JP2017173274A - 鉄筋コンクリート構造物の耐力評価方法、及び耐力評価プログラム - Google Patents
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Abstract
Description
(1)主筋とせん断補強筋それぞれの腐食の進行程度を個別に評価することから、現実の構造物耐力を的確に判定することができる。特に、主筋よりもせん断補強筋が先行して腐食する状況を正しく評価する点で、従来に比してより高い信頼度で判定することができる。
(2)鉄筋コンクリート構造物に必要な補修や補強の内容や実施時期、あるいは建替えの要否などの判断に有用な情報を提供することができる。
既述のとおり、本願発明は主筋とせん断補強筋の経時的な腐食進行の相違に注目したうえで鉄筋コンクリート構造物の耐力を評価する、という技術的特徴を備えている。そこで、まずは時間の経過とともに進行する鉄筋の腐食について説明する。
次に、本願発明の鉄筋コンクリート構造物の耐力評価方法について、図5を参照しながら説明する。図5は、本願発明の鉄筋コンクリート構造物の耐力評価方法の主要な工程の流れを示すフロー図である。
本願発明では、鉄筋コンクリートの曲げ耐力とせん断耐力の比である「曲げせん断耐力比」を求めることから、鉄筋コンクリートのせん断耐力、及び曲げ耐力をそれぞれ得る必要があり、そのためにはせん断補強筋の腐食量を算出し(第1腐食量算出工程:Step211)、主筋の腐食量を算出する(第2腐食量算出工程:Step221)必要がある。まずはせん断補強筋の腐食量の算出から詳しく説明する。
主筋の腐食量を算出する手法も、せん断補強筋と同様、主筋の腐食進行推移(以下、「第2腐食進行推移」という。)を利用する手法と、現実に発生したひび割れに基づく手法の場合がある。第2腐食進行推移を利用する手法の場合、第2腐食進行推移を推定し、現時点における主筋の腐食量を求める。具体的には、塩化物拡散方程式を用いてコンクリート内の塩化物イオン濃度分布の経時変化を得る(図3のStep101)とともに、主筋の腐食が開始する時期(以下、「第2腐食開始時期」という。)を求め(図3のStep102)、ひび割れ発生前の速度を「第2ひび割れ発生前腐食速度」として、ひび割れ発生後の速度を「第2ひび割れ発生後腐食速度」として推定する(図3のStep103)。そして、コンクリートにひび割れが発生する際の主筋の腐食量(以下、「第2ひび割れ腐食量」という。)をFEM解析で算出し(図3のStep104)、主筋が腐食したことによってコンクリートにひび割れが生じる時期(以下、「第2ひび割れ発生時期」という。)を求め、主筋の第2腐食進行推移を推定する(図3のStep106)。
鉄筋コンクリートのせん断耐力は、コンクリートと鉄筋の断面積により定められる。コンクリートは、一般的に時間の経過に伴い断面積は変化しないとされるが、鉄筋は腐食するため時間の経過に伴い断面積は減少していく。なおせん断耐力に寄与する鉄筋は、せん断補強筋と主筋の両方である。そこで、せん断補強筋の腐食量からせん断補強筋の残存鉄筋量を算出し(第1残存鉄筋量算出工程:Step212)、主筋の腐食量から主筋の残存鉄筋量を算出して(第2残存鉄筋量算出工程:Step222)、これらせん断補強筋の残存鉄筋量と、主筋の残存鉄筋量、コンクリート断面に基づいて鉄筋コンクリートのせん断耐力を算出する(せん断耐力算出工程:Step213)。
鉄筋コンクリートの曲げ耐力は、主筋の鉄筋径や、降伏強度、かぶり深さにより定められる。つまり、曲げ耐力に寄与するのは主に主筋である。第2腐食量算出工程(Step221)で主筋の腐食量が得られ、第2残存鉄筋量算出工程(Step222)で主筋の残存鉄筋量が得られると、この主筋の残存鉄筋量に基づいて鉄筋コンクリートの曲げ耐力を算出する(曲げ耐力算出工程:Step223)。
鉄筋コンクリートのせん断耐力と曲げ耐力が求められると、せん断耐力を曲げ耐力で除した曲げせん断耐力比を求める(曲げせん断耐力比算出工程:Step231)。図7は、鉄筋コンクリートの曲げせん断耐力比の時間変化を説明するグラフ図であり、(a)はせん断補強筋の腐食進行推移(第1腐食進行推移)と主筋の腐食進行推移(第2腐食進行推移)を示し、(b)は時間の経過と曲げせん断耐力比の関係を示している。この図から分かるように、主筋よりもせん断補強筋の腐食の方が早く進行することから、主筋が腐食する時期(第2腐食開始時期)より前から曲げせん断耐力比は低減していき、せん断補強筋の腐食によるひび割れが生じる時期(第1ひび割れ発生時期)から急激に曲げせん断耐力比は低減する。
