JP6439242B2 - 放射性廃イオン交換樹脂の除染方法および除染装置 - Google Patents
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従来、廃樹脂から放射性物質を除去する技術として、特許文献3には、廃樹脂を充填した溶離器に硫酸を通液し、イオン状の放射性物質を溶離し、溶離液から拡散透析により放射性物質を分離し、硫酸を循環再利用する技術が開示されている。この場合も、放射性物質を含む廃液が生成するが、その固化処理までは網羅されていない。
廃樹脂中に含まれるクラッドの化学形態は、主にマグネタイト(Fe3O4)およびヘマタイト(α−Fe2O3)が存在する。上記特許文献3に記載されるように、加温されていない常温の硫酸を廃樹脂に通液する方法では、難溶解性のヘマタイト(α−Fe2O3)を溶解することが難しく、廃樹脂からクラッドを除去することができないため、放射性物質が残留するという問題がある。
一方、電着槽4の陰極室7には、電着液貯槽5内の電着液がポンプP3により配管15を経て導入され、配管16を経て電着液貯槽5に戻される。
溶離液貯槽1には適宜酸が配管21より補給され、電着液貯槽5には配管22より適宜電着液が補給される。
陰極室7内の電着液は、ポンプP3により電着液貯槽5との間を循環させ、電着液の減少分を電着液貯槽5に添加しつつ循環再利用する。
ジカルボン酸(塩)、トリカルボン酸(塩)は、そのキレート効果で電着中の懸濁物質の発生を抑制し、電着効果の向上に優れた効果を奏する。
これに対して、分子内に1つのカルボキシル基を持つモノカルボン酸では、Co−60等の放射性金属イオン(放射性物質は何らCo−60に限定されない。以下、Co−60と安定同位体Coを合わせてCoで示す。)やクラッドからのFeイオンとの結合力が弱く、液中でCoやFeの水酸化物からなる懸濁物質が発生する、陰極に均一に電着しないといった問題が生じる。また、分子内に4つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸を用いると、CoイオンやFeイオンとの結合力が強すぎて、液中にCoやFeが保持され、電着の速度が著しく低下するという問題が生じる。
…(1)
(式(1)中、X1,X2,X3は各々独立にH又はOHを表し、X4,X5は各々独立にH、OH又はCOOM3を表し、M1,M2,M3は各々独立にH、1価のアルカリ金属又はアンモニウムイオンを表し、a,b,cは各々独立に0又は1の整数を表す。ただし、式(1)において、X4とX5は同時にCOOM3となることはない。)
電着液中の本発明の添加剤の量が少な過ぎると、本発明の添加剤を用いたことによる懸濁物質抑制の効果を十分に得ることができず、多過ぎるとキレート効果が大きくなりすぎて電着速度が低下する。
また、アンモニウム塩を用いる場合、アンモニウム塩は、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%含むことが好ましい。アンモニウム塩の濃度が低過ぎるとアンモニウム塩を用いたことによる上記効果を十分に得ることができず、高過ぎると効果の向上がなく、薬品使用量が無駄となる。
図1において、溶離液は、溶離槽2に上向流で通液されているが、下向流であってもよい。ただし、廃イオン交換樹脂が粉末状である場合には、通液の際に差圧上昇しやすいため、上向流とすることが好ましい。また、電着槽4において、酸廃液と電着液とはカチオン交換膜8を介して逆方向に通液されてもよい。更に、溶離槽2に導入される溶離液と排出される酸廃液とを熱交換することも可能である。
また、電着槽4は閉鎖系となっているが、陰極から水素ガスが発生するため、上部を開放した開放系とするのが好ましい。また、金属が電着した陰極を交換する際にも、電着槽の上部が開放されていた方が交換が容易となる。
表1に示す酸濃度及びpHの溶離液(水溶液)を500mL調製し、この溶離液中に模擬クラッド(高純度化学研究所製、α−Fe2O3、メーカー公称径1μm)1gを入れ、表1に示す液温及び溶解時間で溶解試験を行った。
溶離液中のFe濃度から、Fe(クラッド)溶解率を調べ、結果を表1に示した。
Coを吸着した混合樹脂は、塩化コバルト(II)6水和物96mgを溶解した水溶液に、粉末状H形カチオン交換樹脂(三菱化学(株)社製、交換容量:5.1meq/g、粒度10−200μm:95%)と粉末状OH形アニオン交換樹脂(三菱化学(株)社製、交換容量4.1meq/g、粒度0−100μm:74%、10−250μm:93%)を40.0gずつ混合し、12hr攪拌することにより調製した。12hr後に上澄水中のCo濃度を原子吸光光度計にて測定した結果、検出下限値以下であったことから、Coイオンのほぼ全量がイオン交換樹脂に吸着されたことが確認された。前記混合樹脂に模擬クラッドとしての鉄酸化物(高純度化学研究所製、α−Fe2O3、メーカー公称径1μm)4.0gを添加して混合したものを模擬廃樹脂とした。その後、この模擬廃樹脂を90℃に加温した10重量%硫酸溶離液(水溶液)1.6L中に投入し、ホットスターラーで加熱攪拌しながら90℃に維持し、溶解挙動を確認した。
10重量%硫酸溶離液に模擬廃樹脂を投入後、所定時間毎に硫酸溶離液を数mLずつ採取し、濾過したサンプル中のFeを原子吸光光度計にて分析すると共に、CoをICP−MSにて分析した。
その結果、Feについては、図2に示すとおり、添加した模擬クラッド中のFe量のほぼ100%が硫酸溶離液中に溶解しており、模擬クラッド溶解後にカチオン交換樹脂への再吸着も起こっていないことが分かった。なお、2時間以降で溶解率が100%を超えているのは、加温による溶離液中の水の蒸発のためである。また、Coについては、添加した塩化コバルト中のCo量のほぼ100%が硫酸溶離液中に溶離しており、樹脂から良好にCoイオンを溶離できていることが確認できた。
