JP2016192572A - 太陽電池モジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】太陽電池モジュール用の封止材シートとして好ましい物性と高い生産性を有する熱可塑系のポリエチレン封止材シートを用いた太陽電池モジュールであって、且つ、太陽電池素子の反りを十分に防ぐことのできる太陽電池モジュールを提供すること。
【解決手段】前面封止材シート3及び裏面封止材シート5は、密度0.940g/cm以下の低密度ポリエチレンを含有し、少なくとも裏面封止材シート5のゲル分率は0%であり、裏面封止材シート5のポリスチレン換算による重量平均分子量と、前面封止材シート3の重量平均分子量との比が、0.5以上1.0未満である太陽電池モジュール1とする。
【選択図】図2A

Description

本発明は、太陽電池モジュールに関する。
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源としての太陽電池が注目されている。現在、種々の形態からなる太陽電池モジュールが開発され、提案されている。一般に太陽電池モジュールは、透明前面基板と太陽電池素子と裏面保護シートとが、封止材シートを介して積層された構成である。
図1に例示するように、太陽電池モジュール1は、入射光の受光面側から、透明前面基板2、前面封止材シート3、太陽電池素子4、裏面封止材シート5、及び裏面保護シート6が順に積層されており、太陽電池素子4はその受光面側に配置される前面封止材シート3と、その裏面側に配置される裏面封止材シート5に挟持される態様で配置されている。
ここで、太陽電池モジュール1が太陽光を受光していない状態では、図2Aに示すように、前面封止材シート3及び裏面封止材シート5(以下、両者を総称して、単に「封止材シート」とも言う)に挟持されている太陽電池素子4の受光面側における応力aは、太陽電池素子4の裏面側における応力bと概ね等しい。
しかし、太陽電池モジュール1が太陽光を受光している状態、即ち、一般的な太陽電池モジュールの使用状態においては、太陽電池素子4の受光面側の温度が太陽電池素子4の裏面側の温度よりも高くなる。これに伴って、裏面封止材シート5よりも、前面封止材シート3が大きく熱膨張する。前面封止材シート3は、太陽電池素子4よりも大きい熱膨張係数を有するため、図2Bに示す通り、太陽電池素子4の受光面側における応力aは、太陽電池素子4の裏面側における応力bよりも小さくなる。
このように、太陽電池素子4が太陽光を受光している状態においては、応力a及び応力bの間に、図2Bに示すような不均衡が生じ、そのような応力の不均衡に起因して、太陽電池素子4に反りが生じてしまうことが問題となっていた。
このような太陽電池素子の反りを防ぐための太陽電池モジュールとして、封止材シートの硬度を高めるために、封止材シートに架橋剤を添加する技術が提案さている(特許文献1参照)。
又、更に、反り防止の効果を高めるために、前面封止材シート3と、裏面封止材シート5との間において、それぞれの封止材の架橋度に差をつけることによって、上記の応力の不均衡を吸収して、太陽電池素子の反りを防止する太陽電池モジュールも提案されている(特許文献2)。
一方、太陽電池モジュール用の封止材シートとしては、従来、透明性や流動性の面からEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)を主として、架橋剤を含有する構成の封止材を用いたものが広く用いられてきた(特許文献3参照)。そして、それらの封止材シートは、未架橋で製膜され、モジュール化工程等、製膜後のいずれかの工程において、加熱等によって架橋されることを前提としていた。
しかし、EVAには、水蒸気バリア性が劣るという基本的な欠点があり、又、近年の太陽電池の高出力化に伴い、極性基のあるEVAは、電気抵抗値が不十分であるという問題も顕在化するようになってきた。
そこでEVAに代わる材料として、ポリエチレン樹脂を用いることが考えられる。但し、製膜後の架橋処理を必須とする架橋系のポリエチレン系樹脂は、架橋速度が遅く、モジュール化工程での真空加熱加圧(熱ラミネート)時間が非常に多くかかり生産性が悪いという欠点があった。
そこで、その問題を解決するため、製膜後、モジュール化時等において架橋処理が不要である熱可塑系のポリエチレン封止材シートの開発が行われている。
特開平11−61055号公報 特開2007−294868号公報 特開2009−135200号公報
ここで、特許文献1及び2に記載の太陽電池モジュールは、封止材シートとして、特許文献3に記載のEVA封止材シート等、製膜後の工程における架橋処理を必須とする架橋系の封止材シートを用いることを前提としている。
水蒸気バリア性や電気抵抗の面で優れ、生産性も高い熱可塑系のポリエチレン封止材シートを用いた太陽電池モジュールについては、実質的に架橋処理を行わないものであり、上記の太陽電池素子の反りの問題を解決する効果的な解決手段が未だ見出せずにいた。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、太陽電池モジュール用の封止材シートとして好ましい物性と高い生産性を有する熱可塑系のポリエチレン封止材シートを用いた太陽電池モジュールであって、且つ、太陽電池素子の反りを十分に防ぐことのできる太陽電池モジュールを提供することにある。
本発明者らは、太陽電池素子4の受光面側に配置される前面封止材シート3と、太陽電池素子4の裏面側に配置される裏面封止材シート5の分子量とその分子量の比に着目し、それらを最適化することによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1) 太陽電池素子と、前記太陽電池素子の受光面側に配置される前面封止材シートと、前記太陽電池素子の裏面側に配置される裏面封止材シートと、を備え、前記前面封止材シート及び前記裏面封止材シートは、密度0.940g/cm以下の低密度ポリエチレンを含有し、少なくとも前記裏面封止材シートのゲル分率は0%であり、前記裏面封止材シートのポリスチレン換算による重量平均分子量と、前記前面封止材シートの前記重量平均分子量との比が、0.5以上1.0未満である太陽電池モジュール。
