JP2016223751A - 膨張弁 - Google Patents
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Abstract
【課題】温度式膨張弁においてシャフトとボディとの摺動による摩耗を抑制し、シャフトへの摩耗粉の凝着を抑制する。
【解決手段】膨張弁1は、第1の通路13と第2の通路14とを離隔する隔壁35に挿通孔を有するボディ2と、第2の通路14を流れる冷媒の温度と圧力を感知して、弁部を開閉させるための駆動力を発生するパワーエレメント3と、挿通孔を摺動可能に貫通し、パワーエレメント3の駆動力を弁体18に伝達するシャフト33と、シャフト33を同軸状に支持するとともに半径方向内向きに付勢して摺動抵抗を与える防振ばね48と、挿通孔を規定する支持部60の内周面とシャフト33の外周面の一方に支持され、他方と密接する可撓性のOリング56と、を備える。膨張弁1は、シャフト33の軸線方向に第1の通路13側から第2の通路14側に向けて、Oリング56、シャフト33と支持部60との摺動部、防振ばね48を順に含む配列を有する。
【選択図】図1
【解決手段】膨張弁1は、第1の通路13と第2の通路14とを離隔する隔壁35に挿通孔を有するボディ2と、第2の通路14を流れる冷媒の温度と圧力を感知して、弁部を開閉させるための駆動力を発生するパワーエレメント3と、挿通孔を摺動可能に貫通し、パワーエレメント3の駆動力を弁体18に伝達するシャフト33と、シャフト33を同軸状に支持するとともに半径方向内向きに付勢して摺動抵抗を与える防振ばね48と、挿通孔を規定する支持部60の内周面とシャフト33の外周面の一方に支持され、他方と密接する可撓性のOリング56と、を備える。膨張弁1は、シャフト33の軸線方向に第1の通路13側から第2の通路14側に向けて、Oリング56、シャフト33と支持部60との摺動部、防振ばね48を順に含む配列を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は膨張弁に関し、特に冷凍サイクルに好適な温度式膨張弁に関する。
自動車用空調装置の冷凍サイクルには一般に、循環する冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮後の液冷媒を絞り膨張させて霧状の冷媒を送出する膨張弁、その冷媒の蒸発潜熱により車室内の空気を冷却する蒸発器が設けられている。膨張弁としては、例えば、蒸発器から導出された冷媒が所定の過熱度を有するよう、蒸発器の出口側の冷媒の温度および圧力を感知して弁開度を調整し、蒸発器へ送出される冷媒の流量を制御する温度式膨張弁が用いられる。
このような膨張弁のボディには、凝縮器から蒸発器へ向かう冷媒が通過する第1の通路と、蒸発器から戻ってきた冷媒が通過する第2の通路とが形成される。第1の通路には弁孔が形成され、その弁孔に対向するように弁体が配設される。弁体は、弁孔に接離し、蒸発器へ向かう冷媒の流量を調整する。また、ボディの一端には、第2の通路を流れる冷媒の温度および圧力を感知して作動するパワーエレメントが設けられる。パワーエレメントの駆動力は、シャフトを介して弁体に伝達される。シャフトは、第1の通路と第2の通路とを離隔する隔壁に形成された挿通孔を貫通し、ボディに摺動可能に支持される。シャフトの一端側はパワーエレメントに接続され、他端側は弁孔を通って弁体に接続される(例えば特許文献1参照)。
このような膨張弁においては一般に、ボディがアルミニウム合金等の軟質材からなり、シャフトがステンレス等の硬質材からなるため、シャフトの摺動によりボディ側が摩耗して摩耗粉を生じさせることがある。ボディにおいて挿通孔を形成する支持部とシャフトとの間にはクリアランスがあるため、弁体の駆動中に両者の軸線が平行にずれて片当りとなったり、両者の軸線がクロスして支持部の両端位置において局所当りとなるなどし、それが摩耗を促進することも考えられる。このようにして摩耗粉が増加すると、それがシャフトに凝着して摺動抵抗を増加させ、弁部の作動応答性を低下させる虞がある。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、温度式膨張弁においてシャフトとボディとの摺動による摩耗を抑制し、シャフトへの摩耗粉の凝着を抑制することにある。
