JP7160136B2 - 太陽電池モジュール用の封止材シート、及びそれを用いた太陽電池モジュール - Google Patents

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Description

本発明は、太陽電池モジュール用の封止材シート及びそれを用いた太陽電池モジュールに関する。詳しくは、特には、両面ガラス保護基板型の太陽電池モジュールに好ましく用いることができる封止材シート、及びそれを用いた両面ガラス保護基板型の太陽電池モジュールに関する。
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源としての太陽電池が注目されている。現在、種々の形態からなる太陽電池モジュールが開発され、提案されている。太陽電池モジュールには様々な層構成のものがあるが、モジュール内への水分の侵入を防ぐバリア性や過酷な使用条件化における長期耐久性等において特に優れた構成として、前面保護基板及び裏面保護基板をいずれもガラス製の保護基板で構成した構成の太陽電池モジュールも考案されている(特許文献1参照)。尚、本明細書においては、このようにモジュール本体の両最表面に配置される保護基板をガラス基板とした構成の太陽電池モジュールのことを「両面ガラス保護基板型の太陽電池モジュール」と称する。
従来、太陽電池モジュールに使用される封止材シートとしては、両面ガラス保護基板型の太陽電池モジュールも含め、加工性、施工性、製造コスト等の観点から、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)が、主に使用されてきた。しかし、EVA樹脂は、長期間の使用に伴って徐々に分解する傾向があり、太陽電池素子に影響を与える酢酸ガスを発生させる可能性がある。このため、近年では、EVA樹脂に代えてポリエチレン系の樹脂を使用した太陽電池モジュール用の封止材シートの需要が拡大しつつある(特許文献2参照)。
一般的にポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする太陽電池モジュール用の封止材シートでは、その密度を低密度にすることによって透明性や柔軟性を向上することができる。しかし、低密度化は、一方で耐熱性の不足という問題を引き起こす。そこで、特許文献2の封止材シートにおいては、架橋剤によって耐熱性を付与している。この場合、確かに耐熱性は向上するが、長期にわたる高温下での使用に耐えうるだけの十分な耐熱性を備えさせるために必要十分な程度の架橋処理を行うと、モジュール化の際に、対面する部材の表面の凹凸への追従性(以下、「モールディング特性」と言う)が維持できなくなるという問題があった。又、架橋処理を必須とする製造工程においては、成形中に架橋が進行すると製膜性が低下するため、成形を低温で行って架橋反応を成形後に再度行う等の配慮が必要であり、生産性の面でも更なる改善が求められていた。
例えば、架橋処理を経ずに耐熱性とモールディング特性を両立させることを企図したものとして、融点の異なる2種以上の樹脂を混合したスキン層と、無機粒子等の結晶核剤を添加した封止材組成物からなるコア層と、を組合せた多層シートとすることによって、架橋処理が不要でありながら、耐熱性とモールディング特性との両立を企図した封止材シートが開示されている(特許文献3参照)。
特開2013-9258164号公報 特開2009-10277号公報 国際公開第2012/073971号
近年、普及拡大が進む両面ガラス保護基板型の太陽電池モジュールにおいては、モジュール側面を取り囲む金属製フレームを排したフレームレスの構造である場合が多い(特許文献1参照)。この場合、上述した耐熱性とモールディング特性の両立に加えて、太陽電池モジュールの構造上、更に、常温での高い引張りせん断接着力(JIS J6850 接着剤-剛性被接着材の引張りせん断接着強さ試験方法による接着力)が、封止材シートに求められる。耐熱性、モールディング特性、更には、常温での高い引張りせん断接着力という3つの要求に全て高い水準で応えうる封止材シートは未だ存在しなかった。
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、ポリエチレン系樹脂を用いた封止材シートでありながら、架橋工程が不要で生産性が高く、且つ、耐熱性とモールディング特性に加えて、更には、常温での高い引張りせん断接着力をも高い水準で兼ね備えた太陽電池モジュール用の封止材シートを提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、封止材シートをスキン層-コア層-スキン層の構成からなる多層シートとし、コア層の融点を70℃以上に保持した上で、スキン層に所定量範囲のシラン変性ポリエチレン系樹脂を含有させ、更に、このシラン変性ポリエチレン系樹脂を、特定の高分子量範囲にあるものに特定することによって、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1) 太陽電池モジュール用の封止材シートであって、該封止材シートは、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とし、コア層と、両最表面に配置されるスキン層と、を含む多層シートであって、前記コア層は、密度が0.880g/cm以上0.930g/cm以下で、融点70℃以上であり、前記スキン層は、密度が0.880g/cm以上0.900g/cm以下で、融点90℃以下であり、前記スキン層は、シラン変性ポリエチレン系樹脂を含有し、該スキン層に含有されるシラン変性ポリエチレン系樹脂のポリスチレン換算による重量平均分子量が、70000以上120000以下であって、前記スキン層の全樹脂成分中における重合シラン量が、300ppm以上2000ppm以下である、封止材シート。
