以下、本発明の実施の形態によるガス充填装置を、添付図面に従って詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、充填ステーション1は、水素ガスを燃料とする車両に水素ガスを供給するガス充填装置で、この充填ステーション1は、例えばディスペンサ2を備えている。
このディスペンサ2内および/またはディスペンサ2の地下部分には、ガス供給経路としての供給管路3が設けられている。この供給管路3は、その一端が水素ガスからなる燃料を蓄える貯蔵タンク100(蓄圧器)に連通するように接続されている。供給管路3の他端には、例えば可撓性ホース等からなる充填ホース4を介してカップリング5が接続されている。
ディスペンサ2は、カップリング5、流量調整弁8、遮断弁9、流量計10、熱交換器13、燃料温度センサ16、圧力センサ17、充填開始スイッチ19、充填停止スイッチ20、脱圧弁22、および制御装置23等を含んで構成されている。流量調整弁8および遮断弁9は、供給管路3を流れるガスの流量および圧力を制御する制御機器を構成している。流量計10、燃料温度センサ16、および圧力センサ17は、供給管路3を流れるガスの流量、圧力および温度を計測する計測機器を構成している。
カップリング5は、後述する車両26の燃料タンク27に、水素ガスからなる燃料を供給するため後述の充填口27Aに気密状態で着脱可能に接続される充填ノズルとして構成されている。カップリング5には、水素ガスの充填中にガスの圧力によって充填口27Aから誤って外れることがないように、燃料タンク27の充填口27Aに対して係脱可能にロックされるロック機構(図示せず)が設けられている。
ディスペンサ2には、燃料(水素ガス)の非充填時にカップリング5が取外し可能に収納されるカップリング収納部6が設けられている。このカップリング収納部6は、カップリング5がガス充填を終了して戻される場合に、当該カップリング5を収納するものである。
車両26の燃料タンク27に燃料を充填するときには、図1中に二点鎖線で示す如く、カップリング5がカップリング収納部6から取外されて車両26(燃料タンク27)の充填口27Aに連結して接続される。このようにカップリング5を燃料タンク27に接続した状態で、貯蔵タンク100内の燃料(水素ガス)は、供給管路3、充填ホース4およびカップリング5等を通じて後述の如く車両26の燃料タンク27に充填される。
入口弁7は、供給管路3の貯蔵タンク100側に設けられている。この入口弁7は、例えば手動操作により開,閉される。なお、入口弁7は必要に応じて取付けられるものであり、不要であればこれを除いてもよい。
流量調整弁8は、入口弁7よりも下流側に位置して供給管路3に設けられている。この流量調整弁8は、後述の制御装置23に接続され、制御装置23からの制御信号で開,閉されることにより、供給管路3を流れる水素ガスの流量を調整するものである。即ち、制御装置23は、例えば後述の流量計10、燃料温度センサ16、圧力センサ17の測定結果および/または車両26の燃料タンク27の容量および残容量等により、流量調整弁8の開度等を予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式または定流量制御方式)で調整する。これにより、供給管路3内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。
遮断弁9は、流量調整弁8よりも下流側に位置して供給管路3に設けられている。この遮断弁9は、電磁式または空圧作動式の弁装置である。遮断弁9は、後述する制御装置23に接続され、制御装置23からの制御信号で開,閉されることにより、供給管路3内を流れる水素ガスの流通を許したり、または遮断したりする。即ち、制御装置23は、カップリング5を介して車両26の燃料タンク27に水素ガスを充填または充填を停止(終了)するときに、流量調整弁8と遮断弁9との開,閉弁制御を行う。
流量計10は、入口弁7と流量調整弁8との間に位置して供給管路3に設けられている。この流量計10は、例えば被測流体の質量流量を計測するコリオリ式の流量計測器となっている。流量計10は、入口弁7と流量調整弁8との間で供給管路3内を流れる燃料、即ち燃料タンク27へ充填される水素ガスの流量(質量流量)を計測し、計測した流量に比例した数の流量パルスを制御装置23へと出力する。これによって、制御装置23は、車両26の燃料タンク27に対する燃料(水素ガス)の充填量を演算により求めることができる。また、演算された水素ガスの充填量は、車両26に対する燃料の払出し量(給油量に相当)として表示器(図示せず)等で表示し、例えば顧客等に表示内容を報知することができる。
