JP2016184051A - 静電潜像現像用トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、低温定着性を確保しつつ、耐ドキュメントオフセット性を向上させる静電潜像現像用トナーを提供することである。【解決手段】本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂と離型剤とを含むトナー母体粒子を含有し、結着樹脂が、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含む重合性単量体を共重合して得られるスチレン・アクリル系樹脂と結晶性樹脂とを含有し、離型剤が、少なくともエステルワックスを含有し、エステルワックスの炭素数分布において、最も高い含有率に対応した炭素数を有するエステルの含有率が、70〜100質量%の範囲内であることを特徴とする。一般式(1)H2C=CH−COOR(一般式(1)中、Rは、炭素数6〜12の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は環状アルキル基を表す。)【選択図】なし

Description

本発明は、静電潜像現像用トナーに関する。より詳しくは、低温定着性を確保しつつ、耐ドキュメントオフセット性を向上させる静電潜像現像用トナーに関する。
従来、複写機の高速化/省エネルギー化が要望されており、低温定着性に優れた静電潜像現像用トナー(以下、単にトナーともいう。)の開発が進められている。特に、近年では、耐熱性と低温定着性との両立のために、結晶性樹脂を用いる方法が提案されている。
結晶性樹脂は、非晶性樹脂に比べて熱応答性に優れており、融点未満の温度においては充分な強度を保持しながら、特定の温度において融解し、急激に粘度が低下する。この特徴をトナーに応用すると、トナーの流動性や強度を低下させることなく、低温定着化が可能となる。
また、定着分離性を確保するため、トナー中に離型剤を含有させる技術が知られており、例えば、特許文献1〜3には、離型剤としてエステルワックスを用いることが記載されている。
ところで、トナー中に結晶性樹脂を用いた場合、高温離型性(定着分離性)の悪化や、メインバインダーとの相溶による非晶化といった懸念がある。これに対し、高温での弾性を維持でき、メインバインダー中で結晶性樹脂の結晶化度を高く維持する方法として、メインバインダーとしてスチレン・アクリル系樹脂を用いる方法がある。
スチレン・アクリル系樹脂をメインバイダーとした場合、トナー製造時の結晶性樹脂の取込み性が問題となるが、アクリル酸エステル系単量体の鎖長を適正化することで結晶性樹脂のトナー中への取込み性を改善できることが判明した。鎖長が適正化されたアクリル酸エステル系単量体を使用すれば、結晶性樹脂のトナー時の結晶状態を維持して耐熱性や流動性を得ることができ、また、定着時に相溶して、低温定着性を得ることができる。
しかしながら、紙上でも結晶性樹脂が相溶して可塑化しており、耐ドキュメントオフセット性が低下してしまうという問題があった。
特開平8−50368号公報 特開2013−160776号公報 特開2014−186348号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、低温定着性を確保しつつ、耐ドキュメントオフセット性を向上させる静電潜像現像用トナーを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、結着樹脂が少なくとも特定構造を有する化合物を含む重合性単量体を共重合して得られるスチレン・アクリル系樹脂と結晶性樹脂とを含有し、離型剤が少なくともエステルワックスを含有し、エステルワックスの炭素数分布において、最も高い含有率に対応した炭素数を有するエステルの含有率が特定範囲内とすることにより、低温定着性を確保しつつ、耐ドキュメントオフセット性を向上させる静電潜像現像用トナーを提供できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.少なくとも結着樹脂と離型剤とを含むトナー母体粒子を含有する静電潜像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含む重合性単量体を共重合して得られるスチレン・アクリル系樹脂と結晶性樹脂とを含有し、
前記離型剤が、少なくともエステルワックスを含有し、
前記エステルワックスの炭素数分布において、最も高い含有率に対応した炭素数を有するエステルの含有率が、70〜100質量%の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
一般式(1)
C=CH−COOR
(一般式(1)中、Rは、炭素数6〜12の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は環状アルキル基を表す。)
2.前記エステルワックスの炭素数分布において、最も高い含有率に対応した炭素数の±2の範囲内に含まれる炭素数を有するエステルの含有率の総和が、85〜100質量%の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の静電潜像現像用トナー。
3.前記エステルワックス中に含まれる炭素数40以下のエステルの含有率の総和が、6質量%以下であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電潜像現像用トナー。
4.前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
本発明の上記手段により、低温定着性を確保しつつ、耐ドキュメントオフセット性を向上させた静電潜像現像用トナーを提供することができる。
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
上述したように、スチレン・アクリル系樹脂の前駆体であるアクリル酸エステル系単量体として、鎖長が適正化されたアクリル酸エステル系単量体を使用することで、結晶性樹脂の取込み性や定着時の相溶性が向上し定着性はよくなるが、相溶して可塑化するために定着後の画像のガラス転移温度Tgが低く、耐ドキュメントオフセット性が低下してしまう。
そこで、本発明においては、離型剤として、炭素数分布が狭く、純度の高いエステルワックスを含有させている。このようなエステルワックスは結晶性が高いため、定着時に相溶した結晶性樹脂が画像上で再び結晶化するための結晶核となり得、その結果、画像の耐ドキュメントオフセット性を向上させることができるものと推察される。
本発明の静電潜像現像用トナーは、結着樹脂が、少なくとも一般式(1)で表される構造を有する化合物を含む重合性単量体を共重合して得られるスチレン・アクリル系樹脂と結晶性樹脂とを含有し、離型剤が、少なくともエステルワックスを含有し、エステルワックスの炭素数分布において、最も高い含有率に対応した炭素数を有するエステルの含有率が、70〜100質量%の範囲内であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項4までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、より耐ドキュメントオフセット性を向上させる観点から、エステルワックスの炭素数分布において、最も高い含有率に対応した炭素数の±2の範囲内に含まれる炭素数を有するエステルの含有率の総和が、85〜100質量%の範囲内であることが好ましい。
また、エステルワックス中に含まれる炭素数40以下のエステルの含有率の総和が、6質量%以下であることが好ましい。これにより、エステルワックスの融点が高くなり、静電潜像現像用トナーの耐熱保管性を向上させることができる。
また、熱特性(低温定着性及び耐熱保管性の両立)の観点から、結晶性樹脂が結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
《静電潜像現像用トナー》
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂と離型剤とを含むトナー母体粒子を含有し、結着樹脂が、少なくとも後述する一般式(1)で表される構造を有する化合物を含む重合性単量体を共重合して得られるスチレン・アクリル系樹脂と結晶性樹脂とを含有し、離型剤が、少なくともエステルワックスを含有し、エステルワックスの炭素数分布において、最も高い含有率に対応した炭素数を有するエステルの含有率が、70〜100質量%の範囲内であることを特徴とする。