(2) 前記スキン層に含有されるシラン変性ポリエチレン系樹脂のポリスチレン換算による重量平均分子量が、90000以上120000以下である、(1)に記載の封止材シート。
(3) 前記コア層と前記スキン層の融点がいずれも70℃以上80℃以下である(1)又は(2)に記載の封止材シート。
(4) 透明前面基板、受光面側の封止材、太陽電池素子、非受光面側の封止材、裏面保護基板が、順次積層されてなる太陽電池モジュールであって、前記受光面側の封止材及び前記非受光面側の封止材が、(1)から(3)のいずれかに記載の封止材シートである、太陽電池モジュール。
(5) 前記透明前面基板及び前記裏面保護基板がいずれもガラス製の保護基板である(4)に記載の太陽電池モジュール。
(6) ガラス製の保護基板に挟持されてなるモジュール積層体の側面周囲を取り囲んで、該モジュール積層体の形状を保持する保護フレームが存在しない、フレームレスのモジュールである(5)に記載の太陽電池モジュール。
(7) 前記太陽電池素子の表面には、該表面の一部が線状又は点状に突出してなる凸部が存在し、該凸部は該表面上に積層されている封止材シートの内部に埋まり込んでいて、前記凸部の厚さが、前記太陽電池素子の表面上に積層されている該封止材シートの厚さの50%以上90%以下である、(4)から(6)のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
本発明によれば、ポリエチレン系樹脂を用いた封止材シートでありながら、架橋工程が不要で生産性が高く、且つ、耐熱性とモールディング特性に加えて、更には、常温での高い引張りせん断接着力をも高い水準で兼ね備えた太陽電池モジュール用の封止材シートを提供することができる。
本発明の封止材シートの層構成を模式的に示す断面図である。 本発明の封止材シートを用いてなる両面ガラス保護基板型の太陽電池モジュールの層構成の一例を模式的に示す図面である。 本発明の封止材シートと、薄膜系の太陽電池素子を用いてなる太陽電池モジュールの層構成の一例を模式的に示す断面図である。 図3の部分拡大図であり、薄膜系の太陽電池モジュールに用いた場合における本発明の封止材シートのモールディング特性の説明に供する図面である。 モールディング特性に劣る従来の封止材シートを薄膜系の太陽電池モジュールに用いた、従来の太陽電池モジュールの部分拡大断面図である。
以下、本発明の太陽電池モジュール用の封止材シートの製造に用いることができる封止材組成物、本発明の太陽電池モジュール用の封止材シート、及び本発明の封止材シートを用いた太陽電池モジュールについて順次説明する。
<封止材組成物>
本発明の封止材シートは、以下に詳細を説明する封止材組成物を溶融成形することによって製造することができる。封止材組成物は、コア層用の封止材組成物とスキン層用の封止材組成物とを、それぞれ各層毎に使い分ける。そして、これらコア層用、スキン層用の各封止材組成物により、コア層を内層とし、スキン層を最表面の層とした3層構造の多層シートを成形することにより、例えば、図1に示す封止材シート1に代表される本発明の封止材シートを製造することができる。尚、本明細書において、スキン層とは、多層の封止材シートの両最表面側に配置される層のことを言い、コア層とは多層の封止材シートにおける上記スキン層以外の内層のことを言う。コア層自体が更に多層の内部構造を有するものであってもよいが、単層構造のコア層の両面にスキン層が積層されている3層構造の封止材シート1が、本発明の代表的な実施形態であり、以下、この封止材シート1を中心に本発明の説明を行う。
[コア層用の封止材組成物]
コア層用の封止材組成物は、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とし、架橋剤を含有せず、封止材シートの成形時に架橋工程を必要としない熱可塑系の封止材組成物である。又、ベース樹脂とする低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)等の他、シラン変性ポリエチレン系樹脂等のその他の樹脂やその他の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲において適量含有しているものであってもよい。
コア層用の封止材組成物のベース樹脂としては、低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)、又はメタロセン系直鎖低密度ポリエチレン系樹脂(M-LLDPE)を好ましく用いることができる。中でも、太陽電池モジュールの長期信頼性の観点から、低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)をコア層用の封止材組成物として特に好ましく用いることができる。尚、本明細書において「ベース樹脂」とは、当該ベース樹脂を含有してなる樹脂組成物において、当該樹脂組成物の樹脂成分中で含有量比の最も大きい樹脂のことを言うものとする。
コア層用の封止材組成物は、上記のベース樹脂に加えて、更に、シラン変性ポリエチレン系樹脂を、所定量含有させることが好ましい。コア層用の封止材組成物においては、シラン変性ポリエチレン系樹脂は必ずしも必須の成分ではないが、コア層用の封止材組成物にシラン変性ポリエチレン系樹脂を添加する場合には、これをポリスチレン換算による重量平均分子量が、70000以上のシラン変性ポリエチレン系樹脂(以下、これを「高分子量タイプのシラン変性ポリエチレン系樹脂」とも言う)とすることが好ましい。