なお、供給管路3の上流側から下流側に向けて順番に設けられている流量計10、流量調整弁8、遮断弁9は、この順番に限定されるものではなく、例えば流量計10を流量調整弁8と遮断弁9との間に設けたり、流量計10を遮断弁9よりも下流側に設けたりしてもよい。
冷却器11は、供給管路3内を流れる水素ガスを冷却する装置である。この冷却器11は、ディスペンサ2外に設けられ冷媒を冷却する冷凍器12Aを有するチラーユニット12と、流量調整弁8および遮断弁9よりも下流側に位置して供給管路3に設けられた熱交換器13と、チラーユニット12の冷凍器12Aと熱交換器13との間で冷媒を循環させるための冷媒管路14と、冷媒管路14に設けられた冷媒循環用ポンプ15とを含んで構成されている。
チラーユニット12は、例えば冷媒(例えば、エチレングリコール等を含んだ液体)を冷却する冷凍器12Aと、冷凍器12Aにより冷却された冷媒および熱交換器13により温度上昇した冷媒を貯蔵する冷媒用タンク12Bとを備えている。また、チラーユニット12には、後述の冷媒循環用ポンプ15が備えられている。
冷凍器12Aは、熱交換器13で供給管路3内を流れる水素ガスと熱交換して温度上昇した冷媒を冷却するものである。即ち、温度上昇した冷媒は、冷媒用タンク12Bから冷凍器側冷媒管路14Aを流通して冷凍器12Aへと導入される。冷凍器12Aに導入された冷媒は、例えば低温の代替フロン等により、例えば約−40℃まで冷却され、冷凍器側冷媒管路14Bにより冷媒用タンク12Bに戻される。
熱交換器13は、供給管路3に設けられ、冷凍器12Aにより冷却された冷媒との熱交換によりカップリング5によって充填される水素ガスを冷却するものである。即ち、熱交換器13は、供給管路3の流量調整弁8を通過することにより温度上昇した水素ガスを冷却するものである。熱交換器13は、冷媒と水素ガスとを熱交換させることにより水素ガスの温度を規定温度(例えば、−33℃〜−40℃)まで低下させる。これにより、車両26の燃料タンク27内の温度および圧力上昇を抑制することができる。
冷媒管路14は、冷凍器12Aと熱交換器13との間で冷媒を循環させるための流路である。この冷媒管路14は、冷媒用タンク12Bから冷凍器12Aに向けて冷媒を流通させる冷凍器側冷媒管路14Aと、冷凍器12Aで冷却された冷媒を冷媒用タンク12Bに向けて流通させる冷凍器側冷媒管路14Bと、冷媒用タンク12Bから熱交換器13に向けて冷媒を流通させる熱交換器側冷媒管路14Cと、熱交換器13で温度上昇した冷媒を冷媒用タンク12Bに向けて流通させる熱交換器側冷媒管路14Dとにより構成されている。
冷媒循環用ポンプ15は、チラーユニット12内に位置して熱交換器側冷媒管路14Cに設けられている。この冷媒循環用ポンプ15は、冷凍器12Aにより冷却された冷媒を冷凍器12Aと熱交換器13との間で循環させるためのものである。具体的には、チラーユニット12の冷媒用タンク12B内の冷媒は、冷媒循環用ポンプ15の駆動により、熱交換器側冷媒管路14Cを流通して熱交換器13内へと導入される。
この場合、冷媒循環用ポンプ15は、例えば可変容量型のポンプが用いられる。冷媒循環用ポンプ15は、後述の制御装置23に接続され、制御装置23からの制御信号により出力が制御される。即ち、熱交換器側冷媒管路14C,14Dを流通する冷媒の流量は、制御装置23が冷媒循環用ポンプ15の駆動を制御することにより変化する。制御装置23が行う冷媒の流量制御については、後述で説明する。
燃料温度センサ16は、熱交換器13よりも下流側に位置して供給管路3に設けられている。この燃料温度センサ16は、燃料タンク27に充填される水素ガスの温度を検出するもので、本発明の温度検出器を構成している。燃料温度センサ16は、供給管路3内を流れる水素ガスの温度を検出し、その検出信号を制御装置23へと出力する。
圧力センサ17は、燃料温度センサ16よりも下流側に位置して供給管路3に設けられている。この圧力センサ17は、燃料タンク27内またはこれにほぼ相当する供給管路3の水素ガスの圧力(即ち、充填ステーション1で充填されるガス圧力としてのステーション圧力)を検知するセンサである。ここで、圧力センサ17は、カップリング5の近傍で供給管路3内の圧力を測定し、測定した圧力に応じた検出信号を制御装置23へと出力する。
