JP2010175477A - 鉄筋コンクリート床版の診断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】通行車両による走行疲労や内部鉄筋の腐食量を考慮して、既設鉄筋コンクリート床版の健全性を定量的に評価することが可能な鉄筋コンクリート床版の診断方法を提供する。
【解決手段】既設鉄筋コンクリート床版を模した腐食量の異なる試験体を作製し、その試験体を用いて腐食量ごとの付着特性を求めておき、その付着特性を適用して既設鉄筋コンクリート床版に強制変位を与えたときの荷重に対する変位を解析すると共に、その解析結果から既設鉄筋コンクリート床版の限界腐食量を決定し、他方、既設鉄筋コンクリート床版の使用年数に対する腐食量の経年変化特性を作成して、既設鉄筋コンクリート床版の実使用年数から現状の腐食量を求め、この現状の腐食量と限界腐食量とを比較して、既設鉄筋コンクリート床版の健全性を診断する。
【選択図】図1
【解決手段】既設鉄筋コンクリート床版を模した腐食量の異なる試験体を作製し、その試験体を用いて腐食量ごとの付着特性を求めておき、その付着特性を適用して既設鉄筋コンクリート床版に強制変位を与えたときの荷重に対する変位を解析すると共に、その解析結果から既設鉄筋コンクリート床版の限界腐食量を決定し、他方、既設鉄筋コンクリート床版の使用年数に対する腐食量の経年変化特性を作成して、既設鉄筋コンクリート床版の実使用年数から現状の腐食量を求め、この現状の腐食量と限界腐食量とを比較して、既設鉄筋コンクリート床版の健全性を診断する。
【選択図】図1
Description
本発明は、既設鉄筋コンクリート床版の健全性を診断するための鉄筋コンクリート床版の診断方法に関するものである。
従来、既設鉄筋コンクリート床版の健全性を診断する方法として、目視による診断が行われていた。目視による診断では、既設鉄筋コンクリート床板の表面にアスファルトが設けられているため、既設鉄筋コンクリート床版の裏側を観察して、ひび割れが発生しているか、あるいは内部鉄筋の腐食による変色(錆汁による変色)があるかなどを観察して、既設鉄筋コンクリート床版の健全性を診断していた。しかし、このような目視による診断では、診断を行う人によって評価が異なってしまい、既設鉄筋コンクリート床版の健全性を定量的に診断することができないという問題があった。
そこで、近年、既設鉄筋コンクリート床版の健全性を定量的に診断する方法の研究が進められている。
鉄筋コンクリート床版の劣化損傷の主な要因として、通行車両による走行疲労が大きな問題に挙げられている。そのため近年では、輪荷重試験機等により走行疲労に対する実際的な挙動を再現し、鉄筋コンクリート床版の疲労耐久性を検証するケースが主流となりつつある。このような疲労試験では、試験期間の制約もあり、内部鉄筋はほぼ健全な状態のまま試験、評価される。
しかし、実際の劣化過程を考えれば、疲労回数の増加とともにひび割れが発生し、そのひび割れから劣化因子が侵入することで内部鉄筋の腐食が進行する、といった複合的な劣化損傷が想定される。
鉄筋コンクリート床版の内部鉄筋が錆びると、設計段階で仮定していた条件が変化してしまうため、想定しているよりも小さな荷重で鉄筋コンクリート床版が壊れてしまう可能性がある。そのため、既設鉄筋コンクリート床版の健全性を診断するためには、通行車両による走行疲労を考慮するのみならず、内部鉄筋の腐食を考慮する必要がある。
一般に、鉄筋コンクリート床版における内部鉄筋の腐食量の経年変化特性は、鉄筋コンクリート床版の供用場所の環境(例えば、海岸部、豪雪部、内陸部など)による表面塩分量や、かぶり、水セメント比などから鉄筋位置の塩分濃度を求め、その結果に基づき内部鉄筋の腐食速度を求めることで得られる。この内部鉄筋の腐食量の経年変化特性を求めることで、鉄筋コンクリート床版の実使用年数から、現状の内部鉄筋の腐食量を推定することができる。
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
塩永亮介、西土隆幸、安雪暉、「鉄筋の腐食がRC部材の引張挙動に与える影響」、土木学会第62回年次学術講演会概要集、5−521、2007年9月14日、pp.1041−1042
しかしながら、従来、既設鉄筋コンクリート床版における現状の腐食量を求めることはできるものの、その腐食量を用いて既設鉄筋コンクリート床版の健全性を定量的に診断する方法は提案されていなかった。
