JP2016196556A - プリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板 - Google Patents

プリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板 Download PDF

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神夫 米本
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Hirofumi Midorikawa
博文 緑川
隆人士 三戸
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隆人士 三戸
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Abstract

【課題】優れた誘電特性と、ピール強度を兼ね備え、かつ反りを低減できるプリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板を提供することを目的とする。【解決手段】樹脂組成物を織布基材に含浸させ、加熱乾燥して形成されるプリプレグであって、前記樹脂組成物が、重量平均分子量が1万〜50万であるアクリルゴムを含む、プリプレグ。【選択図】図1

Description

本発明は、プリプレグ、前記プリプレグを用いて形成された金属張積層板、前記金属張積層板を用いて形成されたプリント配線板に関するものである。
電子機器の小型化及び薄型化に伴い、電子機器に備えられる電子部品として、表面実装型パッケージのものが用いられることが多くなってきている。このようなパッケージ(PKG)としては、具体的には、BOC(Chip On Board)等の、半導体チップを基板上に実装するパッケージが挙げられる。このようなパッケージは、半導体チップと基板とが接合した構造となっている。このため、半導体チップと基板との熱膨張率(Coefficient of Thermal Expansion:CTE)の相違により、温度変化によるパッケージの反り等の変形が発生することがあった。また、このようなパッケージは、反りが大きくなると、半導体チップと基板とを引き剥がす力が大きくなり、半導体チップと基板との接続信頼性も低下することになる。
また、電子機器は、小型化及び薄型化のさらなる要求がある。このような要求を満たすために、電子部品の小型化及び薄型化が図られ、それに伴い、電子部品のパッケージを構成する基板の薄型化が検討されている。このように薄型化された基板の場合、上記反りが発生しやすい傾向があり、反りの発生を抑制することがより求められるようになってきている。
さらに、電子機器を多機能化するためには、搭載される電子部品の数を増加する必要がある。この要求を満たすために、複数のサブパッケージを積層して基板上に実装して、さらにパッケージ化するパッケージ・オン・パッケージ(Package on Package:PoP)というパッケージの形態が採用されている。例えば、スマートフォンやタブレットコンピュータ等の携帯端末装置等に、このPoPが多く採用されている。また、このPoPは、複数のサブパッケージが積層する形態であるため、サブパッケージ毎の接続信頼性等が重要となってくる。この接続信頼性を高めるためには、サブパッケージとして用いられている各パッケージの反りの低減が求められる。
現在、パッケージの反りを小さくする基板材料として提案されているのは、高剛性、低熱膨張率という方向性で開発した材料である(例えば、特許文献1〜3)。すなわち、剛性が高ければ高いほど、熱膨張率(CTE:coefficient of thermal expansion)が低ければ低いほど、パッケージの反りが小さくなるという提案である。
特開2006−137942号公報 特開2007−138152号公報 特開2008−007756号公報
しかし、上記特許文献1〜3に記載されているような高剛性、低熱膨張率の材料は、特定のパッケージ形態には反りを低減する効果が確認されているものの、パッケージ形態が変わると全く異なる反り挙動となるため、汎用性に欠けるという問題があった。また、PoPは、上述の通り、複数のサブパッケージが積層する形態であるため、各層間(プリプレグと内層銅箔や外層銅箔との間など)の密着性(剥離強度)も信頼性の観点から重要になっている。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、優れた誘電特性と、ピール強度を兼ね備え、かつ反りを低減できるプリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板を提供することを目的とするものである。
