JP2016186119A - 低サイクル疲労強度および結晶粒粗大化耐性に優れた浸炭用鋼材および浸炭部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】低サイクル疲労強度および結晶粒粗大化耐性に優れた浸炭用鋼材、および浸炭部品を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0%超0.15%以下、Mn:1.5〜2.0%、P:0%超0.03%以下、S:0%超0.02%以下、Cr:0.9〜1.2%、Al:0.06%超0.10%以下、Ti:0.05〜0.10%、Nb:0.004〜0.015%、B:0.001〜0.005%、N:0.002〜0.008%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる低サイクル疲労強度および結晶粒粗大化耐性に優れた浸炭用鋼材。
【選択図】なし
【解決手段】質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0%超0.15%以下、Mn:1.5〜2.0%、P:0%超0.03%以下、S:0%超0.02%以下、Cr:0.9〜1.2%、Al:0.06%超0.10%以下、Ti:0.05〜0.10%、Nb:0.004〜0.015%、B:0.001〜0.005%、N:0.002〜0.008%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる低サイクル疲労強度および結晶粒粗大化耐性に優れた浸炭用鋼材。
【選択図】なし
Description
本発明は、浸炭用鋼材、および該鋼材を浸炭処理して得られる部品に関する。本発明の浸炭部品は、例えば、歯車、シャフトなどの等速ジョイント部品、軸受、無段変速機トランスミッション(Continuously Variable Transmission、CVT)プーリーなどに好適に用いられる。
自動車に用いられる歯車、等速ジョイント部品、軸受、CVTプーリー等の部品には、車両の急発進、急停止時に衝撃的な荷重が加わるため、低サイクルで破損することがある。また、近年では、高出力化、ユニットの小型化が指向され、上記部品には低サイクル疲労強度の向上が一層望まれる。これまで、高サイクル疲労強度を向上させる観点から、JISで規定されるSCr、SCMなどのJIS鋼に浸炭焼入れ焼戻し処理を施すことによって、部品の表面で硬さを確保し、部品の芯部で靭性を確保していた。しかし、このようにして得られた浸炭部品の低サイクル疲労強度は必ずしも高くなっていなかった。
低サイクル疲労特性を改善する技術としては、特許文献1、2が知られている。これらのうち特許文献1には、脱酸材としてAlを0.001〜0.05%の範囲で含有する鋼からなり、投影芯部硬さを規定した浸炭焼入れ鋼材が開示されている。特許文献2には、脱酸を目的としてAlを0.001〜0.06%の範囲で含有する鋼からなり、表面の硬さおよび心部の硬さを規定した浸炭鋼部品が開示されている。
ところで、部品形状に成形する方法としては、切削加工、熱間鍛造、冷間鍛造などが行われる。製造コストを低減すると共に、歩留まりを改善する観点から、これらのなかでも冷間鍛造が主流になりつつある。冷間鍛造は、室温で成形加工するため、鍛造時には金型に高応力負荷がかかり、金型の早期破損が問題となる。そのため、鍛造前に、鋼材に球状化焼鈍や恒温焼鈍を施し、鋼材を軟質化することが一般的である。しかし、冷間鍛造は、他の方法とは異なり、成形加工時に部品の内部に多量の歪みが導入される。導入された歪みは、浸炭時の加熱中にオーステナイトの核生成サイトとなり、不均一な粒成長を助長する原因となる。そのため、浸炭焼入れ後の部品内部には不均一に粗大化した結晶粒が散在し、最終製品に含まれる歪み量が増大するという問題が発生する。また、近年における浸炭温度の高温化も結晶粒の粗大化を促進する原因になっている。
しかし、上述したJIS鋼は、冷間鍛造後に浸炭することを想定していないため、結晶粒の粗大化は抑制できない。また、上記特許文献1、2では、浸炭時における結晶粒の粗大化抑制については考慮されていない。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、低サイクル疲労強度および結晶粒粗大化耐性に優れた浸炭用鋼材、および浸炭部品を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る低サイクル疲労強度および結晶粒粗大化耐性に優れた浸炭用鋼材とは、質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0%超0.15%以下、Mn:1.5〜2.0%、P:0%超0.03%以下、S:0%超0.02%以下、Cr:0.9〜1.2%、Al:0.06%超0.10%以下、Ti:0.05〜0.10%、Nb:0.004〜0.015%、B:0.001〜0.005%、およびN:0.002〜0.008%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる点に要旨を有する。
上記鋼材は、更に、質量%で、
(a)Mo:0%超0.05%以下、Cu:0%超0.2%以下、およびNi:0%超0.20%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
(b)V:0%超0.1%以下、およびHf:0%超0.1%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