換言すると、圧力センサ17は、燃料タンク27内のガス圧力を検知または検出するために設けられたものであり、燃料タンク27内のガス圧力を直接検知するように燃料タンク27に配置することでもよいが、必ずしもそのように配置しなければならないものではない。即ち、燃料タンク27内のガス圧力の変動に応じて変動する供給管路3内の圧力を圧力センサ17で検出することにより、燃料タンク27内のガス圧力を監視することができ、よって、本実施の形態の圧力センサ17は供給管路3内の圧力を検出するようにしている。必要ならば、圧力センサ17による圧力検出(測定)値を基にして、燃料タンク27内の実際のガス圧力を計算するのに補正係数を使用してもよい。なお、圧力センサ17と燃料温度センサ16との供給管路3に設けられる位置は逆にしても良い。
操作部18は、充填開始スイッチ19と充填停止スイッチ20とを備えている。充填開始スイッチ19は、例えば作業員または運転手等が手動で操作可能な操作スイッチで、水素ガスの充填を開始する場合に操作される。一方、充填停止スイッチ20は、水素ガス充填中に水素ガスの充填を停止する場合に操作される。そして、充填開始スイッチ19と充填停止スイッチ20とは、操作状態に応じた信号を制御装置23にそれぞれ出力する。制御装置23は、これらの信号に応じて電磁弁または空圧駆動弁等の自動弁からなる遮断弁9を開または閉とする。
脱圧管路21は、遮断弁9と充填ホース4との間に位置(本実施形態では遮断弁9と熱交換器13との間に位置)して供給管路3の途中に分岐して設けられている。脱圧管路21は、例えばカップリング5側からガス圧力を脱圧するためのもので、脱圧管路21の途中には、例えば電磁弁または空圧駆動弁等の自動弁からなる脱圧弁22が設けられている。この脱圧弁22は、後述の如くカップリング5を用いた水素ガス充填作業が完了して遮断弁9が閉弁されたときに、制御装置23からの信号により開弁制御される。そして、脱圧弁22が開弁したときには、脱圧管路21が大気に開放されることにより、カップリング5側のガスが外部に放出されてカップリング5の圧力が大気圧に減圧される。
制御装置23は、車両26に供給する燃料タンク27への水素ガス充填を制御するものである。この制御装置23は、流量調整弁8および遮断弁9等の制御機器を制御する制御手段を構成している。制御装置23は、例えばタイマ機能と記憶部(図示せず)等とを備えたマイクロコンピュータ等として構成されている。制御装置23の前記記憶部には、例えば図2に示す処理フローを実行するための処理プログラム等が格納されている。また、制御装置23の前記記憶部には、水素ガス流量の閾値F1、気温の閾値T1、および水素ガス温度の閾値T2等が格納(記憶)されている。
制御装置23の入力側には、流量計10、燃料温度センサ16、圧力センサ17、充填開始スイッチ19、充填停止スイッチ20、気温センサ24、受信器25等が接続されている。気温センサ24は、充填ステーション1が設置された場所の気温(周囲温度)を測定するものである。また、受信器25は、車両26から無線通信により送信された燃料タンク27の状態(タンク容量、残容量、タンク内温度等)を受信するものである。
無線による通信の一例としては、燃料タンク27の充填口27Aに送信用のコネクタ(図示せず)を設けると共に、カップリング5の先端に受信用のコネクタ(図示せず)を設け、カップリング5を充填口27Aに接続することにより両コネクタが近接して通信可能となるようにすることが考えられる。なお、受信器25と車両26との通信は、無線通信に限られるものではなく、有線による通信を行うようにしてもよい。
制御装置23には、流量計10により計測された水素ガスの流量、燃料温度センサ16により検出された水素ガスの温度、圧力センサ17により検出された水素ガスの圧力、気温センサ24により検出された気温、受信器25が受信した燃料タンク27の状態が入力される。一方、制御装置23の出力側には、流量調整弁8、遮断弁9、チラーユニット12、表示器(図示せず)、および脱圧弁22等が接続されている。
