JP2016216736A - 熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物及び塗膜形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラスチック成形品のトップクリアーコート用途として好適な塗料組成物であって、外観、耐薬品性、耐傷つき性、リコート性、耐環境性に優れると共に、保護膜形成時の硬化性及びプラスチック成形品への密着性に優れる熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物及び塗膜形成方法を提供する。
【解決手段】熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物は、(a)特定のアクリルポリオール樹脂、(b)特定の多官能光硬化性化合物、(c)特定の光重合開始剤、及び(d)ポリイソシアネート化合物を含み(ただし、マレイミド化合物及びマレイミド基含有共重合体を含まない。)、前記アクリルポリオール樹脂と多官能光硬化性化合物の質量比が5/95〜90/10、前記アクリルポリオール樹脂に含まれる水酸基とポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が0.5〜1.5であることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物は、(a)特定のアクリルポリオール樹脂、(b)特定の多官能光硬化性化合物、(c)特定の光重合開始剤、及び(d)ポリイソシアネート化合物を含み(ただし、マレイミド化合物及びマレイミド基含有共重合体を含まない。)、前記アクリルポリオール樹脂と多官能光硬化性化合物の質量比が5/95〜90/10、前記アクリルポリオール樹脂に含まれる水酸基とポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が0.5〜1.5であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、熱及び光で硬化可能なプラスチック成形品用塗料組成物及びそれを用いた塗膜形成方法に関する。詳細には、プラスチック成形品、めっき、蒸着、塗装により形成されたコート層を有するプラスチック成形品等の表面の保護もしくは美観付与を目的とした熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物、該塗料組成物を用いる塗膜の形成方法に関する。
自動車用部品等においては、複雑な三次元的な表面を有するプラスチック成形品の表面を加飾するために水圧転写法が用いられている。水圧転写法は、水溶性フィルムの上に非水溶性の印刷パターン層を有する水圧転写フィルムを、転写槽内の水面上に浮かばせ、水溶性フィルムを水で湿潤させた上で、成形品を印刷パターン層に接触させながら転写槽内の水中に押入れ、この際に成形品(転写基材)の表面に対して発生する水圧を利用して、印刷パターン層を成形品の表面に転写して装飾層を形成する方法である。一般的には、水圧転写フィルムは、水溶性フィルム上に印刷パターンが印刷された印刷パターン層が乾燥されてロール状に巻いて保管されているため、印刷パターン層のインクは付着性を失った乾燥状態にある。そのため、水圧転写前に、水圧転写フィルム上の印刷パターン層に活性剤やシンナー等の溶剤を塗布して、印刷パターン層を印刷直後と同様の湿潤状態にする必要がある。この処理は、通常活性化処理と称されている。かかる水圧転写法によって成形品の表面に形成された装飾層は、耐傷つき性、耐薬品性、耐環境性等に劣るので、装飾層上に保護膜を形成し、機械的、化学的に表面を保護することが必要となる。また、保護膜は、装飾層並びに成形品の表面の両者に高い強度で接着して剥離することがないことが要求される。
また、自動車の車体、自動車用あるいは家電製品用のプラスチック部品において、表面の保護もしくは美観付与を目的として塗膜を形成する場合、紫外線硬化型塗料あるいは2液反応型ウレタン塗料が用いられている。しかし、紫外線硬化型塗料は、塗膜が非常に硬く、該塗膜上にさらに塗布した塗料の膜(塗布層)が硬化する際の硬化収縮に追従できないため、該塗膜と塗布層が硬化することによって形成される塗膜(リコート塗膜)とが剥離してしまう課題があった。2液反応型ウレタン塗料は、塗料の乾燥工程に時間を要するため、成膜した後、短時間で梱包できない(即ち「梱包性」が悪い)ことより、生産性が低く、生産コスト面で課題がある。また、外観の良い高光沢塗料組成に調製した場合は、塗膜の耐傷つき性が劣るという課題があった。なお、梱包性は、塗料組成物を硬化させて塗膜にした時点から、短時間のうちに梱包材で梱包し、輸送できる性質をいう。梱包性が良い場合、塗布層に加熱や紫外線照射の硬化処理をして塗膜にした時点から短時間で塗膜が十分に硬化するため、塗膜が形成された物品を梱包材で梱包して輸送を行っても、塗膜表面に梱包材の跡が付く、梱包材から染み出した薬品等(例えば、添加剤)が塗膜に移行する、輸送中に傷が付く等の不具合が生じることがない。
上記のように、表面の保護もしくは美観付与の目的で用いられる塗料は、品質面と生産面の双方に優れていることが求められる。これらの課題に対して、ポリイソシアネート化合物を硬化剤に用いてポリオール化合物を加熱反応させ、かつ、光硬化性オリゴマーを紫外線硬化反応させることで、短時間で硬化させる塗料(デュアルキュア塗料)が提案されている(例えば、特許文献1〜2を参照)。
特許文献1に提案されている塗料は木工製品の表面加工用である。この塗料組成物は、硬度、付着性、耐寒熱繰り返し性に優れる塗膜を得るために、反応性水酸基と光反応性アクリロイル基を有するエポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステルと、柔軟性のあるアクリルポリオール(ガラス転移温度30〜70℃、数平均分子量(Mn)1,000〜15,000)とをバランス良く混合し、さらに塗膜の硬化性を高めるために、光重合性モノマーを混合し、得られたモノマー混合物に、光重合開始剤とポリイソシアネート化合物を配合したものである。しかし、本物の木のような精緻な意匠性を有する水圧転写品の装飾層上に形成する保護膜として用いた場合には、耐オレイン酸性、耐乳酸性、耐日焼け止めクリーム性等の耐薬品性が劣るため、適用できなかった。
特許文献2に提案されている塗料は、トップコート層用である。この塗料組成物は、耐水性、耐候性、硬化性に優れる塗膜を得るために、水酸基含有樹脂、不飽和結合を有する紫外線硬化性化合物、ポリイソシアネート化合物を配合したものである。この塗料組成物は、トップコート層に紫外線硬化性化合物による架橋鎖が形成された後でも、ポリイソシアネート化合物のベースコート層への浸透を阻害することがないよう、水酸基含有樹脂のガラス転移温度が−20〜50℃に調整されている。しかし、硬化塗膜については、特許文献1に開示された塗膜と同様、塗膜の耐オレイン酸性、耐乳酸性、耐日焼け止めクリーム性等の耐薬品性、梱包性が劣るという点で改良の余地があった。
従って、上記従来の塗料は、品質及び生産性の両立が求められる自動車や家電製品の部品、とりわけ水圧転写法で形成された装飾層を有する物品の表面に保護膜を形成するための塗料として用いた場合には、人間の皮脂や汗に対する耐性(耐薬品性)が十分検討されていないために、特に梱包性と耐薬品性が両立する塗料が得られていないのが実情である。また、水圧転写法で形成された装飾層は、転写基材との密着性に乏しいため、装飾層と転写基材との高い密着性も要求されるとともに、光沢感などの外観や耐傷つき性、耐環境性(耐水性、耐湿性)などの諸特性も同時に満足することが要求されている。
