JP2016201458A - 微結晶質酸化物半導体薄膜及びそれを用いた薄膜トランジスタ - Google Patents

微結晶質酸化物半導体薄膜及びそれを用いた薄膜トランジスタ Download PDF

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一晃 江端
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Abstract

【課題】安定したキャリヤー密度を有する酸化物半導体薄膜及びこれを用いた飽和移動度が高い薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】酸化インジウムを主成分とする微結晶を含む酸化物半導体薄膜をスパッタリング法により形成する工程と、必要により熱処理して微結晶化する工程と、化学蒸着(CVD)処理する工程と、さらに熱処理する工程を含む方法によって製造された微結晶質酸化物半導体薄膜(チャネル層)40を用いた薄膜トランジスタは、微結晶状態にすることにより安定化され、CVD処理工程での還元によりキャリアー密度が向上し、その後の熱処理により低減される。
【選択図】図1

Description

本発明は、微結晶質酸化物半導体薄膜、及びその製造方法に関する。
薄膜トランジスタ(TFT)に用いられるアモルファス(非晶質)酸化物半導体は、汎用のアモルファスシリコン(a−Si)に比べて高いキャリヤー移動度を有し、光学バンドギャップが大きく、低温で成膜できるため、大型・高解像度・高速駆動が要求される次世代ディスプレイや、耐熱性の低い樹脂基板等への適用が期待されている。
上記酸化物半導体(膜)の形成に当たっては、スパッタリングターゲットをスパッタリングするスパッタリング法が好適に用いられている。これは、スパッタリング法で形成された薄膜が、イオンプレーティング法や真空蒸着法、電子ビーム蒸着法で形成された薄膜に比べ、膜面方向(膜面内)における成分組成や膜厚等の面内均一性に優れており、スパッタリングターゲットと同じ成分組成の薄膜を形成できるためである。スパッタリングターゲットは、通常、酸化物粉末を混合、焼結し、機械加工を経て形成される。
表示装置に用いられる酸化物半導体の組成として最も開発が進んでいるのは、In含有のIn−Ga−Zn−O非晶質酸化物半導体である(例えば、特許文献1〜4参照)。さらに、最近では、TFTの高い移動度や信頼性の向上を目的として、Inを主成分とし、添加元素の種類や濃度を変更する試みがなされている(例えば、特許文献5参照)。
また、特許文献6では、In−Al系のスパッタリングターゲットが、特許文献7では、In−Sc系及びIn−Al系のスパッタリングターゲットが報告されている。
ここで、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と結晶質酸化物半導体に分類できる。
非晶質酸化物半導体のキャリヤーは、酸素欠損により発生する電子により構成されることになる。
一方の酸化物半導体は、結晶性薄膜にすることにより高移動度のTFTが得られることが報告されている。しかしながら、TFT製造の各工程での様々な熱負荷、酸化負荷、還元負荷等による酸化物薄膜のキャリヤー密度が変動し、安定した薄膜トランジスタ(TFT)特性は得られていない。酸化物薄膜を、TFT製造工程での急激な昇温速度で加熱結晶化させると放射状に結晶成長が起こり、それにより結晶方位が放射状になったり、結晶粒内部に多数の格子欠陥を作ることになる。そのため、キャリヤー密度の変動を抑え込んだ酸化物薄膜を提供できていないのが現状である。その結果、結晶質酸化物半導体からなるチャネル層を有し、安定した性能を発現するTFTは未だ得られていない。
また、表示装置用酸化物半導体膜の移動度や信頼性を高める上では、酸化物半導体のエネルギーギャップ内に存在するトラップを低減することが重要である。その一つの手法としてスパッタ中にチャンバー内に水を導入して、より効果的に酸化する方法がある。水はプラズマ中で分解され、非常に強い酸化力を示すOHラジカルになり、酸化物半導体のトラップを減らす効果がある。
特許文献8の比較例6には、ターゲット組成がAl/(In+Al)=0.125であり、薄膜堆積後に300℃で熱処理したところ、微結晶が生成したと記載されている。しかし、この薄膜は、非晶質化効果が高いアルミニウムの含有量が12.5原子%と多く、結晶化し難い。その上、成膜中に水を存在させて成膜しているため、水による非晶質化の効果が合わさり、さらに結晶化し難くなっている。このような薄膜は、薄膜堆積後に300℃で加熱して微結晶が生成していても、移動度が低いか、TFT特性を示さない薄膜トランジスタしか得られていない。
特許文献9には、酸化インジウム及び酸化イットリウムを用いたスパッタリングターゲット、及びそのターゲットを用いた酸化物薄膜及び半導体に関する記載がある。しかしながら、生成した酸化物薄膜が微結晶質であるか否かについては記載がない。
特許文献10は、柱状に結晶が配置した酸化物薄膜を開示しており、柱状結晶は乱雑な微結晶を含みにくいために酸素欠損の下限値を低くすることが可能であり、加熱後のキャリヤー密度をアニール時間により幅広く制御することができると記載している。これにより、結晶質酸化物半導体膜のキャリヤー密度をゲート絶縁膜側から膜厚方向に(順次)減少させ、ゲート絶縁膜界面から一定の領域の平均キャリヤー密度を1×1018/cm〜5×1021/cmの範囲に調整することが可能となると記載している。しかし、特許文献10の発明では、微結晶を含むことは好ましくないと記載している。
特許文献11は、チャネル層が広がり抵抗値の低い領域と広がり抵抗値の高い領域を有するTFTを開示している。チャネル層を形成する材料は、結晶系材料であってもアモルファス材料であってもよいと記載されているが、微結晶については言及されていない。