(2) 前記裏面封止材シートのポリスチレン換算による重量平均分子量と、前記前面封止材シートの前記重量平均分子量との比が、0.6以上0.85未満である(1)に記載の太陽電池モジュール。
(3) 前記裏面封止材シートのポリスチレン換算による重量平均分子量と、前記前面封止材シートの前記重量平均分子量との比が、0.7以上0.8未満である(1)に記載の太陽電池モジュール。
(4) 前記低密度ポリエチレンが密度0.890g/cm以下の低密度ポリエチレンである(1)から(3)のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法であって、密度0.940g/cm以下の低密度ポリエチレンを含有する封止材組成物をシート状に成形して、予備封止材シートを得るシート化工程と、前記予備封止材シートに、電離放射線の照射により、分子量を増大させて、前面封止材シート又は裏面封止材シートを得る電離放射線照射工程と、前記前面封止材シートと前記裏面封止材シートの間に太陽電池素子が挟持されている構成部分を含む積層体を、熱ラミネート処理により一体化するモジュール化工程を備え、前記前面封止材シート及び前記裏面封止材シートは、いずれも同一組成の封止材組成物からなるものであり、且つ、前記電離放射線の照射の条件を異なる条件とすることによって、前記前面封止材シートのポリスチレン換算重量平均分子量を、前記裏面封止材シートの該分子量よりも大きくしたものであることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
本発明によれば、熱可塑系のポリエチレン封止材シートを用いた太陽電池モジュールであって、且つ、太陽電池素子の反りを十分に防ぐことのできる太陽電池モジュールを提供することができる。
本発明の封止材シートを用いた太陽電池モジュールについて、その層構成の一例を示す断面図である。 太陽光等が照射していない状態における太陽電池モジュール内の太陽電池素子に働く応力の態様についての説明に供する模式図である。 太陽光等が照射している場合における太陽電池モジュール内の太陽電池素子に働く応力と反りの態様についての説明に供する模式図である。
本発明の太陽電池モジュールは、重量平均分子量をそれぞれ異なる相対的範囲に最適化した前面封止材シート及び裏面封止材シートを、それぞれ、太陽電池モジュール内における特定の位置に配置した点に主たる特徴がある。まず、太陽電池モジュールの全体構成及びその製造方法について説明し、後に、封止材層を構成するそれぞれの封止材シートの詳細について説明し、更に、その他の構成部材について説明する。
<太陽電池モジュール>
図1は、本発明の一実施形態である太陽電池モジュール1について、その層構成の一例を示す断面図である。太陽電池モジュール1は、入射光の受光面側から、透明前面基板2、前面封止材シート3、太陽電池素子4、裏面封止材シート5、及び裏面保護シート6が順に積層されている。特に太陽電池素子4は、その受光面側に配置される前面封止材シート3とその裏面側に配置される裏面封止材シート5によって挟持されている態様で積層されている点に構成上の特長がある。
本明細書において、太陽電池素子とは、光導電効果及び/又は光起電力効果によって光を受けて電流を発生させる最小構成単位の意であり、例えば、10cm×10cm角〜20cm×20cm角のものが挙げられる。本明細書においては、太陽電池素子において主に光を受ける側の面となる一の面を受光面といい、受光面とは反対側の他の面を裏面というものとする。又、太陽電池モジュールとは、この太陽電池素子が複数連結されて構成されているものをいい、例えば、太陽電池素子を10〜50枚程度連結した、0.5m×0.5m角〜2.0m×2.0m角程度のものを挙げることができる。尚、本明細書では太陽電池モジュールの中には、モジュールの集合体である太陽電池パネルを含むものとする。
太陽電池モジュール1は、前面封止材シート3として、裏面封止材シート5よりも、ポリスチレン換算による重量平均分子量(以下、単に「重量平均分子量」と言う)が、相対的に大きな封止材シートを配置した点に主たる特長がある。
ここで、封止材シートは、加熱時の流動性について、重量平均分子量が大きいほど流動しにくくなるという特性を有する。よって、相対的に重量平均分子量の大きな前面封止材シート3は、裏面封止材シート5よりも、重量平均分子量が大きい分、同程度の高温下において、相対的に熱膨張しにくいものとなる。よって、図2Bのように受光面側からの太陽光線Sの照射によって、前面封止材シート3の温度が、裏面封止材シート5の温度より高温になった場合であっても、両封止材シートの間の重量平均分子量の差によって、上述の応力の不均衡が相殺されることになる。その結果、本発明の太陽電池モジュール1によれば、前面封止材シート3が裏面封止材シート5よりも大きく温度上昇した場合であっても、図2Aに示す状態のように、太陽電池素子4の上下において働く応力が、尚、均衡した状態を保つことができ、これにより、太陽電池素子4の反りを防止することができる。尚、これらの封止材シートの詳細については別途後述する。
前面封止材シート3と裏面封止材シート5以外の部材である透明前面基板2、裏面保護シート6については、従来公知の材料を特に制限なく使用することができる。透明前面基板2としてはガラス等、又、裏面保護シート6については、ETFE、耐加水PET等の樹脂シート等を用いることができる。尚、本発明の太陽電池モジュール1は、上記部材以外の部材を含んでもよい。