本発明の一態様に係るプリプレグは、樹脂組成物を織布基材に含浸させ、加熱乾燥して形成されるプリプレグであって、前記樹脂組成物が、重量平均分子量が1万〜50万であるアクリルゴムを含むことを特徴とする。
さらに、前記プリプレグにおいて、前記アクリルゴムが、前記樹脂組成物の樹脂固形分100質量%に対し、1〜60質量%で含有されていることが好ましい。
また、前記樹脂組成物が、さらに、無機充填材として、平均粒径0.01〜0.9μmの球状シリカを少なくとも1種と、平均粒径1.0〜5.0μmの球状シリカを少なくとも1種とを含むことが好ましい。
また、本発明の他の一態様に係る金属張積層板は、前記プリプレグに金属箔を積層して、加熱加圧成型して得られることを特徴とする。
本発明のさらなる態様に係るプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて得られることを特徴とする。
本発明によれば、優れた誘電特性と、ピール強度を兼ね備え、かつ反りを低減できるプリプレグ並びに金属張積層板を提供することができる。
図1は、本願実施例における銅箔ピール強度の評価結果を示すグラフである。 図2は、本願実施例における内層ピール強度の評価結果を示すグラフである。 図3は、本願実施例における熱膨張係数(CTE)の評価結果を示すグラフである。
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
本実施形態のプリプレグは、樹脂組成物を織布基材に含浸させて、それを半硬化状態(いわゆるBステージ状態)となるまで加熱乾燥することによって形成されている。
そして、前記樹脂組成物が、重量平均分子量が1万〜50万であるアクリルゴムを含むことを特徴とする。
このように低い重量平均分子量を有する低弾性の高分子量体、すなわち、アクリルゴムを含有することによって、低CTEを有する基板材料や、硬化物を積層板として用いた場合の、内層銅箔とプリプレグ間、及び、外層銅箔とプリプレグ間などにおける密着性(剥離強度)を向上させることができる。
本実施形態で使用する樹脂組成物としては、上述したような比較的低分子のアクリルゴムを含んでいる限り、電子材料として使用できるものを特に限定なく使用することができる。好ましい態様としては、例えば、(A)重量平均分子量が1万〜50万であるアクリルゴム、(B)ポリアリーレンエーテル共重合体(PAE)、(C)1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ樹脂、及び(D)無機充填材を含み、前記(B)成分が前記(A)成分と相溶し、かつ前記(C)成分が前記(A)成分と非相溶である、エポキシ樹脂を使用することができる。
このような樹脂組成物を使用することによって、上述した効果に加えて、さらに、誘電特性、樹脂流れ性や耐熱性等にも優れたプリプレグを得ることができると考えられる。
本実施形態において、これら前記樹脂組成物の3成分(A〜C成分)は、硬化が進行していない状態、つまり硬化促進剤等を共に含有せず樹脂のみの場合、(B)成分と(A)成分は相溶し、また(C)成分と(A)成分は相溶せず、相分離をしめす。前記成分同士が相溶しているか非相溶であるかの測定は、例えば、後述の実施例において用いた測定方法などで判定することができる。そして、前記樹脂組成物は、硬化が進行した半硬化状態及び硬化状態においては(例えば、硬化促進剤を共に含有している状態)、(B)成分と(C)成分の硬化が促進され、(A)成分と(B)および(C)成分の硬化物とは相溶せず、相分離している状態となっている。(A)成分と(B)および(C)成分の硬化物が相分離することによって、プリプレグの硬化状態において、(B)および(C)成分の硬化物によって剛性を高め、(A)成分によって弾性を下げることができる。
さらに、本実施形態の樹脂組成物を用いた積層板では、弾性を下げて応力を緩和させることができるのでパッケージの形態に依存することなく汎用的にパッケージの反りを低減することができるものである。また、(A)成分であるアクリルゴムは極性が高いことから、銅箔との密着性を高める事が出来ると考えられる。さらに特にB成分によって積層板の誘電特性を向上させることができるという利点がある。
〔(A)成分:アクリルゴム(高分子量体)〕
本実施形態の(A)成分、高分子量体は、低弾性成分であり、具体的にはアクリルゴムである。すなわち、(A)成分は、重量平均分子量(Mw)が1万〜50万であるアクリルゴムである。より好ましくは、重量平均分子量(Mw)が1万〜30万であるアクリルゴムを使用する。重量平均分子量が1万より小さいと、高分子量体特有の低弾性成分の利点が低下していき、逆に重量平均分子量が50万より大きいと、分散性が悪くなりアクリルゴムが均一に分散せず、CTEが悪化/密着性が悪化する。
