JP2016191692A - 鉄族金属イオン含有液の処理方法及び処理装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鉄族金属イオン含有液と、該鉄族金属イオンと錯体を形成する配位子を含む電着液とを、カチオン交換膜を複数枚配した電気透析槽に導入し、鉄族金属イオン含有液中の鉄族金属イオンをカチオン交換膜を透過させて電着液に移行させることにより鉄族金属イオンを除去し、電気透析槽からの鉄族金属イオンを含む電着液を、陽極と陰極を配した電着槽に導入し、鉄族金属を陰極上に電着させて電着液から鉄族金属イオンを除去し、鉄族金属イオンが除去された電着液を電気透析槽に循環させる。
【選択図】図1
Description
これらの放射性物質を含む廃棄物は、最終的にセメント等の固化助材と混練して安定化した後に、埋設処分される。埋設処分する際の費用は、内包する放射性物質の量で異なり、放射性物質濃度が高いほど高額となる。このため、高線量率の廃棄物はできるだけ減容した後に、固化体の埋設廃棄物とすることが経済的である。具体的には、イオン交換樹脂から放射性物質を固形物として分離し、遮蔽容器内に封じ込めることができれば、減容化の面で望ましい。放射性物質が除去された廃イオン交換樹脂は、処分費用が安価な低線量率の廃棄物であり、さらに、廃イオン交換樹脂を焼却可能なレベルまで放射性物質を除去できれば、焼却処理により、大幅な減容が達成できる。
まず、図1,2を参照して本発明の鉄族金属イオン含有液の処理装置の実施の形態を説明する。
図1,2は、本発明の鉄族金属イオン含有液の処理装置の実施の形態の一例を示す系統図である。
なお、図1,2では、鉄族金属イオン含有液として、原子力発電所の除染工程で発生するpHが5未満の酸性除染廃液(以下、単に「廃酸」と記載する。)を処理し、電気透析槽で鉄族金属イオンを除去した後、除染液として再利用する場合を例示して本発明を説明するが、本発明は何らこの廃酸の処理に限定されるものではない。
まず、電気透析槽10について説明する。電気透析槽10は、陽極11Aと陰極12Aとの間にバイポーラ膜BPとカチオン交換膜CMとが交互に配置されている。
陽極11Aに対峙してバイポーラ膜(第1のバイポーラ膜)BPが配置され、陽極11Aと第1のバイポーラ膜BPとの間が陽極室11とされている。
陰極12Aに対峙してバイポーラ膜BP(第2のバイポーラ膜)BPが配置され、陰極12Aと第2のバイポーラ膜BPとの間が陰極室12とされている。
電着槽としては、図1に示すように、陽極21Aが配置された陽極室21と陰極22Aが配置された陰極室22とがカチオン交換膜CMで区画された2室型の電着槽20を使用するのが好適である。電気透析槽10から電着液貯槽40に送られた鉄族金属イオンを含んだ電着液は、ポンプP4によりラインL10を経て電着槽20の陰極室22に導入される。電着槽20の陽極21Aと陰極22A間に電圧を印加することにより、電着液内の鉄族金属イオンは陰極22A上に鉄族金属として析出し、電着固定化される。
鉄族金属イオンの透析を行う電気透析槽の電流密度は、バイポーラ膜を用いた場合であっても水素選択透過型カチオン交換膜を用いた場合であっても、陰極面積に対して、10〜400mA/cm2であることが好ましく、20〜200mA/cm2であることがより好ましい。
また、電着槽の電流密度は、陰極面積に対して、5〜200mA/cm2であることが好ましく、10〜150mA/cm2であることがより好ましい。
本発明で処理する鉄族金属イオン含有液は、通常、鉄、マンガン、コバルト及びニッケルのうち1種以上、特には鉄、コバルト及びニッケルのうちの1種以上のイオンを含有する液であるが、鉄族金属以外の金属が含まれていても問題ない。特に、本発明は、下記(i),(ii)のような、原子力発電所等から発生する放射性鉄族金属イオン含有廃液、とりわけ、pH5未満、更にはpHが2未満の酸廃液の処理に好適であり、これらの廃液から、鉄族金属イオンを効率的に除去して処理液を再利用することができる。
(i) 原子力発電所における放射性物質に汚染された一次冷却系の機器や配管、これらを含む系統の金属部材表面から放射性物質を酸溶解した除染廃液
