以下、添付図面に従って本発明を実施するための形態について詳説する。
[画像読取装置]
《装置構成》
図1は、本発明に係る画像読取装置の一実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す画像読取装置の側面図である。
図1及び図2に示すように、この画像読取装置10は、規定の搬送経路に沿って搬送される用紙Pから画像を読み取る装置として構成される。
図1及び図2において、矢印Xは用紙Pの搬送方向である。用紙Pは、図示しない搬送手段によって一方向に一定の速度で水平に搬送される。
画像読取装置10は、ラインセンサ20、結像レンズ30、及び、照明ユニット40を備える。
〈ラインセンサ〉
ラインセンサ20は、読取手段の一例であり、用紙Pに記録された画像をラインごとに読み取る。ラインセンサ20は、たとえば、一次元CCDイメージセンサ(CCD:Charged Coupled Device)や、一次元CMOSイメージセンサ(CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor)で構成される。
図1において、矢印Yはラインセンサ20の走査方向である。ラインセンサ20の走査方向Yは、用紙Pの搬送方向Xと直交する方向に設定される。ラインセンサ20は、用紙Pの搬送方向Xと直交し、かつ、用紙Pの読取面PAと平行に設置される。
図1及び図2において、矢印Zはラインセンサ20の設置方向である。ラインセンサ20の設置方向Zは、用紙Pの読取面PAに対して垂直な方向に設定される。ラインセンサ20は、その受光面が用紙Pの読取面PAに対向するように配置される。
〈結像レンズ〉
結像レンズ30は、用紙Pの読取面PAの光学像を縮小させて、ラインセンサ20の受光面に結像させる。図1及び図2において、一点破線で示す直線Lは、結像レンズ30の光軸であり、用紙Pの読取面PAに対して垂直に設定される。光軸Lの方向は、ラインセンサ20の設置方向Zと同方向である。
〈照明ユニット〉
図1において、直線SLは、ラインセンサ20の読取ラインである。ラインセンサ20は、この読取ラインSLに沿って用紙Pから画像を1ラインごとに読み取る。
照明ユニット40は、照明手段の一例であり、ラインセンサ20の読取ラインSLに沿って照明光をライン状に照射する。
図3は、照明ユニットの正面図である。
図3に示すように、照明ユニット40は、長尺状の基板42を備える。基板42は素子面42Aを有し、素子面42Aには、長手方向に沿って複数の発光素子44が一列に並べられて配置される。発光素子44は、たとえば、白色LED(LED:Light Emitting Diode)で構成される。
照明ユニット40は、ラインセンサ20と平行に設置される。すなわち、ラインセンサ20の走査方向Yに沿って配置される。
図1及び図2において、矢印LDは、照明ユニット40の設置方向である。照明ユニット40は、発光素子44から出射した光が、ラインセンサ20の読取ラインSLに沿って照射されるように、用紙Pの読取面PAに対して傾けて設置される。より詳しくは、X方向及びZ方向で規定されるXZ平面において、読取ラインSLを通り、結像レンズ30の光軸Lに対して一定の角度αで交差する直線を直線LLとすると、照明ユニット40は、直線LL上に配置され、かつ、その素子面42Aが直線LLに対して直交するように配置される。
照明ユニット40は、おおよそ以上のように構成されるが、更に次の条件を満たすように構成されて設置される。すなわち、発光素子44から読取ラインSLに下ろした垂線と読取ラインSLとの交点を点P1、隣接する2つの発光素子44から等距離にある読取ラインSL上の点を点P2、発光素子44から出射し点P1に入射する光の入射角をθ、発光素子44から出射し点P2に入射する光の入射角をΦとした場合に、(Φ−θ)/θ≦0.11の条件を満たすように設置される。更に、読取ライン上での光量分布のバラツキが10%以下となるように設置される。これにより、ラインセンサ20に入射する光の光量分布を均一にでき、ムラのない画像を読み取れる。この点については、後に詳述する。なお、上記のように入射角θを定義した場合、上記角度αは、θと同じ角度に設定される。すなわち、θ=αとなる。
《画像の読み取り動作》
照明ユニット40を駆動すると、各発光素子44が所定の輝度で発光し、ラインセンサ20の読取領域に照明光が照射される。照明光は、ラインセンサ20の読取ラインSLに沿ってライン状に照射される。読取ラインSLに沿って照射された光は、結像レンズ30を介してラインセンサ20に入射し、ラインセンサ20で受光される。これにより、読取ラインSLに沿って画像がライン状に読み取られる。
画像の読み取りは、用紙Pを一定の速度で搬送して行われる。用紙Pを規定の搬送経路に沿って一定の速度で搬送すると、用紙Pの読取面PAに記録された画像が、ラインセンサ20によってラインごとに順次読み取られる。これにより、用紙Pに記録された二次元画像が読み取られる。
《照明設定方法の詳細》
図4は、画像読取装置における照明の設定方法の概念図である。
上記のように、照明ユニット40は、複数の発光素子44を一定の間隔で一列に配置して構成される。
第一に、照明ユニット40は、読取ラインSL上での光量分布が、ほぼ均一になるように設定される。ここで、ほぼ均一とは、読取ラインSL上での光量分布のバラツキが一定以下、具体的には10%以下となる場合をいう。これにより、読取面PAに照明光をムラなく照射できる。