本発明の課題は、自動車・家電製品用プラスチック成形品のトップクリアーコート用途として好適な塗料組成物であって、外観(光沢性、平滑性、肉持ち感等)、耐薬品性、耐傷つき性、リコート性、耐環境性(耐水性、耐湿性)に優れると共に、保護膜形成時の硬化性及びプラスチック成形品への密着性に優れる熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物、並びに、該塗料組成物を用いる塗膜形成方法を提供することにある。
本発明者等は前記課題を解決するために研究を行った。その結果、特定のアクリルポリオール樹脂、多官能光硬化性化合物及びポリイソシアネート化合物を、特定の割合で含む塗料組成物は、アクリルポリオール樹脂とポリイソシアネート化合物のウレタン結合形成反応、及び光硬化性化合物の光重合開始剤によるラジカル重合反応、という2つの硬化系を併有する。そして、当該塗料組成物を、水圧転写フィルムの印刷パターン層を成形品の表面に水圧転写して形成された水圧転写印刷層(以下、「装飾層」と称することもある。)の上に塗布し、加熱及び紫外線照射により硬化させた保護膜は、塗布後の乾燥が速く硬化性に優れている。すなわち、「梱包性」が良い。;装飾層の意匠性を損なうことなく外観(光沢性等)に優れた保護層を形成できる;該保護層は耐薬品性に優れている;該保護層はリコート性に優れている;該保護層は耐傷つき性に優れている;該保護層は耐環境性(耐水性、耐湿性);さらには装飾層への密着性も優れている;という知見を得た。加えて、プラスチック成形品及びコート層を有するプラスチック成形品に塗布した際にも、同様の効果が発現されるという知見を得た。本発明はこれらの知見に基づき完成されたものである。
なお、上記の耐薬品性は、人間の皮脂や汗に対する耐性のことであり、本願明細書では具体的には「耐オレイン酸性」、「耐乳酸性」、「耐日焼け止めクリーム性」を指す。以下、「耐薬品性」というときは、この3つの性能を表す。
したがって、本発明は、(a)アクリルポリオール樹脂、(b)多官能光硬化性化合物、(c)光重合開始剤、及び(d)ポリイソシアネート化合物を含み(ただし、マレイミド化合物及びマレイミド基含有共重合体を含まない。)、
前記(a)アクリルポリオール樹脂は、1分子中に1個以上の水酸基と重合性不飽和結合を有する水酸基含有アクリルモノマー(a1)と、アクリル系及びスチレン系から選択される1種又は2種以上の水酸基を含有しない重合性不飽和結合を有するモノマー(a2)との共重合体であり、かつ、ガラス転移温度(Tg)が50℃〜100℃で、ポリスチレン換算での質量平均分子量が1,000〜20,000で、水酸基価が20〜200mgKOH/gであり、
前記(b)多官能光硬化性化合物は、1分子中に重合性不飽和結合を4個以上有する多官能(メタ)アクリレートまたは3官能以上のポリエステルアクリレートもしくは6官能以上のウレタンアクリレートであり、
前記(a)アクリルポリオール樹脂と前記(b)多官能光硬化性化合物の配合割合が、質量比で(a)/(b)=5/95〜90/10であり、
前記(c)光重合開始剤は、380nmよりも短波長側に最大吸収波長を有する短波長開始剤(c1)と、380nm以上の長波長側に最大吸収波長を有する長波長開始剤(c2)との少なくとも2種を含み、
前記(a)アクリルポリオール樹脂に含まれる水酸基(−OH)と、前記(d)ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基(−NCO)の当量比(NCO/OH)が0.5〜1.5になるように配合してなることを特徴とする熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物を提供する。
前記(a)アクリルポリオール樹脂は、1分子中に1個以上の水酸基と重合性不飽和結合を有する水酸基含有アクリルモノマー(a1)と、アクリル系及びスチレン系から選択される1種又は2種以上の水酸基を含有しない重合性不飽和結合を有するモノマー(a2)との共重合体であり、かつ、ガラス転移温度(Tg)が50℃〜100℃で、ポリスチレン換算での質量平均分子量が1,000〜20,000で、水酸基価が20〜200mgKOH/gであり、
前記(b)多官能光硬化性化合物は、1分子中に重合性不飽和結合を4個以上有する多官能(メタ)アクリレートまたは3官能以上のポリエステルアクリレートもしくは6官能以上のウレタンアクリレートであり、
前記(a)アクリルポリオール樹脂と前記(b)多官能光硬化性化合物の配合割合が、質量比で(a)/(b)=5/95〜90/10であり、
前記(c)光重合開始剤は、380nmよりも短波長側に最大吸収波長を有する短波長開始剤(c1)と、380nm以上の長波長側に最大吸収波長を有する長波長開始剤(c2)との少なくとも2種を含み、
前記(a)アクリルポリオール樹脂に含まれる水酸基(−OH)と、前記(d)ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基(−NCO)の当量比(NCO/OH)が0.5〜1.5になるように配合してなることを特徴とする熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物を提供する。
また、本発明は、(i)プラスチック成形品の表面、あるいは(ii)該プラスチック成形品の表面にめっき、蒸着もしくは塗装による表面処理が施されて形成されたコート層を有するプラスチック成形品の表面に、本発明の熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物を塗布して塗布層を形成し、前記塗布層を加熱乾燥し、該加熱乾燥された膜を紫外線照射によって硬化させた後、さらに加熱硬化させることを含んでなる塗膜形成方法を提供する。
さらに、本発明は、本発明の塗膜形成方法によって得られる物品を提供する。
本発明の熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物により形成される塗膜は、物品の表面に高い密着性を有し、外観(光沢性等)、耐傷つき性、耐環境性(耐水性、耐湿性)及び耐薬品性に優れており、プラスチック成形品の表面もしくはその表面に形成された層上への密着性、外観(光沢性等)、耐傷つき性、及び耐薬品性に優れており、特に厳しい品質が要求される自動車や家電製品のトップクリアーコートとして適しているものである。
加えて、本発明の熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物は、リコート性が優れている。また、塗膜形成時の硬化性が高いことにより、成膜後短時間で梱包することが可能(すなわち、梱包性が良い)であり、生産工程の短縮に貢献するものである。
本発明の塗膜形成方法によれば、保護膜形成時の硬化性が高く、成膜後に短時間で梱包することが可能なため、自動車用や家電製品用の部品の生産効率が画期的に向上する。
加えて、本発明の熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物は、リコート性が優れている。また、塗膜形成時の硬化性が高いことにより、成膜後短時間で梱包することが可能(すなわち、梱包性が良い)であり、生産工程の短縮に貢献するものである。
本発明の塗膜形成方法によれば、保護膜形成時の硬化性が高く、成膜後に短時間で梱包することが可能なため、自動車用や家電製品用の部品の生産効率が画期的に向上する。
