい。FLRGポリペプチドには、FLRGポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一な、及び任意に、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれを上回って同一な配列を有する任意の公知のFLRGの配列に由来するポリペプチドが含まれる。
ある実施態様において、フォリスタチンポリペプチド及びFLRGポリペプチドの機能的変異体又は修飾形態には、フォリスタチンポリペプチド又はFLRGポリペプチドの少なくとも一部と、例えば、ポリペプチドの単離、検出、安定化、又は多量体化を容易にするドメインなどの1以上の融合ドメインとを有する融合タンパク質が含まれる。好適な融合ドメインは、ActRIIA及びActRIIBポリペプチドに関して上で詳細に論じられている。一実施態様において、ActRII受容体インヒビターは、Fcドメインに融合したフォリスタトン(follistaton)ポリペプチドのアクチビン結合部分を含む融合タンパク質である。別の実施態様において、ActRII受容体インヒビターは、Fcドメインに融合したFLRGポリペプチドのアクチビン結合部分を含む融合タンパク質である。
(5.6 アッセイ)
様々なActRIIポリペプチド変異体、又は可溶性ActRIIポリペプチド変異体を、ActRIIを阻害するその能力について試験することができる。さらに、化合物を、ActRIIを阻害するその能力について試験することができる。ひとたびActRII活性のインヒビターが確認されれば、これらの化合物を本明細書に提供される方法とともに使用することができる。ActRIIは、ActRIIa又はActRIIbであることができる。下記のアッセイは、ActRIIaについて記載されているが、ActRIIbについても同様に実施することができる。
(5.6.1 赤血球レベル)
RBC数は、血液の容積当たりの赤血球の実数のカウントであり、標準的な全血算値の一部として含まれ得る。通常、男性は、1マイクロリットル当たり4,700,000〜6,100,000細胞のRBC数を有し、女性は、1マイクロリットル当たり4,200,000〜5,400,000細胞のRBC数を有する。しかしながら、サラセミア患者は、通常見られるRBC数よりも少ないRBC数を有し得る。したがって、本明細書に提供される方法に従って治療されている貧血(例えば、サラセミア)患者のRBC数の決定により、そのような治療の効力の決定が可能になる。
(5.6.2 赤血球コロニー形成単位(CFU-E))
CFU-eを、例えば、コロニー形成アッセイで、細胞の数及び形態によって、及び特定の細胞表面マーカーの有無によってアッセイし、同定することができる。赤血球コロニー形成単位のレベルを、例えば、抗体染色、次いで、フローサイトメトリー解析(FACs)を用いて測定して、マーカー、例えば、分化状態マーカー、例えば、Epo受容体、c-Kit(幹細胞因子受容体)、トランスフェリン受容体(CD71+)、CD36、及びTer119(グリコフォリン-A関連抗原)(CFU-e細胞はTer119(グリコフォリン-A関連抗原)陰性である)の発現を評価することができる(例えば、Terszowskyらの文献、2005を参照されたい)。CFU-e段階の細胞は、エリスロポエチン受容体(EpoR)を発現しており、培養培地中のエリスロポエチンのみの存在下、インビトロで、2〜3日で最終分化するように誘導することができる。CFU-e細胞をメチルセルロース上にプレーティングし、ジアミノベンジジン試薬でヘモグロビンについて染色することができ、その後、CFU-eコロニーをカウントすることができる。プレーティングの時点から2日目までに、各々のCFU-eコロニーは、その大部分が赤血球分化の最終段階にある8〜64個のヘモグロビン発現(hemoglobinized)細胞を生じさせることができる。
コロニー形成単位アッセイは、当技術分野で公知である(例えば、MesenCult(商標)培地、Stem Cell Technologies社, Vancouver British Columbia; Wuらの文献(Wu H、Liu X、Jaenisch R、Lodish HFの文献(1995)。「運命が決定された(committed)赤血球BFU-E及びCFU-E始原細胞の生成は、エリスロポエチンもエリスロポエチン受容体も必要としない(Generation of committed erythroid BFU-E and CFU-E progenitors does not require erythropoietin or the erythropoietin receptor」、Cell 83(1): 59-67; Marley SB, Lewis JL, Goldman JM, Gordon MY(1996)も参照されたい)。
(5.6.3 赤血球バースト形成単位(BFU-E))
CFU-eと同様に、BFU-eを、例えば、コロニー形成アッセイで、細胞の数及び形態によって、及び特定の細胞表面マーカーの有無によってアッセイし、同定することができる。具体的には、BFU-eを、いくつかの細胞表面マーカー、例えば、CD33、CD34、及びHLA-DRの発現、並びにグリコフォリン-Aの発現の欠如によって同定することができる。例えば、Wuらの文献に記載されているBFU-eアッセイを利用することができる(Wu H、Liu X、Jaenisch R、Lodish HFの文献(1995)。「運命が決定された赤血球BFU-E及びCFU-E始原細胞の生成は、エリスロポエチンもエリスロポエチン受容体も必要としない(Generation of committed erythroid BFU-E and CFU-E progenitors does not require erythropoietin or the erythropoietin receptor」、Cell 83(1): 59-67)。
(5.6.4 ヘマトクリット)
ヘマトクリットは、所与の容積の全血中の赤血球の割合を測定するものであり、標準的な全血算値の一部として含まれ得る。ヘマトクリットは、通常、男性では約45%、女性では約40%である。しかしながら、サラセミア患者は、一般に、通常見られるよりも低いヘマトクリットを有する。したがって、本明細書に提供される方法に従って治療されているサラセミア患者のヘマトクリットの決定により、そのような治療の効力の決定が可能になる。
(5.6.5 尿N-テロペプチド(uNTX))
1型コラーゲンの尿N-テロペプチド(NTx)は、例えば、自動免疫アッセイ(Vitros ECi; Ortho Clinical., Rochester, NT, USA)を用いて測定することができる。
(5.6.6 血清骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP))
血清骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)レベルは、例えば、酵素免疫アッセイを用いて測定することができる。
(5.6.7 赤血球始原細胞のアポトーシス)
