JP2016204280A - 概日リズム改善剤 - Google Patents

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勝隆 大石
幸織 山本
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Abstract

【課題】 効果的に概日リズムの位相、周期長、又は、周期の振幅のうちの少なくとも1つを調節することができる天然由来の成分を有効成分とする概日リズム改善剤、ならびにそれを含む飲食品及び医薬組成物を提供することにある。【解決手段】 シノブファギン類又はその薬学的に許容される塩を含む概日リズム改善剤。【選択図】なし

Description

本発明は、睡眠障害の改善等に有用な概日リズム改善剤に関する。
高齢化や、社会活動の24時間化に伴う様々な形態の睡眠障害の発生が社会的問題となっている。現在、日本人の5人に1人は睡眠に関して何らかの問題を抱えているとされ、特に高齢者においては、3人に1人が睡眠について悩みを抱えているとされる。
睡眠障害は、睡眠時無呼吸症などの睡眠呼吸障害と、体内時計がその発症に関わるとされる概日リズム睡眠障害(サーカディアンリズム睡眠障害)に分類される。概日リズム睡眠障害には、時差ぼけや夜勤・交代勤務(シフトワーク)などが原因の外因性急性症候群と、睡眠相後退症候群(DSPS)や、睡眠相前進症候群(ASPS)、非24時間睡眠覚醒障害、不規則型睡眠覚醒パターンなどの内因性慢性症候群に分類することができる。
概日リズム睡眠障害の原因としては、睡眠相前進症候群において、一部家族性の遺伝的原因が報告されているが、その多くは、夜勤や交代勤務、時差ぼけ、不規則な食生活、精神的ストレスなどの生活習慣が関与しているものと考えられる。これらの睡眠障害の発症には、時計遺伝子によって構成されている体内時計が関係しているものと考えられているが、その詳細なメカニズムに関しては不明である。
一方、加齢に伴い、睡眠覚醒リズムのみならず、深部体温や睡眠に関わるメラトニンなどのホルモンの分泌リズムなど、様々な生理的リズムが減少することが知られており、加齢に伴う睡眠障害には体内時計の減衰が関与しているものと考えられている(非特許文献1)。糖尿病や肥満、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病も、睡眠障害の発症要因となることが知られており、このような睡眠障害に対しても体内時計の減衰が関与しているものと考えられている(非特許文献2)。
睡眠障害の治療法としては、特別な装置を必要とする高照度光療法や、ビタミンB12(非特許文献1)又はメラトニン製剤(特許文献1)の投与が一般的である。しかし、これらの治療方法は、いずれも体内時計の異常を対処療法的に調節することにより生体リズムを正常化させようとするものであり、体内時計の異常に起因する障害の根本的な治療法とはなりえない。
また、睡眠薬としては、ベンゾジアゼピン系の薬剤(非特許文献3)が一般に用いられており、長短時間型から、短時間型、中間型、長時間型まで様々な半減期の薬剤が開発されている。しかしながら、これらの睡眠薬による睡眠障害の治療法は、対処療法的なものであり、根本的に睡眠障害を治療することは困難である場合が多い。また、夢遊症状等の副作用を伴う場合も多く、その使用には細心の注意が必要である。
最近、ノシセプチン受容体の作動薬としての作用を有する4-オキソイミダゾリジン-2-スピロピペリジン誘導体に概日リズム睡眠障害治療効果が期待されている(特許文献2)が、まだ研究開発途上であり副作用も懸念される。
各種飲食品の原料やそれらに含まれる天然成分を用いる睡眠改善剤の研究開発も盛んで、茶葉由来のテアニンを用いるもの(特許文献3)、内因性のメラトニン分泌効果を有する発酵ホエーなどのホエー類を添加するもの(特許文献4)の他、高麗人参エキス(非特許文献4)、イクラ油に含まれるフォスファチジルコリン(非特許文献5)などを用いた睡眠改善剤が提案されている。これらは、いずれも飲食品、嗜好品などに用いられている素材に由来しているため、安全性も高く、日常的に摂取可能であるといえるが、その詳細な睡眠改善効果や作用メカニズムの解明は十分ではなく、効果の個人差も大きい。
概日リズムは、体内時計によって制御されており、近年、時計遺伝子と呼ばれる一連の遺伝子群によって体内時計のリズムが刻まれていることが明らかとなってきた。体内時計は、概日リズムの位相調節と周期長の調節、振幅の調節という3つの機能を有しているが、これら概日リズムの位相、周期長、及び、振幅の調節機能が、睡眠障害を含む様々な生体リズム関連疾患の予防・改善や治療において最も重要であると考えられている。加齢や糖尿病・肥満症など代謝性疾患によって引き起こされる様々な概日リズムの位相の乱れや周期長の乱れ、振幅の減衰を改善することは、睡眠覚醒リズムを含む様々な生体リズムを正常化するための有効な手段となるものと期待されるが、安全性の確立している天然成分由来であって概日リズムの位相や周期長、振幅を調節する効果的な概日リズム改善剤は未だ報告がない。
一方、近年の時計遺伝子を中心とした体内時計の分子生物学的研究では、Period1(Per1)やPeriod2(Per2)、Bmal1などの時計遺伝子のプロモーターにルシフェラーゼ遺伝子を繋いだレポータープラスミドをNIH3T3などの繊維芽細胞に導入し、ルシフェラーゼ活性の概日リズムをモニタリングすることによって、体内時計への作用を調べる実験が多く用いられている(非特許文献6、7)。また、これらのレポータープラスミドにコードされた遺伝子を安定的に発現する細胞株を樹立して同様の作用を調べる研究も報告されている(特許文献5)。しかしながらこれらの繊維芽細胞を用いた実験では、体内時計を制御している神経細胞の機能を反映させることは不可能であると考えられる。一方、2004年にYooらは、マウスのPeriod2遺伝子の下流にルシフェラーゼ遺伝子をノックインしたトランスジェニックマウス(PER2::LUCマウス)を作製した(非特許文献8)。Yooらは、当該トランスジェニックマウスより採取した組織を培養してルシフェラーゼ活性の概日リズムをモニタリングすることによって、全身の細胞のPeriod2タンパク質の発現リズムを調べることを可能とした(非特許文献8)。このマウスから哺乳類の体内時計中枢である視交叉上核の神経組織を採取し、組織培養系において神経細胞の体内時計機能を調べることは可能であるが、初代培養系においては、ドナーとなる個体の状態や、採取する条件等により、再現性の確保された安定的な状態の神経細胞を用いて体内時計機能を調べることは困難である。本発明者らは、ハルミンによる概日リズム周期の制御作用を検討するに際して、培養系において安定した状態で神経細胞の体内時計機能を再現することを目的として、PER2::LUCマウスより増殖可能な神経前駆細胞を採取・保存し、実験時に神経細胞への分化誘導を行い、神経細胞の体内時計機能を安定的に評価する試験系を確立することに成功した(非特許文献9)。