本発明の熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物(以下、「塗料組成物」と略称する。)は、特定の(a)アクリルポリオール樹脂、(b)多官能光硬化性化合物、(c)光重合開始剤、及び(d)ポリイソシアネート化合物を所定の割合で配合してなる組成物である。この塗料組成物は、それを塗布することで形成された塗布層を、熱及び光で硬化させることによって保護膜が形成される。
前記塗料組成物は、プラスチック成形品、又は、めっき、蒸着、塗装により形成されたコート層を有するプラスチック成形品の表面を保護するために用いられる。
はじめに、本発明の塗料組成物の詳細について説明する。
前記塗料組成物は、プラスチック成形品、又は、めっき、蒸着、塗装により形成されたコート層を有するプラスチック成形品の表面を保護するために用いられる。
はじめに、本発明の塗料組成物の詳細について説明する。
(アクリルポリオール樹脂)
本発明の塗料組成物で用いる(a)アクリルポリオール樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50〜100℃の範囲であり、より好ましくは55〜90℃、特に好ましくは55〜80℃の範囲である。ガラス転移温度が50℃以上であれば、保護膜に所望の硬度や耐傷つき性を付与することができ、一方、ガラス転移温度が100℃を超えると、保護膜の光沢感、平滑性、肉持ち感が低下し、高外観性が損なわれる傾向となる。なお、肉持ち感とは、塗膜の厚みがふっくらと肉付き良く、いかにも厚い膜であるかのように見えるさまをいう。
アクリルポリオール樹脂のガラス転移温度(Tg)は、多種類のモノマーから構成される共重合体の場合は、以下の式により求められる。
本発明の塗料組成物で用いる(a)アクリルポリオール樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50〜100℃の範囲であり、より好ましくは55〜90℃、特に好ましくは55〜80℃の範囲である。ガラス転移温度が50℃以上であれば、保護膜に所望の硬度や耐傷つき性を付与することができ、一方、ガラス転移温度が100℃を超えると、保護膜の光沢感、平滑性、肉持ち感が低下し、高外観性が損なわれる傾向となる。なお、肉持ち感とは、塗膜の厚みがふっくらと肉付き良く、いかにも厚い膜であるかのように見えるさまをいう。
アクリルポリオール樹脂のガラス転移温度(Tg)は、多種類のモノマーから構成される共重合体の場合は、以下の式により求められる。
(a)アクリルポリオール樹脂の質量平均分子量(Mw)は、1,000〜20,000の範囲であり、より好ましくは4,000〜10,000、特に好ましくは4,000〜8,000の範囲である。質量平均分子量が1,000以上であれば、保護膜の耐薬品性が良好となり、本発明の目的を達成することができるが、1,000未満になると保護膜の耐薬品が劣るので好ましくない。また、質量平均分子量が20,000以下であれば、塗布層が硬化する際の硬化収縮が小さいので、保護膜の光沢や平滑性を損なわずに、意匠性に優れる保護膜を形成することができる。なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定して、標準ポリスチレン換算した値である。
(a)アクリルポリオール樹脂の水酸基価は、20〜200mg−KOH/gの範囲であり、より好ましくは20〜150mg−KOH/g、さらに好ましくは50〜110mg−KOH/gの範囲である。水酸基価が20mg−KOH/g以上であれば、後記のポリイソシアネート化合物との反応による架橋が生じることで、耐摩耗性等に優れる保護膜を形成することができる。また、水酸基価が200mg−KOH/g以下であれば、架橋の度合いが過大とならずに、プラスチック成形品表面との密着性に優れる保護膜を形成することができる。保護膜の品質(耐摩耗性、耐溶剤性、外観等)と生産性(梱包性等)のバランスを考慮すると、特に好ましい水酸基価は50〜80mg−KOH/gである。なお、水酸基価は、JIS K1557−1準拠で測定した値である。
水酸基価は、試料中の水酸基(−OH)をアセチル化して、アセチル化に要した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量を、試料1.0gに対するmg数で表わしたもので、試料中の水酸基の含有量を示す尺度である。アセチル化には、各種の試薬が用いられるが、通常、ピリジンと無水酢酸(3:1)が用いられ、アセチル化前後の酸濃度の差を滴定することによって測定される。
水酸基価は、試料中の水酸基(−OH)をアセチル化して、アセチル化に要した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量を、試料1.0gに対するmg数で表わしたもので、試料中の水酸基の含有量を示す尺度である。アセチル化には、各種の試薬が用いられるが、通常、ピリジンと無水酢酸(3:1)が用いられ、アセチル化前後の酸濃度の差を滴定することによって測定される。
上記の好ましいガラス転移温度の条件を満足するアクリルポリオール樹脂は、1分子中に1個以上の水酸基と重合性不飽和結合を有する水酸基含有アクリルモノマー(a1)と、他のモノマー(a2)とを共重合させることによって得ることができる。
水酸基含有アクリルモノマー(a1)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の炭素数2〜4のグリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物;ラクトン変性のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレン変性のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン変性のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン変性のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
水酸基含有アクリルモノマー(a1)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の炭素数2〜4のグリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物;ラクトン変性のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレン変性のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン変性のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン変性のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
他のモノマー(a2)としては、アクリル系及びスチレン系から選択される水酸基を含有しない重合性不飽和結合を有するモノマーが好ましい。これらのモノマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用される。
アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜22(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8)のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸の炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜4)のアルコキシアルキルエステル、アミノ(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基含有モノマー等が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜22(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8)のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸の炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜4)のアルコキシアルキルエステル、アミノ(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基含有モノマー等が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
上記の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜22のアルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステルとしては、例えば、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステルとしては、例えば、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アクリルポリオール樹脂は、公知の重合法によって製造でき、生産効率の点から、溶液重合法が好ましい。溶液重合法としては、モノマー成分を有機溶媒に溶解し、攪拌しながら、重合開始剤の存在下に窒素雰囲気下で60〜180℃の温度で加熱する方法が挙げられる。重合時間は、通常、1〜10時間である。有機溶媒としては、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。重合開始剤としては、過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。重合したアクリルポリオール樹脂は、pHが6〜8の範囲に調整しておくことが、塗料組成物のポットライフの観点より好ましい。pH調整剤としてはアミン化合物が好ましい。なお、ポットライフとは、「幾つかの成分に分けて供給される塗料を混合した後、使用できる最長の時間」をいう。ポットライフを経過すると、ゲル化が進行し、塗装ができない、又は塗装が出来ても形成された塗膜が性能を発揮できない等の不具合が生じる。
(多官能光硬化性化合物)
本発明で用いる(b)多官能光硬化性化合物は、1分子中に重合性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。多官能光硬化性化合物としては、光硬化性モノマー(b1)あるいは光硬化性オリゴマー(b2)が挙げられる。このような多官能光硬化性化合物を用いることにより、本発明の特徴である保護膜の外観、耐薬品性や耐傷付き性、梱包性を向上させる効果がある。
本発明で用いる(b)多官能光硬化性化合物は、1分子中に重合性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。多官能光硬化性化合物としては、光硬化性モノマー(b1)あるいは光硬化性オリゴマー(b2)が挙げられる。このような多官能光硬化性化合物を用いることにより、本発明の特徴である保護膜の外観、耐薬品性や耐傷付き性、梱包性を向上させる効果がある。
上記の光硬化性モノマー(b1)としては、紫外線の照射により重合する重合性不飽和結合を1分子中に4個以上有する、4官能以上のラジカル重合性不飽和モノマーを用いることが好ましい。ラジカル重合性不飽和モノマーに含まれる重合性不飽和結合の数は保護膜の外観、耐薬品性、耐傷付き性及び梱包性に影響する。同じ配合量でも、1分子中に1個の重合性不飽和結合を有する単官能モノマーは、1分子中に2個以上の重合性不飽和結合を有する多官能モノマーに比べて、保護膜の外観、耐薬品性、耐傷付き性及び梱包性が悪化する傾向がある。そのため、ラジカル重合性不飽和モノマーとしては、保護膜形成過程における硬化性、保護膜の外観(光沢性等)、耐薬品性等を向上させる観点より、1分子中に重合性不飽和結合を4個以上有する4官能以上のモノマーを用いることが好ましく、5官能以上のモノマーを用いることがさらに好ましい。ラジカル重合性不飽和モノマーに含まれる重合性不飽和結合の数は、余りに多くなると保護膜の硬化収縮が増大することにより保護膜の光沢が低下し易くなることから、12個以下が好ましく、5〜9個が特に好ましい。
4官能以上のラジカル重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ジプロピレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記のラジカル重合性不飽和モノマーの中でも、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
上記のラジカル重合性不飽和モノマーの中でも、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
上記の光硬化性オリゴマー(b2)としては、紫外線の照射により重合する重合性不飽和結合を1分子中に3個以上有する、3官能以上のラジカル重合性オリゴマーを用いることが好ましい。光硬化性オリゴマーは、塗膜の外観や耐薬品性等を向上させる観点より、3官能以上が好ましく、より好ましくは6官能以上である。なお、塗膜の架橋反応による過剰な収縮は密着性低下に繋がるため、光硬化性オリゴマーは12官能以下が好ましく、6〜9官能が特に好ましい。
光硬化性オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのオリゴマーの中でも、求められる保護膜の高外観性、耐薬品性などを考慮すると、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートが好ましい。
本発明の塗料組成物において、(a)アクリルポリオール樹脂((a)成分)と(b)多官能光硬化性化合物((b)成分)の配合比は、(a)成分が水酸基を有し、(b)成分がラジカル重合性不飽和結合を有しているので、質量比で、(a)/(b)=5/95〜90/10の範囲で用いることが肝要である。(a)成分の割合が5以上あれば、架橋反応により硬化収縮が増大した場合でも、密着性、耐薬品性、耐水性、梱包性及びリコート性に優れる保護膜が得られる。また、(a)成分の割合が90以下であれば、耐薬品性、耐傷つき性を確保することができるため、品質面及び生産面を満足する塗料組成物が得られる。ここで「リコート」とは、一度形成した塗膜の上に再度塗装を行い硬化させて塗膜を形成することをいい、「リコート性」とは、一度形成した塗膜の上に再度塗膜を形成する際の層間密着性をいう。
塗料組成物における(a)成分と(b)成分の好ましい配合割合は、該塗料組成物の用途によって若干異なる。プラスチック成形品(プラスチック成形品の表面にめっき、蒸着もしくは塗装による表面処理が施されて形成されたコート層を有するプラスチック成形品も含む)の表面に塗布する場合、(a)成分の割合が多くなると、保護膜の耐薬品性、耐傷つき性が低下する傾向があり、少なくなると密着性、リコート性、耐環境性(耐水性、耐湿性)が低下する傾向があるので、(a)/(b)=5/95〜70/30が好ましく、さらに好ましくは30/70〜70/30、特に好ましくは50/50〜70/30である。前記のコート層を有するプラスチック成形品の場合も同様である。
