JP2018135589A - 酸化物半導体薄膜及び薄膜トランジスタの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高いキャリア移動度を維持したまま、キャリア濃度のみを低減せしめた酸化物半導体薄膜の製造方法を提供すること。【解決手段】系内の水分圧が2.0×10−3Pa以上5.0×10−1Pa以下の雰囲気にて、インジウム及びガリウムを酸化物として含有し、前記ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.55以下である酸化物焼結体からなるターゲットを用いて基板の表面にスパッタリング法によって酸化物薄膜を成膜する成膜工程と、系内の温度22℃で測定した相対湿度が5%以上かつ酸素濃度が30%以上とした雰囲気にて、基板の表面に形成された酸化物薄膜を熱処理する熱処理工程と、を含む、酸化物半導体薄膜の製造方法であって、熱処理工程後の酸化物半導体薄膜がインジウム及びガリウムを酸化物として含有し、さらに水素を含有する非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜の製造方法である。【選択図】図1
Description
本発明は、非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜に関し、より詳しくは、インジウム及びガリウムを酸化物として含有し、さらに水素を含有する、高いキャリア移動度の非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜に、さらに水素を含有させることにより、高いキャリア移動度を維持したままキャリア濃度のみを低減せしめた非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜の製造方法に関する。
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、TFT)は、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、以下FET)の1種である。TFTは、基本構成として、ゲート端子、ソース端子、及び、ドレイン端子を備えた3端子素子であり、基板の表面に成膜した半導体薄膜を、電子又はホールがキャリアとして移動するチャネル層として用い、ゲート端子に電圧を印加して、チャネル層に流れる電流を制御し、ソース端子とドレイン端子間の電流をスイッチングする機能を有するアクティブ素子である。
TFTは、現在、最も多く実用化されている電子デバイスであり、その代表的な用途として液晶駆動用TFTがある。液晶駆動用TFTの多くは、電子がキャリアとして移動するn型のチャネル層を用いている。n型のチャネル層として、現在、最も広く使われているのは、低温ポリシリコン薄膜又は非晶質シリコン薄膜である。
しかし、近年、液晶の高精細化が進むのに伴い、液晶駆動用TFTには高速駆動が求められるようになってきている。TFTの駆動速度は、チャネル層の電子の移動度に依存する。高速駆動を実現するためには、電子の移動度が少なくとも非晶質シリコンのそれより高い半導体薄膜をチャネル層に用いる必要がある。低温ポリシリコンは、電子の移動度が十分高いが、大型ガラス基板へ形成した場合に面内均一性が低く歩留まりが低い、あるいは非晶質シリコンと比較して工程が多く、設備投資が必要などの理由から、コストが高い、などの課題がある。
このような状況に対して、特許文献1では、気相成膜法で成膜され、In、Ga、Zn及びOの元素から構成される透明非晶質酸化物薄膜であって、該酸化物薄膜の組成は、結晶化したときの組成がInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数)であり、不純物イオンを添加することなしに、キャリア移動度(キャリア電子移動度ともいう)が1cm2V−1sec−1超、かつキャリア濃度(キャリア電子濃度ともいう)が1016cm−3以下である半絶縁性であることを特徴とする透明半絶縁性非晶質酸化物薄膜、及び、この透明半絶縁性非晶質酸化物薄膜をチャネル層としたことを特徴とする薄膜トランジスタが提案されている。
しかし、特許文献1で提案された、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法のいずれかの気相成膜法で成膜され、In、Ga、Zn及びOの元素から構成される透明非晶質酸化物薄膜(a−IGZO膜)は、概ね1cm2V−1sec−1以上10cm2V−1sec−1以下の範囲のキャリア移動度にとどまるため、TFTのチャネル層として形成した場合にキャリア移動度が不足することが指摘されていた。
キャリア移動度の不足を解決するために、他の材料の検討がなされている。例えば、特許文献2では、ガリウムが酸化インジウムに固溶していて、原子数比Ga/(Ga+In)が0.001以上0.12以下であり、全金属原子に対するインジウムとガリウムの含有率が80原子%以上であり、In2O3のビックスバイト構造を有する酸化物半導体薄膜を用いることを特徴とする薄膜トランジスタが提案されている。特許文献1と比較して、特許文献2では、インジウム含有量を高めることでキャリア移動度を高めるとともに、In2O3のビックスバイト構造に結晶化させることでキャリア濃度の増加を抑えているが、TFTチャネル層に適用した場合には結晶粒界がTFT特性ばらつきの原因となる点が課題として残されていた。さらに、特許文献2には、キャリア濃度が2.0×1018cm−3を超えている実施例が散見され、TFTチャネル層に適用する酸化物半導体薄膜としてはやや高いことも課題として残されていた。
特許文献3では、特許文献2の高キャリア濃度を解決するため、系内の水分圧3.0×10−4Pa以上5.0×10−2Pa以下で、スパッタリングターゲットを用いてDCスパッタリングして成膜体を成膜し、前記成膜体を結晶化する酸化物半導体薄膜の製造方法が提案されている。また、特許文献4には、酸化物半導体膜に含有される水素元素の含有量が、酸化物半導体薄膜を形成する全元素に対して、0.1at%以上5at%以下であることを特徴とする薄膜トランジスタが提案されている。しかしながら、いずれについても結晶膜の酸化物半導体薄膜に関する発明であるため、結晶質以外の酸化物半導体薄膜に及ぼす水素等の影響についての知見は得られていなかった。また、依然として、TFT特性において重要な面内ばらつきの原因となる結晶粒界の課題は残されていた。
A.Takagi,K.Nomura,H.Ohta,H.Yanagi,T. Kamiya,M.Hirano,and H.Hosono,Thin Solid Films 486,38(2005)
本発明の目的は、非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜に、さらに水素を含有させることによって、高いキャリア移動度を維持したまま、キャリア濃度のみを低減せしめた酸化物半導体薄膜の製造方法を提供することにある。特に、主としてインジウム及びガリウムを酸化物として含有し、さらに水素を含有する非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜を得るための製造方法であって、特許文献2〜4の結晶質の酸化物半導体薄膜とは異なる、好適な製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜に、適量の水素を含有させることによって、キャリア移動度10cm2V−1sec−1以上を維持したまま、半導体として十分低いキャリア濃度が得られることを新たに見出した。そして、上記の酸化物半導体薄膜を得るための製造方法を新たに見出した。
本発明の第1は、系内の水分圧が2.0×10−3Pa以上5.0×10−1Pa以下の雰囲気にて、インジウム及びガリウムを酸化物として含有し、前記ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.55以下である酸化物焼結体からなるターゲットを用いて基板の表面にスパッタリング法によって酸化物薄膜を成膜する成膜工程と、系内の温度22℃で測定した相対湿度が5%以上かつ酸素濃度が30%以上とした雰囲気にて、前記基板の表面に形成された酸化物薄膜を熱処理する熱処理工程と、を含む、酸化物半導体薄膜の製造方法であって、前記熱処理工程後の前記酸化物半導体薄膜がインジウム及びガリウムを酸化物として含有し、さらに水素を含有する非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜の製造方法である。
本発明の第2は、前記熱処理工程における前記相対湿度を10%以上とする、第1の発明に記載の酸化物半導体薄膜の製造方法である。
本発明の第3は、前記熱処理工程における前記酸素濃度を100%とする、第1又は第2の発明に記載の酸化物半導体薄膜の製造方法である。
