JP2016184694A - 半導体磁器組成物およびptcサーミスタ - Google Patents
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Abstract
【課題】鉛を含まず、常温比抵抗が小さく、長時間通電しても抵抗値の経時劣化を抑制できる半導体磁器組成物を提供する。【解決手段】半導体磁器組成物が、下記一般式(1)で示される化合物を主成分とする。(Bav−x−y−wBixAyREw)m(TiuTMz)O3(1)(Aは、Na又はKより選択される少なくとも1種、REは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy及びErより選択される少なくとも1種、TMは、V、Nb及びTaより選択される少なくとも1種、u、v、w、x、y、z、及びmは、0.007≦x≦0.125、x<y≦2.0x、0≦(w+z)≦0.01、u+z=1、v+w+x+y=1、0.94≦m≦1.04、さらに、Caを0.01〜0.055mol、添加物M(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)を0.0005〜0.005mol含む。【選択図】図1
Description
本発明は、ヒーター素子や過熱検知素子などに用いられる半導体磁器組成物およびPTCサーミスタに関する。
サーミスタの1つとして、正の抵抗温度係数を有するPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタが知られている。このPTCサーミスタは、温度の上昇に対して抵抗が増加することから、自己制御型ヒーター素子、過電流保護素子、過熱検知素子等として利用されている。従来、PTCサーミスタは、主成分のチタン酸バリウム(BaTiO3)に微量の希土類元素等を添加して半導体化させたもので、キュリー点以下では低抵抗であるが、それ以上では数桁にわたって急激に高抵抗化する。
BaTiO3のキュリー点は、一般的に約120℃であるが、Baの一部をSrやSnで置換することにより、キュリー点を低温側にシフトさせることができる。特にヒーター素子として用いられるPTCサーミスタは、高温で使用されることから、キュリー点の高いことが要求される。しかし、キュリー点の高温側へのシフトについては、Baの一部をPbで置換しているのが現状であり、世の中の環境負荷低減の流れからも、Pbを使用しない代替材料の実用化が求められている。
下記特許文献1には、Baの一部をPbではなく、(BiNa)で置換したBa1−2X(BiNa)XTiO3(0<X≦0.15)なる組成物に、Nb、Ta、または希土類元素のいずれか一種類以上を添加して窒素中で焼結した後、酸化性雰囲気中で熱処理する半導体磁器組成物の製造方法が示されている。
また、下記特許文献2には、BaTiO3のBaの一部をBiおよびアルカリ金属Al(Na、KおよびLiのうちの少なくとも1種)で置換した半導体磁器組成物について、長時間通電した後の抵抗値の抵抗変化率を抑制する手段として、上記組成物の焼結体の理論密度に対する実測密度(以下、「相対密度」という)を70〜90%とする半導体磁器組成物の製造方法が示されている。
上記いずれの特許文献に関しても、Pbを使用せずにキュリー点を120℃より高温側にシフトし、常温比抵抗が小さい半導体磁器組成物が得られると記載されている。
上記特許文献1には、Ba1−2X(BiNa)XTiO3(0<X≦0.15)なる組成物に、Ndを添加して窒素中で焼結した後、酸化性雰囲気中で熱処理した結果についての記載がある。しかし、その他の半導体化剤を添加した場合については詳細な記載が無く、特性に対する添加剤効果やその程度については不明である。また、大気中焼成では半導体化できないので、大気中焼成する場合と比較して、製造コストが高くなるという問題がある。
上記特許文献2に記載されている半導体磁器組成物は、焼結体の相対密度を70〜90%に調整することで、抵抗変化率△ρ/ρ0を無調整状態の67%に対して、28%まで抑制しているが、実用上はさらに低下させることが望まれる。
なお、抵抗変化率△ρ/ρ0の定義として、上記特許文献2においては、通電試験として20Vの直流電圧を1000時間印加した後、試験前の比抵抗
ρ0と試験後の比抵抗ρ1を周囲温度25℃で測定し、その差Δρ(=ρ1−ρ0)を求め、抵抗変化率△ρ/ρ0を算出している。
