以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下において、自走式産業機械としてダンプトラックを適用しているが、ダンプトラックには限定されない。自走式産業機械としては油圧ショベルもあるが、油圧ショベルについては後述する。ダンプトラックとしてはリジットダンプとアーティキュレートダンプとがあるが、何れを適用してもよい。なお、以下において、「左」とは運転室から見た左側であり、「右」とは運転室から見た右側になる。
図1はダンプトラック1の左側面図を示しており、図2は平面図を示している。これらの図に示すように、ダンプトラック1は、運転室2とフレーム3とベッセル4と前輪5と後輪6と駆動用シリンダ7とリンク機構8とを備えて構成している。また、ダンプトラック1の前後左右に周辺撮影部としてのカメラ10(前方カメラ10F、後方カメラ10B、右方カメラ10R、左方カメラ10L)が設けられている。
前方カメラ10Fは前方、後方カメラ10Bは後方、右方カメラ10Rは右側方、左方カメラ10Lは左側方を視野とするカメラであり、斜め下方を撮影している。つまり、光軸方向が斜め下方になっている。なお、ダンプトラック1に備えられるカメラ10の個数は任意の数とすることができる。ただし、オペレータの視野の死角を生じる方向を撮影する後方カメラ10Bと右方カメラ10Rと左方カメラ10Lとを備えることが望ましい。また、アーティキュレートダンプの場合には、さらに多くのカメラを設けてもよい。
運転室2はオペレータが搭乗してダンプトラック1を操作するために設けられており、ダンプトラック1の左側に配置されているものが多い。また、各種の操作手段が運転室2に設けられている。フレーム3はダンプトラック1の枠組みを構成するものであり、フレーム3の前方には前輪5が設けられ、後方には後輪6が設けられている。ベッセル4は荷台であり、土砂や鉱物等を積載する。ベッセル4には駆動用シリンダ7およびリンク機構8が取り付けられており、傾動可能になっている。これにより、ベッセル4に積載された土砂等を排土することが可能になっている。
図3は、運転室2の一例を示している。運転室2には、走行方向を操作するハンドル11とダンプトラック1の計器類等を表示するコンソール12とピラー13とが設けられている。そして、ピラー13にモニタ14が取り付けられている。モニタ14は画面部15と入力部16とを備えて構成している。画面部15は所定の情報を表示する画面であり、入力部16は画面部15の表示内容を適宜に操作するために設けている。なお、モニタ14の位置は運転室2の内部であれば任意の位置に設けてもよい。また、入力部16を省略して、画面部15をタッチセンサパネルとしてもよい。
図4は、モニタ14に接続される表示コントローラ17および表示コントローラ17に接続される車体コントローラ18を示している。同図に示すように、表示コントローラ17は画像補正部21と視点変換部22と下部画像生成部23とシンボル画像保持部24と重畳処理部25と画像合成部26と表示画像生成部27とを備えている。表示コントローラ17の各部はソフトウェアで実現することが可能であり、CPUにより各部の機能が行われるようにすることもできる。
画像補正部21は、前方カメラ10F、後方カメラ10B、右方カメラ10R、左方カメラ10Lが撮影している画像を入力している。そして、入力した画像に対して、カメラ光学系パラメータ等に基づいて、収差補正やコントラスト補正、色調補正等の各種の画像補正を行う。これにより、入力した画像の画質を向上させる。画像補正部21が入力した補正した画像は画像データとして視点変換部22に出力される。
視点変換部22は、画像補正部21から入力した画像データに対して視点変換処理を行って、俯瞰画像(仮想視点画像)を生成する。前述したように、各カメラ10は斜め下方を光軸方向としており、これを上方からの仮想的な視点に変換する。図5に示すように、カメラ10(前方カメラ10F、後方カメラ10B、右方カメラ10R、左方カメラ10L)の対物レンズの光軸Aは、地表Lに対して所定角度θを有しており、これにより、カメラ10の光軸は斜め下方になっている。視点変換部22では、光軸方向が垂直方向となるような仮想カメラ10Vを高さHに仮想的に設定し、この仮想カメラ10Vが地表Lを見下ろした画像データに座標変換する。このように上方からの視点に変換した画像は仮想的な平面画像(俯瞰画像)となる。
