JP2016152269A - 太陽電池モジュール用の封止材シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】太陽電池モジュール用の封止材シート1を、密度0.885g/cm3以上0.910g/cm3以下のポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする電気抵抗層11を含む複数の層からなる多層シートであって、総厚さが210μm以上650μm以下であって、JIS K7136に準拠して測定したヘイズ値が4.5以下であり、電気抵抗層11は、融点が65℃以上85℃以下であって、JIS C6481に準拠して測定した温度60℃における体積抵抗値が514Ω・cm以上である封止材シートとする。
【選択図】図2
Description
本発明の封止材組成物は、特に電気抵抗層を成形するための封止材組成物を、所定の密度及び融点範囲にあるポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする組成物とした点に特徴がある。又、必要に応じて別途積層される柔軟層については、電気抵抗層の備えるPID抑制機能と光透過性を阻害しない許容範囲内で、封止材シートの密着性やモールディング特性の向上に寄与することができる封止材組成物、即ち、電気抵抗層用の封止材組成物よりも相対的に低密度低融点であるポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする組成物を用いることが好ましい。
電気抵抗層用の封止材組成物のベース樹脂として用いるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、又はメタロセン系直鎖低密度ポリエチレン(M−LLDPE)を好ましく用いることができる。中でも、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であるLLDPEは、シート加工性を維持しつつ封止材シートに良好な柔軟性を備えさせることができる。
電気抵抗層用の封止材組成物には、適宜、シラン変性ポリエチレン系樹脂を含有させることもできる。尚、封止材シートが多層シートであり、且つ、柔軟層が最外層として配置される場合には、他部材との密着性を効率よく高めるために、同樹脂を特に柔軟層へより多く添加することが好ましい。シラン変性ポリエチレン系樹脂は、主鎖となる直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)等に、エチレン性不飽和シラン化合物を側鎖としてグラフト重合してなるものである。このようなグラフト共重合体は、接着力に寄与するシラノール基の自由度が高くなる。これにより、封止材シートの他部材への密着性を向上させることができる。
電気抵抗層用の封止材組成物には、適宜、架橋剤を含有させることができる。架橋剤は公知のものが使用でき特に限定されず、例えば公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐パーオキシ)ヘキシン‐3等のジアルキルパーオキサイド類;ビス‐3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o‐メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシオクトエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシフタレート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン‐3、t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物、又は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジクミルパーオキサイド、といったシラノール縮合触媒等を挙げることができる。
電気抵抗層用の封止材組成物には、架橋助剤として、炭素−炭素二重結合及び/又はエポキシ基を有する多官能モノマーを用いることができる。架橋助剤としてより好ましくは、多官能モノマーの官能基がアリル基、(メタ)アクリレート基、ビニル基であるものが用いられる。このような架橋助剤の添加により、低密度ポリエチレンの結晶性を低下させ、低温柔軟性に優れる架橋済みの封止材シートを得ることができる。
電気抵抗層用の封止材組成物には、適宜、密着性向上剤を添加することにより、更に、他部材との密着耐久性を高めることができる。尚、封止材シートが多層シートである場合には、他部材との密着性を効率よく高めるためには、他部材との密着面となる最外層に柔軟層を配置して、当該最外層へ重点的に密着性向上剤を添加することがより好ましい。密着性向上剤としては、公知のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤は特に限定されないが、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤等を好ましく用いることができる。尚、これらは単独で又は2種以上を混合して使用することもできる。
電気抵抗層用の各封止材組成物において、ラジカル重合開始剤となる上記の架橋助剤と、それをクエンチするラジカル吸収剤とを併用することにより、架橋の程度を更に微細に調整することができる。このようなラジカル吸収剤としては、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤や、ヒンダードアミン系の耐候安定化等が例示できる。架橋温度付近でのラジカル吸収能力が高い、ヒンダードフェノール系のラジカル吸収剤が好ましい。ラジカル吸収剤の使用量は、封止材組成物の全樹脂成分に対して0.01質量%以上3質量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下の範囲である。