その時点における鉄筋コンクリートの曲げせん断耐力比が得られると、あらかじめ設定された閾値と照らし合わせ(Step232)、鉄筋コンクリート構造物の耐力を判定する(耐力評価工程:Step233)。例えば、図7(b)に示すように2段階の閾値を設定し、曲げせん断耐力比が閾値1.5を下回ると「やや危険」と判断し、曲げせん断耐力比が閾値1.0を下回ると「危険」と判断することができる。また、図7(b)と現時点を照らし合わせることで、鉄筋コンクリート構造物が「やや危険」となる時期や、「危険」となる時期を予測することができ、すなわち当該鉄筋コンクリート構造物の寿命予測を行うこともできる(寿命予測工程:Step234)。
本願発明の鉄筋コンクリート構造物の耐力評価プログラムについて、図5を参照しながら説明する。なお、本願発明の鉄筋コンクリート構造物の耐力評価プログラムは、ここまで説明してきた内容で鉄筋コンクリート構造物の耐力を評価するプログラムであり、したがって「2.鉄筋コンクリート構造物の耐力評価方法」と重複する内容の説明は避け、鉄筋コンクリート構造物の耐力評価プログラムに特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.鉄筋コンクリート構造物の耐力評価方法」で記載したものと同様である。
Claims (8)
- 鉄筋コンクリート構造物の耐力を評価する方法において、
鉄筋径とかぶり深さに基づいて、せん断補強筋の腐食量を求める第1腐食量算出工程と、
鉄筋径とかぶり深さに基づいて、主筋の腐食量を求める第2腐食量算出工程と、
前記第1腐食量算出工程で得られた腐食量に基づいて、前記せん断補強筋の残存鉄筋量を求める第1残存鉄筋量算出工程と、
前記第2腐食量算出工程で得られた腐食量に基づいて、前記主筋の残存鉄筋量を求める第2残存鉄筋量算出工程と、
前記せん断補強筋及び前記主筋の残存鉄筋量に基づいて、鉄筋コンクリートのせん断耐力を算出するせん断耐力算出工程と、
前記主筋の残存鉄筋量に基づいて、鉄筋コンクリートの曲げ耐力を算出する曲げ耐力算出工程と、
前記せん断耐力算出工程で得られた鉄筋コンクリートのせん断耐力と、前記曲げ耐力算出工程で得られた鉄筋コンクリートの曲げ耐力と、に基づいて鉄筋コンクリートの曲げせん断耐力比を求める曲げせん断耐力比算出工程と、
前記曲げせん断耐力比算出工程で得られた鉄筋コンクリートの曲げせん断耐力比と、あらかじめ設定された閾値と、を比較することで前記鉄筋コンクリート構造物の耐力を判定する耐力評価工程と、
を備えた、ことを特徴とする鉄筋コンクリート構造物の耐力評価方法。 - 時間の経過と前記せん断補強筋の腐食量との関係を、第1腐食進行推移として推定する、第1腐食進行推移推定工程と、
時間の経過と前記主筋の腐食量との関係を、第2腐食進行推移として推定する、第2腐食進行推移推定工程と、
をさらに備えた、ことを特徴とする請求項1記載の鉄筋コンクリート構造物の耐力評価方法。 - 前記せん断補強筋のかぶり深さ及び鉄筋径と、コンクリート強度と、を含む条件に基づいて計算を行うことで、該せん断補強筋の腐食によってコンクリートのひび割れが発生する第1ひび割れ発生時期における該せん断補強筋の腐食量を、第1ひび割れ腐食量として求める第1ひび割れ腐食量算出工程と、
前記主筋のかぶり深さ及び鉄筋径と、コンクリート強度と、を含む条件に基づいて計算を行うことで、該主筋の腐食によってコンクリートのひび割れが発生する第2ひび割れ発生時期における該主筋の腐食量を、第2ひび割れ腐食量として求める第2ひび割れ腐食量算出工程と、をさらに備え、
前記第1腐食進行推移推定工程では、前記せん断補強筋の腐食が始まる第1腐食開始時期と、前記第1ひび割れ発生時期と、該第1腐食開始時期から該第1ひび割れ発生時期までの第1ひび割れ前腐食速度と、該第1ひび割れ発生時期以降の第1ひび割れ後腐食速度と、に基づいて前記第1腐食進行推移を推定し、
