JP2016185528A - 水素製造用ペーパー状触媒構造体の製造方法 - Google Patents

水素製造用ペーパー状触媒構造体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 無機繊維を用いたペーパー状触媒構造体であって、その強度及び安全性を保ちつつ、優れた改質性能を備えた水素製造用ペーパー状触媒構造体を製造する方法を提供する。
【解決手段】 ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する層状複水酸化物を900℃〜1200℃で加熱処理して得た複合金属酸化物と無機繊維と無機バインダとを含むスラリーを湿式抄紙法によってシート状成形体とし、該シート状成形体を500℃以上850℃以下の温度で焼成してシート状多孔質成形体とした後、該シート状多孔質成形体を700℃以上850℃以下の温度で加熱還元することにより水素製造用ペーパー状触媒構造体を製造する。
【選択図】 なし

Description

本発明は炭化水素を含有するガスから水素を効率よく製造するためのペーパー状触媒構造体の製造方法に関するものである。
近年、メタンを主成分として含有するガスから水素を製造するための触媒として、従来のハニカム構造やペレット構造の触媒構造体とは異なる、シート状に成形したペーパー状触媒構造体が提案されている(特許文献1、非特許文献1)。
前記ペーパー状触媒構造体は湿式抄紙法により容易に得ることができる。さらにペーパー状触媒構造体の有している特有な繊維ネットワーク構造及び該繊維ネットワーク上に担持された金属触媒により、反応ガスとの反応を効率的に進行させることができ、触媒構造体の小型化も期待できると考えられている。
特許文献1ではメタンを主成分として含有するガスの水蒸気改質触媒として、耐熱性繊維を用い、ニッケル金属又はニッケル金属を含む酸化物を含ませたペーパー状触媒構造体を提案している。特許文献1では、ニッケル金属又はニッケル金属を含む酸化物と同時に添加される無機バインダ成分が、ペーパー状触媒構造体の作製時の焼成温度が1000℃より低い場合には触媒反応を妨げると記載されている。
また、予めペーパー状触媒担体を作製したのちに、金属塩水溶液にペーパー状触媒担体を浸漬した後、乾燥、焼成、還元することでペーパー状触媒構造体を作製する方法が提案されている(非特許文献1)。非特許文献1ではセラミックファイバーとアルミナゾルを用い湿式抄紙法によりシート状成形体を作製した後、500℃の焼成を行うことでペーパー状触媒担体を得、次に硝酸マグネシウム及び硝酸ニッケルの各水溶液に随時浸漬するか、又は硝酸マグネシウムと硝酸ニッケルの混合水溶液に浸漬した後、乾燥、焼成、還元することでペーパー状触媒構造体を得ている。該ペーパー状触媒構造体はメタンの水蒸気改質の触媒として良好な性能が得られている。非特許文献1に提案されている方法は、より低い温度での焼成によりペーパー状触媒構造体を作製でき、かつ触媒活性も良好なため非常に有用な手法である。
非特許文献2及び非特許文献3では層状複水酸化物であるマグネシウム及びアルミニウムを含むハイドロタルサイトを抄き込んだペーパー状触媒担体を作製したのちに、ニッケル塩水溶液にペーパー状触媒担体を浸漬し、乾燥、焼成、還元することでペーパー状触媒を作製する方法が提案されている。該ペーパー状触媒構造体では、ペーパー状触媒構造体中のマグネシウム及びアルミニウムを含む複合金属酸化物上に微細なニッケル粒子を生成・担持する事ができ、バイオガスの改質触媒として良好な性能が得られていることが報告されている。
以上のように耐熱性無機繊維を抄紙したシート中にニッケル金属又はニッケル金属を含む酸化物を分散したペーパー状触媒構造体が提案され、いずれも良好な改質触媒性能が得られている。
特開2011−092825号公報
Shin Miura, et.al., 「In situ synthesis ofNi/MgO catalysts on inorganic paper−like matrix for methane steam reforming」,Chemical Engineering Journal, Vol.229,2013,pp515−521 高田 将、他「メタンドライリフォーミングに対するハイドロタルサイト含有ペーパー触媒の改質活性」、第22回SOFC研究発表会 講演要旨集 YASUO KAKIHARA, et.al.,「Hydrotalcite−dispersed paper−structured catalyst for dry reforming of methane」,20th World Hydrogen Energy Conference 2014