本発明のある態様は、冷凍サイクルに設けられ、上流側から流入した冷媒を絞り膨張させて蒸発器へ供給するための膨張弁である。この膨張弁は、上流側から蒸発器へ向けて流れる冷媒が通過する第1の通路と、蒸発器から戻ってきた冷媒が通過する第2の通路と、第1の通路に設けられた弁孔と、第1の通路と第2の通路とを離隔する隔壁に弁孔と同軸状に形成された挿通孔と、を有するボディと、弁孔に接離して弁部を開閉する弁体と、ボディに設けられ、第2の通路を流れる冷媒の温度と圧力を感知して、弁部を開閉させるための駆動力を発生するパワーエレメントと、挿通孔を摺動可能に貫通し、一端側がパワーエレメントに接続され、他端側が弁体に接続され、パワーエレメントの駆動力を弁体に伝達するシャフトと、ボディに挿通孔と同軸状に固定され、シャフトが同軸状に挿通するようにシャフトを支持するとともに、シャフトを半径方向内向きに付勢して摺動抵抗を与える防振ばねと、挿通孔を規定する支持部の内周面とシャフトの外周面の一方に支持され、他方と密接する可撓性のシールリングと、を備える。
この膨張弁は、シャフトの軸線方向に第1の通路側から第2の通路側に向けて、シールリング、シャフトと支持部との摺動部、防振ばねを順に含む配列を有する。
この態様によると、防振ばねとシールリングとが、シャフトと支持部との摺動部を挟むように配置される。それにより、シャフトが、防振ばねおよびシールリングの2つの緩衝部材によって2点支持される形となり、シャフトと支持部との同軸度を高く維持することが可能となる。その結果、支持部の摩耗を抑制でき、シャフトへの摩耗粉の凝着を抑制できる。また、摺動部を挟んで相対的に高圧となる側(第1の通路側)にシールリングが配置されることで、摺動部への異物の侵入を効果的に防止又は抑制することができる。
本発明によれば、温度式膨張弁においてシャフトとボディとの摺動による摩耗を抑制し、シャフトへの摩耗粉の凝着を抑制することができる。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略することがある。
本実施形態は、本発明の膨張弁を自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用される温度式膨張弁として具体化している。この冷凍サイクルには、循環する冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器(室外熱交換器)、凝縮された冷媒を気液に分離する受液器、分離された液冷媒を絞り膨張させて霧状にして送出する膨張弁、その霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却する蒸発器(室内熱交換器)が設けられている。ここでは便宜上、膨張弁以外については詳細な説明を省略する。
図1は、実施形態に係る膨張弁の断面図である。
膨張弁1は、アルミニウム合金からなる素材を押出成形して得た部材に所定の切削加工を施して得られたボディ2を有する。このボディ2は角柱状をなし、その内部には冷媒の絞り膨張を行う弁部が設けられている。ボディ2の長手方向の端部には、「駆動部」として機能するパワーエレメント3が設けられている。
膨張弁1は、アルミニウム合金からなる素材を押出成形して得た部材に所定の切削加工を施して得られたボディ2を有する。このボディ2は角柱状をなし、その内部には冷媒の絞り膨張を行う弁部が設けられている。ボディ2の長手方向の端部には、「駆動部」として機能するパワーエレメント3が設けられている。
ボディ2の側部には、受液器側(凝縮器側)から高温・高圧の液冷媒を導入する導入ポート6、膨張弁1にて絞り膨張された低温・低圧の冷媒を蒸発器へ向けて導出する導出ポート7、蒸発器にて蒸発された冷媒を導入する導入ポート8、膨張弁1を通過した冷媒を圧縮機側へ導出する導出ポート9が設けられている。導入ポート6と導出ポート9との間には、図示しない配管取付用のスタッドボルトを植設可能とするためのねじ穴10が形成されている。各ポートには、配管の継手が接続される。
膨張弁1においては、導入ポート6、導出ポート7およびこれらをつなぐ冷媒通路により第1の通路13が構成されている。第1の通路13の中間部には、弁部が設けられている。導入ポート6から導入された冷媒は、その弁部にて絞り膨張されて霧状となり、導出ポート7から蒸発器へ向けて導出される。一方、導入ポート8、導出ポート9およびこれらをつなぐ冷媒通路により第2の通路14が構成されている。第2の通路14は、ストレートに延びており、その中間部がパワーエレメント3の内部と連通している。導入ポート8から導入された冷媒の一部は、パワーエレメント3に供給されて感温される。第2の通路14を通過した冷媒は、導出ポート9から圧縮機へ向けて導出される。