ρ0と試験後の比抵抗ρ1を周囲温度25℃で測定し、その差Δρ(=ρ1−ρ0)を求め、抵抗変化率△ρ/ρ0を算出している。
PTCサーミスタの常温比抵抗は、省エネルギーの観点から低抵抗であることが求められるが、一般的には通電時間の長期化に伴い経年劣化し、常温比抵抗が増大する傾向があるので、抵抗変化率△ρ/ρ0はPTCサーミスタの信頼性を担保する上で重要な指標の1つである。
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、BaTiO3系の半導体磁器組成物であって、Pbを使用せずにキュリー点を120℃より高温側にシフトさせた半導体磁器組成物であって、大気中あるいは窒素雰囲気中のいずれかの焼成でも容易に半導体化し、常温比抵抗を実用化できる水準に保ちながら、抵抗変化率△ρ/ρ0が小さい半導体磁器組成物およびそれを備えたPTCサーミスタを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の検討を行った結果、BaTiO3系の半導体磁器組成物において、Baの一部をPbではなく、所定の範囲でBiおよびアルカリ金属A(NaあるいはKより少なくとも1種)で置換し、なおかつBaサイト/Tiサイトのmol比、Caおよび、Ca以外の添加材M(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)の添加量を所定の範囲内にすることにより、大気中あるいは窒素雰囲気中のいずれかの焼成においても容易に半導体化し、常温比抵抗を500Ωcm以下、抵抗変化率△ρ/ρ0を20%以下に抑えながら、キュリー点が120℃より高温側にシフトした半導体磁器組成物を見出した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示されるBaTiO3系化合物を主成分とする焼結体を備えており、
(BavBixAyREw)m(TiuTMz)O3 (1)
上記一般式(1)において、
上記Aは、NaまたはKより選択される少なくとも1種の元素であり、
上記REは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、DyおよびErからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、
上記TMは、V、NbおよびTaからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、u、v、w、x、y、z(いずれもmol)およびm(u+zに対するv+w+x+yの比)は、下記式(2)〜(7)を満足し、
0.007≦x≦0.125 (2)
x<y≦2.0x (3)
0≦(w+z)≦0.01 (4)
u+z=1 (5)
v+w+x+y=1 (6)
0.94≦m≦1.04 (7)
さらに、Tiサイト(TiとTMの総量:u+z)1molに対し、Caを元素換算で0.01mol以上、0.055mol以下の割合で含み、且つ、添加物M(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)を元素換算で0.0005mol以上、0.005mol以下の割合で含むことを特徴とする半導体磁器組成物。
(BavBixAyREw)m(TiuTMz)O3 (1)
上記一般式(1)において、
上記Aは、NaまたはKより選択される少なくとも1種の元素であり、
上記REは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、DyおよびErからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、
上記TMは、V、NbおよびTaからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、u、v、w、x、y、z(いずれもmol)およびm(u+zに対するv+w+x+yの比)は、下記式(2)〜(7)を満足し、
0.007≦x≦0.125 (2)
x<y≦2.0x (3)
0≦(w+z)≦0.01 (4)
u+z=1 (5)
v+w+x+y=1 (6)
0.94≦m≦1.04 (7)