読取ラインSL上での光量分布は、既知の手法を用いて均一化される。たとえば、発光素子の配置間隔、照射角度、照射距離を調整することにより、読取ラインSL上での光量分布をほぼ均一にすることができる。あるいは、各発光素子の駆動電流のデューティーを個別に制御することにより、均一化することができる。
第二に、照明ユニット40は、(Φ−θ)/θ≦0.11の条件を満たすように設定される。ここで、θ及びΦは、入射角であり、次のように規定される。
図4に示すように、発光素子44から読取ラインSLに下ろした垂線PLと読取ラインSLとの交点を点P1とする。また、隣接する2つの発光素子44から等距離にある読取ラインSL上の点、換言すると、読取ラインSL上で隣接する2つの発光素子44の中間の点を点P2とする。
入射角θは、発光素子44から出射し、点P1に入射する光の入射角として規定される。すなわち、発光素子44の直下に入射する光の入射角として規定される。
一方、入射角Φは、発光素子44から出射し、点P2に入射する光の入射角として規定される。すなわち、入射角Φは、隣接する2つの発光素子44から等距離にある点に入射する光の入射角として規定される。入射角Φは、発光素子44の配置間隔を2p、照射距離(発光素子44から読取ラインSLに下ろした垂線PLの長さ)をlとすると、次式によって算出される。
Φ=Cos-1{(l×Cosθ)/(l2+p2)1/2}
照明ユニット40は、この入射角Φと入射角θとの差が、入射角θに対して11%以下となるように設定される。これにより、照射面(用紙Pの読取面PA)で反射し、結像レンズ30を介してラインセンサ20に入射する光の光量分布を均一にできる。
なお、(Φ−θ)/θ≦0.11の条件を満たすように照明ユニット40を設定することによって、ラインセンサ20に入射する光の光量分布を均一できる、というのは次の考えに基づく。
本実施の形態の照明ユニット40のように、複数の発光素子44を一定の間隔で一列に配置した構成の照明ユニットの場合、同じ読取ラインSL上の点であっても、その位置によって発光素子44からの光の入射角が異なる。すなわち、点P1では入射角θであるのに対して、点P2では入射角Φとなる。ラインセンサ20に入射する光は、照射面で拡散反射した光であり、この光の強度は入射角によって変化する。
図5は、ブラックの濃度チャートに対して30°の入射角で光を照射したときの反射散乱特性を示すグラフである。また、図6は、図5の一部を抽出したグラフである。
ここで、濃度チャートとは、濃度が階段状に配列されたチャートのことである。図7は、濃度チャートの一例を示す図である。同図では、16段の濃度チャートの一例を示している。16段の濃度チャートでは、最低濃度から最高濃度までが16段の階調で表わされる。チャートの1段目が最低濃度の部分であり、16段目が最高濃度の部分である。なお、チャートの0段目は、チャートが記録された紙の地色の部分、すなわち、何も記録されていない部分である。本例では白である。
図5は、図7に示すブラックの濃度チャートに対して30°の入射角で光を照射したときの0段目、1段目、4段目、7段目、9段目、12段目、15段目の反射散乱特性を示している。
図5に示すように、どの濃度においても、拡散は均一ではなく、入射角に等しい反射角方向への反射成分が比較的多くを占めることが確認できる。そして、ラインセンサの設置方向Zである0°付近は、傾きがあることが確認できる。たとえば、図6は、図5から1段目の反射散乱特性のグラフのみを抽出したものであるが、実線で強調して示すように、0°付近は傾きがあることが確認できる。他の濃度においても、図5に示すように、0°付近は傾きがあることが確認できる。このことは、入射角の少しの差が、反射する光の強さに大きく影響することを示唆する。本出願の発明者は、この点に着目した。すなわち、入射角の少しの差が、反射する光の強さに大きく影響することから、照射面の拡散特性を考慮して照明を設定することにより、ラインセンサ20に入射する光の光量分布を均一にできると考えた。そして、発光素子間における入射角の条件を変えて画像を読み取る実験を行い、一定条件下でラインセンサ20に入射する光の光量分布を均一にできることを見出した。すなわち、(Φ−θ)/θ≦0.11の条件を満たすように照明を設定することにより、ラインセンサに入射する光の光量分布を均一できることを見出した。
図8は、実験結果の表である。
実験は以下の条件で行った。すなわち、(Φ−θ)/θの条件を変えて画像を読み取り、読み取った画像のムラの有無を評価した。
実験は、後述するインクジェット印刷装置に組み込まれた画像読取装置で行い、印刷直後の画像をオンラインで読み取ることにより行った。この際、図7に示すブラックの濃度チャートを印刷して読み取った。
また、評価は、読み取った画像のムラの有無を目視で確認することにより行った。この際、目視でムラのない画像については、更に分光光度計(エックスライト社製:i1Pro測定器)を使用してムラの有無を測定し、評価した。なお、評価は、目視でムラのあるものを「BAD」、目視でムラのないものを「GOOD」とした。また、「GOOD」のうち分光光度計でもムラがないものを「VERY GOOD」とした。
実験は、次の6つの条件で行った。
(1)条件1:(Φ−θ)/θ=0.162
照射距離l:35mm、入射角θ:20°、配置間隔2p:15mm