コア層用の封止材組成物への高分子量タイプのシラン変性樹脂の添加量については、コア層11の全樹脂成分中における重合シラン量が、30ppm以上2000ppm以下となるような比率でコア層用の封止材組成物にこれを含有されることが好ましい。コア層用の封止材組成物に、このような高分子量タイプのシラン変性ポリエチレン系樹脂を適量含有させることにより、封止材シート1の常温での高い引張りせん断接着力の向上に寄与することができる。尚、封止材各層における重合シラン量は、例えば、ICP発光分析等で各層中の元素を定量することによって、樹脂成分中の存在量を特定することができる。封止材シート1に用いることができる高分子タイプのシラン変性樹脂の詳細については後述する。
コア層用の封止材組成物の密度は、0.880g/cm以上0.930g/cm以下であり、好ましくは、0.880g/cm以上0.920g/cm以下、より好ましくは、0.885g/cm以上0.895g/cm以下である。コア層用の封止材組成物の密度を上記範囲とすることにより、架橋処理を経ることなく、封止材シート1に耐熱性とモールディング特性とをバランスよく備えさせることができる。
コア層用の封止材組成物の融点は70℃以上110℃以下であればよく、73℃以上90℃以下であることが好ましい。封止材シート1のコア層11の融点を上記範囲に保持することができる限りにおいて、融点の異なるポリエチレン系樹脂を適宜混合してコア層用の封止材組成物とすることができる。例えば、融点60℃、90℃、97℃の3種類のポリエチレン系樹脂を、各、65質量部、8質量部、32質量部ずつ混合してなる樹脂組成物によれば、コア層全体の融点を74℃とすることができる。そして、このような材料樹脂の配合例を、コア層用の封止材組成物の好ましい樹脂配合例として例示することができる。
ここで、本明細書における融点とは、測定対象物に含まれる各成分の固有の各融点とそれらの配合比率から計算して得られる融点の平均値のことを言うものとする。
例えば、封止材シート或いはそれを構成する各樹脂層の上記定義による融点は、示差走査熱量測定(DSC)により測定して得ることが可能である。DSC曲線の谷のピークが複数存在する場合は、そのうちのピーク面積が最も大きいピークが示す融点のことを、当該封止材シート或いは上記各樹脂層の融点とすることができる。
又、封止材シートから上記定義による融点を特定する他の方法としては、JISK7179に準拠して測定した測定線膨張係数を、樹脂温度の関数として表した場合において、線膨張係数が増加から減少に転じる際の極大値における温度である線膨張ピーク温度を測定することにより、近似的に求める方法によることも可能である。この方法によれば、概ね2℃以内程度のバラツキの範囲内で上記定義による融点を封止材シート等の完成品から特定することができる。
コア層用の封止材組成物の融点を、上記の通り、70℃以上に保持することにより、封止材シート1に必要な耐熱性を付与することができる。又、封止材シートとしてのシート化のための溶融成形時、及び、太陽電池モジュールとしての一体化のための熱ラミネーション処理時の加熱条件との関係において、コア層用の封止材組成物の融点は、一般的に110℃以下程度であればよく、封止材シート1のモールディング特性を十分に高めるためには、コア層用の封止材組成物の融点は、90℃以下であることがより好ましい。
コア層用の封止材組成物のメルトマスフローレート(MFR)は、3.0g/10min以上5.0g/10min未満であればよく、その限りにおいて、MFR0.8g/10min以上5.0g/10min未満のポリエチレン系樹脂を適宜混合して用いることができる。コア層用の封止材組成物のMFRを上記範囲とすることにより、封止材シート1に耐熱性とモールディング特性とをバランスよく備えさせることができる。
尚、本明細書中におけるMFRとは、特に断りのない限り、以下の方法により得られた値である。
MFR(g/10min):JIS K7210に準拠して測定。具体的には、ヒーターで加熱された円筒容器内で合成樹脂を、190℃で加熱・加圧し、容器底部に設けられた開口部(ノズル)から10分間あたりに押出された樹脂量を測定した。試験機械は押出し形プラストメータを用い、押出し荷重については2.16kgとした。
尚、多層の封止材シートのMFRは、全ての層が一体積層された多層状態のまま、上記処理による測定を行い、得た測定値を当該多層の封止材シートのMFRの値とした。
[スキン層用の封止材組成物]
スキン層用の封止材組成物も、コア層用の封止材組成物と同様に、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とし、架橋剤を含有しない熱可塑系の封止材組成物である。又、その他の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲において適量含有しているものであってもよい点においても、コア層用の封止材組成物と同様である。但し、スキン層用の封止材組成物は、ポリスチレン換算による重量平均分子量が、70000以上のシラン変性ポリエチレン系樹脂(高分子量タイプのシラン変性ポリエチレン系樹脂)を特定量含有することを必須とする点が、コア層用の封止材組成物とは異なる。
スキン層用の封止材組成物のベース樹脂としては、コア層用の封止材組成物と同様に、低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)、又はメタロセン系直鎖低密度ポリエチレン系樹脂(M-LLDPE)を好ましく用いることができる。中でも、モールディング特性の観点から、メタロセン系直鎖低密度ポリエチレン系樹脂(M-LLDPE)をスキン層用の組成物として特に好ましく用いることができる。
封止材シート1に用いるスキン層用の封止材組成物は、上記のベース樹脂に加えて、更に、シラン変性ポリエチレン系樹脂を必須の樹脂成分として所定量含有する。そして、このスキン層用組成物に含有されるシラン変性ポリエチレン系樹脂は、ポリスチレン換算による重量平均分子量が、70000以上のシラン変性ポリエチレン系樹脂(以下、「高分子量タイプのシラン変性ポリエチレン系樹脂」とも言う)に限定される。