太陽電池素子4についても特に制限はないが、単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板を用いて作製する結晶シリコン太陽電池に限らず、アモルファスシリコンや微結晶シリコン、或いはカルコパイライト系の化合物等を用いてなる薄膜系太陽電池(CIGS)が好ましく用いられ、太陽電池モジュールの構成としては、従来の前面コンタクトタイプはもちろん、特に、非受光面側に極性が異なる複数の電極が設けられたバックコンタクト型の太陽電池素子について、も好ましく用いることができる。
上記のうちでも、太陽電池素子4として、メタルラップスルー(MWT)方式、或いはエミッタラップスルー(EWT)方式等のバックコンタクト型の太陽電池素子を特に好ましく用いることができる。これらのバックコンタクト型の太陽電池素子を用いた太陽電池モジュールにおいては、非受光面側に設けられた電極間を絶縁して短絡を防止する必要がある。太陽電池モジュール1は、太陽電池素子4の非受光面側と接する裏面封止材シート5として、絶縁性の高いポリエチレン系樹脂からなる裏面封止材シート5を用いるものであるため、太陽電池素子4としてバックコンタクト型の太陽電池素子を特に好ましく用いることができる。
<封止材シート>
前面封止材シート3及び裏面封止材シート5(以下、両者を併せて、「封止材シート」とも言う)は、以下に詳細を説明する封止材組成物を、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、即ち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により製膜して、シート状又はフィルム状としたものである。尚、本発明におけるシート状とはフィルム状も含む意味であり両者に差はない。以下、封止材組成物、前面封止材シート、裏面封止材シートのそれぞれについて順次詳細を説明する。
[封止材組成物]
本発明の封止材シートの材料となる封止材組成物は、下記に詳細を説明する低密度ポリエチレンをベース樹脂とし、その他、架橋剤、架橋助剤等を任意の成分として含有するものである。本発明の封止材シートは、前面封止材シート3の重量平均分子量を裏面封止材シート5の重量平均分子量よりも大きくしたものである。又、それらの重量平均分子量の比も所定の範囲に調整したものであることが好ましい。
重量平均分子量の異なる前面封止材シート3と裏面封止材シート5とを、それぞれ異なる封止材組成物から製造することもできるが、本発明の製造方法によれば、それらのいずれの封止材シートをも、同一組成の封止材組成物から製造することもできる。その場合には、同一の封止材組成物を製膜し、製膜後に電離放射線の照射によって、それぞれの封止材シートの重量平均分子量を適宜最適範囲に調整すればよい。
(低密度ポリエチレン)
封止材組成物の主剤樹脂としては、密度が0.940g/cm以下の低密度ポリエチレン(LDPE)、好ましくは直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いる。直鎖低密度ポリエチレンはエチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、本発明においては、その密度が0.940g/cm以下の範囲内、好ましくは0.900g/cm以下の範囲内、又、特に透明性を高める観点から、より好ましくは0.870〜0.890g/cmの範囲である。
尚、封止材組成物の成形後に、電離放射線の照射を行うことにより、ベースとなる低密度ポリエチレンの密度がこのような低密度範囲であっても、封止材シートに十分な耐熱性を付与することができる。このため、上記範囲のような低密度であっても好適に使用することができる。
本発明においてはメタロセン系直鎖低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。メタロセン系直鎖低密度ポリエチレンは、シングルサイト触媒であるメタロセン触媒を用いて合成されるものである。このようなポリエチレンは、側鎖の分岐が少なく、コモノマーの分布が均一である。このため、分子量分布が狭く、上記のような超低密度にすることが可能であり封止材シートに対して柔軟性を付与できる。柔軟性が付与される結果、封止材シートと裏面保護シート6等のその他の部材との密着性が高まり、太陽電池モジュール1内への水分の浸入を抑えることができる。
直鎖低密度ポリエチレンのα−オレフィンとしては、好ましくは分枝を有しないα−オレフィンが好ましく使用され、これらの中でも、炭素数が6〜8のα−オレフィンである1−ヘキセン、1−ヘプテン又は1−オクテンが特に好ましく使用される。α−オレフィンの炭素数が6以上8以下であることにより、封止材シートに良好な柔軟性を付与することができるとともに良好な強度を付与することができる。
尚、原料とする低密度ポリエチレンの分子量は特に限定されない。但し、一例としては、上記のメタロセン系直鎖低密度ポリエチレンの場合で、ポリスチレン換算による数平均分子量(以下、単に、「数平均分子量(Mn)」とも言う)で、30000から100000g/mol程度、重量平均分子量で70000から300000g/mol程度であり、分散度が1.4〜2.6程度であることが好ましい。尚、ここで、分散度とは、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)のことを言う。原料とする低密度ポリエチレンの分子量及び分子量分布が、この程度の範囲にある場合に、後述の電離放射線照射によって分子量を適宜変化させることによって、太陽電池モジュール用の封止材シートとして好ましい諸々の物性を備えたものとすることが容易に可能となる。尚、分子量の測定は、THF等の溶媒に溶解して、従来公知のGPC法により測定することができる。
低密度ポリエチレンのショアD硬度は、80度以下であることが好ましく、15度以上40度以下であることが好ましく、15度以上35度以下であることがより好ましい。直鎖低密度ポリエチレンのショアD硬度が上記の範囲であることにより、封止材シートの柔軟性を維持することができる。又、直鎖低密度ポリエチレンのMFRは、190℃において0.5g/10分以上40g/10分以下であることが好ましく、2g/10分以上40g/10分以下であることがより好ましい。MFRが上記の範囲であることにより、製膜時の加工適性に優れる。