図4に示すように、視点変換部22が視点変換処理を行った俯瞰画像は、下部画像生成部23および画像合成部26に出力される。下部画像生成部23は、カメラ10にダンプトラック1の下部が視野に含まれている場合には、俯瞰画像のうちダンプトラック1の下部の部分を取得して、これを下部画像とする。画像データが俯瞰画像であるため、下部画像も俯瞰画像になっている。なお、全てのカメラ10にダンプトラック1の下部が視野に含まれているとは限らない。従って、ダンプトラック1の下部が視野に含まれていないカメラ10についての下部画像は生成されない。本実施形態では、前方カメラ10Fの視野にはダンプトラック1の下部は含まれていないものとし、従って前方カメラ10Fによる下部画像は生成されない。
シンボル画像保持部24は、シンボル画像を保持する。シンボル画像はダンプトラック1をシンボル(キャラクタ)として画面部15で表示するときの画像である。従って、シンボル画像はダンプトラック1の形状を再現した画像になる。このときの再現性が高ければ、オペレータはダンプトラック1の形状を正確に認識することができる。ただし、忠実にダンプトラック1の形状を再現した画像でなくてもよい。
重畳処理部25は、下部画像生成部23から下部画像を入力し、シンボル画像保持部24からシンボル画像を入力する。そして、重畳処理部25は、シンボル画像のうち下部画像に対応する領域を透過領域として所定の透過率で透過させ、この透過領域に下部画像を重畳する画像処理を行う。この画像処理はスーパーインポーズ処理(画像の重ね合わせ処理)となり、透過率が100%でなければ、シンボル画像と下部画像とが同じ位置に二重に表示される。透過率は任意にコントロールすることができる。透過率が100%の場合は全透過になり、0%の場合は非透過になり、それ以外は半透過(或いは不完全透過)になる。
画像合成部26は、視点変換部22が視点変換した俯瞰画像を入力し、重畳処理部25が処理を行ったシンボル画像を入力する。そして、シンボル画像を中央にして、その周辺に俯瞰画像を配置して合成を行う。つまり、前方カメラ10Fからは前方俯瞰画像が生成され、後方カメラ10Bからは後方俯瞰画像が生成され、右方カメラ10Rからは右方俯瞰画像が生成され、左方カメラ10Lからは左方俯瞰画像が生成される。そして、シンボル画像を中心にして、前側に前方俯瞰画像を、後側に後方俯瞰画像を、右側に右方俯瞰画像を、左側に左方俯瞰画像を配置する合成を行う。
表示画像生成部27は、画像合成部26が合成した画像を1つの表示画像として生成する。この表示画像はモニタ14に出力される。モニタ14の画面部15には表示画像が表示される。運転室2に搭乗したオペレータは、画面部15に表示された表示画像を視認することができる。
図4に示すように、表示コントローラ17は車体コントローラ18と接続されている。車体コントローラ18にはダンプトラック1をコントロールするための各種の操作手段が接続されている。そのうちの1つがシフトレバー28である。シフトレバー28はオペレータがダンプトラック1の走行を操作する走行操作部であり、前進位置、中立位置、後進位置の3つの位置に変位する。シフトレバー28が前進位置に位置しているときには、ダンプトラック1は前進し、後進位置に位置しているときにはダンプトラック1は後進する。また、中立位置に位置しているときにはダンプトラック1は停止する。シフトレバー28からは何れの位置(前進位置、中立位置、後進位置)にあるかのシフトレバー位置情報が車体コントローラ18に入力される。そして、シフトレバー位置情報は車体情報として表示コントローラ17に出力される。
以上の構成を用いて、モニタ14の画面部15に表示される表示画像を表示コントローラ17が作成する。図6は表示画像を説明するための一例を示している。同図に示すように、画面部15は複数の領域に分割されており、ここでは5つの領域に分割されている。画面部15の中央の領域にはシンボル画像31が表示される。このシンボル画像31は、前述したように、ダンプトラック1の形状を再現したシンボル(キャラクタ)である。
