JP2016192923A - 判定装置、判定システム、判定プログラム、細胞の製造方法、及び細胞 - Google Patents
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また、細胞の培養状態の評価の分野に限らず、様々な観察物体を撮像した画像から、観察物体の状態を評価する技術は、様々な分野で重要な技術となっている。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。初めに、図1を参照して、本発明の実施形態による判定システム1の構成について説明する。
図1は、本実施形態の判定システム1の構成の概要を示す模式図である。判定システム1は、判定装置10と、表示部20と、位相差顕微鏡装置30とを備える。
位相差顕微鏡装置30は、観察対象である被検体Sに照明光Lを照射し、この被検体Sからの透過光Lpの位相差を明暗差に変換することによって得られた被検体Sの拡大像を得る。この位相差顕微鏡装置30の具体的な構成について説明する。
ステージ36は、被検体Sが載置される載置面36aを有している。また、ステージ36は、その面内において互いに直交する2つの方向(図1中に示すX軸方向及びY軸方向)に移動操作される。これにより、被検体Sの観察位置を任意に変更することが可能となっている。さらに、ステージ36は、高さ方向(図1中に示すZ軸方向)に移動操作される構成であってもよい。
具体的に、この第2の空間光変調素子41は、被検体Sからの透過光Lpのうち、被検体Sを通過した直接光(0次光)を4分の1波長(±90°)だけ位相がずれた状態で透過させる位相変調領域41aと、この位相変調領域41aの周囲に被検体Sで回折した回折光をそのままの位相(0°)で透過させる回折光透過領域41bとを有している。
ここで、位相差顕微鏡装置30の被検体S、すなわち判定システム1の判定対象の細胞の具体例について説明する。この一例において、被検体Sとは、染色処理された細胞である。この染色処理について、細胞が動物細胞である場合を一例にして説明する。染色処理においては、例えばトリパンブルーなどの色素が細胞に滴下される。死細胞の細胞膜には損傷があるため、生細胞に比べて色素が細胞内部に浸透しやすい。このため、トリパンブルーは、生細胞と死細胞とのうち、死細胞に選択的に浸透する。つまり、トリパンブルーによって細胞を染色した場合、生細胞は染色されずに、死細胞は青色に染色される。この青色に染色された細胞数を計数することにより、死細胞の数を算定することができる。
なお、ここでは染色処理の一例として、トリパンブルーによる染色について説明したが、これに限られない。生細胞と死細胞とを選択的に染め分けられる色素であれば、トリパンブルー以外の色素によって染色してもよい。
次に、判定装置10の構成について図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態の判定装置10の機能構成を示すブロック図である。判定装置10は、制御部11と、記憶部12とを備えている。
記憶部12には、細胞の生死判定に用いられる判定プログラムと、位相差顕微鏡装置30の制御プログラムとが予め記憶されている。
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)を備えており、記憶部12に記憶されている制御プログラムに従って、位相差顕微鏡装置30の各部を駆動する。この制御部11による位相差顕微鏡装置30の制御の具体的な内容については、既知であるため、その説明を省略する。
画像取得部111は、位相差顕微鏡装置30によって撮像された位相差画像を取得する。
フィルタ部112は、画像取得部111が取得する位相差画像に対して、フィルタ処理を行う。このフィルタ処理には、位相差画像に対して画素値の積分処理及び微分処理が含まれる。この積分処理によって、位相差画像の色むらが平滑化される。また微分処理によって位相差画像の画素値が急変するエッジ部分が強調される。また、このフィルタ部112は、位相差画像に含まれる細胞の外形を示す画像を抽出する。以下の説明において、このフィルタ部112が抽出する細胞の外形を示す画像を、細胞領域ROIとも記載する。
判定部113は、画像取得部111が取得した位相差画像に含まれる細胞の画像に基づいて、細胞が生細胞と死細胞とのいずれであるかを判定する。この判定部113が行う判定処理の詳細について、図3から図7を参照して説明する。
図3は、本実施形態の制御部11による処理の流れの一例を示す流れ図である。
画像取得部111は、位相差顕微鏡装置30によって撮像された位相差画像を取得する(ステップS10)。このステップS10において取得される位相差画像の一例を、図4(A)に示す。
図4(A)中、例えば細胞C1の例では、図面上やや濃い色で表現されている輪帯状部(一部途切れている部分あり)が細胞膜存在領域であると推測される部位である。
図5は、本実施形態の判定部113による生細胞の判定例を示す模式図である。判定部113が、ある生細胞の画像PCell1について判定する場合の一例を、図5(A)に示す。画像PCell1とは、生細胞が撮像された位相差画像である。この画像PCell1には、細胞核Cnと、細胞膜Cmと、細胞質Cyとの各画像が含まれる。なお、この図5(A)においては、位相差画像の位相差Δpが大きい部分を黒く、位相差Δpが小さい部分を白くして、位相差Δpを示す。
