JP2016203396A - 粒状綿シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る粒状綿シートは、短繊維が絡まり合った粒状の集合体である粒状綿が積層された粒状綿シートであって、前記粒状綿を含む表側粒状綿材と前記粒状綿を含む裏側粒状綿材とが、接着層を介して固定された積層構造を有することを特徴とする。
【選択図】図1−B
Description
しかし、特許文献1に記載されるクッション材では、成形の際にクッション材を構成する繊維同士を芯鞘型熱接着性繊維により一様に接着しているため、ドレープ性に劣り風合いは良くない。また表面が平坦なものとなり硬い触感となってしまう。特許文献2に記載される硬綿構造体も同様に、非弾性熱接着性短繊維の作用により硬綿構造体を構成する繊維の動きが制限されており、また繊維密度も高くなっていることから、熱接着後の原綿が硬くなり、結果として硬綿構造体も風合いが悪いものになってしまう。そのため、これらの構造体を衣料や寝具等の肌触りの良さが要求されるような用途に用いるには、未だ改善の余地があった。
[1]短繊維が絡まり合った粒状の集合体である粒状綿が積層された粒状綿シートであって、前記粒状綿を含む表側粒状綿材と前記粒状綿を含む裏側粒状綿材とが、接着層を介して固定された積層構造を有することを特徴とする粒状綿シート。
[2]前記接着層は、熱溶融型接着シートである[1]に記載の粒状綿シート。
[3]厚さが5〜50mmであり、目付が100〜600g/m2である[1]または[2]に記載の粒状綿シート。
[4]前記熱溶融型接着シートは、繊維状の熱可塑性樹脂からなる不織布であり、前記熱可塑性樹脂の融点が100〜180℃である[1]〜[3]のいずれかに記載の粒状綿シート。
[5]前記短繊維がポリエステル系繊維であり、前記熱可塑性樹脂がポリアミド系熱可塑性樹脂である[4]に記載の粒状綿シート。
[6]粒状綿シートにおける接着層が1層である[1]〜[5]のいずれかに記載の粒状綿シート。
[7]前記接着層の目付が5〜50g/m2である[1]〜[6]のいずれかに記載の粒状綿シート。
図1−Aや図1−Bに示すように、本発明に係る粒状綿シート5は、短繊維が絡まり合った粒状の集合体である粒状綿が積層された粒状綿シートであって、前記粒状綿6を含む表側粒状綿材3と前記粒状綿6を含む裏側粒状綿材1とが、接着層2を介して固定された積層構造を有することを特徴とする。粒状綿は、クッション性や保温性に寄与するものであり、シート表面を粒状で柔らかな風合いに保つことができる。また、接着層を介して粒状綿を含む表側粒状綿材と裏側粒状綿材を固定しているため、粒状綿シートの表面には、粒状綿によるつぶつぶで柔らかな風合いが露出する。それゆえ、粒状綿シートを中綿として側地内に組み込んだ製品は、製品の表側と裏側とで、粒状綿を側地内に吹き込んだ製品と同等の触感と風合いを保つことができる。
すなわち図1−Bや図2−Bに示すように、表側粒状綿材および裏側粒状綿材中における粒状綿は、粒状綿材の厚さ方向に1〜3個が積層した状態で存在しているとよい。表側粒状綿材中の1層目の粒状綿は、接着層を介して裏側粒状綿材中の1層目の粒状綿と固定される。また表側粒状綿材および裏側粒状綿材における2層目以降の粒状綿層は、隣り合う粒状綿表面の毛羽を交絡させることで、粒状綿シートに担持される。
本発明の粒状綿シートを構成する要素として、粒状の綿(本明細書では、単に「粒状綿」と称する場合があるもの)を使用することは必須である。粒状綿は、短繊維が絡まり合った粒状の集合体であり、より具体的には、粒状綿は、数十〜数百本の短繊維が丸く絡み合って略球状の粒を構成するものである。個々の粒状綿自体がひとつの構造体として働くため、同じ組成の短繊維不織布によるカードウエッブや、短繊維等の吹き込み物と比較して、クッション性に極めて優れている。また、形状が略球状であるため、側地に入れた後でも、側地表面側から手で触ったときに点触感が感じられ、カードウエッブを手で触ったときのような平坦な感触とは大きく異なった触感となる。
本発明では、表側粒状綿材に含まれる粒状綿の少なくとも一部と、裏側粒状綿材に含まれる粒状綿の少なくとも一部とが、接着層を介して固定されていることが重要である。ここで「粒状綿の少なくとも一部」とは、粒状綿の表面で接着層を介して他の粒状綿に接している部分をいい、より具体的には、接着層を介して固定される表側粒状綿材中の粒状綿の表面と、裏側粒状綿材中の粒状綿の表面をいい、例えば、隣り合う粒状綿間にある繊維の数本〜数十本が、接着層を介して固定されている状態を指す。粒状綿は短繊維が物理的に絡まって粒という構造物を形成しているので、粒状綿の一部が接着層を介して他の粒状綿に接着していれば、粒状綿が動くことがない上に、粒状綿の圧縮特性は保持されるため、本発明に適している。粒状綿は、数十〜数百本の短繊維が丸く絡み合って略球状の粒を構成するものであり、このうち数本から数十本が接着層を介して他の粒状綿に接着されていればよく、より具体的には、粒状綿同士が接着層を介して接している粒状綿の繊維のうち、数本〜数十本が接着されていればよい。接着層が粒状綿の外気側表面に漏れ出ないように調整することで、粒状綿が硬くならずに従来の粒状綿の風合いを保持することができる。