以下、静電潜像現像用トナーを構成する各材料について説明する。
〈トナー母体粒子〉
本発明に係るトナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂と離型剤とを含んで構成されている。
本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子といい、トナー母体粒子又はトナー粒子の集合体をトナーという。トナー母体粒子は、一般的には、そのままでもトナー粒子として用いることもできるが、本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子として用いる。
〈結着樹脂〉
本発明に係る結着樹脂は、少なくともスチレン・アクリル系樹脂と結晶性樹脂とを含有する。
(スチレン・アクリル系樹脂)
本発明に係るスチレン・アクリル系樹脂は、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含む重合性単量体を共重合させることにより合成される。
一般式(1)
C=CH−COOR
(一般式(1)中、Rは、炭素数6〜12の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は環状アルキル基を表す。)
上記一般式(1)で表される構造を有するアクリル酸エステル系単量体としては、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ドデシル等が挙げられるが、中でも、アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
スチレン・アクリル系樹脂の単量体組成において、上記アクリル酸エステル系単量体の含有率は2〜20質量%の範囲内であることが好ましく、3〜15質量%の範囲内であることがより好ましい。アクリル酸エステル系単量体の含有率が上記範囲内であれば、結晶性樹脂の取込み性や耐ドキュメントオフセット性が良好で、静電潜像現像用トナーのガラス転移温度(Tg)が低くなりすぎず、耐熱性が悪化することがない。
本発明に係るスチレン・アクリル系樹脂は、上述の一般式(1)で表される構造を有するアクリル酸エステル系単量体と、芳香族系ビニル単量体とを共重合して得られる。
芳香族系ビニル単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、及びその誘導体等が挙げられる。
重合性単量体としては、更に、第三のビニル系単量体を使用することもできる。第三のビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、ビニル酢酸等の酸単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレン塩化ビニル、N−ビニルピロリドン、ブタジエン等が挙げられる。
静電潜像現像用トナー中のスチレン・アクリル系樹脂の含有率は、50〜98質量%の範囲内であることが好ましく、70〜95質量%の範囲内であることがより好ましい。
スチレン・アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、20〜65℃の範囲内であることが好ましく、30〜63℃の範囲内であることがより好ましい。スチレン・アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であることにより、低温定着性が確保される。
本発明において、スチレン・アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定される値である。
測定手順としては、測定試料(スチレン・アクリル系樹脂)をアルミニウム製パンに封入し、ホルダーにセットする。リファレンスとして、空のアルミニウム製パンを使用する。加熱−冷却−加熱の温度制御を行い、その2度目の加熱におけるデータをもとに解析を行い、第1の融解ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度(Tg)とする。
スチレン・アクリル系樹脂の軟化点は、静電潜像現像用トナーに低温定着性を得る観点から、80〜120℃の範囲内であることが好ましく、90〜110℃の範囲内であることがより好ましい。
本発明において、スチレン・アクリル系樹脂の軟化点は、フローテスターによって測定される値である。
具体的には、まず、20℃・50%RHの環境下において、測定試料(スチレン・アクリル系樹脂)1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP−10A」(島津製作所社製)によって3820kg/cmの力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作製し、次いで、この成型サンプルを、24℃・50%RHの環境下において、フローテスター「CFT−500D」(島津製作所社製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetが軟化点とされる。
スチレン・アクリル系樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、重量平均分子量(Mw)で10000〜50000の範囲内であることが好ましく、25000〜35000の範囲内であることがより好ましい。
また、数平均分子量(Mn)で5000〜20000の範囲内であることが好ましく、6500〜12000の範囲内であることがより好ましい。
スチレン・アクリル系樹脂の分子量が上記範囲内であることにより、低温定着性及び定着分離性が確実に得られる。
本発明において、スチレン・アクリル系樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量は、以下のようにして測定される値である。
具体的には、装置「HLC−8120GPC」(東ソー社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−M3連」(東ソー社製)を用い、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流し、測定試料を室温(25℃)において超音波分散機を用いて濃度1mg/mLになるようにTHFに溶解させ、次いで、メンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液を上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出される。検量線測定用のポリスチレンとしては、10点用いる。
結着樹脂中のスチレン・アクリル系樹脂の含有率は、70〜99質量%の範囲内であることが好ましい。
スチレン・アクリル系樹脂の含有率が上記範囲内であることにより、結晶性樹脂とともに結着樹脂として用いたときに、十分な定着性、及び十分なトナーの耐熱保管性や定着画像の耐熱性を確保することができる。
(結晶性樹脂)
本発明に係る結着樹脂は、上述したスチレン・アクリル系樹脂とともに、結晶性樹脂を含有する。
本発明において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)により得られる吸熱曲線において、昇温時に明確な吸熱ピークを有する樹脂と定義される。ここで、「明確な吸熱ピーク」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
本発明に係る結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリアセタール樹脂、結晶性ポエリエチレンテレフタレート樹脂、結晶性ポリブチレンテレフタレート樹脂、結晶性ポリフェニレンサルファイド樹脂、結晶性ポリエーテルエーテルケトン樹脂、結晶性ポリテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられるが、特に熱特性(低温定着性及び耐熱保管性の両立)の観点から、結晶性ポリエステル樹脂が好ましく、特に脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを反応させて得られる結晶性脂肪族ポリエステル樹脂がより好ましい。
