JPWO2015152089A1 - 非水電解質二次電池負極用炭素質材料、非水電解質二次電池用負極電極、非水電解質二次電池及び車両 - Google Patents
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Abstract
Description
リチウム参照電極基準でCV充電を0.025Vで行ったときの1.5V〜0.025Vの負極の放電容量(X)と、CV充電を0Vで行ったときの1.5V〜0Vの負極の放電容量(Y)との差(Y−X)が240mAh/cm3以下であることを特徴とする非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料は、ブタノール法によって求められる真密度(ρBt)が1.70g/cm3以上2.10g/cm3未満、平均粒子径(Dv50)が1μm以上15μm以下、X線回折法により求めた(002)面の平均層面間隔d002が0.340〜0.375nmであり、リチウム参照電極基準でCV充電を0.025Vで行ったときの1.5V〜0.025Vの負極の放電容量(X)と、CV充電を0Vで行ったときの1.5V〜0Vの負極の放電容量(Y)との差(Y−X)が240mAh/cm3以下であることを特徴とする。
本発明の炭素質材料は、炭素前駆体から製造されるものである。炭素前駆体として、石油ピッチ若しくはタール、石炭ピッチ若しくはタール、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂を挙げることができる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、ポリイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、又はポリエーテルエーテルケトンを挙げることができる。更に、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂を挙げることができる。
なお、本明細書において、「炭素前駆体」は、未処理の炭素質の段階から、最終的に得られる非水電解質二次電池負極用炭素質材料の前段階までの炭素質を意味する。すなわち、最終工程の終了していないすべての炭素質を意味する。
炭素前駆体として、石油ピッチ若しくはタール、石炭ピッチ若しくはタール、又は熱可塑性樹脂を用いる場合、架橋処理を行う。架橋処理の方法は、特に限定されるものではないが、例えば、酸化剤を用いて行うことができる。酸化剤も特に限定されるものではないが、気体としては、O2、O3、SO3、NO2、これらを空気、窒素などで希釈した混合ガス、又は空気などの酸化性気体を用いることができる。また、液体としては、硫酸、硝酸、若しくは過酸化水素等の酸化性液体、又はそれらの混合物を用いることができる。酸化温度も、特に限定されるものではないが、好ましくは、120〜400℃であり、より好ましくは、150〜350℃である。温度が120℃未満であると、十分に架橋構造ができず構造制御がしてしまう。また温度が400℃を超えると、架橋反応よりも分解反応のほうが多くなり、得られる炭素材料の収率が低くなる。
本焼成は、本発明の分野において、公知の方法によって行うことができる。例えば、以下に記載された、本焼成の手順従って行うことができる。
本発明における予備焼成工程は、炭素源を300℃以上900℃未満で焼成することによって行う。予備焼成は、揮発分、例えばCO2、CO、CH4、及びH2などと、タール分とを除去し、本焼成において、それらの発生を軽減し、焼成器の負担を軽減することができる。予備焼成温度が300℃未満であると脱タールが不十分となり、粉砕後の本焼成工程で発生するタール分やガスが多く、粒子表面に付着する可能性があり、粉砕したときの表面性を保てず電池性能の低下を引き起こすので好ましくない。予備焼成温度は、300℃以上が好ましく、更に好ましくは500℃以上、特に好ましくは600℃以上である。一方、予備焼成温度が900℃以上であるとタール発生温度領域を超えることになり、使用するエネルギー効率が低下するため好ましくない。予備焼成温度が高すぎると、炭素化が進んで炭素前駆体の粒子が硬くなりすぎて、予備焼成後に粉砕を行う場合に粉砕機の内部を削り取ってしまうなど粉砕が困難になる場合があるため、好ましくない。
予備焼成は、不活性ガス雰囲気中で行い、不活性ガスとしては、窒素、又はアルゴンなどを挙げることができる。また、予備焼成は、減圧下で行うこともでき、例えば、10kPa以下で行うことができる。予備焼成の時間も特に限定されるものではないが、例えば0.5〜10時間で行うことができ、1〜5時間がより好ましい。