前述したペーパー状触媒構造体に主に用いられる耐熱性無機繊維であるセラミックファイバーは、900℃以上に加熱焼成されると結晶質成分が増加してくる。そのため該セラミックファイバーで作製されたペーパー状触媒構造体は900℃以上で加熱した場合には脆くなってしまう。ペーパー状触媒構造体が脆くなってしまうとペーパー状触媒構造体の一部が破断する場合や、欠落し易くなる問題が生じる。そのため、ペーパー状触媒構造体の強度を向上させるために、ペーパー状触媒構造体の厚みを厚くして作製するか、抄き込む無機バインダやその他の無機粉末を増やす等の必要が出てきてしまう。
また、昨今、セラミックファイバーは人体に吸入された場合の健康被害の疑いが指摘されており、その代替品として生体溶解性繊維が検討されている。この生体溶解性繊維をペーパー状触媒構造体に用いる無機繊維とすることも可能である。しかし、生体溶解性繊維は900℃を超えて加熱焼成すると生体溶解性の低い結晶質の化合物が増加してしまい、本来期待される安全性が低下してしまう。
このように、セラミックファイバーや生体溶解性繊維で構成されるペーパー状触媒構造体に種々の問題が生じないようにするためには、ペーパー状触媒構造体の製造時にできるだけ低温下で熱処理を行う事が好ましい。
非特許文献2及び非特許文献3で報告されているマグネシウム及びアルミニウムを含むハイドロタルサイトを抄き込み、ニッケル塩水溶液中に浸漬することでハイドロタルサイト中のマグネシウム成分とニッケル成分を置換し、続いて800℃で加熱焼成及び還元処理を行い調製したペーパー状触媒構造体は、その製造工程において比較的低温で熱処理されており、炭化水素ガスの改質触媒として優れた改質性能を示している。しかしながら、本発明者が非特許文献2と非特許文献3で報告されている方法により作製したペーパー状触媒構造体を用い、メタンガスの水蒸気改質を行ったところ、長期に渡って改質試験を行った場合には改質性能が劣化し易い傾向にある事が分かった。
本発明者は以上の問題に誠意取り組み、ペーパー状触媒構造体を作製する課程において低温度で熱処理する事によりセラミックファイバーや生体溶解性繊維の結晶化を防ぐとともに、水蒸気改質によるメタンを主成分とする炭化水素ガスの改質触媒反応時においても触媒劣化が抑えられるペーパー状触媒構造体の製造方法を提供することを課題とした。
本発明者は、上記課題を解決すべく誠意研究を重ねた結果、下記の発明が目的に合致することを見出し、本発明に至った。
本発明は、ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する層状複水酸化物を900℃〜1200℃で加熱処理して得た複合金属酸化物と無機繊維と無機バインダとを含むスラリーを湿式抄紙法によってシート状成形体とし、該シート状成形体を500℃以上850℃以下の温度で焼成してシート状多孔質成形体とした後、該シート状多孔質成形体を700℃以上850℃以下の温度で加熱還元することを特徴とする水素製造用ペーパー状触媒構造体の製造方法である(本発明1)。
また、本発明は、前記層状複水酸化物がハイドロタルサイト様化合物である本発明1に記載の水素製造用ペーパー状触媒構造体の製造方法である(本発明2)。
また、本発明は、前記複合金属酸化物がスピネル構造を有する本発明1又は2に記載の水素製造用ペーパー状触媒構造体の製造方法である(本発明3)。
また、本発明は、前記無機繊維がアルミナ、シリカ、マグネシア、カルシアから選ばれる一種以上を含む繊維である本発明1〜3のいずれかに記載の水素製造用ペーパー状触媒構造体の製造方法である(本発明4)。
また、本発明は、前記無機繊維が生体溶解性繊維である本発明1〜4のいずれかに記載の水素製造用ペーパー状触媒構造体の製造方法である(本発明5)。
また、本発明は、前記無機バインダがシリカ、アルミナ、ジルコニア、安定化ジルコニア、セリアから選ばれる一種以上からなる本発明1〜5のいずれかに記載の水素製造用ペーパー状触媒構造体の製造方法である(本発明6)。