(c)Ca:0%超0.005%以下、Mg:0%超0.005%以下、Zr:0%超0.15%以下、Te:0%超0.10%以下、およびREM:0%超0.02%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
(d)Pb:0%超0.10%以下、Bi:0%超0.10%以下、およびSb:0%超0.10%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
等を含有してもよい。
(a)Mo:0%超0.05%以下、Cu:0%超0.2%以下、およびNi:0%超0.20%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
(b)V:0%超0.1%以下、およびHf:0%超0.1%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
(c)Ca:0%超0.005%以下、Mg:0%超0.005%以下、Zr:0%超0.15%以下、Te:0%超0.10%以下、およびREM:0%超0.02%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
(d)Pb:0%超0.10%以下、Bi:0%超0.10%以下、およびSb:0%超0.10%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
等を含有してもよい。
本発明には、上記浸炭用鋼材を浸炭処理した部品も包含され、芯部硬さは350〜500HVであり、表面から深さ0.3mm位置までの領域における残留オーステナイトの平均値は20〜50体積%である点に要旨を有する。
本発明によれば、鋼材の成分組成を適切に制御することにより低サイクル疲労強度が高く、しかも結晶粒粗大化耐性にも優れた浸炭用鋼材が得られる。また、本発明によれば、上記鋼材に浸炭処理を施すことにより、芯部硬さと、表面から深さ0.3mm位置までの領域における残留オーステナイト量が適切に制御されるため、低サイクル疲労強度および結晶粒粗大化耐性に優れた浸炭部品が得られる。
本発明者らは、低サイクル疲労強度を高めると共に、冷間鍛造後に浸炭しても結晶粒の粗大化を抑えられる浸炭用鋼材を得るために、鋭意検討を重ねてきた。その結果、鋼材の成分組成のうち、TiおよびNbに加えてAlを積極的に添加することにより結晶粒粗大化耐性に優れた浸炭用鋼材を提供できること、また、Mn、Cr、B量を適切に制御すれば低サイクル疲労強度に優れた浸炭部品を提供できる浸炭用鋼材が得られることを見出し、本発明を完成した。
まず、本発明を完成するに至った経緯について説明する。
浸炭部品の結晶粒粗大化を防止するには、浸炭用鋼材の成分組成のうち、TiおよびNbを添加したうえで、Alを積極的に添加すれば良いことが本発明者らの検討により明らかになった。即ち、AlN、TiC、Nb(C,N)などの炭窒化物は、ピンニング粒子として知られており、浸炭時に結晶粒が粗大化するのを抑制する作用を有している。そのため、TiおよびNbを多量に添加すれば、結晶粒粗大化耐性に優れたものとなるが、環境負荷や原料コストが高騰するため望ましくない。また、本発明では、後述するように、BNの生成を抑制して、Bを固溶させることにより、浸炭部品の低サイクル疲労強度を高めるためにTiを積極的に添加している。そのため、原料コストは益々増大する。一方、本発明者らが着目したAlは、Tiに比べてNと反応しにくいため、Tiを添加した場合には、Alを添加してもピンニング粒子であるAlNが析出しないと言われていた。しかし、本発明者らが検討を重ねたところ、Alを一定量以上添加すれば、Tiを添加した場合でもAlNが析出すること、即ち、鋼中に存在する有害なNを有効利用して、結晶粒の粗大化を防止できることが分かった。
また、Nbは、結晶粒の粗大化を抑制するのに有効に作用するが、粗大な晶出物を形成しやすく、粗大な晶出物は、結晶粒の粗大化抑制作用を有していない。そのため、Nbを多量に添加しても、結晶粒の粗大化抑制に寄与する微細なNb析出物は却って減少するため、冷鍛歪みの導入や高温浸炭のような過酷な製造条件には耐えられない。そこで本発明者らが検討したところ、Nb量を所定の範囲に制御すれば、粗大な晶出物の生成を抑制でき、ピンニング粒子として作用する微細なNb析出物を生成できることが判明した。
一方、浸炭部品の低サイクル疲労強度を高めるには、浸炭用鋼材の成分組成のうち、特に、Mn、Cr、B量を適切に制御すればよい。このように成分組成を調整した浸炭用鋼材を浸炭処理すれば、芯部硬さが350〜500HVであり、表面から深さ0.3mm位置までの領域における残留オーステナイトの平均値が20〜50体積%となり、浸炭部品の低サイクル疲労強度を高めることができる。
即ち、低サイクル荷重域では、高負荷により浸炭部品自体が塑性変形することがある。塑性変形すると、動力を効率的に伝達できなくなり、また早期に破損にするため、低サイクル疲労強度は低下する。一方、浸炭部品の芯部硬さが高くなるほど塑性変形しにくくなるが、芯部硬さが高くなり過ぎると、靭性が低下する。靭性が低下すると、き裂伝播速度が増大するため、低サイクル疲労強度は低下する。そこで本発明では、浸炭部品の芯部硬さが所定の範囲となるように、浸炭用鋼材の成分組成を制御している。
