以下、本発明の一実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.樹脂組成物
1−1.構成
1−2.製造方法
1−3.作用および効果
2.樹脂シート
2−1.構成
2−2.製造方法
2−3.作用および効果
3.樹脂硬化物
3−1.構成
3−2.製造方法
3−3.作用および効果
4.樹脂基板
4−1.構成
4−2.製造方法
4−3.作用および効果
以下で説明する本発明の一実施形態は、その本発明を説明するための例示である。このため、本発明は、ここで説明する一実施形態だけに限定されない。本発明の一実施形態は、その本発明の要旨を逸脱しない限り、種々の実施形態に変更可能である。
<1.樹脂組成物>
まず、本発明の一実施形態の樹脂組成物に関して説明する。
樹脂組成物は、後述する樹脂シート、樹脂硬化物および樹脂基板などを製造するために用いられる。ただし、樹脂組成物の用途は、他の用途でもよい。
<1−1.構成>
この樹脂組成物は、1つ以上のエポキシ基を含むと共に370以下のエポキシ当量を有するエポキシ化合物(以下、「低当量エポキシ化合物」と呼称する。)と、下記の式(1)で表されるトリフェニルベンゼン化合物とを含んでいる。
(R1〜R15のそれぞれは、水素基および反応基のうちのいずれかであり、その反応基は、水酸基およびアミノ基のうちのいずれかである。ただし、R1〜R15のうちの少なくとも1つは、反応基である。)
ここで説明する樹脂組成物は、上記したように、樹脂シートなどの中間生成物を製造すると共に、樹脂基板などの最終生成物(樹脂硬化物)を製造するために用いられる。この「中間生成物」とは、後述するように、樹脂組成物の硬化反応(架橋反応)が実質的に完了していない状態の物質を意味している。また、「最終生成物」とは、後述するように、樹脂組成物の硬化反応が実質的に完了した状態の物質を意味している。
熱硬化性樹脂である低当量エポキシ化合物は、いわゆる主剤である。一方、低当量エポキシ化合物と一緒に用いられると共に反応基を含むトリフェニルベンゼン化合物は、いわゆる硬化剤である。この硬化剤は、反応基を用いて低当量エポキシ化合物の架橋反応を進行させるために用いられる。
樹脂組成物が低当量エポキシ化合物と共にトリフェニルベンゼン化合物を含んでいるのは、樹脂硬化物の耐熱性および熱伝導性が向上するからである。なお、以下では、1つ以上のエポキシ基を含むと共に370よりも大きいエポキシ当量を有するエポキシ化合物を「高当量エポキシ化合物」と呼称する。
詳細には、主剤として高当量エポキシ化合物を用いると共に、硬化剤としてトリフェニルベンゼン化合物を用いると、樹脂組成物中に占めるトリフェニルベンゼン化合物の割合が相対的に小さくなる。この場合には、樹脂組成物中においてトリフェニルベンゼン化合物の骨格(1,3,5−トリフェニルベンゼン)の割合が相対的に小さくなるため、硬化反応時において架橋密度が低くなる。これにより、樹脂硬化物のガラス転移点が十分に高くならないと共に、その樹脂硬化物において十分な熱伝導率が得られない。
また、主剤として低当量エポキシ化合物を用いると共に、硬化剤としてトリフェニルベンゼン化合物以外の他の化合物を用いると、樹脂組成物中にトリフェニルベンゼン化合物の骨格(1,3,5−トリフェニルベンゼン)が含まれなくなる。これにより、架橋密度が大幅に低下するため、樹脂硬化物ではガラス転移点および熱伝導率がいずれも根本的に低下する。
これに対して、主剤として低当量エポキシ化合物を用いると共に、硬化剤としてトリフェニルベンゼン化合物を用いると、樹脂組成物中に占めるトリフェニルベンゼン化合物の割合が相対的に大きくなる。この場合には、樹脂組成物中においてトリフェニルベンゼン化合物の骨格(1,3,5−トリフェニルベンゼン)の割合が相対的に大きくなるため、硬化反応時において架橋密度が高くなる。これにより、樹脂硬化物のガラス転移点が高くなると共に、その樹脂硬化物において高い熱伝導率が得られる。
この樹脂組成物は、粉体状および塊状などの固体状でもよいし、液体状でもよいし、双方が混在する状態でもよい。この樹脂組成物の状態は、用途などに応じて適宜決定される。
なお、低当量エポキシ化合物とトリフェニルベンゼン化合物との混合比は、特に限定されない。ただし、エポキシ基を含む低当量エポキシ化合物と反応基を含むトリフェニルベンゼン化合物とが架橋反応する場合には、一般的に、1つのエポキシ基と反応基中の1つの活性水素とが反応する。よって、低当量エポキシ化合物とトリフェニルベンゼン化合物との反応効率を高くするためには、低当量エポキシ化合物に含まれているエポキシ基の総数とトリフェニルベンゼン化合物に含まれている活性水素の総数とが1:1となるように、混合比を設定することが好ましい。
[低当量エポキシ化合物]