(ii) 原子力発電所での使用済イオン交換樹脂(原子炉水浄化系(CUW)、燃料貯蔵プール水浄化系(FPC)といった直接燃料棒に触れ、放射性物質を含む冷却水系の浄化に使用されたイオン交換樹脂や、上記(i)の除染廃液から放射性金属イオンを除去するために使用されたイオン交換樹脂)から放射性金属イオンを除去するために酸溶離した溶離酸廃液
上記除染廃液や溶離酸廃液は鉄族金属イオンの一つである放射性コバルトを含むものであるが、本発明によれば、この放射性コバルトを電着槽の陰極上に、嵩が小さい金属態として安定固定化できるというメリットがある。
本発明で用いる電着液は、鉄族金属イオン含有液中の鉄族金属イオンと錯体を形成する配位子(以下「本発明の錯化剤」と称す場合がある。)を含むものであるが、電着液のpHが低すぎると、電着槽の陰極上に電着した鉄族金属の再溶解が起こり、電着速度が低下する恐れがある一方で、pHが高すぎると、鉄族金属の水酸化物が液中に懸濁物質として発生しやすくなる。このため電着液は、1〜9、特に2〜8となるように、必要に応じてアルカリや酸により適宜pH調整を行うのが好ましい。
これに対して、分子内に1つのカルボキシル基を持つモノカルボン酸では、鉄族金属イオンとの結合力が弱く、液中で鉄族金属の水酸化物からなる懸濁物質が発生する、電着時に陰極に均一に電着しないといった問題が生じる。また、分子内に4つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸を用いると、鉄族金属イオンとの結合力が強すぎて、液中に鉄族金属が保持され、電着の速度が著しく低下するという問題が生じる。
…(1)
(式(1)中、X1,X2,X3は各々独立にH又はOHを表し、X4,X5は各々独立にH、OH又はCOOM3を表し、M1,M2,M3は各々独立にH、1価のアルカリ金属又はアンモニウムイオンを表し、a,b,cは各々独立に0又は1の整数を表す。ただし、式(1)において、X4とX5は同時にCOOM3となることはない。)
<透析実験>
図1に示す装置(ただし、カチオン交換膜の枚数は表1に示す通り。)を用いて、表1に示す組成の廃酸(鉄さび(α−Fe2O3)が混入し、コバルトを吸着した廃イオン交換樹脂から90℃の硫酸により溶離したpH1.2の酸性廃液)を模擬廃液として処理実験を行った。実験は、図示しない廃酸貯槽内にこの廃酸を400mL入れ、電気透析槽との間を循環させながら行った。表1に示す組成の電着液200mLは、電気透析槽と電着液貯槽との間を循環させ、電着液の電着槽への送液は行わず、電気透析槽での処理効果を確認した。なお、処理時の液温は30℃であった。
比較例1:透析実験I(電流=1.20A(24.6mA/cm2))
比較例2:透析実験I(電流=3.05A(62.5mA/cm2))
実施例1:透析実験II(電流=3.05A(62.5mA/cm2))
実施例2:透析実験III(電流=1.20A(24.6mA/cm2))
実施例3:透析実験III(電流=3.05A(62.5mA/cm2))
なお、実施例3では、3時間の通電で模擬廃液中のCo,Feの殆どが電着液側へ移行したため、通電は3時間で終了した。
図3,4により、電気透析槽のカチオン交換膜の枚数を増やすほど、模擬廃液中のCo、Feがカチオン交換膜を透過して電着液側に移行する速度が速くなることが分かる。また、電流密度を24.6mA/cm2から62.5mA/cm2に上げることにより、その速度がより速くなることが分かる。
6時間(実施例3では3時間)の透析実験を行った後の電着液を、電着液貯槽と電着槽の間をポンプで循環させながら、表2の条件で電着処理を行ったところ、いずれの電着液についても、24時間の通電でFe、Coともに電着液中濃度として1mg/L未満まで電着除去できた。いずれの実験においても、実験後の陰極面には銀白色の金属状の鉄とコバルトがめっきされていることを確認した。
11 陽極室
11A 陽極
12 陰極室
12A 陰極
13 脱イオン室
14 濃縮室
20 電着槽
21 陽極室
21A 陽極
22 陰極室
22A 陰極
30 電極液貯槽
40 電着液貯槽
CM カチオン交換膜
BP バイポーラ膜
CHM 水素選択透過型カチオン交換膜
Claims (13)