第1の通路13の中間部には弁孔16が設けられ、その弁孔16の導入ポート6側の開口端縁により弁座17が形成されている。弁座17に導入ポート6側から対向するように弁体18が配置されている。弁体18は、弁座17に着脱して弁部を開閉する球状のボール弁体41と、そのボール弁体41を下方から支持する弁体受け43とを接合して構成されている。
ボディ2の下部には、内外を連通させる連通孔19が形成されており、その上半部により弁体18を収容する弁室40が形成されている。弁室40は、弁孔16に連通し、弁孔16と同軸状に形成されている。弁室40は、また、側部にて上流側通路37を介して導入ポート6に連通している。上流側通路37は、弁室40に向けて開口する小孔42を含む。小孔42は、第1の通路13の通路断面が局部的に狭小化されて形成されている。
弁孔16は、下流側通路39を介して導出ポート7に連通している。すなわち、上流側通路37、弁室40、弁孔16および下流側通路39が、第1の通路13を構成している。上流側通路37と下流側通路39とは互いに平行であり、それぞれ弁孔16の軸線に対して直角方向に延在している。なお、変形例においては、上流側通路37と下流側通路39との互いの投影が直角をなすように(互いにねじれの位置となるように)導入ポート6又は導出ポート7の位置を設定してもよい。
連通孔19の下半部には、その連通孔19を外部から封止するようにアジャストねじ20が螺着されている。弁体18(正確には弁体受け43)とアジャストねじ20との間には、弁体18を閉弁方向に付勢するスプリング23が介装されている。アジャストねじ20のボディ2への螺入量を調整することで、スプリング23の荷重を調整することができる。アジャストねじ20とボディ2との間には、冷媒の漏洩を防止するためのOリング24が介装されている。
一方、ボディ2の上端部には凹部50が設けられ、凹部50の底部に内外を連通させる開口部52が設けられている。パワーエレメント3は、その下部が凹部50に螺着され、開口部52を封止するようにボディ2に組み付けられている。凹部50とパワーエレメント3との間の空間により、感温室54が形成されている。
パワーエレメント3は、アッパーハウジング26とロアハウジング27との間にダイヤフラム28を挟むように介装し、そのロアハウジング27側にディスク29を配置して構成されている。アッパーハウジング26はステンレス材を有蓋状にプレス成形して得られる。ロアハウジング27は、ステンレス材を段付円筒状にプレス成形して得られる。ディスク29は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、両ハウジングよりも熱伝導率が大きい。ダイヤフラム28は、本実施形態では金属薄板からなるが、ポリイミドフィルム等の薄膜状の樹脂材からなるものでもよい。
パワーエレメント3は、アッパーハウジング26とロアハウジング27との互いの開口部を突き合わせ、その外縁部にダイヤフラム28の外縁部を挟むようにして組み付け、両ハウジングの接合部に沿って外周溶接が施されることにより容器状に形成されている。パワーエレメント3の内部は、ダイヤフラム28により密閉空間S1と開放空間S2とに仕切られ、その密閉空間S1には感温用のガスが封入されている。開放空間S2は、開口部52を介して第2の通路14に連通する。パワーエレメント3とボディ2との間には、冷媒の漏洩を防止するためのOリング30が介装されている。第2の通路14を通過する冷媒の圧力および温度は、開口部52とディスク29に設けられた溝部53を通ってダイヤフラム28の下面に伝達される。また、冷媒の温度については、主に熱伝導率が大きいディスク29を介してダイヤフラム28に伝達される。
ボディ2の中央部には、第1の通路13と第2の通路14とを離隔する隔壁35を貫通するように段付孔34が設けられている。この段付孔34は、小径部44と大径部46とを同軸状に有する。小径部44の下端が第1の通路13に向けて開口し、大径部46の上端が第2の通路14に向けて開口する。小径部44は、長尺状のシャフト33を軸線方向に挿通する挿通孔を形成し、また、シャフト33を摺動可能に支持する支持部60を構成する。大径部46は、後述する防振ばね48を同軸状に収容する取付孔を形成する。
