JP2013136858A - 防寒衣料用中綿及びこれを含む防寒衣料 - Google Patents

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Abstract

【課題】激しいスポーツをして汗をかいたり雨に濡れて液体の水分が浸透した場合であっても、膨らみ感と保温性を保持できる防寒衣料用中綿及びこれを含む防寒衣料を提供する。
【解決手段】本発明の防寒衣料用中綿は、側地の内部に入れるための防寒衣料用中綿中綿(3)は少なくとも2層が直接積層され、1層はソフト層(1)、他層はハード層(2)であり、ソフト層(1)の繊維重量比はハード層(2)の繊維重量比以下であり、ハード層(2)を構成する繊維の繊度はソフト層(1)を構成する繊維の繊度よりも太い繊維が含まれている。本発明の防寒衣料(7)は、側地(4,5)の内部に前記の中綿(3)を入れ、内側(肌側)にハード層(2)が配置され、外気側にソフト層(1)が配置されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、特定の繊度の中綿を積層した防寒衣料用中綿及びこれを含む防寒衣料に関するものである。
ポリエステルなどの合成繊維中綿、ダウンなどの羽毛類は防寒衣料の内部に充填する保温材料として従来からよく使われている。とくにダウンなどの羽毛類は高級保温材料として重用されている。特許文献1には表層が中空繊維の織編物、中間層が中綿、裏層が赤外線吸収剤を含む織編物からなる保温性衣料が提案されている。特許文献2には極細長繊維を絡合して見掛け密度を高めた防寒用中綿が提案されている。特許文献3には表地の裏側に中入れ綿A、裏地の裏側に中入れ綿Bを配置し、中入れ綿Aの平均繊度は中入れ綿Bの平均繊度の1.2〜10倍である衣料が提案されている。特許文献4には中綿として気泡含有合成繊維の不織布又はアラミド繊維のフェルトが提案されている。
しかし、前記従来技術は汗をかいたり雨に濡れて液体の水分が浸透した場合、保温性が低くなる問題があった。これはダウン100%使いであっても同様であり、水で濡れると膨らみがなくなり保温機能を発揮できない問題があった。ダウン100%使いの衣類は水に濡れると冷湿布の状態になり、人体を冷却して危険性を及ぼす場合もある。
特開2006−132021号公報 特開2005−299001号公報 特開2004−244746号公報 特開平9−143805号公報
本発明は、前記従来の問題を解決するため、激しいスポーツをして汗をかいたり雨に濡れて液体の水分が浸透した場合であっても、膨らみ感と保温性を保持できる防寒衣料用中綿及びこれを含む防寒衣料を提供する。
本発明の防寒衣料用中綿は、側地の内部に入れるための防寒衣料用中綿であって、前記中綿は少なくとも2層が直接積層され、1層はソフト層、他層はハード層であり、前記ソフト層の繊維重量比はハード層の繊維重量比以下であり、前記ハード層を構成する繊維の繊度はソフト層を構成する繊維の繊度よりも太い繊維が含まれていることを特徴とする。
本発明の防寒衣料は、側地の内部に前記の中綿を入れた防寒衣料であり、前記中綿は内側にハード層が配置され、外気側にソフト層が配置されていることを特徴とする。
本発明は、激しいスポーツをして汗をかいたり雨に濡れて液体の水分が浸透した場合であっても膨らみ感と保温性を保持できる防寒衣料用中綿及びこれを含む防寒衣料を提供できる。これはハード層によってヘタリを防止し、膨らみ感を保持し、デッドエア(対流のない空気)を溜め込んで保温性を保持し、ソフト層により全体を柔らかくし、デッドエアを細分化し、ハード層の蓋の役目をすることにより熱が外部に逃げるのを防止する効果がある。
図1は本発明の一実施例における中綿の模式的断面図である。 図2は本発明の一実施例における防寒衣料の模式的断面図である。 図3は本発明の実施例1と比較例1〜2の防寒衣料サンプルの放熱性比較グラフである。 図4は同防寒衣料サンプルの厚み評価グラフである。 図5は同防寒衣料サンプルの反発性評価グラフである。
本発明の中綿は少なくとも2層積層され、1層はソフト層、他層はハード層である。ハード層によってヘタリを防止し、膨らみ感を保持し、デッドエア(対流のない空気)を溜め込んで保温性を保持し、ソフト層により全体を柔らかくし、デッドエアを細分化し、ハード層の蓋の役目をすることにより熱が外部に逃げるのを防止する。