前記第2腐食進行推移推定工程では、前記主筋の腐食が始まる第2腐食開始時期と、前記第2ひび割れ発生時期と、該第2腐食開始時期から該第2ひび割れ発生時期までの第2ひび割れ前腐食速度と、該第2ひび割れ発生時期以降の第2ひび割れ後腐食速度と、に基づいて前記第2腐食進行推移を推定し、
前記第1ひび割れ発生時期は、前記第1ひび割れ前腐食速度と前記第1ひび割れ腐食量に基づいて求められ、
前記第2ひび割れ発生時期は、前記第2ひび割れ前腐食速度と前記第2ひび割れ腐食量に基づいて求められる、
ことを特徴とする請求項2記載の鉄筋コンクリート構造物の耐力評価方法。 - 前記第1ひび割れ腐食量算出工程では、前記せん断補強筋のうちコンクリート表面側の略半周面が腐食する条件で計算を行い、
前記第2ひび割れ腐食量算出工程では、前記主筋のうちコンクリート表面側の略半周面が腐食する条件で計算を行う、ことを特徴とする請求項3記載の鉄筋コンクリート構造物の耐力評価方法。 - 前記第1腐食進行推移に基づいて求められる前記せん断補強筋の腐食量と、前記第2腐食進行推移に基づいて求められる前記主筋の腐食量と、を用いて、鉄筋コンクリートの曲げせん断耐力比が前記閾値を下回る時期を推定することで、前記鉄筋コンクリート構造物の寿命を予測する寿命予測工程を、
さらに備えた、ことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の鉄筋コンクリート構造物の耐力評価方法。 - 前記第1腐食量算出工程では、前記第1腐食進行推移に基づいて、前記せん断補強筋の腐食量を求め、
前記第2腐食量算出工程では、前記第2腐食進行推移に基づいて、前記主筋の腐食量を求める、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の鉄筋コンクリート構造物の耐力評価方法。 - 前記せん断補強筋の腐食によって生じたコンクリートのひび割れ幅を測定する第1ひび割れ幅計測工程と、
前記主筋の腐食によって生じたコンクリートのひび割れ幅を測定する第2ひび割れ幅計測工程と、をさらに備え、
前記第1腐食量算出工程では、前記第1ひび割れ幅計測工程で得られたひび割れ幅と、前記せん断補強筋のかぶり深さ及び鉄筋径と、を含む推定式によって該せん断補強筋の腐食量を求め、
前記第2腐食量算出工程では、前記第2ひび割れ幅計測工程で得られたひび割れ幅と、前記主筋のかぶり深さ及び鉄筋径と、を含む推定式によって該主筋の腐食量を求める、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の鉄筋コンクリート構造物の耐力評価方法。 - 鉄筋コンクリート構造物の耐力を評価する機能をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
鉄筋径とかぶり深さの情報を読み出すとともに、該情報に基づいてせん断補強筋の腐食量を求める第1腐食量算出処理と、
鉄筋径とかぶり深さの情報を読み出すとともに、該情報に基づいて主筋の腐食量を求める第2腐食量算出処理と、
前記第1腐食量算出処理で得られた腐食量に基づいて、前記せん断補強筋の残存鉄筋量を求める第1残存鉄筋量算出処理と、
前記第2腐食量算出処理で得られた腐食量に基づいて、前記主筋の残存鉄筋量を求める第2残存鉄筋量算出処理と、
前記せん断補強筋及び前記主筋の残存鉄筋量に基づいて、鉄筋コンクリートのせん断耐力を算出するせん断耐力算出処理と、
前記主筋の残存鉄筋量に基づいて、鉄筋コンクリートの曲げ耐力を算出する曲げ耐力算出処理と、
前記せん断耐力算出処理で得られた鉄筋コンクリートのせん断耐力と、前記曲げ耐力算出処理で得られた鉄筋コンクリートの曲げ耐力と、に基づいて鉄筋コンクリートの曲げせん断耐力比を求める曲げせん断耐力比算出処理と、
前記曲げせん断耐力比算出処理で得られた鉄筋コンクリートの曲げせん断耐力比と、あらかじめ設定された閾値と、を比較することで前記鉄筋コンクリート構造物の耐力を判定する耐力評価処理と、
を前記コンピュータに実行させる機能を備えた、ことを特徴とする鉄筋コンクリート構造物の耐力評価プログラム。
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