シャフト33は、ステンレス等の硬質材からなるロッドであり、ディスク29と弁体18との間に介装されている。これにより、ダイヤフラム28の変位よる駆動力が、ディスク29およびシャフト33を介して弁体18へ伝達され、弁部が開閉される。シャフト33の一端側は第2の通路14を横断し、ディスク29に接続される。シャフト33の他端側は、第1の通路13に延出して弁体18に接続される。
大径部46には、シャフト33に軸線方向と直角な方向の付勢力、つまり横荷重(摺動荷重)を付与するための防振ばね48が収容されている。シャフト33がその防振ばね48の横荷重を受けることにより、冷媒圧力の変動によるシャフト33や弁体18の振動が抑制される。
防振ばね48は、小径部44と同軸状に固定され、シャフト33が同軸状に挿通するようにそのシャフト33を支持する。防振ばね48は、シャフト33を半径方向内向きに付勢して摺動抵抗を与える。
本実施形態では、段付孔34とシャフト33との間にOリング56(「シールリング」として機能する)が介装され、第1の通路13から第2の通路14への冷媒の漏れが防止されている。Oリング56は、可撓性を有し、シャフト33の外周面に支持され、支持部60の内周面と密接する。図示のように、シャフト33の軸線方向に第1の通路13側から第2の通路14側に向けて、Oリング56、シャフト33と支持部60との摺動部、防振ばね48が順に配置されている。なお、Oリング56、防振ばね48およびそれらの周辺の詳細については後述する。
以上のように構成された膨張弁1は、蒸発器から導入ポート8を介して戻ってきた冷媒の圧力及び温度をパワーエレメント3が感知してダイヤフラム28が変位する。このダイヤフラム28の変位が駆動力となり、ディスク29およびシャフト33を介して弁体18に伝達されて弁部を開閉させる。一方、受液器から供給された液冷媒は、導入ポート6から導入され、弁部を通過することにより絞り膨張されて、低温・低圧の霧状の冷媒になる。その冷媒は導出ポート7から蒸発器へ向けて導出される。
次に、シャフト33の支持構造について詳細に説明する。
図2および図3は、シャフト33の支持構造およびその周辺構造を表す図である。図2(A)は図1のA部拡大図である。図2(B)は図1のB部拡大図である。図3(A)は図1のC部拡大図である。図3(B)は防振ばね48を正面側からみた斜視図である。図3(C)は防振ばね48を背面側からみた斜視図である。図3(D)は防振ばね48が大径部46に挿通されたときの状態を示す平面図である。
図2および図3は、シャフト33の支持構造およびその周辺構造を表す図である。図2(A)は図1のA部拡大図である。図2(B)は図1のB部拡大図である。図3(A)は図1のC部拡大図である。図3(B)は防振ばね48を正面側からみた斜視図である。図3(C)は防振ばね48を背面側からみた斜視図である。図3(D)は防振ばね48が大径部46に挿通されたときの状態を示す平面図である。
図2(A)に示すように、段付孔34の小径部44は、シャフト33を支持する支持部60と、下流側通路39に向けて開口する拡径部62とを有する。拡径部62の径は、支持部60の径よりもやや大きく、弁孔16の径以下に設定されている。そして、支持部60と拡径部62との境界部に面取り加工(C面取り)が施され、テーパ状の境界面61が形成されている。拡径部62の開口端63には面取りがなされておらず、エッジ状とされている。なお、本実施形態では面取り加工のテーパ角を、段付孔34の軸線に対して45度となるように設定したが、それ以外のテーパ角を採用してもよい。また、本実施形態ではその面取り加工をC面取りにより行っているが、R面取りとしてもよい。
このような構成により、支持部60とシャフト33との間のクリアランスCL1を小さくするとともに、拡径部62とシャフト33との間のクリアランスCL2をクリアランスCL1よりも大きくしている。それにより、仮に段付孔34の成形によって拡径部62の開口端63にバリが生じたとしても、そのバリがシャフト33と干渉し難くし、支持部60とシャフト33との摺動部にバリが噛み込み難くなるようにしている。
一方、図2(B)にも示すように、シャフト33は、下流側通路39において縮径する段差部64を有し、その段差部64に弁孔16に対向するテーパ状の対向面66が形成されている。段差部64の先端側である小径部68が弁孔16を貫通して弁体18に接続されている。ボール弁体41は、シャフト33の先端と当接している。