本実施形態のアクリルゴムとしては、上記式(I)(II)で表される構造を有するものが好ましく挙げられる。すなわち、(A)成分の主鎖は式(I)(II)で表される構造からなり、主鎖にはエポキシ基が結合している。X:Y=0:1〜0.35:0.65であるから、(A)成分の主鎖が式(II)で表される構造のみからなる場合もあるが、これ以外の場合、式(I)(II)で表される構造の配列順序は特に限定されない。
Figure 2016196556
あるいは、上記式(I)(II)で表される構造を有するもの以外であってもよく、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸メチル(EA)、アクリル酸メチル(MA)等を主鎖に含むアクリルゴムであってもよい。
また(A)成分は、炭素原子間に二重結合や三重結合のような不飽和結合を有しないものである。すなわち、(A)成分の炭素原子同士は飽和結合(単結合)により結合されている。炭素原子間に不飽和結合を有すると、経時的に酸化されることで弾性を失って脆くなる。
さらに(A)成分は、エポキシ価が0.2〜0.8eq/kgであることが好ましい。エポキシ価が0.2eq/kgより小さいと、(B)成分や(C)成分の熱硬化性樹脂と反応するエポキシ基が少なくなることにより、(A)成分の熱可塑性が強くなるので、パッケージの耐熱性が低下するおそれがある。逆にエポキシ価が0.8eq/kgより大きいと、(A)成分と(B)成分及び(C)成分とが相溶してしまい、これにより積層板(金属張積層板及びプリント配線板)のガラス転移温度が低下して、パッケージの耐熱性が悪化するおそれがある。
上記のような(A)成分が樹脂組成物に含有されていると、この樹脂組成物の硬化物が吸湿しにくくなることによって、積層板の耐湿性を高めることができ、絶縁信頼性を向上させることができると考えられる。
また、本実施形態の樹脂組成物におおける(A)成分の含有量は、樹脂組成物が上述したような特性を有している限り特に限定はされないが、前記樹脂組成物の樹脂固形分100質量%に対し、1〜60質量%で含有されていることが好ましい。(A)成分がこのような範囲で配合されていることにより、耐熱性及び絶縁信頼性の優れた積層板を製造する事が可能である。
〔(B)成分:ポリアリーレンエーテル共重合体(PAE)〕
本実施形態の樹脂組成物に含まれ得る(B)成分、ポリアリーレンエーテル共重合体としては、上述の(A)成分と相溶するものであれば特に限定はない。
具体的には、例えば、数平均分子量(Mn)が500〜2000であるポリアリーレンエーテル共重合体を用いることが好ましく、前記数平均分子量(Mn)は650〜1500であることがより好ましい。前記分子量が500以上であれば、硬化物の耐熱性として充分なものが得られ、また、分子量が2000以下であれば、確実に(A)成分と相溶すると考えられ、かつ硬化が進むと(C)成分と反応しやすい。また、溶融粘度が高くなり過ぎず、充分な流動性を得ることができる。
なお、本実施形態における、前記(B)ポリアリーレンエーテル共重合体の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等を用いて測定することができる。
また、前記(B)成分は、分子末端にフェノール性水酸基を1分子当たり平均1.5〜3個有するポリアリーレンエーテル共重合体であることが好ましい。さらには、分子末端にフェノール性水酸基を1分子当たり平均1.8〜2.4個有することがより好ましい。前記末端水酸基数が平均1.5〜3個であれば、後述の(C)成分であるエポキシ樹脂のエポキシ基との反応性を十分に得ることができ、硬化物の耐熱性により優れ、かつ、樹脂組成物の保存性も良好となり、誘電率及び誘電正接も低く抑えることができると考えられる。
なお、本実施形態において前記(B)成分の水酸基数は、使用する前記ポリアリーレンエーテルの製品の規格値からわかる。前記末端水酸基数としては、具体的には、例えば、前記(B)成分1モル中に存在する全てのポリアリーレンエーテル共重合体の1分子あたりの水酸基の平均値を表した数値等が挙げられる。
さらには、前記(B)成分の25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度が0.03〜0.12dl/gであることが好ましく、0.06〜0.095dl/gであればより好ましい。前記固有粘度の範囲であれば、硬化物の耐熱性を向上させ、かつ充分な流動性を得ることができるため、成形不良をより抑制することもできると考えられる。
