JP2016203396A - 粒状綿シート - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、中綿として使用したときにドレープ性が高く、側地を通しても粒状綿特有の点触感が感じられ、また使用や洗濯によっても繊維の偏りやフェルト化を起こしにくく、衣料や寝具類等に利用できる薄地のシート材を提供する。
【解決手段】本発明に係る粒状綿シートは、短繊維が絡まり合った粒状の集合体である粒状綿が積層された粒状綿シートであって、前記粒状綿を含む表側粒状綿材と前記粒状綿を含む裏側粒状綿材とが、接着層を介して固定された積層構造を有することを特徴とする。
【選択図】図1−B

Description

本発明は、中綿として好ましく用いられ、衣料(特にダウンジャケット等の防寒服)、寝具類、座布団等の家具、玩具、保温材などの工業材料および医療用品等に利用できる粒状綿シートに関し、詳しくは、柔らかでつぶつぶの風合いを有し、吹込み工程やカード工程を経ずに加工でき、洗濯しても、側地の中で偏ったりフェルト化したりすることのない粒状綿シートに関するものである。
敷布団等の寝具にはクッション性や体圧分散性が要求されており、一般的には、中綿として、短繊維に熱融着性繊維を混綿してこれを溶融固化したウェブや、短繊維に樹脂を吹きつけた後、圧縮、熱処理等を施して繊維を固めて成形した「硬綿」が使用されている。これらの硬綿はクッション性や体圧分散性には優れているものの、繊維を押し固めているため硬綿の表面は平坦で、しかも硬い風合いを有している。それ故、ドレープ性の点で劣るため、使用感はよいものではなかった。また短繊維をカーディングした後に圧縮して成形するため、硬綿を薄地にすることは困難であった。
これらの問題に対して、従来から種々のアプローチが検討されている。例えば、特許文献1には、高捲縮繊維と、芯鞘型熱接着性繊維とを含んでなる繊維集合体からなり、該芯鞘型熱接着性繊維により繊維相互が部分的に接合した構造を形成していることを特徴とするクッション材が記載されている。また、特許文献2には、ポリエステル系捲縮短繊維と非弾性熱接着性短繊維とが混綿され、該短繊維同士の少なくとも一部が融着し、固着点を形成している硬綿構造体が開示されている。
しかし、特許文献1に記載されるクッション材では、成形の際にクッション材を構成する繊維同士を芯鞘型熱接着性繊維により一様に接着しているため、ドレープ性に劣り風合いは良くない。また表面が平坦なものとなり硬い触感となってしまう。特許文献2に記載される硬綿構造体も同様に、非弾性熱接着性短繊維の作用により硬綿構造体を構成する繊維の動きが制限されており、また繊維密度も高くなっていることから、熱接着後の原綿が硬くなり、結果として硬綿構造体も風合いが悪いものになってしまう。そのため、これらの構造体を衣料や寝具等の肌触りの良さが要求されるような用途に用いるには、未だ改善の余地があった。
また特許文献3には、捲縮を有する特性の異なる複数の繊維を混綿した混綿詰め綿が開示されている。しかしながら、捲縮を有する繊維を均一に混綿することは難しく、製造工程の点で課題がある。また繊維間が固定されていないため、中綿として使用すると、長期の使用や洗濯等により繊維が偏ったり、フェルト化を起こしてしまうため、このような混綿詰め綿を衣料や寝具等の用途に適用することは難しかった。
一方、中綿としては、空気流や製造装置内の構造物との摩擦により、主として合成繊維からなる短繊維を交絡させて粒状の集合体にした「粒状綿」が知られている。粒状綿はそれ自体が一つの構造体として存在できるため、同じ組成のカードウエッブや短繊維そのものの吹き込み綿などと比較すると、球状の形態により、手と粒状綿とが点で接触しているようなつぶつぶの感覚(以下、「点触感」と称する場合がある)などの風合い、およびクッション性(すなわち、圧縮時の回復性)などの点で優れている。粒状綿は通常、予め縫製した側地の中に粒状のまま吹き込まれ、詰め綿として使用されている。
