JP2016192572A - 太陽電池モジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前面封止材シート3及び裏面封止材シート5は、密度0.940g/cm3以下の低密度ポリエチレンを含有し、少なくとも裏面封止材シート5のゲル分率は0%であり、裏面封止材シート5のポリスチレン換算による重量平均分子量と、前面封止材シート3の重量平均分子量との比が、0.5以上1.0未満である太陽電池モジュール1とする。
【選択図】図2A
Description
図1は、本発明の一実施形態である太陽電池モジュール1について、その層構成の一例を示す断面図である。太陽電池モジュール1は、入射光の受光面側から、透明前面基板2、前面封止材シート3、太陽電池素子4、裏面封止材シート5、及び裏面保護シート6が順に積層されている。特に太陽電池素子4は、その受光面側に配置される前面封止材シート3とその裏面側に配置される裏面封止材シート5によって挟持されている態様で積層されている点に構成上の特長がある。
前面封止材シート3及び裏面封止材シート5(以下、両者を併せて、「封止材シート」とも言う)は、以下に詳細を説明する封止材組成物を、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、即ち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により製膜して、シート状又はフィルム状としたものである。尚、本発明におけるシート状とはフィルム状も含む意味であり両者に差はない。以下、封止材組成物、前面封止材シート、裏面封止材シートのそれぞれについて順次詳細を説明する。
本発明の封止材シートの材料となる封止材組成物は、下記に詳細を説明する低密度ポリエチレンをベース樹脂とし、その他、架橋剤、架橋助剤等を任意の成分として含有するものである。本発明の封止材シートは、前面封止材シート3の重量平均分子量を裏面封止材シート5の重量平均分子量よりも大きくしたものである。又、それらの重量平均分子量の比も所定の範囲に調整したものであることが好ましい。
封止材組成物の主剤樹脂としては、密度が0.940g/cm3以下の低密度ポリエチレン(LDPE)、好ましくは直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いる。直鎖低密度ポリエチレンはエチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、本発明においては、その密度が0.940g/cm3以下の範囲内、好ましくは0.900g/cm3以下の範囲内、又、特に透明性を高める観点から、より好ましくは0.870〜0.890g/cm3の範囲である。
本発明に係る封止材シートは、架橋処理を必須とはしないが、封止材組成物には、必要に応じて適量の架橋剤を含有させてもよい。これにより、封止材シートに製膜中においてゲルの発生しない範囲のごく限定的な架橋を進行させることによって耐熱性を向上させたり、或いは、電離放射線の照射を行った後の透明性を向上させる効果を得ることができる。この場合、架橋剤は特に限定されない。具体的には、各種の有機過酸化物、アゾ化合物、シラノール縮合触媒等を挙げることができる。これらは1種類でも2種以上を組み合わせてもよい。
本発明においては炭素−炭素二重結合及び/又はエポキシ基を有する多官能モノマーを架橋助剤として用いてもよい。好ましくは、多官能モノマーの官能基がアリル基、(メタ)アクリレート基、ビニル基であるものが用いられる。本発明においてはこの架橋助剤が低密度ポリエチレンの結晶性を低下させ透明性を維持する。
封止材シートに架橋剤又は架橋助剤を添加する場合には、ラジカル重合開始剤としての架橋剤等と、それをクエンチするラジカル吸収剤とを併用することにより、架橋の程度を調整してゲル分率を調整することができる。具体的なラジカル吸収剤としては、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤や、ヒンダードアミン系の耐候安定化等が例示できる。ラジカル吸収剤の含有量は、封止材組成物中に0.01質量%以上3質量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下の範囲である。この範囲内であれば適度に架橋反応を抑制できる。
封止材組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、封止材シートに耐候性を付与するための耐候性マスターバッチ、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。これらの含有量は、その粒子形状、密度等により異なるものではあるが、それぞれ封止材組成物中に0.001質量%以上5質量%以下の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、太陽電池モジュール用封止材組成物に対して、長期に亘って安定した機械強度や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
前面封止材シート3及び裏面封止材シート5は、いずれも、上記の封止材組成物を、その融点を超える温度で溶融成形することによって製膜し、製膜後の封止材シートにそれぞれ異なる条件で電離放射線の照射を行うことによって、それぞれ重量平均分子量を最適の値にまで増大させて、相対的に重量平均分子量の大きい前面封止材シート3と、相対的に重量平均分子量の小さい裏面封止材シート5とすることによって得ることができる。尚、本明細書における封止材シートの分子量とは、当該封止材シート内各部で分子量の値にバラツキがある場合には、当該封止材シート全体での分子量の平均値のことを言うものとする。
本発明の太陽電池モジュールを構成する封止材シートは、以下の製造方法によって製造することができる。
封止材組成物の溶融成形による製膜を、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、即ち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により行う。その際、成形温度の下限は封止材組成物の融点を超える温度であればよく、上限は使用する架橋剤の1分間半減期温度に応じて、製膜中に架橋が開始しない温度であればよく、それらの範囲内であれば特に限定されない。本発明の太陽電池モジュール用封止材シートの製造方法においては、先に説明した通り、従来よりも1分間半減期温度の高い架橋剤を使用することができるため、成形温度を従来よりも高温に設定することにより、押出機等にかかる負荷を低減し、封止材シートの生産性を高めることが可能である。
シート化工程後の予備封止材シートに、適切な条件で電離放射線を照射することによって分子量を増大させる処理を行う。この工程によって、前面封止材シートと、裏面封止材シートの重量平均分子量とそれらの比を本願特有の所定の範囲内に最適化することができる。