本発明における粉砕工程は、易黒鉛化性炭素前駆体の粒径を、均一にするために行うものである。本焼成による炭素化後に粉砕することもできる。炭素化反応が進行すると炭素前駆体が硬くなり、粉砕による粒子径分布の制御が困難になるため、粉砕工程は、予備焼成の後で本焼成の前が好ましい。
粉砕に用いる粉砕機は、特に限定されるものではなく、例えばジェットミル、ボールミル、ハンマーミル、又はロッドミルなどを使用することができるが、微粉の発生が少ないという点で分級機能を備えたジェットミルが好ましい。一方、ボールミル、ハンマーミル、又はロッドミルなどを用いる場合は、粉砕後に分級を行うことで微粉を除くことができる。
分級として、篩による分級、湿式分級、又は乾式分級を挙げることができる。湿式分級機としては、例えば重力分級、慣性分級、水力分級、又は遠心分級などの原理を利用した分級機を挙げることができる。また、乾式分級機としては、沈降分級、機械的分級、又は遠心分級の原理を利用した分級機を挙げることができる。
更に、粉砕機と分級機とが独立した装置を用いることもできる。この場合、粉砕と分級とを連続して行うこともできるが、粉砕と分級とを不連続に行うこともできる。
本発明における本焼成工程は、通常の本焼成の手順に従って行うことができ、本焼成を行うことにより、非水電解質二次電池負極用炭素質材料を得ることができる。本焼成の温度は、900〜1600℃である。本焼成温度が900℃未満では、炭素質材料に官能基が多く残存してH/Cの値が高くなり、リチウムとの反応により不可逆容量が増加するため好ましくない。本発明の本焼成温度の下限は900℃以上であり、より好ましくは1000℃以上であり、特に好ましくは1100℃以上である。一方、本焼成温度が1600℃を超えると炭素六角平面の選択的配向性が高まり放電容量が低下するため好ましくない。本発明の本焼成温度の上限は1600℃以下であり、より好ましくは1500℃以下であり、特に好ましくは1450℃以下である。
本焼成は、非酸化性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。非酸化性ガスとしては、ヘリウム、窒素又はアルゴンなどを挙げることができこれらを単独或いは混合して用いることができる。更には塩素などのハロゲンガスを上記非酸化性ガスと混合したガス雰囲気中で本焼成を行うことも可能である。また、本焼成は、減圧下で行うこともでき、例えば、10kPa以下で行うことも可能である。本焼成の時間も特に限定されるものではないが、例えば0.1〜10時間で行うことができ、0.3〜8時間が好ましく、0.4〜6時間がより好ましい。
タール又はピッチからの本発明の炭素質材料の製造方法について、以下に例を挙げて説明する。
まず、タール又はピッチに対して架橋処理を施した。この架橋処理を施したタール又はピッチは、その後の焼成で炭素化されて構造制御された炭素質材料になる。タール又はピッチとしては、エチレン製造時に複製する石油タール又はピッチ、石炭乾留時に生成するコールタール、及びコールタールの低沸点成分を蒸留除去した重質成分又はピッチ、石炭の液化により得られるタール又はピッチなどの石油又は石炭のタール又はピッチが使用できる。また、これらのタール及びピッチの2種類以上を混合してもよい。
上述のようにして架橋処理を施した炭素前駆体を、予備焼成を行った後、非酸化性ガス雰囲気中で900℃〜1600℃で炭素化することにより、本発明の炭素質材料を得ることができる。
樹脂からの炭素質材料の製造方法について、以下に例を挙げて説明する。
本発明の炭素質材料は、樹脂を前駆体として用い、900℃〜1600℃で炭素化することによっても得ることができる。樹脂としては、フェノール樹脂又はフラン樹脂など、或いはそれらの樹脂の官能基を一部変性した熱硬化性樹脂を使用することができる。熱硬化性樹脂を必要に応じて900℃未満の温度で予備焼成したのち、粉砕し、900℃〜1600℃で炭素化することによっても得ることができる。熱硬化性樹脂の硬化促進、架橋度の促進、或いは炭素化収率の向上を目的に必要に応じて120〜400℃の温度で酸化処理を行ってもよい。酸化剤としては、O2、O3、NO2、これらを空気、窒素等で希釈した混合ガス、又は空気等の酸化性気体、あるいは硫酸、硝酸、過酸化水素水等の酸化性液体を用いることができる。