以上のような構成により、図中太線矢印にて示すように、開弁時に上流側から導入された液冷媒は、弁孔16と小径部68との間隙(オリフィス通路)を通過することにより霧状の気液二相冷媒となり、下流側通路39に導出される。このとき、冷媒の少なくとも一部は小径部68に沿って流れるが、対向面66に当たって進路を変化させられる。すなわち、その冷媒が段付孔34へは向かい難くされている。
図示は省略するが、段付孔34は以下のように加工される。すなわち、その段付孔34の成形に先立ち、図示しないドリル(穴あけ工具)を用いた切削加工により、ボディ2に上流側通路37、下流側通路39、連通孔19(弁室40)、第2の通路14が成形される(図1参照)。
続いて、ボディ2の上方からドリル(穴あけ工具)による穴あけ加工が施され、大径部46の下穴があけられる。続いて、ボディ2の下方からドリル(穴あけ工具)による穴あけ加工が施され、段付孔34の全体が成形される。ドリル72の切削刃は、拡径部62を成形するための段部を有する。このとき、その段部にも上述した境界面61を成形するための切削機能があるため、支持部60の下端開口部にバリが残存するようなことはない。一方、拡径部62の開口端63にはバリが生じることがある。しかし、上述したクリアランスCL2が形成されることにより(図2(A)参照)、そのバリがシャフト33に干渉することはない。すなわち、段付孔34の開口端およびその近傍が拡径されているため、仮にその段付孔34の成形時にバリが発生したとしても、シャフト33を挿通させたときにそのバリが干渉する可能性は低い。そのため、シャフト33と段付孔34(支持部60)との間隙にバリが引き込まれることを防止又は抑制できる。
また、シャフト33に段差部64を設けたことで、弁孔16を経た冷媒が、テーパ状の対向面66に沿って流れ方向を変化させる。それにより、弁孔16を経た噴流は、バリが発生する箇所を避けるようになる。すなわち、その噴流がバリやその他の異物をシャフト33と段付孔34(支持部60)との間隙に押し込むといった事態を回避又は抑制できる。さらに、下流側通路39の壁面に対して拡径部62を掘り込む態様とすることで、テーパ面(境界面61)の精度を比較的容易に確保できるといったメリットもある。
一方、図2(A)に示すように、シャフト33の外周面(摺動面)には環状凹部(環状溝)からなる嵌合部58が周設され、その嵌合部58にOリング56が嵌着されている。このような構成により、Oリング56は、シャフト33の外周面に支持され、支持部60の内周面に密接する。図3(A)にも示すように、Oリング56は、シャフト33における支持部60との摺動部70の軸線方向中央よりも第1の通路13に近い側に配置されている。
なお、ここでいう「摺動部70」は、シャフト33において支持部60と摺動し得る軸線方向の一つながりの領域を意味する。その意味では、嵌合部58は、厳密には支持部60と摺動しないが(嵌合部58に嵌着されたOリング56が摺動する)、摺動部70の中途に形成されている。一方、小径部44における摺動部72は、支持部60である。ここでいう「摺動部72」は、支持部60においてシャフト33が摺動し得る軸線方向の一つながりの領域を意味し、厳密には「被摺動部」であるが、ここでは「摺動部」と表現する。
より詳細には、小径部44は、その下端に支持部60よりも大径の拡径部62を有する。拡径部62は、第1の通路13に向けて下方に開口する。Oリング56は、支持部60の開口端近傍(拡径部62に近接する位置)に密接するように、シャフト33の外周面に嵌着されている。この状態において、Oリング56の軸線は、段付孔34(小径部44)の軸線と実質的に一致する。
図3(B)に示すように、防振ばね48は、平坦な側壁を有する断面三角形状の筒状の本体102と、その3つの側壁にそれぞれ一体に形成されたばね部104を有する。3つのばね部104のうち一つは、本体102の一端に延出した部分からなる。残りの2つのばね部104は、本体102の側壁をU字状に打ち抜いた残余の部分により形成されている。各ばね部104は、その基端部が本体102に片持ち状に支持され、先端部が本体102の側壁に概ね沿うように周方向に延在している。ばね部104の先端部には、本体102の内側に向けて突出する半球状の膨出部106が設けられている。膨出部106は、シャフト33の外周面に当接する「当接部」として機能する。