また、本発明は、本発明1〜6のいずれかに記載の方法で製造された水素製造用ペーパー状触媒構造体を用いて炭化水素を分解することを特徴とする水素の製造方法である(本発明7)。
また、本発明は、本発明1〜6のいずれかに記載の方法で製造された水素製造用ペーパー状触媒構造体を用いることを特徴とする燃料電池システムである(本発明8)。
本発明に係るペーパー状触媒構造体の製造方法によれば、優れた触媒性能を持ちながら、ペーパー状触媒構造体を構成する無機繊維の結晶性が低い状態を保ったペーパー状触媒構造体を製造することができる。また、本発明の方法で製造されたペーパー状触媒構造体は、水蒸気を用いた改質反応においてもマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物の構造変化が抑えられるため、改質時の還元雰囲気下において複合金属酸化物からの新しいニッケル微粒子の還元析出が阻害されず、優れた触媒性能を長時間にわたって発揮することができる。
改質性評価装置
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明に係るペーパー状触媒構造体の製造方法は、ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する層状複水酸化物を900℃〜1200℃で加熱処理して得た複合金属酸化物と無機繊維と無機バインダとを含むスラリーを湿式抄紙法によってシート状成形体とし、該シート状成形体を500℃以上850℃以下の温度で焼成してシート状多孔質成形体とした後、該シート状多孔質成形体を700℃以上850℃以下の温度で加熱還元することを特徴とする。
無機繊維としては、ペーパー状触媒構造体としての使用条件での熱的安定性、化学的安定性が高い無機物からなる繊維体を用いる事ができ、特に低結晶性の耐熱性無機繊維が好ましい。
無機繊維は、アルミナ、シリカ、マグネシア、カルシアから選ばれる一種類以上を含む繊維であることが好ましく、特に結晶性の低い無機繊維であることが好ましい。例えば、アルミナとシリカで構成されるリフラクトリーセラミックファイバーや、シリカとマグネシアとカルシアを成分とする生体溶解性繊維等が挙げられる。無機繊維は一種類で使用しても複数を混合して使用しても良い。また、前記の無機繊維のほか、ジルコニア繊維又はセリア繊維を含んでいてもよい。
リフラクトリーセラミックファイバーとしては、例えば、イビデン株式会社製IBIWOOL(登録商標)、イソライト工業株式会社製イソウール(登録商標)、ニチアス株式会社製ファインフレックス(登録商標)等である事が好ましい。
生体溶解性繊維としては、イビデン株式会社製IBIWOOL(登録商標)−E、ニチアス株式会社製ファインフレックス(登録商標)−E、新日本サーマルセラミックス株式会社製スーパーウール(登録商標)等であることが好ましい。
無機繊維の長さ及び太さは、ペーパー状触媒構造体を形成できる範囲であればよく、本発明のペーパー状触媒構造体の用途等を考慮して適宜決定される。通常、平均全長30μm〜6mm、好ましくは50μm〜3mm、平均直径が1〜20μm、好ましくは4〜10μmで、最低繊維径が3.0μm以上であることが作業環境上好ましい。なお、耐熱性繊維の長さ及び太さは走査型電子顕微鏡(SEM)で確認する事ができる。
無機バインダとしては、本発明のペーパー状触媒構造体の使用条件において十分な化学的安定性を有し、且つ、耐熱性無機繊維を十分な機械的強度に結着できるものであれば、従来公知の無機バインダを使用できる。無機バインダは、シリカ、アルミナ、ジルコニア、安定化ジルコニア、セリアより選ばれる一種以上からなることが好ましく、無機バインダ原料としては、例えば市販されているアルミナゾル(日産化学工業株式会社製等)、ジルコニアゾル(日産化学工業株式会社製、第一稀元素化学工業株式会社製等)、安定化ジルコニアゾル(日産化学工業株式会社製等)あるいはセリアゾル(第一稀元素化学工業株式会社製等)を使用する事ができる。
本発明におけるニッケルとマグネシウムとアルミニウムをと含有する複合金属酸化物はその前駆体に相当するニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する層状複水酸化物を900℃〜1200℃で加熱処理して調製することができる。層状複水酸化物としてはハイドロタルサイト様化合物を用いるのが好ましい。該層状複水酸化物は900℃〜1200℃の温度範囲で加熱処理される事により複合金属酸化物中にスピネル構造が生成される。スピネル構造の存在は、X線回折によって確認することができる。
