JP2016186925A - 非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、予備焼成又は本焼成において炭素前駆体が溶融しない高真密度の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法を提供することである。【解決手段】前記課題は、本発明の(A)1cm3以下の粒子状炭素前駆体を調製する工程、(B)前記粒子状炭素前駆体を、0.1〜15.0体積%の酸化性ガスを含む雰囲気下において、1〜300℃/時の昇温速度で昇温し、そして200〜800℃で熱処理することによって、熱不融性の粒子状炭素前駆体を得る熱処理工程、(C)前記粒子状炭素前駆体を粉砕する工程、(D)粉砕された炭素前駆体を、非酸化性ガス雰囲気下で、800℃〜2000℃で本焼成する工程、を含む、ブタノール法による真密度が1.65〜1.85g/cm3である非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法によって解決することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法に関する。本発明によれば、予備焼成または本焼成において、炭素前駆体を溶融させずに、高真密度な非水電解質二次電池負極用炭素質材料を得ることができる。
携帯電話やノートパソコンなどの小型携帯機器は高機能化が進み、その電源である二次電池の高エネルギー密度化が期待されている。高エネルギー密度の二次電池として、炭素質材料を負極として用いる非水溶媒系リチウム二次電池が提案されている(特許文献1)。
近年、環境問題への関心の高まりから、エネルギー密度が高く、入出力特性の優れた大型の二次電池が、電気自動車へ搭載されつつある。例えば、モーターのみで駆動する電気自動車(EV)、内燃エンジンとモーターとを組み合わせたプラグインハイブリッド型電気自動車(PHEV)、又はハイブリッド型電気自動車(HEV)等の自動車用途での普及が期待されている。特に、非水溶媒系リチウム二次電池であるリチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有する二次電池として広く使用されており、EV用途又はPHEV用途において一回の充電での航続距離を延ばすため、又はHEV用途における燃費の向上のため、一層の電池特性の改善が期待されている。
特開昭57−208079号公報
炭素質材料の中で高真密度の炭素質材料は、高い放電容量、高い充放電効率、優れた保存特性などの優れた非水電解質二次電池の負極材料としての特性を有している。従って、高真密度の炭素質材料を負極材料として用いた非水電解質二次電池の開発が進められている。
しかしながら、ピッチ又は樹脂などを用いた高真密度の炭素質材料の製造において、炭素前駆体を予備焼成又は本焼成すると、液相で炭素化が進行するため、炭素前駆体の溶融が発生し、そして炭素前駆体が固着する。炭素前駆体が固着した場合、流動層や噴流層などの加熱処理などを行うことができないため、予備焼成又は本焼成に用いる装置が限定される。また、炭素前駆体が塊状となることで、均一な熱処理ができない。
従って、本発明の目的は、予備焼成又は本焼成において炭素前駆体が溶融しない高真密度の炭素質材料の製造方法を提供することである。
本発明者は、焼成において炭素前駆体が溶融しない高真密度の炭素質材料の製造方法について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、一定の濃度の酸化性ガスを含む雰囲気下において、一定の昇温速度で昇温し、そして一定の温度で加熱処理することによって、炭素前駆体を溶融させずに高真密度の炭素質材料を製造できることを見出した。通常、炭素質材料の製造において、炭素前駆体に酸化処理を行った場合、高真密度の炭素質材料を得ることはできず、低真密度の炭素質材料が得られる。従って、本発明の製造方法により、高真密度の炭素質材料が得られることは、驚くべきことである。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1](A)1cm以下の粒子状炭素前駆体を調製する工程、(B)前記粒子状炭素前駆体を、0.1〜15体積%の酸化性ガスを含む雰囲気下において、1〜300℃/時の昇温速度で昇温し、そして200〜800℃で熱処理することによって、熱不融性の粒子状炭素前駆体を得る熱処理工程、(C)前記粒子状炭素前駆体を粉砕する工程、(D)粉砕された炭素前駆体を、非酸化性ガス雰囲気下で、800℃〜2000℃で本焼成する工程、を含む、ブタノール法による真密度が1.65〜1.85g/cmである炭素質材料の製造方法、
[2]前記炭素前駆体の炭素源が、熱可塑性樹脂、及び石油又は石炭由来の有機物からなる群から選択される、[1]に記載の炭素質材料の製造方法、
[3]前記石油又は石炭由来の有機物が、石油ピッチ、石油タール、石炭ピッチ、及び石炭タールからなる群から選択される[1]又は[2]に記載の炭素質材料の製造方法
[4]前記本焼成工程(D)の前に、(E)粉砕された炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下で、300℃以上800℃未満で予備焼成する工程を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法、
[5]前記熱処理工程(B)の前に、(F)酸化性ガスを含む雰囲気下において、120〜400℃で、粒子状炭素前駆体を予備酸化する工程を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法、
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法によって得ることのできる、負極用炭素質材料、
[7][6]に記載の負極用炭素質材料を含む非水電解質二次電池用負極、及び
[8][7]に記載の負極を含む、非水電解質二次電池、
に関する。