しかし粒状綿を吹き込み綿として使用しても、使用や洗濯等により綿が側地内で偏ったり、フェルト化を起こす場合がある。側地内での粒状綿の動きを制御する方法としては、例えば、熱接着性繊維を混合した粒状綿を作製し、粒状綿の集合体を形成した後、熱処理を施すことにより、粒状綿同士を接着させて硬綿シートとする方法が挙げられるが、粒状綿が表面のあらゆる位置で隣り合う粒状綿と固定されてしまうため、粒状綿の特徴であるクッション性や点触感が損なわれてしまい好ましくない。
特開平05−161765号公報(特許第2715763号公報) 特開平10−158981号公報(特許第3793301号公報) 特開2012−214951号公報
この様な状況下、本発明は、中綿として使用したときにドレープ性が高く、側地を通しても粒状綿特有の点触感が感じられ、また使用や洗濯によっても繊維の偏りやフェルト化を起こしにくく、衣料や寝具類等に利用できる薄地のシート材を提供することを課題として掲げた。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、粒状綿を含む表側粒状綿材と裏側粒状綿材とを、接着層を介して固定したシート材であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る粒状綿シートは以下の点に要旨を有する。
[1]短繊維が絡まり合った粒状の集合体である粒状綿が積層された粒状綿シートであって、前記粒状綿を含む表側粒状綿材と前記粒状綿を含む裏側粒状綿材とが、接着層を介して固定された積層構造を有することを特徴とする粒状綿シート。
[2]前記接着層は、熱溶融型接着シートである[1]に記載の粒状綿シート。
[3]厚さが5〜50mmであり、目付が100〜600g/m2である[1]または[2]に記載の粒状綿シート。
[4]前記熱溶融型接着シートは、繊維状の熱可塑性樹脂からなる不織布であり、前記熱可塑性樹脂の融点が100〜180℃である[1]〜[3]のいずれかに記載の粒状綿シート。
[5]前記短繊維がポリエステル系繊維であり、前記熱可塑性樹脂がポリアミド系熱可塑性樹脂である[4]に記載の粒状綿シート。
[6]粒状綿シートにおける接着層が1層である[1]〜[5]のいずれかに記載の粒状綿シート。
[7]前記接着層の目付が5〜50g/m2である[1]〜[6]のいずれかに記載の粒状綿シート。
本発明の粒状綿シートでは粒状綿の一部のみが接着層により接着しているため、この粒状綿シートによれば、ドレープ性が高く、点接触による触感が良好で、洗濯時の外力による繊維の偏りやフェルト化を抑えることができ、衣料や寝具等の用途に適した薄地の粒状綿シートを提供することができる。
本発明の粒状綿シートの断面構造の一例を示す図である。 本発明の粒状綿シートの断面構造の一例を示すSEM写真である。 本発明の粒状綿シートの断面構造の他の例を示す図である。 本発明の粒状綿シートの断面構造の他の例を示すSEM写真である。 本発明の粒状綿シートの製造方法の一例を示す図である。
<粒状綿シート>
図1−Aや図1−Bに示すように、本発明に係る粒状綿シート5は、短繊維が絡まり合った粒状の集合体である粒状綿が積層された粒状綿シートであって、前記粒状綿6を含む表側粒状綿材3と前記粒状綿6を含む裏側粒状綿材1とが、接着層2を介して固定された積層構造を有することを特徴とする。粒状綿は、クッション性や保温性に寄与するものであり、シート表面を粒状で柔らかな風合いに保つことができる。また、接着層を介して粒状綿を含む表側粒状綿材と裏側粒状綿材を固定しているため、粒状綿シートの表面には、粒状綿によるつぶつぶで柔らかな風合いが露出する。それゆえ、粒状綿シートを中綿として側地内に組み込んだ製品は、製品の表側と裏側とで、粒状綿を側地内に吹き込んだ製品と同等の触感と風合いを保つことができる。