また、本発明の浸炭用鋼材は、成分組成のうち、特に、MnおよびCr量を適切に制御することにより、浸炭部品に所定量の残留オーステナイトを生成させている。残留オーステナイトを所定量生成させることによって、低サイクル負荷時にき裂の発生開口を抑制できるため、低サイクル疲労強度を向上させることができるからである。即ち、浸炭焼入れ時の油温がMf点以上になると、マルテンサイト変態しきれなかったオーステナイトが残留オーステナイトとして存在する。残留オーステナイトは不安定なため、応力が加わると硬質なマルテンサイトに誘起変態する。この変態は、体積膨張を伴っており、体積膨張すると、き裂の発生開口が抑制される。そこで、本発明では、こうした現象を利用し、浸炭時に所定量の残留オーステナイトを生成させることにより、低サイクル負荷時に残留オーステナイトを誘起変態させ、低サイクル疲労強度を高めている。
また、本発明の浸炭用鋼材は、成分組成のうち、B、N、Ti量を適切に制御することによって、Bを固溶させており、これにより浸炭部品の低サイクル疲労強度を高めることができる。即ち、オーステナイト粒界にPが偏析すると粒界が脆化し、低サイクル疲労強度が低下する。一方、固溶状態のBは、Pがオーステナイト粒界に偏析するのを防止する作用を有している。そこで、本発明では、Bを固溶させることにより、Pがオーステナイト粒界に偏析するのを防止する。しかし、Bは鋼中のNと容易に結合してBNを形成しやすい。そのため、本発明では、BよりもNとの反応性が高いTiを所定量添加し、Bを固溶させる必要がある。
以上、本発明を完成するに至った経緯について説明した。
次に、本発明に係る浸炭用鋼材における基本成分について説明する。
本発明の浸炭用鋼材は、質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0%超0.15%以下、Mn:1.5〜2.0%、P:0%超0.03%以下、S:0%超0.02%以下、Cr:0.9〜1.2%、Al:0.06%超0.10%以下、Ti:0.05〜0.10%、Nb:0.004〜0.015%、B:0.001〜0.005%、およびN:0.002〜0.008%を含有する。
Cは、浸炭して得られる最終製品の芯部硬さを確保するために必要な元素である。C量が少なすぎると、芯部硬さを確保できないため、0.15%以上とする。C量は、好ましくは0.17%以上、より好ましくは0.18%以上である。しかし、過剰に含有すると、浸炭して得られる最終製品の芯部硬さが高くなり過ぎて靭性が低下し、却って低サイクル疲労強度が低下する。従って本発明では、C量は、0.25%以下とし、好ましくは0.23%以下、より好ましくは0.22%以下とする。
Siは、フェライトに固溶して加工性を低下させるため、できるだけ低減する必要があり、0.15%以下とする。Si量は、好ましくは0.13%以下、より好ましくは0.11%以下である。しかし、Si量を低減して純度を高めるには製造コストが増大するため、Si量は、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.04%以上である。
Mnは、鋼材の焼入れ性を高め、浸炭して得られる最終製品の芯部硬さを確保するとともに、鋼材のMs点を下げ、浸炭後に残留オーステナイトを形成させて、低サイクル疲労強度を改善するために重要な元素である。本発明では、Mn量は、1.5%以上とし、好ましくは1.55%以上、より好ましくは1.6%以上とする。しかし、Mnを過剰に含有すると、浸炭後に生成する残留オーステナイト量が過剰となり、低サイクル疲労強度が却って低下する。従ってMn量は、2.0%以下、好ましくは1.9%以下、より好ましくは1.8%以下である。
Pは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、結晶粒界に偏析し、浸炭して得られる最終製品の低サイクル疲労強度を低下させるため、0.03%以下とする必要がある。P量は、好ましくは0.025%以下、より好ましくは0.020%以下である。P量はできるだけ低減することが推奨されるが、P量を低減して純度を高めるには製造コストが増大するため、P量は、0.003%以上であればよい。P量は、0.005%以上であっても構わない。
Sは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、Mnと結合してMnS介在物となり、切削性の向上に寄与する反面、低サイクル疲労強度を低下させるため、0.02%以下とする。S量は、好ましくは0.018%以下、より好ましくは0.016%以下である。S量はできるだけ低減することが推奨されるが、S量を低減して純度を高めるには製造コストが増加し、また切削性も低下するため、S量は0.003%以上が好ましい。S量は、より好ましくは0.005%以上である。
Crは、鋼材の焼入性を高め、浸炭して得られる最終製品の芯部硬さを確保するとともに、浸炭後に残留オーステナイトを形成させて、低サイクル疲労強度を改善するために重要な元素である。本発明では、Cr量は、0.9%以上とし、好ましくは0.95%以上、より好ましくは1.0%以上とする。しかし、Crを過剰に含有すると、浸炭して得られる最終製品の芯部硬さが高くなりすぎ、低サイクル疲労強度が却って低下する。従ってCr量は、1.2%以下、好ましくは1.15%以下、より好ましくは1.1%以下である。
Alは、AlNを生成し、浸炭時に結晶粒の粗大化を抑制するために重要な元素である。即ち、Nと反応しやすいTiが添加されていても、0.06%を超えるAlを添加することによりAlNを生成させることができる。また、N量が上記範囲内では、AlNの固溶温度が低下するため、鋳造時に晶出した粗大なAlNは圧延時に固溶し、浸炭時に結晶粒が粗大化するのを抑制できる。Al量が少なすぎると、AlNが形成されないため、浸炭時に結晶粒が粗大化する。従ってAl量は、0.06%超とし、好ましくは0.065%以上、より好ましくは0.07%以上とする。しかし、過剰な添加は製造性、加工性を低下させるため、Al量は、0.10%以下、好ましくは0.09%以下、より好ましくは0.085%以下とする。