電気抵抗層用の封止材組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、封止材シートに耐候性を付与するための耐候性マスターバッチ、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。これらの含有量は、その粒子形状、密度等により異なるものではあるが、それぞれの封止材組成物の全樹脂成分に対して0.001質量%以上5質量%以下の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、封止材シートに対して、長期に亘って安定した機械強度や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
封止材シートが多層シートである場合における柔軟層用の封止材組成物としては、電気抵抗層用の組成物と同様にポリエチレン系樹脂をベース樹脂としたものを用いる。柔軟層用の封止材組成物のベース樹脂としては、電気抵抗層用の封止材組成物と同様の各ポリエチレン系樹脂を用いることができる。中でも、M−LLDPEは、側鎖の分岐が少なく、コモノマーの分布が均一であるため、分子量分布が狭く、超低密度にすることが容易であり、封止材シートの柔軟層に対して好ましい柔軟性とそれに起因する優れた密着性やモールディング特性を付与することができる。
本発明の封止材シートは、単一の電気抵抗層からなる単層シートであるか、或いは、当該電気抵抗層の少なくともいずれか一方の面に配置される柔軟層と、を含む複数の層によって構成される多層シートである。そして、本発明の封止材シートは、上記において説明した所定の密度及び融点範囲にある各層用の封止材組成物をそれぞれ選択して、且つ、封止材シートの総厚さと、当該総厚さに対する電気抵抗層の厚さ比が本発明の所定範囲内、即ち、電気抵抗層の厚さが、封止材シートの総厚さの27%以上100%以下となるように、封止材シートを成形することにより得ることができる。以下、本発明の好ましい一実施形態として、図1に示す封止材シート1、即ち、封止材シートが単層である電気抵抗層11の上下に各1層計2層の単層の柔軟層12を含む3層構造の封止材シート1について説明する。
封止材シートの製造方法の好ましい実施態様の一例を説明する。この製造方法は、上述の封止材組成物を用いて溶融形成した溶融形成後の封止材シート材料に、更に、電離放射線の照射による架橋処理を行い、適度に架橋を進行させることによって、封止材シートの透明性を保持したまま、その体積抵抗値を最適化する方法である。
封止材シートの各層用の各封止材組成物の溶融成形は、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、即ち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により行われる。多層シートとしての成形方法としては、一例として、2種以上の溶融混練押出機による共押出により成形する方法が挙げられる。又、上述の通り溶融成形は一軸延伸成形であることがより好ましい。
上記のシート化工程後の未架橋の封止材シートに対して、電離放射線による架橋処理を施す架橋工程を、シート化工程の終了後、且つ、封止材シートを他の部材と一体化する太陽電池モジュール一体化工程の開始前に行う。この架橋処理によってゲル分率が2%以上80%以下となる封止材シートとする。架橋処理はシート化工程に続いて連続的にインラインで行われてもよく、オフラインで行われてもよい。
次に、本発明の太陽電池モジュールの好ましい一実施形態について、図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態であるn型の太陽電池素子を備える太陽電池モジュール10について、その層構成の一例を示す断面図である。太陽電池モジュール10は、入射光の受光面側から、透明ガラス基板4、受光面側封止材シート1、太陽電池素子3、裏面側封止材シート2、及び裏面保護シート5が順に積層されている。
以下において説明する封止材組成物原料を下記表1の割合(質量部)で混合し、それぞれ実施例、比較例の封止材シートの電気抵抗層用の封止材組成物及び柔軟層用の封止材組成物とした。それぞれの封止材組成物をφ30mm押出し機、200mm幅のTダイを有するフィルム成形機を用いて、押出し温度210℃、引き取り速度1.1m/minで電気抵抗層用及び柔軟層用とするための各樹脂シートを作製し、これらの各樹脂シートを積層して、電気抵抗層からなる単層シート、或いは電気抵抗層の両面に柔軟層を配置した3層構造の多層シート(実施例1、2と比較例1)又は柔軟層の両面に電気抵抗層を配置した3層構造の多層シート(実施例4)である、実施例及び比較例の各封止材シートを製造した。実施例、比較例の各封止材の総厚さと各層の厚さ、及び総厚さに対する電気抵抗層の厚さ比(%)は、それぞれ下記表2に記載の通りとした。尚、表2における実施例4の電気抵抗層の厚さは柔軟層の両面に配置された2層の電気抵抗層の厚さの合計値である。
ベース樹脂1(表1にて「P1」と表記、以下同様):密度0.890g/cm3、融点75℃であり、190℃でのMFRが4g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)。
ベース樹脂2(「P2」):密度0.880g/cm3、融点60℃であり、190℃でのMFRが3.5g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)。