本発明に係る粒状綿シートの製造方法は、例えば、図3に示すように、粒状綿を敷き詰めた裏側粒状綿材1の上面に熱溶融型接着シート2を載せ、更にその上面に表側粒状綿材3を載せて3層をサンドイッチ状に積層した積層シート4を形成する工程(図3中、工程A)、及び積層シート4を熱循環式の加熱装置(図示省略)で加熱して、表側粒状綿材3と裏側粒状綿材1とを、接着層を介して固定して粒状綿シート5を得る工程(図3中、工程B)を含むことが望ましい。更に任意の工程として、加熱処理後の粒状綿シート5から余分な粒状綿を除去する工程を実施してもよい。
本発明の粒状綿シートは、シートの曲げ硬さを測定する45°カンチレバー法(JIS L1096 8.21.1A法)で測定したときに、粒状綿シートの厚みが5〜40mm以下であれば、曲げ硬さ3〜40mm以下の柔らかなドレープ性の高いシートとなる。また粒状綿シートの厚みを40超50mm以下としたときには、曲げ硬さを40mm超60mm以下とすることができる。
本発明に係る粒状綿シートは、中綿材として好ましく用いられ、例えば、ダウンジャケット等衣料(特に防寒服)、寝袋、布団等の寝具類、座布団等の家具類、玩具、保温材などの工業材料および医療用品等に好ましく適用される。
(厚み) JIS L1096.8.4A法に準じて測定する。
JIS L1096 8.21.1A法(45°カンチレバー法)に準じて測定を行う。測定により得られた数値をドレープ性の評価として以下の基準で判定した。
○:60mm未満(かなり柔らかい)
△:60mm以上100mm未満(柔らかい)
×:100mm以上(硬い)
まず試料となる座布団を作製した。
座布団の作製:経糸にエステル綿混紡績糸(ポリエステル35質量%、綿65質量%、糸番手20番手)を、緯糸に同じくエステル綿混紡績糸(ポリエステル35質量%、綿65質量%、糸番手20番手)を用い、平織りで、仕上げ密度が経方向96本/インチ、緯方向56本/インチとなるように製織し、目付215g/m2の側地を作製した。実施例及び比較例で作製した粒状綿シートの上下に得られた側地を積層し、該積層体の四方をミシン掛けして40cm×40cmの座布団を作製した。
なお比較例において、充填材がシート状になってない粒状綿や吹き込み綿を用いる場合には、吹き込み法で充填した。具体的には、予め吹き込み口を残して側地を袋状に縫製し、その中に吹き込みノズルで粒状綿を280g/m2になるように吹き込んで充填した後に、吹き込み口をミシン掛けにて閉じて作製した。
その後、JIS L0217 103法に準じて、座布団の洗濯を5回行った後、側地を取り除き、洗濯後に綿が絡み合って収縮し、硬くなる現象の度合いを以下の基準で評価した。側地の中で綿の粗密斑ができている状態を偏りありと判定した。また、全体が偏っていた場合と一部が偏った場合を判定し、その後、偏った集合体の繊維同士をほぐせなければ、フェルト化が発生していると判定した。判定結果は以下で表記する。
◎:繊維が偏っておらず、フェルト化を起こしていない(とても良好)
○:繊維が一部偏っているが、フェルト化は起こしていない(良好)
△:繊維が偏っているが、フェルト化は起こしていない(やや不良)
×:繊維が偏っており、かつフェルト化を起こしている(不良)
洗濯前の座布団を上から手で触ったときの感触を評価した。
○:粒状の触感が確認できる(側地を通して、点触感を感じることができる)
×:粒状の触感が確認できない
粒状綿としては、市販されているポリエチレンテレフタレート(PET)系粒状綿(東洋紡STC株式会社製「グレンゲラン(登録商標)」、使用原綿繊度:7.4dtex、使用原綿繊維長:32mm、粒の平均粒径:6〜8mm)を用いた。熱溶融型接着シートとしては、蜘蛛の巣状接着スパンボンド不織布(呉羽テック株式会社製「DYNAC(登録商標)LNS0030」、ポリアミド系接着ホットメルトシート、融点115℃、メルトインデックス17g/10min(2.16kgf、160℃)、目付30g/m2)を用いた。
前記粒状綿20gを、厚さが均一になるように40cm×40cmの大きさに広げることで粒状綿材を作製した。得られた粒状綿材の上に、40cm×40cmにカットした熱溶融型接着シートを重ね、更にその上に、前記と同様の方法で得られた粒状綿材を載せて厚さ21mmの積層体を作製した。