そこで、本発明の目的は、通行車両による走行疲労や内部鉄筋の腐食量を考慮して、既設鉄筋コンクリート床版の健全性を定量的に評価することが可能な鉄筋コンクリート床版の診断方法を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、既設鉄筋コンクリート床版の健全性を診断するための方法であって、上記既設鉄筋コンクリート床版における一つの内部鉄筋とその周囲のコンクリートを模した試験体を作製し、その試験体の内部鉄筋を腐食させて腐食量の異なる試験体を作製し、これら腐食量の異なる試験体の内部鉄筋の両端を引張試験機に固定すると共に引張試験を行って、引張荷重に対する変位量をそれぞれ測定し、これら各試験体の測定結果を基に腐食量ごとの付着特性を求めておき、上記既設鉄筋コンクリート床版に強制変位を与えたときの既設鉄筋コンクリート床版の荷重に対する変位を3次元有限要素法により解析する際に、上記腐食量ごとの付着特性を適用して解析すると共に、その解析結果から上記既設鉄筋コンクリート床版の健全性が限界となる限界腐食量を決定し、他方、上記既設鉄筋コンクリート床版の供用場所の環境から得られる内部鉄筋の腐食速度を基に使用年数に対する腐食量の経年変化特性を作成し、その腐食量の経年変化特性から、上記既設鉄筋コンクリート床版の実使用年数を基に現状の腐食量を求め、この現状の腐食量と上記限界腐食量とを比較して、上記既設鉄筋コンクリート床版の健全性を診断する鉄筋コンクリート床版の診断方法である。
請求項2の発明は、3次元有限要素法により、腐食量に対する
(1)最大荷重時の変位
(2)ひび割れ幅が許容ひび割れ幅と等しくなるときの変位
(3)腐食のない鉄筋コンクリート床版で鉄筋応力が許容鉄筋応力と等しくなるときの荷重における変位をそれぞれ求めると共に、これら変位から、(1)〜(3)の各項目における限界腐食量を各々決定し、そのうち最も小さいものを限界腐食量とする請求項1記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法である。
(1)最大荷重時の変位
(2)ひび割れ幅が許容ひび割れ幅と等しくなるときの変位
(3)腐食のない鉄筋コンクリート床版で鉄筋応力が許容鉄筋応力と等しくなるときの荷重における変位をそれぞれ求めると共に、これら変位から、(1)〜(3)の各項目における限界腐食量を各々決定し、そのうち最も小さいものを限界腐食量とする請求項1記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法である。
請求項3の発明は、腐食のない鉄筋コンクリート床版における上記(1)〜(3)の各変位を求めると共に、求めた変位から予め設定した許容変化率だけ減少させた変位に対する腐食量を(1)、(2)の項目における限界腐食量とし、求めた変位から予め設定した許容変化率だけ増加させた変位に対する腐食量を(3)の項目における限界腐食量とする請求項2記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法である。
請求項4の発明は、上記許容変化率を10%以下として、上記(1)〜(3)の各項目における限界腐食量を各々決定する請求項3記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法である。
請求項5の発明は、上記試験体に用いる内部鉄筋およびコンクリート材は、上記既設鉄筋コンクリート床版に用いる内部鉄筋およびコンクリート材と同じものである請求項1〜4いずれかに記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法である。
請求項6の発明は、上記試験体をNaCl溶液に浸してその内部鉄筋に電流を流し、その通電時間を変化させることで、内部鉄筋の腐食量を0〜8%の範囲で変化させる請求項1〜5いずれかに記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法である。
請求項7の発明は、上記試験体の引張試験を行い、引張試験により求めた引張荷重に対する変位量を基に、上記腐食量ごとの付着特性を求める請求項1〜6いずれかに記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法である。
請求項8の発明は、上記腐食量の経年変化特性は、上記既設鉄筋コンクリート床版の供用場所の環境から、上記既設鉄筋コンクリート床版の鉄筋位置での塩分濃度を求め、その塩分濃度を基に内部鉄筋の腐食速度を求め、求めた内部鉄筋の腐食速度を基に作成される請求項1〜7いずれかに記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法である。
請求項9の発明は、上記腐食量の経年変化特性を用いて、上記限界腐食量に対応する使用年数を求めてこれを耐用年数とし、その耐用年数から上記既設鉄筋コンクリート床版の実使用年数を引くことで、上記既設鉄筋コンクリート床版の余寿命を求める請求項1〜8いずれかに記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法である。
本発明によれば、通行車両による走行疲労や内部鉄筋の腐食量を考慮して、既設鉄筋コンクリート床版の健全性を定量的に評価することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