図2−Aや図2−Bに示すように、この粒状綿を多数含む粒状綿シートにおいて、粒状綿を、(i)接着層を介した固定方法と、(ii)粒状綿の表面に存在する毛羽が絡み合った物理的な結合方法により厚さ方向に積層していることが好ましい。(i)接着層を介した固定により、接着層が芯材に似た働きを示すため、粒状綿の集合体をシート材として取り扱うことが可能になる。また接着層の存在により、使用や洗濯による粒状綿の偏りや繊維のフェルト化を抑制することができる。しかも粒状綿は略球状の粒であるため、接着層と少ない接点で接着が可能であり、粒状綿が有する独特の風合いを維持することができる。(ii)また、粒状綿を表面の毛羽を利用して物理的に結合することにより、粒状綿自体が有する柔らかな風合いを損なうことがなく、粒状綿の集合体では、粒状綿特有のつぶつぶ触感と綿のようなふんわりとした触感の両方を楽しむことができる。
粒状綿シートにおける粒状綿の積層数は、粒状綿シートの厚さ方向に、およそ2〜12個であり、2〜10個がより好ましく、2〜6個が更に好ましい。より具体的には、粒状綿は、粒状綿シートの厚さ方向に4〜6個積層する部分と、2〜4個積層する部分が混在する凸凹の積層状態であってもよい。
すなわち図1−Bや図2−Bに示すように、表側粒状綿材および裏側粒状綿材中における粒状綿は、粒状綿材の厚さ方向に1〜3個が積層した状態で存在しているとよい。表側粒状綿材中の1層目の粒状綿は、接着層を介して裏側粒状綿材中の1層目の粒状綿と固定される。また表側粒状綿材および裏側粒状綿材における2層目以降の粒状綿層は、隣り合う粒状綿表面の毛羽を交絡させることで、粒状綿シートに担持される。
1.粒状綿
本発明の粒状綿シートを構成する要素として、粒状の綿(本明細書では、単に「粒状綿」と称する場合があるもの)を使用することは必須である。粒状綿は、短繊維が絡まり合った粒状の集合体であり、より具体的には、粒状綿は、数十〜数百本の短繊維が丸く絡み合って略球状の粒を構成するものである。個々の粒状綿自体がひとつの構造体として働くため、同じ組成の短繊維不織布によるカードウエッブや、短繊維等の吹き込み物と比較して、クッション性に極めて優れている。また、形状が略球状であるため、側地に入れた後でも、側地表面側から手で触ったときに点触感が感じられ、カードウエッブを手で触ったときのような平坦な感触とは大きく異なった触感となる。
本発明で用いる粒状綿は、既存の技術を利用して得ることができ、具体的には、短繊維を粒状綿化すればよい。例えば、特開平1−174362号公報や特許第3523262号公報に示される方法等、公知の方法で粒状綿化することができる。好ましくは、回転装置の壁面と短繊維との機械的な接触を少なくし、空気流の中で短繊維を3次元的に回転させ、絡み合いを持たせながら、略球状に加工することが望ましい。
個々の粒状綿の形状は球状に近いほうが好ましく、クッション性、嵩回復性および手触り感がよくなるため、個々の粒状綿の平均粒径は2〜10mmが好ましく、4〜10mmがより好ましく、6〜8mmが更に好ましい。
粒状綿に使用される短繊維の繊度は2〜20dtexが好ましく、3〜15dtexがより好ましく、5〜10dtexが更に好ましい。また前記短繊維の繊維長は10〜38mmが好ましく、15〜35mmがより好ましく、20〜35mmが更に好ましい。上記の範囲を超えると、短繊維を粒状綿化することが困難になり、粒状綿にしてもその形状がいびつになってしまう。また、繊度が小さすぎたり、繊維長が短すぎる原綿は、得られる粒状綿の粒径が小さくなったり、粒状綿自体の嵩が小さくなるため、好ましくない。
粒状綿に使用される短繊維の断面形状は特に限定されず、丸断面であっても、異形断面であってもよい。短繊維の粒状綿化を容易にするためには、構成する短繊維自体に立体型の捲縮が付与されていることが望ましい。また、捲縮付与のために異形断面繊維を用いてもよい。異型断面形状としては、中空断面、三角断面または扁平断面等が挙げられる。
粒状綿に使用される短繊維は、合成繊維が好ましく、ポリフェニレンサルファイド系繊維;ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ポリアリレート等のポリエステル系繊維;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維;等が好ましく用いられる。これらの繊維は、単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも機械的特性、加工性及び入手容易性等の面で、ポリエステル系繊維が好ましい。粒状綿の形態を維持できるのであれば、これら合成繊維同士の混合、綿、麻、毛または絹等の天然繊維との混合を行ってもよい。粒状綿中の合成繊維(より好ましくはポリエステル系繊維)の含有量は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