(光重合開始剤)
本発明で用いる(c)光重合開始剤は、紫外線の照射によってラジカルを発生するものであれば、公知の光重合開始剤を適宜に使用することができ、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、ベンジル系、アセトフェノン系、キノン系、チオキサントン系、フェニルグリオキシル酸系、フォスフィンオキサイド系等の公知の化合物から任意に選択することができる。
光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4´−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンジル、4,4´−ジメトキシベンジル等のベンジル系化合物;アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、カンファーキノン等のキノン系化合物;チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート等のフェニルグリオキシル酸系化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド系化合物等を挙げることができる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いる(c)光重合開始剤は、紫外線の照射によってラジカルを発生するものであれば、公知の光重合開始剤を適宜に使用することができ、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、ベンジル系、アセトフェノン系、キノン系、チオキサントン系、フェニルグリオキシル酸系、フォスフィンオキサイド系等の公知の化合物から任意に選択することができる。
光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4´−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンジル、4,4´−ジメトキシベンジル等のベンジル系化合物;アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、カンファーキノン等のキノン系化合物;チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート等のフェニルグリオキシル酸系化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド系化合物等を挙げることができる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(c)光重合開始剤としては、通常は吸収波長域が380nmよりも短波長側にある短波長開始剤を用いることが好ましい。コート層の上に保護膜を形成する場合には、コート層に浸透した塗料組成物をも十分に硬化できるよう、380nmよりも短波長側に最大吸収波長を有する短波長開始剤(c1)と、380nm以上の長波長側に最大吸収波長を有する長波長開始剤(c2)とを併用し、少なくとも2種を含むようにすることが好ましい。コート層が着色されているため光が十分に届かず、光硬化性化合物の硬化不良が懸念される場合、長波長開始剤を用いることにより内部への光の透過性が良好になり硬化反応が十分に進行する。また、表面硬化性の良好な短波長開始剤と併用することにより、保護膜全体の硬化性が良好なものとなる。また、組成物が十分に硬化して強靭になることにより、保護膜の密着性は良好なものとなる。
長波長開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド系重合開始剤が挙げられる。
光重合開始剤の添加量は、(b)多官能光硬化性化合物に対し、1.0〜10.0質量%配合するのが好ましい。1.0質量%未満であると十分な硬化性が得られず梱包性が低下する場合がある。一方、10.0質量%より多いと未反応の光重合開始剤により塗膜が黄変するなど、耐候性が低下する場合がある。さらに好ましくは2.0〜5.0質量%である。
(ポリイソシアネート化合物)
本発明で用いる(d)ポリイソシアネート化合物は、(a)アクリルポリオール樹脂が有する水酸基と架橋反応する化合物であり、1分子中に2個以上の遊離のイソシアネート基を有する化合物である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、3−イソシアナトメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート等の3官能以上の有機ポリイソシアネート類;これらのイソシアネート類の変性体;等を挙げることができる。これらのポリイソシアネート化合物には、必要に応じてアミン硬化剤が添加されてもよい。
上記のポリイソシアネート化合物の中でも、耐候性や作業性の観点から脂肪族ポリイソシアネートが好ましく、それらの変性体も含む。
脂肪族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、旭化成社製の商品名デュラネート24A−100、デュラネートTPA−100、デュラネートE402−90T、住化バイエルウレタン社製の商品名スミジュールN−3300、スミジュールN−3200、スミジュールN−75、日本ポリウレタン社製の商品名コロネートHX、コロネートEH、三井武田化学社製の商品名タケネートD−165Nなどである。なお「デュラネート」、「スミジュール」、「コロネート」及び「タケネート」は登録商標である。
本発明で用いる(d)ポリイソシアネート化合物は、(a)アクリルポリオール樹脂が有する水酸基と架橋反応する化合物であり、1分子中に2個以上の遊離のイソシアネート基を有する化合物である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、3−イソシアナトメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート等の3官能以上の有機ポリイソシアネート類;これらのイソシアネート類の変性体;等を挙げることができる。これらのポリイソシアネート化合物には、必要に応じてアミン硬化剤が添加されてもよい。
上記のポリイソシアネート化合物の中でも、耐候性や作業性の観点から脂肪族ポリイソシアネートが好ましく、それらの変性体も含む。
脂肪族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、旭化成社製の商品名デュラネート24A−100、デュラネートTPA−100、デュラネートE402−90T、住化バイエルウレタン社製の商品名スミジュールN−3300、スミジュールN−3200、スミジュールN−75、日本ポリウレタン社製の商品名コロネートHX、コロネートEH、三井武田化学社製の商品名タケネートD−165Nなどである。なお「デュラネート」、「スミジュール」、「コロネート」及び「タケネート」は登録商標である。
塗料組成物における(d)ポリイソシアネート化合物の配合割合は、(a)アクリルポリオール樹脂の水酸基(−OH)と、(d)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート含有率の比、すなわち当量比(NCO/OH)によって決定され、当該当量比が0.5〜1.5になるように、ポリイソシアネート化合物を配合することが肝要である。前記当量比が0.5以上であると、未反応アクリルポリオール樹脂による付着性低下を引き起こすことなく、密着性に優れる保護膜を得ることができ、1.5以下であると、未反応のイソシアネート基による硬化不具合、塗膜の過剰な収縮による密着性低下を引き起こすことがない。当量比(NCO/OH)は、0.8〜1.1がより好ましく、0.9〜1.1が特に好ましい。
