JP2016187822A - 厚鋼板冷却方法及び厚鋼板冷却装置 - Google Patents
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図1の厚鋼板加工設備は、原料厚鋼板(スラブ)Pを加熱する加熱炉1と、加熱された原料厚鋼板Pを熱間圧延する粗圧延機2と、粗圧延機2で圧延された厚鋼板Pをさらに熱間圧延する仕上圧延機3と、仕上圧延機3で熱間圧延された厚鋼板Pを冷却する厚鋼板冷却装置4と、冷却された厚鋼板Pを矯正するレベラー5とを備える。
厚鋼板冷却装置4は、熱間圧延後の厚鋼板Pを搬送しつつ厚鋼板Pの表面(上面)及び裏面(下面)に冷却水を散水することにより厚鋼板Pを冷却するものであって、加速冷却装置とも呼ばれる。この厚鋼板冷却装置4において、厚鋼板Pの冷却は、予め設定される冷却停止温度まで急速に冷却される。冷却停止温度としては、目的とする製品(厚鋼板Pの用途)に応じて定められるが、例えば200℃以上650℃(573K以上923K以下)以下とされる。
搬送装置10は、例えば図2に例示するように、複数のローラー11によって構成されるローラーコンベアーとすることができる。
温度測定装置20は、表面冷却ヘッダー30の上流側で厚鋼板Pの幅方向の温度分布、つまり厚鋼板Pの中心軸を基準とする幅方向の位置x[mm]における表面温度Ti(x)[K]の分布を測定する。この温度測定装置20としては、表面温度Ti(x)を測定できるものであればよく、例えば放射温度計を用いることができる。
表面冷却ヘッダー30は、図3(a)に示すように、厚鋼板Pの幅方向(図中左右方向)に長い直方体状であり、底面に開口する複数の吐出口31と、内部空間を幅方向に3つに区分する2枚の隔壁32とを備える。2枚の隔壁32は、幅方向に対称、かつ幅方向に対して傾斜して搬送方向上流側に向けて広がるように配設されている。これにより、表面冷却ヘッダー30の内部空間は、2枚の隔壁32の内側の中央領域33と2枚の隔壁32の外側の2つの端部領域34とに区分される。この表面冷却ヘッダー30に対して、厚鋼板Pは、図中の矢印D方向に搬送される。
裏面冷却ヘッダー40は、厚鋼板Pの裏面に一様に冷却水を散水する多数のノズルにより構成され、厚鋼板Pを挟んで各表面冷却ヘッダー30に対向するよう配置されている。この裏面冷却ヘッダー40による散水量は、位置にかかわらず一定のWB[L/min/m2]とされる。
制御装置50は、温度測定装置20によって測定された冷却水散水前の厚鋼板Pの幅方向の温度分布Ti(x)[K]に基づいて、表面冷却ヘッダー30の水量密度分布W(x)、つまり基準水量密度W0及びクラウン量Cwを調整弁37及び分岐調整弁39によって調節することにより、表面冷却ヘッダー30の水量密度分布W(x)を決定する処理を行う。
これより、上記厚鋼板冷却装置4の動作、つまり上記制御装置50によって行われる本発明の一実施形態に係る厚鋼板冷却方法について説明する。
ステップS01の初期条件設定工程では、制御装置50は、水量密度分布W(x)の初期値及びその他の運転条件を設定する。また、その他の運転条件としては、厚鋼板Pの板厚、幅方向の長さ、比熱、熱伝導率、変態発熱量等の物性、冷却水の水温、冷却停止温度、搬送装置10の搬送速度、冷却水散水後の目標温度、冷却水散水後の温度偏差の許容値ET[K]などが設定される。このような初期条件は、例えばハードディスクドライブやメモリー等の記憶装置からの読み込み、外部の制御装置等との通信、ユーザーの手入力などによって設定することができる。
ds=a×ET−b ・・・(1)
ステップS02の温度分布測定工程では、温度測定装置20によって、表面冷却ヘッダー30の上流側で冷却水散水前(表面冷却ヘッダー30及び裏面冷却ヘッダー40間に進入する直前)の厚鋼板Pの表面の幅方向の温度分布Ti(x)を測定する。