また、シンボル画像31を中心として放射状に前後左右に分割した領域が設けられる。シンボル画像31の前方の領域には前方俯瞰画像32Fが表示され、後方の領域には後方俯瞰画像32Bが表示され、右方の領域には右方俯瞰画像32Rが表示され、左方の領域には左方俯瞰画像32Lが表示される。前方俯瞰画像32Fと後方俯瞰画像32Bと右方俯瞰画像32Rと左方俯瞰画像32Lとを総称して俯瞰画像32とする。
従って、少なくとも各俯瞰画像32を表示するために、各カメラ10が撮影を行っていなければならない。このために、オペレータはエンジンを始動させる等して、これにより各カメラ10が撮影を開始する。前述したように、各カメラ10は斜め下方を撮影しており、前方カメラ10Fは前方の斜め下方、後方カメラ10Bは後方の斜め下方、右方カメラ10Rは右側方の斜め下方、左方カメラ10Lは左側方の斜め下方の映像を撮影している。
そして、各カメラ10は撮影した映像を画像データとして表示コントローラ17に出力(転送)する。各カメラ10は所定の撮影周期で撮影を行っており、撮影周期ごとに画像データが転送される。これにより、画面部15には動画を表示することができる。なお、静止画を表示するようにしてもよい。
図4に示したように、画像補正部21は各カメラ10から出力される画像データに対して所定の補正処理を行う。これにより、画像データの画質が向上する。補正処理が行われた画像データは視点変換部22で視点変換される。前方カメラ10Fが撮影した画像データにより前方俯瞰画像32Fが生成され、後方カメラ10Bが撮影した画像データにより後方俯瞰画像32Bが生成され、右方カメラ10Rが撮影した画像データにより右方俯瞰画像32Rが生成され、左方カメラ10Lが撮影した画像データにより左方俯瞰画像32Lが生成される。生成された各俯瞰画像32は画像合成部26に出力される。
ところで、シンボル画像31を中心に各俯瞰画像32を表示することで、図6のように、ダンプトラック1を上方から見下ろした画像を画面部15に表示することができる。これは、所謂、俯瞰画像表示である。このような俯瞰画像表示を行うことで、ダンプトラック1の周辺の状況を良好にオペレータが認識することができる。例えば、図6に示すように、サービスカーが障害物S1として接近している場合には、俯瞰画像表示を行うことで、オペレータはダンプトラック1と障害物S1との間の距離感を直感的に認識することができる。
例えば、俯瞰画像表示は、ダンプトラック1を発進させるときに、周辺に何かしらの障害物が存在しているか否かを確認するときに有効である。特に、オペレータから死角となる方向についても、障害物が近接しているか否かを確認することができるため、有効である。従って、各俯瞰画像32は比較的ダンプトラック1の近距離を表示範囲としている。つまり、図5で説明した各カメラ10の光軸と地表Lとの間の角度θは比較的大きく設定している。これにより、図6のような俯瞰画像表示を行うことにより、ダンプトラック1に近接した周辺の状況を良好に表示することができる。
ここで、図1に示したように、後方カメラ10Bはベッセル4の下部位置に取り付けられている。そして、後方カメラ10Bは、斜め下方を光軸としているため、ダンプトラック1の後方を撮影しているが、ダンプトラック1(ベッセル4)の下部も視野に含まれる。特に、前述したように、後方カメラ10Bの光軸と地表Lとの角度θが比較的大きい場合や、後方カメラ10Bの画角が広角の場合には、ダンプトラック1の下部の広範な領域が視野に含まれる。下部領域は視点変換処理を行った俯瞰画像であり、下部画像生成部23において広範な下部画像が生成される。
同様に、右方カメラ10Rおよび左方カメラ10Lは運転室2の後方位置に取り付けられており、前輪5の上部位置から後方に偏在した位置となっている。右方カメラ10Rおよび左方カメラ10Lは、左右の側方の視野を撮影しているが、後方カメラ10Bの場合と同様に、ダンプトラック1の下部が視野に含まれることがある。特に、前述した角度θが大きく、右方カメラ10Rおよび左方カメラ10Lの画角が広角の場合には、右方カメラ10Rおよび左方カメラ10Lの視野にダンプトラック1の下部が含まれる。特に、前輪5と後輪6の間の領域が視野に含まれる。