そして、制御装置23は、図1中に二点鎖線で示す如く、車両26の燃料タンク27の充填口27Aにカップリング5を接続した状態で、例えば操作部18の充填開始スイッチ19が閉成(ON)操作されたときに、流量調整弁8と遮断弁9とに開弁信号を出力して流量調整弁8と遮断弁9とを開弁させる。これにより、貯蔵タンク100内の水素ガスを燃料タンク27に供給する充填作業が開始される。
制御装置23は、例えば流量計10、燃料温度センサ16、圧力センサ17の測定結果、および受信器25が受信した燃料タンク27の状態を監視しつつ、流量調整弁8の開度等を予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式または定流量制御方式)等で調整する。これにより、供給管路3内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。
また、制御装置23は、水素ガスの流量、気温、水素ガスの温度に基づいて、冷媒循環用ポンプ15を制御することにより、熱交換器側冷媒管路14C,14Dを流通する冷媒の流量を変化させる。具体的には、制御装置23は、水素ガスの流量が閾値F1よりも大きいときに、冷媒の流量を高くする。一方、制御装置23は、水素ガスの流量が閾値F1未満のときに、気温、水素ガスの温度に基づき冷媒の流量を低くする。これにより、冷媒循環用ポンプ15を駆動するときの消費電力を低減させることができ、コストを向上することができる。
制御装置23は、流量計10からの流量パルスを積算して燃料の充填量(質量)を演算し、燃料の充填量が予め設定された目標充填量に達するか、または圧力センサ17により検出したガスの圧力が予め設定された目標圧力(目標充填圧)に達したときに、遮断弁9を閉弁して燃料の充填を停止する。また、充填停止スイッチ20が操作された場合には、例えばガスの充填量や圧力が目標に達していなくても、充填動作を強制的に停止すべく遮断弁9が制御装置23からの信号により閉弁される。
水素ガスを燃料として走行する車両26は、一例として図1に示すような4輪自動車(乗用車)により構成されている。車両26には、例えば水素ガスを燃料として駆動力を発生する原動機としてのエンジンあるいは燃料電池と電動モータ等の駆動装置(図示せず)と、図1中に点線で示す燃料タンク27とが設けられている。この燃料タンク27は、水素ガスが充填される被充填タンクを構成し、例えば車両26の後部側に搭載されている。なお、燃料タンク27は、車両26の後部側に限らず、前部側または中央部側に設けてもよい。
燃料タンク27には、図1中に二点鎖線で示すように、カップリング5(即ち、充填ノズル)が着脱可能に取付けられる充填口27Aが設けられている。そして、車両26の燃料タンク27内には、カップリング5が充填口27Aに気密に連結(接続)された状態で水素ガスのガス充填が行われる。この間、カップリング5は、ロック機構(図示せず)により充填口27Aに対して不用意に外れることがないようにロックされている。
車両26には、燃料タンク27内の燃料(即ち、水素ガス)の温度を検知するために、タンク内ガス温度センサ28(温度センサ)が設けられている。タンク内ガス温度センサ28は、燃料タンク27内の水素ガスの温度を検出すると共に、その検出信号を無線通信等の送信器(図示せず)からディスペンサ2の受信器25に出力する。
本実施の形態による充填ステーション1は、上述の如き構成を有するもので、次に、制御装置23による車両26の燃料タンク27への水素ガスの充填制御処理について、図2を参照して説明する。なお、この制御処理は、充填ステーション1が起動している間に所定周期毎に繰り返し実行される。また、図2に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ1を「S1」として示すものとする。
まず、処理動作がスタートすると、制御装置23は、S1で充填開始操作を検出する。この充填開始操作の検出は、作業員または運転手等によってカップリング5が車両26の燃料タンク27の充填口27Aに図1中に二点鎖線で示す如く接続された状態で、操作部18の充填開始スイッチ19が閉成(ON)操作されたときとすることができる。
そして、制御装置23は、冷媒循環用ポンプ15を最大出力で駆動させる。従って、熱交換器側冷媒管路14C,14Dを流れる冷媒の流量は最大値(最大流量)から開始される。また、制御装置23は、流量調整弁8と遮断弁9とを開弁状態とする。この場合、制御装置23は、流量調整弁8の開度を例えば制御装置23の受信器25が受信した車両26の燃料タンク27の容量および/または残容量により調整する。これにより、貯蔵タンク100内の水素ガスは、車両26の燃料タンク27に向けて供給管路3内を流通する。