本発明の第4は、前記ターゲットの前記酸化物焼結体における前記ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.20以上0.35以下である、第1から第3のいずれかの発明に記載の酸化物半導体薄膜の製造方法である。
本発明の第5は、第1から第4のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜の製造方法により製造された酸化物半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタの製造方法である。
本発明の製造方法によって得られる酸化物半導体薄膜は、水素を含有した非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜の膜深さ方向に均一に水素を含有させるとともに、酸化物半導体薄膜の高いキャリア移動度を維持したまま、キャリア濃度を低減させることができる。これにより、チャネル層として適用される薄膜トランジスタ(TFT)が安定的に動作するため、本発明の非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜の製造方法は工業的に極めて有用である。
以下に、本発明の非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜、非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜の製造方法及びそれを用いた薄膜トランジスタ(TFT)について詳細に説明する。本発明は、下記の記載に限定されるものではなく、本発明の目的を奏するものである限り、適宜変更を加え実施することができる。
1.酸化物半導体薄膜
(1)金属組成
本発明の製造方法によって得られる酸化物半導体薄膜は、インジウム及びガリウムを酸化物として含有し、さらに水素を含有する非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜である。非晶質とは、一般的に構成原子の配列に結晶構造のような長距離規則性を持たない固体状態のことをいう。微結晶とは、一般的に結晶粒径が小さい(1nm以上100nm以下程度)結晶成分と、非晶質成分との混合相を形成している状態をいう。結晶質とは、一般的に結晶構造からなりX線回折測定におけるX線回折測定結果において、結晶構造に基づく面指数に対応した明瞭な回折ピークが見られる状態をいう。
(1)金属組成
本発明の製造方法によって得られる酸化物半導体薄膜は、インジウム及びガリウムを酸化物として含有し、さらに水素を含有する非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜である。非晶質とは、一般的に構成原子の配列に結晶構造のような長距離規則性を持たない固体状態のことをいう。微結晶とは、一般的に結晶粒径が小さい(1nm以上100nm以下程度)結晶成分と、非晶質成分との混合相を形成している状態をいう。結晶質とは、一般的に結晶構造からなりX線回折測定におけるX線回折測定結果において、結晶構造に基づく面指数に対応した明瞭な回折ピークが見られる状態をいう。
尚、非結晶の酸化物半導体薄膜は、例えば、X線回折測定におけるX線回折測定結果において、結晶構造に基づく面指数に対応した明瞭な回折ピークが見られず、かつ、断面組織のTEM−EDX測定の電子線回折図において、ハローあるいはスポットが若干残存するハローが形成されており、スポットとリングの組み合わせからなる回折パターンが形成されていないことから同定することができる。微結晶の酸化物半導体薄膜は、例えば、X線回折測定におけるX線回折測定結果において、明瞭な回折ピークが見られず、かつ、断面組織のTEM−EDX測定の電子線回折図において、スポットとリングの組み合わせからなる回折パターンが形成されていることから同定することができる。結晶質の酸化物半導体薄膜は、例えば、X線回折測定におけるX線回折測定結果において、結晶構造に基づく面指数に対応した明瞭な回折ピークが見られ、かつ断面組織のTEM−EDX測定の電子線回折図において、その結晶構造に基づく面指数に対応した回折スポットが形成されていることから同定することができる。
本発明の製造方法によって得られる酸化物半導体薄膜のガリウムの含有量は、Ga/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.55以下であることが好ましく、0.20以上0.45以下であることがより好ましく、0.20を超え0.35以下であることがさらに好ましく、0.21以上0.35以下であることがより一層好ましく、0.25以上0.30以下であることが最も好ましい。ガリウムは酸素との結合力が強く、本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜の酸素欠損量を低減させる効果がある。ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15未満の場合、この効果が十分得られない。一方、0.55を超える場合、酸化物半導体薄膜として十分高い10cm2V−1sec−1以上のキャリア移動度を得ることができない。
本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜は、インジウム及びガリウムを除く元素のうち、特定の正三価の元素を含んでもよい。特定の正三価の元素としては、ホウ素、アルミニウム、スカンジウム、イットリウムがある。本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜にこれらの元素が含まれると、キャリア濃度の低減に寄与するが、キャリア移動度の向上にはほとんど寄与しない。本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜は、上記以外の正三価の元素を含まないことが好ましい。すなわち、ランタン、プラセオジウム、ジスプロニウム、ホルミウム、エルビウム、イッテリビウム、ルテチウムは含まないことが好ましい。キャリア濃度の低減に寄与せず、キャリア移動度が低下するためである。
本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜は、正四価以上の元素のうちスズを含んでもよい。スズは非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜のキャリア移動度の向上に寄与する。スズ以外の正四価以上の元素を、正三価の元素と同様に実質的に含まないことが好ましい。スズ以外の正四価以上の元素としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、ケイ素、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、及びセリウムがある。本発明の製造方法によって得られる酸化物半導体薄膜に、これらの元素が含まれると散乱因子として作用するため、非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜のキャリア移動度が低下してしまう。
本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜は、正二価以下の元素を実質的に含まないことが好ましい。正二価以下の元素としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、酸化カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及び亜鉛がある。本発明の製造方法によって得られる酸化物半導体薄膜に、これらの元素が含まれると、キャリア濃度の低減に多少寄与するものの、散乱因子として作用するため、その効果以上にキャリア移動度が低下してしまう。
(2)不可避不純物
本発明の製造方法によって得られる酸化物半導体薄膜に含まれる不可避不純物は、総量が500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがさらに好ましい。本発明において、不可避不純物とは、意図的に添加していないのに、各原料の製造工程等で不可避的に混入する不純物のことである。不純物量が多い場合には、キャリア濃度が高くなる、あるいはキャリア移動度が低下する、などの問題が生じるおそれがある。
本発明の製造方法によって得られる酸化物半導体薄膜に含まれる不可避不純物は、総量が500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがさらに好ましい。本発明において、不可避不純物とは、意図的に添加していないのに、各原料の製造工程等で不可避的に混入する不純物のことである。不純物量が多い場合には、キャリア濃度が高くなる、あるいはキャリア移動度が低下する、などの問題が生じるおそれがある。
(3)水素の含有量、膜深さ方向分布及び結合状態