なお、ここでの前記固有粘度も、使用する前記ポリアリーレンエーテル共重合体の製品の規格値からわかる。また、ここでの固有粘度は、25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度であり、より具体的には、例えば、0.18g/45mlの塩化メチレン溶液(液温25℃)を、粘度計で測定した値等である。前記粘度計としては、例えば、Schott社製のAVS500 Visco System等が挙げられる。
前記(B)成分のポリアリーレンエーテル共重合体としては、具体的には、例えば、2,6−ジメチルフェノールと2官能フェノールまたは3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなるポリアリーレンエーテル共重合体や、ポリ(2,6−ジメチル−1,4フェニレンオキサイド)等のポリフェニレンエーテルを主成分とするもの等が挙げられる。また、前記2官能フェノールとしては、例えば、テトラメチルビスフェノールA等が挙げられる。
より具体的な前記(B)成分であるポリアリーレンエーテル共重合体としては、例えば、下記一般式(1)に示す構造を有するポリアリーレンエーテル共重合体等が挙げられる。
Figure 2016196556
上記式(1)中、m,nは、前記溶融粘度の範囲内になるような重合度であればよい。具体的には、mとnとの合計値が1〜30であることが好ましい。また、mが0〜20であることが好ましく、nが0〜20であることが好ましい。このような構成のポリアリーレンエーテル共重合体を用いることにより、誘電特性及び硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が確実に得られる。
前記ポリアリーレンエーテル共重合体は、例えば、国際公開2007/067669号パンフレット記載の方法などによって製造することができる。また、前記ポリアリーレンエーテル共重合体として、市販のものを用いることも可能であり、例えば、SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA−90」などを使用することができる。
〔(C)成分:エポキシ樹脂〕
本実施形態の(C)成分として使用され得るエポキシ樹脂は、好ましくは、1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ樹脂である。
なお、ここでのエポキシ基数は、使用する前記エポキシ樹脂の製品の規格値からわかる。前記エポキシ樹脂のエポキシ基数としては、具体的には、例えば、前記エポキシ樹脂1モル中に存在する全ての前記エポキシ樹脂の1分子あたりのエポキシ基の平均値を表した数値等が挙げられる。
具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ブロム含有エポキシ樹脂、これらの水素添加型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
好ましくは、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を用いる。このようなエポキシ樹脂を用いることによって、高Tgおよび高耐熱性をより確実に得ることができ、また、(A)成分と相分離しやすく、硬化物の弾性を下げることができる。
より好ましくは、ナフタレン環含有エポキシ樹脂を用いることであり、それにより、上記特性をより確実に達成できると考えられる。ナフタレン環含有エポキシ樹脂としては、市販のものを使用することが可能であり、例えば、DIC社製の「HP9500」「HP4710」または「HP6000」などを具体例として挙げることができる。
また樹脂組成物において、前記(A)成分と(B)成分と(C)成分の質量比は、樹脂組成物が上述したような特性を有している限り特に限定はされないが、前記(A)、(B)および(C)成分の合計を100質量%とした場合、前記(A)成分が1〜60質量%であることが好ましい。(A)成分がこのような範囲で配合されていることにより、(A)成分がこのような範囲で配合されていることにより、耐熱性及び絶縁信頼性に優れた積層板を製造する事が可能である。
また、本実施形態の樹脂組成物を調製するにあたっての各成分のそれぞれの混合比率は、適宜調節することが可能である。例えば、樹脂組成物においては、(B)成分と(C)成分の質量の和と(A)成分の質量の比は、99:1〜40:60であることが望ましい。(B)成分の質量比は、誘電特性の観点から、(A)、(B)および(C)成分の合計を100質量%とした場合、30〜90質量%であることが望ましい。また、耐熱性の観点から(B)成分と(C)成分の質量比は、B成分の水酸基当量に対する、C成分のエポキシ当量の比((C)成分のエポキシ当量/(B)成分の水酸基当量)が1.0〜4.0となるようになれば好ましい。