封止材組成物には、更に、シラン変性ポリエチレン系樹脂を含有させてもよい。シラン変性ポリエチレン系樹脂は、主鎖となる直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)等に、エチレン性不飽和シラン化合物を側鎖としてグラフト重合してなるものである。このようなグラフト共重合体は、接着力に寄与するシラノール基の自由度が高くなるため、太陽電池モジュールにおける他の部材への封止材の密着性を向上することができる。
シラン変性ポリエチレン系樹脂は、例えば、特開2003−46105号公報に記載されている方法で製造でき、当該樹脂を太陽電池モジュールの封止材組成物の成分として使用することにより、強度、耐久性等に優れ、且つ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、その他の諸特性に優れ、更に、太陽電池モジュールを製造する加熱圧着等の製造条件に影響を受けることなく極めて優れた熱融着性を有し、安定的に、低コストで、種々の用途に適する太陽電池モジュールを製造し得る。
直鎖低密度ポリエチレンとグラフト重合させるエチレン性不飽和シラン化合物として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリカルボキシシランより選択される1種以上を使用することができる。
エチレン性不飽和シラン化合物の含量であるグラフト量は、後述するその他のポリエチレン系樹脂を含む封止材組成物中の全樹脂成分の合計100質量部に対して、例えば、0.001〜15質量部位、好ましくは、0.01質量部以上5質量部位、特に好ましくは、0.05質量部以上2質量部位となるように適宜調整すればよい。本発明において、エチレン性不飽和シラン化合物の含量が多い場合には、機械的強度及び耐熱性等に優れるが、含量が過度になると、引っ張り伸び及び熱融着性等に劣る傾向にある。
封止材組成物には、更に、無水マレイン酸変性に代表されるような酸変性ポリエチレン系樹脂を含有させてもよい。酸変性ポリエチレン系樹脂は、例えば、主鎖となる直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)等に、無水マレイン酸等を側鎖としてグラフト重合してなるものである。このようなグラフト重合体は、接着力に寄与する酸の部分の極性が高く、太陽電池モジュールにおける金属部材への封止材シートの接着性を向上することができる。
封止材組成物に含まれる低密度ポリエチレンの含有量は、封止材組成物中の全樹脂成分の合計100質量部に対して、好ましくは10質量部以上99質量部以下、より好ましくは50質量部以上99質量部以下であり、更に好ましくは90質量部以上99質量部以下である。封止材組成物の融点が80℃未満となる範囲内であれば他の樹脂を含んでいてもよい。これらは、例えば添加用樹脂として用いてもよく、後述のその他の成分をマスターバッチ化するために使用してもよい。
(架橋剤)
本発明に係る封止材シートは、架橋処理を必須とはしないが、封止材組成物には、必要に応じて適量の架橋剤を含有させてもよい。これにより、封止材シートに製膜中においてゲルの発生しない範囲のごく限定的な架橋を進行させることによって耐熱性を向上させたり、或いは、電離放射線の照射を行った後の透明性を向上させる効果を得ることができる。この場合、架橋剤は特に限定されない。具体的には、各種の有機過酸化物、アゾ化合物、シラノール縮合触媒等を挙げることができる。これらは1種類でも2種以上を組み合わせてもよい。
架橋剤は公知のものが使用でき特に限定されず、例えば公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐パーオキシ)ヘキシン‐3等のジアルキルパーオキサイド類;ビス‐3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o‐メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシオクトエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシフタレート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン‐3、t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物、又は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジクミルパーオキサイド、といったシラノール縮合触媒等を挙げることができる。これらは1種類でも2種以上を組み合わせてもよい。具体的には、太陽電池モジュール作製の真空加熱ラミネーション工程におけるファストキュア法(真空加熱ラミネーションのみで封止材を高架橋させ、約150から160℃で30分から1時間静置し封止材を後架橋させるキュア工程を省略する方法)への適応の点からt‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(TBEC)が好ましく用いられる。
尚、従来、電離放射線の照射を行う場合には、熱架橋処理の場合と異なり、有機過酸化物等の架橋剤は不要と考えられていた。しかし、本発明に用いられる封止材組成物は、電離放射線の照射を行うものでありながら、尚、少量の架橋剤を含有することが好ましい。この架橋剤の添加により、電離放射線の照射による耐熱性の向上とともに透明性の向上も可能となるからである。電離放射線の照射による架橋処理における架橋剤の作用は定かでないが、電離放射線はエネルギーが強いので架橋が進行するが、HAZEの要因となる結晶はある温度以上にならないとほぐれず架橋に関与せず残るためであると推定される。