主剤である低当量エポキシ化合物は、1つの分子の中に官能基として1つ以上のエポキシ基を含むと共に370以下のエポキシ当量を有する化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上である。この「エポキシ当量」は、上記したように、低当量エポキシ化合物の分子量を官能基(エポキシ基)の数で割った値であり、いわゆる1つのエポキシ基当たりの分子量である。中でも、低当量エポキシ化合物は、1つの分子の中に2つ以上のエポキシ基を含んでいることが好ましい。低当量エポキシ化合物とトリフェニルベンゼン化合物とが反応しやすくなるからである。
低当量エポキシ化合物の種類は、上記したように、1つ以上のエポキシ基を含むと共に370以下のエポキシ当量を有する化合物であれば、特に限定されない。なお、低当量エポキシ化合物が骨格とその骨格に導入された1つ以上の置換基とを含んでいる場合には、エポキシ基は、骨格に導入されていてもよいし、置換基に導入されていてもよいし、骨格および置換基の双方に導入されていてもよい。
また、低当量エポキシ化合物は、1つの分子の中に、骨格としてメソゲン骨格を含んでいることが好ましい。その理由は、以下の通りである。
第1に、低当量エポキシ化合物同士において、ベンゼン環同士が重なりやすくなるため、そのベンゼン環間の距離が小さくなる。これにより、樹脂組成物では、低当量エポキシ化合物の密度が向上する。また、樹脂硬化物では、分子の格子振動が散乱しにくくなるため、高い熱伝導率が得られる。
特に、上記した分子の格子振動の散乱現象は、熱伝導率を低下させる大きな要因であるため、その分子の格子振動の散乱現象が抑制されることで、熱伝導率の低下が著しく抑制される。
第2に、低当量エポキシ化合物およびトリフェニルベンゼン化合物において、低当量エポキシ化合物のメソゲン骨格に含まれているベンゼン環とトリフェニルベンゼン化合物の骨格(1,3,5−トリフェニルベンゼン)に含まれているベンゼン環とが重なりやすくなる。よって、上記した低当量エポキシ化合物同士においてベンゼン環同士が重なりやすくなる場合と同様の理由により、高い熱伝導率が得られる。
この「メソゲン骨格」とは、2つ以上の芳香環を含むと共に剛直性および配向性を有する原子団の総称である。具体的には、メソゲン骨格は、例えば、2つ以上のベンゼン環を含むと共にベンゼン環同士が単結合および非単結合のうちのいずれかを介して結合された骨格である。
なお、3つ以上のベンゼン環が結合される場合、その結合の方向性は、特に限定されない。すなわち、3つ以上のベンゼン環は、直線状となるように結合されてもよいし、途中で1回以上折れ曲がるように結合されてもよいし、2つ以上の方向に分岐するように結合されてもよい。
「単結合」とは、いわゆる炭素間結合である。一方、「非単結合」とは、1または2以上の構成元素を含むと共に1または2以上の多重結合を含む2価の基の総称である。具体的には、非単結合は、例えば、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)および水素(H)などの構成元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。また、非単結合は、多重結合として、二重結合および三重結合のうちの一方または双方を含んでいる。
メソゲン骨格は、ベンゼン環同士の結合の種類として、単結合だけを含んでいてもよいし、非単結合だけを含んでいてもよいし、単結合および非単結合の双方を含んでいてもよい。また、非単結合の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
非単結合の具体例は、下記の式(2−1)〜式(2−10)のそれぞれで表される結合などである。なお、式(2−6)および式(2−10)のそれぞれに示した矢印は、配位結合を表している。
メソゲン骨格の具体例は、ビフェニルおよびターフェニルなどである。なお、ターフェニルは、o−ターフェニルでもよいし、m−ターフェニルでもよいし、p−ターフェニルでもよい。
[トリフェニルベンゼン化合物]
硬化剤であるトリフェニルベンゼン化合物は、骨格(1,3,5−トリフェニルベンゼン)と反応基とを含む化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上である。すなわち、トリフェニルベンゼン化合物では、1つの分子の中に骨格として1,3,5−トリフェニルベンゼンが含まれていると共に、その骨格に反応基が導入されている。
この骨格(1,3,5−トリフェニルベンゼン)は、中心に位置する1つのベンゼン環(中心ベンゼン環)と、その中心ベンゼン環の周囲に位置する3つのベンゼン環(周辺ベンゼン環)とを含んでいる。
以下では、R1〜R5が導入されている周辺ベンゼン環を「第1周辺ベンゼン環」、R6〜R10が導入されている周辺ベンゼン環を「第2周辺ベンゼン環」、R11〜R15が導入されている周辺ベンゼン環を「第3周辺ベンゼン環」と呼称する。
R1〜R15のそれぞれの種類は、水素基および反応基のうちのいずれかであれば、特に限定されない。すなわち、R1〜R15のそれぞれは、水素基でもよいし、反応基でもよい。
この反応基は、水酸基およびアミノ基のうちのいずれかである。すなわち、トリフェニルベンゼン化合物は、反応基として、水酸基だけを含んでいてもよいし、アミノ基だけを含んでいてもよいし、水酸基およびアミノ基の双方を含んでいてもよい。