さらに、Tiサイト(TiとTMの総量:u+z)1molに対し、Caを元素換算で0.01mol以上、0.055mol以下の割合で含み、且つ、添加物M(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)を元素換算で0.0005mol以上、0.005mol以下の割合で含むことを特徴とする半導体磁器組成物。
本発明者らは、かかる特性が発揮される理由として、Biとアルカリ金属A(NaあるいはKより少なくとも1種)の比率をA過剰とすることで、過剰なAが半導体化を促すと共に、焼結助剤として適度な粒成長を促し、結果として大気中あるいは窒素雰囲気中のいずれかの焼成においても、低抵抗な半導体磁器組成物が得られるものと考えている。また、CaおよびM(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)の添加量を所定の範囲とすることで均一な粒成長を促し、常温比抵抗を500Ωcm以下に抑えながら、抵抗変化率△ρ/ρ0の小さい半導体磁器組成物が得られるものと考えている。ただし、半導体化のメカニズムについては、これに限定されるものではない。
また、上記半導体磁器組成物は、さらにTiサイト1molに対し、Siを元素換算で0.035mol以下の割合で含むことが好ましい。Siを上記範囲内で含むことにより、さらに常温比抵抗減少効果が高まる。
また、上記半導体磁器組成物は、さらにTiサイト1molに対し、Mnを元素換算で0.0015mol以下の割合で含むことが好ましい。Mnを上記範囲内で含むことにより、常温比抵抗とキュリー点を越えて上昇した抵抗との変化幅(以下、便宜上、「PTCジャンプ」という)を大きくする効果がある。
PTCジャンプは、PTCサーミスタの能力を判断するための一指標となるものであり、Log10(280℃での比抵抗/常温比抵抗)として算出した。
PTCジャンプは、PTCサーミスタの能力を判断するための一指標となるものであり、Log10(280℃での比抵抗/常温比抵抗)として算出した。
本発明によれば、BaTiO3系の半導体磁器組成物において、大気中あるいは窒素雰囲気中のいずれかの焼成においても容易に半導体化し、常温比抵抗が500Ωcm以下と低く、抵抗変化率△ρ/ρ0が20%以下と小さく、かつキュリー点が120℃より高温側にシフトした半導体磁器組成物を得ることができる。上記半導体磁器組成物を備えたPTCサーミスタは、特にヒーター素子への応用が期待できる。
図1に示すように、PTCサーミスタ1は、本願発明のBaTiO3系半導体磁器組成物からなるセラミック素体2と、セラミック素体の対向する両主面に形成される電極3aおよび3bを備える。電極3aおよび3bとしては、Cu、Ni、Al、Cr、Zn、Ag、Ni−Cr合金、Ni−Cu等の導電性材料からなる一層構造または多層構造で形成されている。
本発明にかかる組成物は、モル比による組成物が
(BavBixAyREw)m(TiuTMz)O3 (1)
ただし、AはNaまたはKより選択される少なくとも1種の元素、REはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、DyおよびErからなる群より選択される少なくとも1種の元素、TMはV、NbおよびTaからなる群より選択される少なくとも1種の元素で表されるものを主成分とし、更にCaおよび添加物M(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)を副成分として含むものである。
(BavBixAyREw)m(TiuTMz)O3 (1)
ただし、AはNaまたはKより選択される少なくとも1種の元素、REはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、DyおよびErからなる群より選択される少なくとも1種の元素、TMはV、NbおよびTaからなる群より選択される少なくとも1種の元素で表されるものを主成分とし、更にCaおよび添加物M(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)を副成分として含むものである。
上記式(1)において、Baサイトの一部をBi、A、REで置換する量、Tiサイトの一部をTMで置換する量、更にはBaサイトとTiサイト比をそれぞれ示すu、v、w、x、y、zおよびmは、下記式(2)〜(7)を満足する。ただし、REによるBaサイトの置換およびTMによるTiサイトの置換は任意である。
