JP2016191697A - アスファルト混合物で舗装した鉄筋コンクリート床板の鉄筋の腐食性状評価方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鉄筋コンクリートの表面に舗装されたアスファルト混合物の表面を、予め定められた所定時間、電磁誘導加熱によって加熱し、アスファルト混合物の表面の温度を計測し、時間と共に変化する前記アスファルトの表面の温度情報を取得し、鉄筋が腐食していない状態におけるアスファルト混合物の表面温度と、鉄筋の腐食性状を評価すべきアスファルト混合物の表面温度の違いから、コンクリート内の鉄筋の腐食率を算定し、得られた算定値から鉄筋腐食性状評価を実施する。
【選択図】図1
Description
この床板には、様々な荷重を受けた際に、車両の走行性に悪影響を及ぼすような変形を起こさず、その荷重に耐えうるとともに、受けた荷重を主桁などに伝達する機能が要求される。
このような床板として、表面にアスファルト舗装が施された鉄筋コンクリート(以下、アスファルト舗装RC床板という)がある。
この腐食は、床板の設置場所、設置環境、維持管理、荷重による負荷の大小、施工内容などの様々な要因により、さまざまなパターンや範囲で進行する。
また、この進行の度合いも、一律ではなく、部分的に極度に進行することもある。
このため、アスファルト舗装RC床板の鉄筋の鉄筋の腐食性状を、迅速かつ正確に評価する必要があった。
しかしながら、上記の従来技術では、多段階における画像処理、画像再変換が必要な上、得られた画像を評価し、その画像の評価結果から腐食率を推定する、という複雑な工程が必要なため、鉄筋の腐食率を迅速かつ正確に算定することは困難であるという問題があった。
鉄筋コンクリートの表面に舗装されたアスファルト混合物の表面が、予め定められた所定時間、電磁誘導加熱によって加熱される加熱ステップと、
アスファルト混合物の表面の温度が計測され、時間と共に変化する前記アスファルトの表面の温度情報が取得される温度計測ステップと、
鉄筋が腐食していない状態におけるアスファルト混合物の表面温度と、鉄筋の腐食性状を評価すべきアスファルト混合物の表面温度の違いから、コンクリート内の鉄筋の腐食率を算定する腐食率算定ステップと
からなることを特徴とする。
腐食率算定ステップにおいて、表面温度の違いが、各アスファルト混合物の表面の最高温度における温度上昇量に基づいて評価され、鉄筋が腐食していない状態におけるアスファルト混合物の表面温度の温度上昇量に対する、鉄筋の腐食性状を評価すべきアスファルト混合物の表面温度の温度上昇量が少ないほど、コンクリート内の鉄筋の腐食率が高いと評価され、両者の温度上昇量の差を用いて、コンクリート内の鉄筋の腐食率が算定され、
得られた算定値から鉄筋腐食性状評価を実施する
ことを特徴とする。
腐食率算定ステップで腐食率算定式が用いられ、この腐食率算定式が、
健全時のアスファルト混合物の表面温度の単位時間当たりの健全温度上昇量(α)と、
鉄筋の腐食性状を評価すべきアスファルト混合物の表面温度の実測時の単位時間当たりの実測温度上昇量(α’)と、
健全時と実測時のアスファルト混合物の表面温度の温度差(Δθsurf)と、
コンクリートの熱容量(I)と、
アスファルトの熱容量(I’)と、
熱伝達計数(J)と、
コンクリートに蓄えられる単位時間における単位面積あたりの熱量(L)と、
コンクリート、腐食性生物およびアスファルト混合物における熱容量に関する項(M)と
を変数として腐食率(%)を求める式である
ことを特徴とする。
図1は、本発明にかかるアスファルト混合物で舗装した鉄筋コンクリート床板の鉄筋の腐食性状評価方法の流れを示すフロー図である。
