以下、図面を参照しながら、本発明に係るマイクロチャンネルプレートの好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るマイクロチャンネルプレートを備えるイメージインテンシファイアを示す一部断面図である。また、図2は、図1に示すイメージインテンシファイアの主要部を示す要部拡大断面図である。図1及び図2に示すイメージインテンシファイア1は、筐体2の内部において、光電面(Photocathode)3、マイクロチャンネルプレート4、及び蛍光面5が互いに近接して配置されたイメージインテンシファイアである。
イメージインテンシファイア1の内部は、略中空円柱状をなす筐体2の両端部を略円板状の入射窓11及び出射窓12で気密に封止することにより、高真空状態に保持されている。筐体2は、例えば略中空円筒状のセラミック製の側管13と、側管13の側部を被覆する略中空円柱状のシリコンゴム製のモールド部材14と、モールド部材14の側部及び底部を被覆する略中空円筒状のセラミック製のケース部材15とによって構成されている。
モールド部材14の両端部のそれぞれには貫通孔が形成されている。ケース部材15の一端は開放された状態となっている。ケース部材15の他端には、モールド部材14の一方の貫通孔とその周縁を一致させた貫通孔が形成されている。モールド部材14の一端側において、モールド部材14の一方の貫通孔周辺の表面には、ガラス製の入射窓11が接合されている。入射窓11の真空側表面の略中央部分には、薄膜状の光電面3が設けられている。入射窓11は、例えば石英ガラス等からなる板状部材である。当該板状部材にK(カリウム)及びNa(ナトリウム)等のアルカリ金属を蒸着することによって光電面3が形成されている。
一方、モールド部材14の他端側において、モールド部材14の他方の貫通孔には、出射窓12が嵌合している。出射窓12の真空側表面の略中央部分には、薄膜状の蛍光面5が設けられている。出射窓12は、例えば多数の光ファイバをプレート状に集束して構成されたファイバプレートである。ファイバプレートの各光ファイバは、光電面3に対して光軸が直交し、かつ、真空側端面が面一に整合した状態となっている。このファイバプレートの真空側表面に(ZnCd)S:Ag(銀をドープした硫化亜鉛カドミウム)等の蛍光体を塗布することで蛍光面5が形成されている。蛍光面5から出射した光像は、ファイバプレートを通過後、一般にCCDカメラ等の撮像手段によって取得される。なお、この例では、マイクロチャンネルプレート4で増倍された電子を電子入射面である蛍光体で光像に変えて最終的にCCDカメラで撮像しているが、電子入射面として電子打ち込み式固体イメージセンサ(例えばEBCCD)を使用して撮像することも可能である。
なお、蛍光面5の真空側表面には、メタルバック層と低電子反射率層とが順次積層されている。メタルバック層は、例えばAl(アルミニウム)の蒸着によって形成され、マイクロチャンネルプレート4を通過した光に対して比較的高い反射率を有し、かつマイクロチャンネルプレート4からの光電子に対して比較的高い透過率を有している。また、低電子反射率層は、例えばC(炭素),Be(ベリリウム)等の蒸着によって形成され、マイクロチャンネルプレート4からの光電子に対して比較的低い反射率を有している。
光電面3と蛍光面5との間には、略円板状のマイクロチャンネルプレート4が配置されている。マイクロチャンネルプレート4は、側管13の内壁に固定された取付部材21,22の内縁で支持され、光電面3及び蛍光面と所定の間隔をもって対向した状態となっている。マイクロチャンネルプレート4は、電子を増倍する増倍部として機能し、光電面3で生じた光電子を増倍した後、蛍光面5に向けて出力する。