ただし、R1〜R15のうちの1つ以上は、反応基である。トリフェニルベンゼン化合物が硬化剤として機能するためには、そのトリフェニルベンゼン化合物は1つ以上の反応基を含んでいなければならないからである。この条件が満たされていれば、反応基の数および導入位置などは、特に限定されない。中でも、R1〜R15のうちの2つ以上は、反応基であることが好ましい。低当量エポキシ化合物とトリフェニルベンゼン化合物とが反応しやすくなるからである。
特に、R1〜R15の種類に関しては、以下の3つの条件のうちの1つまたは2つ以上が満たされていることが好ましい。
第1条件として、R1〜R5のうちの1つ以上は反応基であり、R6〜R10のうちの1つ以上は反応基であり、R11〜R15のうちの1つ以上は反応基であることが好ましい。反応基の総数が3つ以上である場合において、その3つ以上の反応基の導入位置が第1〜第3周辺ベンゼン環に分散されるため、低当量エポキシ化合物とトリフェニルベンゼン化合物とが反応しやすくなるからである。
第2条件として、R1〜R5のうちの1つは反応基であり、R6〜R10のうちの1つは反応基であり、R11〜R15のうちの1つは反応基であることが好ましい。反応基の総数が3つである場合において、その3つの反応基の導入位置が第1〜第3周辺ベンゼン環に分散されるため、低当量エポキシ化合物とトリフェニルベンゼン化合物とが反応しやすくなるからである。
第3条件として、R1〜R15のそれぞれは水素基および水酸基のうちのいずれかであるか、R1〜R15のそれぞれは水素基およびアミノ基のうちのいずれかであることが好ましい。すなわち、トリフェニルベンゼン化合物は、反応基として水酸基だけを含んでいるか、反応基としてアミノ基だけを含んでいることが好ましい。トリフェニルベンゼン化合物において十分な反応性が得られると共に、そのトリフェニルベンゼン化合物が容易に合成されるからである。
トリフェニルベンゼン化合物の具体例は、下記の式(1−1)および式(1−2)のそれぞれで表される化合物などである。上記した第1〜第3条件が満たされているからである。
式(1−1)に示した化合物は、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンである。この化合物は、反応基として水酸基だけを含んでおり、その水酸基の数は、3つである。式(1−2)に示した化合物は、1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼンである。この化合物は、反応基としてアミノ基だけを含んでおり、そのアミノ基の数は、3つである。
[他の材料]
この樹脂組成物は、上記した低当量エポキシ化合物およびトリフェニルベンゼン化合物と共に、他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
他の材料の種類は、特に限定されないが、例えば、添加剤、溶媒、他のエポキシ化合物、他の硬化剤および無機粒子などである。
添加剤は、例えば、硬化触媒およびカップリング剤などである。硬化触媒の具体例は、ホスフィン、イミダゾールおよびそれらの誘導体などであり、そのイミダゾールの誘導体は、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどである。カップリング剤の具体例は、シランカップリング剤およびチタネートカップリング剤などである。
溶媒は、液体状の樹脂組成物において、低当量エポキシ化合物およびトリフェニルベンゼン化合物を分散または溶解させるために用いられる。この溶媒は、有機溶剤などのうちのいずれか1種類または2種類以上であり、その有機溶剤の具体例は、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン、アセトン、1,3−ジオキソラン、N−メチルピロリドンおよびγ−ブチロラクトンなどである。
他のエポキシ化合物は、上記したように、高当量エポキシ化合物などである。この他のエポキシ化合物の具体例は、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、環状脂肪族型エポキシ化合物および長鎖脂肪族型エポキシ化合物などである。グリシジルエーテル型エポキシ化合物は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物およびビスフェノールF型エポキシ化合物などを含む。ノボラック型エポキシ化合物は、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ化合物およびフェノールノボラック型エポキシ化合物などを含む。この他、エポキシ化合物の種類は、例えば、難燃性エポキシ化合物、ヒダントイン系エポキシ樹脂およびイソシアヌレート系エポキシ化合物などでもよい。