ポリエステル系繊維は優れた機械的性質と耐薬品性を持つ熱可塑性樹脂である。製糸時の流動性を向上するためポリマーアロイ化してもよく、酸化防止剤、艶消剤、着色剤、染色性向上剤、難燃性向上剤、制電剤等を添加しても差支えない。
表側粒状綿材および裏側粒状綿材には多数の粒状綿が含まれており、粒状綿の表面に存在する毛羽が絡み合い、隣り合う粒状綿同士が物理的に結合されることにより、粒状綿材は成形される。しかし成形時に接着成分を導入して粒状綿同士を強固に接着すると、繊維が拘束され動きの自由度が低下するため、粒状綿の風合いが硬くなってしまったり、粒状綿の特性であるクッション性や良好な圧縮特性が損なわれてしまうおそれがある。そのため、表側粒状綿材と裏側粒状綿材は接着成分を含まず短繊維のみからなり、実質的に粒状綿シートにおける接着層は1層であることが好ましい。
2.接着層
本発明では、表側粒状綿材に含まれる粒状綿の少なくとも一部と、裏側粒状綿材に含まれる粒状綿の少なくとも一部とが、接着層を介して固定されていることが重要である。ここで「粒状綿の少なくとも一部」とは、粒状綿の表面で接着層を介して他の粒状綿に接している部分をいい、より具体的には、接着層を介して固定される表側粒状綿材中の粒状綿の表面と、裏側粒状綿材中の粒状綿の表面をいい、例えば、隣り合う粒状綿間にある繊維の数本〜数十本が、接着層を介して固定されている状態を指す。粒状綿は短繊維が物理的に絡まって粒という構造物を形成しているので、粒状綿の一部が接着層を介して他の粒状綿に接着していれば、粒状綿が動くことがない上に、粒状綿の圧縮特性は保持されるため、本発明に適している。粒状綿は、数十〜数百本の短繊維が丸く絡み合って略球状の粒を構成するものであり、このうち数本から数十本が接着層を介して他の粒状綿に接着されていればよく、より具体的には、粒状綿同士が接着層を介して接している粒状綿の繊維のうち、数本〜数十本が接着されていればよい。接着層が粒状綿の外気側表面に漏れ出ないように調整することで、粒状綿が硬くならずに従来の粒状綿の風合いを保持することができる。
表側粒状綿材と裏側粒状綿材とを接着層を介して固定する方法は、熱溶融型(ホットメルト型)、溶剤発散型、加熱硬化型、紫外線硬化型、感圧型等の接着シートを使用する方法;ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエチレン系、アクリル系、ウレタン系等の接着剤を、液状または霧状にして粒状綿材(より好ましくは、粒状綿材の上面)に吹き付ける方法;等があり、いずれの方法においても、表側粒状綿材および裏側粒状綿材にそれぞれ含まれる粒状綿同士を接着できる。中でも、粒状綿をしっかりと固定できることから接着シートを使用する方法が好ましく、より好ましくは熱可塑性樹脂を含む熱溶融型接着シートを使用する方法である。
熱溶融型接着シートは、加熱により、前記熱溶融型接着シート中の熱可塑性樹脂が溶融することにより、表側粒状綿材と裏側粒状綿材を接着することが可能になる。熱溶融型接着シートとしては、繊維状の熱可塑性樹脂からなる不織布等の繊維シート、熱可塑性樹脂からなるフィルム等が挙げられる。特に、前記不織布は長繊維不織布または短繊維不織布のいずれであってもよいが、長繊維不織布がより好ましい。熱溶融型接着シートは、1枚のみを積層してもよいし、複数枚を重ねて使用してもよい。
熱可塑性樹脂からなる不織布は、熱可塑性樹脂からなる繊維が蜘蛛の巣状または網目状に交絡していることが好ましい。熱可塑性樹脂からなる繊維が、蜘蛛の巣状または網目状に交絡して重なりあった疎らな構造を有していれば、通気度を損なうことなく、保温性とドレープ性に優れた粒状綿シートが得られやすくなる。このような熱溶融型接着シートとしては、呉羽テック社製「ダイナック(登録商標)」シリーズ等の市販品も好ましく使用できる。