特表平8−502259号公報 WO2003/010168号パンフレット WO2005/097101号パンフレット WO2005/094849号パンフレット 特開2011−26270号公報
「サーカディアンリズム睡眠障害の臨床」千葉茂、本間研一 編、新興医学出版社、2003 Pannain S. et al., The connection between sleep loss, obesity, and type 2 diabetes, P.J. Shiromani et al., (eds.) Sleep Loss and Obesity: Intersecting Epidemics, Springer Science 「睡眠障害の対応と治療ガイドライン」、内山真 編、じほう、2002 Young Ho Rhee, et al., Psychopharmacology, 1990, 101, 486-488 日比野英彦、Food Style21, 2003, 7(3), 50-53 Mariko Izumo, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2003, 100, 16089-16094 Hiroki R. Ueda, et al., Nature, 2002, 418, 534-539 Seung-Hee Yoo, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2004, 101, 5339-5346 Daisuke Kondoh, et al., Biol. Pharm. Bull., 2014, 37, 1422-1427
本発明の課題は、これまで広く摂取されてきた天然由来成分であって、かつ効果的に概日リズム(一連の時計遺伝子群の発現リズムによって制御されるリズム)の位相、周期長、又は振幅を調節することができる成分を有効成分とする概日リズム改善剤、ならびにそれを含む飲食品及び医薬組成物を提供することにある。
本発明者らは、概日リズムの異常を改善可能な成分を特定すべく、上記のPER2::LUCマウス由来神経細胞を用いて天然由来成分における概日リズム改善効果について鋭意検討を行った結果、強心薬、鎮痛薬、解毒薬として使用される生薬である蟾酥(せんそ)に含まれるシノブファギン類にその作用があることを見い出し、本発明を完成するに至った。なお、蟾酥(せんそ)は、ヒキガエル等の耳下腺又は皮脂腺分泌物を集め乾燥させて得られる生薬であり、和漢薬である六神丸等としても従来より配剤されて使用されてきたものである。シノブファギン類に、概日リズムを改善する効果があることは、本発明者らが初めて見出したものである。
すなわち、本発明は、
〔1〕シノブファギン類又はその薬学的に許容される塩を含む概日リズム改善剤に関する。
ここで、本発明の概日リズム改善剤の一実施の形態によれば、
〔2〕前記概日リズム改善剤が、時計遺伝子の発現リズムの位相、周期長、又は振幅のうちの少なくとも1つを調節する作用を有することを特徴とする。
また、本発明の概日リズム改善剤の一実施の形態によれば、
〔3〕前記〔2〕に記載の概日リズム改善剤において、前記時計遺伝子が、Per1遺伝子及び/又はPer2遺伝子であることを特徴とする。
また、本発明の概日リズム改善剤の一実施の形態によれば、
〔4〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の概日リズム改善剤において、前記シノブファギン類が、シノブファギン、ブファリン、ブタホリン、シノブホタリン、若しくは、レシブホゲニン、又は、それらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの化合物であることを特徴とする。
また、本発明の概日リズム改善剤の一実施の形態によれば、
〔5〕前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の概日リズム改善剤が、飲食品の形態であることを特徴とする。
また、本発明の別の態様によれば、本発明は、
〔6〕前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の概日リズム改善剤を含む、概日リズム障害又はそれに起因する疾患の治療又は予防のための医薬組成物に関する。
また、本発明の別の態様によれば、
〔7〕前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の概日リズム改善剤を含む飲食品に関する。
ここで、本発明の飲食品の一実施の形態によれば、
〔8〕前記〔7〕に記載の飲食品が、概日リズム障害若しくはそれに起因する疾患を有する又は有する恐れのある対象用であることを特徴とする。
また、本発明の飲食品の一実施の形態によれば、
〔9〕前記〔7〕又は〔8〕に記載の飲食品が、概日リズムを改善するために用いられるものである旨の表示を付したものであることを特徴とする。
また、別の態様によれば、本発明は、
〔10〕シノブファギン類又はその薬学的に許容される塩を含むPer1遺伝子及び/又はPer2遺伝子の発現リズム改善剤に関する。
ここで、本発明のPer1遺伝子及び/又はPer2遺伝子の発現リズム改善剤によれば、