次のS2では、水素ガス流量、気温、水素ガス温度の読込みを行う。水素ガス流量は、供給管路3に設けられた流量計10により計測される。気温は、制御装置23に設けられた気温センサ24により検出される。水素ガスの温度は、燃料温度センサ16により検出される。流量計10、気温センサ24、燃料温度センサ16によりそれぞれ検出された値は、制御装置23の記憶部に随時記憶(更新)される。
次のS3では、水素ガス流量が閾値F1未満となっているか否か(水素ガス流量<F1)を判定する。即ち、流量計10により計測される水素ガスの流量が所定流量(閾値F1)よりも低いか否かを判定する。ここで、水素ガス流量の閾値F1は、例えば熱交換器13内を流通する冷媒との熱交換の効率に対応したものとして、実験的に求められた値に設定される。即ち、供給管路3内を流通する水素ガスの流量が低い場合には、熱交換器13内を流通する冷媒の流量を低くしても十分に熱交換を行うことができるものとして、冷媒の流量に対応した水素ガス流量の閾値F1が設定される。
そして、S3で「YES」、即ち水素ガス流量が閾値F1未満であると判定された場合には、S4に進む。一方、S3で「NO」、即ち水素ガスの流量が閾値F1以上であると判定された場合には、S5に進み、冷媒流量「大」に決定して次のS10に進む。
S4では、気温が閾値T1未満であるか否か(気温<T1)を判定する。ここで、気温の閾値T1は、例えば熱交換器13で冷却された水素ガスが車両26の燃料タンク27に供給(充填)されるまでに、過度に昇温する虞がある値として設定されている。そして、S4で「YES」、即ち気温が閾値T1未満であると判定された場合には、S6に進む。一方、S4で「NO」、即ち気温が閾値T1以上であると判定された場合には、S7に進む。
S6では、水素ガス温度が閾値T2未満であるか否か(水素ガス温度<T2)を判定する。即ち、燃料温度センサ16により検出された水素ガスの温度が所定温度(閾値T2)よりも低いか否かを判定する。この場合、水素ガス温度の上限値は、水素ガス充填中に燃料タンク27内のガス温度が過度に上昇するのを抑制するために、例えば−33℃以下に設定されている。また、水素ガス温度の下限値は、供給管路3や熱交換器13の水素脆化を抑制するために、例えば−40℃以上に設定されている。
従って、水素ガス温度の閾値T2は、例えば規定温度(−33℃〜−40℃)内の任意の値に設定されている(−33℃≧T2≧−40℃)。この場合、水素ガス温度は、冷媒の温度以下となることはないので、例えば冷媒の温度を−40℃としている。従って、水素ガス温度の閾値T2は、水素ガスの温度が上限値(−33℃)以上とならないように、冷媒の流量に対応して実験的に求められた値に設定される。
そして、S6で「YES」、即ち水素ガス温度が閾値T2未満であると判定された場合には、S8に進み、冷媒流量「小」に決定して次のS10に進む。一方、S6で「NO」、即ち水素ガス温度が閾値T2以上であると判定された場合には、S9に進み、冷媒流量「中」に決定して次のS10に進む。
S7では、S6と同様に水素ガス温度が閾値T2未満であるか否かを判定する。即ち、S4での判定に拘わらず、次のS6およびS7では水素ガス温度が閾値T2未満であるか否かを判定する。そして、S7で「YES」、即ち水素ガス温度が閾値T2未満であると判定された場合には、S9に進み、冷媒流量「中」に決定して次のS10に進む。一方、S7で「NO」、即ち水素ガス温度が閾値T2以上であると判定された場合には、S5に進み、冷媒流量「大」に決定して次のS10に進む。
S10では、ガス供給制御を行う。即ち、制御装置23は、流量調整弁8と遮断弁9との開弁状態を維持すると共に、流量計10からの流量パルスを積算して水素ガスの充填量(質量)を演算する。これにより、貯蔵タンク100から車両26の燃料タンク27に払い出されたガスの充填量(質量)を計量することができる。また、制御装置23は、S5、S8、S9で決定された冷媒流量に基づき、冷媒循環用ポンプ15の駆動を制御する。これにより、常に冷媒の流量を一定として冷媒循環用ポンプ15を駆動している場合と比較して消費電力を低減させることができる。