加熱後のニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物の粉末に含まれるマグネシウムとアルミニウムの比率はMg:Alが4.0:1〜1.5:1であることが好ましく、2.5:1〜1.6:1であることがより好ましい。
ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する層状複水酸化物は既知の手法で調製することができる。
ペーパー状触媒構造体に含まれるニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物には、加熱還元により平均粒子径が1〜20nmであるニッケル金属微粒子が担持される。複合金属酸化物に担持されるニッケル金属微粒子の平均粒子径を1nm未満とする事は困難である。複合金属酸化物に担持されるニッケル金属微粒子の平均粒子径が20nmを超えると触媒の初期活性が低下すると同時に耐コーキング性が悪くなる。ニッケル金属微粒子の平均粒子径は好ましくは1〜18nm、より好ましくは2〜15nmである。
ニッケル金属微粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、マグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物上に存在するニッケル金属粒子から計測する事ができる。
ペーパー状触媒構造体に含まれるニッケルの量はペーパー状触媒構造体の用途、原料ガス、改質反応時の条件(反応ガスの流量、温度)等に応じて適宜選択されるが、通常、ペーパー状触媒構造体全体を100重量%とした時に、ニッケル元素換算で1〜10重量%の範囲である。
ペーパー状触媒構造体に含まれるニッケルの量はニッケルの含有量が予め分かっているニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物の粉末を作製し、ペーパー状触媒構造体へ抄き込む量を調整することで任意に制御する事ができる。
さらに、本発明のニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物はニッケルの他にルテニウム、ロジウム、白金などの貴金属を共存させても良い。金属ニッケルに対して金属換算で0.025〜10wt%が好ましい。
本発明者は炭化水素ガスの改質反応時の触媒劣化の傾向について検討したところ、湿式抄紙時に抄き込むニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物の前駆体である層状複水酸化物の加熱処理温度が低い場合には、加熱温度が高い場合に比べて触媒性能が劣化し易い事を見出した。この原因として、加熱温度が低い場合にはニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物が雰囲気中の水分を吸収してしまい、前駆体である層状複水酸化物に戻ってしまう事が考えられた。ニッケルを含有する化合物が層状複水酸化物になってしまうと、改質反応時の還元雰囲気下において化合物内部からの未還元ニッケル原子の表面への還元析出が起こりにくくなってしまう。結果、新たな触媒反応点が表面上に生成しないため長期試験において触媒性能の劣化が進んでしまったと考えられた。一方、前駆体の加熱温度が高い場合には複合金属酸化物の内部にスピネル構造が生成するとともに前駆体に戻りにくい構造となり、改質反応時に化合物内部からの未還元ニッケル原子の表面への還元析出が起こり易く、結果、長期試験において劣化し難くなると推測した。この影響は特に水蒸気改質反応やガス中の水分が多いバイオガスを用いた改質反応において顕著である。
本発明におけるペーパー状触媒構造体は、BET比表面積が5m/g以上であることが好ましい。BET比表面積が5m/gより小さいとメタンを主成分とする炭化水素ガスとニッケル微粒子との接触面積が小さくなり、結果、改質性能が悪くなるため好ましくない。BET比表面積は6m/g以上であることが好ましく、さらにより好ましくは9m/g以上である。
次に市販の抄紙装置を用いた場合のシート状成形体の作製について一例を記述するが、製造方法を限定するものではない。各製紙装置に合わせて量や材料あるいは添加手順を最適化して選ぶ事ができる。