〔11〕前記シノブファギン類が、シノブファギン、ブファリン、ブタホリン、シノブホタリン、若しくは、レシブホゲニン、又は、それらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの化合物であることを特徴とする。
また、別の態様によれば、本発明は、
〔12〕シノブファギン類又はその薬学的に許容される塩を含む概日リズム改善剤を経口的に摂取させる工程を含む、概日リズム改善方法に関する。
ここで、本発明の概日リズム改善方法の一実施の形態によれば、
〔13〕前記〔12〕に記載の概日リズム改善方法が医療行為を含まないことを特徴とする。
また、本発明の概日リズム改善方法の一実施の形態によれば、
〔14〕前記〔12〕又は〔13〕に記載の概日リズム改善方法において、概日リズム改善剤を経口的に摂取させる工程が、概日リズム障害若しくはそれに起因する疾患を有する又は有する恐れのある対象に適用される、概日リズム改善方法に関する。
また、別の態様によれば、本発明は、
〔15〕概日リズム障害の治療における使用のためのシノブファギン類又はその薬学的に許容される塩に関する。
また、別の態様によれば、本発明は、
〔16〕概日リズム障害の治療薬の製造におけるシノブファギン類又はその薬学的に許容される塩の使用に関する。
本発明にかかる概日リズム改善剤は生薬蟾酥(せんそ)に含まれるシノブファギン類又はその塩を有効成分として含むことにより、時計遺伝子の発現リズムにおける、i)位相、ii)周期長、又は、iii)振幅のうちの少なくとも1つを調節可能である。これにより、概日リズムの位相の乱れや周期長の乱れ、又は振幅の減衰を調節し、概日リズムを正常化するために使用することができる。なお、本発明において用いられる生薬蟾酥(せんそ)に含まれるシノブファギン類は、例えば、古来より漢方薬の処方成分として用いられていることから経口から摂取可能な成分として安全性が確認されているものであり、本発明の概日リズム改善剤はその点においても有用である。
図1は、下記実施例1において、シノブファギンを添加した分化用培地にてPER2::LUCマウス由来神経細胞を培養した際の、Per1mRNAの発現量を定量的リアルタイムPCRにより測定した結果を示す。発現量の値は、GAPDHの発現量と比較した相対値として示す。なお、横軸は、PER2::LUCマウス由来神経細胞を培養した培養時間(h)を示す。また、対照区は、シノブファギンを含まない分化用培養にて培養したPER2::LUCマウス由来神経細胞におけるPer1mRNAの発現量を示す。 図2は、下記実施例2において、シノブファギン及びルシフェリンを添加した分化用培地にてPER2::LUC C57BL/6Jマウス由来の神経前駆細胞を培養したときのルシフェラーゼ蛍光強度を経時的に観察した結果を示すグラフである。なお、Vehicle区は、ルシフェリンのみを添加した分化用培地(シノブファギン非添加)にて当該神経前駆細胞を培養した際の結果を示す。 図3は、下記実施例2において、シノブファギンを添加した区とVehicle区とのそれぞれにおける、ルシフェラーゼの発現リズムにおける周期長の平均値を示すグラフである。
睡眠障害は、「概日リズム睡眠障害」と「睡眠呼吸障害」とに大別される。概日リズム睡眠障害には、外因性の急性症候群と内因性の慢性症候群とに区分され、睡眠相前進症候群や睡眠相後退症候群、非24時間睡眠覚醒障害、不規則型睡眠覚醒障害などは、内因性慢性症候群に含まれる。概日リズム睡眠障害には、体内時計が関与していると考えられており、特に、内因性慢性症候群は、体内時計の異常が一因となっている。従来からの典型的な睡眠障害の治療法である光照射やメラトニン投与、あるいは様々な睡眠薬による治療法は、体内時計のリセットに作用する対処療法的なものである。概日リズムの異常に由来する睡眠障害は、主にこのような体内時計のリセットが上手く整わない状態が続いたことにより引き起こされるものであり、従来の体内時計のリセット法では好ましい概日リズムの改善効果が得られない場合があった。これに対し、本発明が目指す睡眠障害の治療法は、「概日リズム障害」、すなわち概日リズムの振幅異常や周期異常(周期長の乱れや位相の乱れ)それ自体を根本的に改善することによる治療法である。
概日リズム障害に起因する疾患としては、睡眠相前進症候群(ASPS)、睡眠相後退症候群(DSPS)、非24時間睡眠相後退症候群、および季節性うつ病が典型的なものとして考えられる。その他、内因性躁鬱病、周期性緊張症、周期性高血圧症、周期性潰瘍、不規則排卵周期、およびインスリン分泌の周期性異常に起因する糖尿病などの周期性・反復性障害や、脳血管型痴呆やアルツハイマー型痴呆における夜間徘徊なども概日リズム障害が関与すると考えられている。また、様々な概日リズムの振幅の減衰や周期長又は位相の乱れは、加齢や糖尿病・肥満症など代謝性疾患と関係がある。本発明は、概日リズム障害のうちの概日リズムの周期の位相(時計遺伝子の発現リズムの位相)を調節することや、概日リズム周期長(時計遺伝子の発現リズムの周期長)を調節すること、又は周期の振幅(時計遺伝子の発現リズムの振幅)を調節することにより障害を改善しようとするものである。
本発明の概日リズム改善剤は、時計遺伝子の発現リズムのi)位相、ii)周期長、又は、iii)振幅のうちの少なくとも1つを調節する。本発明の概日リズム改善剤は、時計遺伝子の発現リズムのi)位相、ii)周期長、又は、iii)振幅のうちの2つを調節可能なものも含み、さらに、時計遺伝子の発現リズムの周期のi)位相、ii)周期長、及び、iii)振幅の全てを調節可能なものも含む。
本明細書において、「時計遺伝子の発現リズムの位相を調節する」とは、時計遺伝子がある発現リズム(又は、発現リズムの周期)に沿って発現の活性化及び発現の抑制を示す際に、当該発現リズム(又は、発現リズムの周期)の位相を時系列的に遅らせる(後退)、又は、早めること(前進)をいう。よって、「時計遺伝子の発現リズムの位相を調節する」の好ましい態様としては、本来の発現リズム(又は、発現リズムの周期)と比較して差異が生じた位相の分、位相を時間軸に沿って遅らせる、又は、早めることにより調節することである。本発明の概日リズム改善剤は、特に、時計遺伝子のうちPer1遺伝子の発現を誘導することにより、時計遺伝子(例えば、Per1遺伝子、Per2遺伝子など)の発現リズム(又は、発現リズムの周期)の位相を調節することができる。また、本発明の概日リズム改善剤は、特に、時計遺伝子のうちPer1遺伝子及び/又はPer2遺伝子の発現リズムの位相を、時間軸に沿って遅らせる、又は、早めることにより調節することができる。