ステップS03の温度分布予測工程では、冷却水散水前の温度分布Ti(x)、設定されている表面冷却ヘッダー30の水量密度分布W(x)及び裏面冷却ヘッダー40の水量密度分布WBに基づいて、厚鋼板Pの板厚方向内部位置dsでの冷却水散水後(1つ下流側の表面冷却ヘッダー30及び裏面冷却ヘッダー40間に進入する前)の温度分布Te(x)を予測する。
ステップS11の水膜高さ算出工程では幅方向の位置xでの水膜高さh(x)を、限界水膜高さhcr[mm]と、水量密度分布W(x)と、厚鋼板Pの幅方向の長さB及び厚鋼板冷却装置4固有の特性等に応じて定められる係数f1、f2及びf3とを用い、下記式(2)により算出する。
h(x)=hcr+f1×(1−f3×x)0.5−f2×(1−f3×x) ・・・(2)
hcr={(2+C)×qcr 2/2/g}1/3 ・・・(21)
qcr=γ×(B2+0.25)0.5/4 ・・・(22)
なお、qcrは限界流量[L/min]、gは重力加速度[m/sec2]、γは水量密度、水量クラウン量及びエッジカット量により決定されるノズル群流量[L/min]、Cは定数である。
ステップS12の熱伝達係数分布算出工程では、以下に詳説するように、厚鋼板Pの表面に形成される水膜の高さh(x)[mm]を変数として熱伝達係数分布α(x)を算出するとよい。
α(x)={h(x)/h0}ε×α0 ・・・(3)
α0=10^(c1+c2×logW0+c3×Ti0) ・・・(31)
なお、c1、c2及びc3は定数であり、Ti0は、厚鋼板Pの幅方向中心での表面温度[K]である。
ステップS13の予測温度分布導出工程では、冷却水散水前の厚鋼板Pの幅方向の温度分布Ti(x)及び熱伝達係数分布α(x)に基づいて、冷却水の温度を用いて厚鋼板の板厚方向内部位置での冷却水散水後の温度分布を予測する。
c(T)×ρ×δT/δt=δ/δd×{λ(T)×δT/δd} ・・・(4)
図4のステップS04の収束判定工程では、ステップS03で予測した温度分布Te(x)の温度偏差を算出し、この温度偏差が十分に小さくなっているか否かを判定する。具体的例としては、この収束判定工程では、平均温度偏差の絶対値が所定の閾値以下であるか否かを確認する。ステップS04において平均温度偏差の絶対値が閾値以下である場合、温度偏差が収束したものと判断して、図4の水量密度分布決定処理を終了、つまり現在の水量密度分布W(x)を維持する。一方、ステップS04において平均温度偏差の絶対値が閾値を超える場合、ステップS05に進んで水量密度分布W(x)の調整を行う。
ステップS05の水量密度分布調整工程では、クラウン量Cwを調整する。具体的には、上記平均温度偏差が正の値である場合にはクラウン量Cwを一定量増加し、上記平均温度偏差が負の値である場合にはクラウン量Cwを一定量減少する。
当該厚鋼板冷却方法及び当該厚鋼板冷却装置は、厚鋼板Pの表面での熱伝達係数分布α(x)を算出し、冷却水散水前の温度分布Ti(x)及び熱伝達係数分布α(x)に基づいて厚鋼板の板厚方向内部位置dsでの冷却水散水後の予測温度分布Te(x)を導出する。厚鋼板Pの板厚方向内部位置dsでの温度分布は、厚鋼板Pの表面の温度分布と比べて位置毎の偏差及び時間的な変動が小さいので、温度を比較的小さい許容誤差で管理することができる。このため、当該厚鋼板冷却方法及び当該厚鋼板冷却装置は、冷却後の厚鋼板P内部の温度偏差を比較的小さくすることにより、冷却後の厚鋼板の品質を向上することができる。
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらはすべて本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