結着樹脂中の結晶性樹脂の含有率は、2〜20質量%の範囲内であることが好ましく、5〜15質量%の範囲内であることがより好ましい。結晶性樹脂の含有率が上記範囲内であることにより、低温定着性や耐熱保管性を十分に得ることができる。
結晶性樹脂の融点は、低温定着性と耐熱性の観点から、50〜90℃の範囲内であることが好ましく、60〜80℃の範囲内であることがより好ましい。
結晶性樹脂の融点は、以下のようにして測定される値である。
結晶性樹脂の融点は、融解ピークのピークトップの温度を示し、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて示差走査熱量分析によって測定される。
具体的には、測定試料(結晶性樹脂)を、アルミニウム製パン(KITNO.B0143013)に封入し、これを「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットし、加熱−冷却−加熱の温度制御を行い、その2度目の加熱におけるデータをもとに解析される。
結晶性樹脂分散液の調製方法としては、機械的せん断力によって乳化させる方法や転相乳化する方法等が挙げられるが、好ましくは転相乳化する方法である。
例えば、転相乳化する方法は、有機溶媒に結晶性樹脂を溶解し、結晶性樹脂溶解液を得る溶解工程、結晶性樹脂溶解液に中和剤を投入する中和工程、中和後の結晶性樹脂溶解液を水系分散媒中に乳化分散させ、結晶性樹脂乳化液を得る乳化工程、結晶性樹脂乳化液から有機溶媒を除去して結晶性樹脂分散液を得る脱溶媒工程を有している。
なお、結晶性樹脂分散液における粒径は、中和剤添加量を変更することによって制御可能である。
以下、結晶性樹脂として好適な結晶性ポリエステル樹脂について説明する。
(結晶性ポリエステル樹脂)
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られるポリエステル樹脂のうち、上記のように定義される結晶性樹脂の特徴を有するものをいう。
多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、及びこれらカルボン酸化合物の無水物や、炭素数1〜3のアルキルエステル等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多価アルコールとしては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,7−へプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等の脂肪族ジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、特に脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを反応させて得られる結晶性脂肪族ポリエステル樹脂がより好ましい。
〈離型剤〉
本発明の静電潜像現像用トナーは、定着分離性を確保するため離型剤が含有され、当該離型剤には、少なくともエステルワックスが含有されている。
本発明に係るエステルワックスとは、下記一般式(2)で表される構造を有するモノエステル(以下、単にエステルともいう。)から構成される。
一般式(2)
−COO−R
(一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数15〜29の直鎖状アルキル基を表す。)
本発明において、エステルの炭素数とは、上記一般式(2)で表される構造中の炭素原子の総数である。例えば、ベヘン酸ベヘニルCH(CH20COO(CH21CHは、分子式C4488であるから、炭素数は44となる。
本発明に係るエステルワックスは、上記のように定義される炭素数の異なる複数のエステル種からなり、エステルワックスの炭素数分布において、最も高い含有率に対応した炭素数を有するエステルの含有率が、70〜100質量%の範囲内となっている。なお、炭素数分布において、任意の炭素数を有するエステルは、1種類に限られるものではなく、エステル結合の位置が異なるだけで、分子式が同一であるエステルを全て含んでいる。
最も高い含有率に対応した炭素数を有するエステルの含有率は、炭素数分布が単分散を示すものを原料として用いること、あるいは、エステルワックスを精製することによって制御することができる。
また、エステルワックスの炭素数分布において、最も高い含有率に対応した炭素数の±2の範囲内に含まれる炭素数を有するエステルの含有率の総和は、85〜100質量%の範囲内であることが好ましい。例えば、最も高い含有率に対応した炭素数が44であれば、炭素数42〜46のエステルの含有率の総和が、上記含有率を満たすこととなる。
また、エステルワックス中に含まれる炭素数40以下のエステルの含有率の総和は、6質量%以下であることが好ましい。
本発明においては、エステルワックスの炭素数分布において、最も高い含有率に対応した炭素数が、42〜46の範囲内であることが好ましい。
最も高い含有率に対応した炭素数が上記範囲内であれば、耐熱性や帯電性に悪影響を及ぼすことがなく、機内汚染も抑制し、また、良好な低温定着性を得ることができる。
エステルワックスは、合成したものを用いてもよいし、市販のものを精製して用いてもよい。
合成したものとして、例えば、ベヘン酸ベヘニルやステアリル酸ステアリル、ステアリン酸ベヘニル等の高級脂肪酸と高級アルコールとの合成反応物が挙げられる。
精製方法としては、n−ヘキサン又はヘプタン等に溶解して再結晶する方法が挙げられる。
エステルワックスとしては、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等が挙げられる。
本発明において、エステルワックスの炭素数分布は、FD/MS「JMS−T100GC(日本電子製)」を使用して、測定されるものである。
具体的には、試料:1mg(クロロホルム1mLに溶解)、カソード電圧:−10kV、スペクトル記録間隔:0.4s、測定質量範囲:m/z10−2000の条件で行い、エステルの各炭素数の強度を合わせて100とし、各炭素数の相対強度を算出し、これを各炭素数に対応したエステルの含有率(質量%)とした。
離型剤の融点は、65〜90℃の範囲内であることが好ましく、65〜85℃の範囲内であることがより好ましい。
離型剤の融点が上記範囲内であれば、画像不良を防止し、定着分離性を確保することができる。
本発明において、離型剤の融点は、ASTM D3418−8に準じて測定される吸熱曲線における主体極大ピーク(mainpeak)値の温度である。
トナー中の離型剤の含有率は、高温離型性や低温定着性の観点から、3〜30質量%の範囲内が好ましく、特に6〜20質量%の範囲内がより好ましい。
〈着色剤〉
トナー母体粒子が着色剤を含有するものとして構成される場合においては、着色剤としては、カーボンブラック、黒色酸化鉄、染料、顔料等の公知の種々の着色剤を用いることができる。
カーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられ、黒色酸化鉄としては、例えば、マグネタイト、ヘマタイト、三酸化チタン鉄等が挙げられる。
染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等が挙げられる。
顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同150、同166、同177、同178、同222、同238、同269、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同156、同158、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60等が挙げられる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
着色剤の含有率は、トナー母体粒子中に1〜10質量%の範囲内で含有されていることが好ましく、2〜8質量%の範囲内であることがより好ましい。
着色剤の含有率が上記範囲内であれば、得られるトナーに所望の着色力を得ることができ、着色剤の遊離やキャリア等への付着を防止し、帯電性に影響を与えることがない。
〈荷電制御剤〉
