JP2016199460A - 方向性電磁鋼鈑用焼鈍分離剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】
方向性電磁鋼鈑の品質は、焼鈍工程で使用される焼鈍分離剤の性状によって大きく左右される。そのため焼鈍分離剤として使用される酸化マグネシウムの性状の改良が求められていた。
【解決手段】
本発明は、微粒子で分散性に優れる酸化マグネシウム粒子を提供するものであり、本発明の酸化マグネシウムを焼鈍分離剤として用いることにより鋼板との密着性が高くなり、さらにフォルステライト(Mg2SiO4)が低温で形成されるようになるため、良質の方向性電磁鋼板を得ることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、密着性が高く、反応性が良い微粒子酸化マグネシウム粒子を提供するもので、特に電磁鋼鈑用焼鈍分離剤に有効である。
通常、方向性電磁鋼鈑は、Si 2.5〜4.0%を含有するスラブを熱延し、冷延、焼鈍した後、酸化マグネシウム(MgO)を主成分とする焼鈍分離剤を鋼板に塗布乾燥し、その後巻き取り、高温仕上げ焼鈍を行い、絶縁被膜とフラットニング処理を行って最終製品とされる。
焼鈍分離剤として使用される酸化マグネシウムは、鋼板の焼き付きを防止するだけでなく、高温焼鈍中に鋼板中のSiO2主体の酸化膜と反応して、グラス被膜と称するフォルステライト被膜層を形成する。このグラス被膜形成反応には、高温仕上げ焼鈍条件、酸化膜性状とともに、焼鈍分離剤の性状、不純物が大きく影響することから、方向性電磁鋼鈑に適した酸化マグネシウムの開発が鋭意行われている。
酸化マグネシウムは、一般的に少量の添加剤とともに水に懸濁され、鋼板に塗布後、乾燥される。その後、鋼板は、コイル状に巻き取られたのち、高温仕上げ焼鈍が施される。この時、使用される添加剤は、金属酸化物,ホウ素化合物等である。
上記工程により、酸化マグネシウムには微量の水分が含有されているので、高温仕上げ焼鈍中の雰囲気露点が高く、不均一になる問題がある。また、添加物の反応性も、添加剤の種類によっては、雰囲気露点の影響を受けるので、部分的に被膜形成が早くなったりして、グラス被膜が不均一に生成する問題がある。
方向性電磁鋼鈑の磁気特性に大きな影響を及ぼす鋼中のインヒビターは、グラス被膜の生成時期、被膜性状と密接な関係があるので、高温仕上げ焼鈍中のグラス被膜生成が不均一になると、磁気特性も不安定となる問題がある。
このように、方向性電磁鋼鈑の商品価値を決定する上で重要な磁気特性とグラス被膜形成に酸化マグネシウムの品質の影響が大きいことから、酸化マグネシウムの品質の改善は方向性電磁鋼鈑の製造技術にとって重要な問題となっている。
酸化マグネシウムの性状の中でグラス被膜形成とこれに関連してインヒビターの安定性に影響する因子としては、酸化マグネシウムの活性度(反応性)、粒度、純度、鋼板への密着性等があり、鋼板に塗布される際には、水和の進行度合、粒子の分散状態、塗布量等がある。このため、良質の方向性電磁鋼鈑を得るためには、これらの条件を最適化することが重要である。
このような問題点を解決する手段としては、例えば、特許文献1に記載された方法がある。この方法では、高温焼成した酸化マグネシウムの最表層のみを気相中で処理することにより、水和層を形成して酸化マグネシウムの反応性を高め、しかも含有水分を減らすことが可能となるので、グラス被膜と磁気特性が向上する。
添加剤を用いる手段としては、例えば、特許文献2に、酸化マグネシウム100重量部に対して、Sb、Sr,Ti,Zrの塩化物を一定量含有する硫酸アンチモン0.5〜2.0重量部を添加する技術が提案されている。この技術により、グラス被膜形成反応が向上し、グラス被膜特性と磁気特性が向上する。
さらに、特許文献3には、クエン酸活性、比表面積、強熱減量、粒子形状、粒度分布について規定することにより、方向性電磁鋼鈑の被膜特性を向上させる技術が開示されている。
一方、マグネシア(MgO)そのものについても、特許文献4にはかさ比重及び粒径分布について、粒度3μm以下が40〜70%、15μm以上の粗粒分を15%以下とする粒度10μm以上が10〜25%、及び残部が3〜10μmに規定されたMgOを用いることで、方向性電磁鋼板の被膜特性と歪の低減を両立させる技術が開示されている。
さらに、特許文献5には、ロータリーキルン焼成により得られるMgOを2種類以上混合し、かつ混合に際し配合割合を所定目標に、及び/又は許容上限値からの変位量に応じて調整し、混合する技術が開示されている。
また、特許文献6には、酸化マグネシウム粒子の累積細孔容積曲線の第一変曲点径と粒子間空隙量、及び、粒子内空隙量を特定範囲に制御する技術が開示されている。しかし、この技術は、必ずしもコイル状態での欠陥が減少するものではなく、露点が不均一であったり、温度分布が不均一であったりすることにより被膜欠陥が発生するという問題点を抱えるものである。