従って、後方カメラ10B、右方カメラ10Rおよび左方カメラ10Lの視野に含まれるダンプトラック1の下部画像をモニタ14の画面部15に表示することは可能である。そこで、本実施形態では、下部画像生成部23は視点変換部22から各俯瞰画像32を取得する。ただし、図6の例では、前方俯瞰画像32Fは取得されない。
下部画像生成部23は、後方俯瞰画像32B、右方俯瞰画像32R、左方俯瞰画像32Lのうち、ダンプトラック1の下部を表示する部分を下部画像として生成する。従って、後方の下部画像(後方下部画像)と右方の下部画像(右方下部画像)と左方の下部画像(左方下部画像)とが生成される。
シンボル画像保持部24は、図6に示すように、ダンプトラック1の形状を再現したシンボル画像31を保持している。同図の例では、シンボル画像31は前輪5や後輪6等が表示されており、また各カメラ10の取り付け位置も表示されている。シンボル画像保持部24は保持しているシンボル画像31を重畳処理部25に出力する。
重畳処理部25はシンボル画像31のうち、下部画像に対応する領域を透過領域とする。ここでは、後方下部画像に対応する領域を後方透過領域33B、右方下部画像に対応する領域を右方透過領域33R、左方下部画像に対応する領域を左方透過領域33Lとする。図6において、各透過領域をハッチングで示している。なお、後方透過領域33Bと右方透過領域33Rと左方透過領域33Lとを総称して透過領域33とする。
各カメラ10の取り付け位置や画角、光軸方向等は予め設定されているものであり、シンボル画像31のうち下部画像に対応する各透過領域33は予め認識されている。従って、シンボル画像31の中で各透過領域の位置は定まっている。そして、前述した後方下部画像(34Bとする)と後方透過領域33Bとは一致しており、右方下部画像(34Rとする)と右方透過領域33Rとは一致しており、左方下部画像(34Lとする)と左方透過領域33Lとは一致している。なお、後方下部画像34Bと右方下部画像34Rと左方下部画像34Lとを総称して下部画像34とする。
従って、重畳処理部25は、後方透過領域33B、右方透過領域33R、左方透過領域33Lを所定の透過率で透過させて、後方下部画像34B、右方下部画像34R、左方下部画像34Lを重畳(スーパーインポーズ)する。図7は、その一例を示している。同図では、後方下部画像34Bに障害物S2が映し出されている。オペレータは、画面部15の後方下部画像34Bを視認することで、ダンプトラック1の下部、この場合はベッセル4の下部に障害物S2が存在することを認識することができる。これにより、オペレータは、シフトレバー28を操作して、ダンプトラック1を後進すると、後輪6と障害物S2とが干渉することを認識することができる。これにより、シフトレバー28を後進位置に変位させることが規制されることをオペレータは認識できる。
前述したように、各カメラ10(後方カメラ10B、右方カメラ10R、左方カメラ10L)が撮影した映像を用いて視点変換処理をすることで、俯瞰画像表示を行う。これにより、ダンプトラック1の周辺の状況を一見して認識することができる。俯瞰画像表示は、仮想的に視点を上方に設定したときに、地表Lを見下ろす画像になっている。従って、本来であればベッセル4や運転室2等の構造物により、俯瞰画像表示では、ダンプトラック1の下部の画像は表示されない。
しかし、前述した各カメラ10の視野にはダンプトラック1の下部が含まれていることがある。その場合には、下部画像生成部23が下部画像を生成して、重畳処理部25がシンボル画像31を透過させて下部画像を合成することで、シンボル画像31の中にダンプトラック1の下部の画像の情報を持たせることができる。これにより、オペレータはダンプトラック1の周辺の状況だけでなく、シンボル画像31の下部画像に基づいて、ダンプトラック1の下部の状況についても認識することができる。しかも、これは、もともと俯瞰画像表示をするための各カメラ10を利用しているため、格別に下部を撮影するための専用のカメラを設ける必要がない。