〔(D)成分:無機充填材〕
本実施形態の(D)成分として使用される無機充填材としては、例えば、平均粒径0.01〜0.9μmの球状シリカを少なくとも1種と、平均粒径1.0〜5.0μmの球状シリカを少なくとも1種とを含む無機充填材と使用することが好ましい。
このように、比較的大きなサイズの球状シリカと、比較的小さなサイズの球状シリカを両方含有することによって、フィラー最大配合量を多くできると考えられる。最大配合量が多くなることで、1種のみ含有する場合と同量のフィラー量を入れると、全体体積当たりのフィラー体積が減るために、樹脂流れ性に優れたプリプレグを得ることができる。さらに、樹脂流れ性に優れていることにより、回路充填性にも優れることとなり、微細な回路などを形成する際に非常に有利となる。
また、比較的大きなサイズのシリカは小さいものに比べ表面積が小さくなるため、シリカ(無機物)と樹脂(有機物)との界面が少なくなり、比較的大きなサイズのシリカと比較的小さなサイズのシリカを併用することで、密着性(ピール強度)の向上に加え、樹脂流れ性および回路充填性に優れつつ、耐燃性、耐熱性や耐デスミア性(耐薬品性)にも優れたプリプレグを得ることができると考えられる。
さらには、前記樹脂組成物中のサイズの球状シリカと、比較的小さなサイズの球状シリカの配合量について特に限定はないが、前記樹脂組成物が、無機充填材として、比較的大きさサイズ、すなわち、平均粒径1.0〜5.0μmの球状シリカを無機充填材全量に対し50質量%〜95質量%含んでいることが好ましい。
それにより、上述した樹脂流れ性や回路充填性により優れ、かつ、密着性(ピール強度)、耐燃性、耐熱性やデスミア性をより確実に発揮するプリプレグを提供することができると考えられる。
特に好ましい配合比としては、平均粒径1.0〜5.0μmの球状シリカ:平均粒径0.01〜0.9μmの球状シリカが9:1〜7:3の範囲で含まれていることが好ましい。
それぞれの球状シリカ(前記大きい球状シリカと前記小さい球状シリカのそれぞれ)のサイズについては、特定のサイズのものを単独で用いても、異なる2つ以上のサイズのものを組み合わせて使用してもよい。
ここで、本実施形態における球状シリカの平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布計で測定した値をさす。
本実施形態の樹脂組成物における(D)成分(無機充填材)の配合量は、樹脂組成物中の樹脂成分(上述の(A)、(B)および(C)成分)の合計を100質量%として、前記無機充填材が合計で30〜300質量%の範囲で含有されていることが好ましい。なお、前記無機充填材の配合量が30質量%未満になると、耐燃性が低下し、CTEや誘電正接が増加し、弾性率も低下するおそれがあり、一方で、300質量%を超えると、樹脂流れ性・回路充填性が低下することに加えて、銅箔ピール強度が低下、デスミア量が増加するおそれがある。
本実施形態で使用する無機充填材は表面処理されていてもよく、例えば、エポキシシラン処理、イソシアネートシラン処理、ビニルシラン処理、フェニルアミノシラン処理、フェニルシラン処理、メタクリルシラン処理、アミノシラン処理、カチオニックシラン処理等で表面処理された球状シリカを使用することも可能である。
〔その他〕
また、本実施形態の樹脂組成物は、上記(A)〜(D)成分に加え、さらにその他の成分を含有していてもよく、例えば、硬化促進剤をさらに含有してもよい。硬化促進剤としては、特に限定されるものではない。例えば、イミダゾール類及びその誘導体、有機リン系化合物、オクタン酸亜鉛等の金属石鹸類、第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩等を用いることができる。また、樹脂組成物には、光安定剤、粘度調整剤、及び難燃剤等を含有していてもよい。
〔プリプレグ〕
上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、並びに(D)成分、そして必要に応じて硬化促進剤を配合することによって樹脂組成物を調製することができ、さらにこれを溶剤で希釈することによって樹脂組成物のワニスを調製することができる。このようなプリプレグであれば、優れた密着性(ピール強度)と低CTEに加え、耐燃性、耐熱性、耐デスミア性等を兼ね備えた積層板やプリント配線板を製造できる。