入射窓11の真空側表面の周辺領域では、金属製の配線層(不図示)が光電面3に対して電気的に接続されている。この配線層と光電面3との接続にあたっては、側管13と入射窓11とで挟持された取付部材23がモールド部材14内に延びて固定されている。また、出射窓12の真空側表面の周辺領域では、金属製の別の配線層(不図示)が蛍光面5に対して電気的に接続されている。この配線層と蛍光面5との接続にあたっては、側管13とモールド部材14とで挟持された取付部材24がモールド部材14内に延びて固定されている。
取付部材21〜24の端部には、例えばコバール金属からなるリード線25〜28の一端がそれぞれ接続されている。リード線25〜28の他端は、モールド部材14及びケース部材15を気密に貫通して外部に突出し、外部電圧源(不図示)に電気的に接続されている。これにより、光電面3、マイクロチャンネルプレート4、及び蛍光面5には、外部電圧源からの所定の電圧が印加される。光電面3とマイクロチャンネルプレート4の入力面4a(図2参照)との間には、例えば200V程度の電位差が設定され、マイクロチャンネルプレート4の入力面4aと出力面4b(図2参照)との間には、例えば500V〜900V程度の電位差が可変に設定される。また、マイクロチャンネルプレート4の出力面4bと蛍光面5との間には、例えば6kV程度の電位差が設定される。
続いて、上述したマイクロチャンネルプレート4について、更に詳細に説明する。図3は、マイクロチャンネルプレートの一例を示す斜視図である。また、図4は、マイクロチャンネルプレートの要部拡大断面図である。
図3及び図4に示すように、マイクロチャンネルプレート4は、基体31、複数のチャンネル32、表面膜33、隔壁部34、フレーム部材35、入力電極層36、及び出力電極層37を備える。なお、図3においては、入力電極層36及び出力電極層37の図示を省略している。基体31は、入力面(一面)4a及び出力面(他面)4bを有し、円板状に形成されている。基体31において、入力面4a側から出力面4b側にかけて断面円形状の複数のチャンネル32が形成されている。チャンネル32は、チャンネル32の径が例えば10nm〜2μmとなり、互いに隣接するチャンネル32同士の中心間距離が例えば20nm〜2.5μmとなるように、平面視でマトリクス状に配置されている。なお、マイクロチャンネルプレート4は、電子増倍器として機能するために、チャンネル32内の隔壁部34の表面に図示しない抵抗層及び電子放出層を更に有する。抵抗層及び電子放出層は、既知の方法(例えば原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)等)によって形成される。以降の説明においては、抵抗層及び電子放出層の説明を省略する。
図3及び図4に示すように、表面膜33は、チャンネル32ごとに設けられており、チャンネル32の入力面4a側の開口部32aを覆う。すなわち、各チャンネル32の入力面4a側の開口部32aは、チャンネル32ごとに設けられた表面膜33によって塞がれている。表面膜33は、光電面3から放出された電子をチャンネル32内に透過させる透過膜として機能する。また、表面膜33は、イオンフィードバックを抑制するイオンバリア膜としても機能する。イオンフィードバックとは、チャンネル32の内部で増倍された電子が残留ガスをイオン化し、そのイオンが光電面3に戻ることによりノイズが発生してしまう事象である。
また、表面膜33は、チャンネル32の外方(光電面3側)に向かって凸となるアーチ状に形成されている。アーチ状に形成された表面膜33の表面積は、表面膜33が平坦な形状である場合よりも増している。これにより、表面膜33を透過してチャンネル32内に入射する電子の数を増やすことができる。また、表面膜33がアーチ状に形成されていることにより、表面膜33が平坦な形状である場合よりも、表面膜33を透過して発生する電子の軌道を多様化させることができる。これにより、チャンネル32内での電子の隔壁部34への衝突回数の増加が期待でき、電子増倍率の向上が期待できる。