赤血球始原細胞のアポトーシスは、例えば、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介dUTPニック末端標識(TUNEL)染色を用いることにより決定することができる。TUNEL染色は、インサイチュアポトーシス検出キット(Takara Bio, Otsu, Japan)を用いて実施することができる。
(5.6.8 赤血球共培養系)
インビボ環境により類似したインビトロ環境での赤血球分化に対する薬剤の効果を試験するために、骨髄細胞とヒトCD36+細胞の共培養系を使用することができる。赤血球始原細胞が高度に濃縮されているヒトCD36+細胞をエリスロポエチン(EPO)補充培地(2U/mL)中で長期骨髄培養物とともに共培養する。6日後、該培養物の細胞出力(例えば、細胞型)を、例えば、フローサイトメトリー(例えば、FACS)解析により評価することができる。様々な赤血球分化レベルの赤血球細胞(例えば、前赤芽球、好塩基球、後期好塩基性/多染性、正染性/網状赤血球、糖タンパク質A+細胞)の数は、試験されている薬剤が赤血球分化を調節する能力を示す。
(5.6.9 転写応答アッセイ)
ある実施態様において、転写応答アッセイを用いて、アクチビンII型受容体インヒビター又はGDF11の活性を試験することができる。ActRII及びGDF11シグナル伝達時には、特定の遺伝子の転写が上方調節又は下方調節される。使用される細胞培養系と転写応答とを(例えば、RT-PCTにより)測定することができる。転写応答に対する薬剤の効果は、その有効性又は活性の尺度である。ある実施態様において、ActRII又はGDF11シグナル伝達に応答することが知られているプロモーター領域をレポーター遺伝子の上流にクローニングすることができる。このように、アッセイを、レポーター遺伝子の活性しかアッセイする必要がないように簡略化することができる。
(5.7 アクチビン受容体II型インヒビターの用量)
ある実施態様において、ActRIIインヒビターは、第5.5.1節に示されるActRIIaのインヒビターである。他の実施態様において、ActRIIインヒビターは、第5.5.2節に示されるActRIIbのインヒビターである。ある実施態様において、ActRIIインヒビターは、ActRIIaインヒビターとActRIIbインヒビターの組合せである。
ある実施態様において、治療有効量のActRIIインヒビターは、貧血の1つの症状を改善するのに十分である。ある実施態様において、治療有効量のActRIIインヒビターは、貧血の少なくとも1つ症状が悪化するのを防ぐのに十分である。ある実施態様において、治療有効量のActRIIインヒビターは、患者の赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、ヘマトクリットレベル、及び/又はEry-Cを増加させる。
ある実施態様において、ActRIIインヒビターは、0.2マイクログラム/kg以上の血清濃度を達成するのに十分な間隔及び量で投与され、1マイクログラム/kg又は2マイクログラム/kg又はそれを上回る血清レベルは、骨の密度及び強度に対する顕著な効果を達成するのに望ましい。投与レジメンは、0.2〜15マイクログラム/kg、任意に、1〜5マイクログラム/kgの血清濃度に達するように設計することができる。ヒトにおいて、0.2マイクログラム/kgの血清レベルは、0.1mg/kg以上の単一用量で達成することができ、1マイクログラム/kgの血清レベルは、0.3mg/kg以上の単一用量で達成することができる。分子の観察される血清半減期は、ほとんどのFc融合タンパク質よりも大幅に長い約20〜30日であり、したがって、持続される有効血清レベルを、例えば、0.2〜0.4mg/kgを週1回もしくは週2回の頻度で投与することにより達成することができるか、又はより高い用量をより長い投与間隔で使用することができる。例えば、1〜3mg/kgの用量を月1回又は月2回の頻度で使用することができ、骨に対する効果は十分に永続的であり得るので、投与は、3、4、5、6、9、12カ月、又はそれよりも長い期間に1回しか必要でない。ActRIIインヒビターの血清レベルは、当業者に公知の任意の手段により測定することができる。例えば、ActRIIインヒビターに対する抗体を用いて、例えば、ELISAを用いて、ActRIIインヒビターの血清レベルを決定することができる。
ある実施態様において、ActRIIインヒビターの用量は、静脈内では0.01〜3.0mg/kg又は皮下では0.03〜0.1mg/kgの範囲である。ある実施態様において、ActRIIインヒビターの用量は、約0.01mg/kg、約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約1.0mg/kg、約1.5mg/kg、約2.0mg/kg、約2.5mg/kg、約3.0mg/kg、約3.5mg/kg、約4.0mg/kg、約4.5mg/kg、又は約5.0mg/kgである。ある実施態様において、ActRIIインヒビターの用量は、約10.0mg/kg、約15.0mg/kg、約20.0mg/kg、約25.0mg/kg、又は約30.0mg/kgである。ある実施態様において、ActRIIインヒビターの用量は、0.01mg/kg〜0.1mg/kg、0.1mg/kg〜0.3mg/kg、0.3mg/kg〜0.5mg/kg、0.5mg/kg〜1.0mg/kg、1.0mg/kg〜2.0mg/kg、1.0mg/kg〜3.0mg/kg、2.0mg/kg〜3.0mg/kg、2.0mg/kg〜4.0mg/kg、3.0mg/kg〜5.0mg/kg、5.0mg/kg〜10.0mg/kg、10.0mg/kg〜15.0mg/kg、10.0mg/kg〜20.0mg/kg、15.0mg/kg〜20.0mg/kg、又は20.0mg/kg〜30.0mg/kgである。本明細書に提供される用量と併せて使用される場合(例えば、ある用量のActRIIインヒビター又はある用量の第二の治療剤)、「約」という語は、言及された数字の1、5、又は10%以内の任意の数を指す。
(5.8 医薬組成物)
ある実施態様において、アクチビン-ActRIIアンタゴニスト(例えば、ActRIIポリペプチド)は、本明細書に記載の方法とともに使用される医薬として許容し得る担体とともに製剤化される。例えば、ActRIIポリペプチドは、単独で又は医薬製剤(治療的組成物)の成分として投与することができる。対象化合物は、ヒト又は動物用医薬品で使用される任意の好都合な方法での投与のために製剤化することができる。ActRIIは、ActRIIa又はActRIIbであることができる。
ある実施態様において、本明細書に提供される治療法は、組成物(ActRIIインヒビターを含む)を全身に又はインプラントもしくは装置として局所に投与することを含む。投与されるとき、本明細書に提供される用途のための治療的組成物は、パイロジェンフリーの生理的に許容される形態にある。上記の組成物中に任意に含めることもできるActRIIアンタゴニスト以外の治療的に有用な薬剤は、対象化合物(例えば、ActRIIポリペプチド、例えば、ActRIIa及び/又はActRIIbポリペプチド(第5.2節参照))と同時に又は連続的に投与することができる。