(2)条件2:Φ−θ)/θ=0.135
照射距離l:35mm、入射角θ:22°、配置間隔2p:25mm
(3)条件3:(Φ−θ)/θ=0.110
照射距離l:34mm、入射角θ:25°、配置間隔2p:15mm
(4)条件4:(Φ−θ)/θ=0.104
照射距離l:35mm、入射角θ:25°、配置間隔2p:15mm
(5)条件5:(Φ−θ)/θ=0.042
照射距離l:35mm、入射角θ:38°、配置間隔2p:15mm
(6)条件6:(Φ−θ)/θ=0.006
照射距離l:35mm、入射角θ:35°、配置間隔2p:5mm
なお、用紙は、王子製紙株式会社製の「OKトップコート+」(製品名)を使用した。
図8に示すように、条件3〜6において、ムラのない画像を読み取れることが確認された。特に、条件5及び6については、分光光度計でもムラのないことが確認できた。
この実験結果から照射面の拡散特性を考慮して照明を設定することにより、ラインセンサ20に入射する光の光量分布を均一にでき、(Φ−θ)/θ≦0.11の条件を満たすように照明を設定することにより、ラインセンサ20に入射する光の光量分布を均一できることが確認できた。
よって、(Φ−θ)/θ≦0.11の条件を満たすように照明を設定することにより、ラインセンサ20に入射する光の光量分布を均一でき、ムラのない画像を読み取ることができる。
なお、省電力化を考慮すると、発光素子44の配置間隔を拡げて、設置数を減らすことが好ましい。この場合、照明ユニット40の設置方向及び照射距離を調整して、上記条件を満たすように設定する。
また、照射距離lについては、長く設定し過ぎると、必要な光量が大きくなり、照明の発熱が大きくなる。一方、短く設定し過ぎると、用紙までの距離が近くなり、用紙に接触する危険性が高まる。したがって、照射距離lについては、これらの点を考慮して設定することが好ましい。そして、これらの点を考慮すると、照射距離lは30mm≦l≦40mmの範囲で設定することが好ましい。
《実験についての正当性の検証》
〈用紙の影響〉
上記実験で使用した用紙(王子製紙株式会社製の「OKトップコート+」)は、20°の光沢度が4.5%、60°の光沢度が33.2%、85°の光沢度が82.6%であり、光沢度が比較的光沢度が高い紙である。
光沢度の高い用紙は、拡散性が低くなり、入射角に等しい反射角方向への反射成分が多くなる。この結果、図5に示す反射散乱特性のグラフにおいて、ラインセンサの設置方向Zである0°付近の傾きが大きくなる。
これに対して、光沢度が低い用紙では、拡散性が高くなるので、図5に示すグラフにおいて、0°付近の傾きは小さくなる。よって、上記実験で使用した用紙よりも光沢度が低い用紙では、角度変化に対するロバスト性は向上すると考えられる。したがって、同じ条件で実験した場合であっても、光沢度の低い用紙の方が良好な評価が得られると考えられる。
図9は、光沢度の低い用紙で同じ実験を行ったときの実験結果の表である。
なお、用紙には、王子製紙株式会社製の「OKトップコートマットN」(製品名)を使用した。当該用紙の光沢度は、20°の光沢度が1.2%、60°の光沢度が4.8%、85°の光沢度が33.3%である。
図9に示すように、条件2〜6において、ムラのない画像を読み取れることが確認された。特に、条件3〜6については、分光光度計でもムラのないことが確認できた。
この実験結果から紙種によらず(Φ−θ)/θ≦0.11の条件を満たすように照明を設定することにより、ラインセンサ20に入射する光の光量分布を均一できることが確認できた。
〈インクの影響〉
上記のように、照射角度の差によるムラは、照射面での光の拡散性が大きく影響すると考えられる。
図5のグラフに示すように、拡散性が高いと、ラインセンサに入射する光のロバスト性が高くなり、照射角度の差によるムラは低減すると予想される。インクでこの拡散性に影響するのは、凝集性と考えられる。その理由は、凝集性によって、用紙に打滴されるインク滴の曲率が変わるからである。そして、インク滴の曲率が変わることにより、拡散性が変わるからである。
図10は、インク滴の曲率と拡散性との関係を示す図である。同図(A)は、曲率の高いインク滴に対する光の拡散状態を示している。また、同図(B)は、曲率の低いインク滴に対する光の拡散状態を示している。図10の(A)及び(B)に示すように、インク滴は、曲率が高いほど光を拡散しやすくなることが分かる。
ここで、「凝集性=インクの拡がりの程度」と考えると、濃度チャートの各濃度を確認すれば、凝集性を検討することができる。なぜならば、インクジェット印刷では、濃度を液滴の大きさや密集度で示しているからである。
実際に、図5のグラフに示すように、各濃度で拡散性が異なっていることから、濃度チャートの各濃度を確認することによって、インクの凝集性の影響を検討しているのと同じと考えられる。したがって、他のインクでも(Φ−θ)/θ≦0.11の条件を満たすように照明を設定することにより、ラインセンサ20に入射する光の光量分布を均一できると考えられる。
[画像記録装置]
次に、本発明に係る画像読取装置を組み込んだ画像記録装置の実施形態について説明する。ここでは、一例としてインクジェット印刷装置に組み込んだ場合を例に説明する。
《画像記録装置の全体構成》
図11は、インクジェット印刷装置の全体の概略構成図である。このインクジェット印刷装置100は、シート状のメディアである枚葉紙にインクジェット方式で画像を印刷する枚葉式のインクジェット印刷装置であり、特に汎用の印刷用紙に水性インクを使用してカラー印刷する枚葉式のカラーインクジェット印刷装置である。