ソフト層の繊維重量比はハード層の繊維重量比以下であり、ハード層を構成する繊維の繊度はソフト層を構成する繊維の繊度よりも太い繊維が含まれている。ソフト層の繊維重量比はハード層の繊維重量比以下であるのは、ソフト層を構成する繊維の繊度はハード層を構成する繊維の繊度よりも細いことから少量で済むこと及びソフト層により全体を柔らかくし、デッドエアを細分化し、ハード層の蓋の役目をすることから同量以下でよい。
ソフト層を構成する繊維は繊度4dtex以下で構成されており、ハード層を構成する繊維は繊度6dtex以上のものが含まれていることが好ましい。これにより、ヘタリ防止などの前記ハード層の機能と、ハード層の蓋の役目などの前記ソフト層機能の両方をさらに好ましく両立できる。前記において、ハード層の構成繊維を100重量%としたとき、繊度6dtex以上の繊維は30重量%以上であることが好ましい。ソフト層の繊度は0.01〜4dtexの繊維が好ましく、さらに好ましくは0.1〜3.5dtexである。1dtex未満の極細繊維はエレクトロスピニングによって得ることができる。あるいは分割型複合繊維を分割しても得られる。
ソフト層とハード層の繊維重量比は、ソフト層:ハード層=1:1〜4が好ましく、さらに好ましくは1:1.2〜3.8である。この範囲であれば、さらに好ましいヘタリを防止と全体を柔らかくし、デッドエアを細分化し、熱が外部に逃げるのを防止できる。
前記のように直接積層された中綿は、表面からバインダーを吹きつけることにより、ハード層には相対的に多量のバインダーが存在し、ソフト層には相対的に少量のバインダーが存在することになる。バインダー付与により、ハード層はさらに反発性が高くなり、ソフト層の柔らかさを阻害せずに結合できる。バインダーは細かいキルトの場合はとくに必要ないが、粗いキルトやキルトがない場合はバインダーを付与するのが形態安定性のために好ましい。
バインダーを付与する場合は、ハード層とソフト層はバインダーにより直接一体化される。これにより、さらに好ましいハード層によるヘタリを防止と、膨らみ感の保持と、デッドエア(対流のない空気)を溜め込んで保温性を保持し、ソフト層により全体を柔らかくし、デッドエアを細分化し、ハード層の蓋の役目をすることにより熱が外部に逃げるのを防止する機能を高めることができる。
バインダーの重量は繊維の重量に対して、5〜50%が好ましく、7〜35%が更に好ましい。バインダーとしては、例えば、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、ポリ酢酸ビニル系、ポリ塩化ビニル系、合成ゴム系、ポリウレタン系、ポリエステル系、或はこれらに架橋剤を添加したものなどが好適である。これらの中でも、アクリル系のバインダーは、中綿の構成繊維として好適であるポリエステル繊維との接着性及び耐水性に優れ、しかも柔軟な樹脂皮膜を形成でき、風合いを損なわないので、特に好適である。バインダーはスプレーで吹き付けるのが好ましい。
中綿の目付けは20〜200g/m2の範囲が好ましく、さらに好ましくは40〜120g/m2である。この範囲であれば、汗をかくようなスポーツをする際の運動機能を低下させるおそれはない。目付けが高くなるほど機能性は高まるが、製品での重量が増えるため、体への負担が増え、運動機能を低下させるので、上記の範囲内が好ましい。また、目付けが低くなりすぎると、製品での膨らみ感が乏しくなり、外観の魅力が損なわれるため、上記の範囲内が好ましい。
中綿はソフト層もハード層も合成繊維とするのが好ましい。合成繊維であれば汗をかいたり水に濡れても形態は安定し膨らみ感を保持でき保温性も良好である。合成繊維は長繊維でもよいし短繊維でも良い。短繊維を用いる場合は、カードウェブを使用するのか好ましい。繊維素材はポリエステル、ポリプロピレン、ポリ乳酸などがあるが、濡れたときのコシの強さと疎水性からポリエチレンテレフタレート(PET)繊維が好ましい。
本発明の防寒衣料の中綿は内側にハード層が配置され、外気側にソフト層が配置されている。これにより、ハード層によってヘタリを防止し、膨らみ感を保持し、デッドエア(対流のない空気)を溜め込んで保温性を保持し、ソフト層により全体を柔らかくし、デッドエアを細分化し、ハード層の蓋の役目をすることにより熱が外部に逃げるのを防止する。防寒衣料の表地としては、例えばタフタ、ツイル、サテン、シャンタン、高密度織物などがあり、この中でもシャンタンは表面変化があり、高密度織物であれば通気性が少なく保温性が良い、綿抜けがし難いなどの利点があり好ましい。裏地としては、例えばタフタ、ツイル、サテンなどがあり、この中でもタフタ、ツイルであれば、厚さが薄く、またすべりが良いなどの利点があり好ましい。