又、この高分子量タイプのシラン変性樹脂は、スキン層の全樹脂成分中における重合シラン量が、300ppm以上2000ppm以下となるような比率でスキン層用の封止材組成物に含有される。スキン層用の封止材組成物にこのような高分子量タイプのシラン変性ポリエチレン系樹脂を適量含有させることにより、封止材シート1に常温での極めて高い引張りせん断接着力を付与することができる。封止材シート1に用いることができる高分子タイプのシラン変性樹脂の詳細については後述する。
スキン層用の封止材組成物の密度は、0.880g/cm以上0.910g/cm以下であり、より好ましくは、0.899g/cm以下である。スキン層用の封止材組成物の密度を上記範囲とすることにより、封止材シート1の密着性を好ましい範囲に保持することができる。
スキン層用の封止材組成物の融点は70℃以上90℃以下であればよく、70℃以上80℃以下であることが好ましい。コア層と同様に、スキン層の融点を上記範囲に保持することができる限りにおいて、融点の異なるポリエチレン系樹脂を適宜混合してスキン層用の封止材組成物とすることができる。例えば、融点60℃、90℃、97℃の3種類のポリエチレン系樹脂を、各、65質量部、20質量部、20質量部ずつ混合してなる樹脂組成物によれば、スキン層全体の融点を73℃とすることができる。そして、このような材料樹脂の配合例を、コア層用の封止材組成物の好ましい樹脂配合例として例示することができる。スキン層用の封止材組成物の融点を70℃以上とすることにより、封止材シート1に必要な耐熱性を付与することができる。又、スキン層用の封止材組成物の融点を90℃以下とすることにより、太陽電池モジュールとしての一体化時における封止材シートのモールディング特性を好ましい範囲に保持することができる。
スキン層用の封止材組成物のメルトマスフローレート(MFR)は3.0g/10min以上5.0g/10min未満であればよく、その限りにおいて、MFR0.8g/10min以上5.0g/10min未満のポリエチレン系樹脂を適宜混合して用いることができる。スキン層用の封止材組成物のMFRを上記範囲とすることにより、封止材シート1に耐熱性とモールディング特性とをバランスよく備えさせることができる。
[シラン変性ポリエチレン系樹脂]
封止材シート1は、少なくとも、スキン層12においては、シラン変性ポリエチレン系樹脂が含有されていることが必須であり、更に、スキン層12に含有されているシラン変性ポリエチレン系樹脂は、「高分子量タイプのシラン変性ポリエチレン系樹脂」であることを必須とする。以下、先ずは、一般的な「シラン変性ポリエチレン系樹脂」について説明し、続いて本願発明の重要な構成要件である「高分子量タイプのシラン変性ポリエチレン系樹脂」の詳細について説明する。
シラン変性ポリエチレン系樹脂とは、主鎖となる直鎖低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)等に、エチレン性不飽和シラン化合物を側鎖としてグラフト重合してなるものである。又、本明細書における「シラン変性ポリエチレン系樹脂」とは、少なくともα-オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物をコモノマーとし、必要に応じて更にその他の不飽和モノマーをコモノマーとして共重合して得られる共重合体であり、該共重合体の変性体ないし縮合体も含むものとする。
又、α-オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体、又は、その変性ないし縮合体としては、例えば、α-オレフィンの1種ないし2種以上と、必要ならば、その他の不飽和モノマーの1種ないし2種以上とを、所望の反応容器を使用し、上記と同様に、ラジカル重合開始剤、及び、必要ならば連鎖移動剤の存在下で、同時に、或いは、段階的に重合させ、次いで、その重合によって生成するポリオレフィン系重合体に、エチレン性不飽和シラン化合物の1種ないし2種以上をグラフト共重合させ、更には、必要に応じて、その共重合体によって生成するグラフト共重合体を構成するシラン化合物の部分を変性ないし縮合させて、α-オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体、又は、その変性乃至縮合体を製造することができる。
α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンより選択される1種以上を使用することができる。
エチレン性不飽和シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリカルボキシシランより選択される1種以上を使用することができる。
その他の不飽和モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルアルコールより選択される1種以上を使用することができる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ラウロイルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、分子状酸素、アゾビスイソブチロニトリルアゾイソブチルバレロニトリル等のアゾ化合物等を使用することができる。
連鎖移動剤としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン等のパラフィン系炭化水素、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン等のα-オレフィン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、n-ブチルアルデヒド等のアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素等を使用することができる。