なお、汎用の印刷用紙とは、いわゆるインクジェット専用紙ではなく、オフセット印刷などで使用されている塗工紙(アート紙、コート紙、軽量コート紙、キャスト紙、微塗工紙など)などのセルロースを主体とした用紙をいう。また、水性インクとは、水及び水に可溶な溶媒に染料、顔料などの色材を溶解又は分散させたインクをいう。
図11に示すように、インクジェット印刷装置100は、主として、用紙Pを給紙する給紙部110と、給紙部110から給紙される用紙Pに所定の処理液を塗布する処理液塗布部120と、処理液が塗布された用紙Pを乾燥処理する処理液乾燥部130と、乾燥処理された用紙Pにインクジェット方式で印刷する印刷部140と、画像が印刷された用紙Pを乾燥処理するインク乾燥部150と、乾燥処理された用紙Pを集積する集積部160と、を備えて構成される。
〈給紙部〉
給紙部110は、用紙Pを1枚ずつ給紙する。図11に示すように、給紙部110は、主として、給紙装置112と、フィーダボード114と、給紙ドラム116と、を備えて構成される。
給紙装置112は、用紙束の状態で所定位置にセットされる用紙Pを上から順に1枚ずつ取り出して、フィーダボード114に1枚ずつ給紙する。
フィーダボード114は、給紙装置112から1枚ずつ給紙される用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送し、給紙ドラム116へと移送する。
給紙ドラム116は、フィーダボード114から給紙される用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送し、処理液塗布部120へと移送する。給紙ドラム116は、円筒形状を有し、周面に備えられたグリッパで用紙Pの搬送方向前側の端部を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き付けて搬送する。
〈処理液塗布部〉
処理液塗布部120は、用紙Pに印刷面に所定の処理液を塗布する。この処理液塗布部120で塗布する処理液は、インク中の色材成分を凝集、不溶化ないし増粘させる機能を備えた液体である。このような処理液を用紙に塗布することにより、汎用の印刷用紙にインクジェット方式で印刷する場合であっても、高品位な画像を印刷することが可能になる。
図11に示すように、処理液塗布部120は、主として、用紙Pを搬送する処理液塗布ドラム122と、処理液塗布ドラム122によって搬送される用紙Pの印刷面に処理液を塗布する処理液塗布装置124と、を備えて構成される。
処理液塗布ドラム122は、給紙部110の給紙ドラム116から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送し、処理液乾燥部130へと移送する。処理液塗布ドラム122は、円筒形状を有し、周面に備えられたグリッパで用紙Pの搬送方向前側の端部を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き付けて搬送する。用紙Pは、印刷面が外側に向けられた状態で処理液塗布ドラム122の周面に巻き付けられて搬送される。
処理液塗布装置124は、処理液塗布ドラム122によって搬送される用紙Pの面に処理液を塗布する。本実施の形態では、処理液をローラ塗布する。すなわち、周面に処理液が付与されたローラを処理液塗布ドラム122によって搬送される用紙Pの印刷面に押し当てて、処理液を塗布する。処理液の塗布方式は、これに限定されるものではなく、この他、インクジェットヘッドを用いて塗布する方式や、スプレーを用いて塗布する方式なども採用できる。
処理液塗布部120は、以上のように構成される。用紙Pは、処理液塗布ドラム122で搬送される過程で処理液塗布装置124によって印刷面に処理液が塗布される。
〈処理液乾燥部〉
処理液乾燥部130は、処理液が塗布された用紙Pを乾燥処理する。処理液乾燥部130は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥ドラム132と、処理液乾燥ドラム132によって搬送される用紙Pに温風を吹き当てて、用紙Pを乾燥させる処理液乾燥装置134と、を備えて構成される。
処理液乾燥ドラム132は、処理液塗布部120の処理液塗布ドラム122から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送し、印刷部140へと移送する。処理液乾燥ドラム132は、円筒状に組んだ枠体で構成され、周面に備えられたグリッパで用紙Pの搬送方向前側の端部を把持して回転することにより、用紙Pを搬送する。
処理液乾燥装置134は、処理液乾燥ドラム132の内側に設置され、処理液乾燥ドラム132によって搬送される用紙Pに向けて温風を送風する。
処理液乾燥部130は、以上のように構成される。用紙Pは、処理液乾燥ドラム132によって搬送される過程で、処理液乾燥装置134から送風される温風が処理液塗布面に吹き当てられて、乾燥処理される。
〈印刷部〉
印刷部140は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の4色のインクを用いて用紙Pの印刷面にカラー画像を印刷する。
