以下、本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る変速操作機構30を備えた手動変速機1を車体幅方向反エンジン側から見た断面図であり、図2は、同手動変速機1の底面図である。
[手動変速機の構成]
図1及び図2に示すように、手動変速機1は、例えば前輪駆動式の車両に搭載される横置き式のものであり、手動変速機1の車体幅方向の一方の側には、クラッチ18を挟んで車両動力源としてのエンジン(図示せず)が配設されている。
手動変速機1は、クラッチ18を介してエンジンのクランクシャフト(図示せず)に接続可能な変速機構2と、該変速機構2を収容する変速機ケース20とを備えている。
変速機ケース20のエンジン側の端面は、クラッチハウジング19の反エンジン側の端面に合わされた状態で結合されており、変速機ケース20及びクラッチハウジング19の車体後方側部分に差動装置10が収容されている。
図1に示すように、変速機構2は、それぞれ車体幅方向に延びるプライマリシャフト3、セカンダリシャフト4及びリバースシャフト5を備えている。プライマリシャフト3は、クラッチ18を介してエンジンのクランクシャフトに連結され、セカンダリシャフト4は、差動装置10を介して駆動輪(図示せず)に連結されている。リバースシャフト5は、後述のリバース用のギヤ列を形成するために設けられている。
プライマリシャフト3、セカンダリシャフト4及びリバースシャフト5は、駆動輪に連結されたドライブシャフト12に比べて車体前方側で且つ高い位置に配設されている。また、セカンダリシャフト4は、プライマリシャフト3に比べて車体後方側で且つ低い位置に配設されており、リバースシャフト5は、プライマリシャフト3に比べて車体前方側で且つ低い位置に配設されている。
プライマリシャフト3とセカンダリシャフト4との間には、複数の前進変速段用のギヤ列と1つのリバース用のギヤ列が設けられており、運転者のチェンジレバー(図示せず)の操作により、変速操作機構30を介して1つのギヤ列が動力伝達状態とされる。
前進変速段用の各ギヤ列は、プライマリシャフト3に設けられたドライブギヤ6と、セカンダリシャフト4に設けられたドリブンギヤ7とを備え、ドライブギヤ6とドリブンギヤ7は常時噛み合っている。これらのギヤ6,7のうち、一方はシャフト3,4に固定された固定ギヤとされると共に、他方はシャフト3,4に遊嵌された遊転ギヤとされており、該遊転ギヤが同期装置(図示せず)によってシャフト3,4に固定されることで、当該前進変速段用のギヤ列が動力伝達状態となる。
リバース用のギヤ列は、プライマリシャフト3に固定されたプライマリギヤ8a、セカンダリシャフト4に固定されたセカンダリギヤ8b、及び、リバースシャフト5に摺動可能に設けられたリバースアイドルギヤ8cを備えている。プライマリギヤ8aとセカンダリギヤ8bとは、直接噛み合うことがなく、リバースアイドルギヤ8cを介して間接的に噛み合い可能とされている。
リバースアイドルギヤ8cは、前進変速段状態及び中立状態ではプライマリギヤ8a及びセカンダリギヤ8bから軸方向にずれて配置されているが、チェンジレバーがリバース位置に操作されると、リバースシャフト5上をリバースアイドルギヤ8cが摺動してプライマリギヤ8aとセカンダリギヤ8bとに噛み合う。このようにプライマリギヤ8aとセカンダリギヤ8bとがリバースアイドルギヤ8cを介して噛み合うことで、リバース用のギヤ列が動力伝達状態となる。
また、セカンダリシャフト4上には、変速機構2の出力ギヤ9が固定されており、該出力ギヤ9は、差動装置10のデフリングギヤ11に常時噛み合っている。デフリングギヤ11は出力ギヤ9よりも大径とされており、これにより、変速機構2の出力は、出力ギヤ9とデフリングギヤ11との間で減速されて差動装置10に伝達され、該差動装置10から左右のドライブシャフト12へ、走行状況に応じた回転差となるように動力が伝達される。
デフリングギヤ11は、変速機ケース20における変速機構2を収容する部分の下面部23よりも下側に突出して配置されており、変速機ケース20は、変速機構2を収容する部分の下面部23に比べて差動装置10を収容する部分の下面部26が低く配置されるように構成されている。
このような変速機ケース20の形状によって、変速機ケース20における変速機構2を収容する部分の下面部23の下方且つ差動装置10の車体前方側には空間が形成されており、本実施形態では、該空間に、変速操作機構30における後述のカウンタウェイト70及び係合機構80を収容する収容室90が設けられている。