「時計遺伝子の発現リズムの振幅を調節する」とは、時計遺伝子がある発現リズム(又は、発現リズムの周期)に沿って発現の活性化及び発現の抑制を示す際に、当該リズムに沿って当該発現をさらに活性化させる、又は、さらに抑制することをいう。よって、「時計遺伝子の発現リズムの振幅を調節する」の好ましい態様としては、発現リズム(又は、発現リズムの周期)の振幅の減衰を改善する(振幅を増強する)ことである。本発明の概日リズム改善剤は、特に、時計遺伝子のうちPer1遺伝子及び/又はPer2遺伝子の発現を、当該遺伝子の発現リズムに沿ってさらに活性化させる(発現量を増加させる)、又はさらに抑制させる(発現量を抑える)ことができる。
また、「時計遺伝子の発現リズムの周期長を調節する」とは、時計遺伝子がある発現リズム(周期)に沿って発現の活性化及び発現の抑制を示す際に、当該発現リズムの長さ(周期長)を伸長する、又は、短縮することをいう。本発明の概日リズム改善剤は、特に、時計遺伝子のうちPer1遺伝子及び/又はPer2遺伝子の発現リズムの長さ(周期長)を短縮させることができる。
時計遺伝子とは、生体リズム、中でも概日リズム(サーカディアンリズム)をつかさどる遺伝子であり、概日リズム制御遺伝子とも呼ばれる。時計遺伝子としては、Cry遺伝子(Cry、Cryptochrome)〔Cry1、Cry2など〕、Clock遺伝子(CLOCK)、Dec遺伝子(Dec)、Rev-erb遺伝子(Rev-erb)〔Rev-Erbα遺伝子など〕、CK1遺伝子(CK1、Casein Kinase 1)〔CK1ε、CK1δなど〕、Bmal遺伝子(Bmal)〔Bmal1など〕、Per遺伝子(Per、Period)〔Per1、Per2など〕、が挙げられる。これらの遺伝子は、ヒト、マウスなど様々な動物が有していることが知られている。
概日リズムは上記時計遺伝子間のネガティブフィードバックループメカニズムによって成り立っており(Molecular components of the Mammalian circadian clock. Buhr ED, Takahashi JS. Handb Exp Pharmacol. 2013;(217):3-27)、その中心的な役割を担っているPer2遺伝子の発現リズムを制御することにより、一連の時計遺伝子の発現が制御され、その結果として概日リズムの制御が可能である。
よって、本発明の概日リズム改善剤は、一実施の形態において、Per1遺伝子やPer2遺伝子に限らず、上記に列挙する時計遺伝子の発現リズムのi)位相、ii)周期長、又は、iii)振幅のうちの少なくとも1つを調節することができる。
本発明の概日リズム改善剤は、シノブファギン類又はその薬学的に許容される塩を含むものである。シノブファギン類の化合物は、生薬蟾酥(せんそ)の原料となるヒキガエル等の耳下腺又は皮脂腺分泌物に含まれる化合物である。ヒキガエル等の耳下腺又は皮脂腺分泌物より得られる蟾酥は、古来より漢方薬の処方成分として用いられており、一定の安全性が認められている。漢方での使用例が示すように、蟾酥に含まれるシノブファギン類に含まれる化合物は互いに類似の骨格部分(ステロイド骨格のA/B環及びC/D環がcis配置であり、かつ、17β位に六員環不飽和ラクトン(2-ピロン環)を有するブファジエノリドの構造)を有することから同様の作用を有するものとして使用されている。なお、例えば、シノブファギン、ブファリン、ブタホリン、及び、レシブホゲニンは強心性ステロイドとして使用されており、また、特開2014−9218号公報では、ブファジエノリド構造を有するシノブファギン、ブファリン、ブタホリン、シノブホタリン、及び、レシブホゲニンが細胞融合阻害作用を共通して有しており、骨粗鬆症治療等に使用できることを開示している。
なお、本明細書において、「シノブファギン類」とは、ブファジエノリド構造を有するシノブファギン(CAS番号470-37-1;分子式C26H34O6)、ブファリン(CAS番号465-21-4;分子式C24H34O4)、ブタホリン(CAS番号471-95-4;分子式C26H36O6)、シノブホタリン(CAS番号1108-68-5;分子式 C26H34O7)、及び、レシブホゲニン(CAS番号465-39-4;分子式C24H32O4)などの化合物(すなわち、シノブファギン類は、ブファジエノリド類の化合物を含む)、並びに、それらの誘導体及び立体異性体を含む。「シノブファギン、ブファリン、ブタホリン、シノブホタリン、及び、レシブホゲニンなどの化合物の誘導体又は立体異性体」としては、当該化合物の構造式中において、アセチルオキシ基が酸素原子、ヒドロキシル基又はアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)に置換されたもの、水素原子が酸素原子又はヒドロキシル基に置換されたもの、ヒドロキシル基がアセチルオキシ基に置換されたもの、及び、エピマー化したもの、などを挙げることができる。
本発明の概日リズム改善剤に使用されるシノブファギン類としては、以下の式1〜5で示されるシノブファギン、ブファリン、ブタホリン、シノブホタリン、及び、レシブホゲニンを挙げることができる。
式1(シノブファギン):
Figure 2016204280
式2(ブファリン)
Figure 2016204280
式3(ブホタリン)
Figure 2016204280
式4(シノブホタリン)
Figure 2016204280
式5(レシブホゲニン)
Figure 2016204280