0.007≦x≦0.125 (2)
x<y≦2.0x (3)
0≦(w+z)≦0.01 (4)
u+z=1 (5)
v+w+x+y=1 (6)
0.94≦m≦1.04 (7)
さらに、(1)で示す組成物に対して、CaをTiサイト1molに対して元素換算で0.01mol以上、0.055mol以下の割合で含み、且つ、M(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)をTiサイト1molに対して元素換算で0.0005mol以上、0.005mol以下の割合で含むものである。
0.007≦x≦0.125 (2)
x<y≦2.0x (3)
0≦(w+z)≦0.01 (4)
u+z=1 (5)
v+w+x+y=1 (6)
0.94≦m≦1.04 (7)
さらに、(1)で示す組成物に対して、CaをTiサイト1molに対して元素換算で0.01mol以上、0.055mol以下の割合で含み、且つ、M(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)をTiサイト1molに対して元素換算で0.0005mol以上、0.005mol以下の割合で含むものである。
また、上記半導体磁器組成物は、さらに一般式(1)におけるTiサイト1molに対し、Siを元素換算で0.035mol以下の割合で含むことが好ましい。
(BavBixAyREw)m(TiuTMz)O3 (1)
さらには、0.005mol以上、0.02mol以下がより好ましい。結晶粒界に析出したSiは、同じく結晶粒界に微量に析出したアルカリ金属Aと化合物を形成し、通電時のアルカリ金属Aイオンの移動を抑制することができるので、常温比抵抗減少効果が高まる。ただし、Siが0.035molを超えると、過剰なSi元素が結晶粒界に多量に偏析し、伝導電子の移動を妨げて常温比抵抗が上昇する傾向がある。
(BavBixAyREw)m(TiuTMz)O3 (1)
さらには、0.005mol以上、0.02mol以下がより好ましい。結晶粒界に析出したSiは、同じく結晶粒界に微量に析出したアルカリ金属Aと化合物を形成し、通電時のアルカリ金属Aイオンの移動を抑制することができるので、常温比抵抗減少効果が高まる。ただし、Siが0.035molを超えると、過剰なSi元素が結晶粒界に多量に偏析し、伝導電子の移動を妨げて常温比抵抗が上昇する傾向がある。
また、上記半導体磁器組成物は、さらにTiサイト1molに対し、Mnを元素換算で0.0015mol以下の割合で含むことが好ましい。さらには、0.0005mol以上、0.001mol以下がより好ましい。Mnを上記範囲内で含むことにより、結晶粒界にて適度なアクセプタ準位を形成し、PTCジャンプの向上効果がある。ただし、Mnが0.0015molを超えると、伝導電子のトラップが過剰となり、常温比抵抗が上昇する傾向がある。
一般式(1)において、Biの成分範囲xは、0.007≦x≦0.125が好ましい。xが0.007未満では、キュリー点が高温側へシフトしない。また、xが0.125を超えると、半導体化が不十分となり、常温比抵抗が500Ωcmを超えてしまうので、好ましくない。なお、本発明におけるキュリー点とは、PTCサーミスタの比抵抗が25℃のそれと比して2倍になる温度を指す。
また上記組成式において、AはNaまたはKより選択される少なくとも1種の元素であり、Aの成分範囲yは、Biの成分範囲xと関係があり、x<y≦2.0xが好ましい範囲である。yがx以下では、半導体化が不十分となり、常温比抵抗が500Ωcmを超えてしまう。またyが2.0xを超えると、過剰なAが結晶粒界に多量に偏析し、異相が生成され、抵抗変化率が20%を超えてしまい、好ましくない。
なお、上記アルカリ金属元素AがNaの場合とKの場合では、キュリー点の高温側へのシフト量が若干異なるが、常温比抵抗や抵抗変化率△ρ/ρ0の変化量は、ほぼ同じである。
また、上記組成式において、ドナー成分であるREおよびTMの総量:(w+z)については、Tiサイト1molに対して、0.01mol以下であれば常温比抵抗減少効果および抵抗変化率△ρ/ρ0減少効果があるが、全く含有していなくてもよい。なお、常温比抵抗、抵抗変化率△ρ/ρ0、それぞれのバランスを考慮した場合、0.001mol以上、0.005mol以下がより好ましい。また、(w+z)が0.01を超えると、過剰なREまたはTMが結晶粒界に偏析して伝導電子の移動を妨げ、常温比抵抗が500Ωcmを超えてしまうので、好ましくない。また、REとして、Sm、Gd、Er、TMとしてNbを選択するのがより好ましい。更には、上記RE(Sm、Gd、Er)とTM(Nb)を等量ずつ添加するのがより好ましい。上記ドナー種および添加方法とすることで、常温比抵抗減少効果が上がる。