まず、耐熱性無機繊維、無機バインダ並びに予め900℃〜1200℃で加熱処理されたニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物の粉末、及び必要に応じて他の成分(気孔調製剤、分散剤、pH調製剤他)を溶媒に添加し、均一になるまで分散させたスラリーを調製する。
前記スラリーを均一に分散させる目的のためにアルコール類、水溶性のケトン類を加えても良い。
ペーパー状触媒構造体中に含まれる加熱処理されたニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物の粉末を均一に抄き込む事を目的に、予めニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物の粉末を機械的に撹拌し、分散処理したスラリーを用いても良い。
スラリーには、パルプを加えることが好ましい。パルプは湿潤状態の強度を確保し、ろ過用メッシュからの焼成前のシート状成形体の採取を容易にする。また、パルプはシート状成形体の焼成中に焼失し、空隙(拡散パス)を生成するため、ペーパー状触媒構造体内部の気孔調整ができる。パルプの量は耐熱性無機繊維100重量部に対し1重量部〜50重量部、好ましくは1重量部〜20重量部である。パルプは予め叩解処理したものを用いることが好ましい。
前記スラリーにイオン性ポリマーなどの凝集剤を添加してフロックを生成し、そのフロックに水力学的せん断力を加えて崩壊させると同時に200メッシュの抄き網を用いて脱水・抄造し、均質なシート状の複合体を得る。得られたシート状複合体を乾燥し、熱処理及び加圧処理を行うことにより、均一な厚さのシート状成形体を得る。
続いて、シート状成形体を500℃以上850℃以下の温度範囲で焼成する。焼成時の焼成雰囲気は、空気や不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス等)等が用いられるが、通常は空気が用いられる。焼成によりシート状成形体に含まれる有機物成分を除去するとともに、無機バインダが溶融あるいは焼結する温度まで加熱することで、ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物を結着させるとともに耐熱性無機繊維同士の結着を行う。焼成温度が850℃より高くなると耐熱性無機繊維の結晶質成分が増加してしまい好ましくない。焼成温度が500℃より低いと無機バインダによる材料同士の結着力が弱くなり、シート状成形体の機械的強度が低下し好ましくない。
シート状成形体中に抄き込まれたマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物上にニッケル微粒子を析出させるために、ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物が抄き込まれたシート状成形体を700℃以上850℃以下で加熱還元する。還元時の雰囲気は、水素を含んだガスなど還元雰囲気であれば特に限定されない。前記シート状成形体を加熱還元することにより粒子径が20nm以下であるニッケル微粒子が担持されたマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物を含むペーパー状触媒構造体を得る事ができる。加熱還元温度が850℃より高いと耐熱性無機繊維の結晶質成分が増加してしまい好ましくない。加熱還元温度が700℃より低い場合にはニッケル成分が十分還元されず触媒としての良好な特性が得られないので好ましくない。加熱還元温度は好ましくは750℃〜830℃である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物の平均粒子径は走査型電子顕微鏡(SEM)(HITACHI製 S−4800)で確認した。
ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物の結晶構造はX線解析装置(ブルカー・エイエックスエス製 NEW D8 ADVANCE)を用い、CuのKαの線源を用いて測定・評価した。