具体的には、例えば、まず、前記樹脂組成物のうちの、有機溶媒に溶解できる各成分を、有機溶媒に投入して溶解させる。この際、必要に応じて、加熱してもよい。その後、必要に応じて用いられ、有機溶媒に溶解しない成分、例えば、無機充填材等を添加して、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミル等を用いて、所定の分散状態になるまで分散させることにより、ワニス状の樹脂組成物が調製される。ここで用いられる有機溶媒としては、特に限定されない。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン及びキシレン等の芳香族系溶剤、ジメチルホルムアミド等の窒素含有溶剤等が挙げられる。
得られた樹脂ワニスを用いてプリプレグを製造する方法としては、例えば、得られた樹脂ワニスを繊維質基材に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。すなわち、本実施形態に係るプリプレグは、前記樹脂ワニスを繊維質基材に含浸させて得られたものである。
プリプレグを製造する際に用いられる織布基材としては、具体的には、例えば、ガラスクロス、アラミドクロス、ポリエステルクロス、ガラス不織布、アラミド不織布、ポリエステル不織布、パルプ紙、及びリンター紙等が挙げられる。なお、ガラスクロスを用いると、機械強度が優れた積層板が得られ、特に偏平処理加工したガラスクロスが好ましい。偏平処理加工としては、具体的には、例えば、ガラスクロスを適宜の圧力でプレスロールにて連続的に加圧してヤーンを偏平に圧縮することにより行うことができる。なお、織布基材の厚みとしては、例えば、10〜200μmのものを使用できる。
樹脂ワニスの織布基材への含浸は、浸漬及び塗布等によって行われる。この含浸は、必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。また、この際、組成や濃度の異なる複数の樹脂ワニスを用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする組成及び樹脂量に調整することも可能である。
樹脂ワニスが含浸された織布基材は、所望の加熱条件、例えば、120〜190℃で3〜15分間加熱されることにより半硬化状態(Bステージ)のプリプレグが得られる。
〔金属張積層板およびプリント配線板〕
本実施形態に係る金属張積層板は、前記プリプレグに金属箔を積層して、加熱加圧成型して得られたものである。このような金属張積層板であれば、優れた密着性(ピール強度)と低CTEに加え、耐燃性、耐熱性、耐デスミア性等を兼ね備えたプリント配線板を製造できる。
本実施形態のプリプレグを用いて金属張積層板を作製する具体的な方法としては、例えば、プリプレグを一枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面又は片面に銅箔等の金属箔を重ね、これを加熱加圧成形して積層一体化することによって、両面金属箔張り又は片面金属箔張りの積層体を作製する方法などが挙げられる。
そして、作製された積層体の表面の金属箔をエッチング加工等して部分的に除去し、回路形成をすることによって、積層体の表面に回路として導体パターンを設けたプリント配線板を得ることができる。あるいは、前記プリプレグを硬化させた後、アディティブ法によってメッキでその上に回路を形成してプリント配線板を得ることもできる。
本明細書は、上述したように、様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
本発明の一態様に係るプリプレグは、樹脂組成物を織布基材に含浸させ、加熱乾燥して形成されるプリプレグであって、前記樹脂組成物が、重量平均分子量が1万〜50万であるアクリルゴムを含むことを特徴とする。
そのような構成によれば、優れた誘電特性と、ピール強度を兼ね備え、かつ反りを低減できるプリプレグを提供することができる。
さらに、前記プリプレグにおいて、前記アクリルゴムが、前記樹脂組成物の樹脂固形分100質量%に対し、1〜60質量%で含有されていることが好ましい。それにより、上述したような効果をより確実に得ることができる。
また、前記樹脂組成物が、さらに、無機充填材として、平均粒径0.01〜0.9μmの球状シリカを少なくとも1種と、平均粒径1.0〜5.0μmの球状シリカを少なくとも1種とを含むことが好ましい。それにより、上記効果に加え、樹脂流れ性や回路充填性に優れると共に、密着性(ピール強度)、耐燃性、耐熱性や耐デスミア性を備えたプリプレグを提供することができると考えられる。
また、本発明の他の一態様に係る金属張積層板は、前記プリプレグに金属箔を積層して、加熱加圧成型して得られることを特徴とする。そして、本発明の他の一態様に係るプリント配線板は、上述の金属張積層板の表面の金属箔を部分的に除去することにより回路形成して得られる。