図12は、印刷部の概略構成図である。図12に示すように、印刷部140は、主として、用紙Pを搬送する印刷ドラム142と、印刷ドラム142によって搬送される用紙Pを印刷ドラム142の周面に押圧して、用紙Pを印刷ドラム142の周面に密着させる押圧ローラ144と、印刷ドラム142によって搬送される用紙Pに向けてC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出するヘッドユニット145と、用紙Pに印刷された画像を読み取る画像読取装置10と、を備えて構成される。
印刷ドラム142は、搬送手段の一例である。印刷ドラム142は、処理液乾燥部130の処理液乾燥ドラム132から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送し、インク乾燥部150へと移送する。印刷ドラム142は、円筒形状を有し、周面に備えられたグリッパ142Aで用紙Pの先端を把持して回転することにより、周面に用紙Pを巻き付けて搬送する。印刷ドラム142には、用紙Pをドラムの周面に密着させるため、吸着機構が備えられる。すなわち、印刷ドラム142は、周面に吸着させて搬送可能に構成される。本実施の形態の印刷ドラム142では、負圧を利用して用紙Pが吸着される。印刷ドラム142は、メディア保持面である周面に多数の吸着穴を有し、この吸着穴を介してドラム内部から吸引することにより、用紙Pを周面に吸着させる。
押圧ローラ144は、印刷ドラム142との間で用紙Pを挟んで、用紙Pを印刷ドラム142の周面に密着させる。押圧ローラ144は、印刷ドラム142が、処理液乾燥ドラム132から用紙Pを受け取る位置の直後の位置に配置される。これにより、押圧ローラ144によって押圧されながら、用紙Pが印刷ドラム142の周面に巻き付けられる。
ヘッドユニット145は、広義の画像記録手段であり、シアンのインク滴を吐出するインクジェットヘッド146Cと、マゼンタのインク滴を吐出するインクジェットヘッド146Mと、イエロのインク滴を吐出するインクジェットヘッド146Yと、ブラックのインク滴を吐出するインクジェットヘッド146Kと、を備えて構成される。各インクジェットヘッド146C、146M、146Y、146Kは、印刷ドラム142による用紙Pの搬送経路上に配置される。
各インクジェットヘッド146C、146M、146Y、146Kは、狭義の画像記録手段である。各インクジェットヘッド146C、146M、146Y、146Kは、印刷ドラム142によって搬送される用紙Pに対してシングルパスで画像を印刷できるように、ラインヘッドで構成される。各インクジェットヘッド146C、146M、146Y、146Kは、先端にノズル面を備え、このノズル面に配置されたノズルから印刷ドラム142によって搬送される用紙Pに向けてインク滴を吐出する。
図13は、ノズル面の平面図である。
同図に示すように、各インクジェットヘッド146C、146M、146Y、146Kのノズル面NFには、用紙Pの搬送方向Xと直交する方向Yに沿ってノズルNzが一定ピッチで配置される。
画像読取装置10は、図12に示すように、印刷ドラム142による用紙Pの搬送経路上に配置される。すなわち、画像読取装置10は、ヘッドユニット145と同じドラムの搬送経路上に配置される。画像読取装置10は、用紙Pの搬送方向に対してヘッドユニット145の下流側に設置される。これにより、印刷直後の画像を読み取れる。
画像読取装置10の構成は、上述した図1の画像読取装置10の構成と同じである。したがって、その説明は省略する。画像読取装置10は、その読取ラインが用紙Pの搬送方向と直交するように配置される。また、画像読取装置10は、印刷ドラム142の径方向から画像を読み取るように設置される。すなわち、読取位置における印刷ドラム142の法線方向に沿って設置される。
印刷部140は、以上のように構成される。用紙Pは、印刷ドラム142によって搬送される過程でヘッドユニット145を構成する各インクジェットヘッド146C、146M、146Y、146KからC、M、Y、Kの各色のインク滴が印刷面に打滴されて、印刷面にカラー画像が印刷される。用紙Pに印刷された画像は、必要に応じて画像読取装置10で読み取られる。
〈インク乾燥部〉
インク乾燥部150は、印刷後の用紙Pを乾燥処理する。図11に示すように、インク乾燥部150は、主として、用紙Pを搬送するチェーングリッパ152と、チェーングリッパ152によって搬送される用紙Pの走行をガイドする用紙ガイド154と、チェーングリッパ152によって搬送される用紙Pの印刷面を加熱して乾燥させる加熱乾燥装置156と、を備えて構成される。
チェーングリッパ152は、印刷部140の印刷ドラム142から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送し、集積部160へと移送する。チェーングリッパ152は、一定の走行経路に沿って走行する無端状のチェーン152Aを備え、そのチェーン152Aに備えられたグリッパ152Bで用紙Pの先端を把持して、用紙Pを搬送する。用紙Pは、このチェーングリッパ152に搬送されることにより、インク乾燥部150に設定された加熱領域及び非加熱領域を通過して、集積部160に移送される。なお、加熱領域は、印刷部140から移送されてきた用紙Pが最初に水平に搬送される領域に設定され、非加熱領域は、用紙Pが傾斜して搬送される領域に設定される。