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法によれば、炭素前駆体を予備焼成又は本焼成時に溶融させずに、高真密度の炭素質材料を製造することができる。従って、非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造において、流動層や噴流層などを用いて加熱処理、予備焼成、本焼成などを行うことが可能であり、様々な手法を用いることができる。また、炭素前駆体が塊状にならないために、炭素前駆体の均一な加熱処理、予備焼成、本焼成などを行うことができる。更に、本発明の製造方法で得られた高密度の非水電解質二次電池負極用炭素質材料を負極として用いた非水電解質二次電池は、高い放電容量、高い充放電効率などの優れた電池性能を示す。
[1]非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法は、(A)1cm以下の粒子状炭素前駆体を調製する工程、(B)前記粒子状炭素前駆体を、0.1〜15.0体積%の酸化性ガスを含む雰囲気下において、1〜300℃/時の昇温速度で昇温し、そして200〜800℃で熱処理することによって、熱不融性の粒子状炭素前駆体を得る熱処理工程、(C)前記粒子状炭素前駆体を粉砕する工程、(D)粉砕された炭素前駆体を、非酸化性ガス雰囲気下で、800℃〜1600℃で本焼成する工程、を含む。本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法によって、ブタノール法による真密度が1.65〜1.85g/cmの非水電解質二次電池負極用炭素質材料(以下、高真密度の炭素質材料と称することがある)が製造される。
《粒子状炭素前駆体調製工程(A)》
前記粒子状炭素前駆体調製工程(A)においては、1cm以下の粒子状炭素前駆体を調製する。粒子状炭素前駆体の形状は、粒子状である限りにおいて限定されるものではなく、その形状を問うものではない。
(炭素源)
本発明に用いる粒子状炭素前駆体の炭素源は、特に限定されるものではないが、石油又は石炭由来の有機物(例えば石油系ピッチ、石油タール、石炭系ピッチ、石炭タール)、又は熱可塑性樹脂(例えば、ケトン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、ポリイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、アラミド樹脂、又はポリエーテルエーテルケトン)を挙げることができる。
タール又はピッチとしては、エチレン製造時に副生する石油系のタール又はピッチ、石炭乾留時に生成するコールタール、コールタールの低沸点成分を蒸留除去した重質成分又はピッチ、石炭の液化により得られるタール及びピッチを挙げることができる。また、これらのタール又はピッチの2種以上を混合して使用してもよい。
石油又は石炭由来の有機物、例えば石油ピッチ若しくはタール、又は石炭ピッチ若しくはタールを用いて、粒子状炭素前駆体を製造する方法は、限定されるものではないが、以下の方法で調製することができる。
例えば、石油系又は石炭系のピッチ等に対し、添加剤として沸点200℃以上の2乃至3環の芳香族化合物又はその混合物を加えて加熱混合した後、成形しピッチ成形体を得る。次にピッチに対し低溶解度を有し、且つ添加剤に対して高溶解度を有する溶剤で、ピッチ成形体から添加剤を抽出除去し、多孔性ピッチとし、粒子状炭素前駆体を得る。前記の芳香族添加剤の目的は、成形後のピッチ成形体から前記添加剤を抽出除去して成形体を多孔質とし、炭素化後に得られる炭素質材料を多孔質にすることにある。このような添加剤は、例えばナフタレン、メチルナフタレン、フェニルナフタレン、ベンジルナフタレン、メチルアントラセン、フェナンスレン、又はビフェニル等の1種又は2種以上の混合物から選択することができる。ピッチに対する添加量は、ピッチ100重量部に対し、30〜70重量部の範囲が好ましい。ピッチと添加剤の混合は、均一な混合を達成するため、加熱し溶融状態で行う。ピッチと添加剤の混合物は、添加剤を混合物から容易に抽出できるようにするため、粒径1mm以下の粒子に成形することが好ましい。成形は溶融状態で行ってもよく、また混合物を冷却後粉砕することにより行ってもよい。ピッチと添加剤の混合物から添加剤を抽出除去するための溶剤としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタン等の脂肪族炭化水素、ナフサ、又はケロシン等の脂肪族炭化水素主体の混合物、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノール等の脂肪族アルコール類が好適である。このような溶剤でピッチと添加剤の混合物成形体から添加剤を抽出することによって、成形体の形状を維持したまま添加剤を成形体から除去することができる。この際に成形体中に添加剤の抜け穴が形成され、均一な多孔性を有するピッチ成形体が得られるものと推定される。
また、熱可塑性樹脂を用いる場合は、熱可塑性樹脂を乳化重合、塊状重合、又は溶液重合などによって、粒子状ポリマーとすることによって、粒子状炭素前駆体を得ることができる
例えば、ポリアクリロニトリル又はスチレン/ジビニルベンゼン共重合体などの熱可塑性樹脂を用い、ラジカル重合性のビニルモノマー及び重合開始剤を混合したモノマー混合物を、分散安定剤を含有する水性分散媒体中に添加し、撹拌混合により懸濁してモノマー混合物を微細な液滴とした後、ついで昇温することによりラジカル重合を進めて得ることができる。
《熱処理工程(B)》
前記熱処理工程(B)においては、粒子状炭素前駆体を、0.1〜15.0体積%の酸化性ガスを含む雰囲気下において、1〜300℃/時の昇温速度で昇温し、そして200〜800℃で熱処理することによって、熱不融性の粒子状炭素前駆体を得る。
(酸素雰囲気)