このような構成によれば、優れた誘電特性と、ピール強度を兼ね備え、かつ反りを低減できる金属張積層板ひいてはプリント配線板を提供することができる。
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
まず、本実施例において、樹脂組成物を調製する際に用いた各成分について説明する。
(A成分・アクリルゴム)
・アクリルゴム1:アクリルゴム、ナガセケムテックス社製「SG−P3」(前記構造式(I)(II)で表される繰り返し単位を有し、式(II)中、R1が水素原子、R2がブチル基及び/又はエチル基。エポキシ価0.2eq/kg、Mw85万)(主モノマー:アクリル酸メチル(EA)/アクリル酸ブチル(BA)/アクリロニトリル(AN))
・アクリルゴム2:アクリルゴム、ナガセケムテックス社製「SG−P3改225−Mw7」(前記構造式(II)で表される繰り返し単位を有し、式(II)中、R1が水素原子及び/又はメチル基、R2がメチル基及び/又はエチル基。エポキシ価0.2eq/kg、Mw1万)(主モノマー:アクリル酸メチル(MA)/EA/メタクリル酸メチル(MMA))
・アクリルゴム3:アクリルゴム、ナガセケムテックス社製「SG−P3改225−Mw6」(前記構造式(II)で表される繰り返し単位を有し、式(II)中、R1が水素原子及び/又はメチル基、R2がメチル基及び/又はエチル基。エポキシ価0.2eq/kg、Mw2万)(主モノマー:アクリル酸メチル(MA)/EA/メタクリル酸メチル(MMA))
・アクリルゴム4:アクリルゴム、ナガセケムテックス社製「SG−P3改225−Mw5」(前記構造式(II)で表される繰り返し単位を有し、式(II)中、R1が水素原子及び/又はメチル基、R2がメチル基及び/又はエチル基。エポキシ価0.2eq/kg、Mw5万)(主モノマー:アクリル酸メチル(MA)/EA/メタクリル酸メチル(MMA))
・アクリルゴム5:アクリルゴム、ナガセケムテックス社製「SG−P3改225−Mw4」(前記構造式(II)で表される繰り返し単位を有し、式(II)中、R1が水素原子及び/又はメチル基、R2がメチル基及び/又はエチル基。エポキシ価0.2eq/kg、Mw10万)(主モノマー:アクリル酸メチル(MA)/EA/メタクリル酸メチル(MMA))
・アクリルゴム6:アクリルゴム、ナガセケムテックス社製「SG−P3改225−Mw3」(前記構造式(II)で表される繰り返し単位を有し、式(II)中、R1が水素原子及び/又はメチル基、R2がメチル基及び/又はエチル基。エポキシ価0.2eq/kg、Mw30万)(主モノマー:アクリル酸メチル(MA)/EA/メタクリル酸メチル(MMA))
・アクリルゴム7:エポキシ変性アクリルゴム、ナガセケムテックス株式会社製「SG−P3改225」(前記構造式(II)で表される繰り返し単位を有し、式(II)中、R1が水素原子及び/又はメチル基、R2がメチル基及び/又はエチル基。エポキシ価0.2eq/kg、Mw65万)(主モノマー:アクリル酸メチル(MA)/EA/メタクリル酸メチル(MMA))
・アクリルゴム8:アクリルゴム、ナガセケムテックス社製「SG−P3改225−Mw2」(前記構造式(II)で表される繰り返し単位を有し、式(II)中、R1が水素原子、メチル基、R2がメチル基、エチル基。エポキシ価0.2eq/kg、Mw80万)(主モノマー:アクリル酸メチル(MA)/EA/メタクリル酸メチル(MMA))
(B成分・PAE)
・PAE1:SABICイノベーティブプラスチックス社製のSA90(数平均分子量1500、水酸基:1.9個、末端水酸基濃度:1270μmol/g)
(C成分・エポキシ樹脂)
・ナフタレン型エポキシ樹脂:DIC社製「HP9500」
(球状シリカ・無機充填材)
・球状シリカ1(平均粒径2μm):エポキシシランで表面処理された球状シリカSC6500−SED(株式会社アドマテックス製)
・球状シリカ2(平均粒径0.5μm):エポキシシランで表面処理された球状シリカSC2500−SEJ(株式会社アドマテックス製)
(硬化促進剤)
・2E4MZ:2−エチル−4−イミダゾール(四国化成工業株式会社製)
・オクタン酸亜鉛:DIC株式会社製「Zn−OCTOATE」
<試験例1>
[実施例1]
(プリプレグ)