本実施形態に係る鉄筋コンクリート床版の診断方法は、既設鉄筋コンクリート床版の健全性を診断するための方法であり、試験体(コンクリート要素試験体)の繰返し載荷・引張試験(引き抜き試験)の試験結果を用い、腐食した内部鉄筋を有する既設鉄筋コンクリート床版が車両による繰り返し荷重を受ける場合の健全性を診断する方法である。
具体的には、図1に示すように、本実施形態に係る鉄筋コンクリート床版の診断方法は、以下のステップS1〜S5からなる。
ステップS1:腐食量の異なる試験体を作製する。
ステップS2:ステップS1で作製した腐食量の異なる試験体に繰返し載荷・引張試験を行い、その結果から腐食量ごとの付着特性を求める。
ステップS3:ステップS2で求めた腐食量ごとの付着特性を適用して、既設鉄筋コンクリート床版について3次元有限要素法による解析を行い、その解析結果から既設鉄筋コンクリート床版の健全性が限界となる限界腐食量を決定する。
ステップS4:既設鉄筋コンクリート床版の供用場所の環境から、腐食量の経年変化特性を作成し、既設鉄筋コンクリート床版の現状の腐食量を求める。
ステップS5:既設鉄筋コンクリート床版の現状の腐食量と限界腐食量とを比較し、既設鉄筋コンクリートの健全性を診断する。
まず、本実施形態で診断する既設鉄筋コンクリート床版について説明する。
図4(a)に示すように、本実施形態で診断する既設鉄筋コンクリート床版40は、厚さ(床版厚)が30cmであり、5.5m間隔で配置された1対の主桁41上に設けられている。また、既設鉄筋コンクリート床版40の表面には、アスファルト45が設けられている。
図4(b)に示すように、既設鉄筋コンクリート床版40の上側鉄筋42としては、D19(鉄筋径19.1mm)の異形鉄筋を用い、橋軸方向、橋直方向とも20cm間隔で配置した。また、既設鉄筋コンクリート床版40の下側鉄筋43としては、上側鉄筋42と同様にD19(鉄筋径19.1mm)の異形鉄筋を用い、橋軸方向、橋直方向とも10cm間隔で配置した。
既設鉄筋コンクリート床版40に用いるコンクリート44としては、材齢28日の圧縮強度が約40N/mm2となる普通コンクリートを用いた。
また、既設鉄筋コンクリート床版40の使用年数は10年とし、既設鉄筋コンクリート床版40の供用場所の環境については、豪雪地帯で道路荷凍結防止材を散布するものとし、交通台数は30万台/年とする。
さらに、詳細は後述するが、3次元有限要素法による解析を行う際には、既設鉄筋コンクリート床版40に強制変位を与える際の荷重載荷点は、橋直方向の中央2点とする。また、3次元有限要素法による解析に用いる解析モデルは、対称性を考慮し、図示破線で囲まれた荷重載荷点付近の1/4モデルとした。
上述の既設鉄筋コンクリート床版40の大きさ、内部鉄筋(上側鉄筋42および下側鉄筋43)の径や配置、コンクリート44の材料などの条件は、あくまで一例であり、これに限定されるものではない。
以下、本実施形態に係る鉄筋コンクリート床版の診断方法を各ステップごとに詳述する。
本実施形態に係る鉄筋コンクリート床版の診断方法では、まず、腐食量の異なる試験体を作製する(ステップS1)。
図2(a)に示すように、本実施形態で用いた試験体21は、診断する既設鉄筋コンクリート床版40における一つの内部鉄筋(ここでは、下側鉄筋43)とその周囲のコンクリート44を模したものである。試験体21に用いる内部鉄筋22およびコンクリート材(コンクリート23)は、診断する既設鉄筋コンクリート床版40に用いる内部鉄筋(下側鉄筋43)およびコンクリート材(コンクリート44)と同じものを用いることが望ましい。
本実施形態では、既設鉄筋コンクリート床版40の下側鉄筋43の間隔を考慮し、コンクリート23を幅100mm×奥行き100mm×長さ1000mmの角柱状に形成した。内部鉄筋22はコンクリート23の中央部に長さ方向に沿って配置される。内部鉄筋22の両端部は、コンクリート23からそれぞれ突出するようにされる。
本実施形態では、試験体21の内部鉄筋22として、既設鉄筋コンクリート床版40の内部鉄筋(下側鉄筋43)の径と略同じ径20mmの異形鉄筋(降伏点335N/mm2)を用い、コンクリート23としては、既設鉄筋コンクリート床版40のコンクリート44と同様に、材齢28日の圧縮強度が約40N/mm2となる普通コンクリートを用いた。
試験体21を作製した後、その試験体21の内部鉄筋22を腐食させて腐食量の異なる試験体21を作製する。本実施形態では、内部鉄筋22を腐食させる方法として、強制的な電食を行った。
具体的には、作製した試験体21をNaCl溶液に浸してその内部鉄筋22に電流を流し、その通電時間を変化させることで、内部鉄筋22の腐食量を変化させる。
内部鉄筋22の腐食量としては、0〜8%の範囲で変化させるとよい。ここで、腐食量とは、腐食による断面減少率(内部鉄筋22の重量損失量)であり、試験後に内部鉄筋22をエッチング処理して損失量を測定することにより求められる。