なお、図6や図7に示すように、シンボル画像31の運転室2を再現した位置に方向アイコン35を配置している。方向アイコン35はオペレータの向きを示している。ここでは、方向を三角形の矢印で示している。この方向アイコン35はダンプトラック1の進行方向によって変化させるようにしてもよい。表示コントローラ17には車体コントローラ18から進行方向の情報が車体情報として入力されているため、進行方向に応じて三角形を回転させるようにしてもよい。例えば、ダンプトラック1を後進させる場合には、図6の三角形の向きとは逆向きになる。
以上において、重畳処理部25は所定の透過率でシンボル画像31の各透過領域33を透過させているが、図7の例では、全透過でも非透過でもない透過率に設定していた(例えば、50%の透過率)。これにより、重畳処理部25が透過領域に下部画像を合成することで、ダンプトラック1の下部の状況を認識することができる。このとき、図7に示すように、シンボル画像31の透過領域に下部画像が重ね合わせられて表示されているため、シンボル画像31の外形も表示されている。
前述の透過率は予め設定されていてもよいし、適宜にコントロールしてもよい。例えば、モニタ14の入力部16を用いて透過率を任意の値に設定してもよい。透過率を低くすると、つまり0%(非透過)に近づけると、下部画像が不鮮明になる。従って、ダンプトラック1の下部の状況の視認性が低下する。これにより、ダンプトラック1の下部の障害物S2が明瞭に表示されなくなる。ただし、シンボル画像31の外形は鮮明に表示されている。
俯瞰画像表示においては、シンボル画像31を中心として各俯瞰画像を表示することで、ダンプトラック1とその周囲との間の距離感をオペレータに認識させることが重要である。例えば、図7では、ダンプトラック1と障害物S1(サービスカー)との距離感を正確に認識することができる。従って、シンボル画像31の外形を鮮明に表示することは重要である。前述の透過率を高くすると、シンボル画像31の透過領域の外形を認識することが難しくなり、オペレータはダンプトラック1と周囲との距離感を明瞭に把握することができなくなる。
一方、透過率を高くすると、つまり100%(全透過)に近づけると、下部画像が鮮明になる。これにより、ダンプトラック1の下部の状況の視認性が向上する。最も視認性が良好になるのは、透過率を100%に設定したとき、つまり全透過に設定したときである。図8は全透過の状態を示している。
図8の表示態様では、シンボル画像31のうち透過領域は完全に消失している(なお、説明のために、消失した透過領域の外形を仮想線で示しているが、実際にはこの仮想線は表示されていない)。これにより、ダンプトラック1とその周囲との間の距離感を認識することができなくなる。図8では、ダンプトラック1の透過領域に相当する部位と接触する程度に障害物S3が近接している。オペレータは障害物S3を認識することができるが、透過領域が消失しているため、接触する程度にまで障害物S3が近接しているとは認識することができない。このため、俯瞰画像表示の本来的な目的が達成されない。
そこで、透過率を100%(全透過)と設定しているときには、画像合成部26は、図9に示すように、透過領域の外周に外郭線(アウトライン)26を描画する。これにより、シンボル画像31の外形が明確に画面部15に表示される。従って、外郭線36によりダンプトラック1とその周囲との距離感を認識することができる。図9の例では、ダンプトラック1に障害物S3が接触する程度にまで近接していることが認識される。そして、透過領域は全透過になっているため、ベッセル4の下部に存在する障害物S2が画面上に鮮明に表示される。これにより、オペレータはダンプトラック1(ベッセル4)の下部に障害物S2が存在していることを一見して把握することができる。且つ、障害物S3がダンプトラック1に接触する程度にまで接近していることを認識することができる。
このとき、シンボル画像31の表示態様と同じ態様で外郭線36を描画することが望ましい。例えば、重畳処理部25は、シンボル画像31と同じ色や同じ線種等で外郭線36を描画する。これにより、外郭線36はシンボル画像31の一部、すなわちダンプトラック1の一部を示していることをオペレータに明瞭に認識させることができる。
