JP2016210706A - 抗酸化・抗炎症剤、及び該抗酸化・抗炎症剤を含有するコルチゾール分泌抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】桜の抽出液又はその抽出残渣物を有効成分として含有する抗酸化・抗炎症剤であり、抽出溶媒を加えずに、桜の花弁又は葉を撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する工程を有する抽出法により抽出された桜の抽出液又はその抽出残渣物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化・抗炎症剤により上記課題を解決した。
【選択図】図17
Description
しかしながら、これらの抽出方法は、水相を主な目的物として分離するものではなかった。また、これらの抽出方法によって生じた抽出残渣物は、抽出溶媒の残留によって使用することができない等、有効利用することができなかった。
特許文献5には、植物を破砕及び撹拌しながら加熱及び減圧して植物由来の蒸気を生成させる香気成分の抽出方法が記載されている。そして、この方法を用いれば、ハーブ、果物、花又は野菜から香気成分を抽出できるとされている。
更に、桜等のバラ科サクラ属に属する植物を原料とし、未同定分子を含む複数の有効成分を効率的に水相として抽出する抽出方法や、該植物の細胞水を含んだままの該抽出液の製造方法についても開示されていない。
また、該特定の抽出方法で生じた抽出残渣物も、少量で十分に抗酸化・抗炎症作用を発揮することを見出して、本発明を完成するに至った。
以下、「撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する工程を有する抽出法」を、単に「低温真空抽出法」と略記する。
本発明の抗酸化剤・抗炎症化剤に含まれる桜の抽出液は、水又は有機溶媒と言った抽出溶媒を使用する必要がないので、植物由来の(細胞水を含む)成分を、水溶液として高濃度で収率良く回収することができ、得られた抽出液は、抽出溶媒由来の物質を含有させないことが可能であるため、水を含め天然由来の成分だけで構成させることができ、極めて安全であり、また安心して提供ができ、また抽出溶媒臭がない。
該抽出残渣物は、抽出溶媒由来の物質を含有させないことが可能であるため、天然由来の成分だけで構成させることができ、極めて安全であり、また安心して提供ができ、また抽出溶媒臭がない。また、低温真空抽出法は、桜の花弁又は葉に加わる熱を抑制できるので、従来品にはなかった成分又は成分比の抽出残渣物を提供することができる。
また、本発明においては水を含め抽出溶媒を使用しないことが好ましい。
なお、本明細書において、「細胞水」とは、植物細胞に含まれる細胞内液のことである。
また、本発明で使用する桜の抽出残渣物は、桜から低温真空抽出法を用いて抽出液を抽出した残渣物のことである。
ここで「低温」とは、減圧しないで溶媒抽出するときの一般的温度より低い温度のことを言い、本発明の場合は、具体的には、(抽出容器の温度でも抽出器内の気体の温度でもなく)、桜自体の温度が90℃以下の温度であることが好ましい。抽出温度については後で詳述する。
本発明における桜の抽出液の製造方法では、桜を、撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する工程を有する。
図1は、本発明における桜の抽出液の製造方法において、抽出工程に用いられる装置の一形態を示す概略図である。本発明の趣旨の範囲内であれば、図に示された装置で抽出されたものには限定されない。
容器1は、桜を収容し、撹拌羽根6で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する容器であり、冷却槽2は、容器1から出る蒸気を冷却する装置である。
下部半円筒部7の最下部の中央には、抽出後の桜の破砕物を取り出す排出口10が設けられている。
前記上部角形部8の上部には、桜の投入口17を設けると共に、その投入口17を塞ぐ蓋18を設けている。
上記破砕・撹拌は、可動刃及び/又は固定刃を備えた抽出装置内で行うことが、上記効果を得るために特に好ましい。