変速機ケース20には、下面部23から下方に突出した周壁25が設けられており、該周壁25で囲まれた空間が収容室90とされている。周壁25の下端は、差動装置10を収容する部分の下面部26の下端と略同じ高さに配置されている。周壁25の下端面には、収容室90を下側から塞ぐ蓋部材27が例えばボルトによって固定されている。蓋部材27には、収容室90を外部空間に連通させるための連通穴29が設けられており、これにより、収容室90の圧力変動が軽減されると共に、結露で発生した水や外部から侵入した水などが連通穴29を通して収容室90の外側に排出され得る。
[変速操作機構]
変速操作機構30としては、例えば、予め組み立てられた状態で変速機ケース20に取り付けられるカセット式のものが用いられる。変速操作機構30は、セレクトケーブル(図示せず)及びシフトケーブル(図示せず)を介してチェンジレバーに連絡されており、チェンジレバーの操作に連動して動作するようになっている。
変速操作機構30は、変速機ケース20の上面部21を貫通して上下方向に延びるコントロールロッド32を備えている。後述の構成によって、コントロールロッド32は、チェンジレバーのセレクト操作に連動して軸方向(矢印D1方向)に移動し、シフト操作に連動して軸心周りに矢印D2方向に回動する。
変速操作機構30は、例えば円板状のベース部材31を更に備えている。ベース部材31は、変速機ケース20の上面部21に設けられた開口部22を上側から塞ぐように配置され、例えばボルトによって上面部21における開口部22の周縁部に固定されている。
ベース部材31の中央部には、上下方向に延びる筒状部31aが設けられており、該筒状部31a内にコントロールロッド32が挿通されている。コントロールロッド32は、筒状部31aの内側に、軸受部材44を介して軸方向移動自在且つ回動自在に嵌合されている。軸受部材44としては、例えば、内周面がフッ素樹脂等でコーティングされた金属製のブッシュが用いられ、これにより、軸受部材44の内周面に対するコントロールロッド32の摺動抵抗及び回転抵抗が軽減されている。
また、コントロールロッド32の外周面と筒状部31aの内周面との間には、軸受部材44の上方に隣接した部分において、例えばゴムからなる筒状のシール部材45が介装されており、これにより、変速機ケース20内のオイルが筒状部31a内を通って外部へ漏れ出ることが防止される。
コントロールロッド32の下端側は、変速機ケース20の下面部23を貫通しており、コントロールロッド32の下端部は、上記の収容室90に収容されている。変速機ケース20には、下面部23を上下方向に貫通する貫通穴24が設けられており、該貫通穴24に、コントロールロッド32が挿通されている。コントロールロッド32は、貫通穴24の内側に、軸受部材46を介して軸方向移動自在且つ回動自在に嵌合されている。軸受部材46としては、例えば、内周面がフッ素樹脂等でコーティングされた金属製のブッシュが用いられ、これにより、軸受部材46の内周面に対するコントロールロッド32の摺動抵抗及び回転抵抗が軽減されている。
また、コントロールロッド32の外周面と貫通穴24の内周面との間には、軸受部材46の下方に隣接した部分において、例えばゴムからなる筒状のシール部材47が介装されており、これにより、変速機ケース20内のオイルが貫通穴24を通って収容室90側へ漏れ出ることが防止される。
さらに、変速操作機構30は、チェンジレバーのセレクト操作に連動してコントロールロッド32を軸方向に移動させるセレクトアウタレバー34と、チェンジレバーのシフト操作に連動してコントロールロッド32を軸心周りに回動させるシフトアウタレバー40と、シフト操作時にコントロールロッド32の回動に連動して回動することでシフトフィーリングを向上させるカウンタウェイト70と、カウンタウェイト70をコントロールロッド32に係合させる係合機構80とを備えている。
セレクトアウタレバー34及びシフトアウタレバー40は、変速機ケース20の上面部21の上方に配設されており、カウンタウェイト70及び係合機構80は、変速機ケース20の外側に下面部23に沿って設けられた前記収容室90内に配設されている。
セレクトアウタレバー34は、水平方向に延びる支持軸38によって、該支持軸38の軸心周りに回動自在に支持されている。支持軸38は、ベース部材31から上方に突出した支持部39を介してベース部材31に支持されている。
