JP7160136B2 - 太陽電池モジュール用の封止材シート、及びそれを用いた太陽電池モジュール - Google Patents
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Description
本発明の封止材シートは、以下に詳細を説明する封止材組成物を溶融成形することによって製造することができる。封止材組成物は、コア層用の封止材組成物とスキン層用の封止材組成物とを、それぞれ各層毎に使い分ける。そして、これらコア層用、スキン層用の各封止材組成物により、コア層を内層とし、スキン層を最表面の層とした3層構造の多層シートを成形することにより、例えば、図1に示す封止材シート1に代表される本発明の封止材シートを製造することができる。尚、本明細書において、スキン層とは、多層の封止材シートの両最表面側に配置される層のことを言い、コア層とは多層の封止材シートにおける上記スキン層以外の内層のことを言う。コア層自体が更に多層の内部構造を有するものであってもよいが、単層構造のコア層の両面にスキン層が積層されている3層構造の封止材シート1が、本発明の代表的な実施形態であり、以下、この封止材シート1を中心に本発明の説明を行う。
コア層用の封止材組成物は、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とし、架橋剤を含有せず、封止材シートの成形時に架橋工程を必要としない熱可塑系の封止材組成物である。又、ベース樹脂とする低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)等の他、シラン変性ポリエチレン系樹脂等のその他の樹脂やその他の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲において適量含有しているものであってもよい。
MFR(g/10min):JIS K7210に準拠して測定。具体的には、ヒーターで加熱された円筒容器内で合成樹脂を、190℃で加熱・加圧し、容器底部に設けられた開口部(ノズル)から10分間あたりに押出された樹脂量を測定した。試験機械は押出し形プラストメータを用い、押出し荷重については2.16kgとした。
尚、多層の封止材シートのMFRは、全ての層が一体積層された多層状態のまま、上記処理による測定を行い、得た測定値を当該多層の封止材シートのMFRの値とした。
スキン層用の封止材組成物も、コア層用の封止材組成物と同様に、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とし、架橋剤を含有しない熱可塑系の封止材組成物である。又、その他の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲において適量含有しているものであってもよい点においても、コア層用の封止材組成物と同様である。但し、スキン層用の封止材組成物は、ポリスチレン換算による重量平均分子量が、70000以上のシラン変性ポリエチレン系樹脂(高分子量タイプのシラン変性ポリエチレン系樹脂)を特定量含有することを必須とする点が、コア層用の封止材組成物とは異なる。
封止材シート1は、少なくとも、スキン層12においては、シラン変性ポリエチレン系樹脂が含有されていることが必須であり、更に、スキン層12に含有されているシラン変性ポリエチレン系樹脂は、「高分子量タイプのシラン変性ポリエチレン系樹脂」であることを必須とする。以下、先ずは、一般的な「シラン変性ポリエチレン系樹脂」について説明し、続いて本願発明の重要な構成要件である「高分子量タイプのシラン変性ポリエチレン系樹脂」の詳細について説明する。
数平均分子量 Mn=Σ(MiNi)/ΣNi
重量平均分子量 Mw=Σ(Mi2Ni)/ΣMiNi
分散度 d=Mw/Mn
封止材シート1を構成するコア層用及びスキン層用の各封止材組成物、特には、スキン層用の封止材組成物には、適宜、密着性向上剤を添加することができる。密着性向上剤としては、公知のシランカップリング剤を用いることができるが、エポキシ基を有するシランカップリング剤(以下、「エポキシ系シランカップリング剤」とも言う。)又は、メルカプト基を有するシランカップリング(以下、「メルカプト系シランカップリング剤」とも言う。)を、特に好ましく用いることができる。
本発明の封止材シートは、上述の封止材組成物を溶融成形することによって製造することができる。
封止材シート1は、従来公知の様々な太陽電池モジュールに汎用的に用いることができる。一般に、太陽電池モジュールにおいては、太陽電池素子の両面にこれを挟んで封止する態様で封止材が配置されるが、封止材シート1は、太陽電池素子の両面に封止材として配置することもできるし、いずれか一方の面の封止材のみを、封止材シート1とすることもできる。
図2は、本発明の封止材シート1を用いて構成することができる両面ガラス保護基板型の太陽電池モジュール10について、その層構成の一例を示す断面図である。太陽電池モジュール10は、入射光の受光面側から、透明前面基板2、受光面側の封止材1A、太陽電池素子3、非受光面側の封止材1B、裏面保護基板4が、この順で積層されていて、太陽電池素子3は、受光面側の封止材1Aと非受光面側の封止材1Bとの間に封止されている。
図3は、本発明の封止材シート1を用いて構成することができる薄膜系の太陽電池モジュール10Aについて、その層構成の一例を示す断面図である。太陽電池モジュール10Aは、入射光の受光面側から、透明前面基板2、透明前面基板2の表面上に配置された薄膜系の太陽電池素子3、封止材(封止材シート1)、及び裏面保護基板4が順に積層された構成である。薄膜系の太陽電池モジュール10Aにおいては、封止材(封止材シート1)は、太陽電池素子3の非受光面側に積層されている。
太陽電池モジュール10は、透明前面基板2、受光面側の封止材1A、太陽電池素子3、非受光面側の封止材1B、裏面保護基板4等を含む太陽電池モジュールの構成部材を順次積層してから真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。