本発明は、アスファルト舗装RC床板の内部の鉄筋の腐食率を、アスファルト舗装の材料であるアスファルト混合物の表面温度を計測し、その温度変化の変遷からコンクリート内の鉄筋の腐食率を算定し、手筋の腐食性状を評価するものである。
「鉄筋の腐食率」とは、「鉄筋の質量減少率」または「鉄筋径の減少率」ともいう。
この温度履歴測定位置は、アスファルト混合物の表面が水平上面だとすれば、鉄筋に沿った鉛直面上、または、その鉛直面の近傍に設定されることが望ましい。
次に、予め定められた所定時間、温度履歴測定位置の温度の計測を開始する(温度計測ステップS2)。
この温度計測は、例えば、赤外線サーモグラフィカメラを介して得られた画像の解析によって実行する。
なお、この特定の時点は、加熱開始時や、加熱終了時を基準とした特定の時間経過後や、単位時間を基準とするものであってもよい。
そして、同定された温度上昇量は、測定されたアスファルト舗装RC床板の構成情報と紐付けされてデータベース化される(ステップS4)。
次に、得られた温度上昇量の差を用い、後述する式によって鉄筋の腐食率が算定されるコンクリート内の鉄筋の腐食率が算定される(腐食率算定ステップS6)。
鉄筋の熱が、コンクリートおよびアスファルト混合物に拡散されることにより、コンクリートの温度が、鉄筋の周囲から徐々に上昇し、続いて、アスファルト混合物の温度も上昇し、その熱拡散が進行することにより、アスファルト混合物の表面温度が上昇する。
この腐食層は、断熱層として機能するため、鉄筋の腐食率(腐食層の厚さ)に応じ、最高温度の実測値が低下する。
このため、本発明では、電磁誘導加熱により、アスファルト舗装RC床板(内の鉄筋)を、加熱し、その後のアスファルト混合物の表面の温度を計測すれば、その温度の変遷から、鉄筋の腐食率を算定することができるようになる。
ここでは、アスファルト舗装RC床板として、以下のように構成される試験体を用い、発明を具体的に説明し、検証を行う。
鉄筋11は、その外周面に沿って、必要に応じ、所要の腐食率(厚さ)になるよう人工的に形成された図示しない腐食性生物が設けられる。
温度履歴測定位置1aは、直方体状のブロックの上面であって、鉄筋11の上方、具体的には、図2、図3に示される鉄筋コンクリート1の上面の中央に設定される。
電磁誘導用コイル21は、アスファルト舗装RC床板1の上面中央、即ち、温度履歴測定位置1aを覆うように、間に発泡スチレンボード3を挟んだ状態で、アスファルト舗装RC床板1上に載置される。
また、この発泡スチレンボード3は、電磁誘導用コイル21の設置時や取り除くときに、電磁誘導用コイル21をアスファルト混合物12から保護する役割も兼ね備える。
なお、発泡スチレンボード3は、実施態様に応じ、省略することも可能であり、例えば、同様の機能を電磁誘導用コイルのケースなどに設けたり、電磁誘導用コイルからの熱が放出されないような構成としたりしてもよい。
また、電磁誘導用コイル21は、鉄筋11の加熱の終了後、後述のカメラ4の撮影を介した温度測定のために、アスファルト舗装RC床板1の上から取り除かれる。
カメラ4は、その撮影画像を、図示しない解析装置によって解析し、温度履歴測定位置1aの加熱終了後からの表面温度の変遷を経過時間に対応した温度情報として取得する。
なお、ここでは、最高温度との差異は、加熱終了直後の温度としたが、これは、加熱前の温度であっても良い。
ここで、健全時、即ち、非腐食鉄筋と、腐食鉄筋の熱的物性値を以下に示す。
上記の腐食生成物の効果を考慮すると、腐食生成物の有無によるアスファルト混合物の表面温度の差異は、図5に示したように表れる。