本発明の静電潜像現像用トナーにおいて、トナー母体粒子が荷電制御剤を含有するものとして構成される場合においては、荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の含有率は、トナー母体粒子中に0.1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。
〈外添剤〉
本発明の静電潜像現像用トナーにおいて、トナー母体粒子はそのままトナーとして用いることができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、当該トナー母体粒子に、いわゆる流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加してもよい。
外添剤としては、種々のものを組み合わせて使用してもよい。
これらの外添剤の添加量は、その合計の添加量がトナー母体粒子100質量部に対して好ましくは0.05〜5質量部の範囲内、より好ましくは0.1〜3質量部の範囲内とされる。
〈トナー粒子の粒径〉
トナー粒子の平均粒径は、例えば、体積基準のメジアン径(d50)で3〜10μmの範囲内であることが好ましく、5〜8μmの範囲内であることがより好ましい。
このトナー粒子の平均粒径は、製造時において使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、結着樹脂の組成等によって制御することができる。
体積基準のメジアン径(d50)が上記範囲内であることにより、1200dpiレベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することが可能となる。
トナー粒子の体積基準のメジアン径(d50)は、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定、算出されるものである。
具体的には、測定試料(トナー)を、界面活性剤溶液(トナー粒子の分散を目的として、例えば、界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を行い、トナー粒子分散液を調製し、このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径(d50)とされる。
〈トナー粒子の平均円形度〉
トナー粒子は、帯電特性の安定性、低温定着性の観点から、平均円形度が0.930〜1.000の範囲内であることが好ましく、0.950〜0.995の範囲内であることがより好ましい。
平均円形度が上記範囲内であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。
トナー粒子の平均円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。
具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(I)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出した値である。HPF検出数が上記の範囲内であれば、再現性が得られる。
式(I)
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
〈現像剤〉
本発明の静電潜像現像用トナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。
また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散した分散型キャリア等用いてもよい。
キャリアの体積基準のメジアン径(d50)としては、20〜100μmの範囲内であることが好ましく、25〜80μmの範囲内であることがより好ましい。
キャリアの体積基準のメジアン径(d50)は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
《静電潜像現像用トナーの製造方法》
〈トナー母体粒子の製造方法〉
本発明に係るトナー母体粒子の製造方法としては、例えば、懸濁重合法、乳化凝集法、その他の公知の方法等を挙げることができるが、中でも乳化凝集法を用いることが好ましい。この乳化凝集法によれば、製造コスト及び製造安定性の観点から、トナー粒子の小粒径化を容易に図ることができる。
乳化凝集法によるトナー母体粒子の製造方法は、水系媒体中に離型剤を含むスチレン・アクリル系樹脂微粒子が分散された水系分散液と、着色剤微粒子の水系分散液と、結晶性樹脂の水系分散液とを混合し、スチレン・アクリル系樹脂微粒子と着色剤微粒子と結晶性樹脂とを凝集させることにより、トナー母体粒子を形成し、静電潜像現像用トナーを作製する方法である。
ここで、水系分散液とは、水系媒体中に、分散体(粒子)が分散されているものであり、水系媒体とは、主成分(50質量%以上)が水からなるものをいう。水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶媒が特に好ましい。
スチレン・アクリル系樹脂微粒子は、組成の異なる結着樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよく、このような構成のスチレン・アクリル系樹脂微粒子は、例えば、2層構造を有するスチレン・アクリル系樹脂微粒子は、常法に従った重合処理(第1段重合)によって樹脂微粒子の分散液を調製し、この分散液に重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する方法によって得ることができる。
以下に、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法の一例として、乳化凝集法による製造方法を示す。
(1)離型剤を含有するスチレン・アクリル系樹脂微粒子を作製する、樹脂微粒子作製工程
(2)結晶性樹脂を有機溶媒に溶解し、水系分散媒中に乳化分散させ、有機溶媒を除去することにより結晶性樹脂微粒子を作製する、結晶性樹脂微粒子作製工程
(3)水系媒体中に着色剤微粒子が分散されてなる、着色剤微粒子の水系分散液調製工程
(4)水系媒体中において、スチレン・アクリル系樹脂微粒子と着色剤微粒子と結晶性樹脂微粒子とを凝集させてコア粒子を形成する、コア粒子形成工程
(5)会合粒子を熱エネルギーにより熟成させて形状を制御しトナー母体粒子を得る、熟成工程
(6)トナー母体粒子の分散液を冷却する、冷却工程
(7)水系媒体からトナー母体粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤等を除去する、濾過・洗浄工程
(8)洗浄されたトナー母体粒子を乾燥する、乾燥工程
(9)乾燥されたトナー母体粒子に外添剤を添加する、外添剤添加工程
(1)樹脂微粒子作製工程
この工程においては、スチレン・アクリル系樹脂微粒子の水系分散液が調製される。
スチレン・アクリル系樹脂微粒子の水系分散液は、スチレン・アクリル系樹脂を得るためのビニル単量体を使用してミニエマルション重合法によって調製することができる。
例えば、界面活性剤を含有した水系媒体中にビニル単量体を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで、水溶性のラジカル重合開始剤からのラジカルにより当該液滴中において重合反応を進行させる。なお、液滴中に油溶性の重合開始剤が含有されていてもよい。
(界面活性剤)
この工程において使用される界面活性剤としては、従来公知の種々のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を用いることができる。
(重合開始剤)
この工程において使用される重合開始剤は、従来公知の種々のものを用いることができる。重合開始剤の具体例としては、過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)が好ましく用いられる。その他、アゾ系化合物(4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物、アゾビスイソブチロニトリル等を用いてもよい。
(連鎖移動剤)
この工程においては、スチレン・アクリル系樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えば2−クロロエタノール、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタンや、スチレンダイマー等を挙げることができる。