用紙ガイド154は、チェーングリッパ152による用紙Pの搬送経路に沿って配置され、チェーングリッパ152によって搬送される用紙Pの走行をガイドする。用紙ガイド154は、第1ガイドボード154A及び第2ガイドボード154Bを備えて構成される。
第1ガイドボード154Aは、加熱領域に配置されるガイドボードであり、中空の平板形状を有する。第1ガイドボード154Aは、上面部分が用紙Pのガイド面とされ、このガイド面の上を用紙Pが滑りながら搬送される。
第1ガイドボード154Aのガイド面には、多数の吸着穴が備えられる。第1ガイドボード154Aは、この吸着穴を介して内部から負圧吸引することにより、用紙Pをガイド面に吸い付けながら、用紙Pの走行をガイドする。
また、第1ガイドボード154Aには、ガイド面を冷却する冷却機構が備えられる。冷却機構は、たとえば、水冷式の冷却機構で構成され、内部に配設された流路に冷却液を流すことにより、ガイド面を冷却する。第1ガイドボード154Aは、この冷却機構を利用して、ガイド面の温度が一定温度に制御される。
第2ガイドボード154Bは、非加熱領域に配置されるガイドボードである。第2ガイドボード154Bの構成は、第1ガイドボード154Aの構成と同じである。すなわち、中空の平板形状を有し、用紙Pをガイド面に吸い付けながら、用紙Pの走行をガイドする。また、冷却機構が備えられ、ガイド面の温度が一定温度に制御される。
加熱乾燥装置156は、乾燥手段の一例である。加熱乾燥装置156は、加熱領域に設置され、加熱領域を搬送される用紙Pの印刷面を加熱して、用紙Pに付与されたインクを乾燥させる。加熱乾燥装置156は、熱源としての複数の赤外線ランプ156Aを備えて構成され、チェーングリッパ152の内側に配置される。赤外線ランプ156Aは、加熱領域における用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔で配置される。
インク乾燥部150は以上のように構成される。用紙Pは、チェーングリッパ152によって搬送される過程で印刷面を加熱乾燥装置156によって加熱され、乾燥処理される。
〈集積部〉
集積部160は、順次排紙される用紙Pを1カ所に集積する。図11に示すように、集積部160は、主として、チェーングリッパ152によってインク乾燥部150から搬送されてくる用紙Pを受け取り、集積する集積装置162を備えて構成される。
チェーングリッパ152は、所定の集積位置で用紙Pをリリースする。集積装置162は、リリースされた用紙Pを回収し、束状に集積する。
《制御系》
図14は、インクジェット印刷装置の制御系のシステム構成を示すブロック図である。
同図に示すように、インクジェット印刷装置100は、制御部としてコンピュータ200を備えている。インクジェット印刷装置100の動作は、すべてコンピュータ200で制御される。すなわち、給紙部110からの給紙、給紙された用紙Pの搬送、処理液塗布部120での処理液の塗布、処理液乾燥部130での乾燥、印刷部140での印刷、印刷された画像の読み取り、インク乾燥部150での乾燥、集積部160での集積等、すべての処理がコンピュータ200による制御の下、実施される。
コンピュータ200は、所定の制御プログラムを実行することによりインクジェット印刷装置100の各部を制御する制御部として機能する。
コンピュータ200には、外部機器と通信するための通信部202、インクジェット印刷装置100を操作するための操作部204、各種情報を表示するための表示部206、各種データを記憶するための記憶部208等が接続される。
操作部204は、たとえば、操作ボタンやキーボード、マウス、タッチパネル等で構成することができる。表示部206は、たとえば、液晶ディスプレイなどのディスプレイ装置で構成することができる。記憶部208は、たとえば、ハードディスクドライブなどの記憶装置で構成することができる。コンピュータ200が実行する制御プログラムや制御に必要な各種データ等は記憶部208に格納される。
コンピュータ200は、通信部202を介して外部機器から印刷する画像データを取得する。コンピュータ200は、取得した画像データに対して所要の信号処理を施してドットデータを生成する。ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGB(standard RGB)などで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット印刷装置100で使用するインクの各色のインク量データに変換する処理である(本例では、C、M、Y、Kの各色のインク量データに変換する。)。ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色のインク量データに対して誤差拡散等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。コンピュータ200は、画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って各色のドットデータを生成する。そして、生成した各色のドットデータに従って、対応するインクジェットヘッドの駆動を制御することにより、画像データが表す画像を用紙Pに記録する。
《吐出異常及び濃度ムラの検出並びに補正》
本実施の形態のインクジェット印刷装置100は、吐出異常及び濃度ムラを検出する機能、並びに、その補正機能を備えている。
〈吐出異常の検出〉