通常、ActRIIアンタゴニストは非経口投与される。非経口投与に好適な医薬組成物は、1以上のActRIIポリペプチドを、1以上の医薬として許容し得る滅菌等張性水性もしくは非水性溶液、分散液、懸濁液、もしくはエマルジョン、又は使用直前に滅菌注射溶液もしくは分散液へと再構成され得る滅菌粉末と組み合わせて含むことができ、これらは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質、又は懸濁化剤もしくは増粘剤を含有することができる。本明細書に記載の方法で使用される医薬組成物中で利用され得る好適な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの好適な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、並びに注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合、必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。
さらに、該組成物は、標的組織部位(例えば、骨)に送達するための形態で封入又は注射することができる。ある実施態様において、本明細書に記載の方法で使用される組成物は、1以上の治療的化合物(例えば、ActRIIaポリペプチド)を標的組織部位(例えば、骨)に送達し、成長する組織に構造を提供し、最適には体内に再吸収されることができるマトリックスを含むことができる。例えば、該マトリックスは、ActRIIaポリペプチドの低速放出を提供することができる。そのようなマトリックスは、他のインプラント型医療用途に現在使用されている材料から形成されてもよい。
マトリックス材料の選択は、生体適合性、生体分解性、機械的特性、美容上の外観、及び界面特性に基づく。対象組成物の特定の用途により、適切な製剤が規定される。該組成物用の潜在的マトリックスは、生体分解性でかつ化学的に規定されている硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ポリ乳酸、及びポリ無水物であってもよい。他の潜在的材料は、骨又は皮膚コラーゲンなどの生体分解性でかつ生物学的に十分に規定されているものである。さらなるマトリックスは、純粋なタンパク質又は細胞外マトリックス成分から構成される。他の潜在的マトリックスは、焼成ハイドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸塩、又は他のセラミックスなどの、非生体分解性でかつ化学的に規定されているものである。マトリックスは、上述のタイプの材料のいずれかの組合せ、例えば、ポリ乳酸とハイドロキシアパタイト又はコラーゲンとリン酸三カルシウムから構成されていてもよい。バイオセラミックスは、例えば、カルシウム-アルミネート-ホスフェート中の組成を変化させ、並びに加工して、孔径、粒径、粒子形状、及び生体分解性を変化させることができる。
ある実施態様において、本明細書に記載の方法で使用される組成物(ActRIIインヒビターを含む)は、各々所定の量の薬剤を活性成分として含む、例えば、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(フレーバー付きの主成分、通常、スクロース及びアラビアゴムもしくはトラガカントを使用)、散剤、顆粒剤の形態で、又は水性もしくは非水性液中の液剤もしくは懸濁剤として、又は水中油型もしくは油中水型液体エマルジョンとして、又はエリキシル剤もしくはシロップ剤として、又はトローチ剤(不活性基剤、例えば、ゼラチン及びグリセリン、もしくはスクロース及びアラビアゴムを使用)として、並びに/或いは洗口液などとして、経口投与することができる。薬剤は、大丸剤(bolus)、舐剤、又はペースト剤として投与することもできる。
経口投与用の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)中で、本明細書に記載の1以上の治療的化合物を、1以上の医薬として許容し得る担体、例えば、クエン酸ナトリウムもしくは第二リン酸カルシウム、並びに/又は以下のもの:(1)充填剤もしくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/もしくはケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及び/もしくはアラビアゴムなど;(3)保湿剤、例えば、グリセロール;(4)崩壊剤、例えば、寒天-寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えば、パラフィン;(6)吸収促進剤、例えば、四級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなど;(8)吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイト粘土;(9)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物;並びに(10)着色剤のうちのいずれかと混合することができる。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、医薬組成物は、緩衝化剤を含むこともできる。同様のタイプの固体組成物を、ラクトース又は乳糖、及び高分子量ポリエチレングリコールなどような賦形剤を用いる軟及び硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として利用することもできる。
経口投与用の液体剤形としては、医薬として許容し得るエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、及びエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、該液体剤形は、当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚種油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、並びにソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物を含むことができる。不活性希釈剤の他に、経口組成物は、補助剤、例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤、及び防腐剤を含むこともできる。
懸濁剤は、活性化合物に加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天-寒天、及びトラガカント、並びにこれらの混合物を含むことができる。
本明細書に記載の組成物は、補助剤、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤を含むこともできる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることにより確保することができる。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを該組成物中に含めることが望ましい場合もある。さらに、注射用医薬形態の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによりもたらすことができる。
