JP2018107316A - 酸化物半導体薄膜及びその製造方法、並びに薄膜トランジスタ - Google Patents

酸化物半導体薄膜及びその製造方法、並びに薄膜トランジスタ Download PDF

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文彦 松村
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真菜 白木
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Abstract

【課題】高いキャリア移動度を示し且つ結晶粒径が1μm未満である結晶質の酸化物半導体薄膜及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る酸化物半導体薄膜は、結晶質であり、インジウム、ガリウム及び水素を含有し、ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.30以下であり、平均結晶粒径が1μm未満である。ガリウムの含有量はGa/(In+Ga)原子数比で0.17以上0.23以下であることが好ましい。水素の含有量は1.0×1020atoms/cm以上1.0×1022atoms/cm以下であることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、結晶質の酸化物半導体薄膜及びその製造方法、並びに薄膜トランジスタに関する。より詳しくは、インジウム、ガリウム及び水素を含有し、高いキャリア移動度を示す結晶質の酸化物半導体薄膜であって、結晶粒径の粗大化を抑制せしめた酸化物半導体薄膜及び製膜方法に関し、さらには面内均一性に優れる薄膜トランジスタに関する。
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、「TFT」と言う。)は、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、以下、「FET」と言う。)の1種である。TFTは、基本構成として、ゲート端子、ソース端子、及び、ドレイン端子を備えた3端子素子であり、基板上に成膜した半導体薄膜を、電子又はホールがキャリアとして移動するチャネル層として用い、ゲート端子に電圧を印加して、チャネル層に流れる電流を制御し、ソース端子とドレイン端子間の電流をスイッチングする機能を有するアクティブ素子である。
TFTは、現在、最も多く実用化されている電子デバイスであり、その代表的な用途として液晶駆動用TFTが挙げられる。この液晶駆動用TFTの多くは、電子がキャリアとして移動するn型のチャネル層を用いている。現在、n型のチャネル層として最も広く使用されているのは、低温ポリシリコン薄膜又はアモルファスシリコン薄膜である。
しかしながら、近年、液晶の高精細化が進むのに伴い、液晶駆動用TFTには高速駆動が求められるようになっている。TFTの駆動速度は、チャネル層の電子の移動度に依存する。したがって、高速駆動を実現するためには、電子の移動度がアモルファスシリコンの移動度より高い半導体薄膜をチャネル層に用いる必要がある。低温ポリシリコンは、電子の移動度は十分高いが、大型ガラス基板へ形成した場合に面内均一性が低く歩留まりが低く、又はアモルファスシリコンと比較して製造工程が多く、設備投資が必要である等の理由から、高いコスト等の課題がある。
このような状況に対して、特許文献1では、気相成膜法で成膜され、In、Ga、Zn及びOの元素から構成される透明非晶質酸化物薄膜であって、該酸化物の組成は、結晶化したときの組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)であり、不純物イオンを添加することなしに、キャリア移動度(キャリア電子移動度ともいう)が1cm−1sec−1超、且つキャリア濃度(キャリア電子濃度ともいう)が1016cm−3以下である半絶縁性であることを特徴とする透明半絶縁性非晶質酸化物薄膜、ならびに、この透明半絶縁性非晶質酸化物薄膜をチャネル層としたことを特徴とする薄膜トランジスタが提案されている。
しかし、特許文献1で提案された、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法のいずれかの気相成膜法で成膜され、In、Ga、Zn及びOの元素から構成される透明非晶質酸化物薄膜(a−IGZO膜)は、概ね1〜10cm−1sec−1の範囲のキャリア移動度にとどまるため、TFTのチャネル層として形成した場合にキャリア移動度が不足することが指摘されていた。
キャリア移動度の不足を解決するために、a−IGZO以外の材料の検討がなされている。例えば、特許文献2では、ガリウムが酸化インジウムに固溶していて、原子数比Ga/(Ga+In)が0.001〜0.12であり、全金属原子に対するインジウムとガリウムの含有率が80原子%以上であり、Inのビックスバイト構造を有する酸化物薄膜を用いることを特徴とする薄膜トランジスタが提案されている。
特許文献2においては、特許文献1よりもインジウム含有量を高め、且つInのビックスバイト構造に結晶化させることでキャリア移動度を高めているが、キャリア濃度が2.0×1018cm−3を超えている実施例が散見され、TFTチャネル層に適用する酸化物半導体薄膜としては高いことが課題として残されている。