上記の封止材シートの製造方法によって製造した前面封止材シート3を太陽電池素子4の受光面側に、又、裏面封止材シート5を太陽電池素子4の裏面側にそれぞれ配置して、両封止材シートによって太陽電池素子4を挟持する態様とし、更に、透明前面基板2、裏面保護シート6等のその他の部材を順次積層してから、真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。
下記の材料からなる封止材組成物を混合して溶融し、常法Tダイ法により厚さ400μmとなるように220℃での押し出し成形により成膜し、それぞれ下記の封止材シート1〜3とするための予備封止材シートを形成した。
下記の2種のLLDPE(樹脂M1又はM2)のいずれか75質量部と、シラン変性ポリエチレン系樹脂(樹脂S)25質量部を、表1に示す通りの配合でそれぞれ混合溶融したものを各封止材組成物のベース樹脂とした。
:ポリエチレン系樹脂(LLDPE):エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm3、MFR3g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。ポリスチレン換算の数平均分子量100000。
LLDPE(樹脂M2)
:ポリエチレン系樹脂(LLDPE):エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.900g/cm3、MFR2g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。ポリスチレン換算の数平均分子量120000。
シラン変性ポリエチレン系樹脂(樹脂S)
:エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm3、190℃でのメルトマスフローレート(MFR)が3g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、98質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得た、密度0.884g/cm3、MFRが2g/10minであるシラン変性ポリエチレン系樹脂。ポリスチレン換算の数平均分子量110000。
(架橋剤)
架橋剤として、2,5ジメチル2,5ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(アルケマ吉富株式会社製、商品名ルペロックス101)を用い、封止材シート1及び2の封止材組成物のみに0.03質量部添加した。
(その他の添加剤)
UV吸収剤(ケミプロ化成株式会社製、商品名KEMISORB12)を封止材シート1〜3の封止材組成物に、0.25質量部添加した。
耐候安定剤(チバ・ジャパン株式会社製、商品名Tinuvin770)を封止材シート1〜3の封止材組成物に、0.6質量部添加した。
酸化防止剤(チバ・ジャパン株式会社製、商品名Irganox1076)を封止材シート1〜3の封止材組成物に、0.05質量部添加した。
測定機種:Wataers製GPC/V2000、
カラム:Shodex AT−G+AT−806MS×2本
溶離液:o−ジクロロベンゼン(0.3%BHT入り)
温度:カラム及びインジェクター 145℃
濃度:約1.0g/L
流速1.0ml/min
溶解性:完全溶解
検出器:示差屈折計(RI)
又、上記の封止材シート1〜3をそれぞれ受光面側に配置する前面封止材シート或いは、裏面側に配置する裏面封止材シートとして用いて、実施例、比較例の太陽電池モジュール評価用試料を下記表2に示す構成で製造した。
<熱ラミネート条件> (a)真空引き:5.0分
(b)加圧(0kPa〜100kPa):1.5分
(c)圧力保持(100kPa):15.0分
(d)温度150℃
(太陽電池素子)
多結晶シリコン基板を用いて作製する結晶シリコン太陽電池素子。集電のための電極が採光面側に配置されているもの。(Q−CELLS社製、セルQ6LTT−200/1520 156mm)
実施例及び比較例の太陽電池モジュール評価用試料を用いて、太陽電池素子の反りから発生するマイクロクラックについて測定した。その結果を表2に示す。尚、試験条件は以下の通りである。
(評価基準)
A=マイクロクラック発生数が0〜2
B=マイクロクラック発生数が3〜7
C=マイクロクラック発生数が8以上
2 透明前面基板
3 前面封止材シート
4 太陽電池素子
5 裏面封止材シート
6 裏面保護シート
Claims (5)
- 太陽電池素子と、
前記太陽電池素子の受光面側に配置される前面封止材シートと、
前記太陽電池素子の裏面側に配置される裏面封止材シートと、を備え、
前記前面封止材シート及び前記裏面封止材シートは、密度0.940g/cm3以下の低密度ポリエチレンを含有し、
少なくとも前記裏面封止材シートのゲル分率は0%であり、
前記裏面封止材シートのポリスチレン換算による重量平均分子量と、前記前面封止材シートの前記重量平均分子量との比が、0.5以上1.0未満である太陽電池モジュール。 - 前記裏面封止材シートのポリスチレン換算による重量平均分子量と、前記前面封止材シートの前記重量平均分子量との比が、0.6以上0.85未満である請求項1に記載の太陽電池モジュール。
- 前記裏面封止材シートのポリスチレン換算による重量平均分子量と、前記前面封止材シートの前記重量平均分子量との比が、0.7以上0.8未満である請求項1に記載の太陽電池モジュール。
- 前記低密度ポリエチレンが密度0.890g/cm3以下の低密度ポリエチレンである請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
- 請求項1から4のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法であって、
密度0.940g/cm3以下の低密度ポリエチレンを含有する封止材組成物をシート状に成形して、予備封止材シートを得るシート化工程と、
前記予備封止材シートに、電離放射線の照射により、分子量を増大させて、前面封止材シート又は裏面封止材シートを得る電離放射線照射工程と、
前記前面封止材シートと前記裏面封止材シートの間に太陽電池素子が挟持されている構成部分を含む積層体を、熱ラミネート処理により一体化するモジュール化工程を備え、
前記前面封止材シート及び前記裏面封止材シートは、いずれも同一組成の封止材組成物からなるものであり、且つ、前記電離放射線の照射の条件を異なる条件とすることによって、前記前面封止材シートのポリスチレン換算重量平均分子量を、前記裏面封止材シートの該分子量よりも大きくしたものであることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
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