特開2008−214697号公報 特開2008−163441号公報 特開2008−163442号公報 特開2012−144410号公報 特開2011−222557号公報 特開2011−249570号公報 国際公開2010/070944号 国際公開2012/090490号 国際公開2010/032432号 国際公開2013/021632号 国際公開2014/125820号
上述したように、結晶質酸化物半導体は、薄膜トランジスタ製造の各工程での様々な熱負荷、酸化負荷、還元負荷等によってキャリヤー密度が変動する課題を抱えている。また、微結晶質の酸化物半導体薄膜をチャネル層として用いることを特徴とする薄膜トランジスタであって、安定で優れたTFT性能を有するものは未だ報告されていない。
本発明の目的は、安定したキャリヤー密度を有する微結晶質酸化物半導体膜、及び薄膜トランジスタのチャネル層として用いたときに、飽和移動度が高い薄膜トランジスタを提供することである。
上記目的を達成するため本発明者らは鋭意研究を行い、均質な微結晶質酸化物薄膜を作製すると、その後のアニールによりさらに均質な微結晶体となり、チャネル長が短くなっても均質性の高い良質な薄膜トランジスタが得られることを見出し、本発明を完成させた。
多結晶系の酸化物半導体薄膜をチャネル層として用いる薄膜トランジスタの場合、その結晶粒径が大きく、チャネル長(ソース電極−ドレイン電極の間隔)が長い場合は、そのチャネル間に存在する多結晶系酸化物薄膜の粒界は多数存在することが可能となる。逆に、チャネル長が短くなるとそのチャネル間に存在する多結晶系酸化物薄膜の粒界が存在しない場合と粒界が1つ以上存在する場合があり、性能に極端なバラツキが生じることがある。つまり、一つの結晶粒子の上にチャネルが存在し粒界が存在しない場合には高性能なTFTとして作動するが、チャネル間に粒界が1つ、もしくは2つ以上存在する場合はその粒界でのキャリヤーの散乱が生じ、キャリヤーの移動度が極端に低下する場合があることを見出した。チャネル間が短くなればなるほど、粒界が存在しない場合と存在する場合が生じる頻度が大きくなると予想される。この場合、チャネル長が20μm程度と長ければ、多結晶質の酸化物半導体の平均粒径が5μm程度でも、幾つかの粒界が必ず存在することになり、TFT素子間のバラツキはそれほど大きなものにはならないと考えられる。しかしながら、チャネル長が5μm以下の場合には、酸化物半導体の平均粒径が5μm以上であると、TFTのチャネル間にその粒界が存在する場合と存在しない場合が生じ、極端な性能の差が出ることが考えられる。
これを解決する方法として、多結晶の酸化物半導体の結晶粒径をチャネル長よりも小さい微結晶にすることにより、TFT素子間のバラツキを抑えることができると考えられる。しかしながら、微結晶にしてしまうと、上述したように粒界での散乱により、キャリヤーの移動度が低下することが考えられる。
ここで、キャリヤーの散乱は、バンド構造の伝導体の底に存在する粒界により形成されるエネルギー障壁により生じると考えられる。このキャリヤーの散乱の程度は、キャリヤーの密度に依存し、キャリヤー密度が低い場合は、この障壁を越えるのに大きなエネルギーを要するため、移動度が低下すると考えられる。一方、キャリヤー密度が高いと、相対的にこの障壁は低くなり、キャリヤー散乱の効果も小さくなり、移動度は低下しないと考えられる。
しかしながら、チャネル全体の酸化物半導体のキャリヤー密度を高くしていくと、半導体ではなく伝導体となりTFT特性を示さなくなる。
そこで、化学蒸着(CVD)処理等により、微結晶質酸化物薄膜(薄膜トランジスタのチャネル部となる)のキャリヤー密度を一旦高くした後、熱処理により、酸化物薄膜のキャリヤー密度を一定のレベルまで下げることで、微結晶であっても高移動度の酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタを完成するに至った。
本発明によれば、以下の酸化物半導体薄膜、薄膜トランジスタ等が提供される。
1.酸化インジウムを主成分とする微結晶を含む酸化物半導体薄膜。
2.走査イオン顕微鏡(SIM)により酸化物薄膜の表面を観察した場合に、前記微結晶の平均結晶粒径が、3μm以下である1に記載の酸化物半導体薄膜。
3.さらにガリウム、アルミニウム、イットリウム、及びランタノイド元素から選ばれた1種以上の元素を含有する1又は2に記載の酸化物半導体薄膜。
4.前記酸化物半導体薄膜中の全金属元素に対する前記ガリウム、アルミニウム、イットリウム、及びランタノイド元素から選ばれた1種以上の元素の合計の含有量が、1原子%超〜20原子%以下である1〜3のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜。
5.さらにスズ元素を含有する1〜4のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜。
6.前記酸化物半導体薄膜中の全金属元素に対する前記スズ元素の含有量が、1.0原子%以下である5に記載の酸化物半導体薄膜。
7.前記酸化物半導体薄膜の表面を走査イオン顕微鏡法(SIM)により観察したときに、5μm×5μmの測定視野中に存在する、結晶粒径が0.5μm以下の微結晶の占める割合が20%以下である1〜6のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜。
8.ソース電極及びドレイン電極と、ゲート電極と、ゲート絶縁膜と、保護絶縁膜と、チャネル層と、を有し、
前記チャネル層は、ゲート絶縁膜と保護絶縁膜の間に位置し、1〜7のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜からなる、薄膜トランジスタ。
9.飽和移動度が30cm/V・sec以上である8に記載の薄膜トランジスタ。
10.8又は9に記載の薄膜トランジスタを用いた電気機器又は車両。