特許文献3では、薄膜トランジスタのチャネル層となる酸化物層と絶縁層からなる積層構造であって、酸化物層を構成する材料は、実質的にビックスバイト構造からなるGaをドープした酸化インジウムであり、酸化物層のキャリア濃度が1018/cm以下、平均結晶粒径が1μm以上であり、酸化物層の結晶が、絶縁層の表面に柱状に配置していることを特徴とする積層構造が提案されている。特に、薄膜堆積時に水を導入し、微結晶の生成を抑制することによって、酸化物薄膜(酸化物層)は、加熱処理工程において基板側から柱状に成長することが開示されており、柱状に結晶が配置した酸化物薄膜は、酸素欠損が少ないため、キャリア濃度を1018/cm以下に制御することができるとされている。また、このような酸化物薄膜の平均結晶粒径は1μm以上となり、1〜27μmであることが好ましいことが報告されている。
確かに、欠陥の少ない柱状結晶の酸化物薄膜であれば1018/cm以下のキャリア濃度にすることが可能だが、TFTの基板面内ばらつきの観点から平均結晶粒径が1μm以上になることはむしろ好ましくない。量産されるTFTの酸化物半導体層の形状は、長さが数〜十数μm、幅が数〜十数μmであるため、平均結晶粒径が1μm以上である場合には、半導体特性を低下させる結晶粒界が半導体層1辺あたり数個程度しか存在しない場合がある。結晶粒界の個数によって半導体特性が影響を容易に受けることになり、例えば大面積のガラス基板面内において均一に多数のTFTを形成することが困難になる。
また、特許文献4では、特許文献2の高キャリア濃度を解決するため、系内の水分圧が3×10−4〜5×10−2Paの条件下で、スパッタリングターゲットをDCスパッタリングして成膜体を成膜し、成膜体を結晶化する酸化物半導体の成膜方法が提案されている。
特許文献4に記載されている成膜方法は、特許文献3の製膜方法と殆ど同じである。特に、特許文献4において唯一Gaをドープした酸化インジウムの実施例、すなわちIn:Ga=95:5に関する実施例14と、特許文献3のGa/(In+Ga)=0.058に関する実施例9は、成膜方法だけでなくスパッタリングターゲットの組成も殆ど同じである。したがって、特許文献4においても、特許文献3と同様に、平均結晶粒径1μm以上の粗大な結晶粒によって、大面積基板において均一にTFTを製造できない。
特開2010−219538号公報 WO2010/032422号公報 特開2013−16866号公報 特開2011−222557号公報
A.Takagi,K.Nomura,H.Ohta,H.Yanagi,T. Kamiya,M.Hirano,and H.Hosono,Thin Solid Films 486,38(2005).
本発明は、高いキャリア移動度を示し且つ結晶粒径が1μm未満である結晶質の酸化物半導体薄膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、インジウム、ガリウム及び水素を含有し、ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.30以下であり、平均結晶粒径が1μm未満である結晶質の酸化物半導体薄膜が高いキャリア移動度を示すこと、及び所定の雰囲気下におけるスパッタリング法によって酸化物半導体薄膜を成膜することで、そのような酸化物半導体薄膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は、以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の発明は、結晶質であり、インジウム、ガリウム及び水素を含有し、前記ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.30以下であり、平均結晶粒径が1μm未満である酸化物半導体薄膜である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.17以上0.23以下である酸化物半導体薄膜である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記水素の含有量が1.0×1020atoms/cm以上1.0×1022atoms/cm以下である酸化物半導体薄膜である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、キャリア濃度が2.0×1018cm−3以下である酸化物半導体薄膜である。
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、キャリア移動度が10cm−1sec−1以上である酸化物半導体薄膜である。
(6)本発明の第6の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、キャリア濃度が8.0×1016cm−3以下であり、キャリア移動度が15cm−1sec−1以上である酸化物半導体薄膜である。
(7)本発明の第7の発明は、第1乃至第6のいずれかの発明に係る酸化物半導体薄膜をチャネル層として備える薄膜トランジスタである。
(8)本発明の第8の発明は、系内の全てのガスの総圧力に対する水分圧が2.0×10−3Pa以上5.0×10−1Pa以下、希ガスと酸素の総圧力に対する酸素分圧が4.5×10−2Pa以上3.0×10−1Pa以下の雰囲気下で、インジウム及びガリウムを含有し、該ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.30以下である酸化物を含むターゲットを用いてスパッタリング法によって酸化物薄膜を成膜する成膜工程と、前記酸化物薄膜を熱処理する熱処理工程とを含む酸化物半導体薄膜の製造方法である。