また、上記組成式において、m(u+zに対するv+w+x+yの比)は、0.94≦m≦1.04が好ましい範囲である。mが0.94未満では、半導体化が不十分であり、常温比抵抗が500Ωcmを超えてしまい、好ましくない。また、mが1.04を超えると焼結密度が低下し、抵抗変化率が20%を超えてしまうので、好ましくない。好ましくは、0.98≦m≦1.04の範囲とすることで、常温比抵抗減少効果が上がる。
また、上記組成式に対して、副成分として添加するCaの成分範囲は、Tiサイト1molに対して、0.01mol以上、0.055mol以下が好ましい範囲である。Caの成分範囲が0.01mol未満では、半導体化が不十分となり、常温比抵抗が500Ωcmを超えてしまうので、好ましくない。また、Caの成分範囲が0.055molを超えると、焼結密度が低下し、抵抗変化率が20%を超えてしまうので、好ましくない。より好ましくは、0.03mol以上、0.04mol以下の範囲とすることで、常温比抵抗をより小さくすることができる。
さらに上記組成式に対して、副成分として添加するM(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)の成分範囲は、Tiサイト1molに対して、0.0005mol以上、0.005mol以下が好ましい範囲である。0.0005mol未満では、抵抗変化率△ρ/ρ0が20%を超えてしまうので、好ましくない。また、Mの成分範囲が0.005molを超えると、半導体化が不十分となり、常温比抵抗が500Ωcmを超えてしまうので、好ましくない。
このような特徴を有する半導体磁器組成物は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず出発原料として、酸化ビスマス(Bi2O3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、酸化チタン(TiO2)、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、M(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)の酸化物(例えばZnO)、酸化ランタン(La2O3)などの希土類、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化バナジウム(V2O5)、炭酸マンガン(MnCO3)などの粉末を必要に応じて用意し、目的とする組成に応じて秤量する。
なお、出発原料には、酸化物に代えて、炭酸塩あるいはシュウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いてもよい。
次いで、秤量した出発原料を、ボールミルで有機溶媒中または水中で5時間から20時間十分に混合したのち、十分に乾燥する。乾燥温度は、90℃である。ただし上述した出発原料を乾式混合で行う場合は、この乾燥工程を省略してもよい。
これら乾燥させた出発原料をプレス成型して仮焼成用成形体を作製する、または粉末のまま、750℃〜950℃で1時間〜20時間程度仮焼成する。仮焼成の際の昇温および降温速度は、共に例えば50℃/時間〜300℃/時間程度とする。本実施形態における仮焼成は大気中で実施したが、酸素分圧の高低に限定されない。
上記仮焼成物を、例えばボールミルなどで、有機溶媒中または水中で5時間から20時間十分に粉砕したのち、十分乾燥する。乾燥温度は、例えば90℃程度である。
これら乾燥させた仮焼成物に有機バインダー溶液(Polyvinyl Alcohol:PVA)を加えて造粒する。造粒したのち、この造粒粉を一軸プレス成形して円柱、角柱、円板もしくは角板とする。
好ましくは、上記工程後に追加で冷間等方圧プレス(Cold Isostatic Pressing:CIP)を実施すると尚良い。その際、最大負荷圧98から343MPaで1〜3分間等方圧プレスを実施するとより好ましい。