Tiは、鋼中のCと結合してTiCを形成し、このTiCがピンニング粒子として作用して、浸炭時の結晶粒粗大化を防止する。また、Tiは、Nと優先的に結合し、TiNを形成することにより固溶Bが確保され、低サイクル疲労強度向上に寄与する元素である。Ti量が0.05%未満では、TiCの生成量が少なくなり、充分なピンニング効果が得られず、浸炭時に結晶粒が粗大化する。従って本発明では、Ti量は、0.05%以上、好ましくは0.055%以上、より好ましくは0.06%以上とする。しかし、Tiを過剰に添加しても結晶粒粗大化防止特性は飽和し、鋼材コストが増大する。従ってTi量は、0.10%以下、好ましくは0.09%以下、より好ましくは0.080%以下とする。
Nbは、鋼中のCおよびNと結合してNb(C,N)を形成する元素である。Nb(C,N)は、上述したTiCと同様、ピンニング粒子として作用し、浸炭時の結晶粒粗大化を防止する。Nb量が0.004%未満では、Nb(C,N)の生成量が少なくなり、充分なピンニング効果が得られず、浸炭時に結晶粒が粗大化する。本発明では、Nb量は、0.004%以上、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.006%以上とする。しかし、過剰に含有しても結晶粒粗大化防止に寄与しない晶出物が形成され、結晶粒粗大化防止特性は飽和する。従ってNb量は、0.015%以下、好ましくは0.013%以下、より好ましくは0.011%以下とする。
Bは、鋼の焼入性を高めるとともに、Pが粒界に偏析するのを抑制する元素であり、低サイクル疲労強度向上に作用する元素である。こうした効果を発揮させるには、B量は、0.001%以上とする必要がある。B量は、好ましくは0.0013%以上、より好ましくは0.0015%以上である。しかし、Bを過剰に含有させてもこうした効果は飽和し、加工性を低下させる原因となる。従って本発明では、B量は0.005%以下とし、好ましくは0.004%以下、より好ましくは0.003%以下である。
Nは、鋼中のAl、Nbと結合し、微細な窒化物や微細な炭窒化物を形成し、浸炭時に結晶粒が粗大化するのを抑制する元素である。こうした効果を発揮させるには、N量は、0.002%以上とする必要がある。N量は、好ましくは0.0025%以上、より好ましくは0.003%以上である。しかし、過剰に含有すると、結晶粒の粗大化防止に寄与しないTiNを形成し、浸炭時に結晶粒が粗大化する。従って本発明では、N量は、0.008%以下とする。N量は、好ましくは0.007%以下、より好ましくは0.006%以下である。
本発明に係る浸炭用鋼材の基本成分は上述した通りであり、残部は鉄および不可避不純物である。
本発明の上記鋼材は、更に、質量%で、
(a)Mo:0%超0.05%以下、Cu:0%超0.2%以下、およびNi:0%超0.20%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
(b)V:0%超0.1%以下、およびHf:0%超0.1%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
(c)Ca:0%超0.005%以下、Mg:0%超0.005%以下、Zr:0%超0.15%以下、Te:0%超0.10%以下、およびREM:0%超0.02%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
(d)Pb:0%超0.10%以下、Bi:0%超0.10%以下、およびSb:0%超0.10%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
等を含有してもよい。
(a)Mo:0%超0.05%以下、Cu:0%超0.2%以下、およびNi:0%超0.20%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
(b)V:0%超0.1%以下、およびHf:0%超0.1%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
(c)Ca:0%超0.005%以下、Mg:0%超0.005%以下、Zr:0%超0.15%以下、Te:0%超0.10%以下、およびREM:0%超0.02%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
(d)Pb:0%超0.10%以下、Bi:0%超0.10%以下、およびSb:0%超0.10%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種、
等を含有してもよい。
(a)Mo、Cu、およびNiは、いずれも鋼の焼入性を向上させて浸炭部品の強度および靭性を向上させるために有効に作用する元素であり、単独で、或いは2種以上を含有させることが好ましい。こうした効果を有効に発揮させるには、Moは、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.01%以上である。Cuは、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.03%以上である。Niは、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.05%以上である。しかし、過剰に含有すると、鋼材のコストが増大する。また、圧延時や焼鈍時に過冷組織を形成し、浸炭時に結晶粒を粗大化させることがある。従ってMoは、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.04%以下、更に好ましくは0.03%以下である。Cuは、好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.15%以下、更に好ましくは0.1%以下である。Niは、好ましくは0.20%以下、より好ましくは0.18%以下、更に好ましくは0.15%以下である。