熱溶融型接着シートに含まれる熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレン−酢酸ビニル樹脂及びポリウレタン樹脂から選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂が好ましく、ポリアミド系熱可塑性樹脂またはポリエステル系熱可塑性樹脂が好ましく、特に粒状綿との接着力が高いことから、ポリアミド系熱可塑性樹脂がより好ましい。
前記熱可塑性樹脂の融点は、100〜180℃が好ましく、より好ましくは110〜160℃である。熱可塑性樹脂の融点が低すぎる場合には、使用時や洗濯後の乾燥による加温により熱可塑性樹脂が再溶融して、粒状綿材と接着層とが剥離するおそれがある。また融点が高すぎる場合には、加工時の取り扱いが難しく、粒状綿が熱劣化や収縮を起こしてしまい、風合いが硬くなりやすい。熱可塑性樹脂としては、粒状綿材との接着力が高く、耐洗濯性や加工工程での取り扱いが容易なことから、融点110〜160℃のポリアミド系の樹脂が好ましい。
熱溶融型接着シートの原料となる熱可塑性樹脂のメルトインデックスは、例えば、8〜30g/10min(2.16kgf、160℃)であり、12〜25g/10min(2.16kgf、160℃)がより好ましい。また、熱可塑性樹脂の溶融粘度は、例えば、100〜1500Pa・s(160℃)であり、400〜1000Pa・s(160℃)が好ましく、500〜700Pa・s(160℃)がより好ましい。
接着層の目付は、5〜50g/m2であり、好ましくは10〜40g/m2であり、より好ましくは15〜35g/m2である。目付が小さいと、表側粒状綿材と裏側粒状綿材を固定し難く、粒状綿同士を層状に固定できないおそれがあり、また目付が大きいと余分な接着成分が粒状綿に染み出して外観が悪くなったり、接着成分が固化した際に、粒状綿シートが樹脂板状となり風合いが硬くなるため好ましくない。
なお本発明において「接着層」とは、上述したような表側粒状綿材と裏側粒状綿材とを固定し得る接着成分が存在する層をいう。例えば、接着シートがシートの形状を留めずに前記粒状綿材中の粒状綿同士を固定している場合には、接着成分(例えば、熱可塑性樹脂の溶融固化物)と粒状綿が共存している層をいい、粒状綿シートの断面において連続的な層として観察される。また接着シートがシートの形状を有している場合には、接着シートと該接着シートの両面に存在する接着成分と粒状綿が共存している層をいう。また粒状綿シートにおいて、接着成分が存在しない部分を「粒状綿層」と称する場合がある。
<粒状綿シートの製造方法>
本発明に係る粒状綿シートの製造方法は、例えば、図3に示すように、粒状綿を敷き詰めた裏側粒状綿材1の上面に熱溶融型接着シート2を載せ、更にその上面に表側粒状綿材3を載せて3層をサンドイッチ状に積層した積層シート4を形成する工程(図3中、工程A)、及び積層シート4を熱循環式の加熱装置(図示省略)で加熱して、表側粒状綿材3と裏側粒状綿材1とを、接着層を介して固定して粒状綿シート5を得る工程(図3中、工程B)を含むことが望ましい。更に任意の工程として、加熱処理後の粒状綿シート5から余分な粒状綿を除去する工程を実施してもよい。
表側粒状綿材及び裏側粒状綿材は、粒状綿の集合体を空気流または物理的な方法でほぐした後、コンベア状や予め用意した枠内にほぐした粒状綿を振り落としたり、吹き付けたり、回転ドラムを用いて転写する等して粒状綿を積層することで形成できる。
粒状綿材及び熱溶融型接着シートの積層方法は、例えば、裏側粒状綿材の上面にコンベア等に同期したニップローラーなどを用いて熱溶融型接着シートを敷設し、その後、さらに熱溶融型接着シートの上面に表側粒状綿材を敷設する方法が好ましい。
粒状綿材及び熱溶融型接着シートの積層物である積層シートの加熱温度は、熱溶融型接着シートに含まれる熱可塑性樹脂の融点の−5℃〜+40℃の範囲に調整することが好ましく、0℃〜+30℃の範囲がより好ましい。この範囲より加熱温度が低すぎると粒状綿同士を接着するために必要な接着力が低下するおそれがあり、一方、加熱温度が高すぎると接着剤の粘性が低下して、接着剤が粒状綿に浸み込みすぎて接着性が低下しやすくなる。