- 鉄族金属イオン含有液と、該鉄族金属イオンと錯体を形成する配位子を含む電着液とを、カチオン交換膜を複数枚配した電気透析槽に導入し、該鉄族金属イオン含有液中の該鉄族金属イオンを、該カチオン交換膜を透過させて該電着液に移行させることにより、該鉄族金属イオン含有液中の鉄族金属イオンを除去する電気透析工程と、
該電気透析槽から流出した鉄族金属イオンを含む電着液を、陽極と陰極を配した電着槽に導入し、該電着液中の該鉄族金属を陰極上に電着させて、該電着液から該鉄族金属イオンを除去する電着工程と、
該電着工程で鉄族金属イオンが除去された電着液を前記電気透析工程に送給する電着液循環工程とを有することを特徴とする鉄族金属イオン含有液の処理方法。 - 前記鉄族金属イオン含有液は、原子力発電所の除染で発生するpH5未満の酸性除染廃液であり、前記電気透析工程で該廃液中の鉄族金属イオンを除去した後、除染液として再利用することを特徴とする請求項1に記載の鉄族金属イオン含有液の処理方法。
- 前記電気透析槽は、
陽極及び陰極と、
該陽極に対峙して配置された第1のバイポーラ膜と、
該陰極に対峙して配置された第2のバイポーラ膜と、
該第1のバイポーラ膜と第2のバイポーラ膜との間に配置された複数枚のカチオン交換膜と、
該カチオン交換膜同士の間に配置された第3のバイポーラ膜と
を備え、
該陽極と該第1のバイポーラ膜との間が陽極室、該陰極と該第2のバイポーラ膜との間が陰極室となっており、
該カチオン交換膜と該カチオン交換膜の該陽極側に設けられた該バイポーラ膜との間が脱イオン室、該カチオン交換膜と該カチオン交換膜の該陰極側に設けられた該バイポーラ膜との間が濃縮室となっており、
該脱イオン室に前記鉄族金属イオン含有液を通液すると共に、該濃縮室に前記電着液を通液することを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄族金属イオン含有液の処理方法。 - 前記電気透析槽は、
陽極及び陰極と、
該陽極に対峙して配置された第1の水素選択透過型カチオン交換膜と、
該陰極に対峙して配置された第2の水素選択透過型カチオン交換膜と、
該第1の水素選択透過型カチオン交換膜と第2の水素選択透過型カチオン交換膜との間に配置された複数枚のカチオン交換膜と、
該カチオン交換膜同士の間に配置された第3の水素選択透過型カチオン交換膜と
を備え、
該陽極と該第1の水素選択透過型カチオン交換膜との間が陽極室、該陰極と該第2の水素選択透過型カチオン交換膜との間が陰極室となっており、
該カチオン交換膜と該カチオン交換膜の該陽極側に設けられた該水素選択透過型カチオン交換膜との間が脱イオン室、該カチオン交換膜と該カチオン交換膜の該陰極側に設けられた該水素選択透過型カチオン交換膜との間が濃縮室となっており、
該脱イオン室に前記鉄族金属イオン含有液を通液すると共に、該濃縮室に前記電着液を通液することを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄族金属イオン含有液の処理方法。 - 前記電着槽は、
陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室とがカチオン交換膜で仕切られており、該陰極室に前記鉄族金属イオンを含む電着液を通液することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の鉄族金属イオン含有液の処理方法。 - 前記電着槽の陰極室から流出した電着液が電着液貯槽を経て前記電気透析槽に導入され、前記電気透析槽から流出した前記鉄族金属イオンを含む電着液が該電着液貯槽を経て該電着槽の陰極室に導入されることを特徴とする請求項5に記載の鉄族金属イオン含有液の処理方法。
- 前記電気透析槽の陽極室及び/又は陰極室を通液した電極液が、電極液貯槽を経て前記電着槽の陽極室に通液され、該電着槽の陽極室から流出した陽極液が該電極液貯槽を経て前記電気透析槽の陽極室及び/又は陰極室に通液されることを特徴とする請求項5又は6に記載の鉄族金属イオン含有液の処理方法。