以下において説明する封止材組成物原料を下記表1の割合(質量部)で混合し、それぞれ実施例、比較例の封止材シートのコア層用の封止材組成物及びスキン層用の封止材組成物とした。それぞれの封止材組成物をφ30mm押出し機、200mm幅のTダイを有するフィルム成形機を用いて、押出し温度210℃、引き取り速度1.1m/minでコア層用及びスキン層用とするための各樹脂シートを作製し、これらの各樹脂シートを積層して、コア層と両最表面に配置されるスキン層とを備える実施例及び比較例の3層構造の封止材シートを製造した。実施例及び比較例の各封止材シートの厚さは、いずれも、総厚さ450μmとした。実施例及び比較例の3層構造の封止材シートの各層の厚さの比については、いずれの封止材シートについてもスキン層:コア層:スキン層の厚さ比が、1:8:1(スキン層(2層の合計)の総厚さが、封止材シートの総厚さの1/4)となるようにした。尚、比較例5については、厚さ450μmの単層の封止材シートを形成した。
ポリエチレン系樹脂1~5(表中にて、それぞれ「PE1~5」」と表記)
:いずれも、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(M-LLDPE)。密度、融点、190℃でのMFRについては、それぞれ表1記載の通り。
シラン変性ポリエチレン系樹脂1(表中にて、「PS1」と表記)
:密度0.900g/cm3、MFRが2.0g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得たシラン変性ポリエチレン系樹脂。密度0.900g/cm3、MFR1.0g/10分。融点90℃。
シラン変性ポリエチレン系樹脂2(表中にて、「PS2」と表記)
:密度0.880g/cm3、MFRが3.5g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得たシラン変性ポリエチレン系樹脂。密度0.880g/cm3、MFR2.0g/10分。融点60℃。
シラン変性ポリエチレン系樹脂3(表中にて、「PS3」と表記)
:密度0.880g/cm3、MFRが30.0g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得たシラン変性ポリエチレン系樹脂。密度0.885g/cm3、MFR13.0g/10分。融点58℃。
:ベース樹脂i100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練し、密度0.885g/cm3、MFRが13g/10分であるシラン変性ポリエチレン系樹脂を得た。融点58℃。
実施例1、2及び比較例1の各スキン層に含まれるシラン変性ポリエチレン系樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量を、上述のGPC法を用いた測定方法により測定した。結果を表2に示す。
表面がフラットな白板強化ガラスの面上に、リード線(250μm径)を配置し、更に当該リード線を覆って、150mm×150mmにカットした実施例、比較例の各封止材シートを積層したものを設定温度150℃、真空引き3分、大気圧加圧7分で真空加熱ラミネータ処理を行い、それぞれの実施例、比較例について太陽電池モジュール評価用サンプルを得た。この加熱処理中におけるラミネート中の封止材シートの樹脂温度(到達温度)は147℃であった。これらの太陽電池モジュール評価用サンプルについて、目視観察し、下記の評価基準により、モールディング特性を評価した。
(評価基準) A:封止材シートが対面する基材面の凹凸に完全に追従。空隙の形成は観察されなかった。
B:2mm2以内の気泡が5個以内観察された。
C:封止材シートの一部が対面する基材面の凹凸に完全に追従せず、リード線の近辺に一部ラミネート不良部分(空隙)が形成された。
評価結果を「モールディング特性」として表4に記す。
耐熱性試験として耐熱クリープ試験を行った。上記評価例1と同じガラス板に5cm×7.5cmに切り出した実施例、比較例の封止材シートを1枚重ね置き、その上から5cm×7.5cmの評価例1と同じガラス板を重ね置き、評価例1と同条件で真空加熱ラミネータ処理を行い、評価用試料を作成した。この後、大判ガラスを垂直に置き、90℃で12時間放置し、放置後の5cm×7.5cmのガラス板の移動距離(mm)を測定し、評価した。評価は以下の基準で行った。
(評価基準) A:0.0mm
B:0.0mm超え1.0mm未満
C:1.0mm以上
評価結果を「耐熱性」として表4に記す。
両面ガラス保護基板型のモジュールへの適応性の指標となる引張りせん断接着強さを測定した。測定はJIS K7197による試験方法にて行った。上記評価例1と同じガラス板を2枚用い、2.5cm×1.27cmに切り出した実施例、比較例の封止材シートを2枚のガラス板の間に置き、評価例1と同条件で真空加熱ラミネータ処理を行い密着させて評価用試料を作成した。この後、引張り速度1.27mm/分で上記試験方法による引張りせん断接着強さの測定を行い評価した。評価は以下の基準で行った。
(評価基準) A:1000N以上
B:500N以上1000N未満
C:500N未満
評価結果を「引張りせん断接着強さ」として表4に記す。
11 コア層
12 スキン層
2 透明前面基板
3 太陽電池素子
31 金属電極
32 リード線
4 裏面保護基板
10 太陽電池モジュール
Claims (1)
- 太陽電池モジュール用の封止材シートであって、
該封止材シートは、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とし、コア層と、両最表面に配置されるスキン層と、を含む多層シートであって、
前記コア層は、密度が0.880g/cm3以上0.930g/cm3以下で、融点70℃以上であり、
前記スキン層は、密度が0.880g/cm3以上0.900g/cm3以下で、融点90℃以下であり、
前記スキン層は、シラン変性ポリエチレン系樹脂を含有し、該スキン層に含有されるシラン変性ポリエチレン系樹脂のポリスチレン換算による重量平均分子量が、70000以上120000以下であって、前記スキン層の全樹脂成分中における重合シラン量が、300ppm以上2000ppm以下であって、
全層平均でのMFRが、3.0g/10min以上3.8g/10min未満である、封止材シート。
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