加熱方法は特に限定されないが、例えば、赤外線加熱、電熱加熱、熱風循環加熱、熱板接触加熱、熱プレス等を好ましく用いることができる。
加熱時間は、加熱温度や加熱方法に応じて適宜調整すればよく、10秒〜15分の範囲で行えばよい。
余分な粒状綿を取除く方法としては、吸引、空気流による吹き飛ばし、粒状綿シートを逆さにして振り落とす等の方法がある。
接着層として接着シートを使用する場合、表側粒状綿材と裏側粒状綿材とを接着した後の接着シートは、シートの形状を留めずに前記粒状綿材中の粒状綿同士を固定していることが好ましい。特に、接着シートとして熱可塑性樹脂からなる繊維シートを用いる場合には、粒状綿シートにおいては、前記繊維が完全に溶融していることが好ましい。粒状綿シート内にシート状の接着層が存在すると、粒状綿シートが分厚くなったり、曲げ剛性が高くなってハリコシが強くなりすぎてしまう。そのため、シートの形状を留めないことで、接着シートを薄くしたり、中綿としての柔らかな風合いを保持することが可能になる。接着シートがシートの形状を留めていないときであっても、粒状綿シートの断面には接着シートに由来する層が存在する。
本発明では、表側粒状綿材と裏側粒状綿材を接着層のみで固定しており、より好ましい態様では接着層として熱溶融型接着シートを用いるため、粒状綿シートの厚さを実質的に粒状綿のみの積層物程度にまで薄地にすることが可能である。粒状綿シートの厚さは、5〜50mmが好ましく、より好ましくは8〜30mmであり、更に好ましくは10〜25mmである。
また粒状綿シートの目付は、100〜600g/m2であり、より好ましくは200〜400g/m2であり、更に好ましくは200〜300g/m2である。
<性能>
本発明の粒状綿シートは、シートの曲げ硬さを測定する45°カンチレバー法(JIS L1096 8.21.1A法)で測定したときに、粒状綿シートの厚みが5〜40mm以下であれば、曲げ硬さ3〜40mm以下の柔らかなドレープ性の高いシートとなる。また粒状綿シートの厚みを40超50mm以下としたときには、曲げ硬さを40mm超60mm以下とすることができる。
また実施例に記載される方法で測定される5回洗濯後の状態においても、粒状綿は、偏在することもなく、フェルト化を起こすこともないため、本発明の粒状綿シートによれば、外観品位の変化を少なくできる。
また本発明の粒状綿シートで作った製品は手で触ると粒状綿特有の点触感をもち、従来の硬綿やシート状物の詰め物とは違う触感を感じることができる。
<用途>
本発明に係る粒状綿シートは、中綿材として好ましく用いられ、例えば、ダウンジャケット等衣料(特に防寒服)、寝袋、布団等の寝具類、座布団等の家具類、玩具、保温材などの工業材料および医療用品等に好ましく適用される。
また粒状綿シートは、最終製品の形態および中綿量の調整等の理由により、2枚以上の粒状綿シートを積層した状態で使用してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(目付) JIS L1096.8.3.2A法に順じて測定する。
(厚み) JIS L1096.8.4A法に準じて測定する。
(ドレープ性・柔らかさの評価)
JIS L1096 8.21.1A法(45°カンチレバー法)に準じて測定を行う。測定により得られた数値をドレープ性の評価として以下の基準で判定した。
○:60mm未満(かなり柔らかい)
△:60mm以上100mm未満(柔らかい)
×:100mm以上(硬い)
(洗濯後の偏り、フェルト化の防止性能)
まず試料となる座布団を作製した。
座布団の作製:経糸にエステル綿混紡績糸(ポリエステル35質量%、綿65質量%、糸番手20番手)を、緯糸に同じくエステル綿混紡績糸(ポリエステル35質量%、綿65質量%、糸番手20番手)を用い、平織りで、仕上げ密度が経方向96本/インチ、緯方向56本/インチとなるように製織し、目付215g/m2の側地を作製した。実施例及び比較例で作製した粒状綿シートの上下に得られた側地を積層し、該積層体の四方をミシン掛けして40cm×40cmの座布団を作製した。