本発明に係るトナー母体粒子中には、離型剤が含有されている。この離型剤は、例えば、あらかじめスチレン・アクリル系樹脂を形成するための単量体の溶液に溶解又は分散させておくことによってトナー母体粒子中に導入することができる。
また、本発明に係るトナー母体粒子中には、必要に応じて、荷電制御剤等の他の内添剤が含有されていてもよい。このような内添剤は、例えば、あらかじめスチレン・アクリル系樹脂を形成するための単量体溶液に溶解又は分散させておくことによってトナー母体粒子中に導入することができる。
このような内添剤は、別途内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、コア粒子形成工程において、スチレン・アクリル系樹脂微粒子、着色剤微粒子及び結晶性樹脂微粒子とともに当該内添剤微粒子を凝集させることにより、トナー母体粒子中に導入することもできるが、この工程においてあらかじめ導入する方法を採用することが好ましい。
スチレン・アクリル系樹脂微粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径(d50)で100〜400nmの範囲内であることが好ましい。
本発明において、スチレン・アクリル系樹脂微粒子の体積基準のメジアン径(d50)は、「マイクロトラックUPA−150」(日機装社製)を用いて測定される値である。
(2)結晶性樹脂微粒子作製工程
この工程においては、結晶性樹脂微粒子の水系分散液が調製される。
結晶性樹脂微粒子の水系分散液は、結晶性樹脂を合成し、この結晶性樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散することによって調製することができる。具体的には、結晶性樹脂を有機溶媒中に溶解又は分散させて油相液を調製し、油相液を、転相乳化等によって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒を除去することにより調製することができる。
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50〜2000質量部の範囲内であることが好ましく、100〜1000質量部の範囲内であることがより好ましい。
水系媒体中には、油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤等が添加されていてもよい。界面活性剤としては、上記の工程に挙げたものと同様のものを挙げることができる。
油相液の調製に使用される有機溶媒としては、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましい。具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶媒の使用量は、結晶性樹脂100質量部に対して、通常1〜300質量部の範囲内である。
油相液の乳化分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。
結晶性樹脂微粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径(d50)で100〜400nmの範囲内にあることが好ましい。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径(d50)は、「マイクロトラックUPA−150」(日機装社製)を用いて測定される値である。
(3)着色剤微粒子の水系分散液調製工程
この工程は、トナー母体粒子として着色剤を含有するものを所望する場合に、必要に応じて行う工程であって、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤微粒子の水系分散液を調製する工程である。
着色剤微粒子の水系分散液は、界面活性剤を臨界ミセル濃度(CMC)以上に添加した水系媒体中に着色剤を分散させることにより得られる。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、使用する分散機としては、特に限定されないが、好ましくは超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
着色剤微粒子は、分散した状態で体積基準のメジアン径(d50)が10〜300nmの範囲内であることが好ましく、100〜200nmの範囲内であることがより好ましく、100〜150nmの範囲内であることが特に好ましい。
本発明において、着色剤微粒子の体積基準のメジアン径(d50)は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される値である。
(4)コア粒子形成工程
この工程においては、スチレン・アクリル系樹脂微粒子、着色剤微粒子及び結晶性樹脂微粒子、並びに必要に応じて、その他のトナー構成成分の微粒子を凝集させて、コア粒子を形成する。
具体的には、水系媒体中に上記の各微粒子が分散された水系分散液中に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え、スチレン・アクリル系樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)以上の温度にすることによって、凝集させる。
(凝集剤)
この工程において使用される凝集剤としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等の1価の金属塩、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の2価の金属塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属塩等が挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等を挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、2価の金属塩を用いることが特に好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(5)熟成工程
この工程は、必要に応じて行われるものであって、当該熟成工程においては、コア粒子形成工程によって得られたトナー母体粒子を熱エネルギーにより所望の形状になるまで熟成させてトナー母体粒子を形成させる熟成処理が行われる。
熟成処理は、具体的には、会合粒子が分散された系を加熱撹拌することにより、会合粒子の形状を所望の円形度になるまで、加熱温度、撹拌速度、加熱時間等により調整することにより行われる。
(6)冷却工程
この工程は、トナー母体粒子の分散液を冷却処理する工程である。冷却処理の条件としては、1〜20℃/minの冷却速度で冷却することが好ましい。冷却処理の具体的な方法としては、特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法等を例示することができる。
(7)濾過・洗浄工程
この工程は、冷却されたトナー母体粒子の分散液から当該トナー母体粒子を固液分離し、固液分離によって得られたトナーケーキ(ウェット状態にあるトナー母体粒子をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や凝集剤等の付着物を除去して洗浄する工程である。
固液分離には、特に限定されずに、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法等を用いることができる。また、洗浄においては、濾液の電気伝導度が10μS/cmになるまで水洗浄することが好ましい。
(8)乾燥工程
この工程は、洗浄処理されたトナーケーキを乾燥する工程であり、一般的に行われる公知のトナー母体粒子の製造方法における乾燥工程に従って行うことができる。
具体的には、トナーケーキの乾燥に使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等を挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機等を使用することが好ましい。