防振ばね48は、帯状の板材を延在方向に沿った複数箇所にて曲げ加工することにより形成されるため、その側壁にはその板材の両端が対向する切れ目が存在する。すなわち、3つのばね部104のうち一つが本体102の一端部108となり、凸形状を有する。本体102の他端部110には概略長方形状の開口部112が設けられ、その先端部が本体102の内方に屈曲している。その屈曲部を入口として一端部108が挿入され、それにより本体102の両端部が幅方向にオーバラップする。
図3(C)に示すように、他端部110の先端の一部が開放されて切り口114となっている。ただし、その切り口114の幅は、本体102の一端部108であるばね部104の幅以下とされているため、無負荷状態において両端部が嵌合すると、その切り口114は実質的に閉じられることになる。このような構成により、本体102の両端部の隙間に他の部材が挟まり難くされている。すなわち、防振ばね48がその流通過程において単品ではなく複数まとめて梱包されることを想定し、そのような状況においても複数の防振ばね48が互いに絡み合わないようにし、取り扱いの便宜を図るものである。
防振ばね48は、大径部46に挿入される前の無負荷状態においては、本体102の両端部が位置する角部がやや外方に位置する非正三角形状となる。防振ばね48を段付孔34に挿入する際には、その両端部を近づけるように負荷をかけ、断面正三角形状に近い状態にしたうえで挿入する。防振ばね48は、無負荷状態から弾性変形した状態で段付孔34に挿入されるため、その負荷を解除した際の弾性反力により大径部46に固定される(図3(D)参照)。このとき、防振ばね48の軸線は、段付孔34(小径部44)の軸線と実質的に一致する。また、3つの膨出部106の各頂点Pを通る内接円の中心が、段付孔34(小径部44)の軸線と実質的に一致する。
また、防振ばね48は、本体102の上端部と下端部における三角形状の頂点に対応する位置に、半径方向外向きに微小に突出するエッジ部120を有する。このエッジ部120が大径部46の内壁に引っ掛かることにより、防振ばね48が軸線方向に係止されている。すなわち、図3(A)および(D)に示すように、防振ばね48は、その断面三角形状の頂点が位置する軸線方向の稜線にて大径部46の内壁に当接する。その際、本体102の軸線方向両端部に形成されたエッジ部120が大径部46の内壁に引っ掛かり、防振ばね48の軸線方向への変位が防止されている。
一方、防振ばね48が大径部46に挿入される際には、3つのばね部104がシャフト33に向けた横荷重(半径方向内向きの荷重)を生成する。すなわち、図3(A)および(D)に示すように、防振ばね48を大径部46に挿入した状態でシャフト33が挿入されると、3つのばね部104が側壁とほぼ同一面に位置する状態まで外方に撓み、その弾性反力によりシャフト33に適度な摺動力が付与される。なお、このようにシャフト33を挿通させることで、ばね部104が半径方向外向きに撓むことになるが、その際にばね部104をある程度塑性変形させると、ばね部104のシャフト33への押圧力(膨出部106とシャフト33との摺動力)を安定させることができる。すなわち、ばね部104を弾性域にて使用してもよいし、塑性域にて使用してもよい。
なお、図示のように防振ばね48が大径部46に挿入されると、シャフト33に対して3つの膨出部106が点接触するようになる。このような構成により、シャフト33が多少傾くようなことがあったとしても、膨出部106とシャフト33との点接触の状態が常に確保され、防振ばねによる円滑な支持状態が保持される。そして、エッジ部120の引っ掛かりにより防振ばね48が定位置に安定に保持されるため、シャフト33に作用する摺動抵抗を狙いどおりの値に維持することができる。
以上に説明したように、本実施形態によれば、防振ばね48とOリング56とが、シャフト33と支持部60との摺動部を挟むように配置される。それにより、シャフト33が、防振ばね48およびOリング56の2つの緩衝部材によって2点支持される形となる。それにより、支持部60の軸線に対するシャフト33の倒れを抑制でき、少なくともその2点間にある摺動部についてシャフト33と支持部60との同軸度を高く維持することが可能となる。その結果、支持部60の摩耗を抑制でき、シャフト33への摩耗粉の凝着を抑制できる。また、上述のように、段付孔34の成形時にバリが発生したとしても、そのバリが摺動部に侵入することを防止又は抑制できるため、シャフト33の摺動抵抗が不必要に増加することを防止でき、弁部の作動応答性を良好に維持することができる。