(9)本発明の第9の発明は、第8の発明において、前記熱処理工程を酸素含有雰囲気下で行う酸化物半導体薄膜の製造方法である。
本発明によれば、高いキャリア移動度を示し且つ結晶粒径が1μm未満である結晶質の酸化物半導体薄膜及びその製造方法を提供することができる。このような酸化物半導体薄膜を半導体層に適用したTFTは、大面積基板において均一に安定動作する。
実施例1の酸化物半導体薄膜のEBSDによる逆極点図方位マップである。 実施例6の酸化物半導体薄膜のEBSDによる逆極点図方位マップである。 比較例1の酸化物半導体薄膜のEBSDによる逆極点図方位マップである。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において適宜変更を加えて実施することができる。
1.酸化物半導体薄膜
(1)金属組成
本実施の形態に係る酸化物半導体薄膜は、結晶質であり、インジウム、ガリウム及び水素を含有し、ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で、0.15以上0.30以下である。
本発明の酸化物半導体薄膜のガリウム含有量は、Ga/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.30以下である。ガリウムは酸素との結合力が強く、本発明の結晶質の酸化物半導体薄膜の酸素欠損量を低減させる効果がある。ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上であることにより、この効果を十分に得ることができる。また、結晶粒径が1μm未満の結晶質の酸化物半導体薄膜を得ることができる。一方、0.30以下であることにより、酸化物半導体薄膜が、10cm−1sec−1以上のキャリア移動度を示すことができる。
ガリウム含有量としては、特に限定されないが、Ga/(In+Ga)原子数比で0.17以上であることが好ましく、0.20超であることがより好ましい。また、ガリウム含有量としては、0.25以下であることが好ましく、0.23以下であることがより好ましい。
酸化物半導体薄膜は、インジウム及びガリウム以外の元素として、特定の正三価の元素を含有することができる。特定の正三価の元素としては、ホウ素、アルミニウム、スカンジウム、イットリウムが挙げられる。これらの元素が、酸化物半導体薄膜に含有されると、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度を低減させることができる。なお、キャリア移動度の向上にはほとんど寄与しない。
酸化物半導体薄膜は、上述した特定の正三価の元素以外の正三価の元素を実質的に含まないことが好ましい。特定の正三価の元素以外の正三価の元素としては、ランタン、プラセオジウム、ジスプロニウム、ホルミウム、エルビウム、イッテリビウム、及びルテチウムが挙げられる。これらの元素は、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度の低減に寄与しないだけでなく、キャリア移動度を低下させるおそれがある。なお、「実質的に含まない」とは、後述するように、不可避的に不純物として含むことについては排除しないことを意味する。
酸化物半導体薄膜は、正四価以上の元素を実質的に含まないことが好ましい。正四価以上の元素としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、及びセリウムが挙げられる。酸化物半導体薄膜に、このような元素が含まれると散乱因子として作用するため、キャリア移動度が低下してしまうおそれがある。
酸化物半導体薄膜は、正二価以下の元素を実質的に含まないことが好ましい。正二価以下の元素としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及び亜鉛が挙げられる。酸化物半導体に、このような元素は、キャリア濃度の低減に多少寄与する一方で、散乱因子として作用してキャリア移動を低下させるおそれがあり、全体としてキャリア移動度が低下してしまうおそれがある。
酸化物半導体薄膜の組成としては、特に限定されるものではないが、例えば、インジウム、ガリウム、水素及び酸素からなるか、インジウム、ガリウム、水素、酸素及び不可避的不純物からなることが好ましい。
(2)不可避不純物
酸化物半導体薄膜は不可避的不純物を含有することができる。不可避不純物の含有量としては、特に限定されないが、例えば、500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがさらに好ましい。不純物量が多い場合には、キャリア濃度の上昇やキャリア移動度の低下等の問題が生じるおそれがある。
(3)水素濃度
酸化物半導体薄膜に含有される水素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)、ラザフォード後方散乱分析法(RBS、Rutherford Backscattering Spectrometry)法、水素前方散乱分析法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)等で測定することができる。水素濃度としては、例えば、SIMSによる分析による値が、1×1020〜1×1022atoms/cmであることが好ましく、3×1020〜5×1021atoms/cmであることがより好ましく、5×1020〜1×1021atoms/cmであることがさらに好ましい。水素は、酸化物半導体薄膜中で酸素の近傍に存在して、キャリア濃度低減に寄与すると考えられる。水素濃度が1×1020atoms/cm以上であることにより、キャリア濃度を2×1018cm−3以下まで十分に低減させることができる。一方、水素濃度が、1×1022atoms/cm以下であることにより、過剰な水素が散乱因子として作用するのを防止し、キャリア移動度の低下を防止し、10cm−1sec−1以上に維持することができる。