(b)VおよびHfは、TiやNbと共に添加することにより、浸炭時に結晶粒が粗大化するのを抑制する効果を高める元素であり、単独で、或いは併用して含有させることが好ましい。こうした効果を有効に発揮させるには、Vは、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.03%以上である。Hfは、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.03%以上である。しかし、過剰に含有させてもその効果は飽和し、鋼材コストが増大する。従ってVは、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.075%以下である。Hfは、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.075%以下である。
(c)Ca、Mg、Zr、Te、およびREMは、いずれも鋼中に生成するMnSの伸長を抑制し、浸炭部品の靭性を向上させるのに有効に作用する元素であり、単独で、或いは2種以上を含有させることが好ましい。こうした作用を有効に発揮させるには、Caは、好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.001%以上である。Mgは、好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.001%以上である。Zrは、好ましくは0.015%以上、より好ましくは0.03%以上である。Teは、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.03%以上である。REMは、好ましくは0.002%以上、より好ましくは0.005%以上である。しかし、過剰に含有すると、粗大な酸化物が生成し、低サイクル疲労強度が低下することがある。従って本発明では、Caは、好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.004%以下、更に好ましくは0.003%以下である。Mgは、好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.004%以下、更に好ましくは0.003%以下である。Zrは、好ましくは0.15%以下、より好ましくは0.13%以下、更に好ましくは0.11%以下である。Teは、好ましくは0.10%以下、より好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.07%以下である。REMは、好ましくは0.02%以下、より好ましくは0.018%以下、更に好ましくは0.015%以下である。
(d)Pb、Bi、およびSbは、いずれも被削性を向上させる元素であり、単独で、或いは2種以上を含有させることが好ましい。こうした作用を有効に発揮させるには、Pbは、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上である。Biは、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上である。Sbは、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上である。しかし、過剰に含有すると、低サイクル疲労強度が低下することがある。従って本発明では、Pbは、好ましくは0.10%以下、より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.05%以下である。Biは、好ましくは0.10%以下、より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.07%以下である。Sbは、好ましくは0.10%以下、より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.07%以下である。
以上、本発明に係る浸炭用鋼材の成分組成について説明した。
次に、本発明に係る浸炭部品について説明する。
本発明の浸炭部品は、上記浸炭用鋼材に浸炭処理して得られる部品であり、芯部硬さは350〜500HV、表面から深さ0.3mm位置までの領域(以下、表層部ということがある。)における残留オーステナイトの平均値が20〜50体積%を満足する。
(芯部硬さ)
芯部硬さは、高応力負荷時における塑性変形および疲労き裂の伝播に影響する。芯部硬さが低すぎると、高応力負荷時に塑性変形して低サイクル疲労強度が極端に低下するため、本発明では、芯部硬さを350HV以上とする。芯部硬さは、好ましくは360HV以上、より好ましくは370HV以上である。しかし、芯部硬さが高すぎると、芯部の靭性が低下し、疲労き裂の伝播が促進されて低サイクル疲労強度が却って低下する。従って本発明では、芯部硬さを500HV以下とする。芯部硬さは、好ましくは480HV以下、より好ましくは460HV以下とする。