ランダム共重合体を構成するシラン化合物の部分を変性ないし縮合させる方法、或いは、グラフト共重合体を構成するシラン化合物の部分を変性ないし縮合させる方法としては、例えば、錫、亜鉛、鉄、鉛、コバルト等の金属のカルボン酸塩、チタン酸エステル及びキレート化物等の有機金属化合物、有機塩基、無機酸、及び、有機酸等のシラノール縮合触媒等を使用し、α-オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物とのランダム共重合体或いはグラフト共重合体を構成するシラン化合物の部分のシラノール間の脱水縮合反応等を行うことにより、α-オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体の変性ないし縮合体を製造する方法が挙げられる。
シラン変性ポリエチレン系樹脂としては、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであっても好ましく使用することができるが、グラフト共重合体であることがより好ましく、重合用ポリエチレンを主鎖とし、エチレン性不飽和シラン化合物が側鎖として重合したグラフト共重合体が更に好ましい。このようなグラフト共重合体は、接着力に寄与するシラノール基の自由度が高くなるため、太陽電池モジュールにおける他の部材、特にガラス基板等への封止材シートの密着性を向上することができる。
シラン変性ポリエチレン系樹脂を構成する際のエチレン性不飽和シラン化合物の含量としては、全共重合体質量に対して、例えば、0.001~15質量%位、好ましくは、0.01~5質量%位、特に好ましくは、0.05~2質量%位が望ましいものである。α-オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体を構成するエチレン性不飽和シラン化合物の含量が上記範囲である場合には、特に封止材シートのガラスとの密着性が顕著に向上する。シラン化合物の含量が上記範囲を超えると、封止材シートの引っ張り伸び及び熱融着性等が劣る傾向にあるため好ましくない。
封止材シート1においては、以上説明したシラン変性ポリエチレン系樹脂の中でも、特定の分子量範囲にある「高分子量タイプのシラン変性ポリエチレン系樹脂」を、スキン層用の封止材組成物への必須の添加樹脂として用いる。
スキン層用の封止材組成物に必須の添加樹脂として用いる上記の「高分子量タイプのシラン変性ポリエチレン系樹脂」の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が、70000以上120000以下であり、好ましくは90000以上120000以下である。尚、シラン変性ポリエチレン系樹脂の分子量が120000を超えると、MFRが3.0g/10min以上5.0g/10min以下程度であることが好ましいものとして想定されるベース樹脂との相溶性が悪化するため好ましくない。
封止材シート1を構成する各樹脂成分の分子量の測定は、従来公知のGPC法を用いて行うことができる。尚、ポリオレフィンは常温で溶媒に溶けにくいため、トリクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンなどを溶媒として用い140℃以上150℃以下の高温GPCで測定することが好ましい。特に封止材シート1の場合において、スキン層12に含まれるシラン変性ポリエチレン系樹脂の分子量を測定するためには、多層シートである封止材シート1のスキン層を分離して、GPC-FTIR等により分子量測定と成分分析を組み合わせることにより、IRにより同定された成分に相当する分子量を読み取ることで、シラン変性ポリエチレン系樹脂の分子量を特定することが可能である。尚、封止材シート1のスキン層中に分子量Mi(g/mol)のポリマーがNi(個)ある場合の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、分散度dは、それぞれ以下の式によって定義される。
数平均分子量 Mn=Σ(MiNi)/ΣNi
重量平均分子量 Mw=Σ(MiNi)/ΣMiNi
分散度 d=Mw/Mn
[その他の添加成分]
封止材シート1を構成するコア層用及びスキン層用の各封止材組成物、特には、スキン層用の封止材組成物には、適宜、密着性向上剤を添加することができる。密着性向上剤としては、公知のシランカップリング剤を用いることができるが、エポキシ基を有するシランカップリング剤(以下、「エポキシ系シランカップリング剤」とも言う。)又は、メルカプト基を有するシランカップリング(以下、「メルカプト系シランカップリング剤」とも言う。)を、特に好ましく用いることができる。
コア層用及びスキン層用の各封止材組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、封止材シートに耐候性を付与するための耐候性マスターバッチ、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。これらの含有量は、その粒子形状、密度等により異なるものではあるが、それぞれ封止材組成物中に0.001質量%以上5質量%程度の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、封止材シートに、長期に亘る安定した機械強度や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
<封止材シート>
本発明の封止材シートは、上述の封止材組成物を溶融成形することによって製造することができる。
図1に示す通り、封止材シート1は、コア層11を有し、コア層11の両面にスキン層12が形成されている。但し、コア層が多層構造を有し当該コア層内にその他の機能層が配置されている封止材シートであっても、本発明の構成要件を備えるコア層とスキン層を備え、且つ、本発明のその他の構成要件を備える封止材シートである限り本発明の範囲内である。