更に、ポリアクリロニトリル又はスチレン/ジビニルベンゼン共重合体などの熱可塑性樹脂に酸化処理を施した炭素前駆体を使用することもできる。これらの樹脂は、例えばラジカル重合性のビニルモノマー及び重合開始剤を混合したモノマー混合物を、分散安定剤を含有する水性分散媒体中に添加し、撹拌混合により懸濁してモノマー混合物を微細な液滴とした後、ついで昇温することによりラジカル重合を進めて得ることができる。得られた樹脂を酸化処理により、架橋構造を発達させることにより球状の炭素前駆体とすることができる。酸化処理は、120〜400℃の温度範囲で行うことができ、特に好ましくは170℃〜350℃、更に好ましくは220〜350℃の温度範囲で行うことが好ましい。酸化処理の温度が高すぎると、酸化反応が急速に進行して不均一な組織を形成する恐れがあるため、好ましくない。酸化処理の温度が低すぎると、酸化反応が過度に遅くなり生産性の低下を招く。酸化処理は、0.1〜10時間の範囲で行うことができ、好ましくは、0.5〜6時間である。酸化処理の時間が短すぎると、粒子内部まで十分に酸化反応が浸透せず、均一な炭素質材料が得られない。酸化処理の時間が過度に長いと、生産性が低下する。酸化処理を施す温度が低いほど、酸化処理に要する時間が長くなる。可能な範囲で低温かつ長時間の酸化処理を行うと、均一な材料が得られる点で好ましい。酸化剤としては、O2、O3、SO3、NO2、これらを空気、窒素等で希釈した混合ガス、又は空気等の酸化性気体、又は硫酸、硝酸、過酸化水素水等の酸化性液体を用いることができる。その後、炭素前駆体を、必要に応じて予備焼成を行った後、粉砕し、非酸化性ガス雰囲気中で900℃〜1600℃で炭素化することにより、本発明の炭素質材料を得ることができる。
粉砕工程は、炭素化後に行うことも出来るが、炭素化反応が進行すると炭素前駆体が硬くなるため、粉砕による粒子径分布の制御が困難になるため、粉砕工程は900℃未満の予備焼成の後で本焼成の前が好ましい。
本発明の非水電解質二次電池負極は、本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料を含む。
本発明の炭素質材料を用いる負極電極は、炭素質材料に結合剤(バインダー)を添加し適当な溶媒を適量添加、混練し、電極合剤とした後に、金属板などからなる集電板に塗布・乾燥後、加圧成形することにより製造することができる。本発明の炭素質材料を用いることにより特に導電助剤を添加しなくとも高い導電性を有する電極を製造することができるが、更に高い導電性を賦与することを目的に必要に応じて電極合剤を調製時に、導電助剤を添加することができる。導電助剤としては、導電性のカーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、ナノチューブなどを用いることができ、添加量は使用する導電助剤の種類によっても異なるが、添加する量が少なすぎると期待する導電性が得られないので好ましくなく、多すぎると電極合剤中の分散が悪くなるので好ましくない。このような観点から、添加する導電助剤の好ましい割合は0.5〜10質量%(ここで、活物質(炭素質材料)量+バインダー量+導電助剤量=100質量%とする)であり、更に好ましくは0.5〜7質量%、とくに好ましくは0.5〜5質量%である。結合剤としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、及びSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)とCMC(カルボキシメチルセルロース)との混合物などの電解液と反応しないものであれば特に限定されない。中でもPVDFは、活物質表面に付着したPVDFがリチウムイオン移動を阻害することが少なく、良好な入出力特性を得るために好ましい。PVDFを溶解しスラリーを形成するためにN−メチルピロリドン(NMP)などの極性溶媒が好ましく用いられるが、SBRなどの水性エマルジョンやCMCを水に溶解して用いることもできる。結合剤の添加量が多すぎると、得られる電極の抵抗が大きくなるため、電池の内部抵抗が大きくなり電池特性を低下させるので好ましくない。また、結合剤の添加量が少なすぎると、負極材料粒子相互及び集電材との結合が不十分となり好ましくない。結合剤の好ましい添加量は、使用するバインダーの種類によっても異なるが、PVDF系のバインダーでは好ましくは3〜13質量%であり、更に好ましくは3〜10質量%である。一方、溶媒に水を使用するバインダーでは、SBRとCMCとの混合物など、複数のバインダーを混合して使用することが多く、使用する全バインダーの総量として0.5〜5質量%が好ましく、更に好ましくは1〜4質量%である。電極活物質層は集電板の両面に形成するのが基本であるが、必要に応じて片面でもよい。電極活物質層が厚いほど、集電板やセパレータなどが少なくて済むため高容量化には好ましいが、対極と対向する電極面積が広いほど入出力特性の向上に有利なため活物質層が厚すぎると入出力特性が低下するため好ましくない。好ましい活物質層(片面当たり)の厚みは、10〜80μmであり、より好ましくは20〜75μm、さらに好ましくは20〜60μmである。