セレクトアウタレバー34は、支持軸38に支持された部分から互いに異なる方向に延びる操作レバー部35と駆動レバー部36を備えている。操作レバー部35の先端部には、前記セレクトケーブルが接続されるケーブルピン37が設けられている。ケーブルピン37は、支持軸38に平行に延びるように配置されている。駆動レバー部36の先端部には、コントロールロッド32に係合される例えば円板状の被係合部36aが設けられている。被係合部36aは、コントロールロッド32の上端近傍部に水平に延びるように設けられた溝部32aに係合されている。
なお、コントロールロッド32の上端部には、溝部32aとセレクトアウタレバー34との係合部を保護するための例えば樹脂製のキャップ42が被せられており、該キャップ42によって溝部32aが覆われることで、溝部32aとセレクトアウタレバー34との係合部への異物の噛み込みが抑制されている。
上記のようにセレクトアウタレバー34がコントロールロッド32に係合されていることにより、チェンジレバーのセレクト操作に連動してセレクトアウタレバー34が支持軸38の軸心周りに回動すると、これによって上下に揺動するセレクトアウタレバー34の被係合部36aによって上方又は下方に押し込まれることで、コントロールロッド32が上下に軸方向移動する。
シフトアウタレバー40は、水平方向に延びるように配置されており、その一端部において、コントロールロッド32における溝部32aの下側近傍部に例えば溶接によって固定されている。シフトアウタレバー40の他端部には、前記シフトケーブルが接続されるケーブルピン41が例えば溶接によって固定されている。ケーブルピン41は、シフトアウタレバー40から上方に突出して、コントロールロッド32に平行な方向に延びるように配置されている。
チェンジレバーがシフト操作されると、シフトアウタレバー40は、コントロールロッド32と共に該コントロールロッド32の軸心周りに回動する。
コントロールロッド32における変速機ケース20内に位置する部分にはスリーブ部材50が嵌合されている。スリーブ部材50は、該スリーブ部材50及びコントロールロッド32を径方向に貫通するピン51によって、コントロールロッド32に固定されており、これにより、スリーブ部材50は、コントロールロッド32と共に軸方向移動及び回動するようになっている。
スリーブ部材50には、該スリーブ部材50の外周面から径方向外側に延びるシフトフィンガ52が設けられている。
チェンジレバーによる前進段でのセレクト操作に連動してコントロールロッド32が上下に軸方向移動すると、シフトフィンガ52は、コントロールロッド32と共に上下方向に移動して、変速機ケース20内においてコントロールロッド32の近傍に上下方向に並べて配設された複数のゲート部材(図示せず)のうち、セレクト操作により選択されたセレクト位置に対応するゲート部材に係合する。
この状態で更にシフト操作が行われると、コントロールロッド32と共にシフトフィンガ52が回動することで、シフトフィンガ52に係合されたゲート部材を介して、シフト操作により選択された変速段に対応する同期装置(図示せず)が作動され、これにより、該変速段のギヤ列が動力伝達状態となる。
また、チェンジレバーにより後退段へのセレクト操作が行われると、コントロールロッド32と共に軸方向移動したシフトフィンガ52がリバース用のゲート部材に係合し、この状態で更に後退段にシフト操作されると、コントロールロッド32と共にシフトフィンガ52が回動することで、リバース用のゲート部材を介して、リバースアイドルギヤ8cがリバースシャフト5上を軸方向に移動されてプライマリギヤ8a及びセカンダリギヤ8bに噛み合わされ、これにより、リバース用のギヤ列が動力伝達状態となる。
スリーブ部材50の外周面の一部はカム面54とされており、該カム面54には、ブラケット62を介してベース部材31に固定された押圧部材60が押圧されている。押圧部材60には弾性部材が内蔵されており、該弾性部材の弾性力がカム面54に加えられる。
カム面54には、シフト方向の位置(一方のシフト完了位置、中立位置、他方のシフト完了位置)に応じて押圧部材60が選択的に係合される3つの凹部が周方向に並設されると共に、各凹部は上下方向に延びる溝状に形成され、各凹部の底部には、セレクト方向の中立状態において押圧部材60に当接する最深部から上方に向かうに従って浅くなるような傾斜と、前記最深部から下方に向かうに従って浅くなるような傾斜とが形成されている。これにより、カム面54と押圧部材60は、セレクト操作によって上方又は下方に軸方向移動したコントロールロッド32を中立位置へ戻そうとする力を発生させるセレクトリターン機能と、コントロールロッド32をシフト方向の所定位置に位置決めするディテント機能とを有する。