(4)膜質及び膜組織
酸化物半導体薄膜は結晶質である。酸化物半導体薄膜の結晶構造はビックスバイト構造であることが好ましい。酸化物半導体薄膜の結晶構造は、X線回折測定における回折ピーク又は電子顕微鏡観察における薄膜組織確認や面指数に対応した回折スポット(電子線回折図)等によって確認することができる。
酸化物半導体薄膜の結晶粒径は、1μm未満である。一般に、量産採用されるTFTの酸化物半導体層のチャネル長は、数μm〜十数μm程度である。よって、結晶粒径を1μm未満とすることで、チャネル長に対して10個程度以上の結晶粒界が安定して存在することができる。これにより、結晶粒界によるキャリア散乱が及ぼす移動度低下への影響を平均化することが可能になり、大型基板にも均一にTFTを製造することができる。一方、特許文献3の加熱結晶化後の酸化物半導体薄膜(酸化物層)中の平均結晶粒径は、1〜27μmである。特許文献3においては、このように結晶粒が成長する理由として、薄膜堆積時に水を導入し微結晶の生成を抑制した膜は、加熱処理工程において基板側から柱状に結晶が成長し、加熱結晶化工程において膜中の微結晶により結晶成長が阻害されないため、水導入していない薄膜と比較して結晶粒径が大きくなることが記載されている。したがって、特許文献3の技術では、原子数比でGa/(Ga+In)が0.01以上0.09以下のGaをドープした酸化インジウム薄膜を、水を導入して堆積した後、加熱処理によって結晶化させると、その結晶粒径は必然的に1μm以上になる。詳細は後述するが、本発明においては、従来技術に比べ、ガリウム含有量をさらに高めて、さらに成膜時の酸素分圧を高めることで、適量の水を導入しても、インジウム、ガリウム、酸素及び水素を含む酸化物半導体薄膜の結晶粒径が1μm未満に抑制可能である。
なお、「結晶粒径」とは、電子線後方散乱回折法測定の結晶粒マップ解析により算出される平均粒径である。数μm×数μmの領域を解析する場合、結晶粒径の大きさにより数十個〜数百個程度の結晶粒の平均値となる。
(5)膜厚
酸化物半導体薄膜の膜厚としては、特に限定されないが、例えば、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。一方、膜厚としては、特に限定されず、例えばフレキシビリティを必要とするデバイスのTFTチャネル層として適用する場合等には、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下がより好ましく、300nm以下であることがさらに好ましい。1000nm以下であることにより、デバイスを曲げた場合にも薄膜トランジスタ(TFT)のチャネル層として必要な特性が維持することができる。製造工程におけるスループットや性能ばらつきの少なさ等を考慮すれば、総じて、30〜300nmが好ましい。
(6)キャリア濃度・キャリア移動度
キャリア濃度としては、特に限定されないが、例えば、2.0×1018cm−3以下であることが好ましく、1.0×1018cm−3以下であることがより好ましく、8.0×1017cm−3以下であることがさらに好ましく、8.0×1016cm−3以下であることが特に好ましい。キャリア濃度が2.0×1018cm−3以下であることにより、当該酸化物半導体薄膜を用いて構成したTFTがノーマリーオフを示すようになる。非特許文献1に記載のインジウム、ガリウム及び亜鉛からなる非晶質の酸化物半導体薄膜に代表されるように、インジウムを多く含む非晶質の酸化物半導体薄膜は、キャリア濃度が4×1018cm−3以上で縮退状態となるため、これをチャネル層に適用したTFTはノーマリーオフを示さなくなるおそれがある。
キャリア移動度としては、特に限定されないが、例えば、10cm−1sec−1以上が好ましく、15cm−1sec−1以上であることがより好ましい。
2.酸化物半導体薄膜の製造方法
酸化物半導体薄膜の製造方法は、系内の全てのガスの総圧力に対する水分圧が2×10−3〜5×10−1Pa、希ガスと酸素の総圧力に対する酸素分圧が4.5×10−2〜3.0×10−1Paの雰囲気下で、インジウム及びガリウムを含有し、ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.30以下である酸化物を含むターゲットを用いてスパッタリング法によって酸化物薄膜を成膜する成膜工程と、酸化物薄膜を熱処理する熱処理工程とを含む。
2−1.成膜工程
製膜工程は、系内の全てのガスの総圧力に対する水分圧が2.0×10−3Pa以上5.0×10−1Pa以下、希ガスと酸素の総圧力に対する酸素分圧が4.5×10−2Pa以上3.0×10−1Pa以下の雰囲気下で、インジウム及びガリウムを含有し、ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.30以下である酸化物を含むターゲットを用いてスパッタリング法によって酸化物薄膜を成膜する工程である。
(1)スパッタリング法