表面膜33は、金属(本実施形態では一例としてAl)の陽極酸化処理により基体31と一体に形成されている。本実施形態では、基体31及び表面膜33として、Al基板に対して陽極酸化処理を行うことで形成される微細孔構造体が、例示されている。陽極酸化処理により基体31及び表面膜33を形成するために用いられる金属としては、Al以外に、Ta(タンタル),Nb(ニオブ),Ti(チタン),Hf(ハフニウム),Zr(ジルコニウム),Zn(亜鉛),W(タングステン),Bi(ビスマス),Sb(アンチモン)等のバルブ金属等が挙げられる。
本実施形態では一例として、基体31において、チャンネル32が一様に形成されている。このため、マイクロチャンネルプレート4の入力面4a側の表面形状は、チャンネル32ごとに設けられた複数の表面膜33により、アーチ状の山部33aと谷部33bとが繰り返し形成された周期構造をなしている。山部33aは、表面膜33の頂部であり、平面視でチャンネル32の略中央に重なる位置に形成されている。谷部33bは、互いに隣接するチャンネル32に設けられた表面膜33同士の境界であり、平面視で隔壁部34に重なる位置に形成されている。このような周期構造により、表面膜33を平坦な形状とした場合よりも、マイクロチャンネルプレート4の強度が向上する。その結果、マイクロチャンネルプレート4の使用時に、高い電界が印加されることに起因するマイクロチャンネルプレート4の反り返り等を抑制することができる。
基体31において、互いに隣接するチャンネル32間には、入力面4aから出力面4bにかけて延在する隔壁部34が形成されている。表面膜33の厚みd1は、エッチング処理等が施されることにより、隔壁部34の厚みd2よりも薄くなっている。例えば、表面膜33の厚みd1は10nm〜100nmであり、隔壁部34の厚みd2は10nm〜1.0μmである。表面膜33の厚みd1を隔壁部34の厚みd2よりも薄くすることで、電子の透過率を高めることができる。一方、隔壁部34の厚みd2を表面膜33の厚みd1よりも厚くすることで、マイクロチャンネルプレート4の強度を確保することができる。
図3に示すように、フレーム部材35は、基体31の入力面4a及び出力面4bの周縁部に設けられている。本実施形態では一例として、フレーム部材35は、基体31の入力面4aの周縁部上に形成された円環状の第1フレーム部材35aと、基体31の出力面4bの周縁部上に形成された円環状の第2フレーム部材35bと、を有する。
第1フレーム部材35aは、低融点ガラスGによって基体31の入力面4a側の表面(すなわち、基体31と一体に形成された表面膜33の表面)に接着されている。また、第2フレーム部材35bは、低融点ガラスGによって基体31の出力面41b側の表面(すなわち、隔壁部34の出力面4b側の端面)に接着されている。放出ガスの少ない低融点ガラスGにより基体31とフレーム部材35とを接着することで、高真空中での使用に適したマイクロチャンネルプレート4を構成することが可能となる。本実施形態では一例として、基体31の入力面4a及び出力面4bを接続する側面4cと第1フレーム部材35a及び第2フレーム部材35bの外側面とは、面一となっている。
フレーム部材35は、チャンネル32の延在方向から見て複数のチャンネル32の少なくとも一部に重なるように設けられている。このため、基体31においてフレーム部材35が設けられた部分とフレーム部材35が設けられていない部分との境界面のしなりがチャンネル32によって許容される。これにより、当該境界面で基体31が割れることが抑制される。また、マイクロチャンネルプレート4においてフレーム部材35が設けられた部分の厚みが増すため、マイクロチャンネルプレート4の強度及びハンドリング性を向上させることができる。特に、Al等の金属の陽極酸化処理により形成された基体31は極薄となる傾向があるが、フレーム部材35により、マイクロチャンネルプレート4の強度及びハンドリング性を確保することができる。また、本実施形態では、基体31の両面にフレーム部材35(第1フレーム部材35a及び第2フレーム部材35b)を設けることで、マイクロチャンネルプレート4の強度及びハンドリング性を一層向上させている。