なお、ブラケット62には、スリーブ部材50の外周面に対向配置されたガイドプレート64が一体的に設けられており、該ガイドプレート64においてシフトパターンに対応して形成されたガイド穴(図示せず)に、スリーブ部材50の外周面に突設されたガイドピン(図示せず)が挿通されている。これにより、セレクト操作時及びシフト操作時に、ガイドプレート64のガイド穴に沿ってガイドピンを案内するガイド機能が果たされる。
さらに、コントロールロッド32には、インターロック規制部材56が取り付けられている。インターロック規制部材56は、軸方向の両側からスリーブ部材50を挟み込むような例えば側面視C字形の形状を有し、これにより、セレクト操作時にスリーブ部材50の軸方向移動に追従して軸方向に移動される。
インターロック規制部材56は、コントロールロッド32の外側に回動自在に嵌合されている。また、インターロック規制部材56には、押圧部材60との干渉を回避するための切欠部56aが設けられており、該切欠部56aの周縁部によって、周方向の両側から押圧部材60が挟み込まれている。これにより、シフト操作に連動してコントロールロッド32が回動するとき、押圧部材60によってインターロック規制部材56の回動が規制される。
インターロック規制部材56は、シフトフィンガ52の上側に隣接して配置される上側爪部57と、シフトフィンガ52の下側に隣接して配置される下側爪部58とを備えている。セレクト操作によって選択されたゲート部材にシフトフィンガ52が係合されたとき、該ゲート部材を除いた残りの全てのゲート部材は、上側又は下側のいずれかの爪部57,58に係合される。そのため、シフト操作時に、シフトフィンガ52に係合したゲート部材以外のゲート部材の作動は、インターロック規制部材56の爪部57,58によって規制され、これにより、同時に複数の変速段のギヤ列が動力伝達状態となるインターロックが回避される。
カウンタウェイト70は、コントロールロッド32の下方に配設された軸部材76の外側に嵌合された嵌合部71と、嵌合部71から径方向外側に延びるアーム部72と、アーム部72の先端に設けられた錘部73とを備えている。
軸部材76は、蓋部材27に設けられた貫通穴28と、カウンタウェイト70の嵌合部71に設けられた貫通穴71aとに挿通されており、軸部材76の一端に設けられた頭部76aと、他端に設けられたかしめ部76bとによって、蓋部材27及び嵌合部71を上下両側から挟み込んでいる。これにより、嵌合部71は、軸部材76によって位置決めされた状態で蓋部材27上に支持されており、カウンタウェイト70は、片持ち状に支持されるように蓋部材27に取り付けられている。
なお、かしめ部76bは、軸部材76の抜け止め及びカウンタウェイト70の傾き抑制を果たし得るように設けられたものであって、かしめ部76bによる蓋部材27に対する嵌合部71の締結力は、軸部材76周りのカウンタウェイト70の回動を許容する程度の比較的小さな力とされている。また、嵌合部71の貫通穴71aの内周面と軸部材76の外周面との間には、ブッシュ等の軸受部材が介装されてもよく、これにより、回動抵抗の軽減を図ることが可能になる。
カウンタウェイト70の回動軸である軸部材76は、コントロールロッド32の軸線上に配置されている。そのため、カウンタウェイト70は、コントロールロッド32の軸心周りに回動可能となっている。
本実施形態において、カウンタウェイト70の嵌合部71は、コントロールロッド32とは別の軸部材76に嵌合されているため、コントロールロッド32を嵌合部71の高さまで下方へ延長させる必要がなく、コントロールロッド32の軸方向寸法を短縮できる。これにより、コントロールロッド32を軽量化でき、これによって、セレクト操作性及びシフト操作性の向上が図られる。
アーム部72は、蓋部材27の上方に間隔を空けて配置されており、嵌合部71を介して蓋部材27に支持されている。アーム部72は、細長い板状部であり、嵌合部71から例えば車体後方側に延びるように配置されている。なお、アーム部72は、嵌合部71及び錘部73に対して、それぞれ一体に設けられてもよいし、例えば溶接により接合されてもよい。
錘部73は、蓋部材27の上方に間隔を空けて配置されており、アーム部72及び嵌合部71を介して蓋部材27に支持されている。錘部73は、嵌合部71及びアーム部72よりも大きな重量、周方向寸法(図2参照)及び上下方向寸法を有し、錘部73の下端近傍部に、アーム部72の先端が連なっている。