また、判定ラインJL上の、細胞膜Cmを示す位置x3から細胞質Cyを示す位置x4の間において、位相差Δpの変化曲線W1がしきい値ThL1以下になるように、変化曲線W1としきい値ThL1とが交差する。この位置x3と位置x4との間における、変化曲線W1としきい値ThL1との交点は、細胞膜Cmの内周部の位置を示している。
つまり、変化曲線W1としきい値ThL1との2つの交点は、細胞膜Cmの外周部の位置と、内周部の位置とを示している。
次に、上述したステップS40及びステップS50において、判定部113による判定対象の細胞が死細胞である場合について、図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態の判定部113による死細胞の判定例を示す模式図である。判定部113が、ある死細胞の画像PCell2について判定する場合の一例を、図6(A)に示す。画像PCell2とは、死細胞が撮像された位相差画像である。この画像PCell2においては、細胞核Cnと、細胞膜Cmと、細胞質Cyとが判別困難な状態である。なお、この図6(A)においては、上述した図5(A)と同様に、位相差画像の位相差Δpが大きい部分を黒く、位相差Δpが小さい部分を白くして、位相差Δpを示す。
また、判定ラインJL上の、位置x2から位置x6の間において、位相差Δpの変化曲線W2がしきい値ThL1以下にならない。これは、生細胞において、位相差Δpの変化曲線W2がしきい値ThL1以下になるのと相違する。
また本実施形態では、フィルタ部112で抽出した特定部位である細胞領域ROIの情報と上記とは異なる部位の特定領域である細胞膜の画像情報とを用い、細胞膜の長さまたは面積、細胞面積に着目し、例えば細胞の生死判定等の物体の状態判定を行うことが可能である。
まず、図4(A)の細胞C1を例に説明する。
細胞C1について上記と同様の処理を実施し、図4(B)に示すように細胞領域ROI1を抽出する。この細胞領域ROI1には、図4(A)で判るように図面上やや濃い色で表現されている輪帯状部(一部途切れている部分あり)で図示されている細胞膜と推測される外側領域に白くにじんだ領域のハロ領域(ノイズ成分)が存在する。このハロ領域は、細胞は存在していない領域である。したがって、ハロ領域を削除することで細胞C1の輪郭を抽出することが可能となる。この輪郭は細胞膜の外側の壁部分と仮定できる。このハロ領域の特定は位相差画像の輝度情報を基に画像認識により行うことが可能である。または、細胞種毎に予めハロ領域の寸法情報、例えば、ハロ領域の外周部から細胞内部に向かうハロが存在する長さ情報を記憶しておき、この情報を基にハロ領域を除くことも可能である。このようにハロ領域を除いた細胞C1の輪郭は細胞膜の外周部に相当が存在する領域であると定義でき、細胞C1の細胞膜の全周を測定することが可能となる。
次に上記と同様の処理を実施し、図4(C)に示すように例えば細胞C1を対象にした場合、細胞膜の画像CT11〜CT14を認識し、抽出する。この細胞膜の画像CT11〜CT14の周方向の長さに着目する。上記の様に細胞膜の全周の長さは測定可能となっている。この細胞膜の全周の長さに対する細胞膜の画像CT11〜CT14の長さの和の割合(比)を算出することで細胞の生死判定の基準とすることが可能である。この基準は、細胞種によっても異なる。したがって、細胞種毎に生死判定基準値を予め記憶しておき、この基準値を満たすか否かでの判断を行うことも可能である。また、上記の例では細胞膜全周の長さに対する実際の細胞膜の長さの割合で生死判断を行ったがこれに限定されるものではい。例えば実際の細胞膜の長さの絶対値によっても生死判定することが可能である。この場合、細胞種や培養条件等毎の生死判定基準を予め定め、これに従って判定することも可能である。
更に、細胞の面積と細胞膜の面積を用い判定することも可能である。
この例では、まず、上記と同様の処理により図4(B)に示すようにフィルタ部112により、細胞領域ROIを抽出する(ステップS30)。次に細胞領域ROIの面積を算出する。例えば細胞C1を対象にした場合、細胞領域ROI1の面積を算出する。次に上記と同様に細胞膜の画像CT11〜CT14を認識し、抽出する。この細胞膜の画像CT11〜CT14の面積に着目し、面積を算出する。この細胞膜の画像CT11〜CT14の面積の和と細胞領域ROI1の面積の割合(比)を算出することで細胞の生死判定の基準とすることが可能である。この基準は、細胞種によっても異なる。したがって、細胞種毎に生死判定基準値を予め記憶しておき、この基準値を満たすか否かでの判断を行うことも可能である。また、例えば実際の細胞膜の面積の絶対値によっても生死判定することが可能である。この場合、細胞種や培養条件等毎の生死判定基準を予め定め、これに従って判定することも可能である。
上記のような細胞膜、細胞領域の長さや面積は、例えば撮像素子のピクセルを用い、ピクセル数をもとに算出することが可能である。
本願発明は、培養された複数の細胞の中から、少なくとも1つの細胞を抜き取り、上記のような画像解析を行うことが可能であることから抜き取られた検査細胞以外の培養中の細胞に対しては悪影響を及ぼすことなく細胞状態を判定することが可能である。
本発明に適用可能な観察物は、本実施例で説明したような細胞に限られるものではなく、例えば幹細胞や神経細胞、心筋細胞、皮膚細胞、肝細胞、血液細胞、免疫細胞等の各種細胞のほか、微生物等の生物や組織等に適用可能であり、位相差観察が可能な観察物全般に適用可能である。