投薬レジメンは、本明細書に記載の化合物(例えば、ActRIIポリペプチド、例えば、ActRIIa及び/又はActRIIbポリペプチド(第5.2節参照))の作用を修飾する様々な因子を考慮して、担当医により決定されるということが理解される。様々な因子としては、形成されることが望まれる骨重量の量、骨密度低下の程度、骨損傷の部位、損傷した骨の状態、患者の年齢、性別、及び食習慣、骨量減少に寄与し得る任意の疾患の重症度、投与の時間、並びに他の臨床的因子が挙げられるが、これらに限定されない。任意に、投薬量は、再構成で使用されるマトリックスのタイプ及び組成物中の化合物のタイプによって異なり得る。最終組成物への他の既知の成長因子の添加も、投薬量に影響を及ぼし得る。進捗は、例えば、X線(DEXAを含む)、組織形態計測的測定、及びテトラサイクリン標識による骨成長及び/又は修復の定期的評価によってモニタリングすることができる。
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、ActRIIポリペプチドのインビボ産生のための遺伝子療法である。そのような療法は、上記の障害を有する細胞又は組織へのActRIIポリヌクレオチド配列の導入によって、その治療効果を達成する。ActRIIポリヌクレオチド配列の送達は、キメラウイルスなどの組換え発現ベクター、又はコロイド分散系を用いて達成することができる。ActRIIポリヌクレオチド配列の治療的送達に好ましいのは、標的化リポソームの使用である。ActRIIポリペプチドは、ActRIIa及び/又はActRIIbポリペプチド(第5.2節参照))であることができる。
本明細書に教示される遺伝子療法に利用することができる様々なウイルスベクターとしては、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、又は好ましくは、レトロウイルスなどのRNAウイルスが挙げられる。好ましくは、レトロウイルスベクターは、マウス又はトリレトロウイルスの派生物である。単一の異種遺伝子を挿入することができるレトロウイルスベクターの例としては:モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかのさらなるレトロウイルスベクターは、複数の遺伝子を組み込むことができる。これらのベクターは全て、遺伝子導入された細胞を同定及び作製することができるように、選択可能マーカーの遺伝子を転移し又は組み込むことができる。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質、又はタンパク質を付着させることによって標的特異的にすることができる。好ましい標的化は、抗体を用いて達成される。当業者は、特異的ポリヌクレオチド配列をレトロウイルスゲノムに挿入するか、又はウイルスエンベロープに付着させて、ActRIIポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能にすることができることを認識しているであろう。好ましい実施態様において、該ベクターは、骨又は軟骨に標的化される。
或いは、組織培養細胞を、従来のリン酸カルシウムトランスフェクションによって、レトロウイルス構造遺伝子gag、pol、及びenvをコードするプラスミドで直接トランスフェクトすることができる。その後、これらの細胞を、関心対象の遺伝子を含むベクタープラスミドでトランスフェクトする。得られた細胞は、レトロウイルスベクターを培養培地中に放出する。
ActRIIポリヌクレオチドの別の標的化送達系は、コロイド分散系である。コロイド分散系としては、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、並びに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系が挙げられる。本明細書に記載の方法で使用される好ましいコロイド系は、リポソームである。リポソームは、インビトロ及びインビボでの送達ビヒクルとして有用である人工膜小胞である。RNA、DNA、及び無傷のビリオンを水性内部に封入し、生物活性形態で細胞に送達することができる(例えば、Fraley,らの文献、Trends Biochem. Sci., 6:77, 1981を参照されたい)。リポソームビヒクルを用いる効率的な遺伝子導入法は当技術分野で公知であり、例えば、Manninoらの文献、Biotechniques, 6:682, 1988を参照されたい。リポソームの組成物は、通常、リン脂質の組合せであり、これは、通常、ステロイド、特にコレステロールと組み合わされている。他のリン脂質又は他の脂質を使用することもできる。リポソームの物理学的特徴は、pH、イオン強度、及び二価カチオンの存在によって決まる。
リポソーム産生において有用な脂質の例としては、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、及びガングリオシドが挙げられる。例示的なリン脂質としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及びジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。リポソームの標的化も、例えば、臓器特異性、細胞特異性、及びオルガネラ特異性に基づいて可能であり、当技術分野で公知である。
ある実施態様において、ActRIIインヒビターは、医薬組成物中で実質的に純粋である。具体的には、医薬組成物中の化合物の高々20%、10%、5%、2.5%、1%、0.1%、又は高々0.05%が、ActRIIインヒビター及び医薬として許容し得る担体以外の化合物である。
(6.実施例)
本明細書に提示される実施例は、GDF11タンパク質レベルがサラセミアで上昇していること、及びGDF11の阻害がβ-サラセミアのマウスモデルで貧血を治療することができることを示す。したがって、本明細書に提示される実施例は、GDF11をサラセミアのバイオマーカーとして使用することができること、及び貧血、例えば、サラセミアの治療法が評価することができることを示す。
(6.1 ActRIIAデコイはβ-サラセミアを治療する)
β-サラセミアは、無効造血、赤血球分化の促進、及びアポトーシスと関連し、貧血及び鉄過剰症を引き起こす。無効造血の効果の根底にある分子メカニズムは完全には理解されていない。TGF-βスーパーファミリーのメンバーは赤血球始原細胞の増殖と分化の両方に関係があるとされているが、β-サラセミアで見られる無効造血における多くのTGF-βファミリーメンバーの役割は不明である。