カウンタウェイト70をコントロールロッド32に係合させる係合機構80は、コントロールロッド32の下端部に固定された支持部81と、該支持部81から径方向外側に延びるレバー部83と、カウンタウェイト70のアーム部72から上方に突出してレバー部83に係合する係合ピン84とを備えている。
支持部81は、コントロールロッド32の外側に嵌合された筒状部材であり、支持部81及びコントロールロッド32を径方向に貫通するピン82によって、コントロールロッド32に固定されている。
レバー部83は、細長い板状部であり、支持部81から例えば車体後方側へ延びるように配置されている。レバー部83は、カウンタウェイト70のアーム部72の上方において、アーム部72に平行に配置されている。レバー部83の先端は、カウンタウェイト70の錘部73よりも径方向内側に配置されている。レバー部83は、例えば溶接によって支持部81に接合されている。
レバー部83の先端近傍部には貫通穴83aが設けられており、該貫通穴83aに係合ピン84が挿通されている。係合ピン84は、コントロールロッド32に平行に配置されている。係合ピン84の下端部は、カウンタウェイト70のアーム部72の上面に例えば溶接によって固定されている。
このように構成された係合機構80を介してカウンタウェイト70がコントロールロッド32に係合されることで、シフト操作時には、コントロールロッド32の回動に連動してカウンタウェイト70が回動し、セレクト操作時には、カウンタウェイト70に対するコントロールロッド32の軸方向への相対移動が許容される。
具体的に、チェンジレバーのシフト操作に連動して、シフトアウタレバー40と共にコントロールロッド32が回動すると、コントロールロッド32と共に回動するレバー部83によって、係合ピン84が周方向に押し込まれることで、該係合ピン84を介して、カウンタウェイト70が、コントロールロッド32と同じ軸線上に配置された軸部材76周りに回動され、これによって生じたカウンタウェイト70の慣性によって、シフトフィーリングが向上する。
また、チェンジレバーのセレクト操作に連動して、コントロールロッド32と共にレバー部83が上下方向に移動するとき、レバー部83の貫通穴83aは係合ピン84に沿って移動するため、係合機構80によってカウンタウェイト70が上下に動かされることはない。したがって、セレクト操作によってコントロールロッド32が上下動されるとき、カウンタウェイト70の重量がかかることがなく、良好なセレクト操作性が得られる。
なお、係合ピン84の長さは、セレクト操作に連動してコントロールロッド32と共にレバー部83が上下方向に移動しても該レバー部83との係合状態が常に維持されるような長さとされている。
また、係合ピン84は、レバー部83の貫通穴83aに遊嵌されており、これにより、セレクト操作に連動してレバー部83が上下動するとき、該レバー部83の貫通穴83aの内周と係合ピン84の外周との間の摺動抵抗が軽減される。さらに、カウンタウェイト70の嵌合部71と蓋部材27が軸部材76の頭部76aとかしめ部76bとによって挟み込まれることでカウンタウェイト70の傾きが抑制されていることにより、係合ピン84の傾きも抑制されるため、これによっても、貫通穴83aと係合ピン84との間の摺動抵抗が軽減される。
以上の通り、カウンタウェイト70は、係合ピン84を介してコントロールロッド32に係合されるため、カウンタウェイト70の嵌合部71、アーム部72又は錘部73自体に係合部を設ける必要がない。これにより、嵌合部71、アーム部72又は錘部73の大型化が抑制されることで、カウンタウェイト70の軽量化が図られる。
[変速操作機構の組付け]
変速操作機構30は、2つのサブアセンブリを個別に変速機ケース20に組み付けた後、これらのサブアセンブリ同士を組み付けることで、組み立てられる。具体的には、変速操作機構30におけるカウンタウェイト70及び係合機構80以外の部品は第1サブアセンブリを構成し、カウンタウェイト70及び係合機構80は、軸部材76及び蓋部材27と共に第2サブアセンブリを構成する。
第1サブアセンブリは、上方から変速機ケース20に組み付けられる。このとき、第1サブアセンブリにおけるベース部材31よりも下側に配置される部分は、変速機ケース20の上面部21に設けられた開口部22を通して変速機ケース20内に挿入され、さらに、コントロールロッド32の下端部は、下面部23に設けられた貫通穴24を通して収容室90に挿入される。その後、ベース部材31が例えばボルトによって変速機ケース20の上面部21に固定されることで、変速機ケース20への第1サブアセンブリの組付けが完了する。