シート状成形体に抄きこまれるマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物に含まれるニッケル、マグネシウム及びアルミニウムの量は、ICPプラズマ発光分析装置(Thermal Fisher製 iCAP−6500DUO)を用いて測定した。
ペーパー状触媒構造体に含まれるニッケルの量は、ペーパー状触媒を乳鉢にて粉砕し、ICPプラズマ発光分析装置(Thermal Fisher製 iCAP−6500DUO)を用いて測定した。
ペーパー状触媒構造体に含まれるマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物上に析出したニッケル微粒子の平均粒子径は走査型電子顕微鏡(SEM)(HITACHI製 S−4800)で観察して測定した。
ペーパー状触媒構造体のBET比表面積は「モノソープMS−21(カンタクロム株式会社製)」を用いて窒素吸着によるBET法により測定した。
以下の実施例において、使用した原料はそれぞれ次のとおりである。
1.無機繊維
・非晶質シリカ−マグネシア−カルシアを主成分とする生体溶解性繊維 IBIWOOL(登録商標)−E イビデン株式会社製
2.無機バインダ
・アルミナゾル(日産化学工業株式会社製)
・ジルコニアゾル(第一稀元素化学工業株式会社製)
3.イオン性ポリマー
いずれのポリマーも0.2wt%の水溶液に調整して用いた。
・PDADMAC(Polydiallyldimethylammonium chloride, Sigma−Aldrich,Ltd.製)
カチオン性
分子量:約3×10
電荷密度:5.5 meq/g
・ポリアクリルアミド(富士化水工業株式会社製)
アニオン性
分子量:約1.2×107
電荷密度:0.83〜1.36 meq/g
4.ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物
ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有するハイドロタルサイト様の層状複水酸化物を調製し、それぞれ以下のとおりの加熱をしてニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物を得た。複合金属酸化物A及びBにおいてはX線回折によってスピネル構造が生成していることが確認された。
・ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物A
平均粒子径:100nm
Ni含有量:21%
Mg/Al比:3
1000℃加熱処理(3時間)
・ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物B
平均粒子径:100nm
Ni含有量:16%
Mg/Al比:2.7
1000℃加熱処理(3時間)
・ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物C
平均粒子径:100nm
Ni含有量:16%
Mg/Al比:2.7
600℃加熱処理(3時間)
実施例1
無機繊維としてIBIWOOL−E(5g)と600mLの水をミキサーで約3分混合した。次いで、3Lのプラスチックカップにマグネチックスターラーチップ、ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物Aを1gと先の混合処理したIBIWOOL−Eのスラリーを投入し、全体で1.5Lの体積になるよう水を加えて約30秒撹拌した。スターラーで攪拌しながらカチオン性ポリマーであるPDADMACの水溶液(0.2wt%)を15.0g投入し、約3分間撹拌した。
次いで、焼成後に無機バインダとして機能するアルミナゾル(固形分濃度20wt%)を2.5g加え約30秒間撹拌した。次にアニオン性ポリマーであるポリアクリルアミドポリマーの水溶液(0.2wt%)を32.5g加え約3分間撹拌した。なお、アニオン性ポリマーを投入した瞬間に、無機繊維等が凝集して玉状になる。
次に、叩解処理したパルプ(10wt%)2.5gを解繊してスラリーに加え、約3分攪拌した。
得られたスラリーを市販の抄紙装置(熊谷理機工業株式会社製)に注ぎ込み、直径160mmの円形のろ過用金属網(200メッシュ)に懸濁混合物を脱水により堆積させた。形成された堆積物をメッシュから剥がし取り、350kPaで3分プレスし、105℃で2時間乾燥させてシート状成形体とし、続いて、大気雰囲気中800℃で5時間の焼成をシート状多孔質成形体を得た。
ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物からニッケル金属微粒子を還元析出させるために、得られたシート状成形体を20Vol% H/N中、800℃において5時間還元処理を行い、厚さ約1mmのペーパー状触媒構造体を得た。
実施例2
無機繊維としてIBIWOOL−E(5g)と600mLの水をミキサーで約3分混合した。次いで、3Lのプラスチックカップにマグネチックスターラーチップ、ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物Aを1gと先の混合処理したIBIWOOL−Eのスラリーを投入し、全体で1.5Lの体積になるよう水を加えて約30秒撹拌した。スターラーで攪拌しながらカチオン性ポリマーであるPDADMACの水溶液(0.2wt%)を15.0g投入し、約3分間撹拌した。
次いで、焼成後に無機バインダとして機能するジルコニアゾル(固形分濃度20wt%)を2.5g加え約30秒間撹拌した。次にアニオン性ポリマーであるポリアクリルアミドポリマーの水溶液(0.2wt%)を16.25g加え約3分間撹拌した。なお、アニオン性ポリマーを投入した瞬間に、無機繊維等が凝集して玉状になる。
次に、叩解処理したパルプ(10wt%)2.5gを解繊してスラリーに加え、約3分攪拌した。
得られたスラリーを市販の抄紙装置(熊谷理機工業株式会社製)に注ぎ込み、直径160mmの円形のろ過用金属網(200メッシュ)に懸濁混合物を脱水により堆積させた。形成された堆積物をメッシュから剥がし取り、350kPaで3分プレスし、105℃で2時間乾燥させてシート状成形体とし、続いて、大気雰囲気中800℃で5時間の焼成を行い、シート状多孔質成形体を得た。
ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物からニッケル金属微粒子を還元析出させるために、得られたシート状成形体を20Vol% H/N中、800℃において5時間還元処理を行い、厚さ約1mmのペーパー状触媒構造体を得た。
実施例3
無機繊維としてIBIWOOL−E(5g)と600mLの水をミキサーで約3分混合した。次いで、3Lのプラスチックカップにマグネチックスターラーチップ、ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物Bを1gと先の混合処理したIBIWOOL−Eのスラリーを投入し、全体で1.5Lの体積になるよう水を加えて約30秒撹拌した。スターラーで攪拌しながらカチオン性ポリマーであるPDADMACの水溶液(0.2wt%)を15.0g投入し、約3分間撹拌した。
次いで、焼成後に無機バインダとして機能するアルミナゾル(固形分濃度20wt%)を2.5g加え約30秒間撹拌した。次にアニオン性ポリマーであるポリアクリルアミドポリマーの水溶液(0.2wt%)を32.5g加え約3分間撹拌した。なお、アニオン性ポリマーを投入した瞬間に、無機繊維等が凝集して玉状になる。
次に、叩解処理したパルプ(10wt%)2.5gを解繊してスラリーに加え、約3分攪拌した。
得られたスラリーを市販の抄紙装置(熊谷理機工業株式会社製)に注ぎ込み、直径160mmの円形のろ過用金属網(200メッシュ)に懸濁混合物を脱水により堆積させた。形成された堆積物をメッシュから剥がし取り、350kPaで3分プレスし、105℃で2時間乾燥させてシート状成形体とし、続いて、大気雰囲気中800℃で5時間の焼成を行い、シート状多孔質成形体を得た。
ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物からニッケル金属微粒子を還元析出させるために、得られたシート状成形体を20Vol% H/N中、800℃において5時間還元処理を行い、厚さ約1mmのペーパー状触媒構造体を得た。
比較例1
無機繊維としてIBIWOOL−E(5g)と600mLの水をミキサーで約3分混合した。次いで、3Lのプラスチックカップにマグネチックスターラーチップ、ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物Cを1gと先の混合処理したIBIWOOL−Eのスラリーを投入し、全体で1.5Lの体積になるよう水を加えて約30秒撹拌した。スターラーで攪拌しながらカチオン性ポリマーであるPDADMACの水溶液(0.2wt%)を15.0g投入し、約3分間撹拌した。