β-サラセミアの無効造血におけるTGF-βファミリーメンバーの役割を評価するために、いくつかのTGF-βスーパーファミリーリガンドに結合する組換え融合タンパク質をヒトβ-サラセミアのマウスモデルで用いた。ActRIIA-Fc融合タンパク質(すなわち、配列番号7のマウス対応物)は、アクチビン受容体IIA(ActRIIA)の細胞外ドメインがヒト免疫グロブリン1(IgG1)Fcドメインに結合したものからなり、該タンパク質は、アクチビンA、アクチビンB、成長分化因子-11(GDF11)、及び骨形態形成タンパク質-10(BMP-10)のようなTGF-βファミリーメンバーのリガンドトラップとして作用する。Hbbth1/th1は、ヒトβ-サラセミアのマウスモデルであり、このマウスは、β-主要遺伝子の天然の欠失を有する(Skowらの文献、1983)。Hbbth1/th1マウスは、異常に低いヘモグロビン(Hgb)、ヘマトクリット(Hct)、及び平均細胞容積(MCV)、並びに骨髄(BM)過形成及び異常に高いレベルのビリルビンを有する。ビリルビンは、広範な赤血球破壊を表すヘモグロビン破壊の副産物である。
(6.2 材料及び方法)
(6.2.1 マウス)
C57BL/6を交配し、INSERM U699のパイロジェンフリーの施設で飼育した。プロトコルは全て、INSERMの動物管理委員会により承認された。Hbbth1/th1モデルは、β-主要遺伝子の天然の欠失から生じた(Skow LCらの文献; Cell 1983)。Hbbth1/th1マウスは、中間型β-サラセミアのモデルに相当する。これらのマウスは、無効な骨髄赤血球産生、前駆細胞アポトーシス、実質内鉄分布、ヘプシジン発現の減少、及び低い骨髄鉄レベルの一方で、肝臓及び脾臓でのレベルが増加していることなどの、ヒトβ-サラセミアを再現するいくつかの臨床パラメーターを有する。
(6.2.2 全血算値)
血液試料をEDTAコートチューブに回収し、全血算値をMS9-5 Blood Analyzer(Melet Schloesing Laboratories)で製造業者の指示に従って測定した。選択されたパラメーターは、赤血球(RBC)、ヘマトクリット(Ht)、平均赤血球容積(MCV)、ヘモグロビン(Hb)であった。網状赤血球数は、網状赤血球計数試薬(BD Biosciences Retic-Count(商標)キット)で決定した。
(6.2.3定量的リアルタイムRT-PCR)
RNAを、RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen)を用いて、赤血球始原細胞から抽出した。1マイクログラムの全RNAを、iScript reverse transcription Supermix(Bio-rad)を用いる逆転写に42℃で30分間使用した。その後、酵素を85℃で5分間不活化させた。qPCRのために、cDNA試料をCFX96 PCR System(Bio-rad)で増幅させた。PCR産物を、SsoFast EvaGreen Supermix(Bio-rad)を用いて定量した。
(6.2.4 インビトロ赤芽球培養)
各組織由来の細胞を、2U/mLヒト組換えEpo(Roche)、100ng/mL SCF(PeproTech)、10-6Mデキサメタゾン(D2915; Sigma)、40、及びペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep; Invitrogen)を補充したStemPro34+栄養補給剤(Life Technologies Gibco-BRL)のどちらかからなる無血清「赤血球増殖培地」に再懸濁させた。培養から5日後、非接着細胞を、10μg/mlのmActRIIA-Fcを補充した又は補充していない分化培地(1U/ml Epo及び1mg/ml鉄-トランスフェリン(Sigma)を補充したStemPro-34)に2〜3日間移した。生細胞数及び死細胞数をTrypan Blue(Gibco/BRL)排出によって毎日決定し、細胞濃度を部分的な培地交換によって2×106全細胞/mLに毎日調整した。
(6.2.5 メチルセルロースアッセイ)
成獣マウスBM又は脾臓の単一細胞懸濁液をmethocult M3434培地(Stem Cell Technologies)と混合し、35mmディッシュにプレーティングし、5%CO2加湿雰囲気下、37℃で培養した。BFU-Eコロニーを10日目にスコアリングした(いくつかの実験では、マウスBFU-Eを7日目以降10日目までスコアリングし、7日目と10日目のコロニー数に差がなかった)。
(6.2.6 統計解析)
統計解析は、GraphPad Prism(バージョン5.0; GraphPad Software)を用いて実施した。別途注記されない限り、データは、N回の測定の平均±SEMとして表されている。スチューデントt-検定又はマン-ホイットニー検定を用いて、2群を比較したのに対し、多群比較は、二元ANOVA検定、次いで、事後解析(ボンフェローニ検定)を用いて行った。差は、0.05未満(*)、0.01未満(**)、又は0.001未満(***)のP値で有意とみなした。
(6.2.7 フローサイトメトリーによる免疫蛍光解析)
マウス由来の骨髄(BM)及び脾細胞懸濁液について、抗FcγR mAb 2.4G2を用いてIgG受容体のブロッキングを行った。その後、細胞(1×106)を抗TER-119抗体及び抗マウスTfR1抗体で染色した。染色された細胞を、FlowJoソフトウェア(Tree Star)を用いるフローサイトメトリー(FACScalibur; Becton Dickinson)によりさらに解析した。
(6.2.8 組織回収及び組織検査)
骨髄及び脾臓を回収し、10%ホルマリン中で固定し、パラフィン包埋し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色用に3〜6μmで薄切した。
(6.2.9 鉄、フェリチン、ビリルビン、及びトランスフェリン定量)
血液をヘパリン添加チューブに採取し、遠心分離した(5分、4℃、1,100g)。血漿を新たに遠心分離して(5分、4℃、1,100g)、混入している赤血球を除去した。生化学的パラメーターを、製造業者の指示に従って、Olympus AU400 automatで定量した。
(6.3 結果)
(6.3.1 mActRIIA-Fcはサラセミアマウスにおける血液学的パラメーターを改善する)
β-サラセミアは、赤血球成熟及び産生の障害をもたらすヘモグロビン合成の欠陥を特徴とする疾患である。赤血球の減少は、主として、成熟赤血球産生の全体的な減少をもたらす、赤血球分化の後期好塩基性/多染性赤芽球段階での赤血球分化の異常な促進及びアポトーシスが原因であると考えられている。この疾患は、異常な赤芽球が蓄積し、アポトーシスを経て、全身性貧血を引き起こす、過形成性骨髄区画を特徴とする。
β-サラセミアの疾患機序におけるTGF-βリガンドの役割を調べるために、Hbbth1/th1マウスを、mActRIIA-Fc(配列番号7のマウス対応物)又はPBSで、0、5、10、30、又は60日間(10mg/Kg体重)、週2回、皮下処置した(各々の独立した実験について、*p<0.05、N=3〜5)。PBS処置動物と比較して、mActRIIA-Fcによる処置は、赤血球数(図1A)並びにヘマトクリット(図1B)及びヘモグロビン(図1C)レベルを有意に増加させ、同時に網状赤血球数(図1D)を(処置後10日目から60日目まで)減少させた。循環赤血球(RBC)パラメーターの解析も、平均赤血球容積(MCV)(図1E)、平均赤血球ヘモグロビン(MCH)(図1F)、及びMCH濃度(MCHC)(図1G)の全てが、mActRIIA-Fcで処置した全てのマウスで増加することを示し、mActRIIA-Fcが、サラセミアの小球性貧血を改善し、RBC当たりのヘモグロビン含有量を回復させることを示唆した。さらに、骨髄及び脾臓細胞充実度並びに後期好塩基性/多染性赤芽球は、mActRIIA-Fcによる治療の後に有意に低下した。赤血球の形態学的解析をメイ-グリュンワルド(MGG)染色で評価し、これにより、赤血球不同、変形赤血球増加、及び標的赤血球(図1I)の減少が示された。β-サラセミアと関連する貧血に対するmActRIIA-Fcの効果を明らかにするために、全身鉄レベル(図1J)、トランスフェリン合成(図1K)、トランスフェリン飽和(図1L)、及びフェリチンレベル(図1M)をサラセミアマウスで評価した。トランスフェリン飽和は、トランスフェリン合成の誘導又は全身鉄レベルの減少を伴って低下していた(図1L)。血小板、単球、リンパ球、及び好中球レベルも評価した(図1N)。