11.酸化インジウムを主成分とするスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により薄膜を形成する工程と、
必要により前記薄膜を熱処理して微結晶を析出させる工程とを含む、微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法。
12.前記スパッタリング法により薄膜を形成する工程における、スパッタリングガス中のHO及びHのいずれか一方又は両方の含有量を0.1〜20体積%とする11に記載の微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法。
13.前記熱処理により微結晶を析出させる工程における、熱処理温度を150℃以上400℃以下とする11又は12に記載の微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法。
14.前記スパッタリング法により得られた薄膜、又は前記熱処理により微結晶を析出させた前記酸化物薄膜を、さらに化学蒸着(CVD)処理する工程と、前記化学蒸着処理後に熱処理する工程とを含む11〜13のいずれかに記載の微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法。
15.14に記載の微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法によって製造された微結晶質酸化物半導体薄膜。
16.14に記載の微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法によって製造された微結晶質酸化物半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタ。
17.飽和移動度が30cm/V・sec以上である16に記載の薄膜トランジスタ。
本発明によれば、安定したキャリヤー密度を有する酸化物半導体膜、及び飽和移動度が高い薄膜トランジスタが提供できる。
本発明の一実施形態のボトムゲート型薄膜トランジスタの例を示す概略断面図である。 In:Al原子比が87.5:12.5(In:Al=95:5wt%)のスパッタリングターゲットをスパッタリングして得た実施例6で作製した膜を加熱処理して微結晶化した表面の走査イオン顕微鏡(SIM)写真である。
1.酸化物半導体薄膜
本発明に係る酸化物半導体薄膜(以下、本発明の薄膜ということがある)は、酸化インジウムを主成分とする微結晶を含むことを特徴とする。
ここで、「酸化インジウムを主成分とする」とは、薄膜を構成する酸化物の50重量%以上が酸化インジウムであることを意味し、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
「微結晶」とは、走査イオン顕微鏡(SIM)により酸化物薄膜の表面を観察した場合に、平均結晶粒径(グレインサイズ)が通常、1〜10μm以下の結晶の集合体であることを意味する。尚、結晶粒径を測定するに当たり、粒界の判別に、結晶の方向をカラー表示可能な電子後方散乱像(EBSD)を補足的に用いることができる。
走査イオン顕微鏡(SIM)により酸化物薄膜の表面を観察した場合に、微結晶の平均結晶粒径は、好ましくは3μm以下であり、より好ましくは2μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。平均結晶粒径の下限としては、0.5μm程度である。本発明において、結晶粒径はクラムバイン径を意味する。
平均結晶粒径は、通常5μm×5μmの測定視野でクラムバイン径を測定し、その平均値として求める。膜のサイズにより、5μm×5μmの測定視野が確保できない場合には、分析可能な最大サイズで計測すればよい。
但し、平均結晶粒径が0.1μm以下となり、X線回折(XRD)による測定により、ピークが観察されない状態は「非晶質」となる。
平均結晶粒径が3μmを超えると結晶質酸化物半導体となりやすく、移動度が向上しなかったり、酸化物半導体薄膜の特性の安定性が確保できなくなったりする場合がある。また、非晶質の場合には、移動度が低下したり、酸化物半導体薄膜の特性の安定性が確保できなくなったりする場合がある。
本発明の薄膜は、さらにガリウム、アルミニウム、イットリウム、及びランタノイド元素から選ばれた1種以上の元素を含有することが好ましい。
ガリウム、アルミニウム、イットリウム、及びランタノイド元素から選ばれた1種以上の元素を含有させることにより微結晶化を促進することができる。これらの元素のうち、ガリウム、アルミニウム、イットリウム及びサマリウムから選ばれた1種以上を含むことが好ましい。特に好ましくは、酸素不動態膜を作るアルミニウム及び/又はイットリウムである。これらの元素の金属イオンは、インジウムイオンとイオン半径が異なり、これらの元素を含有させることで、酸化インジウムの平均結晶粒径が3μm超にならないように制御できるようになる利点を有する。
前記酸化物半導体薄膜中の全金属元素に対する前記ガリウム、アルミニウム、イットリウム、及びランタノイド元素から選ばれた1種以上の元素の合計の含有量は、1原子%超〜20原子%以下であることが好ましく、5原子%〜15原子%以下であることがより好ましく、10原子%〜15原子%以下がさらに好ましい。これらの元素の合計の含有量が1原子%未満では、平均結晶粒径が3μm超になるおそれがある。一方、20原子%超では、非晶質の酸化物半導体薄膜しか得られないおそれがある。
また、各元素の原子%は、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)により含有元素を定量分析して求めることができる。
本発明の薄膜は、インジウム元素及び上記元素に加えて、さらにスズ元素を含有することが好ましい。