なお比較例において、充填材がシート状になってない粒状綿や吹き込み綿を用いる場合には、吹き込み法で充填した。具体的には、予め吹き込み口を残して側地を袋状に縫製し、その中に吹き込みノズルで粒状綿を280g/m2になるように吹き込んで充填した後に、吹き込み口をミシン掛けにて閉じて作製した。
その後、JIS L0217 103法に準じて、座布団の洗濯を5回行った後、側地を取り除き、洗濯後に綿が絡み合って収縮し、硬くなる現象の度合いを以下の基準で評価した。側地の中で綿の粗密斑ができている状態を偏りありと判定した。また、全体が偏っていた場合と一部が偏った場合を判定し、その後、偏った集合体の繊維同士をほぐせなければ、フェルト化が発生していると判定した。判定結果は以下で表記する。
◎:繊維が偏っておらず、フェルト化を起こしていない(とても良好)
○:繊維が一部偏っているが、フェルト化は起こしていない(良好)
△:繊維が偏っているが、フェルト化は起こしていない(やや不良)
×:繊維が偏っており、かつフェルト化を起こしている(不良)
(つぶつぶ触感)
洗濯前の座布団を上から手で触ったときの感触を評価した。
○:粒状の触感が確認できる(側地を通して、点触感を感じることができる)
×:粒状の触感が確認できない
実施例1
粒状綿としては、市販されているポリエチレンテレフタレート(PET)系粒状綿(東洋紡STC株式会社製「グレンゲラン(登録商標)」、使用原綿繊度:7.4dtex、使用原綿繊維長:32mm、粒の平均粒径:6〜8mm)を用いた。熱溶融型接着シートとしては、蜘蛛の巣状接着スパンボンド不織布(呉羽テック株式会社製「DYNAC(登録商標)LNS0030」、ポリアミド系接着ホットメルトシート、融点115℃、メルトインデックス17g/10min(2.16kgf、160℃)、目付30g/m2)を用いた。
前記粒状綿20gを、厚さが均一になるように40cm×40cmの大きさに広げることで粒状綿材を作製した。得られた粒状綿材の上に、40cm×40cmにカットした熱溶融型接着シートを重ね、更にその上に、前記と同様の方法で得られた粒状綿材を載せて厚さ21mmの積層体を作製した。
この積層体を熱風循環式乾燥機(ドライマックス)にて、140℃で処理時間20秒間の接着処理を行った。表側粒状綿材と裏側粒状綿材とが、溶融した熱溶融型接着シートを介して固定された積層体を乾燥機から取り出した後、余分な粒状綿を払い落とし、目付280g/m2の粒状綿シートを得た。得られた粒状綿シートは、厚さが粒状綿2〜4個分であるところと、4〜6個分であるところが混在する凸凹の積層状態であった。この凸凹の積層状態を表中では「2〜6層」とした。得られた粒状綿シートを評価した結果を表1に示す。
実施例2
熱溶融型接着シートとして、蜘蛛の巣状接着スパンボンド不織布(呉羽テック株式会社製「DYNAC(登録商標)G0020」、ポリエステル系接着ホットメルトシート、融点120℃、メルトインデックス22g/10min(2.16kgf、190℃)、目付20g/m2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粒状綿シートを得た。粒状綿シートは、厚さが粒状綿2〜4個分であるところと、4〜6個分であるところが混在する凸凹の積層状態であった。実施例1と同様に、この凸凹の積層状態を「2〜6層」とした。
実施例3
ポリフェニレンサルファイドステープル(表中「PPS」と表記する、東洋紡株式会社製、7.8X32−R08)を用いて作製した粒状綿を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粒状綿シートを得た。粒状綿シートは、厚さが粒状綿2〜4個分であるところと、4〜6個分であるところが混在する凸凹の積層状態であった。実施例1と同様に、この凸凹の積層状態を「2〜6層」とした。
実施例4