2 粗圧延機
3 仕上圧延機
4 厚鋼板冷却装置
5 レベラー
10 搬送装置
11 ローラー
20 温度測定装置
30 表面冷却ヘッダー
31 吐出口
32 隔壁
33 中央領域
34 端部領域
35 中央給水流路
36 端部給水流路
37 主調整弁
38 分岐流路
39 分岐調整弁
40 裏面冷却ヘッダー
50 制御装置
P 厚鋼板
Claims (6)
- 熱間圧延後の厚鋼板を搬送しつつ、上記厚鋼板の表裏面に対向するよう上記厚鋼板の搬送方向に沿って配設される複数対の冷却ヘッダーから冷却水を散水する厚鋼板冷却方法であって、
上記冷却ヘッダーの上流側で冷却水散水前の厚鋼板表面の幅方向の温度分布を測定する工程と、
上記冷却水散水前の温度分布及び冷却ヘッダーの水量密度分布に基づいて厚鋼板の板厚方向内部位置での冷却水散水後の温度分布を予測する工程と、
予測した冷却水散水後の厚鋼板の板厚方向内部位置での温度偏差を小さくするよう表面側の上記冷却ヘッダーの幅方向の水量密度分布を調整する工程と
を備え、
上記冷却水散水後の温度分布を予測する工程が、
上記水量密度分布を考慮して厚鋼板の表面での熱伝達係数の分布を算出する工程と、
上記冷却水散水前の温度分布及び熱伝達係数の分布に基づいて厚鋼板の板厚方向内部位置での冷却水散水後の予測温度分布を導出する工程と
を有することを特徴とする厚鋼板冷却方法。 - 上記熱伝達係数の分布を算出する工程で、厚鋼板の表面に形成される水膜高さの分布を変数として上記熱伝達係数の分布を算出する請求項1に記載の厚鋼板冷却方法。
- 上記板厚方向内部位置をds[mm]、冷却水散水後の温度分布における温度偏差の許容値をET[K]とし、係数a及びbを用いて、ds=a×ET−bを満たすよう板厚方向内部位置dsを決定する工程をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の厚鋼板冷却方法。
- 複数の上記冷却ヘッダーを用い、冷却ヘッダー毎に上記冷却水散水後の温度分布を予測する工程及び水量密度分布を調整する工程を行い、2番目以降の冷却ヘッダーについて温度分布を予測する工程で、上記冷却水散水前の温度分布として、1つ上流側の冷却ヘッダーの水量密度分布を調整する工程後の予測温度分布を用いる請求項1、請求項2又は請求項3に記載の厚鋼板冷却方法。
- 幅方向の位置毎に目標温度が与えられ、上記温度偏差を幅方向の各位置における予測温度と目標温度との差から求める請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の厚鋼板冷却方法。
- 厚鋼板を搬送する搬送装置と、上記厚鋼板の表裏面に対向し、上記厚鋼板の搬送方向に沿って配設され、この搬送装置の搬送方向に対する幅方向に分布を有する水量密度で上記厚鋼板の表面に冷却水を散水する複数対の冷却ヘッダーとを備える厚鋼板冷却装置であって、
上記冷却ヘッダーの上流側で上記冷却水散水前の厚鋼板表面の幅方向の温度分布を測定する温度測定装置と、
上記温度測定装置の測定結果に基づいて表面側の上記冷却ヘッダーの幅方向の水量密度分布を決定する制御装置と
をさらに備え、
上記制御装置が、
上記水量密度分布を考慮して厚鋼板の表面での熱伝達係数の分布を算出する制御要素と、
上記冷却水散水前の温度分布及び熱伝達係数の分布に基づいて厚鋼板の板厚方向内部位置での冷却水散水後の予測温度分布を導出する制御要素と、
予測した冷却水散水後の厚鋼板の板厚方向内部位置での温度偏差を小さくするよう上記冷却ヘッダーの幅方向の水量密度分布を調整する制御要素と
を有することを特徴とする厚鋼板冷却装置。
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