側地(表地及び裏地)の表面からキルト縫いするのが好ましい。キルト縫いは常法によって行うことができる。キルト縫いにより、激しい運動をしても中綿の片寄りは防止される。キルト縫いをする場合は、キルト間隔は20〜200mmが好ましい。キルトの形状は、ボーダー型、ボックス型、ダイヤ型などどのような物でも良い。
次に図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例における中綿の模式的断面図である。中綿3はソフト層1とハード層2の少なくとも2層が直接積層されている。ソフト層1の繊維重量比はハード層2の繊維重量比以下であり、ソフト層1を構成する繊維の繊度はハード層2を構成する繊維の繊度よりも細い。図2は本発明の一実施例における防寒衣料の模式的断面図である。この防寒衣料7は側地(表地4及び裏地5)の内部に中綿3が充填されており、内側(肌側)にハード層2が配置され、外気側にソフト層1が配置されている。6a〜6cはキルト部である。
以下実施例により本発明を具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<測定方法>
1.放熱性
KES(精密迅速物性測定装置サーモラボII)保温性評価(ΔT=20℃)
初期(A)と家庭洗濯10回乾燥後(B)の評価をした。
2.厚み
JIS L 1096準拠して、下記の状態の試料の厚みを評価した。
A 初期
B 荷重(1.5kgf、2時間)
C 荷重除去5分後
D 洗濯10回脱水後
E 家庭洗濯10回乾燥後
F 温度70℃、相対湿度95%RH、96時間後
3.反発性(LC)
KES(圧縮試験機G-5)圧縮性評価
初期
(実施例1)
ソフト層としてミツボシコーポレーション社製、商品名"SIF"(PET繊維、繊度:2dtex,繊維長:51mm、繊度:1dtex,繊維長:51mm、繊度:2.2dtex,繊維長:51mm)のカードウェブ40重量%と、ハード層としてミツボシコーポレーション社製、商品名"ZCP"(PET繊維、繊度:3.3dtex,繊維長:51mm、6.7dtex,繊維長:51mm)のカードウェブ60重量%を積層し、ハード層の表面から酢酸ビニル系バインダーをスプレーで1m2当たり8g(乾燥重量)吹き付けてソフト層とハード層を貼り付けた。この中綿は図1に示すとおりであった。この中綿を中綿重量が100g/m2となるようにPETフィラメント製織物(目付け40g/m2)の側地に充填した。このとき、内側(肌側)にハード層を配置し、外気側にソフト層を配置した。その後50mm間隔でボーダー型のキルト縫いした。防寒衣料サンプルの大きさは、タテ250mm、ヨコ250mmの正方形とした。断面は図3に示すとおりである。
(比較例1)
アウトドア市場で定評のある中綿として、市販のアルバニー社製、商品名“プリマロフト”(登録商標)単独使用した以外は実施例1と同様に防寒衣料サンプルを作成した。
(比較例2)
双日社製、商品名“WGD 600FPダウン”6.3gを単独使用した以外は実施例1と同様に防寒衣料サンプルを作成した。
以上の結果をまとめて表1〜3及び図3〜5に示す。表1及び図3は実施例1と比較例1〜2の防寒衣料サンプルの放熱性比較結果(数値が低いほど良好)、表2及び図4は評価結果(数値が高いほど良好)、表3及び図5は反発性評価結果(数値が高いほど良好)を示す。
Figure 2013136858
表1及び図3から明らかなとおり、実施例1品は比較例1品より放熱量が低く、保温性が高く、洗濯後の実施例1品は洗濯後の比較例2品(ダウン)より放熱量が低く、保温性が高いことがわかる。洗濯後に実施例1品と比較例1品の放熱量がやや低下したのは、中綿が洗濯によって揉まれて開繊されたことが原因と考えられる。これに対して比較例2品(ダウン)は洗濯により固まりができ、膨らみが低下し、放熱性が上がったと思われる。
Figure 2013136858
表2及び図4から実施例1品は比較例1品より厚みがあること、洗濯脱水後は比較例2品(ダウン)に比べて実施例1品は大幅に厚みが高いことがわかる。比較例2品(ダウン)は洗濯脱水後、水を含んでいるため、膨らみが無くなっていることがわかる。ダウン100%使いは水で濡れると膨らみがなくなり保温機能を発揮できないことが確認できた。