熱処理工程(B)の酸素雰囲気は、0.1〜15.0体積%の酸化性ガスを含む限りにおいて、限定されるものではない。しかしながら、真密度が低下しないように、比較的低めの酸化性ガス濃度が好ましい。例えば、酸化性ガスに酸素を用いた場合、酸素濃度の下限は、好ましくは0.2体積%以上であり、より好ましくは0.3体積%以上であり、更に好ましくは0.5体積%以上である。酸素濃度の上限も限定されるものではないが、好ましくは14.0体積%以下であり、より好ましくは13.0体積%以下であり、更に好ましくは10.0体積%以下である。
酸化性ガスは、限定されるものではないが、例えば、酸素、硫黄、窒素などの元素を含む、気体の状態が好ましく、取扱い性の観点から、酸素を含む気体雰囲気が好ましい。非酸化性ガス、例えば窒素、アルゴンなどとの混合ガスであってもよい。混合ガスの場合、特に限定されるものではないが、取扱い性の観点より、酸素、窒素を含む混合気体雰囲気が好ましい。
酸化性ガスを含むガスは、不活性ガスである限りにおいて、限定されるものではないが、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、又はそれらの混合ガスを挙げることができるが、好ましくは窒素である。
(昇温速度)
熱処理工程(B)の昇温速度は、1〜300℃/時である限りにおいて限定されるものではなく、熱処理温度、熱処理時間、酸化性ガスによって最適時間が異なる。しかしながら、粒子状炭素前駆体の中心部が過度に酸化されないために、昇温速度は速い方が好ましい。従って、昇温速度の下限は、好ましくは5℃/時以上であり、より好ましくは10℃/時以上であり、更に好ましくは20℃/時以上である。また、昇温速度の上限も限定されるものではないが、好ましくは290℃/時以下であり、より好ましくは280℃/時以下であり、更に好ましくは270℃/時以下である。
(熱処理)
熱処理温度は、200〜800℃である限りにおいて、特に限定されるものではなく、昇温速度、熱処理時間、酸化性ガスによって最適時間が異なる。熱処理温度の下限は、好ましくは210℃以上であり、より好ましくは220℃以上であり、更に好ましくは230℃以上である。また、熱処理温度の上限も限定されるものではないが、好ましくは750℃以下であり、より好ましくは700℃以下であり、更に好ましくは650℃以下である。
熱処理時間も、本発明の効果が得られる限りにおいて、限定されるものではなく、昇温速度、熱処理温度、酸化性ガスによって最適時間が異なる。しかしながら、粒子状炭素前駆体の中心部が過度に酸化されないために、熱処理時間は短い方が好ましい。例えば、前記の昇温速度で達温まで昇温し、達温で維持せずに冷却しても本発明の効果を得ることができる。また、前記の昇温速度で達温まで昇温し、それに続いて予備焼成を行っても、本発明の効果を得ることができる。従って、熱処理時間の下限は、0.00時間であり、好ましくは0.08時間以上であり、より好ましくは0.17時間以上であり、更に好ましくは0.25時間以上である。また、熱処理温度の上限も限定されるものではないが、好ましくは3.00時間以下であり、より好ましくは2.00時間以下であり、更に好ましくは1.00時間以下である。
(熱処理工程(B)で得られる粒子状炭素前駆体)
熱処理工程(B)で得られる粒子状炭素前駆体は、予備焼成温度又は本焼成温度において熱不融性を示す。本明細書において「予備焼成温度又は本焼成温度において熱不融性」とは、後述の本焼成工程(D)又は予備焼成工程(E)において、実質的に溶融せず固着しないことを意味する。例えば、本焼成又は予備焼成において、固着率が10%以下であれば、「予備焼成温度又は本焼成温度において熱不融性」であることを意味する。より具体的には、例えば、窒素雰囲気下で550℃の焼成温度まで300℃/時で昇温し、550℃で1時間熱処理した場合に、固着率が10%以下であれば、予備焼成温度又は本焼成温度において熱不融性である。
熱処理工程(B)で得られる粒子状素前駆体は、限定されるものではないが、外側が酸化により不融化し、内側が酸化の進行していない傾斜構造を有するものが好ましい。このような傾斜構造を有することにより、予備焼成又は本焼成時に溶融せずに、最終的に真密度が低下していない、高真密度の非水電解質二次電池負極用炭素質材料を得ることができる。
通常、炭素前駆体は酸化により不融化する。そして、不融化した炭素前駆体は、焼成により、低い真密度を有する難黒鉛化性炭素質材料となる。本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法においては、炭素前駆体を熱処理工程(B)において、前記の傾斜構造を有する熱不融性の粒子状炭素前駆体とすることにより、最終的に高真密度の非水電解質二次電池負極用炭素質材料を得ることができる。
前記傾斜構造の粒子状炭素前駆体は、限定されるものではないが、酸素濃度、昇温速度、及び加熱時間を制御することによって、得ることができる。酸素濃度が高すぎると、酸化が進みすぎて真密度が低下することがある。従って、低めの酸素濃度が好ましい。また、昇温速度が遅すぎると、酸化時間が長くなり前駆体の中心部分が酸化され、真密度が低下することがある。従って、速い昇温速度が好ましい。また、熱処理時間が長すぎると、酸化が進みすぎることがある。従って、短めの熱処理時間が好ましい。
しかしながら、例えば酸素濃度が高い場合でも、昇温速度を速くし、熱処理時間を短くすることで、傾斜構造の粒子状炭素前駆体を得ることができる。また、昇温速度が遅い場合でも、低い酸素濃度で短めの熱処理を行うことで、傾斜構造の粒子状炭素前駆体を得ることができる。従って、当業者であれば、本明細書の記載から酸素濃度、昇温速度、及び加熱時間を制御することによって、傾斜構造の粒子状炭素前駆体を得ることができる。
熱処理工程(B)は、酸化性ガス雰囲気下で行われるが、実質的に予備焼成を兼ねることができる。すなわち、熱処理工程(B)おいて、炭素前駆体の揮発分、例えばCO、COCH、及びHなどと、タール分とを除去し、本焼成において、それらの発生を軽減し、焼成炉の負担を軽減することができる。しかしながら、本明細書においては、酸化性ガス雰囲気下で実施する加熱処理を熱処理工程(B)とし、後述の非酸化性ガス雰囲気下で行う熱処理を、予備焼成とする。
《粉砕工程(C)》