次に、ステップS1で作製した腐食量の異なる試験体21に繰返し載荷・引張試験を行い、その結果から腐食量ごとの付着特性を求める(ステップS2)。
まず、通行車両による走行疲労を再現するために、ステップS1で作製した一部の試験体21を用い、その内部鉄筋22に繰り返し荷重を与える。本実施形態では、試験体21の内部鉄筋22の両端を引張試験機に固定し、振幅荷重1.5kNで20000回の繰り返し荷重を与えた。
その後、繰返し荷重なし、繰返し荷重ありの両方の試験体21について、試験体21に静的な引張荷重を加えて引張試験(一軸引張試験)を行い、引張荷重に対する変位量(引張方向へのコンクリート23の変位量)をそれぞれ求める。各腐食量の試験体21に同様の引張試験を行い、図2(b)(繰返し荷重なし)、図2(c)(繰返し荷重あり)に示すような、腐食量ごとの引張荷重と変位量との関係をそれぞれ求める。各腐食量に対する付着応力は図2(b)(繰返し荷重なし)から求め、各腐食量に対する繰返し荷重の影響は、図2(c)(繰返し荷重あり)の変位量0.2mm引張荷重と変位との関係における傾きから各腐食量に対してコンクリートのヤング係数を低下させることにより求める。
図2(b)における腐食量ごとの引張荷重と変位量との関係を求めた後、その引張荷重と変位量との関係における傾きの変化を基に、図3に示す付着特性(付着応力とすべり量との関係)を各腐食量ごとに求める。図3において、腐食量1,2,3%の付着特性については、腐食量0,3.86,7.34%の各付着特性を基に、線形補完により求めたものである。
このようにして得られた付着特性の妥当性を検討するために、得られた付着特性を適用して有限要素法(2次元)により解析を行った。
有限要素法による解析値を図2(b)に併せて示す。図2(b)に示すように、実験値と解析値はよく一致しており、図3の付着特性は妥当であるといえる。
次に、ステップS2で求めた腐食量ごとの付着特性を適用して、既設鉄筋コンクリート床版40について3次元有限要素法による解析を行い、その解析結果から既設鉄筋コンクリート床版40の健全性が限界となる限界腐食量を決定する(ステップS3)。
限界腐食量を決定するにあたって、実際は、腐食量に応じてヤング率を低下させることにより、通行車両による走行疲労を再現するが、ここでは、簡略化のため、付着応力のみを考慮して限界腐食量を決定する場合を説明する。
まず、ステップS2で求めた腐食量ごとの付着特性を適用して、既設鉄筋コンクリート床版40に強制変位を与えたときの、既設鉄筋コンクリート床版40の荷重に対する変位を3次元有限要素法により求める。
ここで荷重とは、強制変位を与えた荷重載荷点(図4(a)参照)での載荷荷重(強制変位による反力)であり、これに対する変位とは、載荷位置における鉛直方向の変位である。
一般に、鉄筋とコンクリート間の付着による相互作用のため、鉄筋とコンクリートそれぞれの独立した特性を足し合わせるだけでは鉄筋コンクリートを表現することはできない。そのため、有限要素法では、コンクリートの応力−ひずみ特性、ひび割れ面での応力伝達特性に加えて、付着特性なども考慮して解析を行っている。つまり、腐食量ごとの各付着特性を順次適用して有限要素法により解析を行うことで、腐食量に応じた解析値が得られることになる。
本実施形態では、既設鉄筋コンクリート床版40の内部鉄筋の腐食量を0,2,4,6,8%の5種類とし、既設鉄筋コンクリート床版40の全ての鉄筋が同様に腐食していると仮定した。また、荷重載荷点に与える強制変位量は、0.01mm/ステップ(全ステップ240)とした。
3次元有限要素法による解析で得られた、腐食量ごとの既設鉄筋コンクリート床版40の荷重と変位との関係を図5に示す。また、図5を基に求めた最大荷重と腐食量との関係を図6に示す。また、図7には、橋直方向(x方向)の床版表面応力のコンター図の一例を示す。
一般に、梁などでは、健全性を診断する指標として最大荷重を用い、最大荷重の低下から健全性を診断することが可能である。
しかし、図5、6に示すように、既設鉄筋コンクリート床版40では腐食量による最大荷重の明確な低下がないため、既設鉄筋コンクリート床版40の健全性を診断するには、最大荷重そのものを指標として用いることはできない。
この理由としては、既設鉄筋コンクリート床版40の内部鉄筋の配置が2軸状態(橋軸方向および橋直方向)であるために、急激な最大荷重の低下が見られないためであると考えられる。
そこで、本実施形態では、既設鉄筋コンクリート床版40の健全性を診断する指標として、(1)耐荷力(最大荷重)、(2)許容ひび割れ幅、(3)許容鉄筋応力の3つの指標を用い(土木学会コンクリート標準示方書[構造性能照査編]参照)、(1)〜(3)の各項目における限界腐食量を求めることとした。以下、(1)〜(3)の各項目において限界腐食量を求める方法について詳述する。