本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜に含有される水素の含有量は、二次イオン質量分析法(SIMS、Secondary Ion Mass Spectroscopy)、ラザフォード後方散乱分析法(RBS、Rutherford Backscattering Spectrometry)法、水素前方散乱分析法(HFS、Hydrogen Forward Scattering)などで測定される。例えば、二次イオン質量分析法により測定された、水素の含有量が1.0×1020atoms/cm3以上1.0×1022atoms/cm3以下であることが好ましく、3.0×1020atoms/cm3以上5.0×1021atoms/cm3以下であることがより好ましく、5.0×1020atoms/cm3以上1.0×1021atoms/cm3以下であることがさらに好ましい。水素は、非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜中で酸素の近傍に存在して、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度の低減に寄与すると考えられる。酸化物半導体薄膜中の水素の含有量が1.0×1020atoms/cm3未満である場合、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度が2.0×1018cm−3以下まで十分低減されず、好ましくない。一方、酸化物半導体薄膜中の水素の含有量が、1.0×1022atoms/cm3を超える場合、過剰な水素が散乱因子として作用し、酸化物半導体薄膜のキャリア移動度が10cm2V−1sec−1未満に低下してしまうため、好ましくない。
本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜に含有される水素の含有量は、二次イオン質量分析法(SIMS、Secondary Ion Mass Spectroscopy)、ラザフォード後方散乱分析法(RBS、Rutherford Backscattering Spectrometry)法、水素前方散乱分析法(HFS、Hydrogen Forward Scattering)などで測定される。例えば、二次イオン質量分析法により測定された、水素の含有量が1.0×1020atoms/cm3以上1.0×1022atoms/cm3以下であることが好ましく、3.0×1020atoms/cm3以上5.0×1021atoms/cm3以下であることがより好ましく、5.0×1020atoms/cm3以上1.0×1021atoms/cm3以下であることがさらに好ましい。水素は、非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜中で酸素の近傍に存在して、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度の低減に寄与すると考えられる。酸化物半導体薄膜中の水素の含有量が1.0×1020atoms/cm3未満である場合、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度が2.0×1018cm−3以下まで十分低減されず、好ましくない。一方、酸化物半導体薄膜中の水素の含有量が、1.0×1022atoms/cm3を超える場合、過剰な水素が散乱因子として作用し、酸化物半導体薄膜のキャリア移動度が10cm2V−1sec−1未満に低下してしまうため、好ましくない。
本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜においては、含有する水素の膜深さ方向の分布がなるべく均一であるほうがよい。均一であるとは、基板近傍の平均水素濃度に対する薄膜表面近傍の平均水素濃度の比が0.50〜1.20の範囲内であることを指す。この比が0.80〜1.10の範囲内であればなおよい。
本明細書における薄膜表面近傍の平均水素濃度とは、酸化物半導体薄膜の表面近傍において、表面の影響を受けない境界データを起点として、SIMSによる膜深さの正の方向に10nmまでの間のランダムの5点以上の水素濃度の平均値を意味する。本明細書における基板近傍の平均水素濃度とは、基板と酸化物半導体薄膜の界面近傍において、基板の影響を受けない境界データを起点として、SIMSによる膜深さの負の方向に10nmまでの間のランダムの5点以上の水素濃度の平均値を意味する。なお、SIMSによる膜深さの正の方向は膜表面から基板へと向かう方向であり、負の方向とはその反対の方向を指す。
ここで、酸化物半導体薄膜の表面近傍において、表面の影響を受けない境界データは、SIMSの測定結果を解析すれば明らかである。例えば、図4のSIMSの測定結果において、酸化物半導体薄膜の表面近傍において、表面の影響を受けない境界データとは、平均水素濃度が2.9×1021〜3.0×1022atoms/cm3の範囲で大幅に変化する膜深さ0.3〜1.2nmの範囲と、おおよそ1.1〜1.6×1020atoms/cm3で一定となっている膜深さ1.2nm超の範囲の境界となっている2.1nmのデータである。一方、基板と酸化物半導体薄膜の界面近傍において、基板の影響を受けない境界データについても同様であり、平均水素濃度が3.0×1021atoms/cm3以上で変化する膜深さ159.7nm以上の範囲と、平均水素濃度がおおよそ一定となっている膜深さ159.7nm未満の範囲の境界となっている158.8nmのデータである。これらの境界データを起点として、基板近傍の平均水素濃度又は薄膜表面近傍の平均水素濃度を求めることができる。
本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜に含有される水素は、ビックスバイト構造の酸化インジウム相において、水素原子又は水素イオン、と酸素イオンと、が結合したOH−として存在するものがほとんどである。OH−は、本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜中に、特定の格子位置あるいは格子間位置に存在する。特に、OH−については、飛行時間型のSIMS測定(TOF−SIMS、Time of Flight−Secondary Ion Mass Spectroscopy)によって確認することができる。これに対して、水素がインジウム及び/又はガリウムとビックスバイト構造以外の異相を形成することは好ましくない。
(4)膜質
本発明の製造方法によって得られる酸化物半導体薄膜は、非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜である。一般に、結晶からなる結晶膜はX線回折測定において結晶構造に基づく面指数に対応した明確な回折ピークを示すが、非晶質からなる非晶質膜及び微結晶からなる微結晶膜は明確な回折ピークを示さない(図1参照)。微結晶膜であっても、その回折パターンには、結晶膜のピークが出現する回折角度に、回折ピークと明確に認識できない膨らみ程度しか確認できない。また、透過型電子顕微鏡(以下、TEMと表記することがある。)で観察した各薄膜の断面組織のTEM写真像を比較すると、結晶膜には結晶粒界が確認されるが、非晶質膜はもちろん、微結晶膜にも明確な結晶粒界は確認されない(図2参照)。電子線回折像では、結晶膜の場合には、面指数に対応した回折スポットが確認されるが、非晶質膜及び微結晶膜の場合には、ハロー、スポットが若干残存するハロー、あるいはスポットとリングの組み合わせからなる回折パターンしか確認されない(図3参照)。
本発明の製造方法によって得られる酸化物半導体薄膜は、非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜である。一般に、結晶からなる結晶膜はX線回折測定において結晶構造に基づく面指数に対応した明確な回折ピークを示すが、非晶質からなる非晶質膜及び微結晶からなる微結晶膜は明確な回折ピークを示さない(図1参照)。微結晶膜であっても、その回折パターンには、結晶膜のピークが出現する回折角度に、回折ピークと明確に認識できない膨らみ程度しか確認できない。また、透過型電子顕微鏡(以下、TEMと表記することがある。)で観察した各薄膜の断面組織のTEM写真像を比較すると、結晶膜には結晶粒界が確認されるが、非晶質膜はもちろん、微結晶膜にも明確な結晶粒界は確認されない(図2参照)。電子線回折像では、結晶膜の場合には、面指数に対応した回折スポットが確認されるが、非晶質膜及び微結晶膜の場合には、ハロー、スポットが若干残存するハロー、あるいはスポットとリングの組み合わせからなる回折パターンしか確認されない(図3参照)。
(5)膜厚