なお、図3では、固定刃26と可動刃24b、25bとは、噛み合いが時間をずらして順次行なわれるように、周方向に位置をずらして配設し、これにより撹拌羽根6の駆動モータの動力の瞬間的増大が起こらないようにしている。
32は前記容器1内の真空度を計測する真空計、33、34は温度計であり、これらは抽出工程における容器内の圧力(減圧度)と温度を測定し、抽出時の桜31の温度も間接的に測定するために設けられたものであり、また、抽出の開始と終了を判定するために設けられたものである。
この真空乾燥装置の操作・動作は、例えば、下記のように行なわれる。
まず、作業開始に当り、冷却槽2に冷却水が充填される。次いで、桜31を投入口17から容器1内に投入して蓋18を閉じる。そして、撹拌羽根6は、図1〜図3の矢印Rの方向に回転させ、容器1内の桜を撹拌しながら、可動刃24b、25bと固定刃26との間で桜31を小さく破砕する。
その際、蒸気室9内に送り込む加熱用蒸気の温度や量を調節して、桜31自体の温度を、後記する好ましい範囲にする。
その際、減圧装置46で吸引する量や吸引力を調節して、抽出時の圧力(減圧度)を、後記する好ましい範囲にする。
回収液を回収後、容器1内に残った残渣物を、桜の抽出残渣物として回収する。
本発明で用いられる抽出液の製造方法においては、上記抽出の温度は特に限定されないが、桜自体が90℃以下であることが好ましく、55℃以下の温度を維持するように行うことがより好ましい。特に好ましくは、上記抽出を桜自体が20℃以上50℃以下の温度を維持するように行うことであり、更に好ましくは、25℃以上45℃以下であり、最も好ましくは、30℃以上40℃以下である。
本発明における桜の抽出液の製造方法では、桜を撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に抽出を行うので、新鮮な破砕面ができた時点で早く抽出してしまうことができるが、温度の下限が上記範囲の値であると抽出時間を短くできることと相まって効果がより相乗される。
一方、上限が上記範囲の値であると、有効成分の熱による変性・分解を防止しつつ有効成分を抽出できる。
一方、上限が上記範囲の値であると、有効成分の熱による変性・分解を防止しできる。
上記桜の抽出液の製造方法では、桜を撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に抽出を行うので、新鮮な破砕面ができた時点で早く抽出してしまうことができるが、減圧度が上記値のように低いと、抽出速度が速いという点で、有効成分の分解・逸失が抑制される効果がより相乗される。
前記した通り、抽出方法には、上記の低温真空抽出法以外にも、水蒸気蒸留法、直接抽出法、溶媒抽出法、圧搾法、超臨界抽出法等、種々の方法が知られている。
また、水蒸気蒸留法では、抽出に用いた水蒸気が液化した水が細胞水に混合することで、全て天然由来の桜の抽出液であると言う本発明の効果がなくなるし、抽出残渣物にも外部からの水が混入することになる。
更に、抽出液の収量も少なかった。抽出溶媒として水を用いる場合でも、抽出のために加えた水が残留するので、全て天然由来の桜の抽出液や抽出残渣物であると言う本発明の効果がなくなる。
超臨界抽出法では、高圧を要するので高価な設備を必要とする等の問題点があった。
低温真空抽出法によると、水性画分(水層、水相)からは均一な桜の抽出液が得られ、油性画分(油層、油相)からは精油が得られる。
本発明においては、抽出後の操作は特に限定はされないが、同時に液体として回収される不要成分は分離して除去することが好ましい。分離には、比重の違い等を利用した、デカンテーション、分液操作等が用いられる。
本発明においては、抽出物が、植物由来ではない成分を含有しない「桜の抽出液」、「桜の抽出残渣物」として得られるという特長がある。
また、水溶性の抽出液は、油溶性の抽出液に比べて、1回の抽出工程でより多くの量を回収することができる。また、油溶性の抽出液に比べて匂いが薄いが、比較的心地よく感じるレベルの匂いの強度であり、医療現場や家庭で使い易い。更に、容器や部品等の洗浄が容易である点で、油溶性の抽出液より優れている。