サラセミアマウスの脾腫に対するmActRIIA-Fcの効果を脾臓重量及び全脾臓細胞数測定により評価した。脾臓細胞数及び脾臓重量は、PBS処置サラセミアマウスと比較してmActRIIA-Fcで処置した動物で低下していた(図1O)。同様に、(エオシン/ヘマトキシリン染色で決定したときの)骨髄赤芽球の数及び増殖(図1P)も、mActRIIA-Fc-処置マウスで減少していた。骨髄及び脾臓を採取し、赤芽球をTER119染色によるフローサイトメトリーにより定量した。mActRIIA-Fcによる処置は、サラセミアマウスにおける赤血球の数を有意に低下させ(図1Q)、それによりマウスの無効造血が解消されたことを示している。
(6.3.2 mActRIIA-Fcはサラセミアマウスの無効造血を軽減する)
β-サラセミアの無効造血におけるTGF-βスーパーファミリーリガンドの役割をさらに調べるために、脾臓(図2A、図2C)及び骨髄(図2B、図2C)を採取し、赤芽球分化をCD71/TER119染色及び前方散乱/側方散乱(FSC/SSC)分布によるフローサイトメトリーにより評価した。前赤芽球(Pro-E)、好塩基性赤芽球(Ery-A)、後期好塩基性(Ery-B)及び多染性赤芽球、並びに正染性赤芽球(Ery-C)という赤血球分化の進行段階にある細胞のパーセントの経時的解析から、mActRIIA-Fcで処置したマウスが、脾臓における未成熟TER119/CD71細胞(後期好塩基性及び多染性赤芽球、Ery-B)の有意な減少と同時に、正染性赤芽球(Ery-C)の割合の増加を示すことが示された(図2A)。これらの結果は、mActRIIA-Fcによる無効造血の軽減と一致した。mActRIIA-Fcで処置したマウス由来の骨髄ではTER-199+赤芽球とEry-Bの数とが減少していたが(図2B)、成熟赤芽球の量は増加しておらず、サラセミアマウスの骨髄における無効造血が、mActRIIA-Fcによるマウスの処置では解消されないことを示唆している。
サラセミアの慢性貧血は、ストレス赤血球産生代償性応答を誘導する。しかしながら、これらの応答は、無効造血のために効果がない。無効造血はRBC産生の要求を特徴とする。このRBC産生は、成熟途上の細胞のアポトーシスによる早期の細胞死が原因で、未成熟赤芽球の増殖及び分化の促進によって補償することができない。それゆえ、不均衡な未成熟/成熟赤芽球比は、サラセミアの無効造血の特徴である。赤血球分化及び無効造血に対するmActRIIA-Fcの影響をさらに調べるために、mActRIIA-Fc処置マウス及びそのそれぞれの対照由来の細胞懸濁液を、TfR1及びTER119に対する抗体で標識した。赤血球前駆細胞分化を、先に記載されている通りに(Liuらの文献、 Blood 2006)、フローサイトメトリーによりTER119highゲート内で解析した。その結果、mActRIIA-Fc処置マウスは、脾臓での未成熟/成熟赤芽球比の比率の減少を示し、無効なストレス赤血球産生の解消を示した。骨髄では、未成熟/成熟赤芽球比は、対照とmActRIIA-Fc処置マウスで違いがなく、サラセミアマウスの骨髄における無効造血がmActRIIA-Fc処置により解消されなかったことをさらに示唆している。これらの結果は、ActRIIaリガンドが赤芽球分化に寄与するだけでなく、β-サラセミアにおける無効な脾臓赤血球産生にも寄与することを示唆している。
ビリルビンは、ヘモグロビン分解の産物であり、溶血によって生じる血漿ビリルビンの増加は、β-サラセミア18における無効造血の特徴である。経時的解析において、全ビリルビン及び直接ビリルビンの血清レベルは、mActRIIA-Fcで処置したサラセミアマウスで処置5日目から減少しており、無効造血によって生じる溶血がmActRIIA-Fc投与によって影響を受けたことを示唆している(図2D)。ビリルビン値と一致して、血清乳酸脱水素酵素(LDH)のレベルも、処置から60日後に、対照と比較したmActRIIA-Fcで処置した動物で低下しており(図2D)、組織溶血がmActRIIA-Fcで処置したマウスで低下していたことをさらに裏付けている。
後期赤血球産生は、2つのα-グロビンサブユニットと2つのβ-グロビンサブユニットから構成される四量体タンパク質である酸素担体ヘモグロビン(Hb)の産生の方向に大部分向けられる。β-サラセミアは、β-グロビン遺伝子産生の障害又は欠如と、それに伴う、不対α-サブユニットの蓄積を特徴とする一般的な遺伝性異常ヘモグロビン症である。成熟途上の赤血球細胞における過剰な未結合の遊離α-グロビンは沈殿し、赤血球前駆細胞の早期の死を誘導する活性酸素種(ROS)の産生及び細胞性酸化ストレス損傷をもたらす。グロビン沈殿の生成に対するmActRIIA-Fcの影響をさらに調べた。初期前赤芽球分化時のROS発生を、ジクロロジヒドロフルオレセインを用いるフローサイトメトリーにより評価した(図2E)。mActRIIA-Fc又はPBSで48時間処置した初期サラセミア前赤芽球のヘモグロビン溶解度の解析(図2F)。
mActRIIA-Fcによる処理と関連する細胞メカニズムについての知見を得るために、脾臓由来前赤芽球を培養し、mActRIIA-Fcの存在下又は非存在下でHbbth1/th1マウスから回収した。前赤芽球分化の十分に確立されたインビトロモデルを用いた(脾臓前駆細胞を、マウス幹細胞因子、Epo、及びデキサメタゾンを補充した無血清幹細胞増殖培地中で5日間培養した)。その後、これらの前赤芽球濃縮培養物を1U/ml Epo及び1mg/ml Fe-Tfの存在下で3日間分化させた。インビボでの観察と同様に、mActRIIA-Fcによる処理は、サラセミア赤芽球におけるヘモグロビンの総量を増加させた。しかしながら、これらの細胞は、対照処理細胞と比較したとき、膜に関連した沈殿ヘモグロビンの量の減少を示した(図2F)。したがって、これらの細胞で検出された活性酸素種(ROS)の量は、mActRIIA-Fcで処理した細胞で減少した(図2E)。それゆえ、mActRIIA-Fcによる処理は、無効造血に寄与する細胞傷害性グロビン沈殿及びそれに付随するROS産生の減少をもたらした。まとめると、これらのデータは、ActRIIaシグナル伝達の標的化が赤芽球分化を調節し、mActRIIA-FcによるActRIIaリガンドの捕捉が、成熟赤芽球の形成に有利に働き、かつ膜関連ヘモグロビン沈殿を低下させることによって、無効造血を解消することを示唆した。
(6.3.3 mActRIIA-Fcはサラセミアマウスにおけるアポトーシスを調節する)