芯部硬さは、高応力負荷時における塑性変形および疲労き裂の伝播に影響する。芯部硬さが低すぎると、高応力負荷時に塑性変形して低サイクル疲労強度が極端に低下するため、本発明では、芯部硬さを350HV以上とする。芯部硬さは、好ましくは360HV以上、より好ましくは370HV以上である。しかし、芯部硬さが高すぎると、芯部の靭性が低下し、疲労き裂の伝播が促進されて低サイクル疲労強度が却って低下する。従って本発明では、芯部硬さを500HV以下とする。芯部硬さは、好ましくは480HV以下、より好ましくは460HV以下とする。
芯部硬さとは、浸炭時にC量が増加しない深さ位置における硬さを意味する。即ち、浸炭部品において曲げ応力がかかる厚さ方向の中心部における硬さを測定すれば、芯部硬さを測定できる。
(残留オーステナイト)
残留オーステナイトは、浸炭部品の低サイクル疲労強度を向上させるために重要な組織である。高応力負荷時に、特に、表層部における残留オーステナイトがマルテンサイトに誘起変態し、局所的に体積膨張することにより、初期き裂発生時の開口発生が抑制されるため、低サイクル疲労強度が向上する。こうした効果を発揮させるには、表層部における残留オーステナイトを、全金属組織に対して20体積%以上、好ましくは25体積%以上、より好ましくは30体積%以上とする。しかし、表層部における残留オーステナイトが多すぎると、浸炭部品の表面が軟化し、初期き裂が早期に発生するため、低サイクル疲労強度が低下する。従って上記残留オーステナイトは、全金属組織に対して50体積%以下、好ましくは45体積%以下、より好ましくは40体積%以下とする。
残留オーステナイトは、浸炭部品の低サイクル疲労強度を向上させるために重要な組織である。高応力負荷時に、特に、表層部における残留オーステナイトがマルテンサイトに誘起変態し、局所的に体積膨張することにより、初期き裂発生時の開口発生が抑制されるため、低サイクル疲労強度が向上する。こうした効果を発揮させるには、表層部における残留オーステナイトを、全金属組織に対して20体積%以上、好ましくは25体積%以上、より好ましくは30体積%以上とする。しかし、表層部における残留オーステナイトが多すぎると、浸炭部品の表面が軟化し、初期き裂が早期に発生するため、低サイクル疲労強度が低下する。従って上記残留オーステナイトは、全金属組織に対して50体積%以下、好ましくは45体積%以下、より好ましくは40体積%以下とする。
表層部における残留オーステナイト量は、例えば、X線残留応力測定装置にて測定できる。
次に、本発明に係る浸炭用鋼材の製造方法について説明する。
本発明の鋼材は、常法に従って溶製した鋼を、常法に従って鋳造、分塊圧延、および仕上げ圧延して製造できる。具体的には、鋳造して得られた鋳片を、1100〜1300℃で30分間〜5時間加熱保持した後、分塊圧延すればよい。分塊圧延後の鋼片を、平均冷却速度を0.01〜5℃/秒としてA1点以下の温度に冷却した後、更に850〜1100℃に加熱保持した状態で仕上げ圧延を行ない、更に平均冷却速度を0.01〜5℃/秒として室温まで冷却することにより本発明の鋼材が得られる。
本発明の浸炭部品は、上記鋼材を、常法に従って切削、冷間鍛造、および熱間鍛造よりなる群から選ばれる1種以上の方法で加工して中間品とし、この中間品を、浸炭焼入れ焼戻しまたは浸炭窒化焼入れ焼戻しすることにより製造できる。なお、本明細書では、浸炭焼入れ焼戻しおよび浸炭窒化焼入れ焼戻しを単に浸炭処理ということがある。
上記鋼材は、中間品に加工する前に、必要に応じて常法に従って焼鈍処理を施してもよい。
また、上記中間品は、浸炭処理する前に、必要に応じて常法に従って溶体化処理および焼準処理を施してもよい。
浸炭ガスとしては、例えば、変成ガスとプロパンガスの混合ガスを用いればよい。
浸炭焼入れは、例えば、表面から0.05mm深さまでの平均C濃度が0.50〜0.90%、有効硬化層深さECD(Effective Case. Depth)が0.25〜1.5mmとなるように、雰囲気中のカーボンポテンシャルCPを0.40〜1.00に調整し、800〜1000℃にて1〜3時間保持し、その後800〜900℃にて0.5〜2時間保持した直後に焼入れすればよい。
浸炭焼入れ後は、150〜200℃にて0.5〜3時間保持した後に放冷し、焼戻し処理を行えばよい。
また、浸炭処理後には、必要に応じて常法に従って研磨、潤滑被膜処理、またはショットピーニング処理などを施してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1、表2に示す成分組成を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼を溶解炉にて溶製し、インゴットを製造した。下記表1、表2において、「−」は検出されなかったことを意味する。
得られたインゴットを1100〜1300℃で加熱保持した後、熱間鍛造して24mm角およびφ24mmの鋼材を製造した。
更に、溶体化処理として1250℃で1時間加熱保持した後、放冷し、焼準処理として1000℃で1時間加熱保持した後、放冷した。
焼準処理した24mm角の鋼材を図1に示す形状の試験片に加工した。
得られた試験片をガス浸炭炉にて浸炭処理した。
浸炭処理は、カーボンポテンシャルを1.0%として950℃で80分間保持した後、続けてカーボンポテンシャルを0.8%として950℃で60分間保持した。60分間保持後、カーボンポテンシャル0.8%のまま845℃まで降温し、この温度で30分保持してから油焼入れし、更に150℃に加熱して2時間保持して焼戻した。