第2サブアセンブリでは、変速機ケース20への組付け前において、カウンタウェイト70が軸部材76を介して蓋部材27に取り付けられており、係合機構80も、レバー部83の貫通穴83aに係合ピン84が挿通されることで、カウンタウェイト70を介して蓋部材27に取り付けられている。該第2サブアセンブリは、下方から変速機ケース20に組み付けられる。具体的には、変速機ケース20の収容室90にカウンタウェイト70及び係合機構80を挿入しつつ、該収容室90を蓋部材27によって下側から塞いで、蓋部材27を例えばボルトによって周壁25の下端面に固定し、これにより、変速機ケース20に第2サブアセンブリが組み付けられる。
続いて、周壁25に設けられたサービスホール25aを通して、ピン82の打ち込みを行うことで、コントロールロッド32の下端部に係合機構80の支持部81を固定し、これによって、第1サブアセンブリに第2サブアセンブリが組み付けられて、変速操作機構30の組み立てが完了する。なお、サービスホール25aは、ピン82の打ち込み完了後にキャップ92が嵌め込まれることで閉じられる。
[特徴及び効果]
以上で説明した変速操作機構30は、以下の特徴及び効果を有する。
先ず、セレクトアウタレバー34及びシフトアウタレバー40は、通常通り、コントロールロッド32の上端側に配設されているのに対して、カウンタウェイト70及び係合機構80は、コントロールロッド32の下端側に配設されている。これにより、シフト操作時に回動するカウンタウェイト70及び係合機構80が、セレクトアウタレバー34、シフトアウタレバー40、セレクトケーブル及びシフトケーブルに干渉することを確実に回避できる。
また、変速機ケース20の上方には、手動変速機1を含むパワートレインをサイドフレーム等の車体に支持させるマウント部材や、各種ハーネス及び各種パイプ等、多くの部品が密集して配設されており、コントロールロッド32の上端部の周囲にも多くの部品が存在する。これに対して、変速機ケース20の下方に配設される部品は少ないため、カウンタウェイト70及び係合機構80が変速機ケース20の下側に配設されることで、周辺部品との干渉を容易に回避できる。
そのため、カウンタウェイト70及び係合機構80のレイアウト及び構造の自由度の向上を図ることができる。また、周辺部品との干渉を回避するためにカウンタウェイト70のアーム部72が短縮されることを抑制できるため、カウンタウェイト70の回動時に所要の慣性モーメントを得るために回動半径の短縮分を相殺するようにカウンタウェイト70の重量を増大させることを抑制できる。これにより、カウンタウェイト70の軽量化が図られることで、車両の燃費性能向上に寄与することができる。
また、カウンタウェイト70及び係合機構80がコントロールロッド32の下端側に配設されていることにより、コントロールロッド32の上端側においてカウンタウェイト70との係合部を確保しなくてもよいため、変速機ケース20の上面部21からのコントロールロッド32の突出量を低減できる。
さらに、カウンタウェイト70と係合機構80は収容室90に収容されている。該収容室90は、変速機ケース20の下面部23と、該下面部23から下方に突出した周壁25と、該周壁25の下端開口部を塞ぐ蓋部材27とによって囲まれているため、泥水や埃などの異物が収容室90に侵入することが抑制される。そのため、カウンタウェイト70の嵌合部71の内周面と軸部材76の外周面との隙間や、レバー部83の貫通穴83aの内周面と係合ピン84の外周面との隙間等に異物が噛み込むことを防止できるため、異物の詰まりや凍結によってコントロールロッド32及びカウンタウェイト70の動作に支障を来すことを抑制でき、これにより、セレクト操作性及びシフト操作性の悪化が抑制される。
また、収容室90は、変速機ケース20の下方において変速機構2の下方で且つ差動装置10の車体前方側に生じたデッドスペースに設けられている。よって、このようなデッドスペースを利用してカウンタウェイト70及び係合機構80が配設されることで、変速機ケース20の上下方向寸法が増大したり、変速機ケース20内の構造が変更されたり、変速機ケース20の周辺部品のレイアウトが変更されたりすることを抑制できる。
さらに、図2に示すように、変速機ケース20は、車体幅方向のエンジン側に向かって拡径した形状を有しているため、変速機ケース20下方の上記デッドスペースは、車体幅方向エンジン側部分において車体前後方向に広く形成されると共に、車体前後方向中央部においては車体幅方向に広く形成されている。