吐出異常とは、インクの不吐や吐出曲がりなどのインクジェットヘッドの不具合をいう。また、不吐や吐出曲がりなどの吐出異常が生じているノズルを異常ノズルという。
吐出異常は、所定のテストチャートを印刷することにより行われる。すなわち、所定のテストチャートを印刷し、その印刷結果から吐出異常の有無を判定する。吐出異常の有無は、動作状態検出部210で検出される。
コンピュータ200は、所定のプログラムを実行することにより、動作状態検出部210として機能する。動作状態検出部210は、検出手段の一例である。
図15は、動作状態検出部のシステム構成を示すブロック図である。
動作状態検出部210は、所定のテストチャートをインクジェットヘッド146C、146M、146Y、146Kに印刷させる機能、その印刷結果を画像読取装置10に読み取らせる機能、読み取った画像を解析し、吐出異常の有無を検出する機能を有する。
テストチャートは、記憶部208に格納される。動作状態検出部210は、記憶部208からテストチャートのデータを取得して、インクジェットヘッド146C、146M、146Y、146Kに印刷させる。
動作状態検出部210は、画像読取装置10で読み取られたテストチャートの画像データを画像読取装置10から取得し、得られた画像データを解析して、吐出異常を検出する。
図16は、テストチャートの一例を示す図である。
図16に示すテストチャートTCは、ノズルチェックパターンと呼ばれるテストチャートである。ノズルチェックパターンは、各ノズルからインクを階段状に打滴して記録される。
図17は、ノズルチェックパターンを使用して吐出異常を検出する場合の概念図である。同図(A)は、不吐を検出する場合の概念図である。また、同図(B)は、吐出曲がりを検出する場合の概念図である。
図17(A)は、左から3番目のノズルNz3が不吐になった場合を例示している。同図に示すように、ノズルチェックパターンを使用した場合、不吐になると、不吐になったノズルのパターンが欠落する。したがって、欠落したパターンの位置を検出することにより、不吐のノズルを検出でき、その位置を特定できる。
図17(B)は、左から3番目のノズルNz3に吐出曲がりが生じた場合を例示している。同図に示すように、ノズルチェックパターンを使用した場合、吐出曲がりが生じると、吐出曲がりが生じたノズルのパターンが正規の位置からずれて印刷される。ここで、正規の位置とは、吐出方向曲がりが生じていない場合に印刷される位置をいう。したがって、正規の位置からずれて印刷されたパターンを検出することにより、吐出方向不良が生じているノズルを検出でき、かつ、その位置を特定できる。
図18は、テストチャートの他の一例を示す図である。
図18に示すテストチャートTCは、等濃度パッチと呼ばれるテストチャートである。等濃度パッチは、幅方向の全域において均一な濃度で印刷するテストチャートである。
図19は、等濃度パッチを使用して吐出異常を検出する場合の概念図である。同図(A)は、不吐を検出する場合の概念図である。また、同図(B)は、吐出曲がりを検出する場合の概念図である。
図19(A)は、左から3番目のノズルNz3が不吐になった場合を例示している。同図に示すように、等濃度パッチを使用した場合、ノズルが不吐になると、不吐になったノズルの部分が欠けて印刷される。したがって、印刷されたテストチャートの欠けた部分を検出することにより、不吐のノズルを検出でき、かつ、その位置を特定できる。
図19(B)は、左から3番目のノズルNz3に吐出曲がりが生じた場合を例示している。同図に示すように、等濃度パッチを使用した場合、吐出曲がりが生じると、吐出曲がりが生じたノズルの近傍の濃度が変化する。したがって、印刷されたテストチャートにおいて、濃度が変化している部分を検出することにより、吐出曲がりが生じているノズルを検出でき、かつ、その位置を特定できる。
このように、所定のテストチャートTCを印刷することにより、ノズルの不吐や吐出曲がり等の吐出不良を検出できる。なお、吐出異常は、この他、吐出するインクの体積や速度の変化も検出できる。
〈濃度ムラの検出〉
濃度ムラの検出は、所定の濃度チャートを印刷することにより行われる。上記のように、濃度が階段状に配列されたチャートのことである(図7参照)。濃度チャートを印刷することにより、各階調での濃度ムラを検出できる。濃度ムラも動作状態検出部210で検出される。
〈補正〉
吐出異常や濃度ムラが検出されると、所要の補正処理が行われる。コンピュータ200は、所定の制御プログラムを実行することにより、補正部212として機能する。補正部212は、動作状態検出部210で検出された情報に基づいて、所要の補正処理を行う。すなわち、吐出異常が生じているノズルの情報に基づいて不吐補正を行い、かつ、濃度ムラの情報に基づいて濃度ムラ補正を行う。
〔不吐補正〕
動作状態検出部210で異常ノズルが検出されると、補正部212は、異常ノズルを不吐化し、既知の方法で不吐補正を行う。たとえば、不吐化したノズルの周囲のノズルからの吐出量を増やす処理を行って不吐補正を行う。吐出量を増やす処理は、たとえば、単位当たりのドット数を増やしたり、液滴量を増やしたりすることにより行われる。
〔濃度ムラ補正〕
補正部212は、画像読取装置10で読み取った濃度チャートの画像データを解析して、階調補正テーブルを作成し、作成した階調補正テーブルを用いて印刷する画像のインク量データに階調変換を行うことで、濃度ムラ補正を行う。