ベース樹脂3(「P3」):密度0.885g/cm3、融点65℃であり、190℃でのMFRが7g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)。
ベース樹脂4(「P4」):密度0.905g/cm3、融点97℃であり、190℃でのMFRが3.6g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)。
ベース樹脂5(「P5」):密度0.920g/cm3、融点123℃であり、190℃でのMFRが2.1g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)。
ベース樹脂6(「P6」):密度0.880g/cm3、融点60℃であり、190℃でのMFRが30g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)。
シラン変性ポリエチレン系樹脂(「S」):密度0.880g/cm3、MFRが3.5g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得たシラン変性ポリエチレン系樹脂。密度0.880g/cm3、MFR3.5g/10分。融点58℃。
架橋剤(架橋):2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(アルケマ吉富株式会社製、商品名ルペロックス101)
上記の実施例及び比較例の各封止材シートと、n型の太陽電池素子を用いて、実施例及び比較例の評価用の各太陽電池モジュールを製造した。白板半強化ガラス(JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)、太陽電池素子(n型単結晶シリコンセル(PVGS製))、及び実施例、比較例の各封止材シート、及び裏面保護シート(ポリエチレンテレフタレート部材:厚さ188μm、商品名「ルミラーS10」、東レ社製)を、図2に示す太陽電池モジュールの一般的な層構成に沿って積層し、下記のラミネート条件で、真空加熱ラミネート処理を行い一体化した後、側面にアルミフレーム枠を装着して、それぞれの実施例、比較例について太陽電池モジュール評価用サンプルを得た。
(ラミネート条件) 真空引き:5.0分
加圧(0kPa〜100kPa):1.0分
圧力保持(100kPa):10.0分
温度165℃
実施例及び比較例の各太陽電池モジュール評価用サンプルについて、ダンプヒート試験による保存試験前後の太陽電池モジュールの発電出力を測定比較することにより、各太陽電池モジュールにおける本発明の封止材シートによるPID抑制効果を評価した。保存試験条件は、JIS C8917に準拠し、試験槽内において温度60℃、湿度85%の条件下で、96時間の保存試験とした。同試験後の各太陽電池モジュール評価用サンプルについて、Pm値をそれぞれ測定した。Pm値とは、太陽電池の出力が最高となる動作点での最高出力値であり、JIS−C8935−1995に基づき、印加電圧:−1000Vで、保存試験前後のモジュールの発電出力を測定した。又、保存試験前後の同値の維持率を算出して、同維持率が90%以上であることをもって好ましいPID抑制効果が発現されているものと評価した。
11 電気抵抗層
12 柔軟層
2 非受光面側用の封止材シート
3 太陽電池素子
4 透明前面基板
5 裏面保護シート
10 太陽電池モジュール
Claims (7)
- 太陽電池モジュール用の封止材シートであって、
該封止材シートは、密度0.885g/cm3以上0.910g/cm3以下のポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする電気抵抗層からなる単層シート又は前記電気抵抗層を含む複数の層からなる多層シートであって、
総厚さが210μm以上650μm以下であって、
JIS K7136に準拠して測定したヘイズ値が4.5以下であり、
前記電気抵抗層は、融点が65℃以上85℃以下であって、
JIS C6481に準拠して測定した温度60℃における体積抵抗値が514Ω・cm以上である封止材シート。 - 前記電気抵抗層の層厚さが、前記封止材シートの総厚さの27%以上100%以下である請求項1に記載の封止材シート。
- 前記封止材シートが多層シートであって、
前記電気抵抗層の両面に、密度0.870g/cm3以上0.890g/cm3以下のポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする柔軟層が形成されている請求項1又は2に記載の封止材シート。 - 前記ポリエチレン系樹脂がメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンである請求項1から3のいずれかに記載の封止材シート。
- 請求項1から4のいずれかに記載の封止材シートの製造方法であって、
ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする封止材組成物を溶融成形して未架橋のシートを成形するシート化工程と、
前記未架橋のシートに電離放射線の照射による架橋処理を行う架橋工程と、を備え、
前記封止材組成物中の架橋剤の含有量が、0質量%以上0.5質量%未満である封止材シートの製造方法。 - 請求項1から4のいずれかに記載の封止材シートと、太陽電池素子と、を備える太陽電池モジュールであって、太陽電池素子の受光面側に前記封止材シートが積層されている太陽電池モジュール。
- 前記太陽電池素子がn型の太陽電池素子である請求項6に記載の太陽電池モジュール。
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