なお、グリシジルエーテル型エポキシ化合物の具体例は、グリシジルエーテル型の構造(基)を含んでいる化合物であれば、特に限定されない。このように特定の構造を含んでいれば種類が限定されないことは、グリシジルエステル型エポキシ化合物などの他のエポキシ化合物の具体例に関しても同様である。
他の硬化剤は、骨格として1,3,5−トリフェニルベンゼンを含んでいないが、1つ以上の反応基を含んでいる化合物である。この他の硬化剤の具体例は、フェノール、アミンおよび酸無水物などである。
無機粒子は、粒子状の無機材料のうちのいずれか1種類または2種類以上である。この無機粒子の具体例は、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2 O3 )および窒化ホウ素(BN)などである。
<1−2.製造方法>
この樹脂組成物は、例えば、以下の手順により製造される。
固体状の樹脂組成物を得る場合には、低当量エポキシ化合物と、トリフェニルベンゼン化合物とを混合する。塊状などの低当量エポキシ化合物を用いる場合には、混合前に低当量エポキシ化合物を粉砕してもよい。このように混合前に粉砕してもよいことは、トリフェニルベンゼン化合物に関しても同様である。これにより、低当量エポキシ化合物とトリフェニルベンゼン化合物とを含む固体状の樹脂組成物が得られる。
なお、固体状の樹脂組成物を得たのち、必要に応じて、金型などを用いて樹脂組成物を成形してもよい。
液体状の樹脂組成物を得る場合には、上記した低当量エポキシ化合物とトリフェニルベンゼン化合物との混合物に溶媒を加えたのち、ミキサなどの撹拌装置を用いて溶媒を撹拌する。これにより、溶媒中に低当量エポキシ化合物およびトリフェニルベンゼン化合物が分散または溶解される。よって、低当量エポキシ化合物とトリフェニルベンゼン化合物とを含む液体状の樹脂組成物が得られる。
この他、液体状の樹脂組成物を得る場合には、固体状の樹脂組成物を加熱して、その樹脂組成物を溶融させてよい。この場合には、必要に応じて、金型などを用いて樹脂組成物の溶融物を成形したのち、その溶融物を冷却してもよい。
なお、低当量エポキシ化合物などのエポキシ化合物としては、粉体状および塊状などの固体状の化合物を用いてもよいし、液体状の化合物を用いてもよいし、双方を併用してもよい。同様に、トリフェニルベンゼン化合物などの硬化剤としては、粉体状および塊状などの固体状の化合物を用いてもよいし、液体状の化合物を用いてもよいし、双方を併用してもよい。ここで説明したことは、上記した他の材料に関しても同様である。
<1−3.作用および効果>
この樹脂組成物によれば、低当量エポキシ化合物と、式(1)に示したトリフェニルベンゼン化合物とを含んでいる。この場合には、上記したように、硬化反応時において架橋密度が高くなるため、樹脂硬化物のガラス転移点が高くなると共に、その樹脂硬化物において高い熱伝導率が得られる。よって、優れた熱的特性を得ることができる。
特に、式(1)において、R1〜R5のうちの1つ以上が反応基であり、R6〜R10のうちの1つ以上が反応基であり、R11〜R15のうちの1つ以上が反応基であれば、低当量エポキシ化合物とトリフェニルベンゼン化合物とが反応しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。この場合には、R1〜R5のうちの1つが反応基であり、R6〜R10のうちの1つが反応基であり、R11〜R15のうちの1つが反応基であれば、同様により高い効果を得ることができる。
また、式(1)において、R1〜R15のそれぞれが水素基および水酸基のうちのいずれかであり、またはR1〜R15のそれぞれが水素基およびアミノ基のうちのいずれかであれば、より高い効果を得ることができる。
また、トリフェニルベンゼン化合物が式(1−1)および式(1−2)のそれぞれに示した化合物のうちの一方または双方を含んでいれば、より高い効果を得ることができる。
<2.樹脂シート>
次に、本発明の一実施形態の樹脂シートに関して説明する。以下では、既に説明した樹脂組成物を「本発明の樹脂組成物」という。
樹脂シートは、本発明の樹脂組成物を含んでいる。この樹脂シートの構成は、本発明の樹脂組成物を含んでいれば、特に限定されない。すなわち、樹脂シートは、樹脂組成物と一緒に他の構成要素を備えていなくてもよいし、その樹脂組成物と一緒に他の構成要素を備えていてもよい。
<2−1.構成>
図1は、樹脂シート10の断面構成を表している。この樹脂シート10は、シート状に成形された樹脂組成物(樹脂組成物層1)であり、より具体的には、1つの樹脂組成物層1からなる単層体である。樹脂シート10の厚さなどは、特に限定されない。樹脂組成物層1の構成は、シート状に成形されていることを除き、本発明の樹脂組成物の構成と同様である。
図2は、樹脂シート20の断面構成を表している。この樹脂シート20は、複数の樹脂組成物層1が積層された積層体である。樹脂シート20において、樹脂組成物層1が積層される数(積層数)は、2層以上であれば、特に限定されない。図2では、例えば、樹脂組成物層1の積層数が3層である場合を示している。なお、樹脂シート20において、各樹脂組成物層1の構成は、特に限定されない。すなわち、各樹脂組成物層1における樹脂組成物の構成は、同じでもよいし、異なってもよい。もちろん、複数の樹脂組成物層1のうち、一部の樹脂組成物層1における樹脂組成物の構成が同じでもよい。