CoCl2及びFeCl3と硫酸を水に溶解させて表2に示す性状の模擬酸廃液を調製し、また、クエン酸を水に溶解させて表2に示す性状の模擬電着液(陰極液)を調製して、図3の装置を用いて、Co、Feの電着試験を行った。図3において、図1に示す装置と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。図3中、31は、電着処理液を酸廃液貯槽3に戻す配管である。電着条件は表2の通りである。陽極はPtメッキTi板、陰極はCu板を使用した。
この電着装置では、強酸性の廃液を直接陰極に接触させることなく、カチオン交換膜を介して金属イオンを陰極室に移動させて、効率的に電着させることができた。
各種の添加剤とCoCl2及びFeCl3を用いて、表3に示す組成の電着液400mLを調製し、懸濁物質が発生しなかったものについて、図4の装置を用いて、電着試験を行った。通電は8hr、1A(電流密度62.5mA/cm2)で行った。陽極にはPtメッキTi板を、陰極にはCu板を使用した。図4において、図1,2に示す装置と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。20は電源である。
表3に通電前後での懸濁物質の発生の有無と液pHを示した。通電前後の両方において懸濁物質がない実験例3〜9、比較実験例2,6の電着液について、液中のCoとFeの濃度の経時変化を解析した結果を図5、6に示す。8hrの通電結果から、実験例3〜9においては、経時的にCo及びFeを電着できていることがわかる。
2 溶離槽
3 酸廃液貯槽
4 電着槽
5 電着液貯槽
6 陽極室
6A 陽極
7 陰極室
7A 陰極
8 カチオン交換膜
9A,9B 熱交換器
10 廃イオン交換樹脂
Claims (6)
- 放射性物質を吸着すると共に、酸化鉄を主成分とするクラッドを含む廃イオン交換樹脂に、80〜120℃に加温した酸を接触させて、該廃イオン交換樹脂中のイオン状の放射性物質を溶離除去するとともに、該クラッドを溶解除去する除染工程を含む放射性廃イオン交換樹脂の除染方法であって、
前記酸は、硫酸および/またはシュウ酸であり、
前記除染工程から排出されるイオン状放射性物質を含む酸廃液を60℃未満に冷却した後、陽極と陰極を有する電着槽に導入し、該陽極と陰極間に通電することにより、該酸廃液中のイオン状放射性物質を陰極上に電着させて、該酸廃液からイオン状放射性物質を除去する電着工程と、該電着工程で、該イオン状放射性物質を除去して得られた処理液を前記除染工程に循環して再利用する循環工程とを含み、
前記電着槽は、陽極が設置された陽極室と、陰極が設置された陰極室とが、カチオン交換膜により隔てられており、前記酸廃液は該陽極室に導入され、該陽極と陰極間に通電することにより、該酸廃液中のイオン状放射性物質が該カチオン交換膜を透過して該陰極室に移動し、該陰極上に電着されることを特徴とする放射性廃イオン交換樹脂の除染方法。 - 前記酸は、5〜40重量%の硫酸溶液および/または0.1〜40重量%のシュウ酸溶液であることを特徴とする請求項1に記載の放射性廃イオン交換樹脂の除染方法。
- 前記放射性物質はコバルト−60を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の放射性廃イオン交換樹脂の除染方法。
- 前記陰極上に、コバルト−60と、前記クラッドの溶解物である鉄が電着されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の放射性廃イオン交換樹脂の除染方法。
- 放射性物質を吸着すると共に、酸化鉄を主成分とするクラッドを含む廃イオン交換樹脂に、80〜120℃に加温した酸を接触させて、該廃イオン交換樹脂中のイオン状の放射性物質を溶離除去するとともに、該クラッドを溶解除去する除染手段を含む放射性廃イオン交換樹脂の除染装置であって、該除染手段は、前記廃イオン交換樹脂が充填される充填塔と、該充填塔に前記加温した酸を導入する導入配管と、該導入配管に設けられた加温手段と、該充填塔からイオン状放射性物質を含む酸廃液を60℃未満に冷却して排出する排出配管とを備える放射性廃イオン交換樹脂の除染装置であって、
前記酸は、硫酸および/またはシュウ酸であり、
陽極と陰極を有する電着槽と、該陽極と陰極に通電する手段と、該電着槽に前記酸廃液を導入する手段と、該電着槽の処理液を前記加温手段の上流側に循環する手段とを有し、該陽極と陰極間に通電することにより、該酸廃液中のイオン状放射性物質を陰極上に電着させて、該酸廃液からイオン状放射性物質を除去し、該イオン状放射性物質を除去して得られた処理液が前記除染手段で再利用される放射性廃イオン交換樹脂の除染装置であり、
前記電着槽は、陽極が設置された陽極室と、陰極が設置された陰極室と、該陽極室と陰極室とを隔離するカチオン交換膜とを有し、前記酸廃液は該陽極室に導入され、該陽極と陰極間に通電することにより、該酸廃液中のイオン状放射性物質が該カチオン交換膜を透過して該陰極室に移動し、該陰極上に電着されることを特徴とする放射性廃イオン交換樹脂の除染装置。 - 前記陰極上に、コバルト−60と、前記クラッドの溶解物である鉄が電着されることを特徴とする請求項5に記載の放射性廃イオン交換樹脂の除染装置。
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