焼戻した試験片を用い、芯部硬さの測定、残留オーステナイト量の測定、低サイクル疲労強度の測定を行った。
(芯部硬さの測定)
上記試験片を図2に示すようにノッチ中央を含むように切断し、これを樹脂埋めしたものをさらに研磨した。ノッチ底から法線方向に下した底面までの線分の長さを2等分する点を芯部とし、芯部と、この芯部を含み底面と平行な直線上の任意な5点のビッカース硬さを荷重300gfにてJIS Z2244に則って測定した。測定した5点の平均を芯部硬さとした。芯部硬さを下記表3、表4に示す。
上記試験片を図2に示すようにノッチ中央を含むように切断し、これを樹脂埋めしたものをさらに研磨した。ノッチ底から法線方向に下した底面までの線分の長さを2等分する点を芯部とし、芯部と、この芯部を含み底面と平行な直線上の任意な5点のビッカース硬さを荷重300gfにてJIS Z2244に則って測定した。測定した5点の平均を芯部硬さとした。芯部硬さを下記表3、表4に示す。
なお、C量が浸炭前に比べて増加している浸炭層は、深くてもせいぜい2mm程度であるため、この方法で測定すれば、非浸炭層である芯部硬さを測定できる。
(残留オーステナイト量の測定)
上記試験片のノッチ底中央部を電解研磨にて深さ25μm腐食した領域の残留オーステナイト量を、リガク社製のX線残留応力測定装置にて測定した。測定結果を下記表3、表4に示す。
上記試験片のノッチ底中央部を電解研磨にて深さ25μm腐食した領域の残留オーステナイト量を、リガク社製のX線残留応力測定装置にて測定した。測定結果を下記表3、表4に示す。
(低サイクル疲労強度の測定)
上記試験片の低サイクル疲労強度は、4点曲げ試験にて測定した。即ち、上記試験片を図3に示すように4点支持した状態で、該試験片に繰り返し応力を加え、各応力下において試験片が破断するまでの繰り返し回数を測定した。図3において、1は試験片、2は治具、3は荷重の方向をそれぞれ示している。応力は1000〜3500MPaで、周波数は1Hz、応力比は0.1とした。応力比とは、最大応力に対する最小応力の比を意味する。試験片が破断するまでの繰り返し回数を曲げ疲労寿命とした。試験片に付加した応力と曲げ疲労寿命の関係式を単回帰により求め、曲げ疲労寿命が100回となるときの応力を低サイクル疲労強度とした。下記表3、表4に算出結果を示す。なお、下記表3、表4では、100回サイクル強度と表記した。100回サイクル強度が2500MPa以上を合格とし、2500MPa未満を不合格とした。
上記試験片の低サイクル疲労強度は、4点曲げ試験にて測定した。即ち、上記試験片を図3に示すように4点支持した状態で、該試験片に繰り返し応力を加え、各応力下において試験片が破断するまでの繰り返し回数を測定した。図3において、1は試験片、2は治具、3は荷重の方向をそれぞれ示している。応力は1000〜3500MPaで、周波数は1Hz、応力比は0.1とした。応力比とは、最大応力に対する最小応力の比を意味する。試験片が破断するまでの繰り返し回数を曲げ疲労寿命とした。試験片に付加した応力と曲げ疲労寿命の関係式を単回帰により求め、曲げ疲労寿命が100回となるときの応力を低サイクル疲労強度とした。下記表3、表4に算出結果を示す。なお、下記表3、表4では、100回サイクル強度と表記した。100回サイクル強度が2500MPa以上を合格とし、2500MPa未満を不合格とした。
なお、JIS Z2273では時間強度の範囲を104〜2×107サイクルと定めており、また特開2010−285689号公報では500回サイクルで強度を測定している。これに対し、本発明では、100回サイクルで強度を測定しており、充分低サイクルと言える。また、高負荷である方が短寿命であることを考えると、JIS Z2273や特開2010−285689号公報に記載の条件よりも、本発明の方が過酷な条件と言える。
次に、焼準処理したφ24mmの鋼材に、軟質化させて加工性を向上させるために焼鈍処理を施した。焼鈍処理は、900℃にて1時間加熱保持した後、660℃に降温して更に4時間保持してから放冷して行った。なお、焼鈍処理は必ずしも必須ではない。
焼鈍処理した鋼材を、図4に示す形状の試験片に加工した。
得られた試験片を、1600tonプレス機にて冷間圧縮した。冷間圧縮は、試験片の試験後の高さが試験前の高さの30%になるまで行った。冷間圧縮後の試験片の形状を図5のAに示す。図5のBは、図5のAに示した試験片を点線の位置で切断した試験片を示している。
冷間圧縮した試験片をガス浸炭炉にて、上記24mm角と同じ条件で、浸炭処理、油焼入れ、および焼戻しした。
焼戻した試験片を用い、結晶粒粗大化耐性を評価した。
(結晶粒粗大化耐性の評価)
上記試験片の中心を含むように切断し、切断面を研磨し、更にエッチングした。エッチング面を光学顕微鏡にて観察し、旧オーステナイト粒の最大結晶粒度番号を算出した。算出結果を下記表3、表4に示す。最大結晶粒度番号が5以上を合格、4以下を不合格とした。
上記試験片の中心を含むように切断し、切断面を研磨し、更にエッチングした。エッチング面を光学顕微鏡にて観察し、旧オーステナイト粒の最大結晶粒度番号を算出した。算出結果を下記表3、表4に示す。最大結晶粒度番号が5以上を合格、4以下を不合格とした。
下記表3、表4から次のように考察できる。
No.1〜27は、本発明で規定する要件を満足する例であり、最大結晶粒度番号が5以上で、結晶粒粗大化耐性に優れると共に、100回サイクル強度が2500MPa以上で、低サイクル疲労強度に優れることが分かる。
No.28〜58は、本発明で規定するいずれかの要件を満足しない例であり、結晶粒粗大化耐性または低サイクル疲労強度のうち、少なくとも一方が改善できていない。詳細は次の通りである。