図3は、樹脂シート30の断面構成を表している。この樹脂シート30は、シート状に成形された樹脂組成物(樹脂組成物層1)と共に芯材2を備えており、例えば、2つの樹脂組成物層1により芯材2が挟まれた3層構造を有している。
芯材2は、例えば、繊維状物質および非繊維状物質などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、シート状に成形されている。繊維状物質は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維および合成繊維などであり、シート状に成形された繊維状物質は、例えば、織布および不織布などである。合成繊維の具体例は、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維などである。非繊維状物質は、例えば、高分子化合物などであり、シート状に成形された非繊維状物質は、例えば、高分子フィルムなどである。高分子化合物の具体例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などである。
芯材2の厚さは、特に限定されないが、機械的強度および寸法安定性などの観点から、例えば、0.03mm〜0.2mmであることが好ましい。
なお、樹脂シート30に用いられる樹脂組成物層1は、1層だけでもよいし、2層以上でもよい。このように1層でも2層以上でもよいことは、芯材2に関しても同様である。
また、樹脂シート30は、2つの樹脂組成物層1により芯材2が挟まれた3層構造に限らず、樹脂組成物層1と芯材2とが積層された2層構造を有していてもよい。なお、2つ以上の樹脂シート30が積層されていてもよい。
<2−2.製造方法>
樹脂シート10を製造する場合には、例えば、本発明の樹脂組成物の製造方法と同様の手順を用いる。
具体的には、固体状の樹脂組成物を用いる場合には、シート状となるように樹脂組成物を成形して、樹脂組成物層1を形成する。この場合には、固体状の樹脂組成物をそのまま成形してもよいし、固体状の樹脂組成物の溶融物を成形してもよい。溶融物を成形する場合には、まず、固体状の樹脂組成物を加熱して、その樹脂組成物を溶融させる。続いて、樹脂組成物の溶融物を成形したのち、その成形物を冷却する。
液体状の樹脂組成物を用いる場合には、高分子フィルムなどの支持体の表面に液体状の樹脂組成物を塗布したのち、その液体状の樹脂組成物を乾燥させる。これにより、液体状の樹脂組成物に含まれていた溶媒が揮発するため、支持体の表面において樹脂組成物がシート状に成形される。すなわち、支持体の表面において樹脂組成物が膜化する。よって、樹脂組成物層1が形成される。こののち、支持体から樹脂組成物層1を剥離する。
樹脂シート20を製造する場合には、上記した樹脂組成物層1の形成手順を繰り返して、複数の樹脂組成物層1を積層させる。この場合には、複数の樹脂組成物層1が積層された積層体を形成したのち、必要に応じて、積層体を加熱しながら、その積層体を加圧してもよい。これにより、樹脂組成物層1同士が密着する。
3層構造を有する樹脂シート30を製造する場合には、例えば、液体状の樹脂組成物を芯材2の両面に塗布したのち、その液体状の樹脂組成物を乾燥させる。これにより、芯材2を挟むように2つの樹脂組成物層1が形成される。この液体状の樹脂組成物の塗布工程では、芯材2が繊維状物質を含んでいる場合には、その液体状の樹脂組成物により芯材2の表面が被覆されると共に、その液体状の樹脂組成物の一部が芯材2の内部に含浸する。芯材2が非繊維状物質を含んでいる場合には、その液体状の樹脂組成物により芯材2の表面が被覆される。
もちろん、2層構造を有する樹脂シート30を製造する場合には、液体状の樹脂組成物を芯材2の片面だけに塗布すればよい。
なお、樹脂シート30を製造する場合には、例えば、液体状の樹脂組成物中に芯材2を浸漬させてもよい。この場合には、液体状の樹脂組成物中から芯材2を取り出したのち、その芯材2を乾燥させる。これにより、芯材2の両面に樹脂組成物層1が形成される。
また、固体状の樹脂組成物を加熱して、その樹脂組成物を溶融させたのち、その溶融物中に芯材2を浸漬させてもよい。この場合には、溶融物中から芯材2を取り出したのち、その芯材2を冷却する。これにより、芯材2の両面に樹脂組成物層1が形成される。
ここで、樹脂シート10〜30を製造するために液体状の樹脂組成物を用いる場合には、上記したように、乾燥工程において液体状の樹脂組成物が膜化(固体化)する。ただし、ここで説明する「膜化(固体化)」とは、流動性を有する状態(液体状態)の物質が自立可能な状態(固体状態)に変化することを意味しており、いわゆる半硬化状態も含む。すなわち、液体状の樹脂組成物が膜化する場合には、硬化反応が実質的に完了していないため、その樹脂組成物が実質的に未硬化の状態にある。このため、液体状の樹脂組成物を膜化させる際の乾燥条件は、硬化反応を実質的に完了させない条件であることが好ましい。具体的には、乾燥温度は60℃〜150℃であると共に乾燥時間は1分間〜120分間であることが好ましく、乾燥温度は70℃〜120℃であると共に乾燥時間は3分間〜90分間であることがより好ましい。