粉砕工程(C)は、前記粒子状炭素前駆体を粉砕する工程である。粉砕工程(C)においては、粒子状炭素前駆体を目的の粒子径に粉砕する。
得られる粒子の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、好ましくは1.0〜50.0μmであり、より好ましくは1.5〜40.0μmであり、更に好ましくは2.0〜35.0μmである。平均粒子径1.0μm未満の場合、微粉が増加し比表面積が増加し、電解液との反応性が高くなり充電しても放電しない容量である不可逆容量が増加し、正極の容量が無駄になる割合が増加するため好ましくない。また、負極電極を製造した場合、炭素質材料の間に形成される1つの空隙が小さくなり、電解液中のリチウムの移動が抑制されるため好ましくない。平均粒子径が50.0μmを超えると、粒子内でのリチウムの拡散自由行程が増加するため、急速な充放電が困難となる。更に、リチウムイオン二次電池では、入出力特性の向上には電極面積を大きくすることが重要であり、そのため電極調製時に集電板への活物質の塗工厚みを薄くする必要がある。塗工厚みを薄くするには、活物質の粒子径を小さくする必要がある。
粉砕に用いる粉砕機は、特に限定されるものではなく、例えばジェットミル、ロッドミル、振動ボールミル、又はハンマーミルを用いることができるが、ジェットミルが好ましい。
《本焼成工程(D)》
本発明の製造方法における本焼成工程(D)は、通常の本焼成の手順に従って行うことができ、本焼成を行うことにより、高真密度の炭素質材料を得ることができる。焼成温度は、800〜2000℃が好ましい。焼成温度の下限は、好ましくは900℃であり、より好ましくは、1000℃である、焼成温度の上限は、好ましくは1900℃であり、より好ましくは1800℃である。800℃〜2000℃で焼成することにより、高密度で且つ高容量、高充放電効率な負極材料である炭素質材料を得ることができる。本焼成温度が800℃未満では、炭素質材料に官能基が多く残存してH/Cの値が高くなり、リチウムとの反応により不可逆容量が増加するため好ましくない。一方、本焼成温度が2000℃を超えると炭素六角平面の選択的配向性が高まり放電容量が低下するため好ましくない。
本焼成は、非酸化性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。非酸化性ガスとしては、ヘリウム、窒素又はアルゴンなどを挙げることができこれらを単独或いは混合して用いることができる。更には塩素などのハロゲンガスを上記非酸化性ガスと混合したガス雰囲気中で本焼成を行うことも可能である。また、本焼成は、減圧下で行うこともでき、例えば、10KPa以下で行うことも可能である。本焼成の時間も特に限定されるものではないが、例えば0.05〜10.00時間で行うことができ、0.05〜8.00時間が好ましく、0.05〜6.00時間がより好ましい。
《予備焼成工程(E)》
本発明の製造方法においては、前記本焼成工程(D)の前に、(E)粉砕された炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下で、300℃以上800℃未満で予備焼成する工程を含むことができる。しかしながら、前記のように、熱処理工程(B)によって、予備焼成を兼ねることもできる。その場合は、予備焼成を行わなくてもよい。
また、予備焼成工程(E)は、粉砕工程(C)の前に行ってもよく、粉砕工程(C)の後に行ってもよいが、粉砕工程の(C)の前に行うのが好ましい。
本発明の製造方法における予備焼成工程(E)は、炭素源を300℃以上800℃未満で焼成することによって行う。予備焼成は、揮発分、例えばCO、CO、CH、及びHなどと、タール分とを除去し、本焼成において、それらの発生を抑制し、焼成炉の負担を軽減することができる。予備焼成温度が300℃未満であると、粉砕後の本焼成工程で発生する揮発分(タール分やガス)が多く、粒子表面に付着する可能性があり、粉砕したときの状態を保てない恐れがある。一方、予備焼成温度が800℃以上であると炭素化が進んで粒子が硬くなりすぎ、粉砕が困難になることがある。
予備焼成は、非酸化性ガス雰囲気中で行い、非酸化性ガスとしては、窒素、又はアルゴンなどを挙げることができる。また、予備焼成は、減圧下で行うこともでき、例えば、10KPa以下で行うことができる。予備焼成の時間も特に限定されるものではないが、例えば0.5〜10.0時間で行うことができ、1.0〜5.0時間がより好ましい。
《予備酸化工程(F)》
本発明の製造方法においては、前記熱処理工程(B)の前に、(F)酸化性ガス雰囲気下において、200〜400℃で、粒子状炭素前駆体を予備的に酸化する工程を含むことができる。予め予備酸化工程(F)を行うことによって、後の熱処理において、熱不融性の粒子状炭素前駆体をより低熱処理温度、短時間で得ることができる。
予備酸化工程(F)における酸化性ガスは、特に限定されるものではないが、例えば、酸素、硫黄、窒素などの元素を含む、気体の状態が好ましく、取扱い性の観点から、酸素を含む気体雰囲気が好ましい。非酸化性ガス、例えば窒素、アルゴンなどとの混合ガスであってもよい。混合ガスの場合、特に限定されるものではないが、取扱い性の観点より、酸素、窒素を含む混合気体雰囲気が好ましい。
予備酸化の温度は、限定されるものではないが、好ましくは200〜400℃であり、より好ましくは220〜360℃であり、更に好ましくは240〜320℃である。到達温度における時間は、限定されるものではなく、好ましくは0〜180分であり、より好ましくは0〜120分である。
本発明の製造方法においては、粒子状炭素前駆体調製工程(A)、熱処理工程(B)、粉砕工程(C)、及び本焼成工程(D)を含むことによって、本発明の効果を得ることができる。また、粒子状炭素前駆体調製工程(A)及び熱処理工程(B)の間に、予備酸化工程(F)を実施してもよい。更に、熱処理工程(B)と粉砕工程(C)との間、又は粉砕工程(C)と本焼成工程(D)との間に、予備焼成工程(E)を実施してもよい。換言するならば、本発明の製造方法は、熱処理工程(B)の後に、予備焼成工程(E)及び本焼成工程(D)、又は本焼成工程(D)を行うことによって、本発明の効果を得ることができる。