スズ元素の添加により、後述する化学蒸着(CVD)処理による微結晶質酸化物半導体薄膜のキャリヤー密度を効果的に向上させることができる。本発明において「キャリヤー密度の向上」とは、薄膜成膜後の化学蒸着(CVD)処理前後にホール測定によるキャリヤー密度の測定を行った場合にCVD処理後におけるキャリヤー密度が増大していることを意味する。
前記酸化物半導体薄膜中の全金属元素に対する前記スズ元素の含有量は、1.0原子%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5原子%以下、さらに好ましくは0.3原子%以下である。1.0原子%超では、スズイオンのキャリヤーの散乱効果が大きくなり、移動度が低下する場合がある。スズ元素を添加しない場合より、添加した場合の方が、よりキャリヤーの制御が容易になるので、スズ元素の添加量の下限は、0.01原子%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05原子%以上である。
前記酸化物半導体膜の表面を走査イオン顕微鏡法(SIM)により観察したときに、5μm×5μmの測定視野中に存在する、結晶粒径が0.5μm以下の微結晶の占める割合が20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下である。
また、前記酸化物半導体膜の表面をSIMにより観察したときの、5μm×5μmの測定視野に占める3μm以下の結晶数の面積の割合は、80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。さらに、結晶粒径が0.5μm以下の結晶数の割合が20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下である。0.5μm以下の微結晶は、アモルファス状に近い相であり、この相が多くなると、薄膜トランジスタの移動度が低下する場合がある。
2.薄膜トランジスタ(TFT)
本発明に係る薄膜トランジスタ(以下、本発明のTFTということがある)は、ソース電極及びドレイン電極と、ゲート電極と、ゲート絶縁膜と、保護絶縁膜と、チャネル層と、を有し、
前記チャネル層は、ゲート絶縁膜と保護絶縁膜の間に位置し、上記本発明に係る酸化物半導体薄膜からなることを特徴とする。
チャネル層が、上記本発明に係る酸化物半導体薄膜からなることにより、キャリヤー密度の変動が抑制され、飽和移動度が高い薄膜トランジスタが得られる。
図1は、本発明の一実施形態であるボトムゲート逆スタガ型薄膜トランジスタの例を示す概略断面図である。
薄膜トランジスタは、ゲート電極付き基板20上に、ソース電極50及びドレイン電極60が形成されている。ゲート絶縁膜30は、ゲート電極20と接して形成されている。ゲート絶縁膜30の上には、ソース電極50とドレイン電極60が形成され、ソース電極50とドレイン電極60の間には、チャネル層40が形成されている。チャネル層40はゲート絶縁膜30に接している。ソース電極50、ドレイン電極60、チャネル層40を覆って保護絶縁膜層70,70aが形成されている。チャネル層40は、ゲート絶縁膜30と保護絶縁膜層70aの間にあって、これら層と接している。
ここで、チャネル層とは、ゲート電極に相対しゲート絶縁膜に接する半導体の内、ソース電極とドレイン電極に挟まれる領域であり、半導体の膜厚を有する。より具体的には、半導体膜の膜厚、チャネル長(ソース電極とドレイン電極の間隔)及びチャネル幅(ソース電極とドレイン電極の幅)で領域の範囲が規定される。
本発明のTFTの各層の積層構成、チャネル層となる酸化物半導体を除く各層の材料、成膜方法、パターニング方法、膜厚等は特に制限されず、目的とするTFT性能に応じて適宜設計すればよい。
例えば、その上にTFTを作製するための基材としては、基材とゲート電極を兼ねる材料を用いてもよいが、基材と電極を異なる材料としてもよい。この場合、絶縁性の基材が好ましい。このような基材としては、例えば、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、若しくはアルミノシリケートガラス等、フュージョン法やフロート法で作製される無アルカリガラス基材等に代表されるガラス基材、セラミック基材の他、後述する本発明に係る薄膜トランジスタの製造工程の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基材等が挙げられる。また、ステンレス合金等の金属基材の表面に絶縁膜を設けた基板を適用してもよい。基材がマザーガラスの場合、基材の大きさは、第1世代(320mm×400mm)、第2世代(400mm×500mm)、第3世代(550mm×650mm)、第4世代(680mm×880mm、又は730mm×920mm)、第5世代(1000mm×1200mm又は1100mm×1250mm)、第6世代1500mm×1800mm)、第7世代(1900mm×2200mm)、第8世代(2160mm×2460mm)、第9世代(2400mm×2800mm、2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等を用いることができる。また基材に下地膜として絶縁膜を形成してもよい。下地膜は、例えば、CVD法やスパッタリング法等を用いて、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、又は窒化酸化珪素膜を単層又は積層で形成する。
さらに、熱酸化膜付きシリコン基板を、ゲート絶縁膜及びゲート電極付きの基板とみなすこともできる。この場合、ゲート絶縁膜が熱酸化膜であり、ゲート電極をシリコンとする。
ゲート絶縁膜の材料としては、例えばSiO,SiNx,SiONx,Al,Ta,TiO,MgO,ZrO,CeO,KO,LiO,NaO,RbO,Sc,Y,Hf,CaHfO,PbTiO,BaTa,SrTiO,AlN等の化合物が挙げられる。これらのなかでも、好ましくはSiO,SiNx,Al,Y,HfO,CaHfOであり、より好ましくはSiO,SiNx,Y,HfO,CaHfOである。尚、上記の酸化物の酸素数は、必ずしも化学量論比と一致していなくともよい(例えば、SiOでもSiOでもよい)。