この積層体を熱風循環式乾燥機(ドライマックス)にて、140℃で処理時間20秒間の接着処理を行った。表側粒状綿材と裏側粒状綿材とが、溶融した熱溶融型接着シートを介して固定された積層体を乾燥機から取り出した後、余分な粒状綿を払い落とし、目付280g/m2の粒状綿シートを得た。得られた粒状綿シートは、厚さが粒状綿2〜4個分であるところと、4〜6個分であるところが混在する凸凹の積層状態であった。この凸凹の積層状態を表中では「2〜6層」とした。得られた粒状綿シートを評価した結果を表1に示す。
熱溶融型接着シートとして、蜘蛛の巣状接着スパンボンド不織布(呉羽テック株式会社製「DYNAC(登録商標)G0020」、ポリエステル系接着ホットメルトシート、融点120℃、メルトインデックス22g/10min(2.16kgf、190℃)、目付20g/m2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粒状綿シートを得た。粒状綿シートは、厚さが粒状綿2〜4個分であるところと、4〜6個分であるところが混在する凸凹の積層状態であった。実施例1と同様に、この凸凹の積層状態を「2〜6層」とした。
ポリフェニレンサルファイドステープル(表中「PPS」と表記する、東洋紡株式会社製、7.8X32−R08)を用いて作製した粒状綿を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粒状綿シートを得た。粒状綿シートは、厚さが粒状綿2〜4個分であるところと、4〜6個分であるところが混在する凸凹の積層状態であった。実施例1と同様に、この凸凹の積層状態を「2〜6層」とした。
1個当たりの粒状綿材中の粒状綿の量を20gから40gに変更して、表側と裏側の粒状綿材の粒状綿量をそれぞれ2倍にした以外は、実施例1と同様の方法で粒状綿シートを得た。得られた粒状綿シートは、厚さが粒状綿6〜8個分であるところと、8〜12個分であるところが混在する凸凹の積層状態であった。この凸凹の積層状態を表中では「6〜12層」とした。
粒状綿に加工する前のポリエステル原綿70質量部に対し、熱融着性繊維として融点110℃のポリエチレン繊維を30質量部混ぜて、粒状綿を作製した。得られた粒状綿を型枠に入れて熱処理を行い、粒状綿中の熱融着性繊維を溶融させた後固化させて粒状綿を固めた粒状綿シートを得た。このシートは粒状綿のみからなるものであり、粒状綿シートの表面は実施例1に比べて凹凸が少なめで、粒状綿シートの断面は、粒状綿が6〜8個積層された状態となった。しかしながら、粒状綿シートは硬く曲げにくい上、表面の感触も硬いものとなった。
芯鞘構造を有する接着性繊維(芯部:ポリエチレンテレフタレート、鞘部:ポリエチレン、東洋紡株式会社製、商品名3.3X51−PMK)を用い、この接着性繊維をローラーカードに掛けてクロスレイヤー方式で重ね、カードウエッブとした後、熱風循環式乾燥機(ドライマックス)にて140℃で処理時間20秒間の熱処理を行うことにより、シートを得た。得られたシートは適度な厚みはあったものの、曲げ硬く、表面の感触も平坦で、凹凸感のない硬い風合いとなった。
実施例1で使用した粒状綿をそのまま用いた。比較例3では粒状綿をそのまま吹き込んでいるため、粒状綿はシート化されず、カンチレバー法による測定はできなかった、そのためドレープ性・柔らかさの評価も行うことはできなかった。
ポリエチレンテレフタレート製の布団用詰め綿(東洋紡株式会社製、商品名6.4X64−785)を用いローラーカードに掛けてクロスレイヤー方式で重ね、カードウエッブを得た。カードウエッブは適度な厚みがあるものの、表面の感触は平坦で、凹凸感のない硬い風合いとなった。
Claims (7)
- 短繊維が絡まり合った粒状の集合体である粒状綿が積層された粒状綿シートであって、
前記粒状綿を含む表側粒状綿材と前記粒状綿を含む裏側粒状綿材とが、接着層を介して固定された積層構造を有することを特徴とする粒状綿シート。 - 前記接着層は、熱溶融型接着シートである請求項1に記載の粒状綿シート。
- 厚さが5〜50mmであり、目付が100〜600g/m2である請求項1または2に記載の粒状綿シート。
- 前記熱溶融型接着シートは、繊維状の熱可塑性樹脂からなる不織布であり、前記熱可塑性樹脂の融点が100〜180℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒状綿シート。
- 前記短繊維がポリエステル系繊維であり、前記熱可塑性樹脂がポリアミド系熱可塑性樹脂である請求項4に記載の粒状綿シート。
- 粒状綿シートにおける接着層が1層である請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒状綿シート。
- 前記接着層の目付が5〜50g/m2である請求項1〜6のいずれか1項に記載の粒状綿シート。
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