フレーム部材35は、基体31と略同等の熱膨張係数を有する。フレーム部材35は、例えば基体31と同様の組成を有するセラミック部材である。このように基体31及びフレーム部材35の熱膨張係数を略同等とすることで、熱膨張時における基体31及びフレーム部材35のひずみを軽減することができる。その結果、マイクロチャンネルプレート4の強度を一層向上させることができる。
フレーム部材35の厚みD1は、基体31の厚みD2よりも厚くなっている。例えばチャンネル32の径が1.5μmであって、マイクロチャンネルプレート4として好適なアスペクト比40を確保したい場合、基体31の厚みD2は、60μmに設定され、第1フレーム部材35a及び第2フレーム部材35bの厚みD1は、例えば100μm以上に設定される。フレーム部材35の厚みD1を基体31の厚みD2よりも十分に厚くすることで、マイクロチャンネルプレート4の強度及びハンドリング性を一層向上させることができる。
図4に示すように、基体31の入力面4a側の表面(すなわち、表面膜33の表面)には、入力電極層36が設けられている。また、基体31の出力面4b側の表面(すなわち、隔壁部34の出力面4b側の端部表面)には、出力電極層37が設けられている。入力電極層36及び出力電極層37は、マイクロチャンネルプレート4の入力面4aと出力面4bとの間に所定の電圧を印加するための層である。入力電極層36及び出力電極層37は、例えばIn2O3(酸化インジウム)及びSnO2(酸化スズ)からなるITO(酸化インジウムスズ)膜、ネサ膜、ニクロム膜、インコネル(登録商標)膜等の蒸着によって形成されている。入力電極層36及び出力電極層37の厚さは、例えば10nm〜100nm程度である。
入力電極層36は、例えば基体31の入力面4a側の表面上に第1フレーム部材35aが設けられた後に上述の蒸着がされることで、第1フレーム部材35a、及び表面膜33の光電面3側に露出した部分を薄く覆うように形成されている。入力電極層36の一部が、取付部材21と接続されることで、入力電極層36は、外部電圧源(不図示)に電気的に接続される。
なお、マイクロチャンネルプレート4の第1フレーム部材35aが設けられた部分が取付部材21に支持される場合、すなわち第1フレーム部材35aが設けられた部分で外部電圧源とのコンタクトを取る場合には、上述のように、入力電極層36は、表面膜33の光電面3側に露出した部分とともに第1フレーム部材35aの表面にも設けられる。一方、マイクロチャンネルプレート4の第1フレーム部材35aが設けられていない部分が取付部材21に支持される場合、すなわち第1フレーム部材35aが設けられていない部分で外部電圧源とのコンタクトを取る場合には、入力電極層36を第1フレーム部材35aの表面に設けなくてもよい。
出力電極層37は、例えば基体31の出力面4b側の表面上に第2フレーム部材35bが設けられた後に上述の蒸着がされることで、第2フレーム部材35b、及び隔壁部34の蛍光面5側に露出した部分を薄く覆うように形成されている。出力電極層37の一部が、取付部材22と接続されることで、出力電極層37は、外部電圧源(不図示)に電気的に接続される。
なお、マイクロチャンネルプレート4の第2フレーム部材35bが設けられた部分が取付部材22に支持される場合、すなわち第2フレーム部材35bが設けられた部分で外部電圧源とのコンタクトを取る場合には、上述のように、出力電極層37は、隔壁部34の蛍光面5側に露出した部分とともに第2フレーム部材35bの表面にも設けられる。一方、マイクロチャンネルプレート4の第2フレーム部材35bが設けられていない部分が取付部材22に支持される場合、すなわち第2フレーム部材35bが設けられていない部分で外部電圧源とのコンタクトを取る場合には、出力電極層37を第2フレーム部材35bの表面に設けなくてもよい。
続いて、図5を用いて、マイクロチャンネルプレート4の製造方法について説明する。