桜の抽出液自体、該桜の抽出液を含有する飲食品又は、該桜の抽出液を気化したもの等を体内に取り入れることにより、活性酸素を消去し、抗酸化作用やアンチエイジング(抗加齢)効果を発揮することができる。
また、該桜の抽出残渣物は抗炎症作用を有する。また、一酸化窒素(NO)消去活性作用を有する。
桜の抽出残渣物自体、又は、該桜の抽出残渣物を含有する飲食品等を体内に取り入れることにより、活性酸素を消去し、抗酸化作用やアンチエイジング(抗加齢)効果を発揮することができる。
また、該桜の抽出液又はその抽出残渣物は、医薬品、医薬部外品、気化吸引用剤、外用組成物、調合香料、飲食品、化粧品、浴剤、繊維等に利用できる。これらの用途に使用するときには、そこに、要すれば種々の添加剤を配合して用いることができる。
本発明における桜の抽出液や該桜の抽出液を含有する剤を実際にヒトに嗅いでもらったところ、当該ヒトの唾液中のストレスホルモンであるコルチゾールが、使用後30分後で有意に下降したことから、本発明における桜の抽出液、該桜の抽出液を含有する剤を嗅がせる工程を有する方法は、唾液中のコルチゾールの含有量を抑制する方法として有効である。
かかる担体としては、特に制限はなく、例えば、後述する剤型等に応じて適宜選択することができる。また、前記抗酸化・抗炎症剤やコルチゾール分泌抑制剤中の前記「その他の成分」の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記抗酸化・抗炎症剤又はコルチゾール分泌抑制剤の投与量としては、特に制限はなく、投与対象である個体の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、成人への1日の投与量は、有効成分の量として、1mg〜30gが好ましく、10mg〜10gがより好ましく、100mg〜3gが特に好ましい。
また、前記抗酸化・抗炎症剤又はコルチゾール分泌抑制剤の投与時期としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、予防的に投与されてもよいし、治療的に投与されてもよい。
<桜の抽出液の製造>
五泉市で収穫した八重桜の花弁及び葉を各々、図1〜3に示した容器に入れて抽出を行った。
抽出条件は以下であった。
(1)八重桜(花弁又は葉)の温度:30〜40℃
(2)容器内の設定温度:30〜40℃
(3)圧力:101.3kPa(1気圧)に対し、93〜97kPa低い圧力
(4)撹拌羽根(可動刃)の回転数:4rpm(回転/分)
収穫した八重桜の花弁10kgからは、約8kgの桜の抽出液及び約2kgの桜の抽出残渣物を回収した。
<桜の抽出液の抗酸化作用及び抗炎症化作用の測定>
花弁から抽出した桜の抽出液1及び葉から抽出した桜の抽出液2の抗酸化作用及び抗炎症化作用を、電子スピン共鳴法(ESR法)を用いて測定した。
一定の濃度に調整したサンプル(桜の抽出液)、蒸留水、スピントラップ剤(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノール;4−OH TEMP)、ラジカル発生剤を、その順番に加えて混合させた。
該混合液をESR用セルに適量移し、マイクロ波を照射し、スーパーオキシドアニオンラジカル(O2 ・−)、一重項酸素(1O2)、ヒドロキシラジカル(HO・)及び一酸化窒素(NO)の消去活性(%)をそれぞれ測定した。
図4にスーパーオキシドアニオンラジカルの消去活性を、図5に一重項酸素の消去活性を、図6にヒドロキシラジカルの消去活性を、図7に一酸化窒素の消去活性を測定した結果を示す。
横軸の「花」は、花弁から抽出した桜の抽出液1、「葉」は、葉から抽出した桜の抽出液2を示す。
横軸の割合は、低温真空抽出法により抽出した桜の抽出液を蒸留水で希釈した時の原液の割合である。例えば、図4中、「花20%」とは、桜の抽出液1を蒸留水で5倍希釈したものを指す。
<桜の抽出残渣物の抗酸化作用及び抗炎症化作用の測定>
実施例1で得られた八重桜の抽出残渣物を蒸留水に混和したもの(以下、「残渣水」と略記する)及び該残渣水を40℃で1時間加熱抽出した水溶液(以下、「熱処理抽出水」と略記する)について、それぞれ抗酸化作用及び抗炎症化作用を、実施例2と同様に電子スピン共鳴法(ESR法)を用いて測定した。