乾燥されたトナー母体粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
なお、乾燥されたトナー母体粒子同士が弱い粒子間引力で凝集している場合には、その凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
(9)外添剤添加工程
この工程は、トナー母体粒子に対して外添剤を添加する場合に、必要に応じて行う工程である。
上記のトナー母体粒子は、そのままトナーとして用いることができるが、流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、当該トナー母体粒子に、いわゆる流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加した状態で使用してもよい。
外添剤の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置を使用することができる。
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法としては、少なくとも上記工程(1)、(2)及び(4)を有していればよく、必要に応じて、工程(3)、(5)〜(9)を実施してもよい。なお、工程(3)を実施しない場合、工程(4)において、スチレン・アクリル系樹脂微粒子と結晶性樹脂微粒子とを凝集させてコア粒子を形成する。
また、本発明に係るトナー母体粒子においては、コア・シェル構造を取っていないが、耐熱性の観点から、コア・シェル構造を取って構わない。例えば、工程(4)のコア粒子形成工程後に、シェル層形成工程を設けてもよい。そのとき、シェル層は、非晶性樹脂からなることが好ましい。
また、結晶性樹脂分散液を添加するタイミングとしては、工程(4)のコア粒子形成工程の初期段階(昇温過程)であることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
《エステルワックスの作製》
離型剤としてのエステルワックス(E−2)〜(E−7)を、以下のようにして作製した。エステルワックス(E−1)及び(E−8)としては、それぞれ、市販のN252(中京油脂(株)製)及びLW400(三洋化成工業(株)製)を用いた。
なお、本実施例において、炭素数20、22及び24の長鎖アルキルカルボン酸として、イコサン酸(C2040)、ベヘン酸(C2244)、リグノセリン酸(C2448)を用い、炭素数20、22及び24の長鎖アルキルアルコールとして、アラキジルアルコール(C2042O)、ベヘニルアルコール(C2246O)、リグノセリルアルコール(C2450O)を用いた。
〈エステルワックス(E−2)の作製〉
ジムロート還流器、Dean−Stark水分離器を備えた四つ口フラスコ反応装置にベンゼン1740質量部、イコサン酸130質量部、ベヘン酸1040質量部、リグノセリン酸130質量部、アラキジルアルコール130質量部、ベヘニルアルコール1170質量部、更にp−トルエンスルホン酸120質量部を加えて十分撹拌し溶解させた後、5時間還流した後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後、炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥しベンゼンを留去した。得られた生成物を再結晶後、洗浄して精製し、エステルワックス(E−2)を得た。
〈エステルワックス(E−3)及び(E−5)〜(E−7)の作製〉
エステルワックス(E−2)の作製において、長鎖アルキルカルボン酸及び長鎖アルキルアルコールの種類及び量を表1に記載のとおりに変更した以外は同様にして、エステルワックス(E−3)及び(E−5)〜(E−7)を作製した。
〈エステルワックス(E−4)の作製〉
エステルワックス(E−3)70質量部とエステルワックス(E−8)(LW400)70質量部とを混合し、エステルワックス(E−4)を作製した。
表1に、エステルワックス(E−1)〜(E−8)の炭素数分布を示す。
各エステルワックスの炭素数分布は、FD/MS「JMS−T100GC(日本電子製)」を使用して測定した。
具体的には、試料:1mg(クロロホルム1mLに溶解)、カソード電圧:−10kV、スペクトル記録間隔:0.4s、測定質量範囲:m/z10−2000の条件で行い、エステルの各炭素数の強度を合わせて100とし、各炭素数の相対強度を算出し、これを各炭素数に対応したエステルの含有率(質量%)とした。
また、エステルワックス(E−1)〜(E−8)の融点を表1に示す。
エステルワックスの融点は、ASTM D3418−8に準じて測定される吸熱曲線における主体極大ピーク(mainpeak)値の温度とした。
《樹脂微粒子分散液の調製》
〈樹脂微粒子分散液(R−1)の調製〉
(1)第1段重合:樹脂微粒子分散液(r−1a)の調製
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8.00質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10.0質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、再度液温80℃とし、下記組成の単量体混合液を1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子分散液(r−1a)を調製した。
(単量体)
スチレン 480質量部
アクリル酸n−ブチル 250質量部
メタクリル酸 68.0質量部
(2)第2段重合:樹脂微粒子分散液(r−1b)の調製
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7.00質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、樹脂微粒子分散液(r−1a)240質量部に、下記組成の単量体及び離型剤(エステルワックス)を90℃にて溶解させた溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
(単量体及び離型剤)
スチレン 270質量部
アクリル酸n−ブチル 47.0質量部
アクリル酸2−エチルヘキシル 47.0質量部
メタクリル酸 27.0質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 6.60質量部
エステルワックス(E−1) 140質量部
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム5.60質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子分散液(r−1b)を調製した。
(3)第3段重合:樹脂微粒子分散液(R−1)の調製
樹脂微粒子分散液(r−1b)にイオン交換水400質量部を添加し、よく混合した後、過硫酸カリウム6.60質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下で、下記組成の単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、水系分散液である樹脂微粒子分散液(R−1)を調製した。
(単量体)
スチレン 430質量部
アクリル酸n−ブチル 155質量部
メタクリル酸 51.0質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 10.2質量部
得られた樹脂微粒子分散液(R−1)について、樹脂微粒子の体積基準のメジアン径(d50)は230nm、ガラス転移温度(Tg)は55℃、重量平均分子量(Mw)は33000であった。
樹脂微粒子の体積基準のメジアン径(d50)は、「マイクロトラックUPA−150」(日機装社製)を用いて測定した。
また、樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)は、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用い、測定試料(樹脂微粒子)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ホルダーにセットし、リファレンスとして空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、加熱−冷却−加熱の温度制御を行い、その2度目の加熱におけるデータをもとに解析を行い、第1の融解ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度(Tg)とした。