図5の(a)に示すように、上述の構成を有するマイクロチャンネルプレート4を製造する場合、まず金属基板90(本実施形態では一例としてAl基板)を用意する。続いて、図5の(b)に示すように、金属基板90に対して陽極酸化処理を行うことで、金属基板90を表面から酸化させ、複数のチャンネル32を有する陽極酸化皮膜91を形成する。ここで、陽極酸化処理の方法としては、公知の方法(例えば特許3675326号公報に記載の手法)を用いることができる。
続いて、図5の(c)に示すように、陽極酸化皮膜91を金属基板90から剥離する。剥離された陽極酸化皮膜91において、チャンネル32の底部は、表面膜33によって塞がれている。続いて、図5の(d)に示すように、陽極酸化皮膜91に対してエッチング処理等を行うことで、表面膜33の厚みとチャンネル32間に存在する隔壁部34の厚みを、マイクロチャンネルプレート4として使用するのに適した厚さまで薄くする。これにより、マイクロチャンネルプレート4における基体31(当該基体31と一体的に形成された表面膜33を含む)が得られる。
続いて、図5の(e)に示すように、基体31の入力面4a側の表面(すなわち、基体31と一体に形成された表面膜33の表面)に第1フレーム部材35aを低融点ガラスGによって接着する。また、基体31の出力面4b側の表面(すなわち、隔壁部34の出力面4b側の端面)に第2フレーム部材35bを低融点ガラスGによって接着する。続いて、基体31及びフレーム部材35(第1フレーム部材35a及び第2フレーム部材35b)を焼成した後に、例えばIn2O3及びSnO2からなるITO膜、ネサ膜、ニクロム膜、インコネル(登録商標)膜等を、基体31の入力面4a側及び出力面4b側のそれぞれに蒸着する。これにより、入力電極層36及び出力電極層37が形成される。以上により、上述したマイクロチャンネルプレート4が得られる。なお、上述した通り、マイクロチャンネルプレート4は、電子増倍器として機能するために、チャンネル32内の隔壁部34の表面に図示しない抵抗層及び電子放出層を更に有する。抵抗層及び電子放出層の形成には、既知の方法(例えば原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)等)を用いることができる。抵抗層及び電子放出層の形成は、入力電極層36及び出力電極層37を形成する電極層形成工程前に行われてもよいし、電極層形成工程後に行われてもよい。
以上述べたように、マイクロチャンネルプレート4では、フレーム部材35が基体31の入力面4a及び出力面4bの少なくとも一方(本実施形態では一例として両方)の周縁部において、チャンネル32の延在方向から見て複数のチャンネル32の少なくとも一部に重なるように設けられている。このため、基体31においてフレーム部材35が設けられた部分とフレーム部材35が設けられていない部分との境界面のしなりがチャンネル32によって許容される。これにより、当該境界面で基体が割れることが抑制される。また、マイクロチャンネルプレート4においてフレーム部材35が設けられた部分の厚みが増すため、マイクロチャンネルプレート4のハンドリング性を向上させることができる。従って、このマイクロチャンネルプレート4によれば、強度及びハンドリング性の向上を図ることができる。
また、上記実施形態において、表面膜33は、複数のチャンネル32のうち一部のチャンネル32にのみ設けられてもよい。例えば、基体31において表面膜33を残したい部分をマスキングしてエッチング処理を行うことで、一部のチャンネル32にのみ表面膜33が設けられたマイクロチャンネルプレートを得ることができる。このマイクロチャンネルプレートでは、表面膜33が設けられたチャンネル32におけるイオンフィードバックの影響を抑制できるとともに、表面膜33が設けられないチャンネル32においてチャンネル32内を通過する電子の数を増やすことで電子増倍効率を高めることができる。