ドレイン電極、ソース電極及びゲート電極の各電極を形成する材料に特に制限はなく、一般に用いられている材料を任意に選択することができる。例えば、ITO,酸化インジウム亜鉛,ZnO,SnO等の透明電極や、Al,Ag,Cu,Cr,Ni,Mo,Au,Ti,W,Ta等の金属電極、又はこれらを含む合金の金属電極を用いることができる。また、ドレイン電極、ソース電極及びゲート電極の各電極は、異なる2層以上の導電層を積層した多層構造とすることもできる。特にソース・ドレイン電極は低抵抗配線への要求が強いため、AlやCu等の良導体をTiやMo等の密着性に優れた金属でサンドイッチして使う場合がある。
保護絶縁膜を形成する材料としては、酸素透過性を有する絶縁膜(以下、酸素透過性絶縁膜と略記する場合がある。)であることが望ましい。
酸素透過性絶縁膜としては、例えばSiO,SiON,Ta,TiO,MgO,ZrO,CeO,KO,LiO,NaO,RbO,Sc,Y,Hf,CaHfO,PbTiO,BaTa,SrTiO等の膜が挙げられる。これらのなかでも、好ましくはSiO,SiON,Y,Hf,CaHfOであり、より好ましくはSiOである。これら酸化物の酸素数は、必ずしも化学量論比と一致していなくともよい(例えば、SiOでもSiOxでもよい)。酸素透過性絶縁膜は、プラズマCVD法又はスパッタリング法を用いて形成する。好ましくは、酸素を含む希ガス雰囲気下においてスパッタリング法にて成膜する。
また、プラズマCVD法において、前記基板を250〜450℃の範囲、好ましくは300〜400℃の範囲、より好ましくは350℃に保持し、原料ガス(SiH:NO:N)の比を1:10:10〜1:100:100の割合で50〜300Paの圧力で導入して、厚さ100〜300nmの保護絶縁膜を形成してもよい。
本発明のTFTは、飽和移動度が30cm/V・sec以上であることが好ましく、より好ましくは50cm/V・sec以上、さらに好ましくは100cm/V・sec以上である。
本発明のTFTは、電気機器又は車両に好適に用いられる。
本発明のTFTを用いることで、電気機器や車両がより安定した動作性を有するものとなる。
3.微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法及び薄膜トランジスタの製造方法
本発明に係る微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法は、
酸化インジウムを主成分とするスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により薄膜を形成する工程と、
必要により前記薄膜を熱処理して微結晶を析出させる工程とを含むことを特徴とする。
微結晶を形成する工程としては、スパッタリング法により薄膜を形成するときでもよいし、非晶質膜を形成した後、熱処理により微結晶を析出させてもよいし、また、後述するCVD処理中に微結晶を析出させてもよいし、その後の熱処理中に微結晶を析出させてもよいが、スパッタリングにより薄膜を形成するとき、又は非晶質膜を形成した後、熱処理により微結晶を析出させることが好ましい。
酸化物薄膜の成膜方法としては、スパッタリング法が好ましい。また、RFスパッタ、DCスパッタ、ACスパッタ等各種のスパッタ法を用いることができるが、DCスパッタ及びACスパッタが、生産性、安定スパッタ性等から好ましい。スパッタ用のターゲットとしては、平板型やシリンドリカル形状のターゲットが使用可能であり、装置により適宜選択すればよい。用いる酸化インジウムを主成分とするスパッタリングターゲットは、前記本発明の薄膜の説明で記載した元素組成を有することが好ましい。スパッタリングターゲットの製造方法は、特に限定されないが、通常は所定の酸化物粉末を混合、焼結し、機械加工を経て形成される。
スパッタリングにより薄膜を形成するときに微結晶を形成しようとする場合には、基板を加熱状態で成膜することが好ましい。基板温度は、100℃〜400℃にセットすることが好ましい。基板温度が100℃未満では、微結晶化しない場合がある。また、400℃超では、微結晶ではなく平均粒径が3μm超になる場合がある。スパッタリングにより非晶質膜が得られた場合には、その後の加熱処理により微結晶化すればよい。
前記スパッタリング法により薄膜を形成する工程における、スパッタリングガス中のHO及びHのいずれか一方又は両方の含有量を0.1〜20体積%とすることが好ましく、より好ましくは1体積%以上、20体積%、さらに好ましくは、5体積%以上、20体積%以下であり、特に好ましくは、10体積%以上、15体積%以下である。水分及び/又は水素を含有させることにより、容易に微結晶を得られるようになる。水分及び/又は水素の含有量が0.1体積%未満の場合は、微結晶を得るのが難しく結晶質になる場合があり、20体積%超になると非晶質しか得られない場合がある。
上記スパッタリング工程で成膜された酸化物薄膜が非晶質である場合には、成膜後の熱処理により微結晶化する。熱処理は、150℃以上、400℃以下の温度で行うことが好ましい。熱処理温度が150℃未満では、微結晶が得られないおそれがあり、400℃超では、結晶が3μm超の結晶になるおそれがある。好ましくは、200℃以上、350℃以下である。熱処理時間は、1〜120分が好ましい。1分未満では微結晶化しない場合があり、120分超では時間が長くなり、結晶が3μm超に成長したり、加熱処理の費用が高価になったりすることがある。
この熱処理は後述するCVD処理と同時に行うこともできる。
前記スパッタリング法により得られた薄膜、又は前記熱処理により微結晶を析出させた前記酸化物薄膜を、さらに化学蒸着(CVD)処理する工程と、前記化学蒸着処理後に熱処理する工程とを含むことが好ましい。