また、細胞の生死判定に限らず、分化状態、分化時期、スクリーニングにおける薬効、毒性等の細胞状態判定に用いることができる。また。細胞に限らず、微生物の成育状態、機能検出にも応用可能である。このようなスクリーニング、薬品の毒性試験、薬効試験または再生医療の処理工程に本願発明の状態判定方法を採用することにより、より効率的なスクリーニング、効率的な薬品の製造、または効率的な再生細胞の作製を行うことが可能となる。
また、本願発明の方法をプログラミングした制御装置により観察装置を駆動させることで観察対象となる物体の状態を判定可能な観察装置、スクリーニング装置、細胞培養装置を構築することも可能である。
上述したように、生細胞と、死細胞とでは、判定ラインJL上の位相差Δpの変化曲線が相違する。判定部113は、この位相差Δpの変化曲線が、生細胞を示す変化曲線(例えば、図5(B)に示す変化曲線W1)であれば、判定対象の細胞を生細胞であると判定する。また、判定部113は、この位相差Δpの変化曲線が、死細胞を示す変化曲線(例えば、図6(B)に示す変化曲線W2)であれば、判定対象の細胞を死細胞であると判定する。
具体例として、判定対象の細胞が生細胞の場合について説明する。図5(B)に示すように、位置x1から位置x6の範囲において、変化曲線W1としきい値ThL1との交点の個数は、2個である。この場合、判定部113は、変化曲線W1としきい値ThL1との交点の個数を、2個であると算出する。
また他の具体例として、判定対象の細胞が死細胞の場合について説明する。図6(B)に示すように、位置x1から位置x6の範囲において、変化曲線W2としきい値ThL1との交点の個数は、1個である。この場合、判定部113は、変化曲線W2としきい値ThL1との交点の個数を、1個であると算出する。
なお、ここまで判定部113がしきい値ThL1に基づいて判定する場合を一例にして説明したが、これに限られない。判定部113は、しきい値ThL2に基づいて、細胞の生死を判定してもよい。このしきい値ThL2によれば、図5(B)に示すように、細胞膜Cmによる位相差Δpの変化に加え、細胞核Cnによる位相差Δpの変化をも検出することができる。
図7は、本実施形態の変形例における位相差Δpの変化曲線の一例を示す模式図である。ここで、図7(A)に示す変化曲線W3とは、図5(A)に示す生細胞の変化曲線W1を反転させた曲線である。また、図7(B)に示す変化曲線W4とは、図6(A)に示す生細胞の変化曲線W2を反転させた曲線である。
Claims (12)
- 位相差観察により観察された観察物体の位相差画像を撮像する画像取得部と、
撮像された前記位相差画像中の観察物体における特定領域の位相差情報をもとに前記観察物体の状態を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする判定装置。 - 前記位相差画像中の観察物体における特定領域は、少なくとも2つの異なる部位の特定領域であり、前記判定部は、前記異なる部位の特定領域の位相差情報をもとに前記観察物体の状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
- 前記判定部は、前記異なる部位の特定領域の位相差情報を比較することで前記観察物体の状態を判定することを特徴とする請求項2に記載の判定装置。
- 前記判定部での判定に関わる前記位相差情報は、前記観察物体の特定部位の形態に関わる情報であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の判定装置。
- 前記位相差情報は前記特定部位の長さおよび面積の少なくとも何れか1つの情報であることを特徴とする請求項4に記載の判定装置。
- 前記判定部は、取得された前記位相差画像中のノイズ成分を除外する処理を行い決定された特定領域の位相差情報基に判定することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の判定装置。
- 前記観察物体は、細胞標本であり、
前記特定領域は、細胞領域と前記細胞領域内に存在する細胞膜であることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の判定装置。 - 前記判定部は、前記位相差画像より決定された細胞膜の全周の長さと、前記位相差画像で認識された細胞膜の長さとを比較した値によって細胞標本の状態を判定することを特徴とする請求項7に記載の判定装置。
- 観察物体を位相差撮像することにより位相差画像を生成する位相差撮像部と、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の判定装置と、
前記判定装置の判定結果を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする判定システム。 - コンピュータに、
観察物体を位相差撮像することにより位相差画像を生成する位相差撮像手順と、
前記位相差撮像手順において生成された前記位相差画像中の観察物体における特定領域の位相差情報に基づいて、前記観察物体の状態を判定する判定手順と、
を実行させるための判定プログラム。 - 細胞を位相差撮像することにより位相差画像を生成する位相差撮像手順と、
前記位相差撮像手順において生成された前記位相差画像に含まれる前記細胞を示す細胞画像の径方向に、前記細胞の細胞膜を示す位相差の変化に基づいて、前記細胞が生細胞と死細胞とのいずれであるかを判定する判定手順と、
を有することを特徴とする細胞の製造方法。 - 請求項11に記載の細胞の製造方法により製造された細胞。
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