本発明の非水電解質二次電池は、本発明の非水電解質二次電池負極を含む。
本発明の負極材料を用いて、非水電解質二次電池の負極電極を形成した場合、正極材料、セパレータ、及び電解液など電池を構成する他の材料は特に限定されることなく、非水溶媒二次電池として従来使用され、あるいは提案されている種々の材料を使用することが可能である。
真密度は、JIS R 7212に定められた方法に従い、ブタノール法により測定した。内容積約40mLの側管付比重びんの質量(m1)を正確に量る。次に、その底部に試料を約10mmの厚さになるように平らにいれた後、その質量(m2)を正確に量る。これに1−ブタノールを静かに加えて、底から20mm程度の深さにする。次に比重びんに軽い振動を加えて、大きな気泡の発生がなくなったのを確かめた後、真空デシケーター中にいれ、徐々に排気して2.0〜2.7kPaとする。その圧力に20分間以上保ち、気泡の発生が止まった後に、取り出し、更に1−ブタノールを満たし、栓をして恒温水槽(30±0.03℃に調節してあるもの)に15分間以上浸し、1−ブタノールの液面を標線に合わせる。次に、これを取り出して外部をよくぬぐって室温まで冷却した後質量(m4)を正確に量る。
ρHeの測定は、島津製作所社製乾式自動密度計アキュピックII1340を用いた。試料を予め200℃で5時間以上乾燥した後、測定を行った。10cm3のセルを用い、1gの試料をセルに入れ、周囲温度は23℃で測定を行った。パージ回数は10回とし、そのうち、体積値が繰り返し測定により0.5%以内で一致することを確認した5回(n=5)の平均値を用いて、ρHeとした。
試料室の容積(VCELL)及び膨張室の容積(VEXP)は体積既知の校正球を使用して予め測定しておく。試料室に試料を入れ、系内をヘリウムで満たし、その時の系内圧力をPaとする。次にバルブを閉じ、試料室のみヘリウムガスを加え圧力P1まで増加させる。その後バルブを開け、膨張室と試料室を接続すると、膨張により系内圧力はP2まで減少する。
このとき試料の体積(VSAMP)は次式で計算する。
以下にBETの式から誘導された近似式を記す。
JIS M8819に定められた方法に準拠し測定した。CHNアナライザーによる元素分析により得られる試料中の水素及び炭素の質量割合から、水素/炭素の原子数の比として求めた。
炭素質材料粉末を試料ホルダーに充填し、PANalytical社製X’Pert PROを用いて、対称反射法にて測定した。走査範囲は8<2θ<50°で印加電流/印加電圧は45kV/40mAの条件で、Niフィルターにより単色化したCuKα線(λ=1.5418Å)を線源とし、X線回折図形を得た。標準物質用高純度シリコン粉末の(111)面の回折ピークを用いて補正した。CuKα線の波長を0.15418nmとし、Braggの公式によりd002を算出する。
Lc(002)は、炭素試料の(002)回折線の半値幅(ピークの広がりを強度半分の所に相当する2θ)から標準物質用高純度シリコン粉末の(111)回折線の半値幅を差し引いた値β1/2を用い下記Scherrerの式により計算した。ここで、形状因子Kは、0.9とした。
Lc(002)=K・λ/(β1/2・cosθ) (Scherrerの式)
試料約0.01gに対し、分散剤(カチオン系界面活性剤「SNウェット366」(サンノプコ社製))を3滴加え、試料に分散剤を馴染ませる。次に純水を加えて、超音波により分散させた後、粒径分布測定器(島津製作所社製「SALD−3000S」)で、複素屈折率パラメータ(実数部−虚数部)を2.0−0.1iとし、粒径0.08〜3000μmの範囲の粒径分布を求めた。得られた粒径分布から、累積容積が50%となる粒径をもって、平均粒子径Dv50とした。
測定前に、炭素質材料を200℃で12時間、真空乾燥させ、その後、この炭素質材料1gを直径9.5cm、高さ1.5cmのシャーレに、できる限り薄い厚みとなるように広げた。温度25℃、湿度50%の一定雰囲気に制御した恒温恒湿槽内に、100時間、放置した後、恒温恒湿槽から容器を取り出し、カールフィッシャ―水分計(三菱化学アナリテック/CA−200)を用いて吸湿量を測定した。気化室(三菱化学アナリテック/VA−200)の温度は200℃とした。