赤血球上でのアポトーシス促進タンパク質の発現を、フローサイトメトリーを用いて解析することにより、β-サラセミア関連無効造血におけるアポトーシス過程へのTGF-βファミリーメンバーの関与を調べた。骨髄赤芽球におけるアポトーシスタンパク質の発現に有意な変化はなかったが(図3A)、脾臓赤芽球の解析は、Fas-LがEry-B細胞集団で増加していることを示した(図3B)。PBS及びmActRIIA-Fcで処置したマウス由来の脾臓細胞に対するマルチパラメトリックフローサイトメトリー比較解析は、Fas-L発現が、未成熟後期好塩基性及び多染性赤芽球(Ery-B)で増加し、正染性赤芽球(Ery-C)で減少していることを示した(図3B)。対照的に、Fas-L発現は、BM赤芽球では調節されなかった(図3A)。まとめると、これらの結果は、ActRIIaシグナル伝達が成熟途上の赤芽球でFas/Fas-L経路を調節することを示した。総合すると、これらのデータは、ActRIIaシグナル伝達が、無効造血の方向に向けられた成熟途上の赤芽球の早過ぎる細胞死を誘導することを示唆した。驚くことに、Fas-L発現は、Ery-A及びEry-Cサブセットの細胞で減少しており、ActRIIaシグナル伝達の影響が成熟途上の赤芽球でより顕著であったことを示している(図3B)。tunel陽性細胞の数も、mActRIIA-Fcで処置した動物で増加していた(図3C)。サラセミアの無効造血は、成熟途上の赤芽球の大規模なアポトーシスを特徴とする。アポトーシスに対するmActRIIA-Fcによる処置の影響を調べることにより、mActRIIA-Fcによるマウスの処置が、そのそれぞれの対照と比較したtunnel陽性細胞の数の減少を示すことが示され(図3C)、Smad-2,3活性化を通じたActRIIaシグナル伝達が、成熟途上の赤芽球のアポトーシスレベルを調節することにより、無効造血を制御し得ることが示唆された。
(6.3.4 アクチビン/GDF11リガンドはサラセミアマウス由来の脾臓で過剰発現している)
ActRII、アクチビンA、アクチビンB、及びGDF11のRNA(mRNA)発現レベルを、qPCRにより、野生型及びサラセミアマウス由来の脾臓で評価した。ActRII、アクチビンA、アクチビンB、及びGDF11のmRNAレベルは全て増加しており、mActRIIA-Fcが、そのリガンドの1つを通じて、その無効造血の改善において作用し得ることが示唆された(図4A)。mActRIIA-Fcで処置したサラセミアマウス由来の脾臓から得られたタンパク質のウェスタンブロット解析は、PBS処置と比較したGDF11タンパク質レベルの有意な減少を示し(図4B)、GDF11を無効造血に関与するActRIIAリガンドとしてさらに関連付けた。さらなる免疫組織化学的解析は、GDF11タンパク質レベル(及びそれよりはるかに劣る程度に、アクチビンA又はアクチビンB)がサラセミアマウス由来の脾臓生検で大きく増加しており、mActRIIA-Fcで処置した動物で抑制されていることを明らかにした(図3A)。これらの結果は、免疫ブロッティングによりさらに確認された(図4B)。脾臓切片とは対照的に、BMに関するActRIIaリガンドの解析は、サラセミアマウスにおけるGDF11の蓄積を示さなかった(図4B)。それゆえ、サラセミアマウスの脾臓切片におけるGDF11過剰発現を無効造血と関連付けることができた。
(6.3.5 mActRIIA-Fcは初期サラセミア前赤芽球で見られるGDF11発現レベルの増加を低下させる)
どのTGF-βファミリーメンバーがmActRIIA-Fcによるβ-サラセミアの治療に関係があり得るかということを決定するために、アクチビン/GDFシグナル伝達経路のタンパク質の免疫組織化学的解析を行った。サラセミアマウスをPBS又はmActRIIA-Fcで30日間処置し、脾臓を採取し、固定し、アクチビンA、アクチビンB、GDF8、GDF11、ActRII、及びp-Smad2について染色した(図5A)。免疫組織化学染色は、サラセミアマウスにおけるGDF11、ActRII、及びp-Smad2のレベルの増加を示した。アクチビン/GDFシグナル伝達経路のタンパク質が貧血の他のマウスモデルで過剰発現されているかどうかを調べるために、サラセミアマウスにおけるアクチビンA、アクチビンB、及びGDF11の発現を、酸素正常状態マウス、低酸素症マウス、及びαRBCマウスと比較した(図5B)。PBS又はmActRIIA-Fcで48時間処理し、その後、アクチビンA、アクチビンB、GDF11プロペプチド、及びGDF8/GDF11切断ペプチドに対する特異的抗体とともにインキュベートした初期サラセミア前赤芽球のFACS解析は、mActRIIA-Fc処置がGDF11発現を正常化することを示した。GDF11染色の定量は、mActRIIA-Fcによるマウスの処理がGDF11レベルを有意に低下させることを示した(図5C)。サラセミアマウスをmActRIIA-Fcで処置したときのこのGDF11発現の低下は、該マウスの脾臓の免疫組織化学的解析により確認された(図5D)。*p<0.05、N=4。したがって、mActRIIA-Fcがサラセミア組織におけるGDF11過剰発現を減少させるという事実は、mActRIIA-FcがGDF11を標的とすることによって無効造血を解消するというさらなる証拠となった。
(6.3.6 GDF11の中和は赤芽球分化を回復させる)
GDF11発現の増加が無効造血に関与するかどうかを明らかにするために、サラセミア前赤芽球をアクチビンA及びB及びGDF11に対するブロッキング抗体の存在下で培養した。(アクチビンA及びB抗体ではなく)抗GDF11抗体は、赤血球産生を促進し、これにより、CD71/TER119染色後のフローサイトメトリーにより定量したとき、GDF11が無効造血を誘導することによって赤血球産生を負に調節することがさらに確認された(図6A)。初期前赤芽球分化時のROS発生を、ジクロロジヒドロフルオレセインを用いるフローサイトメトリーにより評価した(図6B)。*p<0.05、N=4。したがって、抗GDF11ブロッキング抗体は、細胞分化を回復させ、サラセミア赤芽球におけるヘモグロビン凝集体を低下させた。
(6.3.7 ActRIIAリガンド検出アッセイ)
血液血清中に存在するActRIIAリガンド、並びに特に、無効造血と関連する疾患(例えば、サラセミア、骨髄異形成症候群、慢性悪性貧血、及び鎌状赤血球貧血)におけるその異常な発現を検出、同定、及び定量するためのアッセイを開発した。このアッセイは、ActRIIA-Fcコーティングと、それに続く、血清中に存在するActRIIAリガンドの検出に基づくサンドイッチELISAからなる。治療決定の助けとするために及び/又はTGF-βリガンドもしくは受容体レベルを調節するよう設計された治療の有効性を決定するために、ActRIIA ELISAアッセイを実験的に(例えば、動物に)又は臨床的に(例えば、ヒト患者に)用いて、血液血清中のリガンド又は受容体レベルを同定、検出、及び/又は定量することができる。
(6.3.8 GDF11レベルはサラセミア患者の血清中で上昇している)