酸化物薄膜のCVD処理は、薄膜トランジスタの製造において、層間絶縁膜やゲート絶縁膜としてSiOやSiN、SiON等の薄膜を酸化物薄膜の上に形成する工程で行うことができる。この処理により、微結晶質酸化物半導体薄膜のキャリヤー密度を向上させることができる。キャリヤー密度の向上については、前述した通りである。
CVD処理後のキャリヤー密度は、1.0×1018個/cm以上であることが好ましく、1.0×1019個/cmであることがより好ましい。CVD処理後のキャリヤー密度が1.0×1021個/cm超になると、その後の熱処理でTFT特性を示さなくなる場合があるので、CVD処理後のキャリヤー密度の上限は、1.0×1021個/cm以下とすることが好ましく、1.0×1020個/cm以下がより好ましい。
CVD処理の後に行う熱処理は、前述したように、CVD処理によって増大した酸化物薄膜のキャリヤー密度を所望のレベルまで低減するために行う。酸化物薄膜の表面(薄膜トランジスタのチャネル表面)から酸化することにより、酸化物薄膜の厚さ方向でキャリヤー密度の傾斜を持たせることができる。この処理により、薄膜表面近くはキャリヤー密度が低いが、ゲート絶縁膜近傍のキャリヤー密度は高いままとすることができる。
従来技術では、CVD処理後の熱処理による酸化速度が速く、酸素の酸化物薄膜への拡散速度をコントロールすることができなかったため、微結晶質酸化物薄膜のキャリヤー密度を制御できなかった。そのため、キャリヤー密度が高すぎて導体となってしまったり、逆にキャリヤー密度が低すぎて不導体となってしまい、安定した半導体が得られていなかった。本発明では、この熱処理での酸素の拡散係数をコントロールする手段を見出したことで安定な微結晶質酸化物半導体薄膜を得ることができるようになった。
この薄膜表面からの酸化により、確実にゲート絶縁膜近傍のみ高いキャリヤー密度に制御するには、この酸化物半導体への酸素の拡散を制御する必要がある。この酸素の拡散を制御する方法として、低温でゆっくり酸化する方法、酸素拡散を抑える効果のある金属酸化物を添加する方法、又はその両方を行う方法が考えられる。
低温でゆっくり酸化することによって酸素の拡散をコントロールする方法としては、は、200℃以上、400℃以下の温度で熱処理を行うことが好ましい。200℃未満では、キャリヤー密度が十分に低減できない場合があり、400℃超では、キャリヤー密度が低下し過ぎたり、結晶粒径が3μm超の結晶になる場合がある。好ましくは、250℃以上、350℃以下である。熱処理時間は、1分から120分が好ましい。1分未満ではキャリヤー密度の低減効果が得られない場合があり、120分超では時間が長くなり、キャリヤー密度が低下しすぎたり、結晶粒径が3μm超となったり、加熱処理の費用が高価になったりするおそれがある。
酸素拡散を抑える効果のある金属酸化物を添加することによって酸素の拡散をコントロールする方法としては、酸化物薄膜に前述のガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、及びランタノイド元素から選ばれた1種以上の元素を含有させたり、スズ(Sn)を含有させる方法、並びに上記元素とスズ(Sn)とを含有させる方法が挙げられる。
上記元素としては、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)及びサマリウム(Sm)が好ましく、酸素不動態膜を形成する性質を有するアルミニウム(Al)及びイットリウム(Y)が特に好ましい。アルミニウム(Al)及びイットリウム(Y)は、薄膜表面に当該酸素不動態膜を形成して薄膜内部への酸素の拡散を抑制することができる。CVD処理後の加熱処理による酸化物半導体のキャリヤー密度を下げる工程において、酸素が酸化物半導体内部に拡散し、酸素欠損と反応し、キャリヤー密度を低減(図1、44:低キャリヤー領域)して行く。更に内部に酸素が拡散し酸素欠損と反応してキャリヤー密度を低減していくが、この酸素の拡散を制御してゲート絶縁膜近傍の酸化物半導体のキャリヤー密を高い状態(図1、42:高キャリヤー領域)に保ったままにすることにより、薄膜トランジスタの移動度を高くすることができることになる。このように、酸素不動態膜を形成する能力のある金属酸化物を薄膜トランジスタに入れることにより、酸素拡散を制御できるようになる。
また、スズ(Sn)は、低い酸化還元エネルギーで容易に2価と4価の間を遷移することができる。この性質によって、CVD処理工程で、容易に4価から2価へ還元される場合があり、その後の酸化処理により、容易に2価から4価へ酸化することができる。この加熱酸化処理により、酸素欠損が消失しキャリヤー密度が極端に低下してしまいそうになった場合、スズが酸化インジウム結晶中で活性化してキャリヤーを発生し、極端なキャリヤーの低下がなくなり、安定した薄膜トランジスタ特性を示すようになる。また、加熱による酸化処理により、表面近傍より酸素が拡散し酸素欠損と反応し、酸素欠損を消失させ、表面近傍のキャリヤー密度を低下させながら、だんだん内部へ酸素が拡散し、表面は酸化されてキャリヤー密度が少ない層(図1、44)とキャリヤー密度が多い層(図1、42)を形成する様になる。この酸素が少ない薄膜の底部近傍(ゲート絶縁膜近傍、図1、42)では、2価に還元されたスズは、周囲の金属酸化物、例えば、酸化インジウムから酸素原子を奪って自身は4価に遷移し、酸化インジウムに酸素欠損、即ち、キャリヤーを発生させると考えられる。熱処理により、薄膜の表面近傍(図1、44)のキャリヤー密度は低減されるが、底部近傍(図1、42)ではキャリヤー密度はそれほど低減されないと考えられる。
上記熱処理によってキャリヤー密度を所望のレベルまで低減した微結晶質酸化物半導体薄膜を、TFTのチャネル層として用いると、微結晶であるにもかかわらず、飽和移動度を向上させることができる。