[2]非水電解質二次電池負極用炭素質材料
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料は、真密度が1.65〜1.85g/cmであり、本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法によって得ることができる。
《平均粒子径》
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の平均粒子径(Dv50)は、特に限定されるものではないが、好ましくは1.0〜50.0μmである。平均粒子径が1.0μm未満の場合、微粉が増加し比表面積が増加し、電解液との反応性が高くなり充電しても放電しない容量である不可逆容量が増加し、正極の容量が無駄になる割合が増加するため好ましくない。また、負極電極を製造した場合、炭素質材料の間に形成される1つの空隙が小さくなり、電解液中のリチウムの移動が抑制されるため好ましくない。平均粒子径の下限は1.0μm以上が好ましいが、更に好ましくは1.5μm以上である。一方、平均粒子径が50.0μmを超えると、粒子内でのリチウムの拡散自由行程が増加するため、急速な充放電が困難となる。更に、リチウムイオン二次電池では、入出力特性の向上には電極面積を大きくすることが重要であり、そのため電極調製時に集電板への活物質の塗工厚みを薄くする必要がある。塗工厚みを薄くするには、活物質の粒子径を小さくする必要がある。このような観点から、平均粒子径の上限としては50.0μm以下が好ましいが、より好ましくは40.0μm以下であり、更に好ましくは35.0μm以下である。
《ブタノール真密度ρBt
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料のブタノール法により求められる真密度は、1.65〜1.85g/cmである限りにおいて、特に限定されるものではないが、好ましくは1.65〜1.83g/cmであり、より好ましくは1.65〜1.80g/cmである。ブタノール真密度が1.85g/cm以上の非水電解質二次電池負極用炭素質材料は、リチウムを格納できるサイズの細孔が少なくドープ及び脱ドープ容量が小さくなるため好ましくない。また、ブタノール真密度の増加は炭素六角平面の選択的配向性を伴うため、リチウムのドープ・脱ドープ時に炭素質材料が膨張収縮を伴う場合が多いため好ましくない。一方、1.65g/cm未満の炭素材料は、真密度の低下に伴い電極密度が低下するため、体積エネルギー密度の低下をもたらすので好ましくない。また、保存特性の低下も引き起こすため、好ましくない。
《比表面積》
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料のBETにより求められる比表面積は、1〜35m/gである。比表面積が、35m/gを超えると、非水電解質二次電池の負極として用いた場合に、電解液との分解反応が増加し、不可逆容量の増加に繋がり、従って電池性能が低下することがある。一方、比表面積が1m/g未満であると、非水電解質二次電池の負極として用いた場合に、電解液との反応面積が低下することにより入出力特性が低下する可能性がある。
[3]非水電解質二次電池用負極
本発明の非水電解質二次電池用負極は、本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料を含むものである。
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料を用いる負極電極は、炭素質材料に結合剤(バインダー)を添加し適当な溶媒を適量添加、混練し、電極合剤とした後に、金属板等からなる集電板に塗布・乾燥後、加圧成形することにより製造することができる。本発明の負極用炭素質材料は、特に導電助剤を添加しなくとも高い導電性を有する電極を製造することができる。しかしながら、必要に応じて電極合剤を調製時に、導電助剤を更に添加してもよい。導電助剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、又はカーボンファイバーなどを用いることができ、添加量は使用する導電助剤の種類によっても異なる。添加する量が少なすぎると期待する導電性が得られないことがあり、多すぎると電極合剤中の分散が悪くなることがある。添加する導電助剤の含有量は、少なくてよいが、例えば0.01〜15重量%(ここで、活物質(混合負極材料)量+バインダー量+導電助剤量=100重量%とする)であり、更に好ましくは0.05〜10重量%、特に好ましくは0.1〜7重量%である。
結合剤としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、およびSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)とCMC(カルボキシメチルセルロース)との混合物等の電解液と反応しないものであれば特に限定されない。中でもPVDFは、活物質表面に付着したPVDFがリチウムイオン移動を阻害することが少なく、良好な入出力特性を得るために好ましい。PVDFを溶解しスラリーを形成するためにN−メチルピロリドン(NMP)などの極性溶媒が好ましく用いられるが、SBRなどの水性エマルジョンやCMCを水に溶解して用いることもできる。結合剤の添加量が多すぎると、得られる電極の抵抗が大きくなるため、電池の内部抵抗が大きくなり電池特性を低下させるので好ましくない。また、結合剤の添加量が少なすぎると、負極用炭素質材料相互および集電材との結合が不十分となり好ましくない。結合剤の好ましい添加量は、使用するバインダーの種類によっても異なるが、PVDF系のバインダーでは好ましくは3〜13重量%であり、更に好ましくは3〜10重量%である。一方、溶媒に水を使用するバインダーでは、SBRとCMCとの混合物など、複数のバインダーを混合して使用することが多く、使用する全バインダーの総量として0.5〜5重量%が好ましく、更に好ましくは1〜4重量%である。電極活物質層は集電板の両面に形成するのが基本であるが、必要に応じて片面でもよい。電極活物質層が厚いほど、集電板やセパレータなどが少なくて済むため高容量化には好ましいが、対極と対向する電極面積が広いほど入出力特性の向上に有利なため活物質層が厚すぎると入出力特性が低下するため好ましくない。好ましい活物質層(片面当たり)の厚みは、限定されるものではなく10μm〜1000μmの範囲内であるが、好ましくは10〜80μmであり、更に好ましくは20〜75μm、特に好ましくは20〜60μmである。