この図5によると、鉄筋の周囲に形成される腐食生成物の層の厚さによって、鉄筋から放熱される熱量の大きさが変化し、この変化が、表面温度の差異として現れる。
本発明は、この表面温度の差異に基づき、鉄筋の腐食率を算定するものである。
図6は、図4に示したシステムで得られたアスファルト混合物の表面温度の温度履歴の概要を示すグラフ、図7は、図4に示したシステムにおけるアスファルト舗装RC床板の端部からの距離とアスファルト混合物の表面温度の関係を示すグラフである。
ここで、健常状態、即ち、非腐食鉄筋のものと、腐食鉄筋のものとを比較すると、非腐食鉄筋におけるアスファルト混合物の表面温度は、腐食鉄筋におけるアスファルト混合物の表面温度に比べ、非腐食鉄筋の方が全体的に高い。
また、温度計測の開始時の温度と、計測された最高温度との差、即ち、表面温度の上昇量は、非腐食鉄筋のものに比べ、非腐食鉄筋の方が大きい。
具体的には、鉄筋が同じ温度まで加熱された場合、腐食鉄筋の側は、腐食生成物の層が、鉄筋の放熱を妨げるため、アスファルト混合物の表面温度は、腐食鉄筋の側が全体的に低めとなると共に、単位時間当たりに放熱される熱量が抑制されるため、表面温度の上昇量は、小さくなることを示す。
この結果、鉄筋の腐食性状は、アスファルト混合物の表面温度の差として明確に表出し、この温度差に基づけば、鉄筋の腐食率を算定することが可能となることがわかる。
まず、試験体の共通規格について説明する。
試験体となるアスファルト舗装RC床板1の寸法は横200mm、高さ240mm、奥行き600mmである、鉄筋11はD16異形鉄筋である。
また、高さ240mmのうち、下層となるコンクリート10の層の高さは150mm、上層となるアスファルト混合物12の層の高さは70mmである。
また、鉄筋11とアスファルト混合物12の表面との距離、すなわち、かぶり厚さは100mmである。
また、加熱装置2の消費出力は、1.6kWである。
・腐食率:0%、1%、5%
・加熱時間:900秒、600秒
図8は、実施例1の試験の900秒加熱の温度上昇量の変遷を示すグラフ、図9は、実施例1の試験の600秒加熱の温度上昇量の変遷を示すグラフ、図10は、実施例1の試験から得られるアスファルト混合物の表面温度の変遷の概要を示すグラフ、図11は、実施例1の試験から得られるアスファルト混合物の表面温度に差異が生じる仕組みを示す説明図、図12は、腐食率算定式で得られた腐食率の算定値と、実測腐食率とを比較したグラフである。
〔900秒加熱の群〕
・試験体1:RCK100−φ16−N
鉄筋腐食率:0%
加熱時間:900秒
鉄筋腐食率:1%
加熱時間:900秒
鉄筋腐食率:5%
加熱時間:900秒
・試験体4:RCK100−φ16−N
鉄筋腐食率:0%
加熱時間:400秒
鉄筋腐食率:1%
加熱時間:400秒
鉄筋腐食率:5%
加熱時間:400秒
上記の試験のうち、図9には、試験体4と試験体6の試験結果を示す。
この結果が示すように、上記の試験から、アスファルト混合物の表面の温度上昇量は、腐食率5%の鉄筋の試験体が、非腐食鉄筋の試験体よりも小さいことがわかった。
なお、この実施例では、床板は上層にアスファルト混合物が採用されているが、アスファルト混合物以外の表層材料であっても、同様の結果が認められるため、様々な表層材料を備えた床板にも、本発明の鉄筋の腐食性状の評価方法を適用することは可能である。
このグラフによると、鉄筋が健全であれば表面温度が高く、腐食率が高くなるに従い、表面温度が低くなることがわかる。
上記のように、アスファルト混合物の表面温度に、高低の差異が生じる仕組みは、図11に示したとおりである。
図11において、アスファルト混合物の表面温度の差異は、抑制熱量の差異である。
Wst:非腐食鉄筋蓄積熱量
Wco:腐食鉄筋蓄積熱量