まず、ポリアリーレンエーテル共重合体(PAE)とトルエンとを混合させて、その混合液を80℃になるまで加熱することによって、ポリアリーレンエーテル共重合体をトルエンに溶解させて、ポリアリーレンエーテル共重合体の50質量%トルエン溶液を得た。その後、そのポリアリーレンエーテル共重合体のトルエン溶液に、表1に記載の配合割合になるように、エポキシ樹脂およびアクリルゴムを添加した後、30分間攪拌することによって、完全に溶解させた。そして、さらに、硬化促進剤や無機充填材を添加して、ボールミルで分散させることによって、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)が得られた。
プリプレグには、織布基材として、日東紡績株式会社製の♯1078タイプ、WEA1078のガラスクロスを用いた。そして、上記の樹脂ワニスを織布基材に硬化後の厚みが60μmとなるように含浸させると共に、これを半硬化状態となるまで110℃で3分間加熱乾燥することによってプリプレグを得た。
(金属張積層板)
上記のプリプレグの両側に厚さ12μmの銅箔(古河電気工業株式社製のGT)を配置して被圧体とし、温度220℃、圧力40kg/cmの条件で120分加熱・加圧して両面に銅箔が接着された、厚み0.06mmの銅張積層板を得た。
[実施例2〜5、比較例1〜4]
アクリルゴムの種類と配合を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてプリプレグおよび金属張積層板を得た。
上記のようにして得られたそれぞれ積層板を評価用サンプルとして用いて、以下に示す方法により各種評価試験を行った。
〔評価〕
(外層銅箔密着強度(ピール強度))
銅箔張積層板において、絶縁層からの銅箔の引き剥がし強さをJIS C 6481に準拠して測定した。幅10mm、長さ100mmのパターンを形成し、引っ張り試験機により50mm/分の速度で引き剥がし、その時の引き剥がし強さ(ピール強度)を測定し、得られたピール強度を、銅箔密着強度とした。測定単位はkN/mである。
(内層銅箔密着強度(ピール強度))
銅箔張積層板において、絶縁層からの内層処理銅箔の引き剥がし強さをJIS C 6481に準拠して測定した。幅10mm、長さ100mmのパターンを形成し、引っ張り試験機により50mm/分の速度で引き剥がし、その時の引き剥がし強さ(ピール強度)を測定し、得られたピール強度を内層銅箔密着強度とした。測定単位はkN/mである。
(CTE(熱膨張率))
上記の銅箔積層板の銅箔を除去したものを試料とし、樹脂硬化物のガラス転移温度未満の温度における、面方向の熱膨張係数を、JIS C 6481に従ってTMA法(Thermo−mechanical analysis)により測定した。測定には、TMA装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「TMA6100」)を用いた。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2016196556
表1や図1〜3の結果より、本発明のプリプレグを用いることにより、優れた密着性を有し、かつ反りを低減できるプリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板を提供できることがわかった。特に、アクリルゴムの分子量が30万より小さい実施例1〜4では、各評価において非常に優れた結果を示した。
これに対し、本発明の範囲よりも高い重量平均分子量を有するアクリルゴムを使用した比較例1〜3やアクリルゴムを含んでいない比較例4の評価サンプルにおいては、密着性(各ピール強度)およびCTEのいずれにおいても劣る結果となった。
また、実施例1〜4と実施例5との比較により、より低分子量のアクリルゴムを使用することにより、さらにより優れた本発明の効果を達成できることが示された。

Claims (5)

  1. 樹脂組成物を織布基材に含浸させ、加熱乾燥して形成されるプリプレグであって、
    前記樹脂組成物が、重量平均分子量が1万〜50万であるアクリルゴムを含む、プリプレグ。
  2. 前記アクリルゴムが、前記樹脂組成物の樹脂固形分100質量%に対し、1〜60質量%で含有されている、請求項1に記載のプリプレグ。
  3. 前記樹脂組成物が、さらに、無機充填材として、平均粒径0.01〜0.9μmの球状シリカを少なくとも1種と、平均粒径1.0〜5.0μmの球状シリカを少なくとも1種とを含む、請求項1又は2に記載のプリプレグ。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグに金属箔を積層して、加熱加圧成形して得られることを特徴とする金属張積層板。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグを用いたプリント配線板。
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