次いで、焼成後に無機バインダとして機能するアルミナゾル(固形分濃度20wt%)を2.5g加え約30秒間撹拌した。次にアニオン性ポリマーであるポリアクリルアミドポリマーの水溶液(0.2wt%)を32.5g加え約3分間撹拌した。なお、アニオン性ポリマーを投入した瞬間に、無機繊維等が凝集して玉状になる。
次に、叩解処理したパルプ(10wt%)2.5gを解繊してスラリーに加え、約3分攪拌した。
得られたスラリーを市販の抄紙装置(熊谷理機工業株式会社製)に注ぎ込み、直径160mmの円形のろ過用金属網(200メッシュ)に懸濁混合物を脱水により堆積させた。形成された堆積物をメッシュから剥がし取り、350kPaで3分プレスし、105℃で2時間乾燥させてシート状成形体とし、続いて、大気雰囲気中800℃で5時間の焼成を行い、シート状多孔質成形体を得た。
ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する複合金属酸化物からニッケル金属微粒子を還元析出させるために、得られたシート状成形体を20Vol% H/N中、1000℃において5時間還元処理を行い、厚さ約1mmのペーパー状触媒構造体を得た。
改質試験
実施例1〜3及び比較例1で作製したペーパー状触媒構造体(表1)に対し、メタンガスと水蒸気を通過させ、その触媒性能の評価を行った。
ペーパー状触媒構造体(直径20mmの円に切断)を2枚重ね、直径20mmの円筒形の改質性評価装置(図2)に組み込んで、GHSV 5000h−1、S/C(Steam/Carbon)比を3に設定し、700℃の反応温度で行い、5時間後と48時間後のメタン転化率の値で性能を評価した(表2)。実施例1〜3では5時間後及び48時間後においても良好なメタン転化率が得られた。比較例1では5時間後に比べ48時間後はメタン転化率の低下が見られた。
Figure 2016185528
Figure 2016185528
本発明の製造方法によって得られたペーパー状触媒構造体は、長期にわたって改質性能を維持することができ、特に水蒸気改質など水分の多い改質反応系においても水素を効率よく製造できる触媒構造体である。
1 ペーパー状触媒構造体
2 反応管
3 加熱装置
GC ガスクロマトグラフ

Claims (8)

  1. ニッケルとマグネシウムとアルミニウムとを含有する層状複水酸化物を900℃〜1200℃で加熱処理して得た複合金属酸化物と無機繊維と無機バインダとを含むスラリーを湿式抄紙法によってシート状成形体とし、該シート状成形体を500℃以上850℃以下の温度で焼成してシート状多孔質成形体とした後、該シート状多孔質成形体を700℃以上850℃以下の温度で加熱還元することを特徴とする水素製造用ペーパー状触媒構造体の製造方法。
  2. 前記層状複水酸化物がハイドロタルサイト様化合物である請求項1に記載の水素製造用ペーパー状触媒構造体の製造方法。
  3. 前記複合金属酸化物がスピネル構造を有する請求項1又は2に記載の水素製造用ペーパー状触媒構造体の製造方法。
  4. 前記無機繊維がアルミナ、シリカ、マグネシア、カルシアから選ばれる一種以上を含む繊維である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素製造用ペーパー状触媒構造体の製造方法。
  5. 前記無機繊維が生体溶解性繊維である請求項1〜4のいずれか一項に記載の水素製造用ペーパー状触媒構造体の製造方法。
  6. 前記無機バインダがシリカ、アルミナ、ジルコニア、安定化ジルコニア、セリアから選ばれる一種以上からなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の水素製造用ペーパー状触媒構造体の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法で製造された水素製造用ペーパー状触媒構造体を用いて炭化水素を分解することを特徴とする水素の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法で製造された水素製造用ペーパー状触媒構造体を用いることを特徴とする燃料電池システム。
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