負極電極は、通常集電体を有する。負極集電体としては、例えば、SUS、銅、ニッケル又はカーボンを用いるができ、中でも、銅又はSUSが好ましい。
[4]非水電解質二次電池
本発明の非水電解質二次電池は、本発明の非水電解質二次電池用負極を含む。本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料を用いて、非水電解質二次電池の負極を形成した場合、正極材料、セパレータ、電解液など電池を構成する他の材料は特に限定されることなく、非水溶媒二次電池として従来使用され、あるいは提案されている種々の材料を使用することが可能である。
(正極電極)
正極電極は、正極活物質を含み、更に導電助剤、バインダー、又はその両方を含んでもよい。正極活物質層における正極活物質と、他の材料との混合比は、本発明の効果が得られる限りにおいて、限定されるものではなく、適宜決定することができる。
正極活物質は、正極活物質を限定せずに用いることができる。例えば、層状酸化物系(LiMOと表されるもので、Mは金属:例えばLiCoO、LiNiO、LiMnO、又はLiNiCoMn(ここでx、y、zは組成比を表す))、オリビン系(LiMPOで表され、Mは金属:例えばLiFePOなど)、スピネル系(LiMで表され、Mは金属:例えばLiMnなど)の複合金属カルコゲン化合物を挙げることができ、これらのカルコゲン化合物を必要に応じて混合してもよい。
また、コバルト酸リチウムのコバルトの一部をニッケルとマンガンで置換し、コバルト、ニッケル、マンガンの3つを使用することで材料の安定性を高めた三元系〔Li(Ni−Mn−Co)O〕や前記三元系のマンガンの代わりにアルミニウムを使用するNCA系材料〔Li(Ni−Co−Al)O〕が知られており、これらの材料を使用することができる。
正極電極は、更に導電助剤及び/又はバインダーを含むことができる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、又はカーボンファイバーを挙げることができる。導電助剤の含有量は、限定されるものではないが、例えば0.5〜15重量%である。また、バインダーとしては、例えば、PTFE又はPVDF等のフッ素含有バインダーを挙げることができる。導電助剤の含有量は、限定されるものではないが、例えば0.5〜15重量%である。また、正極活物質層の厚さは、限定されないが、例えば10μm〜1000μmの範囲内である。
正極活物質層は、通常集電体を有する。負極集電体としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボンを用いるができ、中でも、アルミニウム又はSUSが好ましい。
(電解液)
これら正極と負極との組み合わせで用いられる非水溶媒型電解液は、一般に非水溶媒に電解質を溶解することにより形成される。非水溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、γ−ブチルラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、又は1,3−ジオキソランなどの有機溶媒の一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、電解質としては、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiAsF、LiCl、LiBr、LiB(C、又はLiN(SOCFなどが用いられる。二次電池は、一般に上記のようにして形成した正極層と負極層とを必要に応じて不織布、その他の多孔質材料などからなる透液性セパレータを介して対向させ電解液中に浸漬させることにより形成される。セパレータとしては、二次電池に通常用いられる不織布、その他の多孔質材料からなる透過性セパレータを用いることができる。あるいはセパレータの代わりに、もしくはセパレータと一緒に、電解液を含浸させたポリマーゲルからなる固体電解質を用いることもできる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
なお、以下に負極用炭素質材料の物性値(「比表面積」、「ブタノール法により求めた真密度」、及び「レーザー回折法による平均粒子径」)の測定法を記載するが、実施例を含めて、本明細書中に記載する物性値は、以下の方法により求めた値に基づくものである。
《比表面積》
JIS Z8830に定められた方法に準拠し、比表面積を測定した。概要を以下に記す。
BETの式から誘導された近似式v=1/(v(1−x))を用いて液体窒素温度における、窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.2)によりvを求め、次式により試料の比表面積を計算した:比表面積=4.35×v(m/g)
(ここで、vは試料表面に単分子層を形成するに必要な吸着量(cm/g)、vは実測される吸着量(cm/g)、xは相対圧力である。)
具体的には、MICROMERITICS社製「Flow Sorb II2300」を用いて、以下のようにして液体窒素温度における炭素質物質への窒素の吸着量を測定した。
炭素質材料を試料管に充填し、窒素ガスを20モル%濃度で含有するヘリウムガスを流しながら、試料管を−196℃に冷却し、炭素質材料に窒素を吸着させる。次に試験管を室温に戻す。このとき試料から脱離してくる窒素量を熱伝導度型検出器で測定し、吸着ガス量vとした。
《ブタノール法による真密度》