実施例及び比較例で得られた炭素質材料1〜8及び比較炭素質材料1〜3を用いて、以下の(a)〜(d)の操作を行い、負極電極及び非水電解質二次電池を作製し、そして電極性能の評価を行った。
上記炭素質材料94質量部、ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製「KF#9100」)6質量部にNMPを加えてペースト状にした負極合剤と、上記炭素質材料3を96質量部、SBR3質量部、CMC1質量部に水を加えてペースト状にした負極合剤を作製した。当該負極合剤を銅箔上に均一に塗布した。乾燥した後、銅箔より直径15mmの円板状に打ち抜き、これをプレスして電極とした。なお、電極中の炭素質材料の量は約10mgになるように調整した。
本発明の炭素質材料は非水電解質二次電池の負極電極を構成するのに適しているが、電池活物質の放電容量(脱ドープ量)及び不可逆容量(非脱ドープ量)を、対極の性能のバラツキに影響されることなく精度良く評価するために、特性の安定したリチウム金属を対極として、上記で得られた電極を用いてリチウム二次電池を構成し、その特性を評価した。
上記構成のリチウム二次電池について、充放電試験装置(東洋システム製「TOSCAT」)を用いて25℃にて充放電試験を行った。炭素極へのリチウムのドープ反応を定電流定電圧法により行い、脱ドープ反応を定電流法で行った。ここで、正極にリチウムカルコゲン化合物を使用した電池では、炭素極へのリチウムのドープ反応が「充電」であり、本発明の試験電池のように対極にリチウム金属を使用した電池では、炭素極へのドープ反応が「放電」と呼ぶことになり、用いる対極により同じ炭素極へのリチウムのドープ反応の呼び方が異なる。そこでここでは、便宜上炭素極へのリチウムのドープ反応を「充電」と記述することにする。逆に「放電」とは試験電池では充電反応であるが、炭素質材料からのリチウムの脱ドープ反応であるため便宜上「放電」と記述することにする。ここで採用した充電方法は定電流定電圧法であり、具体的には端子電圧が0.025Vもしくは0Vになるまで0.5mA/cm2で定電流充電を行い、端子電圧を0.025Vもしくは0Vに達した後、端子電圧0.025Vもしくは0Vで定電圧(CV)充電を行い電流値が20μAに達するまで充電を継続した。このとき、供給した電気量を電極の炭素質材料の質量で除した値を炭素質材料の単位質量当たりの充電容量(mAh/g)と定義した。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は0.5mA/cm2で定電流放電を行い、終止電圧を1.5Vとした。このとき放電した電気量を電極の炭素質材料の質量で除した値を炭素質材料の単位質量当たりの放電容量(mAh/g)と定義する。不可逆容量は、充電容量−放電容量として計算される。同一試料を用いて作製した試験電池について、3回(n=3)を測定し、その測定値を平均して充放電容量及び不可逆容量を決定した。さらに、放電容量を充電容量で除した値に100を乗じて、効率(%)を求めた。これは活物質がどれだけ有効に使用されたかを示す値である。
リチウム参照電極基準で、CV充電を0.025Vで行ったときの1.5V〜0.025Vの負極の放電容量(X)と、CV充電を0Vで行ったときの1.5V〜0Vの負極の放電容量(Y)とを求めて、その差(Y−X)を算出した。
上記(c)、(d)の0Vについては、0.000Vとなるように設定して、上記の充電や測定を行った。
軟化点205℃、H/C原子比0.65の石油ピッチ70kgと、ナフタレン30kgとを、撹拌翼および出口ノズルのついた内容積300リットルの耐圧容器に仕込み、190℃で加熱溶融混合を行った後、80〜90℃に冷却し、耐圧容器内を窒素ガスにより加圧して、内容物を出口ノズルから押出し、直径約500μmの紐状成型体を得た。次いで、この紐状成型体を直径(D)と長さ(L)の比(L/D)が約1.5になるように粉砕し、得られた破砕物を93℃に加熱した0.53質量%のポリビニルアルコール(ケン化度88%)を溶解した水溶液中に投入し、撹拌分散し、冷却して球状ピッチ成型体スラリーを得た。大部分の水をろ過により取り除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍量の質量のn−ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得た多孔性球状ピッチを、流動床を用いて、加熱空気を通じながら、190℃まで昇温し、190℃に1時間保持して酸化し、多孔性球状酸化ピッチを得た。