(1)耐荷力(最大荷重)
耐荷力による限界腐食量は、最大荷重時の変位を基準とし、腐食による最大荷重時の変位の減少を評価することで決定される。
耐荷力による限界腐食量は、最大荷重時の変位を基準とし、腐食による最大荷重時の変位の減少を評価することで決定される。
最大荷重時の変位を基準とする理由は、最大荷重と最大荷重時の変位で囲まれた面積を鉄筋コンクリート床版の吸収エネルギーと考えた場合、腐食による最大荷重時の変位の減少を評価することにより、既設鉄筋コンクリート床版40の吸収エネルギーの減少を評価することができるためである。
既設鉄筋コンクリート床版40の吸収エネルギーの減少は、梁などにおける最大荷重の減少と同様に、既設鉄筋コンクリート床版40の安全性が損なわれることを意味する。すなわち、耐荷力による限界腐食量は、既設鉄筋コンクリート床版40の終局限界に対応する。
耐荷力による限界腐食量を求める際には、まず、図5の荷重と変位との関係を基に、腐食量に対する最大荷重時の変位を求める。得られた最大荷重時の変位と腐食量との関係を図8に示す。
本実施形態では、既設鉄筋コンクリート床版40の最大荷重時の変位(変形性能)が予め設定した所定の許容変化率だけ減少したときの腐食量を寿命に達した状態(寿命評価点)、すなわち耐荷力による限界腐食量とする。
一例として、許容変化率を5%とした場合を説明すると、腐食のない鉄筋コンクリート床版(腐食量0%)における最大荷重時の変位は20mmであるため、5%の許容変化率だけ減少した変位は、20×0.95=19(mm)となる。図8より、変位19mmに対応する腐食量は4.6%であるから、耐荷力による限界腐食量は4.6%となる。
(2)許容ひび割れ幅
許容ひび割れ幅による限界腐食量は、既設鉄筋コンクリート床版40のひび割れ幅が許容ひび割れ幅と等しくなるときの変位を基準とし、その腐食による減少を評価することで決定される。
許容ひび割れ幅による限界腐食量は、既設鉄筋コンクリート床版40のひび割れ幅が許容ひび割れ幅と等しくなるときの変位を基準とし、その腐食による減少を評価することで決定される。
ひび割れ幅が許容ひび割れ幅と等しくなるときの変位が減少することは、小さい荷重で許容ひび割れ幅以上のひび割れが発生してしまうことを意味する。許容ひび割れ幅以上のひび割れが発生すると、ひび割れから雨水が浸入して内部鉄筋を錆びさせるため、既設鉄筋コンクリート床版40の機能が低下する。すなわち、許容ひび割れ幅による限界腐食量は、既設鉄筋コンクリート床版40の使用限界に対応する。ここでは、許容ひび割れ幅を一般的な規定である0.2mmとした場合を説明する。
許容ひび割れ幅による限界腐食量を求める際には、まず、既設鉄筋コンクリート床版40に強制変位を与えたときの、変位とひび割れ幅(最大ひび割れ幅)との関係を求める。得られた変位とひび割れ幅との関係を図9に示す。
その後、図9より、ひび割れ幅が許容ひび割れ幅である0.2mmとなるときの変位を各腐食量ごとに求め、ひび割れ幅が0.2mmとなるときの変位と腐食量との関係を求める。得られたひび割れ幅が0.2mmとなるときの変位と腐食量との関係を図10に示す。
ここで、ひび割れ幅が0.2mmとなるときの変位とは、鉄筋コンクリート床版に最初に0.2mmのひび割れが発生したときの変位を意味する。図11に示すように、いずれの腐食量においても、強制変位を与える荷重載荷点の裏面で最初に0.2mmのひび割れが発生する。
本実施形態では、0.2mmのひび割れが発生したときの変位が、予め設定した所定の許容変化率だけ減少したときの腐食量を寿命評価点、すなわち許容ひび割れ幅による限界腐食量とする。
一例として、(1)の場合と同様に、許容変化率を5%とした場合を説明すると、腐食のない鉄筋コンクリート床版(腐食量0%)で0.2mmのひび割れが発生したときの変位は2.74mmであるため、5%の許容変化率だけ減少した変位は、2.74×0.95=2.60(mm)となる。図10より、変位2.60mmに対応する腐食量は2.9%であるから、許容ひび割れ幅による限界腐食量は2.9%となる。
(3)許容鉄筋応力
許容鉄筋応力による限界腐食量は、腐食のない鉄筋コンクリート床版で鉄筋応力が許容鉄筋応力と等しくなるときの荷重(以下、許容鉄筋応力時の荷重という)における変位を基準とし、その増加を評価することで決定される。
許容鉄筋応力による限界腐食量は、腐食のない鉄筋コンクリート床版で鉄筋応力が許容鉄筋応力と等しくなるときの荷重(以下、許容鉄筋応力時の荷重という)における変位を基準とし、その増加を評価することで決定される。
許容鉄筋応力時の荷重における変位が増加することは、内部鉄筋に許容鉄筋応力以上の応力がかかることを意味する。すなわち、許容鉄筋応力による限界腐食量は、採用する内部鉄筋の許容鉄筋応力により決定されるものであり、設計耐用期間に対応する。