Figure 2013136858
反発性LC(直線性)は、サンプル試料を垂直方向から圧縮したときのハリ、コシの程度を示すものである。数値が大きいほどハリ、コシがあり、反発性を示すデータとして扱うことができる。実施例1品は比較例2品よりは高く、ダウンよりやや低いがほぼ同等等レベルであった。
以上から、実施例1品は保温性と膨らみのバランスから比較例2品より優れていた。また、実施例1品は洗濯脱水後も厚みは変らず、空気層(保温層)を維持できること、及び洗濯を繰り返しても形態安定性がある。これによりスポーツをして汗をかいてもその都度洗濯することができ、イージーケア性が高いことが確認できた。
(実施例2)
実施例1の中綿と側地を用い、防寒ジャケットを縫製した。このとき、中綿は内側(肌側)にハード層を配置し、外気側にソフト層を配置した。キルト幅は50mmとし、キルト方向は丈と垂直(横方向)とした。このジャケットを着てジョギングをした。下着シャツにポリエステルニット製Tシャツを着、その上に前記ジャケットを着用した。外気温5〜10℃の冬季、1月間毎日連続着用し、下着も前記ジャケットも汗で濡れる程度の運動量のジョギングをした。この結果、汗で濡れても膨らみ感と保温性は保持されており、寒さを感じることはなく、ジョギングを止めてしばらくすると乾燥し、汗による冷感も感じられなかった。この性質は毎日洗濯を繰り返して着用しても変らなかった。洗濯によって形態も変らなかった。
(実施例3)
実施例1において、ソフト層の目付けを40g/m2とし、ハード層を表4に記載した目付けとした以外は同様に実験した。このときの厚みと放熱量も表4にまとめて示す。
Figure 2013136858
表4は放熱量が小さくなるほど保温性が高いことを表している。ハード層の目付けが160g/m2以上になっても厚みがそれほど変わらないため、デットエアの量が殆んど変わらず、放熱量に変化が無く、保温性が変わらない。そのため、160g/m2以上では保温性は高まらず、製品重量が重くなる。厚みについては、厚みがあるほど、製品としての見栄えが良くなる。これはダウンのような膨らみ感があるからである。ハード層の目付けが40g/m2未満では柱としての役割を果たせないため、厚みが出ない。そのため、40g/m2未満は好ましくない。
本発明の防寒衣料はスポーツ衣料又は一般衣料の例えばジャケット、ベスト、コート、スラックス、つなぎ服、手袋、帽子、ネックウォーマー、耳掛けなどに好適である。また作業着としても好適である。
1 ソフト層
2 ハード層
3 中綿
4 表地
5 裏地
6a〜6c キルト部
7 防寒衣料

Claims (8)

  1. 側地の内部に入れるための防寒衣料用中綿であって、
    前記中綿は少なくとも2層が直接積層され、1層はソフト層、他層はハード層であり、
    前記ソフト層の繊維重量比はハード層の繊維重量比以下であり、
    前記ハード層を構成する繊維の繊度はソフト層を構成する繊維の繊度よりも太い繊維が含まれていることを特徴とする防寒衣料用中綿。
  2. 前記ソフト層を構成する繊維は繊度4dtex以下で構成されており、ハード層を構成する繊維は繊度6dtex以上のものが含まれている請求項1に記載の防寒衣料用中綿。
  3. 前記ソフト層とハード層の繊維重量比は、ソフト層:ハード層=1:1〜4である請求項1又は2に記載の防寒衣料用中綿。
  4. 前記中綿は、表面からバインダーが吹きつけられることにより、ハード層には相対的に多量のバインダーが存在し、ソフト層には相対的に少量のバインダーが存在している請求項1〜3のいずれかに記載の防寒衣料用中綿。
  5. 前記ハード層とソフト層はバインダーにより一体化している請求項1〜4のいずれかに記載の防寒衣料用中綿。
  6. 前記中綿の目付けは、20〜200g/m2の範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の防寒衣料用中綿。
  7. 側地の内部に請求項1〜6のいずれかに記載の中綿を入れた防寒衣料であり、
    前記中綿は内側にハード層が配置され、外気側にソフト層が配置されていることを特徴とする防寒衣料。
  8. 前記側地と中綿はキルト縫いされている請求項7に記載の防寒衣料。
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