このような広いデッドスペースを利用して形成された収容室90内において、カウンタウェイト70の回動軸である軸部材76は、車体前方側で且つ車体幅方向エンジン側の位置に配置されており、カウンタウェイト70は、軸部材76から車体後方側へ延びるように配置されている。これにより、収容室90内の車体後方側部分には、シフト操作に連動してカウンタウェイト70が回動するときに錘部73が周方向に移動するためのスペースが十分に確保される。
そのため、カウンタウェイト70のアーム部72を十分に長くしても、カウンタウェイト70を収容室90に収めることができる。したがって、所要の慣性モーメントを確保しつつ、カウンタウェイト70の軽量化を図ることができる。
[第2実施形態]
続いて、図3を参照しながら、第2実施形態に係る変速操作機構130について説明する。
図3は、第2実施形態に係る変速操作機構130を備えた手動変速機101を車体幅方向反エンジン側から見た断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成要素については、図3において同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。
手動変速機101の全体的な構成は、第1実施形態の手動変速機1と同様であり、手動変速機101は、変速機構2と、変速機構2を収容する変速機ケース20とを備えている。また、変速機ケース20には、変速機構2の他に、変速操作機構130の一部と、差動装置10とが収容されている。
また、第1実施形態と同様、変速機ケース20における変速機構2を収容する部分の下面部23の下方且つ差動装置10の車体前方側に生じたスペースを利用して、第1実施形態と同様の収容室90が設けられている。
変速操作機構130におけるカウンタウェイト170及び係合機構180以外の構成は、第1実施形態に係る変速操作機構30と同様であり、セレクト操作時及びシフト操作時には第1実施形態と同様の動作を行う。
また、第1実施形態と同様、コントロールロッド32の下端側は、変速機ケース20の下面部23を貫通しており、コントロールロッド32の下端部は収容室90内に配置されている。ただし、第1実施形態と異なり、コントロールロッド32の下端部の外周面にはスプラインが形成されている。
カウンタウェイト170は、コントロールロッド32の下端部のスプラインに係合されるスプラインが内周面に形成された筒状部171と、筒状部71から径方向外側に延びるアーム部172と、アーム部172の先端に設けられた錘部173とを備えており、カウンタウェイト170をコントロールロッド32に係合させる係合機構180は、コントロールロッド32の下端部とカウンタウェイト170の筒状部171とのスプライン嵌合部で構成されている。
筒状部171の下端部は、例えば樹脂からなる低摩擦ブッシュ182を介して、蓋部材27の上面に設けられた凹部27aに嵌合されている。蓋部材27と筒状部171との間にブッシュ182が介在することで、回転抵抗の軽減ひいては焼き付き防止が図られている。
なお、ブッシュ182は、蓋部材27と筒状部171のいずれにも固定されることなく両者の間に介装されてもよいし、例えば圧入によって蓋部材27の凹部27a又は筒状部171の外周面の一方に固定されてもよい。
このように筒状部171がブッシュ182を介して蓋部材27上に支持されることで、カウンタウェイト170は、片持ち状に支持されるように蓋部材27に取り付けられている。
アーム部172は、蓋部材27の上方に間隔を空けて配置されており、筒状部171を介して蓋部材27に支持されている。アーム部172は、細長い板状部であり、筒状部171におけるコントロールロッド32に嵌合された高さ部分から例えば車体後方側に延びるように配置されている。なお、アーム部172は、筒状部171及び錘部173に対して、それぞれ一体に設けられてもよいし、例えば溶接により接合されてもよい。
錘部173は、蓋部材27の上方に間隔を空けて配置されており、アーム部172及び筒状部171を介して蓋部材27に支持されている。錘部173は、筒状部171及びアーム部172よりも大きな重量、周方向寸法及び上下方向寸法を有する。
以上の構成により、チェンジレバーのシフト操作に連動して、シフトアウタレバー40と共にコントロールロッド32が回動するとき、コントロールロッド32にスプライン嵌合されたカウンタウェイト170も共に回動し、これによって生じたカウンタウェイト170の慣性によって、シフトフィーリングが向上する。