上記本発明に係る微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法によれば、酸化インジウムを主成分とする酸化物薄膜を形成し、これを微結晶状態にすることにより薄膜を安定化させ、TFT製造工程でのCVD処理工程での還元によりキャリヤー密度を向上させ、さらにその後の熱処理によりキャリヤー密度を低減させる。これにより、安定化された酸化物半導体とすることができ、その結果、TFTの飽和移動度を向上させることができる。
本発明によれば、
酸化インジウムを主成分とするスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により薄膜を形成する工程と、
必要により前記薄膜を熱処理して微結晶を析出させる工程と、
前記薄膜を化学蒸着(CVD)処理する工程と、
さらに前記薄膜を熱処理する工程とを含む方法によって製造された微結晶質酸化物半導体薄膜、さらにそれを用いた薄膜トランジスタが得られる。
上記方法によって得られた微結晶質酸化物半導体薄膜は、キャリヤー密度の変動が押さえ込まれて安定化されている。当該微結晶質酸化物半導体薄膜をチャネル層として用いたTFTは高い飽和移動度を示す。
上記TFTは、飽和移動度が30cm/V・sec以上であることが好ましく、より好ましくは50cm/V・sec以上、さらに好ましくは100cm/V・sec以上である。
上記のように、微結晶質の酸化物半導体薄膜は、従来は酸化物半導体として不安定であったり、これを用いた薄膜トランジスタの性能に著しいバラツキを生じる等の欠点があったが、本発明によって、薄膜トランジスタのチャネル層として用いても十分な安定性と飽和移動度を実現することが可能になった。
本発明の酸化物半導体薄膜は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置等に用いられる薄膜トランジスタ(TFT)等に有用である。
本発明の酸化物薄膜は、太陽電池や、液晶、有機エレクトロルミネッセンス、無機エレクトロルミネッセンス等の表示素子やパワー半導体素子、タッチパネル等の電子機器に好適に使用でき、これらは電気機器や車両に好適に使用できる。
実施例1:In系
1)薄膜トランジスタ(TFT)の作製
本実施例では、図1に示すボトムゲート型(逆スタガ型)のTFTを作製した。
スパッタリングターゲットとして表1に示す酸化インジウム100%組成(原子比)を有する多結晶焼結体を用いた。
熱酸化シリコンからなるゲート絶縁膜30が形成されている低抵抗n型結晶シリコン基板(基板兼ゲート電極)20上に、DCスパッタ法により、チャネル層(酸化物半導体層)40として厚さ50nmのIn酸化物半導体膜を成膜した。成膜レートは8nm/分であった。基板温度その他の成膜条件は表1に記載の通りであった。尚、In堆積時にシャドーマスクを利用しているので、チャネル層はパターニングされた状態の半導体膜が形成された。
得られた積層体を大気中にて表1に示す温度及び時間加熱処理した。
2)ソース・ドレイン電極形成
上記熱処理した酸化物薄膜を有する積層体をスパッタ装置にセットし、シャドーマスクを利用してAuを成膜して、ソース・ドレイン層をパターニングされた状態で形成した。
3)化学蒸着(CVD)処理工程
上記ソース・ドレイン電極が形成された基板をプラズマCVD装置にセットし、前記基板を350℃に保持し、SiHを2sccm、NOを100sccm、Nを120sccmの割合で110Paの圧力で導入して、厚さ100nmの保護絶縁膜70,70a(SiO膜)を積層した。
4)熱処理工程
続いて、SiO膜が形成された基板を、大気中にて表1に示す温度及び時間加熱してTFTを製造した。
5)TFTの評価
下記特性について評価を行った。結果を表1に示す。
・伝達曲線は、半導体パラメーターアナライザー(ケースレーインスツルメント(株)製 ケースレー4200)を用いて測定した。
・飽和移動度は、ドレイン電圧に5V印加した場合の伝達特性から求めた。具体的に、伝達特性Id−Vgのグラフを作成し、各Vgのトランスコンダクタンス(Gm)を算出し、線形領域の式により飽和移動度を導いた。尚、Gmは∂(Id)/∂(Vg)によって表され、Vgは−15〜25Vまで印加し、その範囲での最大移動度を飽和移動度と定義した。本発明において特に断らない限り、飽和移動度はこの方法で評価した。上記Idはソース・ドレイン電極間の電流、Vgはソース・ドレイン電極間に電圧Vdを印加したときのゲート電圧である。
・閾値電圧(Vth)は、伝達特性のグラフよりId=10−9AでのVgと定義した。
・on−off比は、Vg=−10VのIdの値をOff電流値とし、Vg=20VのIdの値をOn電流値として比[On/Off]を決めた。
6)ホール効果測定
上記TFT製造工程と同時にガラス基板上に上記1)と同様にして厚さ50nmのIn酸化物半導体膜を成膜し、加熱処理を行った後、1cm角の正方形に切り出して、4角に金(Au)を2mm×2mm以下の大きさ位になるようにメタルマスクを用いてイオンコーターで成膜し、Au金属上にインジウムはんだを乗せて接触を良くしてホール効果測定用サンプルとした。
ガラス基板には、日本電気硝子株式会社製ABC−Gを用いた。
ホール効果測定用サンプルをホール効果・比抵抗測定装置(ResiTest8300型、東洋テクニカ社製)にセットし、室温においてホール効果を評価し、キャリヤー密度を求めた。結果を表1に示す。
上記ホール効果測定用サンプルの半導体膜上に、CVD装置によりSiO膜を成膜したのち、ホール測定を実施し、さらに加熱処理後にもホール測定を行った。結果を表1に示す。
7)半導体膜の結晶特性
スパッタ後(膜堆積後)の加熱していない膜及び加熱した後の膜の結晶性をX線回折(XRD)測定によって評価したところ、いずれも微結晶質であり、定電流ダイオード(CRD)測定により酸化インジウムのビックスバイト型結晶の微小なピークを示した。