このように硬化反応を実質的に完了させない条件が好ましいことは、樹脂シート10〜30を製造するために固体状の樹脂組成物の溶融物を用いる場合に関しても同様である。すなわち、固体状の樹脂組成物を溶融させる際の加熱条件(加熱温度および加熱時間)は、硬化反応を実質的に完了させない条件であることが好ましい。
<2−3.作用および効果>
この樹脂シートによれば、上記した本発明の樹脂組成物を含んでいるので、その樹脂組成物と同様の理由により、優れた熱的特性を得ることができる。これ以外の作用および効果は、本発明の樹脂組成物と同様である。
<3.樹脂硬化物>
次に、本発明の一実施形態の樹脂硬化物に関して説明する。
<3−1.構成>
樹脂硬化物は、上記した樹脂組成物の硬化反応物を含んでおり、より具体的には、低当量エポキシ化合物とトリフェニルベンゼン化合物との硬化反応物を含んでいる。この硬化反応物では、低当量エポキシ化合物に含まれているエポキシ基と、トリフェニルベンゼン化合物に含まれている反応基とが架橋反応しているため、いわゆる架橋ネットワークが形成されている。
<3−2.製造方法>
この樹脂硬化物を製造する場合には、樹脂組成物を加熱する。これにより、樹脂組成物が硬化反応するため、硬化反応物である樹脂硬化物が得られる。
加熱温度および加熱時間などの加熱条件は、特に限定されないが、上記した樹脂シートの製造方法とは異なり、硬化反応を実質的に進行させる条件であることが好ましい。
<3−3.作用および効果>
この樹脂硬化物によれば、上記した本発明の樹脂組成物の硬化反応物を含んでいるので、その樹脂組成物と同様の理由により、優れた熱的特性を得ることができる。これ以外の作用および効果は、本発明の樹脂組成物と同様である。
<4.樹脂基板>
次に、本発明の一実施形態の樹脂基板に関して説明する。以下では、既に説明した樹脂シートを「本発明の樹脂シート」、樹脂硬化物を「本発明の樹脂硬化物」とそれぞれ呼称する。
樹脂基板は、上記した樹脂硬化物の適用例の1つであり、ここで説明する樹脂基板は、例えば、本発明の樹脂シートの硬化反応物である。この樹脂基板の構成は、1または2以上の樹脂シートの硬化反応物を含んでいれば、特に限定されない。
<4−1.構成>
図4は、樹脂基板40の断面構成を表している。この樹脂基板40は、図1に示した樹脂シート10の硬化反応物である。すなわち、樹脂基板40は、樹脂組成物層1の硬化反応物(樹脂硬化物層3)であり、より具体的には、1つの樹脂硬化物層3からなる単層体である。
図5は、樹脂基板50の断面構成を表している。この樹脂基板50は、図2に示した樹脂シート20の硬化反応物であり、より具体的には、複数の樹脂組成物層1の硬化反応物(樹脂硬化物層3)が積層された積層体である。樹脂硬化物層3が積層される数(積層数)は、2層以上であれば、特に限定されない。図5では、例えば、樹脂硬化物層3の積層数が3層である場合を示している。
図6は、樹脂基板60の断面構成を表している。この樹脂基板60は、図3に示した樹脂シート30の硬化反応物であり、より具体的には、2つの樹脂硬化物層3により1つの芯材2が挟まれた3層構造を有している。
図7は、樹脂基板70の断面構成を表している。この樹脂基板70では、2つ以上の樹脂シート30の硬化反応物が積層されている。ここでは、例えば、3つの樹脂シート30の硬化反応物が積層されている。すなわち、2つの樹脂硬化物層3により1つの芯材2が挟まれた3層構造が形成されており、その3層構造が3段重ねられている。
なお、上記した3層構造が重ねられる数(段数)は、3段に限らず、2段でもよいし、4段以上でもよい。この段数は、樹脂基板70の厚さおよび強度などの条件に基づいて適宜設定可能である。
ここでは図示していないが、樹脂基板70は、金属層を備えていてもよい。この金属層は、例えば、最上層の樹脂硬化物層3の表面に設けられると共に、最下層の樹脂硬化物層3の表面に設けられる。
金属層は、例えば、銅、ニッケルおよびアルミニウムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。また、金属層は、例えば、金属箔および金属板などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、単層でもよいし、多層でもよい。金属層の厚さは、特に限定されないが、例えば、3μm〜150μmである。この金属層を備えた樹脂基板70は、いわゆる金属張り基板である。
なお、金属層は、最上層の樹脂硬化物層3の表面だけに設けられてもよいし、最下層の樹脂硬化物層3の表面だけに設けられてもよい。