(d)ポリイソシアネート化合物は、常温においても(a)アクリルポリオール樹脂との架橋反応が進行したり、温度が高くなると(a)アクリルポリオール樹脂や(b)多官能光硬化性化合物との熱重合を誘発することがある。そのため、塗料組成物のポットライフの観点から、(a)アクリルポリオール樹脂、(b)多官能光硬化性化合物、(c)光重合開始剤を含む第1液と、(d)ポリイソシアネート化合物を含む第2液とに分けた構成とし、使用時に第1液と第2液とを上記の当量比(NCO/OH)の範囲となる割合で配合して塗料組成物としたものを塗布することが好ましい。
塗料組成物の粘度(JIS K5600−2−2 フローカップ法準拠)は、フォードカップ#4にて10〜15秒、好ましくは11〜14秒である。10秒未満であるとはじき現象が発生してしまい、被塗装物が傾いている際には塗着した塗料組成物が被塗装物の中心から外側へ流れて偏在してしまう額縁現象が発生する場合があり、15秒以上であると、スプレー霧化性が低下し被塗装物への濡れが不十分となり平滑性を欠いてしまう場合があるため、上記粘度範囲が好ましいのである。なお、スプレー霧化性とは、塗料をスプレー塗装する際、塗料が均一で微細な液滴になる性質をいう。
本発明では、塗料組成物もしくは上記の第1液及び第2液の粘度を調整する目的で、任意成分として、溶剤を配合することができる。溶剤には(a)アクリルポリオール樹脂の重合溶媒も含まれる。溶剤配合量は特に限定されるものではなく、調製する塗料組成物が塗布し易く、第1液及び第2液が混合し易い粘度になるよう配合量を決定するのがよい。溶剤の添加方法も特に限定されない。
溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸メチルセロソルブ、セロソルブアセテート、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸カルビトール等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。また、溶剤として、「ソルベッソ150」等の商品名でエクソンモービル(株)から市販されている溶剤も使用できる。これらの溶剤は1種又は2種以上組み合わせて、使用することができる。なお、「ソルベッソ」は登録商標である。
酢酸エチル、酢酸ブチル、イソ酢酸ブチル、ソルベッソ150が好ましく用いられる。
酢酸エチル、酢酸ブチル、イソ酢酸ブチル、ソルベッソ150が好ましく用いられる。
さらに、本発明では、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、光透過率や色調を調整するための色素、可塑剤、補強剤、光増感剤、光安定剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘度調整剤、粘着付与剤(タッキファイヤー)、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤等の添加剤を配合することができる。これらの添加剤は、本発明による効果を阻害しない限度において、単独或いは組み合わせて用いることができる。
添加剤の添加量は、(a)成分と(b)成分の合計量(それぞれ固形分基準)に対し、0.01〜10.0質量%とするのが好ましく、リコート性の観点からは、0.1〜5.0質量%とするのがより好ましい。なお、塗料組成物を前記第1液と第2液とに分液する場合には、添加剤は、ポリイソシアネート化合物が配合されていない第1液に配合することが、特に好ましい。これにより、第1液と第2液の混合における構成成分の配合ばらつきを小さくすることができ、かつ第1液と第2液の配合割合による保護膜の特性調整が容易にできる。
また、溶剤と、樹脂ビーズ等の樹脂系艶消し剤を併用した場合には、高温貯蔵においてポリイソシアネート化合物は、(a)成分や(b)成分との熱重合をより誘発し易くなるので、溶剤は(d)ポリイソシアネート化合物とともに第2液に、樹脂系艶消し剤は第1液に添加することが好ましい。
次に、熱及び光硬化性塗料組成物を適用した塗膜形成方法について説明する。プラスチック成形品表面を保護するために、本発明の塗料組成物をプラスチック成型品表面に塗布して塗布層を形成した後、塗布した塗料組成物を加熱及び紫外線を照射して硬化させてプラスチック成形品表面を被覆する保護膜を形成(硬化工程)し、本発明の物品が完成する。
前記硬化工程において、紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等の光源と照射器(ランプハウス)を含む公知の紫外線硬化装置を用いて照射することができる。保護膜の形成において、塗布層の硬化は、加熱と紫外線照射を同時に行ってもよいし、それぞれ順番に行ってもよいが、光沢性などの良好な外観を実現する観点から、最初に加熱から硬化を進めた後に、紫外線を照射して硬化させることが好ましい。また、紫外線硬化開始前の加熱による熱硬化の進行度合いに応じて、紫外線硬化の後にさらに加熱硬化して塗膜を完全硬化させることも好ましい。ここで、紫外線硬化前の加熱を予備加熱、紫外線硬化後の加熱を本加熱という。なお、未硬化の塗膜中に溶剤などの揮発成分が内在する状態で紫外線硬化すると、硬化後の保護膜が白く濁る(白化する)場合があるので、紫外線を照射する前に、加熱によって溶剤成分を揮発除去する脱溶剤処理を行うことが好ましく、前記予備加熱によって、脱溶剤処理を並行して実施することができる。また、この予備加熱による熱硬化反応と脱溶剤処理とが作用することにより、硬化後の保護膜の平滑性も合わせて向上する効果もある。なお、脱溶剤処理の別の手段として減圧処理を適用してもよい。予備加熱と本加熱における加熱温度は、プラスチック成形品の耐熱性に応じて設定されるが、ともに90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。硬化条件の一例としては、80℃で5分間の予備加熱による硬化を行った後、積算光量1,000mJ/cm2の紫外線を照射して紫外線硬化させ、さらに80℃で10分間の本加熱による硬化により硬化過程を完了させて、保護膜を形成する。また、これらの硬化工程は、通常は空気中で行うが、必要に応じて不活性ガス雰囲気で実施してもよい。
ここで前記硬化工程においては、前記塗装工程で塗布された塗料組成物が、プラスチック成形品の表面に接した状態で硬化させることが重要であり、この状態で硬化させることによって、プラスチック成形品に対して優れた密着性を有した保護膜を得ることができるのである。また、塗料組成物が少なくともプラスチック成形品の表面に接した状態とするには、塗料組成物をプラスチック成形品表面に塗布した後の経過時間で調整できる。ただし、長時間経過するとプラスチック成形品表面の溶解などによって意匠性が低下する場合には、意匠性と密着性とが両立できるように塗布後の経過時間を調整して硬化させればよい。
前記塗装工程の塗装方法としては、スプレー塗装、刷毛塗装、ローラー塗装、ディッピング塗装、電着塗装等の公知の方法を適用できるが、高い外観性を実現しやすいスプレー塗装が好ましい。なお、ディッピング塗装とは、浸漬塗りともいい、塗料中に被塗物を漬け、その後引き上げる塗装方法である。