1個当たりの粒状綿材中の粒状綿の量を20gから40gに変更して、表側と裏側の粒状綿材の粒状綿量をそれぞれ2倍にした以外は、実施例1と同様の方法で粒状綿シートを得た。得られた粒状綿シートは、厚さが粒状綿6〜8個分であるところと、8〜12個分であるところが混在する凸凹の積層状態であった。この凸凹の積層状態を表中では「6〜12層」とした。
比較例1
粒状綿に加工する前のポリエステル原綿70質量部に対し、熱融着性繊維として融点110℃のポリエチレン繊維を30質量部混ぜて、粒状綿を作製した。得られた粒状綿を型枠に入れて熱処理を行い、粒状綿中の熱融着性繊維を溶融させた後固化させて粒状綿を固めた粒状綿シートを得た。このシートは粒状綿のみからなるものであり、粒状綿シートの表面は実施例1に比べて凹凸が少なめで、粒状綿シートの断面は、粒状綿が6〜8個積層された状態となった。しかしながら、粒状綿シートは硬く曲げにくい上、表面の感触も硬いものとなった。
比較例2
芯鞘構造を有する接着性繊維(芯部:ポリエチレンテレフタレート、鞘部:ポリエチレン、東洋紡株式会社製、商品名3.3X51−PMK)を用い、この接着性繊維をローラーカードに掛けてクロスレイヤー方式で重ね、カードウエッブとした後、熱風循環式乾燥機(ドライマックス)にて140℃で処理時間20秒間の熱処理を行うことにより、シートを得た。得られたシートは適度な厚みはあったものの、曲げ硬く、表面の感触も平坦で、凹凸感のない硬い風合いとなった。
比較例3
実施例1で使用した粒状綿をそのまま用いた。比較例3では粒状綿をそのまま吹き込んでいるため、粒状綿はシート化されず、カンチレバー法による測定はできなかった、そのためドレープ性・柔らかさの評価も行うことはできなかった。
比較例4
ポリエチレンテレフタレート製の布団用詰め綿(東洋紡株式会社製、商品名6.4X64−785)を用いローラーカードに掛けてクロスレイヤー方式で重ね、カードウエッブを得た。カードウエッブは適度な厚みがあるものの、表面の感触は平坦で、凹凸感のない硬い風合いとなった。
表1に示すように、いずれの実施例においても本発明に係る粒状綿シートは柔らかな風合いを有していた。さらに座布団を洗濯しても粒状綿の偏りはほとんどみられず、また繊維がフェルト化を起こすこともなかった。その上、中綿として粒状綿を用いていることから、側地を通して、点触感を感じることができた。
本発明に係る粒状綿シートは、粒状綿を含む表側粒状綿材と裏側粒状綿材とを、接着層を介して固定しているため、個々の粒状綿の球体形状を維持することが可能になる。そのため薄地でありながらも、風合い及び触感が良好で、洗濯時の外力によって繊維の偏りやフェルト化が抑制された中綿材が提供される。
1:裏側粒状綿材、2:接着層(接着シート)、3:表側粒状綿材、4:積層シート、5:粒状綿シート、6:粒状綿

Claims (7)

  1. 短繊維が絡まり合った粒状の集合体である粒状綿が積層された粒状綿シートであって、
    前記粒状綿を含む表側粒状綿材と前記粒状綿を含む裏側粒状綿材とが、接着層を介して固定された積層構造を有することを特徴とする粒状綿シート。
  2. 前記接着層は、熱溶融型接着シートである請求項1に記載の粒状綿シート。
  3. 厚さが5〜50mmであり、目付が100〜600g/m2である請求項1または2に記載の粒状綿シート。
  4. 前記熱溶融型接着シートは、繊維状の熱可塑性樹脂からなる不織布であり、前記熱可塑性樹脂の融点が100〜180℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒状綿シート。
  5. 前記短繊維がポリエステル系繊維であり、前記熱可塑性樹脂がポリアミド系熱可塑性樹脂である請求項4に記載の粒状綿シート。
  6. 粒状綿シートにおける接着層が1層である請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒状綿シート。
  7. 前記接着層の目付が5〜50g/m2である請求項1〜6のいずれか1項に記載の粒状綿シート。
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