上述した工程により得られた成形体を400℃〜800℃で2時間〜4時間程度熱処理してバインダーを揮発させ、950℃〜1300℃で2時間〜4時間程度本焼成する。本焼成の際の昇温および降温速度は、共に例えば50℃/時間〜300℃/時間程度とする。本実施形態における本焼成は大気中で実施したが、酸素分圧の高低に限定されない。
また、窒素雰囲気中で焼成した場合は、さらに800〜1000℃の酸化性雰囲気中にて熱処理を行う必要があるため、工程の簡素化の観点から大気中で焼成することが望ましい。
上述した工程により、得られた焼結体の結晶平均粒径は、0.5μm〜20μm程度である。
得られた焼結体を必要に応じて研磨し、電極を形成した。電極形成は電極ペーストを塗布して焼き付けることの他に、蒸着やスパッタ成膜等で電極を形成してもよい。
図1は本実施形態にかかる半導体磁器組成物を用いたPTCサーミスタの一部構成例を表すものである。このPTCサーミスタ1は、本願発明のBaTiO3系半導体磁器組成物からなるセラミック素体2と、セラミック素体の対向する両主面に形成される電極3aおよび3bを備える。電極3aおよび3bとしては、Cu、Ni、Al、Cr、Zn、Ag、Ni−Cr合金、Ni−Cu等の導電性材料からなる一層構造または多層構造で形成されている。なお、図1に示すPTCサーミスタ1の形状は、円板状であるが、直方体状等でもよい。なお、上記電極3aおよび3bはメッキ、スパッタ、蒸着、スクリーン印刷などにより形成できる。
これら電極3aおよび3bには、例えば図示しないワイヤなどを介して図示しない外部電源が電気的に接続される。
これら電極3aおよび3bには、例えば図示しないワイヤなどを介して図示しない外部電源が電気的に接続される。
本実施形態にかかるPTCサーミスタは、例えば、次のようにして作製することができる。まず、上述したように半導体磁器組成物を作製したのち、必要に応じて所定の大きさに加工し、セラミック素体2を形成する。次に、このセラミック2に電極3aおよび3bを例えば蒸着することにより、図1に示したPTCサーミスタが得られる。
本実施形態にかかる半導体磁器組成物は、例えばヒーター素子や過熱検知素子等に使用できるが、これら以外のものに適用してもよい。
以下、実施例および比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1(試料番号1〜70)、比較例1〜38]
出発原料としてBaCO3、TiO2、Bi2O3、Na2CO3、K2CO3、CaCO3、M(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)の酸化物(例えばZnO)、SiO2、REの酸化物(例えばY2O3)およびTMの酸化物(例えば、Nb2O5)を準備し、焼結後の組成が表1〜7となるように各原料を秤量した後、ボールミルを用いてアセトン中で湿式混合した後に乾燥を行い、900℃で2時間仮焼した。
出発原料としてBaCO3、TiO2、Bi2O3、Na2CO3、K2CO3、CaCO3、M(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)の酸化物(例えばZnO)、SiO2、REの酸化物(例えばY2O3)およびTMの酸化物(例えば、Nb2O5)を準備し、焼結後の組成が表1〜7となるように各原料を秤量した後、ボールミルを用いてアセトン中で湿式混合した後に乾燥を行い、900℃で2時間仮焼した。
上記仮焼体を、ボールミルを用いて純水中で湿式粉砕した後、脱水乾燥を行い、これをPVA等のバインダーを用いて造粒し、造粒粉体を得た。これを一軸プレス機によって円柱状(直径17mm×厚さ1.0mm)に成型し、大気雰囲気下、1200℃で2時間焼成を行い、焼結体を得た。
上記焼結体の両面にスクリーン印刷にてAg−Znペーストを塗布し、大気中500〜700℃にて焼き付けた後、25℃から280℃まで比抵抗の温度測定を行った。また通電試験として20Vの直流電圧を1000時間印加した後、周囲温度25℃で測定した試験前の比抵抗ρ0と試験後の比抵抗ρ1の差Δρ(=ρ1−ρ0)を求め、抵抗変化率△ρ/ρ0を算出した。
本発明における実施例1の結果を表1〜8に示す。
本発明における実施例1の結果を表1〜8に示す。
[実施例2]