コア層11とスキン層12を含む3層構造の封止材シート1のMFRは、全層平均で、3.0g/10min以上5.0g/10min未満であり、3.3g/10min以上3.8g/10min未満であることが好ましい。封止材シート1のMFRが、5.0g/10min未満であることにより、封止材シート1に必要な耐熱性を備えさせることができ、又、同MFRが3.0g/10min以上であることにより封止材シート1に必要なモールディング特性を備えさせることができる。
コア層11とスキン層12を含む3層構造の封止材シート1の総厚さは、250μm以上600μm以下であることが好ましく、300μm以上550μm以下であることがより好ましい。総厚さが250μm未満であると充分に衝撃を緩和することができないが、総厚さが250μm以上であれば、例えば、総厚さ250μm程度に封止材シート1を薄膜化した場合においても、モールディング特性と耐熱性とを十分に好ましい水準において兼ね備えるものとすることができる。尚、総厚さが600μmを超えた場合、それ以上の衝撃緩和効果向上の効果は得難く、太陽電池モジュールの薄膜化の要請にも対応できず、且つ、不経済であるので好ましくない。
又、封止材シート1におけるコア層11の厚さは、200μm以上400μm以下であり、好ましくは、250μm以上350μm以下である。又、スキン層12の各層毎の厚さは、30μm以上100μm以下であり、好ましくは、35μm以上80μm以下である。又、コア層の両面に積層されている2層のスキン層12の総厚さは、封止材シート1の総厚さの1/20以上1/3以下であり、好ましくは、1/15以上1/4以下である。封止材シート1の各層の厚さをこのような範囲とすることにより、封止材シート1の耐熱性とモールディング特性を良好な範囲に保持することができる。
封止材シート1のシート化は、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、即ち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により行われる。封止材シートが多層フィルムである場合のシート化の方法の一例として、3種の溶融混練押出機による共押出により成形する方法が挙げられる。
但し、上記いずれの成形方法においても、封止材シート1の製造における溶融成形温度は、当該封止材組成物に含有されるコア層用の封止材組成物のベース樹脂の融点+30℃以上であることが好ましい。具体的には175℃から230℃の高温とすることが好ましく、190℃から210℃の範囲の高温とすることがより好ましい。封止材シート1に用いる封止材組成物は、架橋剤を含有しない熱可塑系の組成物であるため、溶融成形中の不都合な架橋進行の制御を考慮する必要がない。これにより、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする封止材シートの製造においては、従来一般的であった架橋処理を必須とする熱硬化型の封止材組成物を用いた場合の温度制限から解法され、生産性を向上させるために、より高い高温度域に溶融成形温度を設定することができる。これにより、封止材シート1は、従来の熱硬化型の封止材シートよりも高い生産性の下で製造することができる。
<太陽電池モジュール>
封止材シート1は、従来公知の様々な太陽電池モジュールに汎用的に用いることができる。一般に、太陽電池モジュールにおいては、太陽電池素子の両面にこれを挟んで封止する態様で封止材が配置されるが、封止材シート1は、太陽電池素子の両面に封止材として配置することもできるし、いずれか一方の面の封止材のみを、封止材シート1とすることもできる。
封止材シートは、上述の通り、様々な太陽電池モジュールに用いることができるが、中でも合わせガラス構造の両面ガラス保護基板型の太陽電池モジュールや、或いは、例えば薄膜系の太陽電池モジュール等太陽電池素子上にリード線等相対的に高さの大きい凸部が形成されている太陽電池モジュールに、特に好ましく用いることができる。
[両面ガラス保護基板型の太陽電池モジュール]
図2は、本発明の封止材シート1を用いて構成することができる両面ガラス保護基板型の太陽電池モジュール10について、その層構成の一例を示す断面図である。太陽電池モジュール10は、入射光の受光面側から、透明前面基板2、受光面側の封止材1A、太陽電池素子3、非受光面側の封止材1B、裏面保護基板4が、この順で積層されていて、太陽電池素子3は、受光面側の封止材1Aと非受光面側の封止材1Bとの間に封止されている。
両面ガラス保護基板型の太陽電池モジュール10においては、透明前面基板2及び裏面保護基板4はいずれもガラス製の保護基板である。このガラス製の保護基板としては、従来、太陽電池モジュールを構成する透光性を有する基板材料として用いられてきた各種のガラス板材を特に制限なく用いることができる。太陽電池モジュール10は、上記部材以外の部材を含んでもよい。
又、太陽電池素子3についても特に制限はない。単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板を用いて作製する結晶シリコン太陽電池に限らず、アモルファスシリコンや微結晶シリコン、或いはカルコパイライト系の化合物等を用いてなる薄膜系太陽電池(CIGS)も好ましく用いることができる。
裏面保護基板4は、水蒸気バリア性や耐候性等太陽電池モジュールの最外層に配置される保護層に通常求められる物性を有する樹脂シートを用いることができる。又、裏面保護基板4は、透明前面基板2と同様のガラス基板であってもよい。封止材シート1は、金属及びガラスのいずれにも良好な密着性を有するものであるため、裏面保護基板4がガラス製の基板である場合にも好ましく用いることができる。