- 陽極を備えた陽極室と、陰極を備えた陰極室と、該陽極と陰極室との間に設けられた複数枚のカチオン交換膜とを有する電気透析槽と、該電気透析槽の陽極及び陰極間に通電する通電手段と、該電気透析槽に鉄族金属イオン含有液と、該鉄族金属イオンと錯体を形成する配位子を含む電着液とを通液する手段とを有し、該鉄族金属イオン含有液中の該鉄族金属イオンを、該カチオン交換膜を透過させて該電着液に移行させることにより、該鉄族金属イオン含有液中の鉄族金属イオンを除去する電気透析装置と、
陽極を備えた陽極室と、陰極を備えた陰極室と、該陽極室と陰極室とを仕切るカチオン交換膜とを有する電着槽と、該陽極及び陰極間に通電する通電手段と、該電着槽の陰極室に前記電気透析槽から流出した前記鉄族金属イオンを含む電着液を通液する手段とを有し、該鉄族金属イオンを含む電着液中の該鉄族金属を該陰極上に電着させて該電着液から該鉄族金属イオンを除去する電着装置と、
該電着槽から流出した該鉄族金属イオンが除去された電着液を前記電気透析槽に送給する手段と
を備えることを特徴とする鉄族金属イオン含有液の処理装置。 - 前記鉄族金属イオン含有液は、原子力発電所の除染で発生するpH5未満の酸性除染廃液であり、前記電気透析装置で鉄族金属イオンを除去した該廃液が除染液として再利用されることを特徴とする請求項8に記載の鉄族金属イオン含有液の処理装置。
- 前記電気透析槽は、
陽極及び陰極と、
該陽極に対峙して配置された第1のバイポーラ膜と、
該陰極に対峙して配置された第2のバイポーラ膜と、
該第1のバイポーラ膜と第2のバイポーラ膜との間に配置された複数枚のカチオン交換膜と、
該カチオン交換膜同士の間に配置された第3のバイポーラ膜と
を備え、
該陽極と該第1のバイポーラ膜との間が陽極室、該陰極と該第2のバイポーラ膜との間が陰極室となっており、
該カチオン交換膜と該カチオン交換膜の該陽極側に設けられた該バイポーラ膜との間が脱イオン室、該カチオン交換膜と該カチオン交換膜の該陰極側に設けられた該バイポーラ膜との間が濃縮室となっており、
該脱イオン室に前記鉄族金属イオン含有液を通液する手段と、
該濃縮室に前記電着液を通液する手段とを有することを特徴とする請求項8又は9に記載の鉄族金属イオン含有液の処理装置。 - 前記電気透析槽は、
陽極及び陰極と、
該陽極に対峙して配置された第1の水素選択透過型カチオン交換膜と、
該陰極に対峙して配置された第2の水素選択透過型カチオン交換膜と、
該第1の水素選択透過型カチオン交換膜と第2の水素選択透過型カチオン交換膜との間に配置された複数枚のカチオン交換膜と、
該カチオン交換膜同士の間に配置された第3の水素選択透過型カチオン交換膜と
を備え
該陽極と該第1の水素選択透過型カチオン交換膜との間が陽極室、該陰極と該第2の水素選択透過型カチオン交換膜との間が陰極室となっており、
該カチオン交換膜と該カチオン交換膜の該陽極側に設けられた該水素選択透過型カチオン交換膜との間が脱イオン室、該カチオン交換膜と該カチオン交換膜の該陰極側に設けられた該水素選択透過型カチオン交換膜との間が濃縮室となっており、
該脱イオン室に前記鉄族金属イオン含有液を通液する手段と、
該濃縮室に前記電着液を通液する手段とを有することを特徴とする請求項8又は9に記載の鉄族金属イオン含有液の処理装置。 - 更に電着液貯槽を備え、前記電着槽の陰極室から流出した電着液を該電着液貯槽に導入する手段と、該電着液貯槽内の電着液を該電着槽の陰極室に導入する手段と、前記電気透析槽の濃縮室から流出した電着液を該電着液貯槽に導入する手段と、該電着液貯槽内の電着液を前記電気透析槽の濃縮室に導入する手段とを有することを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1項に記載の鉄族金属イオン含有液の処理装置。
- 更に電極液貯槽を備え、前記電着槽の陽極室から流出した陽極液を該電極液貯槽に導入する手段と、該電極液貯槽内の電極液を該電着槽の陽極室に導入する手段と、前記電気透析槽の陽極室及び/又は陰極室から流出した電極液を該電極液貯槽に導入する手段と、該電極液貯槽内の電極液を前記電気透析槽の陽極室及び/又は陰極室に導入する手段とを有することを特徴とする請求項8ないし12のいずれか1項に記載の鉄族金属イオン含有液の処理装置。
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