本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜の膜厚は、下限を10nm以上とすることが好ましく、30nm以上であればより好ましく、50nm以上であればなお一層好ましい。一方、上限については特に制限はないが、例えばフレキシビリティを必要とするデバイスの薄膜トランジスタ(TFT)のチャネル層として適用する場合などは、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下がより好ましく、300nm以下であればなお一層好ましい。1000nmを超えるとデバイスを曲げた場合に薄膜トランジスタ(TFT)のチャネル層として必要な特性が維持できない場合がある。総じて、製造工程におけるスループットや性能ばらつきの少なさなどを考慮すれば、30nm以上300nm以下が好適であるといえる。
本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜の膜厚は、下限を10nm以上とすることが好ましく、30nm以上であればより好ましく、50nm以上であればなお一層好ましい。一方、上限については特に制限はないが、例えばフレキシビリティを必要とするデバイスの薄膜トランジスタ(TFT)のチャネル層として適用する場合などは、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下がより好ましく、300nm以下であればなお一層好ましい。1000nmを超えるとデバイスを曲げた場合に薄膜トランジスタ(TFT)のチャネル層として必要な特性が維持できない場合がある。総じて、製造工程におけるスループットや性能ばらつきの少なさなどを考慮すれば、30nm以上300nm以下が好適であるといえる。
(6)キャリア濃度・キャリア移動度
本発明の製造方法によって得られる酸化物半導体薄膜は、キャリア濃度2.0×1018cm−3以下、より好ましくはキャリア濃度1.0×1018cm−3以下、特に好ましくは8.0×1017cm−3以下を示し、5.0×1017cm−3以下であれば一層好ましい。非特許文献1に記載のインジウム、ガリウム、及び亜鉛からなる非晶質の酸化物半導体薄膜に代表されるように、インジウムを多く含む非晶質の酸化物半導体薄膜は、キャリア濃度が4.0×1018cm−3以上で縮退状態となるため、これをチャネル層に適用した薄膜トランジスタ(TFT)はノーマリーオフを示さなくなる。したがって、本発明に係る非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜は、上記の薄膜トランジスタ(TFT)がノーマリーオフを示す範囲にキャリア濃度が制御されるため都合がよい。また、キャリア移動度は10cm2V−1sec−1以上を示し、より好ましくはキャリア移動度15cm2V−1sec−1以上を示し、20cm2V−1sec−1以上を示せばなお一層好ましい。
本発明の製造方法によって得られる酸化物半導体薄膜は、キャリア濃度2.0×1018cm−3以下、より好ましくはキャリア濃度1.0×1018cm−3以下、特に好ましくは8.0×1017cm−3以下を示し、5.0×1017cm−3以下であれば一層好ましい。非特許文献1に記載のインジウム、ガリウム、及び亜鉛からなる非晶質の酸化物半導体薄膜に代表されるように、インジウムを多く含む非晶質の酸化物半導体薄膜は、キャリア濃度が4.0×1018cm−3以上で縮退状態となるため、これをチャネル層に適用した薄膜トランジスタ(TFT)はノーマリーオフを示さなくなる。したがって、本発明に係る非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜は、上記の薄膜トランジスタ(TFT)がノーマリーオフを示す範囲にキャリア濃度が制御されるため都合がよい。また、キャリア移動度は10cm2V−1sec−1以上を示し、より好ましくはキャリア移動度15cm2V−1sec−1以上を示し、20cm2V−1sec−1以上を示せばなお一層好ましい。
2.酸化物半導体薄膜の製造方法
本発明の酸化物半導体薄膜の製造方法は、系内の水分圧は所定の圧力の雰囲気下にて、インジウム及びガリウムを酸化物として含有する酸化物焼結体からなるターゲットを用いて基板の表面にスパッタリング法によって酸化物薄膜を成膜する成膜工程と、所定の相対湿度及び酸素濃度の雰囲気により基板の表面に形成された酸化物薄膜を熱処理する熱処理工程と、を含む、酸化物半導体薄膜の製造方法である。
本発明の酸化物半導体薄膜の製造方法は、系内の水分圧は所定の圧力の雰囲気下にて、インジウム及びガリウムを酸化物として含有する酸化物焼結体からなるターゲットを用いて基板の表面にスパッタリング法によって酸化物薄膜を成膜する成膜工程と、所定の相対湿度及び酸素濃度の雰囲気により基板の表面に形成された酸化物薄膜を熱処理する熱処理工程と、を含む、酸化物半導体薄膜の製造方法である。
以下、本発明の酸化物半導体薄膜の製造方法の好ましい一実施形態について説明する。
2−1.成膜工程
(1)スパッタリング法
本発明の製造方法において、好ましいスパッタリング法としては、直流スパッタリング法、周波数1MHz以下の交流スパッタリング及びパルススパッタリングが挙げられる。特に、これらのうち、工業的な観点から、直流スパッタリング法が特に好ましい。なお、RFスパッタリングの適用も可能だが、無指向性であるため、大型ガラス基板への均一成膜の条件の確立には困難が伴うことから敢えて選択する必要はない。
(1)スパッタリング法
本発明の製造方法において、好ましいスパッタリング法としては、直流スパッタリング法、周波数1MHz以下の交流スパッタリング及びパルススパッタリングが挙げられる。特に、これらのうち、工業的な観点から、直流スパッタリング法が特に好ましい。なお、RFスパッタリングの適用も可能だが、無指向性であるため、大型ガラス基板への均一成膜の条件の確立には困難が伴うことから敢えて選択する必要はない。
(2)水分圧
本発明の製造方法において、スパッタリング法により酸化物薄膜を成膜する成膜工程では、系内の水分圧を2.0×10−3Pa以上5.0×10−1Pa以下の雰囲気にて制御し、好ましくは2.0×10−2Pa以上2.0×10−1Pa以下であり、5.1×10−2Pa以上1.0×10−1Pa以下の雰囲気にて制御することがより好ましい。系内の水はスパッタリング装置チャンバー内では水蒸気として導入する。系内の水分圧が2.0×10−3Pa未満の場合、酸化物薄膜に取り込まれる水の成分である水素あるいは水酸基の量が少ないため、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度の低減効果を十分得ることができない。一方、5.0×10−1Paを超える場合には、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度が増大してしまうとともに、酸化物半導体薄膜のキャリア移動度が低下する。水素あるいは水酸基がドナーとして、あるいは散乱因子として振る舞うためと考えられる。なお、酸化物半導体薄膜への水素添加には、本成膜工程において、系内の水分圧での制御ではなく、系内の水素分圧の制御で代用することも可能であるが、防爆仕様の製造工程が必要になるなど安全確保のためコスト高になる可能性があることから、水分圧での制御が好ましい。
本発明の製造方法において、スパッタリング法により酸化物薄膜を成膜する成膜工程では、系内の水分圧を2.0×10−3Pa以上5.0×10−1Pa以下の雰囲気にて制御し、好ましくは2.0×10−2Pa以上2.0×10−1Pa以下であり、5.1×10−2Pa以上1.0×10−1Pa以下の雰囲気にて制御することがより好ましい。系内の水はスパッタリング装置チャンバー内では水蒸気として導入する。系内の水分圧が2.0×10−3Pa未満の場合、酸化物薄膜に取り込まれる水の成分である水素あるいは水酸基の量が少ないため、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度の低減効果を十分得ることができない。一方、5.0×10−1Paを超える場合には、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度が増大してしまうとともに、酸化物半導体薄膜のキャリア移動度が低下する。水素あるいは水酸基がドナーとして、あるいは散乱因子として振る舞うためと考えられる。なお、酸化物半導体薄膜への水素添加には、本成膜工程において、系内の水分圧での制御ではなく、系内の水素分圧の制御で代用することも可能であるが、防爆仕様の製造工程が必要になるなど安全確保のためコスト高になる可能性があることから、水分圧での制御が好ましい。
(3)その他のガス条件
本成膜工程において、スパッタリング法による成膜の雰囲気ガスを構成するガスの種類としては、希ガス、酸素、及び水蒸気が好ましく、特に希ガスはアルゴンであることが、水蒸気はスパッタリング装置チャンバー内に水蒸気として導入されることがより好ましい。これらの雰囲気ガスの全圧力は、0.1Pa以上3.0Pa以下の範囲に制御されることが好ましく、0.2Pa以上0.8Pa以下の範囲がより好ましく、0.3Pa以上0.7Pa以下の範囲であれば一層好ましい。