次に、ダンプトラック1の走行操作による画像合成部26の処理について説明する。運転室2に搭乗したオペレータはシフトレバー28を操作して、ダンプトラック1を走行させる。前述したように、シフトレバー28は前進位置と中立位置と後進位置とがあり、シフトレバー28の位置によって、ダンプトラック1を走行させるか否か、および走行させる場合には走行方向が決定される。シフトレバー28がどの位置に入っているかの情報(シフトレバー位置情報)は車体コントローラ18に入力され、車体コントローラ18は車体情報としてシフトレバー位置情報を表示コントローラ17に出力する。
重畳処理部25はシフトレバー位置情報を入力する。これにより、重畳処理部25はダンプトラック1の走行方向を認識する。重畳処理部25はシフトレバー位置情報、つまりシフトレバー28の位置に応じて、各透過領域33を透過させるか否かの制御を行う。
つまり、シフトレバー28が前進位置に入ったときには、ダンプトラック1は前進する。このときには、後方透過領域33Bに障害物S2が存在していたとしても、つまりベッセル4の下部に障害物S2が存在していたとしても、ダンプトラック1と障害物S2とが干渉することはない。従って、ダンプトラック1を前進させるときには、後方透過領域33Bの状況を格別に画面部15に表示させる必要はない。このときには、図10に示すように、重畳処理部25は後方透過領域33Bを非透過(透過率が0%)とする。これにより、シンボル画像31の外形が明瞭に表示されるため、オペレータの視認性が向上する。また、重畳処理部25が後方透過領域33Bを透過させて、後方下部画像34Bを合成させる画像処理を行う必要もなくなる。
一方、シフトレバー28が後進位置に入ったときには、ダンプトラック1は後進する。この場合には、後方透過領域33Bに障害物S2が存在しているときには、ダンプトラック1と干渉する。従って、この場合は、重畳処理部25は、ダンプトラック1が後進することを認識することにより、後方透過領域33Bを透過させて、後方下部画像34Bを合成させる画像処理を行う。従って、図7のような画面が表示される。これにより、オペレータは、後進時に後方下部画像34Bを視認することにより、ダンプトラック1の下部後方の状況を認識することができる。
なお、ダンプトラック1が前進および後進するときには、重畳処理部25は、右方透過領域33Rを透過させて右方下部画像34Rを合成し、且つ左方透過領域33Lを透過させて左方下部画像34Lを合成する。図6乃至図10に示したように、ダンプトラック1が前進するとき、および後進するときの何れの場合でも、右方透過領域33Rおよび左方透過領域33Lは、前輪5または後輪6の何れかに干渉する。よって、シフトレバー28が前進位置または後進位置に入っているときには、右方下部画像34Rおよび左方下部画像34Lをシンボル画像31に表示する。
シフトレバー28は中立位置に入ることもある。この場合には、ダンプトラック1は停止している。従って、後方透過領域33B、右方透過領域33R、左方透過領域33Lの全てを非透過にする。これにより、重畳処理部25は透過処理を行うことなく、シンボル画像保持部24が保持しているシンボル画像31をそのまま画像合成部26に出力する。ダンプトラック1が停止しているときには、ダンプトラック1の下部に障害物S2が存在しているとしても、格別の問題はない。従って、この場合は、下部画像34を表示しなくても、安全性は確保される。ただし、オペレータにより、シフトレバー28は中立位置から前進位置または後進位置に操作されたときに、ダンプトラック1は前進または後進する。従って、ダンプトラック1が停止している状態でも、各透過領域33にそれぞれの下部画像34を表示するようにしてもよい。
従って、シフトレバー28の位置に応じて、重畳処理部25は、必要な下部画像34は表示するが、表示する必要のない下部画像34を表示させない。重畳処理部25は下部画像34を表示させるために透過処理を行う。これにより、シンボル画像31の外形の視認性が低下する。そこで、シフトレバー28の位置に応じて不要な下部画像34を表示させないことで、シンボル画像31をシンプルに表示することができ、オペレータの視認性を向上させることができる。