本実施形態では、既設鉄筋コンクリート床版40で用いる内部鉄筋がD19であり、このD19の鉄筋における許容鉄筋応力が180MPaであるため、許容鉄筋応力を180MPaとした場合を説明する。
許容鉄筋応力による限界腐食量を求める際には、まず、内部鉄筋における最大発生応力(鉄筋応力)と変位との関係を求める。得られた鉄筋応力と変位との関係を図12に示す。また、内部鉄筋の発生応力のコンター図の一例を図13に示す。いずれの腐食量においても、強制変位を与える荷重載荷点での下側鉄筋43で発生応力が最大となり、腐食量に伴い変位は大きくなる。
図12より、腐食のない鉄筋コンクリート床版(腐食量0%)において、許容鉄筋応力である180MPaに対応する変位は7.1mmであるので、このときの荷重を図5の荷重と変位との関係より求める。図5より、変位7.1mmに対応する荷重は、276kNである。よって、許容鉄筋応力時の荷重は276kNとなる。許容鉄筋応力時の荷重が得られたら、各腐食量における許容鉄筋応力時の荷重(276kN)に対する変位を図5より求める。得られた許容鉄筋応力時の荷重(276kN)における腐食量と変位の関係を図14に示す。
本実施形態では、許容鉄筋応力時の荷重(276kN)に対する変位が、予め設定した所定の許容変化率だけ増加したときの腐食量を寿命評価点、すなわち許容鉄筋応力による限界腐食量とする。
一例として、(1)、(2)の場合と同様に、許容変化率を5%とした場合を説明すると、腐食のない鉄筋コンクリート床版(腐食量0%)における許容鉄筋応力時の荷重(276kN)に対する変位は7.1mmであるため、5%の許容変化率だけ増加した変位は、7.1×1.05=7.46(mm)となる。図14より、変位7.46mmに対応する腐食量は3.5%であるから、許容鉄筋応力による限界腐食量は3.5%となる。
以上により、(1)耐荷力、(2)許容ひび割れ幅、(3)許容鉄筋応力の各項目における限界腐食量が得られる。
本実施形態では、得られた各限界腐食量のうち、最も小さいものを限界腐食量として採用する。これは、安全側の評価とするためである。
上述のように、(1)耐荷力による限界腐食量は4.6%、(2)許容ひび割れ幅による限界腐食量は2.9%、(3)許容鉄筋応力による限界腐食量は3.5%であるので、このうち最も小さい(2)許容ひび割れ幅の項目における限界腐食量2.9%を限界腐食量として採用する。一般に、使用限界の規定が最も厳しくなることから、本発明はその結果に対応しているといえる。
ここでは、許容変化率を5%とした場合を説明したが、これに限定されず、許容変化率は、任意に設定してよい。ただし、許容変化率を大きくしすぎると、健全と判断される範囲が広くなりすぎて、既設鉄筋コンクリート床版40の安全性に問題が生じるおそれがあるため、許容変化率は10%以下、好ましくは5%以下とするのが好ましい。
次に、既設鉄筋コンクリート床版40の供用場所の環境から、腐食量の経年変化特性を作成し、既設鉄筋コンクリート床版40の現状の腐食量を求める(ステップS4)。
まず、既設鉄筋コンクリート床版40の供用場所の環境(本実施形態では豪雪地帯)から、既設鉄筋コンクリート床版40の鉄筋位置での塩分濃度Cdを求める。
塩分濃度Cdは、既設鉄筋コンクリート床版40の表面塩分量、かぶり、水−セメント比など
が分かれば[数1]に示す式(1)
が分かれば[数1]に示す式(1)
により求めることができる(土木学会コンクリート標準示方書[施工編]参照)。
式(1)における塩化物イオンに対する設計拡散係数Ddは、[数2]に示す式(2)
で表される。式(2)におけるコンクリートの材料係数Dkは、[数3]に示す式(3)
で表されるコンクリートの拡散係数の予測値Dpを求め、[数4]に示す式(4)
の条件を満たすように決定される。
また、式(1)におけるerf(s)は誤差関数であり、[数5]に示す式(5)
で表される。さらに、式(1)におけるコンクリート表面における想定塩化物イオン濃度C0は、一般に、表1から求められる。
式(1)により既設鉄筋コンクリート床版40の鉄筋位置での塩分濃度Cdを求めた後、その鉄筋位置での塩分濃度Cdを基に、下式(6)
log(Vcoor)=33.1・RRC+Y …(6)
但し、RRC:コンクリート抵抗の逆数(1/Ω)
Y :RRC=0のときの腐食速度の対数値
より、既設鉄筋コンクリート床版40の内部鉄筋の腐食速度Vcoorを求める。
log(Vcoor)=33.1・RRC+Y …(6)
但し、RRC:コンクリート抵抗の逆数(1/Ω)
Y :RRC=0のときの腐食速度の対数値
より、既設鉄筋コンクリート床版40の内部鉄筋の腐食速度Vcoorを求める。
式(6)におけるRRCは下式(7)
RRC=1/(コンクリート比抵抗×鉄筋の周長) …(7)
で表され、RRC=0のときの腐食速度の対数値Yは下式(8)
Y=0.457・Cd−9.79 …(8)
但し、Cd:鉄筋位置での塩分濃度(kg/m3)
で表される。