スパッタリング法としては、特に限定されず、例えば、直流スパッタリング法、周波数1MHz以下の交流スパッタリング及びパルススパッタリングを用いることができる。その中でも、工業的な観点から、直流スパッタリング法が好ましい。なお、RFスパッタリングの適用も可能だが、無指向性であるため、大型基板への均一成膜の条件確立には困難が伴うこともある。
(2)スパッタリングガス条件
スパッタリング成膜の雰囲気ガスを構成するガス種としては、特に限定されないが、例えば、希ガス、酸素及び水を含む雰囲気であることが好ましい。希ガスとしては、アルゴンであることが好ましい。また、水はスパッタリング装置チャンバー内に水蒸気として導入されることが好ましい。
これらの雰囲気ガスの総圧力としては、特に限定されないが、例えば、0.1Pa以上3.0Pa以下の範囲であることが好ましく、0.2Pa以上0.8Pa以下であることがより好ましく、0.3Pa以上0.7Pa以下の範囲であることがさらに好ましい。
(3)水分圧
成膜工程においては、スパッタリングを行う系内の雰囲気ガスのうち、系内の全てのガスの総圧力に対する水分圧を2.0×10−3Pa以上5.0×10−1Pa以下に制御する。また、水分圧としては、例えば、5.0×10−2Pa以上2.0×10−1Pa以下に制御することが好ましい。水分圧が2.0×10−3Pa以上であることにより、酸化物半導体薄膜に取り込まれる水の成分である水素又は水酸基の量を増加させることができ、キャリア濃度の低減効果を十分に得ることができる。一方で、水分圧が5.0×10−1Pa以下であることにより、キャリア濃度の増加及びキャリア移動度の低下を抑制することができる。水分圧の増加にともない、水素又は水酸基がドナー又は散乱因子として振る舞うおそれがある。
系内への水の導入方法としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング装置チャンバー内では水蒸気として導入されることが好ましい。
なお、酸化物半導体薄膜への水素添加には、上記工程において、系内の水素分圧の制御で代用することも考えられる。しかし、その他の成膜条件、特に最適な酸素分圧が変化することが想定される。また、防爆仕様の製造工程が必要になる等安全確保のためコストが高くなる。したがって、水分圧による制御が好ましい。
(4)酸素分圧
成膜工程においては、スパッタリングを行う系内の雰囲気ガスのうち、希ガスと酸素の総圧力に対する酸素分圧を4.5×10−2Pa以上3.0×10−1Pa以下に制御する。また、酸素分圧としては、例えば、6×10−2Pa以上1.2×10−2Pa以下に制御することが好ましい。酸素分圧が4.5×10−2Pa以上であることにより、平均結晶粒径が1μm未満の酸化物半導体薄膜を得ることができる。一方、酸素分圧が3.0×10−1Pa以下であることにより、相対的に雰囲気ガス中の希ガスの比率を高め、成膜速度を高くすることにより、工業的な実用性を高めることができる。
なお、上述したとおり、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度及びキャリア移動度を最適化し、また、結晶粒径が1μm未満の酸化物半導体薄膜を得るためには、酸素分圧及び水分圧をいずれも上述の所要の範囲に制御する必要がある。例えば、酸素分圧が低すぎる場合、水分圧を高めてもキャリア濃度を低減することができないおそれがあり、また、結晶粒径が1μmを超えてしまうおそれもある。
(5)基板
成膜に用いる基板としては、特に限定されないが、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等の無機材料、又はポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルフェノール等の有機材料を用いることができる。また、そのような材料の上に酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム等の無機材料、又はPMA、フッ素系ポリマー等の有機材料をさらに形成した基板を用いることができる。
基板の形状としては、特に限定されないが、板、シート、又はフィルム等の形状のものを用いることができる。
(6)基板温度
スパッタリング成膜の基板温度としては、特に限定されないが、例えば、室温〜300℃であることが好ましく、100〜300℃であることがより好ましい。ただし、基板温度100℃未満において、酸素分圧を2.4×10−2以上とすると、膜中に過剰な酸素が取り込まれてしまう場合がある。過剰な酸素は、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度低減の阻害又は膜面内ばらつき等の原因となるおそれがある。大面積のガラス基板面内において一段と均一に多数のTFTを形成するためには、平均結晶粒径を1μm未満とすること以外に、膜中の酸素及び水素濃度の均一性等の観点から、基板温度を200℃以上とすることがさらに好ましい。このため、上述したように、酸化物半導体薄膜の好ましいガリウム含有量は、Ga/(In+Ga)原子数比で0.20超0.23以下である。
(7)T−S間距離
ターゲットと基板間の距離(T−S間距離)としては、特に限定されないが、例えば、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがさらに好ましい。一方で、T−S間距離としては、150mm以下であることが好ましく、110mm以下であることがより好ましく、80mm以下であることがさらに好ましい。T−S間距離が10mm以上であることにより、成膜される薄膜がプラズマによるダメージを受けることを抑制することができる。T−S間距離が150mm以下であることにより、成膜速度が低下することを防止することができ、工業的な実用性を高めることができる。