本成膜工程において、スパッタリング法による成膜の雰囲気ガスを構成するガスの種類としては、希ガス、酸素、及び水蒸気が好ましく、特に希ガスはアルゴンであることが、水蒸気はスパッタリング装置チャンバー内に水蒸気として導入されることがより好ましい。これらの雰囲気ガスの全圧力は、0.1Pa以上3.0Pa以下の範囲に制御されることが好ましく、0.2Pa以上0.8Pa以下の範囲がより好ましく、0.3Pa以上0.7Pa以下の範囲であれば一層好ましい。
前記の系内の雰囲気ガスのうち、系内の水分圧だけでなく、系内の酸素分圧を制御することが好ましい。系内の酸素分圧の範囲は9.0×10−3Pa以上3.0×10−1Pa以下が好ましく、1.0×10−2Pa以上2.0×10−1Pa以下がより好ましく、2.5×10−2Pa以上9.0×10−2Pa以下がさらに好ましい。酸素分圧が1.0×10−2Pa未満では、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度が十分に低下しない、あるいは酸化物半導体薄膜の面内のキャリア濃度のばらつきが大きいなどの問題が生じることがある。一方、系内の酸素分圧が3.0×10−1Paを超えると、相対的に雰囲気ガスにおける希ガス、特にアルゴンの比率が低下するため、成膜速度が低下してしまい工業的な実用性が乏しくなることがある。
本発明の製造方法によって得られる酸化物半導体薄膜のキャリア濃度及びキャリア移動度を最適化するためには、前記の系内の酸素分圧と系内の水分圧をうまく組み合わせることが好ましい。系内の酸素分圧が低すぎる場合、系内の水分圧を制御しても酸化物半導体薄膜のキャリア濃度を低減することができないことがある。すなわち、系内の酸素分圧を1.0×10−2Pa以上3.0×10−1Pa以下、かつ系内の水分圧を5.0×10−2Pa以上2.0×10−1Pa以下の範囲に制御することが一層好ましく、系内の酸素分圧を5.0×10−2Pa以上2.0×10−1Pa以下、かつ系内の水分圧を5.1×10−2Pa以上7.5×10−1Pa以下の範囲に制御することがより一層好ましい。
(4)基板
本成膜工程において、成膜に用いる基板としては、アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等の無機材料、又はポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルフェノール等の有機材料であって、板、シート、あるいはフィルム等の形態のものを使用することができる。また、上記の基板に酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム等の無機材料、あるいはPMA、フッ素系ポリマー等の有機材料をさらに形成した基材からなる基板であってもよい。
本成膜工程において、成膜に用いる基板としては、アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等の無機材料、又はポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルフェノール等の有機材料であって、板、シート、あるいはフィルム等の形態のものを使用することができる。また、上記の基板に酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム等の無機材料、あるいはPMA、フッ素系ポリマー等の有機材料をさらに形成した基材からなる基板であってもよい。
(5)基板温度
本成膜工程において、スパッタリング法による成膜の基板温度は、室温以上300℃以下が好ましいが、基板温度100℃以上300℃以下がより好ましい。ただし、基板温度100℃未満において、系内の酸素分圧を2.4×10−2Pa以上とすると、膜中に過剰な酸素が取り込まれてしまう場合がある。過剰な酸素は、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度低減を阻害する、あるいは酸化物半導体薄膜の面内のキャリア濃度のばらつきが大きいなどの原因となる。
本成膜工程において、スパッタリング法による成膜の基板温度は、室温以上300℃以下が好ましいが、基板温度100℃以上300℃以下がより好ましい。ただし、基板温度100℃未満において、系内の酸素分圧を2.4×10−2Pa以上とすると、膜中に過剰な酸素が取り込まれてしまう場合がある。過剰な酸素は、酸化物半導体薄膜のキャリア濃度低減を阻害する、あるいは酸化物半導体薄膜の面内のキャリア濃度のばらつきが大きいなどの原因となる。
特に、本発明の製造方法によって得られるインジウム及びガリウムを酸化物として含有し、さらに水素を含有した非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜であれば、例えば100℃以上200℃以下という従来の酸化物半導体薄膜よりも低温にした状態で熱処理して酸化物半導体薄膜を製造することが可能である。そのため、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルムを基板として用いて薄膜トランジスタ(TFT)を製造することが可能である。
(6)T−S間距離
本成膜工程において、スパッタリング法による成膜におけるターゲットと基板間の距離(T−S間距離)は、150mm以下が好ましく、110mm以下がより好ましく、特に好ましくは80mm以下である。T−S間距離が150mmを超える場合、成膜速度が著しく低下してしまい工業的な実用性が乏しくなるおそれがある。T−S間距離を短くすることで成膜速度を高めることができるため工業的な実用性に優れるが、反面、成膜される酸化物薄膜がプラズマによるダメージを受けるおそれがあるため、10mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましく、特に好ましくは30mm以上である。
本成膜工程において、スパッタリング法による成膜におけるターゲットと基板間の距離(T−S間距離)は、150mm以下が好ましく、110mm以下がより好ましく、特に好ましくは80mm以下である。T−S間距離が150mmを超える場合、成膜速度が著しく低下してしまい工業的な実用性が乏しくなるおそれがある。T−S間距離を短くすることで成膜速度を高めることができるため工業的な実用性に優れるが、反面、成膜される酸化物薄膜がプラズマによるダメージを受けるおそれがあるため、10mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましく、特に好ましくは30mm以上である。
(7)ターゲット
本成膜工程において、スパッタリング法による成膜には、インジウム及びガリウムを酸化物として含有する酸化物焼結体からなるターゲットを用いる。特にインジウム及びガリウムを酸化物として含有する酸化物焼結体からなるターゲットを用いることが好ましいが、さらに正三価元素のホウ素、アルミニウム、スカンジウム、イットリウム、正四価元素のスズのうち1種以上が添加された酸化物焼結体からなるターゲットを用いてもよい。
本成膜工程において、スパッタリング法による成膜には、インジウム及びガリウムを酸化物として含有する酸化物焼結体からなるターゲットを用いる。特にインジウム及びガリウムを酸化物として含有する酸化物焼結体からなるターゲットを用いることが好ましいが、さらに正三価元素のホウ素、アルミニウム、スカンジウム、イットリウム、正四価元素のスズのうち1種以上が添加された酸化物焼結体からなるターゲットを用いてもよい。
本発明で用いられるターゲットは、酸化物焼結体を所定の大きさに加工することで得られる。本発明の製造方法によって得られる非晶質又は結晶質の酸化物半導体薄膜のインジウム及びガリウムの組成は、成膜工程において用いられる酸化物焼結体の組成とほぼ同じである。酸化物焼結体において、ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.55以下である。又、0.20以上0.45以下であることが好ましく、0.20を超え0.35以下であることがさらに好ましく、0.21以上0.35以下であることがより一層好ましく、0.25以上0.30以下であることがなおいっそう好ましい。酸化物焼結体において、ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.55以下とすることにより、ガリウムの含有量は、Ga/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.55以下となる酸化物半導体薄膜を製造することができる。