特開昭62-156226号公報 特公昭63-3022号公報 特許第3536775号公報 特公昭52-31296号公報 特開平10-88244号公報 再公表WO01/83848号公報
本発明者は前記を解決するために鋭意研究の結果、焼鈍分離剤として用いる酸化マグネシウムを分散性の良い微粒子とすることにより、鋼板への密着性が良くなり、さらにフォルステライト(Mg2SiO4)が低温で形成されることを見出した。
微粒子酸化マグネシウムの原料となる微粒子水酸化マグネシウムの製造方法は、特願2015-80647に準じた。この方法で得られた水酸化マグネシウムを、450〜1500℃で焼成することで本発明の酸化マグネシウムを得た。
本発明の酸化マグネシウム粒子は、鋼板との密着性が高く、反応性が良いので従来の酸化マグネシウム粒子の塗布量より少ない量で、従来の酸化マグネシウムで得られる以上の効果を得られる。さらに本発明の酸化マグネシウム粒子は小さく密度が高いので、Ni,Mn,Cu,Znなどの溶液とも反応しやすく、フェライト層を形成しやすいので珪素鋼板のみならず、珪素の入らない電磁鋼鈑への応用も期待できる。
実施例1の粒度分布図 実施例3の粒度分布図 比較例1の粒度分布図 実施例2のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中、及びイソプロピルアルコール中の粒度分布 比較例1のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中、及びイソプロピルアルコール中の粒度分布 実施例3のSEM写真(50,000倍)
本発明の酸化マグネシウム粒子について好ましい実施形態に基づき記述するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
鋼板との密着性の範囲は80%以上であり、好ましくは82%以上、更に好ましくは85%以上である。
更に高温焼鈍中にMgOが鋼板中のSiO2主体の酸化膜と反応して、グラス被膜と称するフォルステライト被膜層を形成するが、本発明の酸化マグネシウム(MgO)とSiO2の反応でフォルステライト(Mg2SiO4)が析出するまでの温度は750〜1050℃であり、従来の酸化マグネシウムより低温でフォルステライトが析出する。
なお、SiO2の混合量を増やし、プレス処理すれば、フォルステライト(Mg2SiO4)の析出温度がさらに低くなる。
また、本発明の酸化マグネシウム粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布法によるヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中の平均二次粒子径(MV)の範囲は0.1〜0.7μm、好ましくは0.12〜0.68μm、さらに好ましくは0.13〜0.65μmである。
レーザー回折散乱式粒度分布法によるヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中のD90/D10の範囲は2.3〜4.0、好ましくは2.35〜3.95、更に好ましくは2.4〜3.9である。
D50/MVの範囲は0.75〜1.0、好ましくは0.78〜0.95、更に好ましくは0.80〜0.90である。
本発明の酸化マグネシウム粒子の特徴は微粒子且つ分散性が良い。これは分散媒が入っておらず凝集を起こしやすいイソプロピルアルコール溶媒でも、一次粒子径と比べ、粒子径の変化が少ないことで表わされる。つまり、イソプロピルアルコール溶媒に分散させて粒子径を測定しても、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中との粒度分布との差は少ない。
本発明の酸化マグネシウム粒子のイソプロピルアルコール中での変化率は、35%以下、好ましくは33%以下、更に好ましくは30%以下である。
(実施例)
以下、本発明に関し実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。実施例において各特性は以下の方法によって測定した。
(1) 密着性の評価方法
ミキサーに20℃の水150mL及び20gのMgO粒子を入れ、1分間撹拌分散した後、そのスラリーを、重量を測定済の、縦150mm×横80mm×厚み0.3mm(表面積=0.012m2)のステンレス鋼板の表面に刷毛及びゴムロールを用いて塗布する。
その塗布されたステンレス鋼板を電気炉にて500℃で30秒間、乾燥処理した後、表面以外に付いた粉を拭き落とし、鋼板の重さを測定した。その鋼板を、ロータップ型ふるい振盪機(株式会社飯田製作所製)に固定し、400gの砂(和光社の海砂、砂径425〜850μm)を入れ、30秒間研磨した後の鋼板の重さを測定し、下記式により求めた数値を密着性とした。
密着性[%]=(30秒間研磨後の塗布層の重さ/研磨前の重さ)×100