この金属層を備えた樹脂基板70には、必要に応じて、エッチング処理および穴開け処理などの各種処理のうちのいずれか1種類または2種類以上が施されていてもよい。この場合には、樹脂基板70と、上記した各種処理が施された金属層と、樹脂シート10〜30のうちのいずれか1種類または2種類以上とを重ねることで、多層基板としてもよい。
このように、金属層を設けたり、多層基板としてもよいことは、樹脂基板70に限らず、上記した樹脂基板40〜60に関しても同様である。
<4−2.製造方法>
樹脂基板40を製造する場合には、樹脂シート10を加熱する。これにより、上記したように、樹脂組成物層1中において樹脂組成物の硬化反応が実質的に完了するため、図4に示したように、樹脂組成物層1の硬化反応物である樹脂硬化物層3が形成される。
樹脂基板50を製造する場合には、樹脂シート20を加熱する。これにより、上記したように、各樹脂組成物層1中において樹脂組成物の硬化反応が実質的に完了するため、図5に示したように、複数の樹脂組成物層1の硬化反応物である複数の樹脂硬化物層3が形成される。
樹脂基板60を製造する場合には、樹脂シート30を加熱する。これにより、上記したように、各樹脂組成物層1中において樹脂組成物の硬化反応が実質的に完了するため、図6に示したように、芯材2の両面に樹脂組成物層1の硬化反応物である樹脂硬化物層3が形成される。
図8は、樹脂基板70の製造方法を説明するために、図7に対応する断面構成を表している。この樹脂基板70を製造する場合には、まず、図8に示したように、3つの樹脂シート30を積層させる。これにより、3つの樹脂シート30の積層体が得られる。こののち、積層体を加熱する。これにより、各樹脂シート30では、各樹脂組成物層1中において樹脂組成物の硬化反応が実質的に完了するため、図7に示したように、各芯材2の両面に、樹脂組成物層1の硬化反応物である樹脂硬化物層3が形成される。
ここで、樹脂シート10〜30を製造するために樹脂組成物の溶融物を用いる場合には、上記したように、樹脂組成物の溶融時において硬化反応が実質的に完了することを回避する。このため、樹脂組成物の硬化反応が実質的に完了する温度よりも、溶融物を得るために樹脂組成物を加熱する温度を低くすることが好ましい。言い替えれば、樹脂組成物の溶融温度は、その樹脂組成物の硬化反応が実質的に完了する温度よりも低いことが好ましい。
一例を挙げると、金型を用いた成形工程では、一般的に、成形時の加熱温度の最高値(最高温度)が250℃程度になる。このため、樹脂組成物の溶融温度は、250℃よりも低い温度であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。
ここで説明する「溶融温度」とは、樹脂組成物の硬化反応が実質的に完了することを回避しつつ、その樹脂組成物が固体状態から流動(溶融)状態に変化する温度である。この溶融温度を特定するためには、例えば、ホットプレートなどの加熱器具を用いて樹脂組成物を加熱しながら、その樹脂組成物の状態を目視で観察する。この場合には、へらなどを用いて樹脂組成物を混ぜ合わせながら、加熱温度を次第に上昇させる。これにより、樹脂組成物が溶融し始めた温度を溶融温度とする。
上記したように、成形時の最高温度が250℃程度である場合には、例えば、その成形時の加熱温度を樹脂組成物の溶融温度よりも50℃以上高い温度、具体的には100℃〜250℃とすると共に、加熱時間を1分間〜300分間程度とする。これにより、硬化反応が実質的に完了する温度において樹脂組成物が十分に加熱されるため、その硬化反応が均一に進行する。
なお、金型を用いた成形工程では、必要に応じて、プレス機などを用いて樹脂組成物を加圧してもよいし、その樹脂組成物が存在する環境中の圧力を増減してもよい。
特に、樹脂基板70を製造する場合には、樹脂シート30の積層方向において積層体を加圧しながら、その積層体を加熱することが好ましい。樹脂シート30同士の密着性などが向上するからである。この場合の加熱条件および加圧条件は、特に限定されない。一例を挙げると、加熱温度は100℃〜250℃、加熱時間は1分間〜300分間であると共に、加圧圧力は0.5MPa〜8MPaである。
<4−3.作用および効果>
この樹脂基板によれば、本発明の樹脂硬化物を含んでいるので、その樹脂硬化物と同様の理由により、優れた熱的特性を得ることができる。これ以外の作用および効果は、本発明の樹脂硬化物と同様である。
本発明の実施例に関して、詳細に説明する。
(実験例1〜9)
以下で説明する手順により、図5に示したように、複数の樹脂硬化物層3が積層された積層体からなる樹脂基板50を製造した。なお、以下で説明する含有量(質量部)は、固形分に換算した値である。
樹脂基板50を製造する場合には、最初に、エポキシ化合物と、硬化剤と、添加剤(硬化触媒)とを混合した。この場合には、エポキシ化合物に含まれているエポキシ基の数と硬化剤に含まれている活性水素の数との比が1:1になるように、エポキシ化合物と硬化剤との混合比を調整した。