前記のインジウム及びガリウムを酸化物として含有する酸化物焼結体からなるターゲットは、少なくともビックスバイト型構造のIn2O3相を含有することが好ましく、さらにIn2O3相以外の生成相としてβ−Ga2O3型構造のGaInO3相、あるいはβ−Ga2O3型構造のGaInO3相と(Ga,In)2O3相によって構成されることが特に好ましい。なお、スズが添加された場合には、一般式Ga3−xIn5+xSn2O16(0.3<x<1.5)で表される複合酸化物相を含んでもよい。このような組織を有する酸化物焼結体からなるターゲットの密度は、6.3g/cm3以上であることが好ましい。密度が6.3g/cm3未満である場合、量産使用時のノジュール発生の原因となる場合がある。また、直流スパッタリング成膜で主に使用されることから、良好な導電性が必要であるため、酸化物焼結体からなるターゲットは酸素含有雰囲気で焼結されることが好ましく、特に酸素雰囲気で焼結されることが好ましい。
2−2.熱処理工程
熱処理工程とは、基板の表面に形成された酸化物薄膜を熱処理する工程である。非平衡プロセスのスパッタリング法による成膜によって得られた酸化物薄膜には、欠陥が過剰に導入される。過剰な欠陥の導入によってイオン(原子)や格子の配列などの薄膜構造の乱れが生じ、これはキャリア濃度の増加やキャリア移動度の低下に帰結する。後処理することによって、酸化物薄膜の過剰な欠陥を減少させるとともに、乱れている酸化物薄膜の構造を回復させ、そしてキャリア濃度及びキャリア移動度を安定化させることができる。すなわち、熱処理工程を経ることによって、適度なキャリア濃度に制御された高いキャリア移動度の酸化物半導体薄膜とすることが可能になる。
熱処理工程とは、基板の表面に形成された酸化物薄膜を熱処理する工程である。非平衡プロセスのスパッタリング法による成膜によって得られた酸化物薄膜には、欠陥が過剰に導入される。過剰な欠陥の導入によってイオン(原子)や格子の配列などの薄膜構造の乱れが生じ、これはキャリア濃度の増加やキャリア移動度の低下に帰結する。後処理することによって、酸化物薄膜の過剰な欠陥を減少させるとともに、乱れている酸化物薄膜の構造を回復させ、そしてキャリア濃度及びキャリア移動度を安定化させることができる。すなわち、熱処理工程を経ることによって、適度なキャリア濃度に制御された高いキャリア移動度の酸化物半導体薄膜とすることが可能になる。
(1)熱処理方法
構造を安定化させる方法としては、熱処理やレーザー処理がある。具体的な熱処理法としては、赤外線加熱を利用した急速熱処理法(RTA;Rapid Thermal Annealing)、あるいはランプ加熱による熱処理法(LA;Lamp Annealing)などが挙げられる。レーザー処理としては、酸化物半導体が吸収可能な波長を用いたエキシマレーザーやYAGレーザーによる処理が挙げられる。大型ガラス基板への適用を考慮すれば、RTAなどの熱処理が好ましい。
構造を安定化させる方法としては、熱処理やレーザー処理がある。具体的な熱処理法としては、赤外線加熱を利用した急速熱処理法(RTA;Rapid Thermal Annealing)、あるいはランプ加熱による熱処理法(LA;Lamp Annealing)などが挙げられる。レーザー処理としては、酸化物半導体が吸収可能な波長を用いたエキシマレーザーやYAGレーザーによる処理が挙げられる。大型ガラス基板への適用を考慮すれば、RTAなどの熱処理が好ましい。
(2)熱処理条件
熱処理工程における熱処理温度は、結晶化しない範囲内、かつ基板が変形や損傷しない範囲内で適宜選択することが可能であるが、100℃以上500℃未満が好ましく、100℃以上450℃以下がより好ましい。有機材料のフィルム基板を用いる場合には、100℃以上300℃以下が好ましく、100℃以上200℃以下がより好ましく、汎用性のあるPETフィルムを使用する場合には100℃以上150℃以下が必要である。100℃未満の熱処理温度では酸化物薄膜の構造が十分に回復・安定化しないおそれがある。また、500℃以上であると使用可能な基板が極端に制限されてしまう。
熱処理工程における熱処理温度は、結晶化しない範囲内、かつ基板が変形や損傷しない範囲内で適宜選択することが可能であるが、100℃以上500℃未満が好ましく、100℃以上450℃以下がより好ましい。有機材料のフィルム基板を用いる場合には、100℃以上300℃以下が好ましく、100℃以上200℃以下がより好ましく、汎用性のあるPETフィルムを使用する場合には100℃以上150℃以下が必要である。100℃未満の熱処理温度では酸化物薄膜の構造が十分に回復・安定化しないおそれがある。また、500℃以上であると使用可能な基板が極端に制限されてしまう。
熱処理工程における熱処理温度までの昇温速度は特に制限されないが、10℃/分以上が好ましく、50℃/分以上がより好ましく、100℃/分以上が特に好ましい。昇温速度を高めることによって、狙いとする温度に極力限定して熱処理を実施することが可能になる。また製造工程におけるスループットを高めることができるという利点もある。熱処理時間は、熱処理温度に保持される時間が1分間以上120分間以下であることが好ましく、5分間以上60分間以下がより好ましい。
熱処理工程における熱処理は、酸素濃度が30%以上とした雰囲気にて基板の表面に形成された酸化物薄膜を熱処理する。酸素濃度が30%以上とすることによって、高いキャリア移動度を維持したまま、キャリア濃度のみを低減せしめた酸化物半導体薄膜を製造することができる。なお、酸素濃度は、80%以上であることが好ましく、100%(純酸素)であることがより好ましい。なお、本明細書において酸素濃度とは水(水蒸気)を除く気体全体に対する体積の百分率(単位は%)を意味し、後述する水分(水蒸気)の体積比はこれに含まれない。
酸素以外の酸化性気体としては、オゾン又は窒素酸化物などの強酸化性の酸化性気体が好ましい。これらの酸化性雰囲気には水分が含まれる必要がある。酸素以外の酸化性気体を用いることによっても、高いキャリア移動度を維持したまま、キャリア濃度のみを低減せしめた酸化物半導体薄膜を製造することができる。
さらに、熱処理工程における熱処理において、酸化性雰囲気中の水分としては、温度22℃における相対湿度が5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、製造条件の安定性を考慮すれば30%以上であることが一層好ましい。温度22℃における相対湿度が5%以上とすることによって、熱処理工程を経ることにより、膜深さ方向の水素濃度が均一となった酸化物半導体を製造することができる。尚、相対湿度とは、飽和水蒸気圧に対するその空気の水蒸気分圧の百分率(単位は%)を意味する。
(3)エッチング条件
本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜は、ウエットエッチングあるいはドライエッチングによって、薄膜トランジスタ(TFT)などの用途で必要な微細加工を施される。通常、結晶化温度未満の温度、例えば室温から300℃までの範囲から適宜基板温度を選択して一旦酸化物薄膜を形成した後、ウエットエッチングによる微細加工を施すことができる。エッチャントとしては、弱酸であれば概ね使用できるが、PAN又は蓚酸を主成分とする弱酸が好ましい。例えば、関東化学製ITO−06Nなどが使用できる。薄膜トランジスタ(TFT)の構成によっては、ドライエッチングを選択してもよい。
本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜は、ウエットエッチングあるいはドライエッチングによって、薄膜トランジスタ(TFT)などの用途で必要な微細加工を施される。通常、結晶化温度未満の温度、例えば室温から300℃までの範囲から適宜基板温度を選択して一旦酸化物薄膜を形成した後、ウエットエッチングによる微細加工を施すことができる。エッチャントとしては、弱酸であれば概ね使用できるが、PAN又は蓚酸を主成分とする弱酸が好ましい。例えば、関東化学製ITO−06Nなどが使用できる。薄膜トランジスタ(TFT)の構成によっては、ドライエッチングを選択してもよい。
3.薄膜トランジスタ(TFT)及びその製造方法
本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜をチャネル層として備えた薄膜トランジスタ(TFT)であれば、チャネル層が高いキャリア移動度を維持したまま、キャリア濃度を低減させることができる酸化物半導体薄膜であるため、薄膜トランジスタ(TFT)が安定的に動作する。
本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜をチャネル層として備えた薄膜トランジスタ(TFT)であれば、チャネル層が高いキャリア移動度を維持したまま、キャリア濃度を低減させることができる酸化物半導体薄膜であるため、薄膜トランジスタ(TFT)が安定的に動作する。
本発明の製造方法によって得られる薄膜トランジスタは、本発明の製造方法によって得られる非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜をチャネル層として備えた薄膜トランジスタ(TFT)であれば、特に限定はされないが、例えば、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、チャネル層及びゲート絶縁膜を備える薄膜トランジスタを挙げることができる。