また、カウンタウェイト170の筒状部171に対してコントロールロッド32は軸方向に相対移動自在であるため、チェンジレバーのセレクト操作に連動して、コントロールロッド32が上下方向に移動するとき、カウンタウェイト70が上下に動かされることはない。したがって、セレクト操作によってコントロールロッド32が上下動されるとき、カウンタウェイト170の重量がかかることがなく、良好なセレクト操作性が得られる。
なお、変速機ケース20の下面部23と筒状部171の上端との間において、コントロールロッド32の外側には筒状のスペーサ188が嵌合されており、該スペーサ188によって、コントロールロッド32に引き摺られた筒状部171の上方移動が規制されている。これにより、カウンタウェイト170の上下移動が確実に防止されている。
また、カウンタウェイト170の筒状部171及びコントロールロッド32の各軸方向寸法、並びに、筒状部171の内周面及びコントロールロッド32の外周面における各スプラインの軸方向寸法は、セレクト操作に連動してコントロールロッド32が上下方向に移動しても、筒状部171とコントロールロッド32とのスプライン嵌合状態が常に維持されるような長さとされている。
変速操作機構130におけるカウンタウェイト170以外の部品で構成されるサブアセンブリは、第1実施形態と同様に変速機ケース20に上方から組み付けられる。その後、変速機ケース20の下面部23から下方に突出したコントロールロッド32部分に対して、スペーサ188とカウンタウェイト170の筒状部171を順に差し込んで、カウンタウェイト170を収容室90に挿入し、筒状部171と蓋部材27の凹部27aとの間にブッシュ182が介装されるように蓋部材27を周壁25の下端面に取り付けることで、変速操作機構130の組付けが完了する。
第2実施形態では、コントロールロッド32の下端部に筒状部171を下側から差し込むだけで、コントロールロッド32にカウンタウェイト170が組み付けられるため、この組付けを簡単に行うことができ、周壁25にサービスホールを設ける必要もない。
第2実施形態においても、カウンタウェイト170は、コントロールロッド32の下端側に配設されているため、セレクトアウタレバー34、シフトアウタレバー40、セレクトケーブル及びシフトケーブルとの干渉、並びに、マウント部材や各種ハーネス等の周辺部品との干渉を容易に回避できる。
そのため、カウンタウェイト170のレイアウト及び形状の自由度の向上を図ることができる。また、カウンタウェイト170のアーム部172の短縮が抑制されることで、所要の慣性モーメントを確保しつつカウンタウェイト170の軽量化を図ることができるため、車両の燃費性能向上に寄与することができる。
また、カウンタウェイト170及び係合機構180がコントロールロッド32の下端側に配設されていることにより、コントロールロッド32の上端側においてカウンタウェイト170との係合部を確保しなくてもよいため、変速機ケース20の上面部21からのコントロールロッド32の突出量を低減できる。
さらに、カウンタウェイト170が収容室90に収容されることにより、コントロールロッド32との嵌合部に泥水や埃などの異物が噛み込むことを防止できるため、異物の詰まりや凍結によってコントロールロッド32及びカウンタウェイト170の動作に支障を来すことを抑制でき、これにより、セレクト操作性及びシフト操作性の悪化が抑制される。
また、変速機構2の下方で且つ差動装置10の車体前方側に生じた変速機ケース20の下方のデッドスペースを利用してカウンタウェイト170が配設されることで、変速機ケース20の上下方向寸法が増大したり、変速機ケース20内の構造が変更されたり、変速機ケース20の周辺部品のレイアウトが変更されたりすることを抑制できる。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、コントロールロッドが上下方向に沿って配置され、該コントロールロッドの上端側にセレクトアウタレバー及びシフトアウタレバーが配置され、コントロールロッドの下端側にカウンタウェイト、係合機構及び変速機ケースの収容室が配置される例を説明したが、本発明において、コントロールロッドの向きは特に限定されるものでなく、セレクトアウタレバー、シフトアウタレバー、カウンタウェイト、係合機構及び収容室の配置は、コントロールロッドの向きに応じて適宜変更可能である。