(8)ターゲット
ターゲットは、インジウム及びガリウムを含有し、ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.30以下である酸化物を含む。ターゲットとしては、特に限定されないが、例えば、酸化物焼結体ターゲットを用いることが好ましく、インジウム、ガリウム及び酸素からなる酸化物焼結体ターゲット、又はインジウム、ガリウム、酸素及び不可避的不純物からなる酸化物焼結体ターゲットを用いることがより好ましい。さらに、例えば、正三価元素のホウ素、アルミニウム、スカンジウム及びイットリウムのうち少なくとも1種以上が添加された酸化物焼結体ターゲットを用いることもできる。
また、酸化物焼結体ターゲットとしては、特に限定されないが、例えば、少なくともビックスバイト型構造のIn相を含有することが好ましく、さらにIn相以外の生成相としてβ−Ga型構造のGaInO相、又はβ−Ga型構造のGaInO相と(Ga,In)相によって構成されることがより好ましい。
ターゲット中のガリウム含有量としては、特に限定されないが、Ga/(In+Ga)原子数比で0.17以上であることが好ましく、0.20超であることがより好ましい。また、ガリウム含有量としては、0.25以下であることが好ましく、0.23以下であることがより好ましい。
酸化物焼結体ターゲットの密度としては、特に限定されないが、例えば、6.3g/cm以上であることが好ましい。密度が6.3g/cm以上であることにより、量産使用時のノジュール発生を防止することができる。
直流スパッタリング成膜により成膜を行う場合、良好な導電性が必要であるため、酸化物焼結体ターゲットは酸素含有雰囲気で焼結されることが好ましく、酸素雰囲気で焼結されることがより好ましい。
2−2.熱処理工程
非平衡プロセスのスパッタリング成膜によって得られた酸化物薄膜は非晶質又は微結晶からなる。そこで、得られた酸化物薄膜を、熱処理することによって結晶化させる。このような結晶化によって欠陥を大幅に減少させることができるため、適度なキャリア濃度に制御された高移動度の酸化物半導体薄膜とすることができる。
(1)熱処理方法
構造を安定化させる熱処理の方法としては、加熱処理やレーザー処理を用いることができる。加熱処理法としては、特に制限されないが、具体的には、赤外線加熱を利用した急速熱処理法(RTA:Rapid Thermal Annealing)、又はランプ加熱による熱処理法(LA:Lamp Annealing)等を用いることが好ましい。レーザー処理としては、酸化物半導体が吸収可能な波長を用いたエキシマレーザーやYAGレーザーによる処理等を用いることが好ましい。大型ガラス基板への適用を考慮すれば、RTAなどの熱処理がより好ましい。
(2)熱処理条件
熱処理温度としては、基板が変形や損傷しない範囲内であれば特に制限されないが、例えば、100℃以上500℃以下であることが好ましく、100℃以上450℃以下であることがより好ましい。また、フィルム基板を用いる場合には、100℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上200℃以下であることがより好ましい。中でも、汎用性のあるPETフィルムを使用する場合には、100℃以上150℃以下であることが好ましい。熱処理温度が100℃以上であることにより、成膜後の薄膜を十分に構造安定化することができる。また、熱処理温度が500℃以下であることにより、使用可能な基板が極端に制限されてしまうことを防止できる。
熱処理温度までの昇温速度としては、特に限定されないが、製造工程におけるスループットを高めるという観点から、例えば、10℃/分以上であることが好ましく、50℃/分以上であることがより好ましく、100℃/分以上であることがさらに好ましい。
熱処理時間としては、特に限定されないが、例えば、1分間以上120分間以下であることが好ましく、5分間以上60分間以下であることがより好ましい。熱処理雰囲気としては、特に限定されないが、例えば、酸素含有雰囲気であることが好ましい。酸素含有雰囲気としては、例えば、酸素、オゾン、水蒸気、あるいは窒素酸化物などを含む雰囲気が好ましい。なお、「熱処理時間」とは、熱処理温度に保持される時間をいう。
なお、上述した好ましい範囲の熱処理温度、熱処理時間、昇温時間及び雰囲気を組み合わせることにより、各々の構成に基づく特有の効果を得ることができる。
(3)エッチング条件
成膜後、熱処理前の非晶質又は微結晶の薄膜は、ウエットエッチングあるいはドライエッチングによって、TFTなどの用途で必要な微細加工を施すことがえきる。通常、結晶化温度未満の温度、例えば室温から300℃までの範囲から適宜基板温度を選択して一旦酸化物薄膜を形成した後、ウエットエッチングによる微細加工を施すことができる。エッチャントとしては、弱酸であれば特に限定されないが、例えば、PAN又は蓚酸を主成分とする弱酸を用いることが好ましい。弱酸としては、より具体的には、関東化学製ITO−06N等を使用することができる。TFTの構成によっては、ドライエッチングを選択することもできる。
3.薄膜トランジスタ及びその製造方法
本実施の形態に係る薄膜トランジスタは、上述した酸化物半導体薄膜をチャネル層として備える。上述した酸化物半導体薄膜は、チャネル層が高いキャリア移動度を維持したまま、キャリア濃度を低減させることができるため、TFTが安定的に動作する。