次のS11では、ガス充填終了か否かを判定する。即ち、作業員等により充填停止スイッチ20が操作された場合または圧力センサ17により車両26の燃料タンク27が所定圧力値(最大圧力値)に到達して、燃料タンク27内の水素ガスが満充填された場合か否かを判定する。そして、S11で「YES」、即ち水素ガスの充填が終了したと判定された場合には、S12に進む。一方、S11で「NO」、即ち水素ガスの充填が終了していないと判定された場合には、S2に戻る。
S12では、ガス供給制御を行う。即ち、制御装置23は、流量調整弁8と遮断弁9とを閉弁状態とする。そして、制御装置23からの信号により脱圧弁22が、閉弁状態から開弁制御される。そして、脱圧弁22が開弁したときには、脱圧管路21が大気に開放されることにより、カップリング5側の水素ガスが外部に放出されてカップリング5の圧力が大気圧に減圧される。このような状態で、充填ステーション1は、次なる充填作業に備えて待機状態となる。
第1の実施の形態による冷媒循環量の制御をまとめると、供給管路3内を流通する水素ガスの流量が多いときには、気温、水素ガス温度に拘わらず、熱交換器側冷媒管路14C,14Dに流通する冷媒流量を「大」にする。一方、供給管路3内を流通する水素ガスの流量が少ないときには、気温と水素ガス温度とに基づき熱交換器側冷媒管路14C,14Dに流通する冷媒流量を調整する。具体的には、気温が高く、かつ水素ガス温度が高いときには、冷媒流量を「大」にする。一方、気温が高く、かつ水素ガス温度が低いときには、冷媒流量を「中」にする。また、気温が低く、かつ水素ガス温度が高いときには、冷媒流量を「中」にする。一方、気温が低く、かつ水素ガス温度が低いときには、冷媒流量を「小」にする。
なお、制御装置23は、待機状態時に冷媒循環用ポンプ15の出力(回転数または吐出流量)を下げてもよい。即ち、流量計10において水素ガスの流量が検出されていない場合(非充填時)には、流量計10において水素ガスの流量が検出されている場合(充填時)よりも冷媒循環用ポンプ15による熱交換器側冷媒管路14C,14Dを流れる冷媒流量を小さくしてもよい。これにより、待機状態時における冷媒循環用ポンプ15の消費電力を低減させることができるので、コストを向上することができる。
この場合、制御装置23は、例えば所定時間毎に冷媒循環用ポンプ15の出力を上げたり、受信器25が水素ガスを燃料とする車両が接近しているのを受信したときに冷媒循環用ポンプ15の出力を上げたりしてもよい。これにより、次の車両の水素ガス充填を行うときに、熱交換器13の準備時間を短縮することができるので、効率よく複数の車両に水素ガス充填を行うことができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、制御装置23は、水素ガスの流量と水素ガスの温度とに基づき、冷媒循環用ポンプ15の駆動を制御して熱交換器13内を流通する冷媒の流量を調整している。即ち、制御装置23は、水素ガスの流量が所定流量(閾値F1)よりも低い場合に、冷媒循環用ポンプ15により冷媒の循環流量を低くしている。また、制御装置23は、水素ガスの温度が所定温度(閾値T2)よりも低い場合に、冷媒循環用ポンプ15により冷媒の循環流量を低くしている。これにより、冷媒循環用ポンプ15を駆動するときの消費電力を低減させることができ、エネルギー効率を向上することができる。
次に、図3は、本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、第1の実施の形態による気温の判定(気温<T1)を省略したことにある。また、冷媒の流量を段階的(3段階)ではなく、連続的に増加または減少させる構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
また、第2の実施の形態では、制御装置23の記憶部に、図3に示す処理フローを実行するための処理プログラム等が格納されている。さらに、制御装置23の記憶部には、水素ガス流量の閾値F2および水素ガス温度の閾値T3等が格納(記憶)されている。
以下、制御装置23による燃料タンク27への水素ガスの充填制御処理について、図3を参照して説明する。なお、この制御処理は、充填ステーション1が起動している間に所定周期毎に繰り返し実行される。また、図3に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ21を「S21」として示すものとする。