また、シノブファギンに加えて、本発明の概日リズム改善剤に使用されるシノブファギン類としては、概日リズムの改善作用(又は時計遺伝子の発現リズムの調節作用)を有する限り、ブファリン、ブタホリン、シノブホタリン、シノブファギン、及び、レシブホゲニンなどの化合物、及び、それらの誘導体又は立体異性体として公知の化合物を使用することができる。例えば、シノブファギンの誘導体としては、16位のアセチルオキシ基がヒドロキシル基、若しくはオキソ基に置換されたもの、4位、5位、6位、7位、12位、若しくは、19位の炭素に結合する水素がヒドロキシル基に置換されたもの、3位、12位、若しくは、19位の炭素に結合する水素がオキソ基に置換されたもの、3位の炭素に結合するヒドロキシル基がアセチルオキシ基に置換されたもの、3位の炭素に結合する官能基がエピマー化したもの、又は、それらの置換やエピマー化が組み合わされたものを挙げられる。具体的には、下記に限定されないが、デアセチルシノブファギン(14,15β-エポキシ-3β,16β-ジヒドロキシ-5β-ブファ-20,22-ジエノリド)、7β-ヒドロキシシノブファギン(3β,7β-ジヒドロキシ-16β-アセトキシ-14,15β-エポキシ-5β-ブファ-20,22-ジエノリド)、12β-ヒドロキシシノブファギン(16β-アセトキシ-14,15β-エポキシ-3β,12β-ジヒドロキシ-5β-ブファ-20,22-ジエノリド)、4β,11α-ジヒドロキシシノブファギン(3β,4β,11α-トリヒドロキシ-16β-アセトキシ-14,15β-エポキシ-5β-ブファ-20,22-ジエノリド)、4β,12α-ジヒドロキシシノブファギン(3β,4β,12α-トリヒドロキシ-16β-アセトキシ-14,15β-エポキシ-5β-ブファ-20,22-ジエノリド)、5,12β-ジヒドロキシシノブファギン(3β,5,12β-トリヒドロキシ-16β-アセトキシ-14,15β-エポキシ-5β-ブファ-20,22-ジエノリド)、シノブファギノール(16β-(アセチルオキシ)-14,15β-エポキシ-3β,19-ジヒドロキシ-5β-ブファ-20,22-ジエノリド)、3-オキソシノブファギン(16β-アセトキシ-14,15β-エポキシ-3-オキソ-5β-ブファ-20,22-ジエノリド)、12-オキソシノブファギン(12-オキソ-16β-アセトキシ-14,15β-エポキシ-3β-ヒドロキシ-5β-ブファ-20,22-ジエノリド)、19-オキソシノブファギン(16β-(アセチルオキシ)-14,15β-エポキシ-3β-ヒドロキシ-19-オキソ-5β-ブファ-20,22-ジエノリド)、3-エピシノブファギン(14,15β-エポキシ-16β-アセチル-3α-ヒドロキシ-5β-ブファ-20,22-ジエノリド)、3β-アセチルオキシ-16-オキソシノブファギン(3β-アセチルオキシ-14,15β-エポキシ-16-オキソ-5β-ブファ-20,22-ジエノリド)などを挙げることができる。
なお、本発明の概日リズム改善剤に使用されるシノブファギン類として、好ましくは、シノブファギン、ブファリン、ブタホリン、シノブホタリン、及び、レシブホゲニンである。また、本発明の概日リズム改善剤は、例えば、上記に列挙するようなシノブファギン類に含まれる化合物であって、概日リズムの改善作用を有する化合物であれば、単独で含むこともできるし、二以上のシノブファギン類の化合物を組み合わせて含むこともできる。
本発明の概日リズム改善剤に使用されるシノブファギン類の化合物は、市販されているものや合成したものを使用してもよいし、ヒキガエル等の耳下腺又は皮脂腺分泌物より単離・精製したものを使用することもできる。シノブファギン類の化合物の合成方法や、ヒキガエル等の耳下腺又は皮脂腺分泌物よりシノブファギン類の化合物を得る場合には、当業者であれば、公知の方法により適宜得ることができる。
また、本明細書において、薬学的に許容される塩は、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等、各種の塩を含む。以下に限定されないが、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩が挙げることができる。金属塩の例としてはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が挙げられる。アンモニウム塩の例としてはアンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどの塩が挙げられる。有機アミン付加塩の例としてはモルホリン付加塩、ピペリジン付加塩が挙げられる。アミノ酸付加塩の例としてはグリシン付加塩、フェニルアラニン付加塩、リジン付加塩、アスパラギン酸付加塩、グルタミン酸付加塩が挙げられる。
本発明の概日リズム改善剤に含まれ得る、シノブファギン類及びその薬学的に許容される塩以外の成分(薬学的に許容される基剤)は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されない。例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤、発色剤、矯味剤、着香剤、酸化防止剤、防腐剤、呈味剤、酸味剤、甘味剤、強化剤、ビタミン剤、膨張剤、増粘剤、界面活性剤などの中から、製剤に必要な諸特性(例えば保存安定剤など)を損なわないものであって、最終製品(例えば、飲食品、医薬品、医薬部外品など)の剤形に応じたものを1種または2種以上選択することができる。また、シノブファギン類またはその薬学的に許容される塩以外の成分は、概日リズム改善効果を有する他の成分であってもよい。
なお、本発明の一実施の形態において、本発明の概日リズム改善剤は、そのままの形態で、最終製品として用いることもできる。また、本発明の別の実施の形態において、本発明の概日リズム改善剤は、飲食品用の添加剤、医薬品用のリズム添加剤、医薬部外品の添加剤として用いることができる。これにより、飲食品、医薬品として概日リズム改善効果を付与することができる。
本発明の概日リズム改善剤の投与形態は特に限定されない。例えば、経口投与(例えば、口腔内投与、舌下投与など)、非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与など)などが挙げられる。これらの中でも侵襲性の少ない投与形態が好ましく、経口投与であることがより好ましい。本発明の概日リズム改善剤を飲食品として用いる場合には、経口投与されることがさらに好ましい。