血清中のGDF11レベルを測定するために、上記のサンドイッチELISAアッセイを開発した。ELISAプレートを5μg/mLのmActRIIA-Fcでコーティングした(図7A)。増加する用量の組換えGDF11をプレートに添加した(0.1ng/マイクロリットル、0.5ng/マイクロリットル、2.5ng/マイクロリットル)。プレートをPBS 0.1%Tweenで洗浄し、結合したタンパク質を、抗GDF8/11抗体を用いて検出し、その後、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgGを用いて検出した。GDF11は、mActRIIA-Fcでコーティングしたプレートに用量依存的な様式で結合し、これにより、GDF11レベルを検出及び定量するために、このアッセイを効果的に使用することができることが示された(図7B)。mActRIIA-Fcを用いるELISAでは、わずか100pg/mL程度の組換えGDF11が検出された。
サラセミアを有する患者由来の血清を、mActRIIA-FcによるサンドイッチELISAを用いてGDF11発現について試験した。図8に示すように、GDF11レベルは、健常対照でのレベルと比較して、サラセミアを有する患者で3倍上昇していた。
他のActRIIAリガンドのレベルもサラセミア患者で上昇しているかどうかを明らかにするために、アクチビンA及びアクチビンB発現レベルもこれらの患者の血清で測定した。アクチビンA及びアクチビンBを検出するためのELISAアッセイも開発した。ELISAプレートを5マイクログラム/mLのActRIIA-Fcでコーティングした。増加する用量の組換えアクチビンA及びアクチビンBをプレートに添加した(0.1ng/マイクロリットル、0.5ng/マイクロリットル、2.5ng/マイクロリットル)。プレートをPBS 0.1%Tweenで洗浄し、結合したタンパク質を、抗アクチビンA(図9A)及び抗アクチビンB(図10A)抗体(R&D systems)で検出し、その後、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgGを用いて検出した。アクチビンA(図9B)とアクチビンB(図10B)は両方ともActRIIA-Fcコートプレートに用量依存的な様式で結合し、これにより、両方のタンパク質を検出及び定量するために、このアッセイを効果的に使用することができることが示された。GDF11と同様、アクチビンA及びアクチビンBも100pg/mL程度の低いレベルで検出された。
ActRIIA-Fc ELISAを用いて、サラセミアを有する患者の血清中のアクチビンA及びアクチビンBの発現レベルを決定した。GDF11とは対照的に、アクチビンAのタンパク質レベル(図9C)もアクチビンBのタンパク質レベル(図10C)もサラセミア患者で上昇しておらず、ActRIIAリガンドGDF11がサラセミア疾患過程に独自に関与することが示された。
(6.3.9 mActRIIA-Fcは野生型マウスの血液学的パラメーターを変化させない)
野生型C57BL/6マウスをmActRIIA-Fc(10mg/Kg BW、週2回)又はPBSで30日間処置した。赤血球数(図11A)、ヘマトクリット(図11B)、ヘモグロビン(図11C)の評価は、mActRIIA-Fcによるマウスの処置の結果として、これらのパラメーターのレベルの変化を示さなかった。網状赤血球増加のごくわずかな減少が観察された(図11D)。mActRIIA-Fcは、MCV(図11E)、MCH(図11F)、及びMCHC(図12G)などの赤血球(RBC)パラメーターも変化させなかった。各々の独立した実験について、*p<0.05、N=3〜5。
脾臓及び骨髄に対するmActRIIA-Fcの効果も野生型C57BL/6マウスで評価した。mActRIIA-Fcは、野生型マウスの脾臓重量を増加させたが、脾臓細胞数にはそれほど影響を及ぼさなかった。mActRIIA-Fcは、骨髄細胞数にも影響を及ぼさなかった(図12)。
(6.3.10 mActRIIA-FCはGDF11の阻害を通じて赤血球産生性分化を刺激する)
mActRIIA-Fcが赤血球パラメーターを増加させる細胞メカニズムを調べるために、一連のインビトロ実験を実施した。これらの実験において、コロニー形成アッセイ(図13A)及び液体培養物中での赤血球分化(図13B及び13C)で評価したとき、ヒトCD34+細胞に対するmActRIIA-Fcの直接的な作用を支持する証拠は見つけられなかった。臨床的知見と薬理学的知見の両方がRBCパラメーターの刺激におけるmActRIIA-Fcの明白な役割を示したので、mActRIIA-Fcの作用が骨髄(BM)微小環境のアクセサリー細胞によって媒介され得るという仮説を立てた。赤血球始原細胞が高度に濃縮されているヒトCD36+細胞を長期BM培養物とともに共培養し、その後、EPO(2U/mL)補充培地中で6日間培養した後、その赤血球分化を評価した。6日目に、該培養物の産生物は、主に、EryA(〜好塩基性赤芽球)であると特徴付けられたが、mActRIIA-Fc(50μM)を添加すると、CD36+細胞のかなりの割合がEryB/C細胞(多染色性/正染性赤芽球)に成熟し、これにより、BMアクセサリー細胞によって産生される因子がmActRIIA-Fcの赤血球産生作用を媒介すること、及びEPOとは対照的に、mActRIIA-Fcが赤芽球成熟の後期において役割を果たし得ることを示唆した(図13D〜13F)。mActRIIA-Fcの作用を媒介し得るサイトカインを同定するために、CD36+細胞をいくつかのActRIIAリガンドで処理した。GDF11処理は、分化過程における糖タンパク質A陽性(GPA+)細胞の増殖を有意に減少させ、mActRIIA-Fcは、未処理の細胞に影響を及ぼすことなく、この作用を効果的に逆転させた(図13G及び13H)。これらのデータは、GDF11の阻害がmActRIIA-Fcの赤血球産生刺激作用を媒介することを示している。
(6.4 結論)
まとめると、これらのデータは、アクチビン/BMPシグナル伝達が赤芽球分化を制御すること、及びBMP II型/アクチビンII型受容体の標的化が、β-サラセミアにおいて、無効造血を減少させ、貧血を改善することができることを示している。特に、これらのデータは、β-サラセミア関連貧血におけるGDF11の関与を示し、GDF11レベルが貧血を有する対象におけるバイオマーカーとして重要であることを示している。
(7.配列の記載)
表1:配列情報
(8.等価物)
本発明は、その具体的な実施態様に関して詳細に記載されているが、機能的に等価であるバリエーションが本発明の範囲内にあることが理解されるであろう。実際、本明細書に示され、記載されたものに加えた本発明の様々な変更は、前述の説明及び付随する図面から当業者に明らかになるであろう。そのような変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。当業者は、本明細書に記載の本発明の具体的な実施態様の多くの等価物を認識するか、又はルーチンの実験だけを用いて、それらを確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
本明細書に言及された全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各々の個々の刊行物、特許、又は特許出願が、その全体として引用により具体的かつ個別に組み込まれることが示される場合と同じ程度に、引用により本明細書中に組み込まれる。