また、マイクロチャンネルプレート4では、基体31は、Al(金属)の陽極酸化処理により形成されている。この構成によれば、Alを陽極酸化処理して形成される微細孔構造体をマイクロチャンネルプレート4として利用することができ、マイクロチャンネルプレート4の製造を容易化することができる。また、Alの陽極酸化処理により形成される基体31は極薄となる傾向があるが、フレーム部材35により、マイクロチャンネルプレート4の強度及びハンドリング性を確保することができる。
また、上記実施形態において、表面膜33は設けられていなくてもよい。例えば、上述のマイクロチャンネルプレート4の製造工程の剥離工程(図5の(c)参照)において、陽極酸化皮膜91の表面膜33の部分を除去し、チャンネル32が基体31の入力面4aから出力面4bにかけて貫通するようにしてもよい。この場合、基体31の入力面4aの周縁部に設けられる第1フレーム部材35aは、隔壁部34の入力面4a側の端面に接着されることとなる。特に、孔径φ1μm以下のバイオ用やガス用フィルタとして上述のマイクロチャンネルプレート4を利用する場合には、表面膜33が設けられていない方が好ましい。更に、この場合、フレーム部材35とマイクロチャンネルプレート4とを、任意の接着剤を用いて接着してもよい。
図6は、基体31の入力面4aの周縁部に設けられたフレーム部材の例を示す図である。上記実施形態では、図6の(a)に示すように、基体31の周縁部に沿った円環状のフレーム部材35について説明した。しかし、フレーム部材の平面形状は、これに限られず、図6の(b)〜(j)に示すような形状であってもよい。例えば図6の(b)〜(h)に示す変形例に係るフレーム部材41〜47のように、フレーム部材は、基体31の入力面4aの周縁部の少なくとも一部に設けられてもよい。なお、図6の(b)〜(j)に示すフレーム部材41〜49は、基体31の入力面4a側に設けられてもよいし、基体31の出力面4b側に設けられてもよいし、基体31の両面に設けられてもよい。
図6の(b)に示すように、変形例に係るフレーム部材41は、基体31の一方面(この例では入力面4a)の周縁部に沿って略等間隔に配置された複数の小片部材41aから構成されている。また、図6の(c)に示すように、変形例に係るフレーム部材42は、それぞれ基体31の周縁部に沿った円弧状の4つの小片部材42aから構成されている。ここで、4つの小片部材42aは、基体31に対して垂直かつ基体31の中心を通る軸線回りに90°間隔に配置されている。また、図6の(d)に示すように、変形例に係るフレーム部材43は、図6の(c)に示した4つの小片部材42aのそれぞれをさらに複数(一例として5つ)の小片部材43aに分けた構成となっている。
また、図6の(e)に示すように、変形例に係るフレーム部材44は、それぞれ基体31の周縁部に沿った円弧状の2つの小片部材44aから構成されている。ここで、2つの小片部材44aは、基体31に対して垂直かつ基体31の中心を通る軸線回りに180°間隔に配置されている。また、図6の(f)に示すように、変形例に係るフレーム部材45は、図6の(e)に示した2つの小片部材44aのそれぞれをさらに複数(一例として5つ)の小片部材45aに分けた構成となっている。
また、図6の(g)に示すように、変形例に係るフレーム部材46は、それぞれ直線状に延びる4つの小片部材46aから構成されてもよい。ここで、4つの小片部材46aは、基体31に対して垂直かつ基体31の中心を通る軸線回りに90°間隔に配置されている。また、図6の(h)に示すように、変形例に係るフレーム部材47は、それぞれ直線状に延びる2つの小片部材47aから構成されてもよい。ここで、2つの小片部材47aは、基体31に対して垂直かつ基体31の中心を通る軸線回りに180°間隔に配置されている。