図20は、濃度ムラ補正の概念図である。同図(A)は、画像読取装置10で読み取った濃度チャートの濃度値のデータである。横軸は、インクジェットヘッドの幅方向におけるノズルの位置であり、縦軸は各ノズル位置での濃度値である。同図(B)は、階調補正テーブルの一例である。同図(C)は、階調補正テーブルを用いて階調補正した補正後の濃度値のデータである。
補正部212は、図20(B)に示すように、画像読取装置10で読み取った濃度チャートの各階調の濃度値が、インクジェットヘッドの幅方向で均一になるように、使用する全ノズルに対して階調補正テーブルを作成する。そして、作成した階調補正テーブルを使用して印刷する画像のインク量データに階調変換を行う。これにより、図20(C)に示すように、各階調でインクジェットヘッドの幅方向に均一な濃度の画像が得られる。
《印刷処理の流れ》
印刷処理は、(a)給紙、(b)処理液の塗布、(c)乾燥、(d)印刷、(e)乾燥、(f)集積の順で行われる。
画像の印刷開始が指示されると、給紙部110から給紙が開始される。給紙部110から給紙された用紙Pは、まず、処理液塗布部120に搬送される。そして、その処理液塗布部120の処理液塗布ドラム122によって搬送される過程で印刷面に処理液が塗布される。
処理液が塗布された用紙Pは、次に、処理液乾燥部130に搬送される。そして、その処理液乾燥部130の処理液乾燥ドラム132によって搬送される過程で印刷面に温風が吹き当てられて乾燥処理される。
乾燥処理された用紙Pは、次に、印刷部140に搬送される。そして、その印刷部140の印刷ドラム142によって搬送される過程でシアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの各色のインク滴が打滴されて、印刷面にカラー画像が印刷される。
画像が印刷された用紙Pは、次に、インク乾燥部150に搬送される。そして、そのインク乾燥部150のチェーングリッパ152によって搬送される過程で印刷面に赤外線ランプ156Aからの熱が当てられて乾燥処理される。
乾燥処理された用紙Pは、そのままチェーングリッパ152によって集積部160に搬送され、集積部160の集積装置162で回収される。
〈異常検出〉
異常検出は、印刷ジョブの実行中、逐次実施される。動作状態検出部210は、用紙Pの余白領域にテストチャートTCを印刷して、吐出異常を検出する。
図21は、用紙への画像の印刷例を示す図である。
同図に示すように、印刷対象の画像は、用紙Pの全面に印刷されるのではなく、余白をもって印刷される。余白は、用紙Pの搬送方向Xの一端に形成される。テストチャートTCは、この余白領域に印刷される。
テストチャートTCは、すべての用紙Pに印刷される。画像読取装置10は、印刷されたすべての用紙PからテストチャートTCの画像を読み取る。これにより、1回の印刷ごとに吐出異常の有無を検出できる。
この際、本実施の形態のインクジェット印刷装置100では、同じドラムで画像の記録及び読み取りが行われる。これにより、印刷された画像を精度よく読み取れる。すなわち、印刷後、用紙Pの受け渡しを行うことなく、画像を読み取るので、位置ズレを起こすことなく、精度よく画像を読み取れる。
また、画像の読み取りは、インクの乾燥前に画像の読み取りが行われるが、本実施の形態のインクジェット印刷装置100では、光の拡散の影響を考慮して画像読取装置10の照明が設定されているので、ムラなく画像の読み取りができる。これにより、精度よく吐出異常や濃度ムラを検出できる。
〈濃度ムラ補正〉
濃度ムラ補正は、定期的に実施される。たとえば、装置の起動時や印刷ジョブごとに実施される。濃度ムラ補正の実行が指示されると、コンピュータ200は、濃度チャートの印刷を実施し、濃度補正ムラ補正の処理を実行する。すなわち、階調補正テーブルを作成する処理を実施する。
《変形例》
〈画像読取装置の変形例〉
上記実施の形態では、ラインセンサの読取ラインに対して、用紙Pの搬送方向上流側に照明ユニットを設置し、上流側から照明光を照射する構成としているが、下流側に照明ユニットを設置し、下流側から照明光を照射する構成とすることもできる。
また、上記実施の形態では、1組のラインセンサと結像レンズの組み合わせで用紙の幅方向全域の画像を読み取る構成としているが、複数のラインセンサと結像レンズの組み合わせで用紙の幅方向全域の画像を読み取る構成とすることもできる。この場合、複数のラインセンサ及び結像レンズを用紙の幅方向に並べて配置する。
また、読取手段であるラインセンサについては、カラー画像を読み取れる構成とすることもできる。たとえば、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色のカラーフィルターを備えたラインセンサを使用することにより、カラー画像の読み取りが可能になる。
〈画像記録装置〉
上記実施の形態では、画像読取装置をインクジェット印刷装置に組み込んだ場合を例に説明したが、画像記録装置は、他の方式で画像を記録する画像記録装置にも同様に組み込むことができる。
また、上記実施の形態では、画像記録手段であるヘッドユニット145と乾燥手段である加熱乾燥装置156の間に画像読取装置10を配置し、インク乾燥前に画像を読み取る場合を例に説明したが、インク乾燥後に画像を読み取る構成とすることもできる。この場合、たとえば、チェーングリッパ152で搬送中の用紙Pから画像を読み取る構成とすることができる。