特に本実施形態では、小径部44(挿通孔)における第1の通路13側の開口端近傍にOリング56を配置し、防振ばね48とOリング56との間隔を大きくしている。それにより、シャフト33を支持する2つの緩衝部材の距離(支点間距離)を大きくとることができ、シャフト33を小径部44の軸線に沿って安定に支持することができる。言い換えれば、その支点間にある摺動部の大部分について、シャフト33と小径部44との軸線が平行にずれることによる片当りを抑制できる。また、仮にシャフト33の軸線と支持部60の軸線とがクロスする状態になったとしても、Oリング56が支持部60の開口端近傍に位置するため、シャフト33がその開口端に片当り(局所当り)をすることを防止又は抑制できる。その結果、支持部60の摩耗を効果的に抑制することができる。
また、Oリング56が相対的に高圧となる側(第1の通路側)に配置され、防振ばね48が相対的に低圧となる側(第2の通路側)に配置される。このため、第1の通路13から第2の通路14への冷媒の漏れを防止できるとともに、摺動部への異物の侵入を効果的に防止又は抑制することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記実施形態では、シャフトの支持構造の一例を示したが、これと異なる構造を採用してもよい。図4は、変形例に係るシャフトの支持構造を表す図である。図4(A)は第1変形例を示し、図4(B)は第2変形例を示し、図4(C)は第3変形例を示す。
すなわち、図4(A)に示すように、シールリングを複数設け、シャフト133を3つ以上の緩衝部材により支持してもよい。図示の例では、シャフト133の外周面において小径部44の上部(一端部)および下部(他端部)に対向する位置に嵌合部58を設け、それぞれOリング56を嵌着させている。
あるいは、図4(B)に示すように、シャフト233において小径部44の上部に対向する位置に嵌合部58を設け、Oリング56を嵌着させてもよい。また、図4(C)に示すように、小径部244側(ボディ側)に環状凹部からなる嵌合部158を設け、Oリング156を嵌着させてもよい。すなわち、Oリング156が支持部260の内周面に支持され、シャフト333の外周面に密接する構成としてもよい。図示の例では、嵌合部158を小径部244の下部に設けているが、小径部244の上部に設けてもよい。あるいは、小径部244の上部および下部に設けてもよい。
上記実施形態では、断面円形状のOリング56を採用したが、断面多角形状のシールリングを採用してもよい。
上記実施形態では、防振ばね48を三角形状となるよう構成したが、その他の多角形状あるいは円筒形状となるように構成してよい。
上記実施形態では、防振ばね48の上端部および下端部の双方にエッジ部120を形成する例を示した。変形例においては、防振ばね48の上端部および下端部の一方にのみ形成してもよい。また、上記実施形態では、防振ばね48の外周面にエッジ部120を形成することにより大径部46との固定を維持する構成を示した。変形例においては、取付孔(大径部46)の内壁面の所定位置に凹部(段差)を設け、防振ばね48の端部を引っ掛ける構成としてもよい。
上記実施形態では、図3(D)に示したように、防振ばね48を大径部46に挿入した状態でシャフト33が挿入されたときに、3つのばね部104が側壁とほぼ同一面に位置する例を示した。変形例においては、このようにシャフト33が挿入されたときに、3つのばね部104が側壁の外方に撓む構成としてもよい。本体102が多角形状をなすため、本体102の側壁と大径部46との間に形成される間隙を利用してばね部104を撓ませることができるためである。
また、防振ばね48の無負荷状態においてばね部104が本体102の側壁に沿う構造としてもよい。そして、防振ばね48が大径部46に挿入され、その防振ばね48にシャフト33が挿通されたときに、ばね部104が本体102の外方に撓むようにしてもよい。あるいは、このようにシャフト33が挿入されたときに、3つのばね部104が側壁の内方に位置する構成としてもよい。ただし、このようにシャフト33が挿入されたときに、ばね部104が本体102の側壁と同一面となる位置又は本体102の側壁の外方に撓むように構成することで、本体102をコンパクトに構成できるメリットがある。