また、図6の(i)に示すように、変形例に係るフレーム部材48は、平面視で四角環状に形成されており、各辺の中央部が基体31の一方面(この例では入力面4a)の周縁部の少なくとも一部に接着されている。また、図6の(j)に示すように、変形例に係るフレーム部材49は、基体31の周縁部に沿った円環状のメインフレーム49aと、当該メインフレーム49aに接続されて基体31の一方面を格子状に覆う格子部材49bとから構成されている。このフレーム部材49は、例えば基体31の面積が大きい場合(例えば基体31の直径が50mm程度である場合等)に、マイクロチャンネルプレート4の強度を確保するのに適している。
また、上記実施形態では、図7の(a)に示すように、基体31の側面4cと第1フレーム部材35a及び第2フレーム部材35bの外側面とが面一となる形態について説明した。しかし、フレーム部材の側面形状は、これに限られず、図7の(b)〜(f)に示すような形状であってもよい。なお、図7においては、基体及びフレーム部材のみを模式的に示す。
図7の(b)に示すように、変形例に係るフレーム部材51は、基体31の入力面4a側の周縁部の少なくとも一部に設けられた第1フレーム部材51aと基体31の出力面4b側の周縁部の少なくとも一部に設けられた第2フレーム部材51bとを有している。第1フレーム部材51a及び第2フレーム部材51bの外側面は、基体31の側面4cよりも外側に突出しており、第1フレーム部材51a及び第2フレーム部材51bは、それぞれ基体31の側面4cの少なくとも一部を覆う側壁部51cに接続されている。すなわち、第1フレーム部材51a、第2フレーム部材51b、及び側壁部51cは、断面コ字状に一体的に形成されている。この構成によれば、側壁部51cにより基体31の側面4cを支持することができるため、マイクロチャンネルプレート4の強度及びハンドリング性をより一層向上させることができる。
また、図7の(c)に示すように、変形例に係るフレーム部材52は、2つのフレーム部材(第1フレーム部材52a及び第2フレーム部材52b)に分かれている点で、上記フレーム部材51と相違する。具体的には、フレーム部材52は、上記フレーム部材51における側壁部51cが、第1フレーム部材51aと一体的に形成された部分と、第2フレーム部材51bと一体的に形成された部分とに分割されている点で、上記フレーム部材51と相違する。
また、図7の(d)に示すように、変形例に係るフレーム部材53は、上記実施形態に係る第1フレーム部材35aのみを有し、第2フレーム部材35bを有さない構成となっている。なお、フレーム部材の構成としては、上記実施形態に係る第2フレーム部材35bのみを有し、第1フレーム部材35aを有さない構成を採用してもよい。
また、図7の(e)に示すように、変形例に係るフレーム部材54は、基体31の入力面4aの周縁部の少なくとも一部に設けられたフレーム部材54aと、基体31の側面4cの少なくとも一部を覆う側壁部54bとが一体的に形成された構成をなしている。なお、これとは異なり、フレーム部材の構成として、基体31の出力面4b側の周縁部の少なくとも一部に設けられたフレーム部材と、基体31の側面4cの少なくとも一部を覆う側壁部とが一体的に形成された構成を採用してもよい。
また、図7の(f)に示すように、光電面3側に配置される1段目のマイクロチャンネルプレート10Aとマイクロチャンネルプレート10Aよりも蛍光面5側に配置された2段目のマイクロチャンネルプレート10Bとを重ねた2段構成とする場合を考える。この例では、マイクロチャンネルプレート10Aは、基体31Aと、基体31Aの入力面4aの周縁部に設けられたフレーム部材55Aと、を有する。また、マイクロチャンネルプレート10Bは、基体31Bと、基体31Bの出力面4bの周縁部に設けられたフレーム部材55Bと、を有する。
基体31Aと基体31Bとの間には、基体31Aの出力面4bの周縁部に接着されるとともに、基体31Bの入力面4aの周縁部に接着されるフレーム部材55Cが設けられている。フレーム部材55Cにより、基体31Aと基体31Bとが適切に支持される。なお、このような2段構成においては、上記実施形態の表面膜33を備えるマイクロチャンネルプレート4は、1段目のマイクロチャンネルプレート10Aとして用いることができる。