本発明の概日リズム改善剤の剤形は、飲食品、医薬品および医薬部外品のいずれとして使用するかによって適宜決定することができ、特に限定されない。経口投与される際の剤形の例としては、液状(液剤)、シロップ状(シロップ剤)、錠剤(錠剤)、カプセル状(カプセル剤)、粉末状(顆粒、細粒)、ソフトカプセル状(ソフトカプセル剤)、固形状、半液体状、クリーム状、ペースト状が挙げられる。これらのうち、粒状、カプセル状、粉末状、ソフトカプセル状、固形状が好ましく、粒状(錠剤)がより好ましい。
例えば、経口剤として所期の効果を発揮するためには、患者の年齢、体重、疾患の程度により異なるが、通常成人に対してシノブファギン類の化合物の重量として1mg〜5mgの範囲の投与量を、1日数回に分けて服用するのが適当と思われる。経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を用いて常法に従って製造される。この種の製剤には、適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を使用することができる。それぞれの具体例は以下に示すごとくである。[結合剤]デンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール。[崩壊剤]デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース。[界面活性剤]ラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート80。[滑沢剤]タルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコール。[流動性促進剤]軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム。
また、本発明の概日リズム改善剤は、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エリキシル剤としても投与することができ、これらの各種剤形には、矯味矯臭剤、着色剤を含有してもよい。非経口剤として所期の効果を発揮するためには、患者の年齢、体重、疾患の程度により異なるが、通常成人でシノブファギン類の化合物の重量として 1日0.1mg〜0.5mgの範囲での静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射が適当と思われる。この非経口剤は常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を用いることができる。さらに必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤、乳化剤を加えてもよい。また、この非経口剤は安定性の点から、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾燥技術により水分を除去し、使用直前に凍結乾燥物から液剤を再調製することもできる。さらに、必要に応じて適宜、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤等を加えても良い。その他の非経口剤としては、外用液剤、軟膏等の塗布剤、直腸内投与のための坐剤等が挙げられ、常法に従って製造される。
なお、本発明の概日リズム改善剤の投与時期は特に限定されない。
また、本発明の一実施の形態においては、概日リズム改善剤を含む、概日リズム障害又はそれに起因する疾患を治療又は予防するための医薬組成物を提供する。当該医薬組成物は、概日リズム改善剤と同様にして、賦形剤等を含むことができ、また、概日リズム改善効果を有する他の成分を含むことができる。また、当該医薬組成物は、概日リズム改善剤と同様に、投与形態、剤形、投与量、投与時期を適宜設計・選択することがきる。
本発明の概日リズム改善剤又は医薬組成物によれば、時計遺伝子の発現調節が可能であり、さらに概日リズムの調節が可能である。よって、当該リズム改善剤又は医薬組成物によれば、概日リズム障害又はそれに起因する疾患を予防、緩和、又は治療できる。なお、概日リズム障害に起因する疾患とは、概日リズムの周期の乱れや減衰により引き起こされる疾患をいい、以下に限定されないが、例えば、睡眠相後退症候群(DSPS)、睡眠相前進症候群(ASPS)、非24時間睡眠覚醒障害、及び、不規則型睡眠覚醒パターン、などを含む睡眠障害や不眠症、自律神経失調症、躁うつ病、季節性うつ病、周期性緊張症、周期性高血圧症、周期性潰瘍、不規則排卵周期、インスリン分泌の周期性異常に起因する糖尿病などの周期性・反復性障害、脳血管型痴呆やアルツハイマー型痴呆における夜間徘徊などを挙げることができる。
また、本発明の一実施の形態としては、シノブファギン類又はその薬学的に許容される塩を含む時計遺伝子(例えば、Per1遺伝子及び/又はPer2遺伝子)の発現リズム改善剤を提供する。なお、当該時計遺伝子(例えば、Per1遺伝子及び/又はPer2遺伝子)の発現リズム改善剤は、実施の形態により、発現リズム周期の位相調節剤、発現リズム周期の周期長調節剤、又は発現リズム周期の振幅改善剤として提供することができる。これら時計遺伝子の発現リズム改善剤、発現リズム周期の位相調節剤、発現リズム周期の周期長調節剤、及び、発現リズム周期の振幅改善剤は、本発明の概日リズム改善剤と同様に、そのまま最終製品として使用しても良いし、飲食品用の添加剤、医薬品用のリズム添加剤、医薬部外品などの添加剤として用いることもできる。なお、時計遺伝子の発現リズム改善剤、発現リズム周期の位相調節剤、発現リズム周期の周期長調節剤、及び、発現リズム周期の振幅改善剤は、上記の概日リズム改善剤と同様に投与形態、剤形、投与量、投与時期を適宜設計・選択して使用することができる。