図3の処理動作がスタートすると、制御装置23は、S21で充填開始操作を検出する。この充填開始操作は、上述した図2のS1と同様に行われる。次のS22では、水素ガス流量、水素ガス温度の読込を行う。水素ガス流量は、供給管路3に設けられた流量計10により計測される。水素ガスの温度は、燃料温度センサ16により検出される。流量計10、燃料温度センサ16によりそれぞれ検出された値は、制御装置23の記憶部に随時記憶(更新)される。
次のS23では、水素ガス流量が閾値F2未満となっているか否か(水素ガス流量<F2)を判定する。即ち、流量計10により計測される水素ガスの流量が所定流量(閾値F2)よりも低いか否かを判定する。ここで、水素ガス流量の閾値F2は、例えば熱交換器13内を流通する冷媒との熱交換の効率に対応したものとして、実験的に求められた値に設定される。そして、S23で「YES」、即ち水素ガス流量が閾値F2未満であると判定された場合には、S24に進む。一方、S23で「NO」、即ち水素ガスの流量が閾値F2以上であると判定された場合には、S25に進む。
S24では、水素ガス温度が閾値T3未満であるか否か(水素ガス温度<T3)を判定する。即ち、燃料温度センサ16により検出されている水素ガスの温度が所定温度(閾値T3)よりも低いか否かを判定する。この場合、水素ガス温度の閾値T3は、水素ガスの温度が上限値(−33℃)以上とならないように、充填ステーション1が設置される場所、気温等を考慮して実験的に求められた値に設定される。即ち、充填ステーション1が設置される場所の季節毎の気温等が水素ガスの温度に与える影響を考慮して、例えば夏場に閾値T3を低い値に設定したり、冬場に閾値T3を高い値に設定したりすることができる。
そして、S24で「YES」、即ち水素ガス温度が閾値T3未満であると判定された場合には、S26に進み、冷媒流量を「減少」に決定してS29に進む。一方、S24で「NO」、即ち水素ガス温度が閾値T3以上であると判定された場合には、S25に進む。
S25では、冷媒流量が最大か否かを判定する。即ち、冷媒循環用ポンプ15の出力(回転数または吐出流量)が最大で、熱交換器側冷媒管路14C,14Dを流れる冷媒の流量、即ち熱交換器13内に流れる冷媒が最大流量であるか否かを判定する。そして、S25で「YES」、即ち冷媒流量が最大であると判定された場合には、S27に進み冷媒流量を「維持」(最大流量維持)に決定して、S29に進む。一方、S25で「NO」、即ち冷媒流量が最大でないと判定された場合には、S28に進み冷媒流量を「増加」に決定して、S29に進む。
S29では、ガス供給制御を行う。即ち、制御装置23は、流量調整弁8と遮断弁9との開弁状態を維持すると共に、流量計10からの流量パルスを積算して水素ガスの充填量(質量)を演算する。これにより、貯蔵タンク100から車両26の燃料タンク27に払い出されたガスの充填量(質量)を計量することができる。
また、制御装置23は、S26、S27、S28で決定された冷媒流量に基づき、冷媒循環用ポンプ15の駆動を制御する。具体的には、S26を介してS29に到達した場合には、熱交換器側冷媒管路14C,14Dを流通する冷媒流量を設定された下限値(最小流量)まで徐々に下げる。また、S27を介してS29に到達した場合には、熱交換器側冷媒管路14C,14Dを流通する冷媒流量が上限値(最大流量)であるのでその状態を維持する。一方、S28を介してS29に到達した場合には、熱交換器側冷媒管路14C,14Dを流通する冷媒流量を設定された上限値(最大流量)まで徐々に上げる。これにより、常に冷媒の流量を一定として冷媒循環用ポンプ15を駆動している場合と比較して消費電力を低減させることができる。
次のS30では、ガス充填終了か否かを判定する。この判定は、上述した図2のS11と同様に行われる。そして、S30で「YES」、即ちS30で「YES」、即ち水素ガスの充填が終了したと判定された場合には、S31に進む。一方、S30で「NO」、即ち水素ガスの充填が終了していないと判定された場合には、S22に戻る。
S31では、ガス供給制御を行う。即ち、制御装置23は、流量調整弁8と遮断弁9とを閉弁状態とする。そして、制御装置23からの信号により脱圧弁22が、閉弁状態から開弁制御される。そして、脱圧弁22が開弁したときには、脱圧管路21が大気に開放されることにより、カップリング5側の水素ガスが外部に放出されてカップリング5の圧力が大気圧に減圧される。このような状態で、充填ステーション1は、次なる充填作業に備えて待機状態となる。なお、待機状態時には、上述した第1の実施の形態と同様に、冷媒循環用ポンプ15の制御を行ってもよい。