また、樹脂微粒子の重量平均分子量(Mw)は、装置「HLC−8120GPC」(東ソー社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流し、測定試料を室温(25℃)において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mLになるようにTHFに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出した。検量線測定用のポリスチレンとしては、10点用いた。
〈樹脂微粒子分散液(R−2)〜(R−13)の調製〉
樹脂微粒子分散液(R−1)の調製において、第2段重合で添加する単量体及びその量、離型剤の種類、並びに過硫酸カリウムの量を表2に記載のとおりに変更した以外は同様にして、樹脂微粒子分散液(R−2)〜(R−13)を調製した。
また、樹脂微粒子分散液(R−2)〜(R−13)について、樹脂微粒子の体積基準のメジアン径(d50)、ガラス転移温度(Tg)及び重量平均分子量(Mw)を表3に示す。
《結晶性樹脂微粒子分散液の調製》
〈結晶性樹脂微粒子分散液(C−1)の調製〉
1,10−デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)315質量部、1,9−ノナンジオール252質量部を、撹拌機、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、チタンテトラブトキサイド0.100質量部を添加し、窒素ガス気流下において180℃で撹拌しながら8時間重合反応を行った。さらに、チタンテトラブトキサイド0.200質量部を添加し、温度を220℃に上げて撹拌しながら6時間重合反応を行った後、反応容器内を10mmHgまで減圧し、減圧下で反応を行うことにより、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は14000、融点(Tm)は72℃であった。
結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、装置「HLC−8120GPC」(東ソー社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流し、測定試料を室温(25℃)において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mLになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出した。検量線測定用のポリスチレンとしては、10点用いた。
また、結晶性樹脂の融点(Tm)は、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用い、測定試料(結晶性樹脂)1.0mgを、アルミニウム製パン(KITNO.B0143013)に封入し、これを「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットし、測定温度0〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分の測定条件で、加熱−冷却−加熱の温度制御を行い、2回目の昇温過程時のDSC曲線における吸熱ピーク温度を結晶性樹脂の融点とした。
次いで、得られた結晶性ポリエステル樹脂72.0質量部をメチルエチルケトン72.0質量部に、70℃で30分撹拌し、溶解させた。次に、この溶解液に、25.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液2.50質量部を添加した。この溶解液を撹拌器を有する反応容器に入れ、撹拌しながら、70℃に温めた水252質量部を70分間にわたって滴下混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化状の状態を得た。この乳化液の油滴の粒径をレーザー回折式粒度分布測定器「LA−750(HORIBA製)」にて測定した結果、体積基準のメジアン径(d50)は120nmであった。
次いで、この乳化液を70℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間撹拌することで、メチルエチルケトン(MEK)を蒸留除去し、結晶性ポリエステル樹脂微粒子が分散された水系分散液である結晶性樹脂微粒子分散液(C−1)を調製した。
上記粒度分布測定器にて測定した結果、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液中、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径(d50)は75nmであった。
〈結晶性樹脂微粒子分散液(C−2)の調製〉
撹拌機及び温度計をセットした反応容器に、1,4−ブタンジオール45.0質量部、1,6−ヘキサンジオール60.0質量部、及びメチルエチルケトン300質量部を入れた。この溶液に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート250質量部を入れ、65℃で10時間反応させた後、溶媒を除去して結晶性ポリウレタン樹脂を得た。
得られた結晶性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量Mwは37000、融点(Tm)は70℃であった。
次いで、得られた結晶性ポリウレタン樹脂72.0質量部をTHF72.0質量部に、75℃で30分撹拌し、溶解させた。次に、この溶解液に、25.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.00質量部を添加した。この溶解液を撹拌器を有する反応容器に入れ、撹拌しながら、75℃に温めた水252質量部を70分間にわたって滴下混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化状の状態を得た。この乳化液の油滴の粒径をレーザー回折式粒度分布測定器「LA−750(HORIBA製)」にて測定した結果、体積基準のメジアン径(d50)は160nmであった。
次いで、この乳化液を75℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間撹拌する事で、THFを蒸留除去し、結晶性ポリウレタン樹脂微粒子が分散された水系分散液である結晶性樹脂微粒子分散液(C−2)を調製した。
上記粒度分布測定器にて測定した結果、結晶性ポリウレタン樹脂微粒子の分散液中、結晶性ポリウレタン樹脂微粒子の体積基準のメジアン径(d50)は110nmであった。
《着色剤微粒子分散液の調製》
ドデシル硫酸ナトリウム90.0質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子の水系分散液を調製した。
得られた着色剤微粒子の水系分散液について、着色剤微粒子の体積基準のメジアン径(d50)は110nmであった。
着色剤微粒子の体積基準のメジアン径(d50)は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定した。
《トナーの作製》
〈トナー(1)の作製〉
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、樹脂微粒子分散液(R−1)288質量部(固形分換算)、結晶性樹脂微粒子分散液(C−1)70.0質量部(固形分換算)、イオン交換水2000質量部を投入した後、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