焼成時の雰囲気を窒素雰囲気中とし、さらに800℃の大気中にて熱処理を行った以外は、実施例1と同様にして半導体磁器組成物を作製し、実施例1と同様の評価を行った。本発明における実施例2の結果を表9に示す。
焼成時の雰囲気を窒素雰囲気中とし、さらに800℃の大気中にて熱処理を行った以外は、実施例1と同様にして半導体磁器組成物を作製し、実施例1と同様の評価を行った。本発明における実施例2の結果を表9に示す。
表1より、Bi元素の成分範囲xとキュリー点には相関があることがわかる。試料番号1〜10によると、Bi元素の成分範囲が0.007≦x≦0.125であれば、キュリー点がBaTiO3のキュリー点である120℃よりも高温側へシフトしつつ、常温比抵抗が500Ωcm以下となっている。なお、xの含有量が多いほどキュリー点が高温側へシフトし、常温比抵抗は、やや増加傾向にあることがわかる。Bi元素の成分範囲が0.007未満である比較例1と比較例3は、常温比抵抗は小さいが、キュリー点が120℃よりも高温側にシフトしていない。また、Aの成分範囲が0.125を超える比較例2と比較例4は、常温比抵抗が500Ωcmを大きく超えてしまうことがわかる。なお、AがNaの場合とKの場合では、キュリー点の高温側へのシフト量が若干異なるが、常温比抵抗や抵抗変化率△ρ/ρ0は、ほぼ同じであることがわかる。
表2より、良好なPTC特性が得られるAの成分範囲yは、Bi元素の成分範囲xと相関があることがわかる。なお、AはNaまたはKより選択される少なくとも1種の元素である。試料番号1、3、5および11、12、13によると、yの成分範囲がx<y≦2.0xであれば、常温比抵抗が小さく、抵抗変化率△ρ/ρ0が20%以下に保たれていることがわかる。なおxが一定の場合、yが多いほど抵抗変化率は、やや減少傾向にあることがわかる。yの成分範囲がx未満である比較例5、6、8、9、11および12は、抵抗変化率△ρ/ρ0が20%を下回るものの、常温比抵抗が500Ωcmを超えていることがわかる。また、yの成分範囲が2.0xを超える比較例7、比較例10、比較例13は、常温比抵抗が低く保たれるが抵抗変化率が大きいことがわかる。
表3より、一般式(1)における(u+z)に対する(v+w+x+y)の比mは、常温比抵抗と相関があることがわかる。
(BavBixAyREw)m(TiuTMz)O3 (1)
mの範囲が、0.94≦m≦1.04である試料番号5、14、15では、常温比抵抗が小さく、抵抗変化率△ρ/ρ0が20%以下で推移していることがわかる。mが0.94未満である比較例14は、常温比抵抗が500Ωcmを超えており、mが1.04を超える比較例15は抵抗変化率が20%を超えていることがわかる。
(BavBixAyREw)m(TiuTMz)O3 (1)
mの範囲が、0.94≦m≦1.04である試料番号5、14、15では、常温比抵抗が小さく、抵抗変化率△ρ/ρ0が20%以下で推移していることがわかる。mが0.94未満である比較例14は、常温比抵抗が500Ωcmを超えており、mが1.04を超える比較例15は抵抗変化率が20%を超えていることがわかる。
表4より、副成分であるCaの成分範囲は、常温比抵抗と関係があることがわかる。Caの成分範囲が0.01mol以上、0.055mol以下である試料番号5、16および17では、常温比抵抗が小さく、抵抗変化率△ρ/ρ0が20%以下に保たれていることがわかる。Caの成分範囲が0.01mol未満である比較例16は、常温比抵抗が増大し、0.055molを越える比較例17については抵抗変化率が20%を超えていることがわかる。
表5より、副成分であるM(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)の成分範囲は、常温比抵抗および、抵抗変化率△ρ/ρ0と関係があることがわかる。Mの成分範囲が0.0005mol以上、0.005mol以下である試料番号5、および18〜28では、Zn、Cu、Fe、Alのいずれの添加でも常温比抵抗が小さく、抵抗変化率△ρ/ρ0が20%以下に保たれていることがわかる。Mの成分範囲が0.0005mol未満である比較例18、20、22、24では常温比抵抗、抵抗変化率の低下ともに不十分であることがわかる。また、0.005molを越える比較例19、21、23、25については、常温比抵抗が増大し、500Ωcmを超えていることがわかる。尚、Mの添加量が既定の範囲内であれば、例えば、ZnとCuといった複数の原料を用いても同一の効果が得られる。