(2) 粒度
0.2重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液70mL(或いはイソプロピルアルコール)を100mLのガラスビーカーに採り、これに乾燥後の試料粉末を0.7g入れ、3分間の超音波処理を行った。この水溶液について、レーザー回折散乱式粒度分布装置(商品名 MT3000 日機装社製)を使用して、平均粒子径(MV)、体積基準の累積10%(D10)、50%(D50)、90%(D90)粒子を測定した。
(3) Mg2SiO4(フォルステライト)の測定
MgO粉体は和光試薬SiO2の質量の比を2対1に調製し、十分な混合後、焼成処理を行った。焼成後の粉体は銅Kα線によるX線回折分析を行った。測定条件は45kV-40mAで行った。(商品名 DSA-0010_Empyrean PANalytical社製)、焼成後の粉体からMg2SiO4 (フォルステライト)の析出温度を確定した。
(4)イソプロピルアルコール中の粒度の変化率
下記の式により求めた。
イソプロピルアルコール中の粒度の変化率[%]=
{(イソプロピルアルコール中の平均粒子サイズMV−ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中の粒子平均サイズMV)/ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中の粒子平均サイズMV}×100
常圧かつ22℃で、20Lのステンレス容器に4.2mol/Lの塩化マグネシウム水溶液6.5Lを入れて、撹拌しながら8.4Nの水酸化ナトリウム水溶液6.5Lをゆっくり添加し反応させ、脱イオン水で溶液の総体積を16Lに調整し、スラリーの濃度を100g/Lとした。
次に、水浴の温度を45℃に設定し、350r.p.m.の撹拌条件下で熱処理を行った。
また、熱処理を140時間行った後のスラリーは、水酸化マグネシウム粒子に対して重量基準で20倍の純水を加えながら濾過し、水酸化マグネシウム粒子に対して重量基準で25倍の純水を用いた水洗を2回行い、120℃で20時間乾燥を行った。得られた粒子はX線回折法による分析の結果、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)粒子であった。
この水酸化マグネシウムを500℃で2時間焼成し、酸化マグネシウム粒子を得た。
実施例1で得られた水酸化マグネシウムを600℃で2時間焼成し、酸化マグネシウム粒子を得た。
実施例1で得られた水酸化マグネシウムを750℃で2時間焼成し、酸化マグネシウム粒子を得た。
常圧かつ19℃で、20Lのステンレス容器に4.2mol/Lの塩化マグネシウム水溶液6.5Lを入れて、撹拌しながら12.0Nの水酸化ナトリウム水溶液9.1Lをゆっくり添加し反応させ、脱イオン水で溶液の総体積を16Lに調整し、スラリーの濃度を100g/Lとした。その後、水浴の温度を60℃に設定し、350r.p.m.の撹拌条件下で15時間の熱処理を行った。その後、実施例1と同様にして、濾過、水洗および乾燥して水酸化マグネシウム粒子を得た。得られた水酸化マグネシウムを750℃で2時間焼成し、酸化マグネシウム粒子を得た。
実施例4で得られた水酸化マグネシウムを600℃で2時間焼成し、酸化マグネシウム粒子を得た。
(比較例1)
協和化学工業株式会社製酸化マグネシウム粒子A
(比較例2)
協和化学工業株式会社製酸化マグネシウム粒子B

Claims (6)

  1. 鋼板に塗布し、処理した後の密着性が80%以上であり、SiO2と混合して焼成したとき、Mg2SiO4を析出する酸化マグネシウム粒子。
  2. SiO2と混合して焼成したとき、Mg2SiO4の析出温度が800〜1050℃である請求項1記載の酸化マグネシウム粒子。
  3. ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液でのレーザー回折散乱式粒度分布の平均二次粒子径(MV)が0.1〜0.7μmである請求項1記載の酸化マグネシウム粒子
  4. ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液でのレーザー回折散乱式粒度分布のD90/D10が2.3〜4.0で、D50/MVが0.75〜1.0である請求項1記載の酸化マグネシウム粒子。
  5. イソプロピルアルコール溶媒を用いて測定した粒度分布の平均二次粒子径(MV)と、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用いて測定した粒度分布の平均二次粒子径(MV)の変化率が、35%以下である請求項1記載の酸化マグネシウム粒子。
  6. 方向性電磁鋼鈑用焼鈍分離剤である請求項1記載の酸化マグネシウム粒子。

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