次に酸化ピッチを窒素ガス雰囲気中(常圧)で600℃まで100℃/hで昇温し、600℃で1時間保持して、溶融させながら予備焼成を実施し、炭素前駆体を得た。得られた炭素前駆体を粉砕し、平均粒径4.1μmの粉末状炭素前駆体とした。続いて、この粉末状炭素前駆体10gを直径100mmの横型管状炉に入れ、250℃/hの昇温速度で1200℃まで昇温し、1200℃で1時間保持して、本焼成を行い、炭素質材料1を得た。なお、本焼成は、流量10L/minの窒素雰囲気下で行った。
酸化処理温度を180℃に変えた以外は、実施例1と同様の方法で炭素質材料2を得た。
酸化処理温度を170℃に変えた以外は、実施例1と同様の方法で炭素質材料3を得た。
酸化処理温度を165℃に変えた以外は、実施例1と同様の方法で炭素質材料4を得た。
酸化処理温度を160℃に変えた以外は、実施例1と同様の方法で炭素質材料5を得た。
炭素前駆体の粉砕粒径を9.2μmに変えた以外は、実施例4と同様の方法で炭素質材料6を得た。
軟化点188℃、H/C原子比0.51の石炭ピッチをカウンタージェットミル(ホソカワミクロン株式会社/100−AFG)で回転数6000rpmで粉砕し、平均粒径13.2μmの粉末状ピッチを得た。続いて、この粉末状ピッチをマッフル炉(株式会社デンケン)に入れ、空気を20L/minで流通させながら、190℃で3時間保持して酸化処理を行い、酸化ピッチを得た。得られた酸化ピッチ100gを坩堝に入れ、縦型管状炉で、600℃まで50℃/hの速度で昇温し、600℃で1時間保持して予備焼成を実施し、炭素前駆体を得た。予備焼成は流量5L/minの窒素雰囲気下で行い、坩堝は開放した状態で実施した。炭素前駆体10gを直径100mmの横型管状炉に入れ、250℃/hの昇温速度で1200℃まで昇温し、1200℃で1時間保持して、本焼成を行い、炭素質材料7を調製した。なお、本焼成は、流量10L/minの窒素雰囲気下で行った。
平均重合度700のポリ塩化ビニルを、加熱空気を通じながら180℃で5時間保持して酸化処理を行い、続いて窒素ガス雰囲気中、100℃/hの昇温速度で600℃まで焼成し、次にカウンタージェットミル(ホソカワミクロン株式会社/100−AFG)で粉砕し、粉末状炭素前駆体とした。この炭素前駆体10gを直径100mmの横型管状炉に入れ、250℃/hの昇温速度で1200℃まで昇温し、1200℃で1時間保持して本焼成を行い、炭素質材料8を得た。
実施例3で得られた炭素質材料3を96質量部、SBR3質量部、CMC1質量部に水を加えて調製した負極合剤により電極を作製したこと以外は、実施例3と同様の方法で評価した。
酸化処理温度を270℃に変えた以外は、実施例1と同様の方法で比較炭素質材料1を得た。
本焼成の焼成温度を800℃に変えた以外は、実施例3と同様の方法で比較炭素質材料2を得た。
本焼成の焼成温度を2000℃に変えた以外は、実施例3と同様の方法で比較炭素質材料3を得た。
Claims (6)
- ブタノール法によって求められる真密度(ρBt)が1.70g/cm3以上2.10g/cm3未満、平均粒子径(Dv50)が1μm以上15μm以下、X線回折法により求めた(002)面の平均層面間隔d002が0.340nm以上0.375nm以下であり、
リチウム参照電極基準で、CV充電を0.025Vで行ったときの1.5V〜0.025Vの負極の放電容量(X)と、CV充電を0Vで行ったときの1.5V〜0Vの負極の放電容量(Y)との差(Y−X)が240mAh/cm3以下であることを特徴とする非水電解質二次電池負極用炭素質材料。 - ヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)とブタノール法によって求められる真密度(ρBt)との比(ρHe/ρBt)が1.15以下である請求項1に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
- リチウム参照電極基準で0.2Vから1.1Vに相当する放電容量Z(Ah/g)と電位差0.9(V)とから計算される放電曲線の傾き0.9/Z(Vg/Ah)が0.70以下である請求項1または2に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
- 請求項1から3のいずれかに記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料を含む非水電解質二次電池用負極電極。
- 請求項4に記載の非水電解質二次電池用負極電極を備える非水電解質二次電池。
- 請求項5に記載の非水電解質二次電池を搭載した車両。
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