裏面保護基板が耐候性を有する樹脂フィルムからなる構成の一般的な構成の太陽電池モジュールにおいては、通常、太陽電池モジュールを構成する各シート状の部材からなる積層体の形状を保持するために、この積層体の側面周囲を取り囲んで金属製等の保護フレームが設けられる。しかしながら、ガラス製の保護基板に挟持されてなる両面ガラス保護基板型の太陽電池モジュール10の場合には、重量軽減のために、このような保護フレームを排した、所謂フレームレス構造の太陽電池モジュールも多く提供されている。
このフレームレス構造の両面ガラス保護基板型の太陽電池モジュール10においては、常温での高い引張りせん断接着力(JIS J6850 接着剤-剛性被接着材の引張りせん断接着強さ試験方法による接着力)が封止材に求められる。本発明の封止材シート1は、スキン層に含まれる密着性樹脂の分子量を高い範囲に特定することにより、特段の引張りせん断接着強さを有する封止材シートとされているため、フレームレス構造の両面ガラス保護基板型の太陽電池モジュール10に特に好ましく用いることができる。
[薄膜系の太陽電池モジュール]
図3は、本発明の封止材シート1を用いて構成することができる薄膜系の太陽電池モジュール10Aについて、その層構成の一例を示す断面図である。太陽電池モジュール10Aは、入射光の受光面側から、透明前面基板2、透明前面基板2の表面上に配置された薄膜系の太陽電池素子3、封止材(封止材シート1)、及び裏面保護基板4が順に積層された構成である。薄膜系の太陽電池モジュール10Aにおいては、封止材(封止材シート1)は、太陽電池素子3の非受光面側に積層されている。
ここで、太陽電池モジュール10Aにおいては、図4に示す通り、太陽電池素子3の非受光面側の表面上に、金属電極31や集電用のリード線32による凹凸が存在する。従来のポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする封止材シートを用いた場合、架橋処理や単なる高密度化によって耐熱性を担保しようとすると、図5に示すように、モールディング特性の不足による空隙Vの形成が起こる場合があり、これが問題となっていた。
しかし、耐熱性とモールディング特性を高い水準で両立させた封止材シート1を、この凹凸面に配置した場合には、封止材シート1は、図4に示す通り、太陽電池素子3の非受光面側の表面上に存在する金属電極31や集電用のリード線32による凹凸にも十分に回り込み、上記の空隙Vの形成を防ぐことができる。つまり、封止材シート1は、太陽電池モジュール10Aのように太陽電池素子の表面にリード線32等の凸部によって形成される凹凸が存在する場合に、特に好ましく用いることができる。当該凹凸の凸部の厚さが、封止材シート1の厚さの50%以上90%以下である場合に、封止材シートのモールディング特性は、特によく発揮され、上記の通り、太陽電池素子の表面状の凹凸の存在に起因する空隙Vの形成を十分に防ぐことができる。
より具体的には、リード線32が厚さ(d)250μm程度以上の肉厚のリード線である場合に、封止材シート1は、従来品とは顕著に異なる特段の効果を発揮する。例えば、図5に示すように、肉厚のリード線32が配置されている場合に、従来の一般的なポリエチレン樹脂からなる封止材シート1を、当該凹凸面上に配置したとき、一般的には、封止材シート1の厚さ(d)に対するリード線32の厚さ(d)が、大凡の目安として、50%を超えた場合に、上記の空隙Vの形成が問題となることが多かった。しかし、図4に示すように、封止材シート1を、このような凹凸面に配置した場合においては、封止材シート1の厚さ(d)に対するリード線32の厚さ(d)が90%以下であれば、上記の空隙Vの形成を十分に防ぐことができる。尚、本発明においては、リード線が交差して配置されている場合等、複数のリード線が積層されている状態が存在する場合においては、積層されている部分におけるそれらの複数のリード線の厚さの合計を、上記に言うところの「リード線の厚さ」即ち「凸部の厚さ」と考えるものとする。
[太陽電池モジュールの製造方法]
太陽電池モジュール10は、透明前面基板2、受光面側の封止材1A、太陽電池素子3、非受光面側の封止材1B、裏面保護基板4等を含む太陽電池モジュールの構成部材を順次積層してから真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<太陽電池モジュール用の封止材シートの製造>
以下において説明する封止材組成物原料を下記表1の割合(質量部)で混合し、それぞれ実施例、比較例の封止材シートのコア層用の封止材組成物及びスキン層用の封止材組成物とした。それぞれの封止材組成物をφ30mm押出し機、200mm幅のTダイを有するフィルム成形機を用いて、押出し温度210℃、引き取り速度1.1m/minでコア層用及びスキン層用とするための各樹脂シートを作製し、これらの各樹脂シートを積層して、コア層と両最表面に配置されるスキン層とを備える実施例及び比較例の3層構造の封止材シートを製造した。実施例及び比較例の各封止材シートの厚さは、いずれも、総厚さ450μmとした。実施例及び比較例の3層構造の封止材シートの各層の厚さの比については、いずれの封止材シートについてもスキン層:コア層:スキン層の厚さ比が、1:8:1(スキン層(2層の合計)の総厚さが、封止材シートの総厚さの1/4)となるようにした。尚、比較例5については、厚さ450μmの単層の封止材シートを形成した。
封止材シート用の各樹脂シートを成形するための封止材組成物の材料樹脂としては、以下の原料を使用した。
ポリエチレン系樹脂1~5(表中にて、それぞれ「PE1~5」」と表記)
:いずれも、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(M-LLDPE)。密度、融点、190℃でのMFRについては、それぞれ表1記載の通り。
シラン変性ポリエチレン系樹脂1(表中にて、「PS1」と表記)