また、前記塗装工程における塗布層の膜厚は、硬化後の塗膜の膜厚が10〜50μmとなるように形成することが好ましく、より好ましくは20〜40μmである。硬化後の塗膜の膜厚が、10μm未満であると肉持ち感は発現せず意匠性を与えることができないため好ましくない。そして硬化後の塗膜の膜厚が、50μm以上となるように塗布層を形成するとワキ、タレなどの問題が生じ易くなり好ましくない。なお、ワキとは、塗膜表面の泡状の表面欠陥であり、塗布層内部に残留している溶剤が焼き付け時の加熱等で蒸発して塗膜内に気泡を生じ、これが既に硬化した塗膜表面を変形させて泡状欠陥となって現れる現象をいう。また、タレとは、塗料を塗装後、乾燥・硬化するまでの間に、被塗物の傾斜等により塗料が流れて、局部的に塗膜の膜厚が厚くなる現象をいう。
プラスチック成形品及びコート層を有するプラスチック成形品の表面に本発明の塗料組成物を適用した塗膜形成方法は、水圧転写用塗料組成物を適用した水圧転写方法における塗装工程以降と同様である。具体的な予備硬化及び後硬化条件は65〜90℃で、合計5〜30分、好ましくは70〜90℃で10〜20分である。乾燥温度が65℃未満で5〜30分であると架橋密度が低下し、密着性、耐薬品性、梱包性も低下し、乾燥時間を延ばす必要があるため好ましくない。また、90℃を超えるとABS樹脂などのプラスチック基材が変形するおそれがある。
プラスチック成形品は、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド及びスチレン−アクリル系共重合体から選ばれる1種または2種以上の混合物からなる熱可塑性樹脂を成形してなる成形品が好ましい。プラスチック成形品の表面に施されるめっきとしては、クロムめっき、亜鉛めっき、カドミウムめっき、スズめっき、ニッケルめっき、金めっき、銀めっき、銅めっき、白金めっき又はこれらの合金めっき等が挙げられる。蒸着によりプラスチック成形品の表面に施される蒸着膜としては、アルミニウム、スズ、インジウム等が挙げられる。塗装によりプラスチック成形品の表面に施される塗膜としては、通常のアンダーコート層であれば、特に制限はない。なお、本発明の塗膜形成方法は、これらプラスチック成形品の表面に施されて形成されたコート層の厚さに限定されない。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
(a)成分:アクリルポリオール樹脂(製造例1〜製造例11)
攪拌機、冷却機、窒素封入機、温度計及びモノマー滴下装置を備えた1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチルを100g仕込み、攪拌しながら内部温度が110℃になるまで加温した。そこへ、表1に示す種類及び量(g)のモノマー成分及び重合開始剤(2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル);ABN-E)の混合溶液を90分間にわたって滴下し、滴下終了後、110℃で2時間保持し、反応を終了して、アクリルポリオール樹脂の溶液を得た。表1に、混合溶液の組成と、得られた共重合体のガラス転移温度、水酸基価及び質量平均分子量を示す。
攪拌機、冷却機、窒素封入機、温度計及びモノマー滴下装置を備えた1リットルの4つ口フラスコに、酢酸ブチルを100g仕込み、攪拌しながら内部温度が110℃になるまで加温した。そこへ、表1に示す種類及び量(g)のモノマー成分及び重合開始剤(2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル);ABN-E)の混合溶液を90分間にわたって滴下し、滴下終了後、110℃で2時間保持し、反応を終了して、アクリルポリオール樹脂の溶液を得た。表1に、混合溶液の組成と、得られた共重合体のガラス転移温度、水酸基価及び質量平均分子量を示す。
(b)成分ないし(d)成分、その他の成分は、表2に示す化合物を用いた。
製造例1〜11で得たアクリルポリオール樹脂を表3に示す量の希釈溶媒(酢酸ブチル)で希釈した後、表3に示す量の光硬化性モノマーもしくは光硬化性オリゴマー、光重合開始剤を加えて第1液を得た。また、表3に示す量のポリイソシアネート化合物を希釈溶媒(酢酸ブチル)で希釈して第2液を得た。第1液と第2液を混合して塗料組成物を調製した。表3中の各成分の量を示す数字の単位は質量%である。
熱及び光硬化性塗料組成物に係る保護膜の性能を以下の方法で評価した。
(1)光沢性:光沢計(micro‐TRI‐gloss、BYKガードナー社製)を用いて、塗膜の60°の光沢を測定し、下記基準で評価した。
[光沢性の評価基準]
○:60°の光沢が90以上である。
△:60°の光沢が80以上90未満である。
×:60°の光沢が80未満である。
[光沢性の評価基準]
○:60°の光沢が90以上である。
△:60°の光沢が80以上90未満である。
×:60°の光沢が80未満である。
(2)密着性:保護膜を形成し、室温(雰囲気温度平均23℃)で72時間放置後の密着性を、下記基準で評価した。試験はセロテープ(登録商標)(ニチバン製)を用いて、試料毎にクロスカット試験(旧JIS K5400−8.5準拠)で剥離状態を観察して評価した。
[密着性の評価基準]
○:剥離なし(実用レベル)
×:剥離あり(実用不適)
[密着性の評価基準]
○:剥離なし(実用レベル)
×:剥離あり(実用不適)
(3)耐オレイン酸性:保護膜を形成し、室温(雰囲気温度平均23℃)で72時間放置後、5%オレイン酸液(溶媒:ベンジン)を0.2mL滴下。雰囲気温度80℃で24時間放置後の密着性及び目視による表面の変化を上記評価基準(2)及び(3)で評価した。密着性及び目視による表面の変化の評価結果のうち、悪い方を耐オレイン酸性の評価結果とした。
[目視による表面の変化の評価基準]
○:変化なし(実用レベル)
×:シワ、膨れ(実用不適)
○:変化なし(実用レベル)
×:シワ、膨れ(実用不適)
(4)耐乳酸性:保護膜を形成し、室温(雰囲気温度平均23℃)で72時間放置後、5%乳酸液(溶媒:純水)を0.2mL滴下し、雰囲気温度80℃で2時間放置後の密着性及び目視による表面の変化を、上記評価基準(2)及び(3)で評価した。密着性及び目視による表面の変化の評価結果のうち、悪い方を耐乳酸性の評価結果とした。
(5)耐日焼け止めクリーム性:保護膜を形成し、室温(雰囲気温度平均23℃)で72時間放置後、日焼止めクリーム(コパトーンUVカットミルクSPF50(大正製薬社製))2gを100mm×100mm程度で塗布して雰囲気温度70℃で4時間放置後、日焼け止めクリームを水で洗い流し、水を拭き取った後、密着性及び目視による表面の変化を、上記評価基準(2)及び(3)で評価した。密着性及び目視による表面の変化の評価結果のうち、悪い方を耐日焼け止めクリーム性の評価結果とした。なお、「コパトーン」は登録商標である。
(6)耐湿性試験:保護膜を形成し、室温(雰囲気温度平均23℃)で72時間放置後、雰囲気温度40℃、雰囲気湿度95%RHで240時間放置後、密着性を上記評価基準(2)で評価した。
(7)耐水性試験:保護膜を形成し、室温(雰囲気温度平均23℃)で72時間放置後、35℃の温水に120時間浸漬して、密着性を上記評価基準(2)で評価した。
(8)梱包性:保護膜を形成し、室温(雰囲気温度平均23℃)で1時間放置後、耐移行性試験を行い、目視による表面の変化を下記評価基準で評価した。耐移行性試験は、保護膜上に、膜と直接接触するように50mm×50mmのミラーマット(日本スチレンペーパー株式会社製 ミラマット)を置き、その上に50mm×50mmのABS板(2mm厚)を載せ、さらにこの上に500gの重りを載せ、室温(雰囲気温度平均23℃)で10時間放置することで行った。なお、「ミラマット」は登録商標である。