また、本発明の一実施の形態によれば、概日リズム改善剤を含む飲食品を提供する。当該飲食品は、概日リズムを改善するための飲食品として提供することができ、一般食品、機能性食品、健康食品、健康補助食品、栄養補助食品、保険機能食品、特定保険用食品、又は栄養機能食品などの各種飲食品として利用することができる(なお、本明細書において、飲食品というとき、漢方等を含む医薬品は含まれない)。飲食品の形態としては、例えば、飲料(清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、粉末飲料、果実飲料、乳飲料、ゼリー飲料など)、菓子類(クッキー、ケーキ、ガム、キャンディー、タブレット、グミ、饅頭、羊羹、プリン、ゼリー、アイスクリーム、シャーベットなど)、水産加工品(魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、はんぺんなど)、畜産加工品(ハンバーグ、ハム、ソーセージ、ウィンナー、チーズ、バター、ヨーグルト、生クリーム、チーズ、マーガリン、発酵乳など)、スープ(粉末状スープ、液状スープなど)、主食類(ご飯類、麺(乾麺、生麺)、パン、シリアルなど)、調味料(マヨネーズ、ショートニング、ドレッシング、ソース、たれ、しょうゆなど)、サプリメントなどが挙げられる。なお、飲食品として所期の効果を発揮するためには、対象の年齢、体重、疾患の程度により異なるが、通常成人に対してシノブファギン類の化合物が重量5mg/日以下で摂取可能なように含有させることが好ましいと思われる。
なお、本発明の飲食品は、上記に列挙した概日リズム障害若しくはそれに起因する疾患を有する又は有する恐れのある対象(例えば、ヒトを含む哺乳類)用とすることができる。
本発明において、概日リズムの改善作用は、Per1遺伝子、Per2遺伝子などの時計遺伝子の発現により制御される概日リズムの位相を調節する作用、周期長を調節する作用及び/又は周期の振幅を調節する作用により得られる概日リズムの調節作用である。これらの作用を確認するには、例えば、非特許文献9に開示される方法のように、時計遺伝子プロモーター(例えば、Per2プロモーター)により発現制御されたレポーター遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子など)が導入された培養細胞における候補物質の当該レポーター遺伝子の発現周期に対する影響を調べることによって確認することができる。
なお、本明細書に用いられる用語は、特定の実施態様を説明するために用いられるのであり、本発明を限定する意図で用いられてはいない。
また、本明細書における「含む」の用語は、本明細書の記載から明らかに異なる解釈をすべき場合を除き、記述された事項(工程、要素など)が存在することを意図し、かつ、それ以外の事項(工程、要素など)が存在することを排除するものではない。
また、本明細書に用いられる用語は、異なる定義が無い限り、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書及び関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、又は、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
以下において、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明はいろいろな態様により実施することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。
(実施例1)シノブファギンによるPer1 mRNAの発現誘導
胎生14日齢のPER2::LUC C57BL/6Jマウス(Jackson Laboratoriesより入手;非特許文献8参照)から脳を取り出し、0.05%トリプシン(シグマ社製)とDNase I(1mg/L、ギブコ社製)を含むPBS溶液で37℃、10分間加温した。ピペッティングにより組織を分散させ、遠心分離後、神経幹細胞を幹細胞用培地〔20ng/ml basic fibroblast growth factor (bFGF) (R&D Systems)、20ng/ml epidermal growth factor (EGF) (R&D Systems)、B27 supplements(ギブコ社製)を含むDMEM/F12培地(ギブコ社製)〕に懸濁し、poly-HEMA(シグマ社製)コートしたプレートに、5×105cells/mlの濃度で播種した。播種後の培養により神経幹細胞塊を形成したものを神経前駆細胞とし、当該神経前駆細胞を使用時まで凍結保存した。
実験に供した神経前駆細胞は、凍結保存状態から解凍したものを用いた。解凍後の神経前駆細胞は、幹細胞用培地にて24時間培養後、分化用培地〔2%牛胎仔血清、B27 supplementsを含むDMEM/F12培地〕にて7日間の分化誘導を行った。
分化させた神経細胞を用いて、下記の試験を行った。分化用培地を新たに用意し、当該分化用培地に神経細胞を移した。その後、シノブファギン(和光純薬工業株式会社より購入)を最終濃度2μMとなるように分化用培地に添加した。シノブファギンを添加した分化用培地にて、神経細胞を2時間培養した。なお、シノブファギン添加前(0時間後)、添加から1時間後、添加から2時間後にそれぞれ細胞を回収し、FastLane Cell cDNA Kit(キアゲン社製)を用いて添付書類に記載の条件に従ってtotal RNAを抽出した。抽出したtotal RNAをNuclease-free water(ギブコ社製)に溶解した後、cDNAを得るため、PrimeScriptTMRT reagent Kit with gDNA Eraser(タカラバイオ社製)を用いて添付書類に記載の条件に従って逆転写反応を行った。定量的リアルタイムPCRのための鋳型cDNAの標識及び増幅は、SYBR(登録商標) Premix Ex TaqTMII(タカラバイオ社製)を用いた。定量的リアルタイムPCRは、LightCycler system(ロシュ社製)を使用して実施した。Per1 mRNAの発現量は、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDH mRNAの発現量を内部標準として比較した際の相対値として求めた。
使用したプライマーは、Per1用は5’-CCAGATTGGTGGAGGTTACTGAGT-3’(配列番号1)と5’-GCGAGAGTCTTCTTGGAGCAGTAG-3’(配列番号2)、GAPDH用は5’-ACCCAGAAGACTGTGGATGG-3’(配列番号3)と5’-TTCAGCTCTGGGATGACCTT-3’(配列番号4)である。