RRC=1/(コンクリート比抵抗×鉄筋の周長) …(7)
で表され、RRC=0のときの腐食速度の対数値Yは下式(8)
Y=0.457・Cd−9.79 …(8)
但し、Cd:鉄筋位置での塩分濃度(kg/m3)
で表される。
このようにして求めた既設鉄筋コンクリート床版40の内部鉄筋の腐食速度Vcoorを用いて、既設鉄筋コンクリート床版40の使用年数に対する腐食量の経年変化特性を作成する。得られた腐食量の経年変化特性を図15に示す。図15では、参考のために、海岸部および内陸部での腐食量の経年変化特性も併せて示す。
図15に示す腐食量の経年変化特性が得られたら、その腐食量の経年変化特性を基に、既設鉄筋コンクリート床版40の実使用年数から現状の腐食量を求める。本実施形態では、既設鉄筋コンクリート床版40の使用年数が10年であるため、図15より、既設鉄筋コンクリート床版40の現状の腐食量は1.8%となる。
次に、ステップS4で求めた既設鉄筋コンクリート床版40の現状の腐食量と、ステップS3で求めた限界腐食量とを比較して、既設鉄筋コンクリート床版40の健全性を診断する(ステップS5)。
具体的には、既設鉄筋コンクリート床版40の現状の腐食量が、限界腐食量よりも小さければ、既設鉄筋コンクリート床版40は健全であると判断する。
逆に、既設鉄筋コンクリート床版40の現状の腐食量が、限界腐食量以上であれば、既設鉄筋コンクリート床版40の内部鉄筋の腐食量が限界腐食量以上となっていることを意味するため、既設鉄筋コンクリート床版40の補修が必要であると判断する。
本実施形態では、ステップS4で求めた既設鉄筋コンクリート床版40の現状の腐食量が1.8%であり、ステップS3で求めた限界腐食量が2.9%であるため、現状の腐食量は限界腐食量よりも小さく、既設鉄筋コンクリート床版40は健全であるといえる。
また、図15の腐食量の経年変化特性を用いて、限界腐食量に対応する使用年数を求めることで、既設鉄筋コンクリート床版40の耐用年数を求めることができる。よって、求めた既設鉄筋コンクリート床版40の耐用年数から実使用年数を引くことで、既設鉄筋コンクリート床版40の余寿命を得ることができる。
本実施形態においては、図15の腐食量の経年変化特性から、限界腐食量2.9%に対する使用年数が17.8年であり、既設鉄筋コンクリート床版40の耐用年数は17.8年である。よって、既設鉄筋コンクリート床版40の余寿命は、耐用年数17.8年から実使用年数10年を引くと、7.8年となる。
既設鉄筋コンクリート床版40の現状の腐食量が限界腐食量以上である場合は、既設鉄筋コンクリート床版40を新たな鉄筋コンクリート床版に張り替えるか、既設鉄筋コンクリート床版40の補修を行う必要がある。補修を行う際には、例えば、既設鉄筋コンクリート床版40の表面のコンクリート44を削り取って内部鉄筋を露出させて、露出させた内部鉄筋の錆を除去し、補強用の鉄筋を追加した後、削り取った分のコンクリートを新たに打設して補修するようにすればよい。
以上説明したように、本実施形態に係る鉄筋コンクリート床版の診断方法では、試験体21を用いて腐食量ごとの付着特性を求めておき、その腐食量ごとの付着特性を適用して3次元有限要素法により解析を行うことにより、既設鉄筋コンクリート床版40の限界腐食量を決定し、他方、既設鉄筋コンクリート床版40の使用年数に対する腐食量の経年変化特性を作成して、既設鉄筋コンクリート床版40の実使用年数から現状の腐食量を求め、この現状の腐食量と限界腐食量とを比較して、既設鉄筋コンクリート床版40の健全性を診断している。
これにより、内部鉄筋の腐食量を考慮して、既設鉄筋コンクリート床版40の健全性を定量的に評価することが可能となる。
また、本実施形態では、(1)耐荷力、(2)許容ひび割れ幅、(3)許容鉄筋応力の各項目における限界腐食量を求め、そのうち最も小さいものを限界腐食量としているため、安全側の診断が可能である。
さらに、本実施形態では、(1)〜(3)の各項目における限界腐食量を求める際に、変位の許容変化率を10%以下としているので、より安全側の診断が可能となる。
また、本実施形態では、試験体21の内部鉄筋22に繰り返し荷重を加えた後に引張試験を行って、腐食量ごとの付着特性を求めている。これにより、通行車両による走行疲労を考慮して既設鉄筋コンクリート床版40の健全性を診断することができる。
さらに、本実施形態では、腐食量の経年変化特性を用いて、限界腐食量に対応する使用年数を求めてこれを耐用年数とし、その耐用年数から既設鉄筋コンクリート床版40の実使用年数を引くことで、既設鉄筋コンクリート床版40の余寿命を求めている。これにより、既設鉄筋コンクリート床版40の補修あるいは張替の時期を前もって知ることができ、補修あるいは張替のための準備を行うことが可能となる。
本実施形態では、全ての内部鉄筋が同様に錆びている状態を仮定して解析を行ったが、既設鉄筋コンクリート床版40の特定の箇所のみで錆が発生すると仮定して解析を行うようにしてもよい。しかし、鉄筋が全て一様に錆びている状態を仮定することで、最も安全側の診断が可能となる。