:密度0.900g/cm、MFRが2.0g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得たシラン変性ポリエチレン系樹脂。密度0.900g/cm、MFR1.0g/10分。融点90℃。
シラン変性ポリエチレン系樹脂2(表中にて、「PS2」と表記)
:密度0.880g/cm、MFRが3.5g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得たシラン変性ポリエチレン系樹脂。密度0.880g/cm、MFR2.0g/10分。融点60℃。
シラン変性ポリエチレン系樹脂3(表中にて、「PS3」と表記)
:密度0.880g/cm、MFRが30.0g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得たシラン変性ポリエチレン系樹脂。密度0.885g/cm、MFR13.0g/10分。融点58℃。
:ベース樹脂i100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練し、密度0.885g/cm、MFRが13g/10分であるシラン変性ポリエチレン系樹脂を得た。融点58℃。
<スキン層の重量平均分子量>
実施例1、2及び比較例1の各スキン層に含まれるシラン変性ポリエチレン系樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量を、上述のGPC法を用いた測定方法により測定した。結果を表2に示す。
Figure 0007160136000001
Figure 0007160136000002
<評価例1:モールディング特性>
表面がフラットな白板強化ガラスの面上に、リード線(250μm径)を配置し、更に当該リード線を覆って、150mm×150mmにカットした実施例、比較例の各封止材シートを積層したものを設定温度150℃、真空引き3分、大気圧加圧7分で真空加熱ラミネータ処理を行い、それぞれの実施例、比較例について太陽電池モジュール評価用サンプルを得た。この加熱処理中におけるラミネート中の封止材シートの樹脂温度(到達温度)は147℃であった。これらの太陽電池モジュール評価用サンプルについて、目視観察し、下記の評価基準により、モールディング特性を評価した。
(評価基準) A:封止材シートが対面する基材面の凹凸に完全に追従。空隙の形成は観察されなかった。
B:2mm以内の気泡が5個以内観察された。
C:封止材シートの一部が対面する基材面の凹凸に完全に追従せず、リード線の近辺に一部ラミネート不良部分(空隙)が形成された。
評価結果を「モールディング特性」として表4に記す。
<評価例2:耐熱性試験>
耐熱性試験として耐熱クリープ試験を行った。上記評価例1と同じガラス板に5cm×7.5cmに切り出した実施例、比較例の封止材シートを1枚重ね置き、その上から5cm×7.5cmの評価例1と同じガラス板を重ね置き、評価例1と同条件で真空加熱ラミネータ処理を行い、評価用試料を作成した。この後、大判ガラスを垂直に置き、90℃で12時間放置し、放置後の5cm×7.5cmのガラス板の移動距離(mm)を測定し、評価した。評価は以下の基準で行った。
(評価基準) A:0.0mm
B:0.0mm超え1.0mm未満
C:1.0mm以上
評価結果を「耐熱性」として表4に記す。
<評価例3:引張りせん断接着強さ>
両面ガラス保護基板型のモジュールへの適応性の指標となる引張りせん断接着強さを測定した。測定はJIS K7197による試験方法にて行った。上記評価例1と同じガラス板を2枚用い、2.5cm×1.27cmに切り出した実施例、比較例の封止材シートを2枚のガラス板の間に置き、評価例1と同条件で真空加熱ラミネータ処理を行い密着させて評価用試料を作成した。この後、引張り速度1.27mm/分で上記試験方法による引張りせん断接着強さの測定を行い評価した。評価は以下の基準で行った。
(評価基準) A:1000N以上
B:500N以上1000N未満
C:500N未満
評価結果を「引張りせん断接着強さ」として表4に記す。
Figure 0007160136000003
Figure 0007160136000004
表1~4より、本発明の封止材シートは、ポリエチレン系樹脂を用いた封止材シートでありながら、架橋工程が不要で生産性が高く、且つ、耐熱性とモールディング特性に加えて、更には、常温での高い引張りせん断接着力をも高い水準で兼ね備えた太陽電池モジュール用の封止材シートであることが分かる。
1 封止材シート
11 コア層
12 スキン層
2 透明前面基板
3 太陽電池素子
31 金属電極
32 リード線
4 裏面保護基板
10 太陽電池モジュール

Claims (1)

  1. 太陽電池モジュール用の封止材シートであって、
    該封止材シートは、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とし、コア層と、両最表面に配置されるスキン層と、を含む多層シートであって、
    前記コア層は、密度が0.880g/cm以上0.930g/cm以下で、融点70℃以上であり、
    前記スキン層は、密度が0.880g/cm以上0.900g/cm以下で、融点90℃以下であり、
    前記スキン層は、シラン変性ポリエチレン系樹脂を含有し、該スキン層に含有されるシラン変性ポリエチレン系樹脂のポリスチレン換算による重量平均分子量が、70000以上120000以下であって、前記スキン層の全樹脂成分中における重合シラン量が、300ppm以上2000ppm以下であって
    全層平均でのMFRが、3.0g/10min以上3.8g/10min未満である、封止材シート。
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