No.28は、C量が少なすぎる例であり、浸炭部品の芯部硬さが低くなり、低サイクル疲労強度を向上できなかった。
No.29は、Cを過剰に含有する例であり、浸炭部品の芯部硬さが高くなり過ぎて靭性が低下し、低サイクル疲労強度を向上できなかった。
No.30は、Mn量が少なすぎる例であり、浸炭部品の芯部硬さが低くなり、また浸炭後に生成する残留γ量が少なくなったため、低サイクル疲労強度を向上できなかった。
No.31は、Mnを過剰に含有する例であり、浸炭後に生成する残留γ量が過剰になったため、低サイクル疲労強度が低下した。
No.32は、Pを過剰に含有する例であり、低サイクル疲労強度を向上できなかった。
No.33は、Sを過剰に含有する例であり、低サイクル疲労強度向上できなかった。
No.34は、Cr量が少なすぎる例であり、浸炭部品の芯部硬さが低くなり、また浸炭後に生成する残留γ量が少なくなったため、低サイクル疲労強度を向上できなかった。
No.35は、Crを過剰に含有する例であり、浸炭部品の芯部硬さが高くなり過ぎたため、低サイクル疲労強度を向上できなかった。
No.36は、Al量が少なすぎる例であり、AlNが形成されないため、浸炭時に結晶粒が粗大化した。
No.37は、Ti量が少なすぎる例であり、ピンニング効果が得られず、浸炭時に結晶粒が粗大化した。
No.38は、Nbを含有しない例であり、ピンニング効果が得られず、浸炭時に結晶粒が粗大化した。
No.39は、Ti量が少なすぎ、またNbを含有しない例であり、ピンニング効果が得られず、浸炭時に結晶粒が粗大化した。
No.40は、Bを含有しない例であり、浸炭部品の低サイクル疲労強度を向上できなかった。
No.41は、B量が少なすぎる例であり、浸炭部品の低サイクル疲労強度を向上できなかった。
No.42は、Nを過剰に含有する例であり、浸炭時に結晶粒が粗大化した。
No.43〜53は、任意に添加する元素を、本発明で推奨する範囲を超えて添加した例である。
具体的には、No.43は、Moを過剰に含有する例であり、浸炭時に結晶粒が粗大化した。
No.44は、Cuを過剰に含有する例であり、浸炭時に結晶粒が粗大化した。
No.45は、Niを過剰に含有する例であり、浸炭時に結晶粒が粗大化した。
No.46は、Caを過剰に含有する例であり、浸炭部品の低サイクル疲労強度が低下した。
No.47は、Mgを過剰に含有する例であり、浸炭部品の低サイクル疲労強度が低下した。
No.48は、Zrを過剰に含有する例であり、浸炭部品の低サイクル疲労強度が低下した。
No.49は、Teを過剰に含有する例であり、浸炭部品の低サイクル疲労強度が低下した。
No.50は、REMを過剰に含有する例であり、浸炭部品の低サイクル疲労強度が低下した。
No.51は、Pbを過剰に含有する例であり、浸炭部品の低サイクル疲労強度が低下した。
No.52は、Biを過剰に含有する例であり、浸炭部品の低サイクル疲労強度が低下した。
No.53は、Sbを過剰に含有する例であり、浸炭部品の低サイクル疲労強度が低下した。
No.54〜58は、少なくとも基本成分が本発明で規定する要件を満足していない例であり、浸炭時に結晶粒が粗大化し、また低サイクル疲労強度を向上できなかった。
1 試験片
2 治具
3 荷重の方向を示す矢印
2 治具
3 荷重の方向を示す矢印
Claims (6)
- 質量%で、
C :0.15〜0.25%、
Si:0%超0.15%以下、
Mn:1.5〜2.0%、
P :0%超0.03%以下、
S :0%超0.02%以下、
Cr:0.9〜1.2%、
Al:0.06%超0.10%以下、
Ti:0.05〜0.10%、
Nb:0.004〜0.015%、
B :0.001〜0.005%、および
N :0.002〜0.008%を含有し、
残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする低サイクル疲労強度および結晶粒粗大化耐性に優れた浸炭用鋼材。 - 更に、質量%で、
Mo:0%超0.05%以下、
Cu:0%超0.2%以下、および
Ni:0%超0.20%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1に記載の浸炭用鋼材。 - 更に、質量%で、
V :0%超0.1%以下、および
Hf:0%超0.1%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の浸炭用鋼材。 - 更に、質量%で、
Ca:0%超0.005%以下、
Mg:0%超0.005%以下、
Zr:0%超0.15%以下、
Te:0%超0.10%以下、および
REM:0%超0.02%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の浸炭用鋼材。 - 更に、質量%で、
Pb:0%超0.10%以下、
Bi:0%超0.10%以下、および
Sb:0%超0.10%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の浸炭用鋼材。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の浸炭用鋼材を浸炭処理した部品であって、
芯部硬さが350〜500HVであり、
表面から深さ0.3mm位置までの領域における残留オーステナイトの平均値が20〜50体積%であることを特徴とする浸炭部品。
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