本発明の封止材組成物への架橋剤の添加量は、封止材組成物中に0.01質量%以上1.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上0.7質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上0.5質量%以下であることが更に好ましい。封止材組成物への架橋剤の添加量をこの範囲とすることにより、耐熱性、密着性に加えて、透明性においても特に優れた封止材シートとすることができる。この場合において、架橋剤の含有量が0.01質量%未満であると透明性向上の効果が不充分であり、0.7質量%を超えると、押し出し時の負荷が高くなり、成形中にゲルが発生する等して製膜性が低下し、透明性も低下する。尚、本発明の封止材シートは、電離放射線の照射による架橋処理を行うことによって得ることができるものであるが、この場合、架橋材の添加量は、従来の熱架橋の場合と異なり、架橋材の添加量が、0.5質量%未満であっても充分な耐熱性を得ることができる。これにより、封止材組成物のシート化工程における封止材組成物のゲル化による生産性低下のリスクが低減でき、又、架橋剤の使用量削減によって製造コストを下げることもできる。
(架橋助剤)
本発明においては炭素−炭素二重結合及び/又はエポキシ基を有する多官能モノマーを架橋助剤として用いてもよい。好ましくは、多官能モノマーの官能基がアリル基、(メタ)アクリレート基、ビニル基であるものが用いられる。本発明においてはこの架橋助剤が低密度ポリエチレンの結晶性を低下させ透明性を維持する。
具体的には、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート等のポリアリル化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート等のポリ(メタ)アクリロキシ化合物、二重結合とエポキシ基を含むグリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル及びエポキシ基を2つ以上含有する1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物を挙げることができる。これらは単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
上記のなかでも、低密度ポリエチレンに対する相溶性が良好で、架橋によって結晶性を低下させ透明性を維持し、低温での柔軟性を付与する観点からTAICが好ましく使用できる。又、シランカップリング剤との反応性の観点から1,6−ヘキサンジオールジアクリレートも好ましく使用することができる。
架橋助剤を添加する場合、その含有量としては、封止材組成物中に0.01質量%以上3質量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下の範囲である。この範囲内であれば電離放射線の照射によっても実質的な架橋反応は起こらず、封止材シートのゲル分率を0%に維持することができる。
(ラジカル吸収剤)
封止材シートに架橋剤又は架橋助剤を添加する場合には、ラジカル重合開始剤としての架橋剤等と、それをクエンチするラジカル吸収剤とを併用することにより、架橋の程度を調整してゲル分率を調整することができる。具体的なラジカル吸収剤としては、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤や、ヒンダードアミン系の耐候安定化等が例示できる。ラジカル吸収剤の含有量は、封止材組成物中に0.01質量%以上3質量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下の範囲である。この範囲内であれば適度に架橋反応を抑制できる。
(その他の成分)
封止材組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、封止材シートに耐候性を付与するための耐候性マスターバッチ、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。これらの含有量は、その粒子形状、密度等により異なるものではあるが、それぞれ封止材組成物中に0.001質量%以上5質量%以下の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、太陽電池モジュール用封止材組成物に対して、長期に亘って安定した機械強度や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
更に、封止材組成物に用いられる他の成分としては上記以外に、シランカップリング剤等の接着性向上剤、核剤、分散剤、レベリング剤、可塑剤、消泡剤、難燃剤等を挙げることができる。
[封止材シート]
前面封止材シート3及び裏面封止材シート5は、いずれも、上記の封止材組成物を、その融点を超える温度で溶融成形することによって製膜し、製膜後の封止材シートにそれぞれ異なる条件で電離放射線の照射を行うことによって、それぞれ重量平均分子量を最適の値にまで増大させて、相対的に重量平均分子量の大きい前面封止材シート3と、相対的に重量平均分子量の小さい裏面封止材シート5とすることによって得ることができる。尚、本明細書における封止材シートの分子量とは、当該封止材シート内各部で分子量の値にバラツキがある場合には、当該封止材シート全体での分子量の平均値のことを言うものとする。
電離放射線の照射条件の詳細については、個別の条件は特に限定されない。トータルな処理結果として、それぞれの封止材シートの重量平均分子量が下記の通りの本発明の規定する所定範囲となるように適宜設定すればよい。