[目視による表面の変化の評価基準]
○:変化なし(実用レベル)
×:著しい跡(実用不適)
[目視による表面の変化の評価基準]
○:変化なし(実用レベル)
×:著しい跡(実用不適)
(9)耐傷つき性:保護膜を形成し、室温(雰囲気温度平均23℃)で72時間放置後、ガラスビーズの付着(面積20×20mm)した摩擦子を接着した学振型摩擦試験機で保護膜を21.6N×50回往復させて磨耗させた。その後、磨耗前後の60°光沢値の変化を、光沢計(micro‐TRI‐gloss、BYKガードナー社製)で測定した。また、磨耗前後の色差を色彩色差計(型式:CR−300、コニカミノルタ社製)を用いて測定し、これらを下記評価基準で評価した。なお色差の評価には明度の変化を採用した。
[耐傷つき性の評価基準]
○:光沢値変化150%未満、明度変化量0.5未満(実用レベル)
△:光沢値変化150%以上180%未満、明度変化量0.5以上1.0未満(実用レベル)
×:光沢値変化180%以上、明度変化量1.0以上(実用不適)
[耐傷つき性の評価基準]
○:光沢値変化150%未満、明度変化量0.5未満(実用レベル)
△:光沢値変化150%以上180%未満、明度変化量0.5以上1.0未満(実用レベル)
×:光沢値変化180%以上、明度変化量1.0以上(実用不適)
(10)リコート性:実施例及び比較例で示した要領で作製されたプラスチック成形品を7日間、室温(雰囲気温度平均23℃)で放置した後、形成された保護膜の上に、各実施例又は比較例で用いたのと同じ塗料組成物を用い、各実施例又は比較例と同じ要領で保護膜を形成させた。このプラスチック成形品を室温(雰囲気温度平均23℃)で2日間放置した後、密着性試験を行い、上記評価基準(2)で評価した。
(実施例1〜17、比較例1〜5)
本実施例及び比較例では、ABS樹脂成形品の表面に、各実施例及び比較例の塗料組成物を、硬化後の膜厚が25±5μmとなるようにスプレー塗布して塗布層を形成した。次いで雰囲気温度80℃で5分間加熱の予備硬化を行った後、積算光量1,000mJ/cm2の紫外線を照射し、さらに雰囲気温度80℃で10分間加熱して硬化させ、塗膜を形成した。
本実施例及び比較例では、ABS樹脂成形品の表面に、各実施例及び比較例の塗料組成物を、硬化後の膜厚が25±5μmとなるようにスプレー塗布して塗布層を形成した。次いで雰囲気温度80℃で5分間加熱の予備硬化を行った後、積算光量1,000mJ/cm2の紫外線を照射し、さらに雰囲気温度80℃で10分間加熱して硬化させ、塗膜を形成した。
上記の塗膜の性能を上記の方法で評価した。塗膜の評価結果を表3に示す。
表3の結果から、所定の配合範囲内で、ガラス転移温度が高いアクリルポリオール樹脂、光硬化性モノマーもしくは光硬化性オリゴマー、ポリイソシアネート化合物及び光重合開始剤を含有する実施例の塗膜は、優れた特性を有することが分かる。これに対し、ガラス転移温度が低いアクリルポリオール樹脂を配合した比較例1及び比較例2、分子量が大きいアクリルポリオール樹脂を配合した比較例3、アクリルポリオール樹脂と光硬化性モノマーの配合比が所定の配合範囲から外れた比較例4及び比較例5の塗料組成物を用いて形成した塗膜では、所期の目的が達成できないことがわかる。
本発明の熱及び光硬化性の塗料組成物は、保護膜の外観に優れ、密着性、耐傷つき性、耐環境性(耐水性、耐湿性)及び耐薬品性の保護機能が優れるだけでなく、梱包性が高く、さらにリコート性も良好であることから、生産性においても優位性があり産業上の利用性が向上する。
Claims (10)
- (a)アクリルポリオール樹脂、(b)多官能光硬化性化合物、(c)光重合開始剤、及び(d)ポリイソシアネート化合物を含み(ただし、マレイミド化合物及びマレイミド基含有共重合体を含まない。)、
前記(a)アクリルポリオール樹脂は、1分子中に1個以上の水酸基と重合性不飽和結合を有する水酸基含有アクリルモノマー(a1)と、アクリル系及びスチレン系から選択される1種又は2種以上の水酸基を含有しない重合性不飽和結合を有するモノマー(a2)との共重合体であり、かつ、ガラス転移温度(Tg)が50℃〜100℃で、ポリスチレン換算での質量平均分子量が1,000〜20,000で、水酸基価が20〜200mgKOH/gであり、
前記(b)多官能光硬化性化合物は、1分子中に重合性不飽和結合を4個以上有する多官能(メタ)アクリレートまたは3官能以上のポリエステルアクリレートもしくは6官能以上のウレタンアクリレートであり、
前記(a)アクリルポリオール樹脂と前記(b)多官能光硬化性化合物の配合割合が、質量比で(a)/(b)=5/95〜90/10であり、
前記(c)光重合開始剤は、380nmよりも短波長側に最大吸収波長を有する短波長開始剤(c1)と、380nm以上の長波長側に最大吸収波長を有する長波長開始剤(c2)との少なくとも2種を含み、
前記(a)アクリルポリオール樹脂に含まれる水酸基(−OH)と、前記(d)ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基(−NCO)の当量比(NCO/OH)が0.5〜1.5になるように配合してなることを特徴とする熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物。 - 前記多官能(メタ)アクリレートが、ペンタエリスリトールテトラアクリレート又はジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである、請求項1に記載の熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物。
- 前記(a)アクリルポリオール樹脂と前記(b)多官能光硬化性化合物の配合割合が、質量比で、(a)/(b)=30/70〜60/40である、請求項1に記載のプラスチック成形品用熱及び光硬化性塗料組成物。
- (a)アクリルポリオール樹脂、(b)多官能光硬化性化合物、(c)光重合開始剤を含む第1液と、(d)ポリイソシアネート化合物を含む第2液とを、当量比(NCO/OH)が0.5〜1.5になるように配合してなる、請求項1〜3いずれかに記載の熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物。
- トップクリアーコートとして用いられる、請求項1〜4いずれかに記載の熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物。
- (i)プラスチック成形品の表面、あるいは
(ii)該プラスチック成形品の表面にめっき、蒸着もしくは塗装による表面処理が施されて形成されたコート層を有するプラスチック成形品の表面に、
請求項1に記載の熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物を塗布して塗布層を形成し、前記塗布層を加熱乾燥し、該加熱乾燥された膜を紫外線照射によって硬化させた後、さらに加熱硬化させることを含んでなる塗膜形成方法。 - 塗布した塗料組成物が、コート層に浸透して、少なくともプラスチック成形品の表面に接した状態で紫外線照射を行う、請求項6に記載の塗膜形成方法。
- プラスチック成形品が自動車または家電製品用である、請求項6または7に記載の塗膜形成方法。
- 請求項1〜5いずれかに記載の熱及び光硬化性のプラスチック成形品用塗料組成物から形成される硬化塗膜を有するプラスチック成形品。
- プラスチック成形品が自動車または家電製品用である、請求項9に記載のプラスチック成形品。
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