表6の試料番号5、および29〜70より、REおよびTMの総量:(w+z)が、0.01以下であれば、常温比抵抗減少効果があることがわかる。また、(w+z)が、0.01を超える比較例26〜38については、常温比抵抗が500Ωcmを超えてしまうことがわかる。なお、試料番号65〜70より、(w+z)が同じ値でも、REとTMを等量ずつ添加したほうが常温比抵抗は小さいことがわかる。
表7の試料番号5、および71〜75より、Tiサイト1molに対し、Siを元素換算で0.035mol以下の割合で添加することで、常温比抵抗減少効果があることがわかる。
表8の試料番号5、および76〜79より、Tiサイト1molに対し、Mnを元素換算で0.0015mol以下の割合で添加することでPTCジャンプの向上効果があることがわかる。
表9の試料番号5、80より、焼成時の雰囲気を窒素雰囲気(PO2=10−7atm)にした場合は、大気中で焼成したものと、ほぼ同等の特性が得られることがわかる。
1 PTCサーミスタ
2 セラミック素体
3a、3b 電極
2 セラミック素体
3a、3b 電極
Claims (4)
- 下記一般式(1)で示されるBaTiO3系化合物を主成分とする焼結体を備えており、
(BavBixAyREw)m(TiuTMz)O3 (1)
前記一般式(1)において、
前記Aは、NaまたはKより選択される少なくとも1種の元素であり、
前記REは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、DyおよびErからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、
前記TMは、V、NbおよびTaからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、
w、x、y、z、およびm(u+zに対するv+w+x+yの比)は、下記式(2)〜(7)を満足し、
0.007≦x≦0.125 (2)
x<y≦2.0x (3)
0≦(w+z)≦0.01 (4)
u+z=1 (5)
v+w+x+y=1 (6)
0.94≦m≦1.04 (7)
さらに、Tiサイト1molに対し、Caを元素換算で0.01mol以上、0.055mol以下の割合で含み、且つ、添加物M(Zn、Cu、Fe、Alの少なくとも一種)を元素換算で0.0005mol以上、0.005mol以下の割合で含むことを特徴とする半導体磁器組成物。 - 前記半導体磁器組成物が、さらにTiサイト1molに対し、Siを元素換算で0.035mol以下の割合で含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体磁器組成物。
- 前記半導体磁器組成物が、さらにTiサイト1molに対し、Mnを元素換算で0.0015mol以下の割合で含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体磁器組成物。
- 請求項1から3に記載の半導体磁器組成物を用いて形成されたセラミック素体と、前記セラミック素体の表面に形成された電極とを備えたPTCサーミスタ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015064783A JP2016184694A (ja) | 2015-03-26 | 2015-03-26 | 半導体磁器組成物およびptcサーミスタ |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN114956789A (zh) * | 2022-06-07 | 2022-08-30 | 中国科学院新疆理化技术研究所 | 一种线性宽温区高温热敏电阻材料及制备方法 |
CN115403371A (zh) * | 2022-09-19 | 2022-11-29 | 辽宁佳宇电子产品有限公司 | 一种ptc热敏电阻及其制备方法 |
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2015
- 2015-03-26 JP JP2015064783A patent/JP2016184694A/ja active Pending
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