尚、電離放射線の照射は必ずしも必須ではない。同処理によらずとも重量平均分子量が本発明の所定範囲に調整されている封止材シートであれば、必ずしも電離放射線の照射によって重量平均分子量を増大させた封止材シートでなくとも、本発明の太陽電池モジュールの構成材料となりうる。
本発明の太陽電池モジュール1を構成する封止材シートは、前面封止材シート3の重量平均分子量が、裏面封止材シート5の重量平均分子量よりも大きいことを特徴とする。又、裏面封止材シート5の重量平均分子量と前面封止材シートの重量平均分子量との比が、0.5以上1.0未満であることが好ましい。又、この比は、0.6以上0.85未満であることがより好ましい。
前面封止材シート3と裏面封止材シート5の重量平均分子量の比が、0.5以上1.0未満の範囲にあれば、後に実施例において示す通り、太陽電池モジュール1内における太陽電池素子4の反りの発生を十分に抑制して、素子の破損を防ぐことができる。
本発明の封止材シートは、前面封止材シート3と裏面封止材シート5の重量平均分子量の相対的な比が上記範囲にあればよく、各封止材シートの分子量の絶対値については、特に限定されない。
又、本発明の封止材シートは、電離放射線の照射によって分散度を高めたものである。そのような特有の分散度を有する低密度ポリエチレン系の封止材は、従来の熱架橋処理では得ることできず、電離照射線の照射による架橋処理によって得ることができるものである。電離照射線の照射による架橋処理によれば、従来の熱架橋の場合と異なり、封止材中で架橋が進行する一方で分解反応も不規則に同時進行するという電離照射線の照射による架橋反応特有の反応が進むためである。このような特有の分散度を有する本発明の封止材シートは、従来品よりも優れた耐熱性と凹凸追従性、及び、透明性を備える封止材シートとなっている。
ここで、分子量の測定は、THF等の溶媒に溶解して、従来公知のGPC法により測定することができる。そして、封止材シート中に分子量Mi(g/mol)のポリマーがNi(個)ある場合の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分散度dは、それぞれ以下の式によって定義されるものである。
数平均分子量 Mn=Σ(MiNi)/ΣNi
重量平均分子量 Mw=Σ(MiNi)/ΣMiNi
分散度 d=Mw/Mn
本発明の封止材シートは、そのゲル分率については、成形後架橋処理前、架橋処理後、及びモジュール化後の状態までも含めて、全ての段階でゲル分率が0%に維持されていることを特長とする。ゲル分率を0%に維持することにより、モジュール化時に上下に積層される他部材の凹凸に対する凹凸追従性を高めて、又、熔融押出時の負荷を低減して安定的に高い生産性で封止材シートを生産することができる。
尚、封止材シートへ電離放射線を照射する上記処理によれば、封止材シートのゲル分率0%に維持したまま、分子量を上述のような分子量範囲とすることができる。
一方、上記ゲル分率が0%であっても、樹脂の密度、MFR、架橋剤、架橋助剤の含有量、架橋方法等を適宜最適化することにより、ズリ応力を高めて流動防止を達することができる。
ここで、ゲル分率(%)とは、封止材シート0.1gを樹脂メッシュに入れ、キシレンにて加熱還流により、12時間抽出したのち、樹脂メッシュごと取出し乾燥処理後秤量し、抽出前後の質量比較を行い残留不溶分の質量%を測定しこれをゲル分率としたものである。尚、「ゲル分率0%」とは、上記残留不溶分が実質的に0であり、封止材組成物の架橋反応が実質的に開始していない状態であることを言う。より具体的には、本発明における「ゲル分率0%」とは、上記残留不溶分が全く存在しない場合、及び、精密天秤によって測定した上記残留不溶分の質量%が0.05質量%未満である場合を言うものとする。
封止材シートの厚さは、200μm以上600μm以下が好ましく、200μm未満であると充分に衝撃を緩和することができず、又、絶縁性も不十分となるので好ましくない。又、600μmを超えてもそれ以上の効果が得られず、不経済であるので好ましくない。
[封止材シートの製造方法]
本発明の太陽電池モジュールを構成する封止材シートは、以下の製造方法によって製造することができる。
(シート化工程)
封止材組成物の溶融成形による製膜を、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、即ち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により行う。その際、成形温度の下限は封止材組成物の融点を超える温度であればよく、上限は使用する架橋剤の1分間半減期温度に応じて、製膜中に架橋が開始しない温度であればよく、それらの範囲内であれば特に限定されない。本発明の太陽電池モジュール用封止材シートの製造方法においては、先に説明した通り、従来よりも1分間半減期温度の高い架橋剤を使用することができるため、成形温度を従来よりも高温に設定することにより、押出機等にかかる負荷を低減し、封止材シートの生産性を高めることが可能である。
尚、シート化工程を経た予備封止材シートの分子量は特に限定されないが、一例として、数平均分子量が80000g/mol以上120000g/mol以下であり、重量平均分子量が150000g/mol以上250000g/mol以下であることが好ましい。このような分子量範囲にある予備封止材シートに、電離放射線を照射することによって、低ゲル分率、且つ、それぞれ所定の分子量範囲にまで分子量を増大させた本発明の太陽電池モジュールを構成しうる前面封止材シート又は裏面封止材シートを好ましい態様において製造することができる。
尚、封止材組成物については、同一組成の組成物から製膜した予備封止材シートを用いて、電離放射線を照射条件を適宜調整することにより、それぞれの分子量を最適化する本製造方法によれば、それぞれ組成の異なる組成物から別途に製膜を行う場合と比較して、重量平均分子量の異なる2種の封止材シートを効率よく製造することができる。
(電離放射線照射工程)