21 試験体
22 内部鉄筋
23 コンクリート
40 鉄筋コンクリート床版
41 主桁
42 上側鉄筋
43 下側鉄筋
44 コンクリート
45 アスファルト
22 内部鉄筋
23 コンクリート
40 鉄筋コンクリート床版
41 主桁
42 上側鉄筋
43 下側鉄筋
44 コンクリート
45 アスファルト
Claims (9)
- 既設鉄筋コンクリート床版の健全性を診断するための方法であって、
上記既設鉄筋コンクリート床版における一つの内部鉄筋とその周囲のコンクリートを模した試験体を作製し、その試験体の内部鉄筋を腐食させて腐食量の異なる試験体を作製し、これら腐食量の異なる試験体の内部鉄筋の両端を引張試験機に固定すると共に引張試験を行って、引張荷重に対する変位量をそれぞれ測定し、これら各試験体の測定結果を基に腐食量ごとの付着特性を求めておき、
上記既設鉄筋コンクリート床版に強制変位を与えたときの既設鉄筋コンクリート床版の荷重に対する変位を3次元有限要素法により解析する際に、上記腐食量ごとの付着特性を適用して解析すると共に、その解析結果から上記既設鉄筋コンクリート床版の健全性が限界となる限界腐食量を決定し、
他方、上記既設鉄筋コンクリート床版の供用場所の環境から得られる内部鉄筋の腐食速度を基に使用年数に対する腐食量の経年変化特性を作成し、その腐食量の経年変化特性から、上記既設鉄筋コンクリート床版の実使用年数を基に現状の腐食量を求め、
この現状の腐食量と上記限界腐食量とを比較して、上記既設鉄筋コンクリート床版の健全性を診断することを特徴とする鉄筋コンクリート床版の診断方法。 - 3次元有限要素法により、腐食量に対する
(1)最大荷重時の変位
(2)ひび割れ幅が許容ひび割れ幅と等しくなるときの変位
(3)腐食のない鉄筋コンクリート床版で鉄筋応力が許容鉄筋応力と等しくなるときの荷重における変位をそれぞれ求めると共に、これら変位から、(1)〜(3)の各項目における限界腐食量を各々決定し、そのうち最も小さいものを限界腐食量とする請求項1記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法。 - 腐食のない鉄筋コンクリート床版における上記(1)〜(3)の各変位を求めると共に、求めた変位から予め設定した許容変化率だけ減少させた変位に対する腐食量を(1)、(2)の項目における限界腐食量とし、求めた変位から予め設定した許容変化率だけ増加させた変位に対する腐食量を(3)の項目における限界腐食量とする請求項2記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法。
- 上記許容変化率を10%以下として、上記(1)〜(3)の各項目における限界腐食量を各々決定する請求項3記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法。
- 上記試験体に用いる内部鉄筋およびコンクリート材は、上記既設鉄筋コンクリート床版に用いる内部鉄筋およびコンクリート材と同じものである請求項1〜4いずれかに記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法。
- 上記試験体をNaCl溶液に浸してその内部鉄筋に電流を流し、その通電時間を変化させることで、内部鉄筋の腐食量を0〜8%の範囲で変化させる請求項1〜5いずれかに記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法。
- 上記試験体の引張試験を行い、引張試験により求めた引張荷重に対する変位量を基に、上記腐食量ごとの付着特性を求める請求項1〜6いずれかに記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法。
- 上記腐食量の経年変化特性は、上記既設鉄筋コンクリート床版の供用場所の環境から、上記既設鉄筋コンクリート床版の鉄筋位置での塩分濃度を求め、その塩分濃度を基に内部鉄筋の腐食速度を求め、求めた内部鉄筋の腐食速度を基に作成される請求項1〜7いずれかに記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法。
- 上記腐食量の経年変化特性を用いて、上記限界腐食量に対応する使用年数を求めてこれを耐用年数とし、その耐用年数から上記既設鉄筋コンクリート床版の実使用年数を引くことで、上記既設鉄筋コンクリート床版の余寿命を求める請求項1〜8いずれかに記載の鉄筋コンクリート床版の診断方法。
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-
2009
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