JIS R7212に定められた方法に準拠し、ブタノールを用いて測定した。概要を以下に記す。
内容積約40mLの側管付比重びんの質量(m)を正確に量る。次に、その底部に試料を約10mmの厚さになるように平らに入れた後、その質量(m)を正確に量る。これに1−ブタノールを静かに加えて、底から20mm程度の深さにする。次に比重びんに軽い振動を加えて、大きな気泡の発生がなくなったのを確かめた後、真空デシケーター中に入れ、徐々に排気して2.0〜2.7kPaとする。その圧力に20分間以上保ち、気泡の発生が止まった後取り出して、更に1−ブタノールで満たし、栓をして恒温水槽(30±0.03℃に調節してあるもの)に15分間以上浸し、1−ブタノールの液面を標線に合わせる。次に、これを取り出して外部をよくぬぐって室温まで冷却した後、質量(m)を正確に量る。次に同じ比重びんに1−ブタノールだけを満たし、前記と同じようにして恒温水槽に浸し、標線を合わせた後、質量(m)を量る。また、使用直前に沸騰させて溶解した気体を除いた蒸留水を比重びんにとり、前と同様に恒温水槽に浸し、標線を合わせた後質量(m)を量る。真密度(ρBt)は次の式により計算する。
Figure 2016186925
(ここでdは水の30℃における比重(0.9946)である。)
《平均粒子径》
試料約0.1gに対し、分散剤(カチオン系界面活性剤「SNウェット366」(サンノプコ社製))を3滴加え、試料に分散剤を馴染ませる。次に、純水30mLを加え、超音波洗浄機で約2分間分散させたのち、粒径分布測定器(島津製作所製「SALD−3000J」)で、粒径0.05〜3000μmの範囲の粒径分布を求めた。
得られた粒径分布から、累積容積が50%となる粒径をもって平均粒径Dv50(μm)とした。
《実施例1》
軟化点205℃、H/C原子比0.65、キノリン不溶分0.4%の石油系ピッチ70kgと、ナフタレン30kgとを、撹拌翼及び出口ノズルのついた内容積300Lの耐圧容器に仕込み、190℃で1〜2時間加熱溶融混合を行った。その後、加熱溶融混合した石油系ピッチを100℃程度まで冷却し、耐圧容器内を窒素ガスにより加圧して、内容物を出口ノズルから押し出すことで、直径約500μmの紐状成型体を得た。次いで、この紐状成型体を直径(D)と長さ(L)の比(L/D)が約1.5〜2.0になるように粉砕し、得られた粉砕物を93℃に加熱した0.53質量%のポリビニルアルコール(ケン化度88%)を溶解した水溶液中に投入し、攪拌分散し、冷却して球状ピッチ成型体スラリーを得た。大部分の水をろ過により取り除いた後に、球状ピッチ成型体の約6倍量の重量のn−ヘキサンでピッチ成型体中のナフタレンを抽出除去した。
得られた多孔性球状ピッチを、加熱空気雰囲気下で190℃まで昇温し、190℃で1時間保持して予備酸化させた。この炭素前駆体の酸素元素の含有率を元素分析により求めた結果1.1重量%であった。
ついで、この炭素前駆体20gをアルミナ鞘に敷き、マッフル炉(ヤマト科学(株)製 KDF−S100)にて窒素と空気の混合ガスを通じながら、250℃まで200℃/hで昇温し、250℃で1時間保持して熱処理を行い、熱不融性の粒子状炭素前駆体を得た。なお、熱処理は窒素流量20L/min、炉内酸素濃度を6%となるよう調製し行った。
次に、この熱不融性の粒子状炭素前駆体を窒素ガス雰囲気中(常圧)で550℃まで昇温し、550℃で1時間保持して予備焼成し、予備焼成炭素前駆体を得た。
得られた予備焼成炭素前駆体200gをジェットミル(ホソカワミクロン社AIR JET MILL;MODEL 100AFG)により、粉砕圧4.0kgf/cmで、20分間粉砕し、平均粒子径が約12μmの粉砕炭素前駆体とした。なお、使用したジェットミルは、分級機を備えたものである。次に、粉砕炭素前駆体10gを直径100mmの横型管状炉に入れ、250℃/hの昇温速度で1200℃まで昇温し、1200℃で1時間保持して、本焼成を行い、炭素質材料1を調製した。なお、本焼成は、流量10L/minの窒素雰囲気下で行った。
予備焼成において、予備焼成炭素前駆体の溶融は見られなかった。また、得られた予備焼成炭素前駆体の固着率を、以下の方法で測定した。得られた予備焼成炭素前駆体を、予備焼成炭素前駆体の平均粒子径の3倍の目開きを有する篩に入れ、約10分篩分した。篩に残った予備焼成炭素前駆体の重量Mと、篩の目開きを通過した予備焼成炭素前駆体との重量Mから、以下の式に従って、固着率を計算した。
固着率(%)=M/(M+M)×100
熱処理条件、炭素質材料の物性、及び固着率等を表1に示す。
《実施例2》
熱処理の温度を250℃に代えて350℃としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して炭素質材料2を得た。熱処理条件、炭素質材料の物性、及び固着率等を表1に示す。
《実施例3》
熱処理の温度を250℃に代えて450℃としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して炭素質材料3を得た。熱処理条件、炭素質材料の物性、及び固着率等を表1に示す。
《実施例4》
熱処理の温度を250℃に代えて550℃としたこと、予備焼成を行わなかったことを除いては、実施例1の操作を繰り返して炭素質材料4を得た。熱処理条件、炭素質材料の物性、及び固着率等を表1に示す。なお、固着率は、熱不融性の粒子状炭素前駆体を、熱不融性の粒子状炭素前駆体の平均粒子径の3倍の目開きを有する篩に入れ、約10分篩分し、篩に残った熱不融性の粒子状炭素前駆体の重量Nと、篩の目開きを通過した熱不融性の粒子状炭素前駆体の重量Nから以下の式に従って計算した。
固着率(%)=N/(N+N)×100
《実施例5》
熱処理における酸素濃度を6%に代えて4%としたことを除いては、実施例4の操作を繰り返して炭素質材料5を得た。熱処理条件、炭素質材料の物性、及び固着率等を表1に示す。
《実施例6》