シート化工程後の予備封止材シートに、適切な条件で電離放射線を照射することによって分子量を増大させる処理を行う。この工程によって、前面封止材シートと、裏面封止材シートの重量平均分子量とそれらの比を本願特有の所定の範囲内に最適化することができる。
又、封止材シートのゲル分率についても、0%となるように電離放射線の照射量や架橋剤の添加量を適宜調整することが好ましい。従来は、ゲル分率を0%とすると、モジュール化工程前の架橋工程による流動抑制の効果が発現せず、過剰流動により封止材シートの膜厚を一定に保つのが困難になるという問題があったが、本発明の封止材シートは、電子照射線の照射により、分子量を所定の範囲に増大させることによって、そのような問題を回避しており、よって太陽電池モジュール用封止材シートとして好ましく用いることができるものとなっている。
架橋処理は、電子線(EB)、α線、β線、γ線、中性子線等の電離放射線によって行うことができるが、なかでも電子線を用いることが好ましい。処理条件については、トータルな処理結果として、各封止材シートの分子量とそれらの比が、上記において説明した所定範囲となる限りにおいては、特に限定されるものではない。
尚、この電離放射線照射処理工程はシート化工程に続いて連続的にインラインで行われてもよく、オフラインで行われてもよい。
<太陽電池モジュールの製造方法>
上記の封止材シートの製造方法によって製造した前面封止材シート3を太陽電池素子4の受光面側に、又、裏面封止材シート5を太陽電池素子4の裏面側にそれぞれ配置して、両封止材シートによって太陽電池素子4を挟持する態様とし、更に、透明前面基板2、裏面保護シート6等のその他の部材を順次積層してから、真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<太陽電池モジュール用封止材シートの製造>
下記の材料からなる封止材組成物を混合して溶融し、常法Tダイ法により厚さ400μmとなるように220℃での押し出し成形により成膜し、それぞれ下記の封止材シート1〜3とするための予備封止材シートを形成した。
(ベース樹脂)
下記の2種のLLDPE(樹脂M1又はM2)のいずれか75質量部と、シラン変性ポリエチレン系樹脂(樹脂S)25質量部を、表1に示す通りの配合でそれぞれ混合溶融したものを各封止材組成物のベース樹脂とした。
LLDPE(樹脂M1)
:ポリエチレン系樹脂(LLDPE):エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm、MFR3g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。ポリスチレン換算の数平均分子量100000。
LLDPE(樹脂M2)
:ポリエチレン系樹脂(LLDPE):エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.900g/cm、MFR2g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。ポリスチレン換算の数平均分子量120000。
シラン変性ポリエチレン系樹脂(樹脂S)
:エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm、190℃でのメルトマスフローレート(MFR)が3g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、98質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得た、密度0.884g/cm、MFRが2g/10minであるシラン変性ポリエチレン系樹脂。ポリスチレン換算の数平均分子量110000。
(架橋剤)
架橋剤として、2,5ジメチル2,5ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(アルケマ吉富株式会社製、商品名ルペロックス101)を用い、封止材シート1及び2の封止材組成物のみに0.03質量部添加した。
(その他の添加剤)
UV吸収剤(ケミプロ化成株式会社製、商品名KEMISORB12)を封止材シート1〜3の封止材組成物に、0.25質量部添加した。
耐候安定剤(チバ・ジャパン株式会社製、商品名Tinuvin770)を封止材シート1〜3の封止材組成物に、0.6質量部添加した。
酸化防止剤(チバ・ジャパン株式会社製、商品名Irganox1076)を封止材シート1〜3の封止材組成物に、0.05質量部添加した。
次に、予備封止材シートについて、電離放射線の照射による架橋処理を施して封止材シート1を得た。照射条件は、加速電圧200kV、照射線量20kGyで両面照射し計40kGyを照射した。
封止材シート2〜3については、上記の電離放射線の照射処理を行わず、成形後の各予備封止材シートを、そのまま封止材シート2又は3とした。
上記の封止材シート1〜3の重量平均分子量と、ゲル分率とを下記の方法で測定した。結果を表1に示す。
分子量:封止材シート1〜3を、o−ジクロロベンゼンに溶解させて、下記条件で、各封止材シートのポリスチレン換算の数平均分子量、重量平均分子量、及び分子量分布を測定した。
測定機種:Wataers製GPC/V2000、
カラム:Shodex AT−G+AT−806MS×2本
溶離液:o−ジクロロベンゼン(0.3%BHT入り)
温度:カラム及びインジェクター 145℃
濃度:約1.0g/L
流速1.0ml/min
溶解性:完全溶解
検出器:示差屈折計(RI)
ゲル分率(%):封止材シート1〜3の0.1gを樹脂メッシュに入れ、60℃トルエンにて4時間抽出したのち、樹脂メッシュごと取出し乾燥処理後秤量し、抽出前後の重量比較を行い残留不溶分の質量%を測定しこれをゲル分率とした。尚、ゲル分率0%の定義については、先に説明した通りである。
Figure 2016192572
<太陽電池モジュール評価用試料の製造>