次に、ダンプトラック1の下部を撮影する専用のカメラを設けた場合について説明する。図11に示す下部カメラ10Uは周辺撮影部ではなく、ダンプトラック1の下部を撮影するための撮影部である。従って、下部カメラ10Uはダンプトラック1の下部の内側を視野としている。
ダンプトラック1の周辺の状況を俯瞰画像として表示するために、前方カメラ10F、後方カメラ10B、右方カメラ10R、左方カメラ10Lを設けている。従って、これらのカメラ10はダンプトラック1の外側を視野としている。このときに、各カメラ10にダンプトラック1の下部が視野の一部となるため、それを利用して、シンボル画像31を透過させて下部画像を表示していた。この点においては、後方カメラ10B、右方カメラ10Rおよび左方カメラ10Lは、周辺撮影部であると同時に、前述の撮影部としても機能する。
ダンプトラック1の下部の状況をシンボル画像31に表示するという点においては、シンボル画像31の周辺に俯瞰画像を表示しないことも可能である。つまり、図12に示すように、シンボル画像31のみを画面部15に表示することも可能である。前述したように、ダンプトラック1には下部カメラ10Uを設けており、ダンプトラック1の下部の内側を撮影している。下部カメラ10Uも斜め下方に光軸を向けており、画像補正部21で補正処理を行った後に、視点変換部22において俯瞰画像に変換する。
図12に示すように、下部カメラ10Uはダンプトラック1の下部を映すために設けた撮影部であり、ダンプトラック1の下部の広範な領域を視野としている。従って、同図に示すように、シンボル画像31の広範な領域が内側透過領域33Uとなり、重畳処理部25は、広範な内側透過領域33Uに対応した内側下部画像34Uを重畳する。図12の例では、ダンプトラック1の周囲の俯瞰画像表示を行うために、後方カメラ10B、右方カメラ10R、左方カメラ10Lを設けており、これにより、前述したように後方下部画像34B、右方下部画像34R、左方下部画像34Lが表示されている。これにより、同図に示すように、ダンプトラック1の下部の殆どがシンボル画像31に表示される。
従って、ダンプトラック1の下部を視野とする下部カメラ10Uを設けて、シンボル画像31に内側下部画像34Uを表示することで、ダンプトラック1の広範な領域の状況をオペレータに認識させることができる。図12の例では、後方カメラ10B、右方カメラ10R、左方カメラ10Lにより、後方下部画像34B、右方下部画像34R、左方下部画像34Lを表示するようにしているが、下部カメラ10Uのみを用いて、ダンプトラック1の下部画像をシンボル画像31に表示させるようにしてもよい。また、下部カメラは1台だけでなく、複数台を設けるようにしてもよい。
以上は、自走式産業機械としてダンプトラック1を適用した例について説明したが、自走式産業機械としては、図13に示す油圧ショベル40を適用することもできる。油圧ショベル40はクローラ式走行体を有する下部走行体41と、下部走行体41に対して旋回可能に連結した上部旋回体42とを有して構成している。上部旋回体42は、運転室43と作業手段44と建屋45とカウンタウェイト46とを有している。作業手段44はブーム47とアーム48とバケット49とにより構成される。以上は一般的な油圧ショベル40の構成である。
油圧ショベル40には、前方カメラ50F、後方カメラ50B、右方カメラ50R、左方カメラ50L(図示せず)が取り付けられている。これらのカメラは、前述した前方カメラ10F、後方カメラ10B、右方カメラ10R、左方カメラ10Lと同じ目的で取り付けており、油圧ショベル40の周辺の状況を俯瞰表示するために設けている。また、前方カメラ50Fは運転室43の近傍に取り付けられており、後方カメラ50Bはカウンタウェイト46の下部に取り付けられている。右方カメラ50Rおよび左方カメラ50Lは建屋45に取り付けられている。
カウンタウェイト46の下部に広範な空間が形成される。このとき、後方カメラ50Bは後方を撮影しているが、光軸が斜め下方であるため、カウンタウェイト46の下部が視野に含まれる。そこで、カウンタウェイト46の下部画像をシンボル画像に表示することで、前述したダンプトラック1の場合と同じ効果を得ることができる。