本発明の製造方法によって得られる薄膜トランジスタは、従来公知の方法と本発明の酸化物半導体薄膜の製造方法とを組み合わせることにより製造することができる。例えば、ゲート電極の表面にゲート絶縁膜を形成する。そして、ゲート絶縁膜の表面に本発明の非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜の製造方法により、酸化物薄膜を成膜、熱処理、エッチングし、パターニングされた酸化物半導体薄膜(チャネル層)を形成する。そして酸化物半導体薄膜(チャネル層)の表面にパターニングされたソース電極及びドレイン電極を形成する方法を挙げることができる。
ゲート電極の表面にゲート絶縁膜を形成する方法は、例えば、Si基板(ゲート電極)の表面に熱酸化等によってSiO2膜(ゲート絶縁膜)を形成する方法や、ITO膜(ゲート電極)表面に、高周波マグネトロンスパッタリングによってSiO2膜(ゲート絶縁膜)を形成する方法等を挙げることができる。
酸化物半導体薄膜(チャネル層)の表面にソース電極及びドレイン電極を成膜する方法は、直流マグネトロンスパッタリング法により、Mo、Al、Ta、Ti、Au、Ptなどの金属薄膜もしくはこれらの金属の合金薄膜、それら金属の導電性酸化物又は窒化物薄膜、あるいは各種の導電性高分子材料、あるいは透明TFT向けとしてITO等を成膜する方法を挙げることができる。
て酸化物半導体薄膜(チャネル層)の表面にパターニングされたソース電極及びドレイン電極を形成する方法は、例えばフォトリソグラフィ技術などを利用してエッチングをする方法やリフトオフ法等を用いることができる。
以下に、本発明の実施例を用いて、さらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
以下に説明するプロセスによって、酸化物半導体薄膜を作製及び評価した。
以下に説明するプロセスによって、酸化物半導体薄膜を作製及び評価した。
<酸化物半導体薄膜の作製>
直流電源、6インチカソード、四重極質量分析計(インフィコン製)を備えたロードロック式マグネトロンスパッタリング装置(アルバック製)を用いて直流スパッタリングによる成膜を行った。ターゲットとして、インジウム及びガリウムを酸化物として含有する酸化物焼結体からなるターゲットを用いた。ターゲットのガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.27とした。実際の成膜では、10分間のプリスパッタリング後、スパッタリングターゲットの直上、すなわち静止対向位置に基板を搬送して、膜厚50nmの酸化物薄膜を形成した。以下に成膜条件の詳細を示す。
直流電源、6インチカソード、四重極質量分析計(インフィコン製)を備えたロードロック式マグネトロンスパッタリング装置(アルバック製)を用いて直流スパッタリングによる成膜を行った。ターゲットとして、インジウム及びガリウムを酸化物として含有する酸化物焼結体からなるターゲットを用いた。ターゲットのガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.27とした。実際の成膜では、10分間のプリスパッタリング後、スパッタリングターゲットの直上、すなわち静止対向位置に基板を搬送して、膜厚50nmの酸化物薄膜を形成した。以下に成膜条件の詳細を示す。
[成膜条件]
基板温度:200℃
到達真空度:3.0×10−5Pa未満
ターゲット−基板(T−S)間距離:60mm
スパッタガス全圧:0.6Pa
酸素分圧:5.4×10−2Pa
水分圧:6.5×10−2Pa
投入電力:直流(DC)300W
基板温度:200℃
到達真空度:3.0×10−5Pa未満
ターゲット−基板(T−S)間距離:60mm
スパッタガス全圧:0.6Pa
酸素分圧:5.4×10−2Pa
水分圧:6.5×10−2Pa
投入電力:直流(DC)300W
続いて、成膜後の酸化物薄膜に、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いて、以下の条件で熱処理を施すことで酸化物半導体薄膜を得た。
[熱処理条件]
熱処理温度:350℃
雰囲気:酸素:100%(水分を除く)
温度22℃における相対湿度:50%
昇温速度:500℃/分
熱処理温度:350℃
雰囲気:酸素:100%(水分を除く)
温度22℃における相対湿度:50%
昇温速度:500℃/分
<酸化物半導体薄膜の特性評価>
酸化物薄膜の組成をICP発光分光法によって調べた。酸化物半導体薄膜の膜厚は表面粗さ計(テンコール社製)で測定した。酸化物半導体薄膜のキャリア濃度及びキャリア移動度は、ホール効果測定装置(東陽テクニカ製)によって求めた。熱処理工程前の酸化物薄膜及び熱処理工程後の酸化物半導体薄膜の膜質の確認は、X線回折測定(フィリップス製)、ならびに透過電子顕微鏡及び電子線回折測定(TEM−EDX、日立ハイテクノロジーズ製、日本電子製)により行った。表1及び表2に結果を示した。
酸化物薄膜の組成をICP発光分光法によって調べた。酸化物半導体薄膜の膜厚は表面粗さ計(テンコール社製)で測定した。酸化物半導体薄膜のキャリア濃度及びキャリア移動度は、ホール効果測定装置(東陽テクニカ製)によって求めた。熱処理工程前の酸化物薄膜及び熱処理工程後の酸化物半導体薄膜の膜質の確認は、X線回折測定(フィリップス製)、ならびに透過電子顕微鏡及び電子線回折測定(TEM−EDX、日立ハイテクノロジーズ製、日本電子製)により行った。表1及び表2に結果を示した。
実施例及び比較例のうち、代表的な酸化物半導体薄膜のSIMS(二次イオン質量分析法、アルバック・ファイ製)による測定を行った。
(実施例2〜10、比較例1、2)
ターゲット、スパッタ条件、及び熱処理条件を、表1に記載の組成を有するインジウム及びガリウムを酸化物として含有する酸化物焼結体からなるターゲット及び条件に変更したほかは、実施例1と同様にして酸化物半導体薄膜を作製し、評価した。表1及び表2に、まとめて結果を示した。
ターゲット、スパッタ条件、及び熱処理条件を、表1に記載の組成を有するインジウム及びガリウムを酸化物として含有する酸化物焼結体からなるターゲット及び条件に変更したほかは、実施例1と同様にして酸化物半導体薄膜を作製し、評価した。表1及び表2に、まとめて結果を示した。
実施例1〜10より、本発明の製造方法によって得られる、インジウム及びガリウムを酸化物として含有し、さらに水素を含有する非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜であって、ガリウムがGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.55以下である酸化物半導体薄膜は、成膜工程において、系内の酸素分圧を9.0×10−3Pa以上3.0×10−1Pa以下、かつ系内の水分圧を2.0×10−3Pa以上5.0×10−1Pa以下の範囲に制御した雰囲気にてスパッタ法で成膜され、続いて、熱処理工程において、系内の温度22℃で測定した相対湿度が5%以上かつ酸素濃度が30%以上の雰囲気にて熱処理されることにより、キャリア濃度が1.0×1018cm−3未満であり、キャリア移動度が10cm2V−1sec−1以上を示すことがわかる。
特に、実施例1〜9からわかるように、本発明の製造方法によって得られる、インジウム及びガリウムを酸化物として含有し、さらに水素を含有する微結晶の酸化物半導体薄膜であって、ガリウムがGa/(In+Ga)原子数比で0.20以上0.35以下である酸化物半導体薄膜は、熱処理工程において、熱処理の雰囲気の相対湿度を5%以上に制御することにより、キャリア濃度が1.0×1018cm−3未満、かつ酸化物半導体薄膜のキャリア移動度が20cm2V−1sec−1以上を実現することができる。
これに対して、比較例1では、熱処理工程において、熱処理の雰囲気の相対湿度が0%であるため、熱処理によって酸化物半導体薄膜から水素が脱離し、その結果として酸化物半導体薄膜のキャリア濃度が1.0×1018cm−3以上になってしまっている。
さらに、比較例2では、熱処理工程において、熱処理の雰囲気の酸素濃度が20%であるため、熱処理時に酸化物半導体薄膜の酸素欠損が消失せず、その結果として酸化物半導体薄膜のキャリア濃度が1.0×1018cm−3以上になってしまっている。
<X線回折測定、及び断面組織のTEM−EDX測定>
実施例1の酸化物半導体薄膜について、X線回折測定、及び断面組織のTEM−EDX測定を実施した。図1に実施例1の酸化物半導体薄膜のX線回折測定におけるX線回折測定結果を示し、図2に実施例1の酸化物半導体薄膜の断面組織のTEM写真像、図3に実施例1の酸化物半導体薄膜の断面組織のTEM−EDX測定の電子線回折図を示す。図1の実施例1の酸化物半導体薄膜におけるX線回折測定結果には、In2O3のビックスバイト構造の明瞭な回折ピークがみられないことから、結晶質以外の酸化物半導体薄膜が生成していることがわかる。又、図2の実施例1の酸化物半導体薄膜の断面組織のTEM写真像より、実施例1の酸化物半導体薄膜の断面組織には明確な結晶粒界は確認されないことがわかる。さらに、図3の実施例1の酸化物半導体薄膜の断面組織のTEM−EDX測定の電子線回折図はスポットとリングの組み合わせからなる回折パターンになっていることから、非晶質ではなく微結晶が生成していることがわかる。