又、上記の封止材シート1〜3をそれぞれ受光面側に配置する前面封止材シート或いは、裏面側に配置する裏面封止材シートとして用いて、実施例、比較例の太陽電池モジュール評価用試料を下記表2に示す構成で製造した。
太陽電池モジュール評価用試料は、透明前面ガラス基板(青板ガラス)、前面封止材シート、太陽電池素子、裏面封止材シート、及び裏面保護シート(大日本印刷(株)製、型番VPEW280μm)からなる部材を順次積層してから真空加熱ラミネーションにより、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造し、これを実施例及び比較例の太陽電池モジュール評価用試料とした。太陽電池素子については、下記に説明する太陽電池素子用意し、1つの太陽電池モジュール評価用試料について同種類の太陽電池素子各42枚を接続部材にて電気的に直列接続した。各評価用試料における前面封止材シート、裏面封止材シートは、表2に示す通りの組合せとし、熱ラミネート条件は下記の通りとした。
<熱ラミネート条件> (a)真空引き:5.0分
(b)加圧(0kPa〜100kPa):1.5分
(c)圧力保持(100kPa):15.0分
(d)温度150℃
(太陽電池素子)
多結晶シリコン基板を用いて作製する結晶シリコン太陽電池素子。集電のための電極が採光面側に配置されているもの。(Q−CELLS社製、セルQ6LTT−200/1520 156mm)
<評価例>
実施例及び比較例の太陽電池モジュール評価用試料を用いて、太陽電池素子の反りから発生するマイクロクラックについて測定した。その結果を表2に示す。尚、試験条件は以下の通りである。
太陽電池素子のマイクロクラック測定試験:上述した実施例、比較例のそれぞれの太陽電池モジュール評価用試料について、EL画像によるセルマイクロクラックの観察を行った。試験は下記に説明するサイクル試験の実施前後に行った。サイクル試験は、JIS C8917の温度サイクル試験に準拠した方法を使用した。45分かけて25℃から90℃まで上昇させ、この温度で90分間保持し、次いで90分かけて−40℃まで降下させ、この温度で90分間保持し、更に45分かけて25℃まで上昇させる。これを1サイクル(6時間)とする。このサイクルを400サイクル繰り返してサイクル試験を行った。EL画像によるセルマイクロクラックの観察は、以下の通り行った。太陽電池素子に対して、電流を順方向に導通させると、p層に少数キャリアの電子を導入することになり、その電子と正孔とがp層のなかで再結合することにより発光する発光検出工程では、太陽電池素子からの光の発光特性を検出できる従来公知の光検出手段を用いることができる。試験は、モジュールの出力端子から3Aの電流を流し、EL発光を撮影し、発光画像から目視、顕微鏡では確認できないレベルのマイクロクラックを確認した。そして42枚のセルで構成される1枚の太陽電池モジュール評価用試料中マイクロクラックが発生しているセルの数を測定した。尚、上記サイクル試験実施前のマイクロクラック発生数はいずれのマイクロクラックについても発生数0であった。上記測定値を以下の評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
(評価基準)
A=マイクロクラック発生数が0〜2
B=マイクロクラック発生数が3〜7
C=マイクロクラック発生数が8以上
Figure 2016192572
表1〜2より、本発明の太陽電池モジュールは、その独自の封止材層構成により、セル保護性能を備えた優れた封止材シートであることが分かる。
1 太陽電池モジュール
2 透明前面基板
3 前面封止材シート
4 太陽電池素子
5 裏面封止材シート
6 裏面保護シート

Claims (5)

  1. 太陽電池素子と、
    前記太陽電池素子の受光面側に配置される前面封止材シートと、
    前記太陽電池素子の裏面側に配置される裏面封止材シートと、を備え、
    前記前面封止材シート及び前記裏面封止材シートは、密度0.940g/cm以下の低密度ポリエチレンを含有し、
    少なくとも前記裏面封止材シートのゲル分率は0%であり、
    前記裏面封止材シートのポリスチレン換算による重量平均分子量と、前記前面封止材シートの前記重量平均分子量との比が、0.5以上1.0未満である太陽電池モジュール。
  2. 前記裏面封止材シートのポリスチレン換算による重量平均分子量と、前記前面封止材シートの前記重量平均分子量との比が、0.6以上0.85未満である請求項1に記載の太陽電池モジュール。
  3. 前記裏面封止材シートのポリスチレン換算による重量平均分子量と、前記前面封止材シートの前記重量平均分子量との比が、0.7以上0.8未満である請求項1に記載の太陽電池モジュール。
  4. 前記低密度ポリエチレンが密度0.890g/cm以下の低密度ポリエチレンである請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法であって、
    密度0.940g/cm以下の低密度ポリエチレンを含有する封止材組成物をシート状に成形して、予備封止材シートを得るシート化工程と、
    前記予備封止材シートに、電離放射線の照射により、分子量を増大させて、前面封止材シート又は裏面封止材シートを得る電離放射線照射工程と、
    前記前面封止材シートと前記裏面封止材シートの間に太陽電池素子が挟持されている構成部分を含む積層体を、熱ラミネート処理により一体化するモジュール化工程を備え、
    前記前面封止材シート及び前記裏面封止材シートは、いずれも同一組成の封止材組成物からなるものであり、且つ、前記電離放射線の照射の条件を異なる条件とすることによって、前記前面封止材シートのポリスチレン換算重量平均分子量を、前記裏面封止材シートの該分子量よりも大きくしたものであることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
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