PCRの条件は、95℃で10秒間加熱後に95℃で5秒、57℃で10秒、72℃で10秒間の3ステップを45サイクル行った。
また、対照区として、シノブファギンを添加していない分化用培地で培養した際の神経細胞におけるPer1 mRNA発現量を同様に測定した。
その結果を図1に示す。図1に示すように、シノブファギン添加から1時間後の神経細胞においては、添加前の発現量と比較して約10倍のPer1mRNAの発現量の増加が確認できた。一方で、シノブファギン添加から培養2時間後の神経細胞では、添加前の発現量と比較して約4倍程度にまでPer1の発現量が落ちていた。なお、Per1遺伝子は光やそれ以外の体内時計をリセットする様々な刺激に対して急性応答発現を示し、この応答により概日リズムをリセットする機能を有する遺伝子として知られているため一過性発現として誘導されることが好ましい(Shigeyoshi Y et al., Cell, Vol.91, 1043-1053, 1997、Urs Albrecht et al., Cell, Vol. 91, 1055-1064, 1997、及び、Balsalobre A et al., Curr Biol., 2000, 19;10(20):1291-4)。シノブファギンは、図1に示すように、Per1遺伝子を一過性に発現誘導できることが確認された。また、Per1遺伝子の発現は上述のように体内時計のリセット(すなわち時計遺伝子の発現リズムのリセット)に重要であることが知られており、このようなPer1遺伝子の一過性発現の誘導は時計遺伝子の発現リズムのリセットを誘起できると考えられる。
(実施例2)シノブファギンによる概日リズムの位相、周期長、及び、振幅の調節作用
上記実施例1において、シノブファギンのPer1遺伝子の一過性発現の誘導効果を確認したが、シノブファギン類の化合物が時計遺伝子の発現リズム自体も調節可能であるかを調べるために下記試験を行った。具体的には、上記実施例1に記載の凍結保存状態の神経前駆細胞を用いて、シノブファギンによるPer2遺伝子の発現リズムへの影響を確かめた。神経前駆細胞を解凍後、幹細胞用培地にて24時間培養を行った。その後、分化用培地〔2%牛胎仔血清、B27 supplementsを含むDMEM/F12培地〕に神経前駆細胞を移し、7日間の分化誘導を行った。
上記工程により分化した神経細胞を用いて、下記の試験を行った。HEPES(10mM)と発光基質ルシフェリン(0.1mM、和光純薬)とを含む分化用培地であって、体内時計を同調させるためのフォルスコリン(最終濃度10μM、シグマ社製)及びシノブファギン(最終濃度10μM;和光純薬工業株式会社より購入)を加えた分化用培地を用いて神経細胞を培養し、LM2400(浜松ホトニクス)にてルシフェラーゼによる化学発光を経時的に計測した。なお、対照区は、シノブファギンを添加していない分化用培地にて培養した際の神経細胞における発光リズムを同様に測定した。
シノブファギンが添加された分化用培地を用いて神経細胞を培養した場合、発光リズムの位相が後退することが判明した。その結果を図2に示す。図2に示す通り、シノブファギンを添加した区では、Vehicle区と比較して、発光リズム(すなわち、Per2遺伝子の発現リズム)の位相が約10時間程度後退した。また、図2に示す通り、シノブファギンを添加した区では、Vehicle区と比較して、培養約50時間目以降の発光リズムの振幅が増大していた。また、図3は、シノブファギンを添加した区とVehicle区のそれぞれにおいて、LM2400(浜松ホトニクス)により自動算出されるルシフェラーゼの発現周期の平均値を示す。図3に示すように、シノブファギンを添加した区では、Vehicle区と比較して、約30分間程度の周期長の短縮が観察された。

Claims (11)

  1. シノブファギン類又はその薬学的に許容される塩を含む概日リズム改善剤。
  2. 前記概日リズム改善剤が、時計遺伝子の発現リズムの位相、周期長、又は振幅のうちの少なくとも1つを調節する作用を有することを特徴とする、請求項1に記載の概日リズム改善剤。
  3. 前記時計遺伝子が、Per1遺伝子及び/又はPer2遺伝子であることを特徴とする、請求項2に記載の概日リズム改善剤。
  4. 前記シノブファギン類が、シノブファギン、ブファリン、ブタホリン、シノブホタリン、若しくは、レシブホゲニン、又は、それらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の概日リズム改善剤。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の概日リズム改善剤を含む、概日リズム障害又はそれに起因する疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の概日リズム改善剤を含む飲食品。
  7. 概日リズム障害若しくはそれに起因する疾患を有する又は有する恐れのある対象用である、請求項6に記載の飲食品。
  8. シノブファギン類又はその薬学的に許容される塩を含むPer1遺伝子及び/又はPer2遺伝子の発現リズム改善剤。
  9. 前記シノブファギン類が、シノブファギン、ブファリン、ブタホリン、シノブホタリン、若しくは、レシブホゲニン、又は、それらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの化合物であることを特徴とする、請求項8に記載のPer1遺伝子及び/又はPer2遺伝子の発現リズム改善剤。
  10. シノブファギン類又はその薬学的に許容される塩を含む概日リズム改善剤を経口的に摂取させる工程を含む、概日リズム改善方法(但し、医療行為を除く)。
  11. 前記概日リズム改善剤を経口的に摂取させる工程が、概日リズム障害若しくはそれに起因する疾患を有する又は有する恐れのある対象に適用される、請求項10に記載の概日リズム改善方法。
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