軟化点205℃、H/C原子比0.65、キノリン不溶分0.4%の石油系ピッチ70kgと、ナフタレン30kgとを、撹拌翼及び出口ノズルのついた内容積300Lの耐圧容器に仕込み、190℃で1〜2時間加熱溶融混合を行った。その後、加熱溶融混合した石油系ピッチを100℃程度まで冷却し、耐圧容器内を窒素ガスにより加圧して、内容物を出口ノズルから押し出すことで、直径約500μmの紐状成型体を得た。次いで、この紐状成型体を直径(D)と長さ(L)の比(L/D)が約1.5〜2.0になるように粉砕し、得られた粉砕物を93℃に加熱した0.53質量%のポリビニルアルコール(ケン化度88%)を溶解した水溶液中に投入し、攪拌分散し、冷却して球状ピッチ成型体スラリーを得た。大部分の水をろ過により取り除いた後に、球状ピッチ成型体の約6倍量の重量のn−ヘキサンでピッチ成型体中のナフタレンを抽出除去した。
ついで、この炭素前駆体3kgをφ130縦型管状炉に入れ、流動層にて窒素と空気の混合ガスを通じながら、350℃まで250℃/hで昇温し熱処理を行い、熱不融性の粒子状炭素前駆体を得た。350℃で保持は行わなかった。なお、熱処理は窒素流量140L/min、炉内酸素濃度を1%となるよう調製し行った。
次に、この熱不融性の粒子状炭素前駆体を窒素ガス雰囲気中(常圧)で550℃まで昇温し、550℃で1時間保持して予備焼成し、予備焼成炭素前駆体を得た。
得られた予備焼成炭素前駆体200gをジェットミル(ホソカワミクロン社AIR JET MILL;MODEL 100AFG)により、粉砕圧4.0kgf/cmで、20分間粉砕し、平均粒子径が約10μmの粉砕炭素前駆体とした。なお、使用したジェットミルは、分級機を備えたものである。次に、粉砕炭素前駆体10gを直径100mmの横型管状炉に入れ、250℃/hの昇温速度で1200℃まで昇温し、1200℃で1時間保持して、本焼成を行い、炭素質材料6を調製した。なお、本焼成は、流量10L/minの窒素雰囲気下で行った。
予備焼成において、予備焼成炭素前駆体の溶融は見られなかった。また、得られた予備焼成炭素前駆体の固着率を、以下の方法で測定した。得られた予備焼成炭素前駆体を、1.4mmの目開きの篩に入れ、約10分篩分した。篩に残った予備焼成炭素前駆体の重量Pと、篩の目開きを通過した予備焼成炭素前駆体との重量Pから、以下の式に従って、固着率を計算した。
固着率(%)=P/(P+P)×100
熱処理条件、炭素質材料の物性、及び固着率等を表1に示す。
《実施例7》
平均粒子径を約4.5μmとしたことを除いては実施例6の操作を繰り返して炭素質材料7を得た。熱処理条件、炭素質材料の物性、及び固着率等を表1に示す。
《比較例1》
予備酸化を以下のように行い、熱処理を行わなかった以外は、実施例1の操作を繰り返して、比較炭素質材料1を得た。
予備酸化は、多孔性球状ピッチを、加熱空気雰囲気下で195℃まで昇温し、195℃で1時間保持して予備酸化させた。この炭素前駆体の酸素元素の含有率を元素分析により求めた結果3.5重量%であった。
熱処理条件、炭素質材料の物性、及び固着率等を表1に示す。
《比較例2》
予備酸化における保持時間を15分とし、得られる炭素前駆体の酸素元素の含有率を2.5重量%とした以外は、比較例1の操作を繰り返して、比較炭素質材料2を得た。熱処理条件、炭素質材料の物性、及び固着率等を表1に示す。
Figure 2016186925
酸素存在下での熱処理工程を行った実施例1〜7では、予備焼成炭素前駆体等は非溶融であり熱不融性の粒子状炭素前駆体の形態を保持していた。また、固着率も0%又は1.2%であった。しかしながら、熱処理を行わなかった比較例1及び2では、固着率が100%であり、予備焼成炭素前駆体等が溶融し、融着した。
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法は、炭素前駆体を予備焼成時、または本焼成時に溶融させずに、高真密度の非水電解質二次電池負極用炭素質材料を製造することができる。従って、高真密度の非水電解質二次電池負極用炭素質材料を製造において、使用可能な装置の選択の自由度が増し、様々な製造手法を用いることができる。

Claims (8)

  1. (A)1cm以下の粒子状炭素前駆体を調製する工程、
    (B)前記粒子状炭素前駆体を、0.1〜15.0体積%の酸化性ガスを含む雰囲気下において、1〜300℃/時の昇温速度で昇温し、そして200〜800℃で熱処理することによって、熱不融性の粒子状炭素前駆体を得る熱処理工程、
    (C)前記粒子状炭素前駆体を粉砕する工程、
    (D)粉砕された炭素前駆体を、非酸化性ガス雰囲気下で、800℃〜2000℃で本焼成する工程、
    を含む、ブタノール法による真密度が1.65〜1.85g/cmである非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法。
  2. 前記炭素前駆体の炭素源が、熱可塑性樹脂、及び石油又は石炭由来の有機物からなる群から選択される、請求項1に記載の炭素質材料の製造方法。
  3. 前記石油又は石炭由来の有機物が、石油ピッチ、石油タール、石炭ピッチ、及び石炭タールからなる群から選択される請求項1又は2に記載の炭素質材料の製造方法。
  4. 前記本焼成工程(D)の前に、
    (E)粉砕された炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下で、300℃以上800℃未満で予備焼成する工程を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法。
  5. 前記熱処理工程(B)の前に、
    (F)酸化性ガスを含む雰囲気下において、120〜400℃で、粒子状炭素前駆体を予備酸化する工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法によって得ることのできる、非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
  7. 請求項6に記載の炭素質材料を含む非水電解質二次電池用負極。
  8. 請求項7に記載の負極を含む、非水電解質二次電池。
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