薄膜トランジスタの構成としては、特に限定されないが、例えば、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、チャネル層及びゲート絶縁膜を備える薄膜トランジスタを用いることができる。
薄膜トランジスタは、従来公知の薄膜トランジスタの製造方法と酸化物半導体薄膜の製造方法とを組み合わせることにより製造することができる。例えば、ゲート電極の表面にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜の表面に上述の酸化物半導体薄膜の製造方法により、酸化物薄膜を成膜、熱処理、エッチングし、パターニングされた酸化物半導体薄膜(チャネル層)を形成し、その後、酸化物半導体薄膜(チャネル層)の表面にパターニングされたソース電極及びドレイン電極を形成する方法を挙げることができる。
ゲート電極の表面にゲート絶縁膜を形成する方法としては、例えば、導電性Si基板(ゲート電極)の表面に熱酸化等によってSiO膜(ゲート絶縁膜)を形成する方法や、金属膜、ITO等の導電性酸化物薄膜、導電性窒化物等(ゲート電極)の表面に、CVD法やスパッタリング法等によってSiO膜などの酸化物薄膜やさらに窒素を添加したSiO膜等の窒化物薄膜(ゲート絶縁膜)を形成する方法等を挙げることができる。
酸化物半導体薄膜(チャネル層)の表面にソース電極及びドレイン電極を成膜する方法としては、例えば、直流マグネトロンスパッタリング法により、Mo、Al、Ta、Ti、Au、Pt等の金属薄膜若しくはこれらの金属の合金薄膜、それら金属の導電性酸化物窒化物薄膜、各種の導電性高分子材料、又は透明TFT向けとしてITO等を成膜する方法を用いることができる。
酸化物半導体薄膜(チャネル層)の表面にパターニングされたソース電極及びドレイン電極を形成する方法は、例えばフォトリソグラフィ技術などを利用してエッチングをする方法やリフトオフ法等を用いることができる。
以下に、本発明の実施例を用いて、さらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
以下に説明するプロセスによって、酸化物半導体薄膜を作製し、評価した。
<酸化物半導体薄膜の作製>
直流電源、6インチカソード、ガス圧1.3Paまで測定可能な四重極質量分析計(インフィコン製)を備えたロードロック式マグネトロンスパッタリング装置(アルバック製)を用いて直流スパッタリングによる成膜を行った。ターゲットとして、インジウム及びガリウムからなる酸化物焼結体ターゲットを用いた。ターゲットのガリウムの含有量は、Ga/(In+Ga)原子数比で0.20とした。なお、このターゲットは、微量の不可避不純物を含み得るものである。実際の成膜では、10分間のプリスパッタリング後、スパッタリングターゲットの直上、すなわち静止対向位置に基板を搬送して、目標膜厚50nmの酸化物薄膜を形成した。以下に成膜条件の詳細を示す。
[成膜条件]
基板温度:200℃
到達真空度:3×10−5Pa未満
ターゲット−基板(T−S)間距離:60mm
スパッタガス全圧:0.6Pa
酸素分圧:6.0×10−2Pa
水分圧:6.5×10−2Pa
投入電力:直流(DC)300W
続いて、成膜後の酸化物薄膜に、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いて、以下の条件で熱処理を施すことで酸化物半導体薄膜を得た。
[熱処理条件]
熱処理温度:335℃
雰囲気:大気
昇温速度:500℃/分
<酸化物半導体薄膜の特性評価>
酸化物薄膜の組成は、ICP発光分光法によって、焼結体ターゲットと同一の組成であることを確認した。酸化物半導体薄膜の膜厚は表面粗さ計(テンコール社製)で測定した。キャリア濃度及び移動度は、ホール効果測定装置(東陽テクニカ製)によって求めた。酸化物半導体薄膜の結晶構造をX線回折測定(フィリップス製)にて確認した。平均結晶粒径は、走査電子顕微鏡−電子線後方散乱回折測定(SEM:日本電子製、EBSD:TSL製)により、TSL社製のEBSD測定・解析システムOIM(Orientation Imaging Macrograph)を用いて3μm×3μmの領域を0.03μmの間隔で測定し、その後、同システムの解析ソフト(ソフト名「OIM−Analysis ver.6.2」)を用いて、平均結晶粒径を求めた。表1に結果を示す。
(実施例2〜10、比較例1〜5)
ターゲット、スパッタ条件及び熱処理条件を、表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様にして酸化物半導体薄膜を作製し、評価した。表1にこれらの結果を示す。
実施例1〜10においては、スパッタ成膜において酸素分圧を4.5×10−2Pa以上3.0×10−1Pa以下、且つ水分圧を2×10−3Pa以上5×10−1Pa以下の範囲に制御することで、結晶質であり、インジウム、ガリウム及び水素を含有し、ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.30以下である酸化物半導体薄膜を製造できることが分かった。また、このようにして得られた酸化物半導体薄膜は、平均結晶粒径が1μm未満であり、キャリア濃度が2.0×1018cm−3以下であり、且つキャリア移動度が10cm−1sec−1以上となることが分かった。