その後、着色剤微粒子分散液30.0質量部(固形分換算)を投入し、次いで、塩化マグネシウム60.0質量部をイオン交換水60.0質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、結晶性樹脂微粒子分散液(C−1)を10分間かけて添加した。その後、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径(d50)が6.0μmになった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。80℃を保持したまま加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナー母体粒子の平均円形度の測定装置「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)、平均円形度が0.960になった時点で2.5℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し、固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子(1)を得た。
得られたトナー母体粒子(1)100質量部に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)0.600質量部及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)1.00質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速35mm/sec、32℃で20分間混合した後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去する外添剤処理を施すことにより、体積基準のメジアン径(d50)が6.0μmのシアントナー粒子の集合体であるトナー(1)を得た。
トナー粒子の体積基準のメジアン径(d50)は、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用い、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mLに添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー粒子分散液を調製し、このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入した。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径(d50)とした。
〈トナー(2)〜(14)の作製〉
トナー(1)の作製において、樹脂微粒子分散液と結晶性樹脂分散液とを表4に記載のとおりに変更した以外は同様にして、トナー(2)〜(14)を作製した。
《現像剤の作製》
得られた各トナーに対して、シリコーン樹脂を被覆した体積基準のメジアン径(d50)60μmのフェライトキャリアをトナー濃度が6.50質量%となるように添加して混合することにより、現像剤を作製した。
《評価》
評価用の画像形成装置として、複合機「bizhub PRESS C1070」(コニカミノルタ社製)を使用した。定着装置は、加熱ローラーの表面温度を120〜180℃の範囲で、5℃刻みで変更できるように改造した。
〈低温定着性(アンダーオフセット性)〉
アンダーオフセットとは、定着装置を通過する際に与えられた熱によるトナー層の溶融が不十分であるために記録紙等の転写材から剥離してしまう画像欠陥をいう。
低温定着性の評価は、画像形成装置に上記で作製した各トナーと現像剤を順次装填し、常温常湿環境(20℃・50%RH)下で、画像形成装置でNPI128g/m(日本製紙製)に未定着ベタ画像(付着量11.3g/m)を形成した。次に、定着装置の加圧ローラーの表面温度を100℃に設定し、加熱ローラーの表面温度を5℃刻みで120〜180℃の範囲で変更して、定着をした。このとき、アンダーオフセットが発生しない定着上ベルトの定着下限温度を評価し、低温定着性の指標とした。この定着下限温度が低ければ低いほど、定着性が優れており、160℃未満を合格とした。
評価結果を表4に示す。
〈耐ドキュメントオフセット性〉
得られたベタ画像上に5000枚(20kg)の紙を24時間のせて押圧し、その後、剥離したときの状態を下記評価基準により評価した。評価基準4以上を合格レベルとする。
評価結果を表4に示す。
5:ベタ画像に紙が貼り付かない。
4:ベタ画像に紙が若干貼り付く。下記式(II)に示す定着強度が95%以上。
3:ベタ画像に紙が若干貼り付く。下記式(II)に示す定着強度が90%以上95%未満。
2:ベタ画像に紙が貼り付く。下記式(II)に示す定着強度が85%以上90%未満。
1:ベタ画像に紙が貼り付く。下記式(II)に示す定着強度が85%未満。
式(II)
定着強度(%)=D/D×100
〔式(II)中、Dは、剥離前の絶対反射濃度を示す。Dは、剥離後の絶対反射濃度を示す。〕
なお、絶対反射濃度の測定には、反射濃度計「RD−918」(マクベス社製)を使用した。
〈耐熱保管性〉
作製した各トナー0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に取り、蓋を閉めて、振とう機「タップデンサーKYT−2000」(セイシン企業社製)を用い、室温(25℃)で600回振とうした後、蓋を取った状態で温度55℃、湿度35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせて、「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmとなる振動強度に調整し、10秒間振動を加えた後、篩上の残存したトナー量の比率(質量%)を測定し、下記式によりトナー凝集率を算出した。この試験を、湿度は35%RHのまま、試験温度を0.1℃ずつ上げながら、トナー凝集率が50質量%を超えるまで繰り返し行った。トナー凝集率が50質量%を超えない最大の試験温度(限界耐熱保管温度)を、耐熱保管性の指標とした。本発明においては、限界耐熱保管温度が58℃以上である場合を合格とする。
評価結果を表4に示す。
トナー凝集率(質量%)=篩上の残存トナー質量(g)/0.5(g)×100
表4から明らかなように、本発明のトナーは、比較例のトナーと比較して、低温定着性、耐ドキュメントオフセット性及び耐熱保管性に優れていることがわかる。
以上から、結着樹脂が、少なくとも一般式(1)で表される構造を有する化合物を含む重合性単量体を共重合して得られるスチレン・アクリル系樹脂と結晶性樹脂とを含有し、離型剤が、少なくともエステルワックスを含有し、エステルワックスの炭素数分布において、最も高い含有率に対応した炭素数を有するエステルの含有率が、70〜100質量%の範囲内であることが、低温定着性を確保しつつ、耐ドキュメントオフセット性を向上させる静電潜像現像用トナーを提供することに有用であることが確認できた。

Claims (4)

  1. 少なくとも結着樹脂と離型剤とを含むトナー母体粒子を含有する静電潜像現像用トナーであって、
    前記結着樹脂が、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含む重合性単量体を共重合して得られるスチレン・アクリル系樹脂と結晶性樹脂とを含有し、
    前記離型剤が、少なくともエステルワックスを含有し、
    前記エステルワックスの炭素数分布において、最も高い含有率に対応した炭素数を有するエステルの含有率が、70〜100質量%の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
    一般式(1)
    C=CH−COOR
    (一般式(1)中、Rは、炭素数6〜12の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は環状アルキル基を表す。)
  2. 前記エステルワックスの炭素数分布において、最も高い含有率に対応した炭素数の±2の範囲内に含まれる炭素数を有するエステルの含有率の総和が、85〜100質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記エステルワックス中に含まれる炭素数40以下のエステルの含有率の総和が、6質量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。
  4. 前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
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