n:腐食率
(1−n)Wst:非腐食領域蓄積熱量
nW’co:腐食領域蓄積熱量
熱量のつりあい式は、コンクリートとアスファルト混合物に蓄積される熱量と、コンクリート内に流入する熱量から、アスファルト混合物から大気中に逃げる熱量を引いた物を等価とすることを前提とする。
上記の実施例の結果、および、上記の考察から導き出される腐食率算定式は以下のとおりである。
α:健全時アスファルト混合物の表面の単位時間当たりの温度上昇量
α’:実測アスファルト混合物の表面の単位時間当たりの温度上昇量
Δθsurf:健全時と実測のアスファルト混合物の表面温度差
I:熱容量(コンクリート)
I’熱容量(アスファルト混合物)
J:熱伝達計数
L:コンクリートに蓄えられる単位時間および単位面積あたりの熱量
M:熱容量に関する項(コンクリート、腐食生成物およびアスファルト混合物)
このグラフでは、上記の実施例1で得られた試験体2、3、5、6の試験結果をグラフ上に×印で示した。
両グラフの斜めの直線は、推定腐食率と実測腐食率とが一致する線を示す。
この結果、本発明では、算定式によって得られた推定腐食率は、実測腐食率に近似することが判明した。
1a 温度履歴測定位置
10 コンクリート
11 鉄筋
12 アスファルト混合物
2 加熱装置
20 高周波インバータ
21 電磁誘導用コイル
3 発泡スチレンボード
4 カメラ
4a 撮影軸
Claims (3)
- 鉄筋コンクリートの表面に舗装されたアスファルト混合物の表面が、予め定められた所定時間、電磁誘導加熱によって加熱される加熱ステップと、
アスファルト混合物の表面の温度が計測され、時間と共に変化する前記アスファルトの表面の温度情報が取得される温度計測ステップと、
鉄筋が腐食していない状態におけるアスファルト混合物の表面温度と、鉄筋の腐食性状を評価すべきアスファルト混合物の表面温度の違いから、コンクリート内の鉄筋の腐食率を算定する腐食率算定ステップと
からなるアスファルト混合物で舗装した鉄筋コンクリート床板の鉄筋の腐食性状評価方法。 - 腐食率算定ステップにおいて、表面温度の違いが、各アスファルト混合物の表面の最高温度における温度上昇量に基づいて評価され、鉄筋が腐食していない状態におけるアスファルト混合物の表面温度の温度上昇量に対する、鉄筋の腐食性状を評価すべきアスファルト混合物の表面温度の温度上昇量が少ないほど、コンクリート内の鉄筋の腐食率が高いと評価され、両者の温度上昇量の差を用いて、コンクリート内の鉄筋の腐食率が算定され、
得られた算定値から鉄筋腐食性状評価を実施する
ことを特徴とする請求項1に記載のアスファルト混合物で舗装した鉄筋コンクリート床板の鉄筋の腐食性状評価方法。 - 腐食率算定ステップで腐食率算定式が用いられ、この腐食率算定式が、
健全時のアスファルト混合物の表面温度の単位時間当たりの健全温度上昇量(α)と、
鉄筋の腐食性状を評価すべきアスファルト混合物の表面温度の実測時の単位時間当たりの実測温度上昇量(α’)と、
健全時と実測時のアスファルト混合物の表面温度の温度差(Δθsurf)と、
コンクリートの熱容量(I)と、
アスファルトの熱容量(I’)と、
熱伝達計数(J)と、
コンクリートに蓄えられる単位時間における単位面積あたりの熱量(L)と、
コンクリート、腐食性生物およびアスファルト混合物における熱容量に関する項(M)と
を変数として腐食率(%)を求める式である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄筋コンクリートの鉄筋腐食性状評価方法。
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