特に、実施例1〜4、7及び8においては、ターゲットのガリウム含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.17以上0.23以下とし、スパッタ成膜において酸素分圧を4.5×10−2Pa以上9.0×10−2Pa以下、且つ水分圧を2.1×10−2Pa以上7.5×10−1Pa以下の範囲に制御することで、キャリア濃度が8.0×1016cm−3以下であり、且つキャリア移動度15cm−1sec−1以上の酸化物半導体薄膜が得られることが分かった。
これに対して、比較例1〜4においては、酸化物半導体薄膜の製造時の酸素分圧が3.0×10−2を下回っているため、平均結晶粒径が1μmを超えた。比較例5では、ガリウム含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.35と高すぎるため、電気的に絶縁性であり、キャリア濃度及びキャリア移動度のいずれも測定できなかった。
図1〜3は、それぞれ、実施例1、実施例6及び比較例1の酸化物半導体薄膜のEBSDによる逆極点図方位マップである。実施例1、6では平均結晶粒径が1μm未満に制御されているのに対して、比較例1では1μmを超えている。
これらの実施例及び比較例のうち、代表的な酸化物半導体薄膜のSIMS(二次イオン質量分析法、アルバック・ファイ製)による測定を行い、膜深さ方向の平均の水素濃度を求めた。その結果、実施例1の水素濃度は、1.0×1021atoms/cmであった。
<薄膜トランジスタの作製及び動作特性評価>
次に、以下に説明するプロセスによって、薄膜トランジスタを作製し、評価した。
(実施例11)
熱酸化によって厚さ100nmのSiO膜が形成された、厚さ475μm、20mm角の導電性p型Si基板を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を作製した。ここで、SiO膜はゲート絶縁膜、導電性p型Si基板はゲート電極としてそれぞれ機能する。このSiO膜ゲート絶縁膜上に、実施例3と同様の酸化物薄膜(Ga/(In+Ga)原子数比=0.20)を成膜した。
酸化物薄膜に対して、レジスト(東京応化工業製OFPR♯800)、エッチャント(関東化学製ITO−06N)を用いて、フォトリソグラフィ法によりパターニングを行った。
次に、直流マグネトロンスパッタリング法により、チャネル層の表面に、厚さ10nmのTi膜と厚さ50nmのAu膜を、この順序で成膜することで、Au/Ti積層膜からなるソース電極及びドレイン電極を成膜した。リフトオフ法によりパターニングを行い、チャネル長20μm、チャネル幅500μmとなるように、ソース電極及びドレイン電極を形成した。
最後に、酸化物薄膜に実施例3と同様の条件で熱処理を施し結晶化させた。これにより、結晶質の酸化物半導体薄膜をチャネル層として備える、薄膜トランジスタを得た。
薄膜トランジスタの動作特性を、半導体パラメータアナライザ(アジレント製)を用いて評価した。この結果、薄膜トランジスタとしての動作特性が確認できた。実施例11の薄膜トランジスタは、電界効果移動度が43cm−1sec−1、on/off比が4×10、S値が0.26の良好な値を示すことが確認された。

Claims (9)

  1. 結晶質であり、
    インジウム、ガリウム及び水素を含有し、
    前記ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.30以下であり、
    平均結晶粒径が1μm未満である
    酸化物半導体薄膜。
  2. 前記ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.17以上0.23以下である
    請求項1に記載の酸化物半導体薄膜。
  3. 前記水素の含有量が1.0×1020atoms/cm以上1.0×1022atoms/cm以下である
    請求項1又は2に記載の酸化物半導体薄膜。
  4. キャリア濃度が2.0×1018cm−3以下である
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の酸化物半導体薄膜。
  5. キャリア移動度が10cm−1sec−1以上である
    請求項1乃至4のいずれか1項に記載の酸化物半導体薄膜。
  6. キャリア濃度が8.0×1016cm−3以下であり、
    キャリア移動度が15cm−1sec−1以上である
    請求項1乃至3いずれか1項に記載の酸化物半導体薄膜。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の酸化物半導体薄膜をチャネル層として備える
    薄膜トランジスタ。
  8. 系内の全てのガスの総圧力に対する水分圧が2.0×10−3Pa以上5.0×10−1Pa以下、希ガスと酸素の総圧力に対する酸素分圧が4.5×10−2Pa以上3.0×10−1Pa以下の雰囲気下で、インジウム及びガリウムを含有し、該ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.30以下である酸化物を含むターゲットを用いてスパッタリング法によって酸化物薄膜を成膜する成膜工程と、
    前記酸化物薄膜を熱処理する熱処理工程とを含む
    酸化物半導体薄膜の製造方法。
  9. 前記熱処理工程を酸素含有雰囲気下で行う
    請求項8に記載の酸化物半導体薄膜の製造方法。
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