エポキシ化合物および硬化剤のそれぞれの種類および混合物中の含有量(質量部)は、表1に示した通りである。エポキシ化合物として、新日鉄住金化学株式会社製YH−434L(化A)と、日本化薬株式会社製BREN−105(化B)と、DIC株式会社製EPICLON152(化C)と、三菱化学株式会社製1001(化D)と、1003(化E)とを用いた。これらのエポキシ化合物のエポキシ当量は、表1に示した通りである。硬化剤として、式(1−1)に示した化合物(THPB)と、式(1−2)に示した化合物(TAPB)と、エア・ウォーター株式会社製HE−200(BA)とを用いた。硬化触媒として、2−エチル−4−メチルイミダゾールを用いると共に、その硬化触媒の添加量は、エポキシ化合物と硬化剤との合計に対して1質量%とした。表1に示した「TPB骨格」の有無は、硬化剤が骨格として1,3,5−トリフェニルベンゼンを含んでいるか否かを表している。
続いて、溶媒(メチルエチルケトン)に混合物を投入したのち、その溶媒を撹拌した。これにより、溶媒中においてエポキシ化合物および硬化剤が溶解されたため、液体状の樹脂組成物が得られた。この場合には、固形分(エポキシ化合物および硬化剤)の濃度を65質量%とした。
続いて、支持体(PETフィルム,厚さ=0.05mm)の表面に液体状の樹脂組成物を塗布したのち、その液体状の樹脂組成物を乾燥(温度=100℃)させた。これにより、支持体の表面に樹脂組成物層1が形成されたため、図1に示した単層体である樹脂シート10(厚さ=0.1mm)が得られた。こののち、支持体から樹脂シート10を剥離した。
続いて、10枚の樹脂シート10を重ねて、図2に示した積層体である樹脂シート20(樹脂組成物層1の積層数=10層)を作製した。最後に、平板プレス機を用いて積層体を加熱(温度=170℃)および加圧(圧力=1MPa,時間=20分間)したのち、さらに積層体を加熱(温度=200℃)および加圧(圧力=4MPa,時間=1時間)した。この加熱工程では、各樹脂組成物層1中において樹脂組成物の硬化反応が実質的に完了したため、その樹脂組成物の硬化反応物を含む樹脂硬化物層3が形成された。これにより、樹脂基板50(樹脂硬化物層3の積層数=10層,厚さ=0.9mm)が完成した。
この樹脂基板50(樹脂硬化物層3)の熱的特性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。ここでは、耐熱性および熱伝導性を調べた。
耐熱性を調べる場合には、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて樹脂基板50のガラス転移点(℃)を測定した。具体的には、最初に、樹脂基板50を切断して、矩形状の測定用試料(3mm×25mm)を作製した。続いて、動的粘弾性測定装置(レオロジー株式会社製のDVE−V4型)を用いて、測定用試料を加熱しながら貯蔵弾性率を測定した。この場合には、昇温速度を5℃/分として、加熱温度を25℃から300℃まで上昇させた。最後に、貯蔵弾性率の変曲点に対応する加熱温度をガラス転移点とした。
熱伝導性を調べる場合には、樹脂基板50の熱伝導率(W/(m・K))を測定した。具体的には、最初に、樹脂基板50を切断して、円形状の測定用試料(直径=10mm,厚さ=0.9mm)を作製した。続いて、熱伝導率測定装置(アドバンス理工株式会社(旧アルバック理工株式会社)製TCシリーズ)を用いて測定用試料を分析して、熱拡散係数α(m2 /s)を測定した。また、サファイアを標準試料として、示差走査熱量分析(DSC)を用いて測定用試料の比熱Cpを測定した。さらに、アルキメデス法を用いて測定用試料の密度rを測定した。最後に、下記の数式(A)に基づいて、熱伝導率λ(W/(m・K))を算出した。
λ=α×Cp×r ・・・(A)
(λは熱伝導率(W/(m・K))、αは熱拡散率(m2 /s)、Cpは比熱(J/kg・K)、rは密度(kg/m3 )である。)
ガラス転移点および熱伝導率は、樹脂組成物の組成に応じて大きく変動した。
詳細には、硬化剤としてトリフェニルベンゼン化合物を用いたが、エポキシ化合物として低当量エポキシ化合物を用いなかった場合(実験例7,8)には、ガラス転移点および熱伝導率がいずれも低くなった。
また、エポキシ化合物として低当量エポキシ化合物を用いたが、硬化剤としてトリフェニルベンゼン化合物を用いなかった場合(実験例9)には、やはりガラス転移点および熱伝導率がいずれも低くなった。
これに対して、エポキシ化合物として低当量エポキシ化合物を用いると共に、硬化剤としてトリフェニルベンゼン化合物を用いた場合(実験例1〜6)には、ガラス転移点および熱伝導率がいずれも著しく高くなった。
表1に示した結果から、樹脂組成物が低当量エポキシ化合物と式(1)に示したトリフェニルベンゼン化合物とを含んでいると、樹脂硬化物において耐熱性および熱伝導性が改善された。よって、優れた熱的特性が得られた。
以上、実施形態および実施例を挙げながら本発明を説明したが、本発明は実施形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。