上記実施形態では、膨出部106の形状として半球状のものを示したが、例えばアーチ状にするなど、内側に突出してシャフト33に適度な摺動荷重を付与可能なものであれば、適宜選択することができる。
上記実施形態の膨張弁は、冷媒として代替フロン(HFC−134a)など使用する冷凍サイクルに好適に適用されるが、本発明の膨張弁は、二酸化炭素のように作動圧力が高い冷媒を用いる冷凍サイクルに適用することも可能である。その場合には、冷凍サイクルに凝縮器に代わってガスクーラなどの外部熱交換器が配置される。その際、パワーエレメント3を構成するダイヤフラムの強度を補うために、例えば金属製の皿ばね等を重ねて配置してもよい。
上記実施形態では、上記膨張弁を、外部熱交換器を経て流入した冷媒を絞り膨張させて蒸発器(室内蒸発器)へ供給するものとして構成する例を示した。変形例においては、上記膨張弁を、ヒートポンプ式の車両用冷暖房装置に適用し、室内凝縮器(室内熱交換器)の下流側に設置してもよい。すなわち、上記膨張弁を、室内凝縮器を経て流入した冷媒を絞り膨張させて外部熱交換器(室外蒸発器)へ供給するものとして構成してもよい。
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
1 膨張弁、2 ボディ、3 パワーエレメント、13 第1の通路、14 第2の通路、16 弁孔、18 弁体、33 シャフト、34 段付孔、35 隔壁、44 小径部、46 大径部、48 防振ばね、56 Oリング、58 嵌合部、60 支持部、62 拡径部、133 シャフト、156 Oリング、158 嵌合部、233 シャフト、244 小径部、260 支持部、333 シャフト。
Claims (6)
- 冷凍サイクルに設けられ、上流側から流入した冷媒を絞り膨張させて蒸発器へ供給するための膨張弁であって、
上流側から前記蒸発器へ向けて流れる冷媒が通過する第1の通路と、前記蒸発器から戻ってきた冷媒が通過する第2の通路と、前記第1の通路に設けられた弁孔と、前記第1の通路と前記第2の通路とを離隔する隔壁に前記弁孔と同軸状に形成された挿通孔と、を有するボディと、
前記弁孔に接離して弁部を開閉する弁体と、
前記ボディに設けられ、前記第2の通路を流れる冷媒の温度と圧力を感知して、前記弁部を開閉させるための駆動力を発生するパワーエレメントと、
前記挿通孔を摺動可能に貫通し、一端側が前記パワーエレメントに接続され、他端側が前記弁体に接続され、前記パワーエレメントの駆動力を前記弁体に伝達するシャフトと、
前記ボディに前記挿通孔と同軸状に固定され、前記シャフトが同軸状に挿通するように前記シャフトを支持するとともに、前記シャフトを半径方向内向きに付勢して摺動抵抗を与える防振ばねと、
前記挿通孔を規定する支持部の内周面と前記シャフトの外周面の一方に支持され、他方と密接する可撓性のシールリングと、
を備え、
前記シャフトの軸線方向に前記第1の通路側から前記第2の通路側に向けて、前記シールリング、前記シャフトと前記支持部との摺動部、前記防振ばねを順に含む配列を有することを特徴とする膨張弁。 - 前記ボディに前記挿通孔と同軸状に形成され、前記第2の通路に向けて開口する取付孔に、前記防振ばねが収容されていることを特徴とする請求項1に記載の膨張弁。
- 前記シールリングが、前記シャフトの外周面および前記支持部の内周面の一方に形成された環状凹部からなる嵌合部に嵌着され、他方に密接することを特徴とする請求項1または2に記載の膨張弁。
- 前記嵌合部が、前記シャフトの外周面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の膨張弁。
- 前記シールリングが、前記シャフトと前記支持部との摺動部の軸線方向中央よりも前記第1の通路に近い側に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の膨張弁。
- 前記ボディは、前記支持部と、前記第1の通路に向けて開口し、前記支持部よりも大径の拡径部と、を含み、
前記シールリングが、前記拡径部に近接配置されるように、前記支持部に対向する前記シャフトの外周面に嵌着され、前記支持部の開口端近傍に密接することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の膨張弁。
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