第2の実施の形態による冷媒循環量の制御をまとめると、供給管路3内を流通する水素ガスの流量が多いときには、水素ガス温度に拘わらず、熱交換器側冷媒管路14C,14Dに流通する冷媒流量を上限値に向けて徐々に増加させる。また、供給管路3内を流通する水素ガスの流量が少なく、かつ水素ガス温度が高いときには、冷媒流量を上限値に向けて徐々に増加させる。一方、供給管路3内を流通する水素ガスの流量が少なく、かつ水素ガス温度が低いときには、冷媒流量を下限値に向けて徐々に減少させる。
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、貯蔵タンク100から車両26の燃料タンク27に水素ガスを充填するときに、制御装置23は、供給管路3内を流通する水素ガスの流量と水素ガスの温度とに基づき、冷媒循環用ポンプ15の駆動を制御して熱交換器13内を流通する冷媒の流量を調整している。これにより、冷媒循環用ポンプ15を駆動するときの消費電力を低減させることができ、エネルギー効率を向上することができる。
なお、上述した第1の実施の形態では、S11で水素ガスの充填が終了していない場合には、S2に戻り再度冷媒流量を決定する制御を行う場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばS11の判定を省略してもよい。即ち、一度冷媒流量が決定されたら、水素ガスの充填が終了するまでその決定された冷媒流量を維持する構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態のS30の判定についても同様である。
また、上述した第1の実施の形態では、冷媒流量を3段階に設定した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば冷媒流量を2段階または4段階以上に設定してもよい。
また、上述した第1の実施の形態では、水素ガス流量の閾値、気温の閾値、水素ガスの閾値をそれぞれ1個に設定した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばそれぞれの閾値を複数個に設定してもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
また、上述した第1の実施の形態では、ディスペンサ2内に設けられた制御装置23により、冷媒循環用ポンプ15の駆動を制御した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばチラーユニット12に設けられた図示しない制御装置または別に設けられた制御装置で冷媒循環用ポンプ15の駆動を制御してもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
また、上述した第1の実施の形態では、水素ガスの温度をディスペンサ2に設けられた燃料温度センサ16により検出した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば車両26に設けられたタンク内ガス温度センサ28を用いて燃料タンク27に供給される水素ガスの温度を検出してもよい。この場合、水素ガスの温度は、ディスペンサ2に設けられた受信器25で受信することができる。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
また、上述した第1の実施の形態では、冷媒循環用ポンプ15をチラーユニット12内に配設した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば冷媒循環用ポンプ15をディスペンサ2内に位置して熱交換器側冷媒管路14C,14Dに設けてもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
また、上述した第1の実施の形態では、充填される水素ガスを熱交換器13によって、規定温度(例えば、−33℃〜−40℃)に冷却する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば水素ガスの冷却温度は、適宜設定することができる。このことは、第2の実施の形態についても同様である。