また、加熱後の膜について、走査イオン顕微鏡(SIM)により表面形態を確認しクラムバイン径を計測したところ、平均粒径が3μm未満の微結晶の集合体であることを確認した。平均結晶粒径(グレインサイズ)は、2.2μm未満であった。平均結晶粒径は、膜の中央部(対角線の交点)を中心とした、5μm×5μmの枠内の微結晶の粒径を測定し、これらの相加平均値として算出することで求めた。3μm以下の粒径の結晶の占める割合は、98%超であり、0.5μm以下の粒子の割合は、10%未満であった。これより微結晶の集合体と判断した。
実施例2〜3及び比較例1〜2:In系
表1に記載の原子比を有するスパッタリングターゲットを用い、表1に示す条件で成膜、加熱処理、CVD処理及びCVD後の熱処理を行ってTFTを得た。また、実施例1と同様にTFT特性、ホール効果測定、半導体膜の結晶特性等を評価した。結果を表1に示す。
尚、表中の「E+XX」は「1×10+XX」を意味する。
実施例4〜8及び比較例3〜4:InとAlを含む系
表2に記載の原子比を有するスパッタリングターゲットを用い、表2に示す条件で成膜、加熱処理、CVD処理及びCVD後の熱処理を行ってTFTを得た。また、実施例1と同様にTFT特性、ホール効果測定、半導体膜の結晶特性等を評価した。結果を表2に示す。
実施例9〜13及び比較例5〜7:InとGa、Y、Ln及び/又はSnを含む系
表3に記載の原子比を有するスパッタリングターゲットを用い、表3に示す条件で成膜、加熱処理、CVD処理及びCVD後の熱処理を行ってTFTを得た。また、実施例1と同様にTFT特性、ホール効果測定、半導体膜の結晶特性等を評価した。結果を表3に示す。
20 ゲート電極を兼ねる基板
30 ゲート絶縁膜
40 チャネル層
42 高キャリヤー領域
44 低キャリヤー領域
50 ソース電極
60 ドレイン電極
70,70a 保護絶縁膜

Claims (17)

  1. 酸化インジウムを主成分とする微結晶を含む酸化物半導体薄膜。
  2. 走査イオン顕微鏡(SIM)により酸化物薄膜の表面を観察した場合に、前記微結晶の平均結晶粒径が、3μm以下である請求項1に記載の酸化物半導体薄膜。
  3. さらにガリウム、アルミニウム、イットリウム、及びランタノイド元素から選ばれた1種以上の元素を含有する請求項1又は2に記載の酸化物半導体薄膜。
  4. 前記酸化物半導体薄膜中の全金属元素に対する前記ガリウム、アルミニウム、イットリウム、及びランタノイド元素から選ばれた1種以上の元素の合計の含有量が、1原子%超〜20原子%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜。
  5. さらにスズ元素を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜。
  6. 前記酸化物半導体薄膜中の全金属元素に対する前記スズ元素の含有量が、1.0原子%以下である請求項5に記載の酸化物半導体薄膜。
  7. 前記酸化物半導体薄膜の表面を走査イオン顕微鏡法(SIM)により観察したときに、5μm×5μmの測定視野中に存在する、結晶粒径が0.5μm以下の微結晶の占める割合が20%以下である請求項1〜6のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜。
  8. ソース電極及びドレイン電極と、ゲート電極と、ゲート絶縁膜と、保護絶縁膜と、チャネル層と、を有し、
    前記チャネル層は、ゲート絶縁膜と保護絶縁膜の間に位置し、請求項1〜7のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜からなる、薄膜トランジスタ。
  9. 飽和移動度が30cm/V・sec以上である請求項8に記載の薄膜トランジスタ。
  10. 請求項8又は9に記載の薄膜トランジスタを用いた電気機器又は車両。
  11. 酸化インジウムを主成分とするスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により薄膜を形成する工程と、
    必要により前記薄膜を熱処理して微結晶を析出させる工程とを含む、微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法。
  12. 前記スパッタリング法により薄膜を形成する工程における、スパッタリングガス中のHO及びHのいずれか一方又は両方の含有量を0.1〜20体積%とする請求項11に記載の微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法。
  13. 前記熱処理により微結晶を析出させる工程における、熱処理温度を150℃以上400℃以下とする請求項11又は12に記載の微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法。
  14. 前記スパッタリング法により得られた薄膜、又は前記熱処理により微結晶を析出させた前記酸化物薄膜を、さらに化学蒸着(CVD)処理する工程と、前記化学蒸着処理後に熱処理する工程とを含む請求項11〜13のいずれかに記載の微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法。
  15. 請求項14に記載の微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法によって製造された微結晶質酸化物半導体薄膜。
  16. 請求項14に記載の微結晶質酸化物半導体薄膜の製造方法によって製造された微結晶質酸化物半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタ。
  17. 飽和移動度が30cm/V・sec以上である請求項16に記載の薄膜トランジスタ。
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