実施例1の酸化物半導体薄膜について、X線回折測定、及び断面組織のTEM−EDX測定を実施した。図1に実施例1の酸化物半導体薄膜のX線回折測定におけるX線回折測定結果を示し、図2に実施例1の酸化物半導体薄膜の断面組織のTEM写真像、図3に実施例1の酸化物半導体薄膜の断面組織のTEM−EDX測定の電子線回折図を示す。図1の実施例1の酸化物半導体薄膜におけるX線回折測定結果には、In2O3のビックスバイト構造の明瞭な回折ピークがみられないことから、結晶質以外の酸化物半導体薄膜が生成していることがわかる。又、図2の実施例1の酸化物半導体薄膜の断面組織のTEM写真像より、実施例1の酸化物半導体薄膜の断面組織には明確な結晶粒界は確認されないことがわかる。さらに、図3の実施例1の酸化物半導体薄膜の断面組織のTEM−EDX測定の電子線回折図はスポットとリングの組み合わせからなる回折パターンになっていることから、非晶質ではなく微結晶が生成していることがわかる。
<SIMSによる膜深さ方向の水素濃度分布の測定>
(実施例11、比較例3)
実施例11として、実施例1と同じ成膜条件ならびに熱処理条件にて作製し、膜厚を約150nmに厚くした酸化物半薄膜について、熱処理工程前後のSIMSによる膜深さ方向の水素濃度分布を測定した。さらに、比較例3として、比較例1と同じ成膜条件ならびに熱処理条件にて作製し、膜厚を約150nm(測定膜厚142nm)に厚くした酸化物半導体薄膜についても、SIMSによる膜深さ方向の水素濃度分布を測定した。膜厚を150nmと厚くすることで、膜深さ方向の水素濃度分布の違いを比較しやすいようにしている。図4にSIMS測定結果を示す。相対湿度50%の酸素雰囲気で熱処理した実施例11については、熱処理前後の膜深さ方向の水素濃度分布に変化はない。これに対して、相対湿度0%の酸素雰囲気で熱処理した比較例3では、全体的に水素濃度が低下しており、特に膜表面から70nmの領域で顕著に水素濃度が低下している傾向がみられる。したがって、本発明の製造方法によって、熱処理後も膜深さ方向の水素濃度が均一な酸化物半導体が得られることがわかった。
(実施例11、比較例3)
実施例11として、実施例1と同じ成膜条件ならびに熱処理条件にて作製し、膜厚を約150nmに厚くした酸化物半薄膜について、熱処理工程前後のSIMSによる膜深さ方向の水素濃度分布を測定した。さらに、比較例3として、比較例1と同じ成膜条件ならびに熱処理条件にて作製し、膜厚を約150nm(測定膜厚142nm)に厚くした酸化物半導体薄膜についても、SIMSによる膜深さ方向の水素濃度分布を測定した。膜厚を150nmと厚くすることで、膜深さ方向の水素濃度分布の違いを比較しやすいようにしている。図4にSIMS測定結果を示す。相対湿度50%の酸素雰囲気で熱処理した実施例11については、熱処理前後の膜深さ方向の水素濃度分布に変化はない。これに対して、相対湿度0%の酸素雰囲気で熱処理した比較例3では、全体的に水素濃度が低下しており、特に膜表面から70nmの領域で顕著に水素濃度が低下している傾向がみられる。したがって、本発明の製造方法によって、熱処理後も膜深さ方向の水素濃度が均一な酸化物半導体が得られることがわかった。
次に、以下に説明するプロセスによって、薄膜トランジスタを作製及び評価した。
<薄膜トランジスタの作製及び動作特性評価>
(実施例12)
熱酸化によって厚さ100nmのSiO2膜が形成された、厚さ475μm、20mm角の導電性p型Si基板を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を作製した。ここで、SiO2膜はゲート絶縁膜として機能し、導電性p型Si基板がゲート電極として機能する。
前記のSiO2膜ゲート絶縁膜上に、実施例1の酸化物薄膜(Ga/(In+Ga)原子数比=0.27)を成膜した。なお、スパッタリング条件は、実施例1に準じた。
酸化物薄膜に対して、レジスト(東京応化工業製OFPR♯800)、エッチャント(関東化学製ITO−06N)を用いて、フォトリソグラフィ法によりパターニングを行った。
(実施例12)
熱酸化によって厚さ100nmのSiO2膜が形成された、厚さ475μm、20mm角の導電性p型Si基板を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を作製した。ここで、SiO2膜はゲート絶縁膜として機能し、導電性p型Si基板がゲート電極として機能する。
前記のSiO2膜ゲート絶縁膜上に、実施例1の酸化物薄膜(Ga/(In+Ga)原子数比=0.27)を成膜した。なお、スパッタリング条件は、実施例1に準じた。
酸化物薄膜に対して、レジスト(東京応化工業製OFPR♯800)、エッチャント(関東化学製ITO−06N)を用いて、フォトリソグラフィ法によりパターニングを行った。
次に、酸化物薄膜に実施例1に準ずる条件で熱処理を施し、微結晶膜の酸化物半導体薄膜を得た。これにより、微結晶膜の酸化物半導体薄膜をチャネル層とした。
チャネル層の表面に、直流マグネトロンスパッタリング法により、厚さ10nmのTi膜と厚さ50nmのAu膜を、この順序で成膜することで、Au/Ti積層膜からなるソース電極及びドレイン電極を成膜した。リフトオフ法によりパターニングを行い、チャネル長20μm、チャネル幅500μmとなるように、ソース電極及びドレイン電極を成膜することで実施例12の薄膜トランジスタを得た。
薄膜トランジスタの動作特性を、半導体パラメータアナライザ(アジレント製)を用いて評価した。この結果、薄膜トランジスタとしての動作特性が確認できた。また、実施例12の薄膜トランジスタは、電界効果移動度が39.0cm2V−1sec−1、on/off比が6×107、S値が0.38の良好な値を示すことが確認された。
チャネル層の表面に、直流マグネトロンスパッタリング法により、厚さ10nmのTi膜と厚さ50nmのAu膜を、この順序で成膜することで、Au/Ti積層膜からなるソース電極及びドレイン電極を成膜した。リフトオフ法によりパターニングを行い、チャネル長20μm、チャネル幅500μmとなるように、ソース電極及びドレイン電極を成膜することで実施例12の薄膜トランジスタを得た。
薄膜トランジスタの動作特性を、半導体パラメータアナライザ(アジレント製)を用いて評価した。この結果、薄膜トランジスタとしての動作特性が確認できた。また、実施例12の薄膜トランジスタは、電界効果移動度が39.0cm2V−1sec−1、on/off比が6×107、S値が0.38の良好な値を示すことが確認された。
Claims (5)
- 系内の水分圧が2.0×10−3Pa以上5.0×10−1Pa以下の雰囲気にて、インジウム及びガリウムを酸化物として含有し、前記ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.15以上0.55以下である酸化物焼結体からなるターゲットを用いて基板の表面にスパッタリング法によって酸化物薄膜を成膜する成膜工程と、
系内の温度22℃で測定した相対湿度が5%以上かつ酸素濃度が30%以上とした雰囲気にて、前記基板の表面に形成された酸化物薄膜を熱処理する熱処理工程と、を含む、酸化物半導体薄膜の製造方法であって、
前記熱処理工程後の前記酸化物半導体薄膜がインジウム及びガリウムを酸化物として含有し、さらに水素を含有する非晶質又は微結晶の酸化物半導体薄膜の製造方法。 - 前記熱処理工程における前記相対湿度を10%以上とする、請求項1に記載の酸化物半導体薄膜の製造方法。
- 前記熱処理工程における前記酸素濃度を100%とする、請求項1又は2に記載の酸化物半導体薄膜の製造方法。
- 前記ターゲットの前記酸化物焼結体における前記ガリウムの含有量がGa/(In+Ga)原子数比で0.20以上0.35以下である、請求項1から3のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜の製造方法。
- 請求項1から4のいずれかに記載の酸化物半導体薄膜の製造方法により製造された酸化物半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタの製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2017032685A JP2018135589A (ja) | 2017-02-23 | 2017-02-23 | 酸化物半導体薄膜及び薄膜トランジスタの製造方法 |
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2017
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