図8〜11は、八重桜の花弁を原料として使用したときの抽出残渣物の結果を示し、図12〜15は、八重桜の葉を原料として使用したときの抽出残渣物の結果を示す。
<桜の抽出液の唾液に対する作用>
上記で得られた桜の抽出液1を蒸留水で希釈後、通常の市販のディフューザーを用いて被験者(健常者)に20分前後匂いを嗅いでもらい、匂いを嗅ぐ前後での該被験者の唾液を比較した。結果を図16及び図17に示す。
図16及び図17共に、グラフの横軸中、「実験前」は、桜の抽出液1の匂いを嗅ぐ前の被験者の唾液、「アロマ後」は、桜の抽出液1の匂いを嗅ぎ終わった直後の被験者の唾液、「30分後」は、桜の抽出液1の匂いを嗅ぎ終わってから30分後の被験者の唾液を示す。
また、図中の「*」は、p<0.05であることを示す。
図16A〜Cの結果より、桜の抽出液1の匂いを嗅いだことにより、唾液量、pH、及びスーパーオキシドアニオンラジカル(O2 ・−)残存量には変化が見られなかった。
桜の抽出液1の匂いを嗅ぎ終わってから30分後の被験者の唾液は(「30分後」)、桜の抽出液1の匂いを嗅ぐ前(「実験前」)、及び匂いを嗅ぎ終わった直後の被験者の唾液(「アロマ後」)に比べて測定値が上昇していた。
図17Aの結果より、桜の抽出液1の匂いを嗅ぐことにより、ヒト唾液の抗酸化能を向上させることがわかった。また、図16Cの結果より、該抗酸化能は、スーパーオキシドアニオンラジカルの消去作用の向上が直接関与していないこともわかった。
桜の抽出液1と組成成分が類似している桜の抽出液2についても同様に、匂いを嗅がせることによりヒト唾液の抗酸化能を向上させる効果を有するものと示唆される。
桜の抽出液1の匂いを嗅ぎ終わってから30分後の被験者の唾液は(「30分後」)、桜の抽出液1の匂いを嗅ぐ前(「実験前」)、及び匂いを嗅ぎ終わった直後の被験者の唾液(「アロマ後」)に比べてコルチゾール量が低下していた。
図17Bの結果より、桜の抽出液1の匂いを嗅ぐことにより、ストレスホルモンであるコルチゾール量を抑制することがわかった。
桜の抽出液1と組成成分が類似している桜の抽出液2についても同様に、匂いを嗅がせることにより唾液中のコルチゾール量を抑制させる効果を有するものと示唆される。
したがって、該桜の抽出液又はその抽出残渣物有効成分として含有する抗酸化・抗炎症剤、及びそれらを含有するコルチゾール分泌抑制剤は、医薬品の分野にはもちろんのこと、アロマセラピー用品、芳香剤、介護用品、化粧品、食品等の分野においても広く利用されるものである。
2 冷却槽
6 撹拌羽根
7 下部半円筒部
8 上部角形部
9 蒸気室
10 排出口
14 排気口
16 配管
17 投入口
18 蓋
20 端壁
21 端壁
22 端板
23 端板
24 羽根体
24a 溝
24b 可動刃
25 羽根体
25a 溝
25b 可動刃
26 固定刃
30 傾斜面
31 桜
32 真空計
33 温度計
34 温度計
41 回収槽
45 バルブ
46 減圧装置
49 弁
50 油層
51 水層
R 回転方向
Claims (5)
- 桜の抽出液又はその抽出残渣物を有効成分として含有する抗酸化・抗炎症剤であり、抽出溶媒を加えずに、桜の花弁又は葉を撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する工程を有する抽出法により抽出された桜の抽出液又はその抽出残渣物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化・抗炎症剤。
- 上記有効成分が桜の抽出残渣物である請求項1に記載の抗酸化・抗炎症剤。
- 上記有効成分が桜の抽出液である請求項1に記載の抗酸化・抗炎症剤。
- 上記桜が八重桜である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の抗酸化・抗炎症剤。
- 請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の抗酸化・抗炎症剤を含有することを特徴とするコルチゾール分泌抑制剤。
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