JP2016182815A - 保温断熱用積層シート - Google Patents

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Abstract

【課題】表裏の温度差が生じても反りの発生が起こりにくく、軽量性にも優れる保温断熱用積層シートを提供する。
【解決手段】本発明に係る保温断熱用積層シートは、発泡シートの両面に坪量が20g/m以上である網状シートが積層されている。このように形成される保温断熱用積層シートによれば、例えば積層シートの表裏で温度差が生じたとしてもシートの反りの発生を抑制することができる。従って、上記保温断熱用積層シートは、容器や浴槽・温水槽の蓋、住宅の断熱材として使用した場合に反りが起こりにくく、容器や浴槽・温水槽、住宅の保温性や断熱性を向上させることができる。また、発泡シートの両面に積層されている材料は網状シートであるため、上記保温断熱用積層シートは軽量性も維持される。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば、保温容器や住宅・自動車用断熱材、浴槽や温水槽の蓋として使用することができる保温断熱用積層シートに関する。
合成樹脂等で構成される発泡体は、優れた断熱性や軽量性を有していることから、非常に多岐の用途にわたって利用されている。例えば、特許文献1には、シート状に形成した発泡体(発泡シート)の両面に樹脂フィルムなどを貼り合わせて積層シートとし、これを住宅用の壁用断熱シート、床用断熱シート等の建築部材や、保温・保冷バッグなどに応用することが提案されている。上記積層シートは、発泡シートの両面に樹脂フィルム等を備えているため、防水性や防湿性等の機能が付加され、機能性シートとして利用価値が高い部材である。
上記のような積層シートは、発泡シートの低熱伝導率や軽量であるという利点を活かして、保温容器や浴槽や温水槽の蓋などの保温用のシート部材として利用されており、近年でも、発泡シートを用いて形成される保温用シートが種々提案されている。例えば、特許文献2には、発泡体の両面に延伸オレフィン系樹脂シートを積層させた積層シートを浴槽の蓋として使用することが提案されている。この特許文献2に開示の技術では、延伸オレフィンシートを発泡シートの補強材として使用することで、熱に対して反りが発生しやすいという発泡体の欠点を補強している。
特開2003−311861号公報 特開2006−130243号公報
しかしながら、上記特許文献2に開示の技術のように発泡体の両面に延伸オレフィン系樹脂シートが積層されたシートでも、依然として反りの改善の余地が残されていた。特に、延伸オレフィン系樹脂シートが積層された発泡シートでは、該シートの斜め方向の反りを十分に抑制することができないため、結果として、積層シートの反りが大きくなってしまうという問題があった。そのため、積層シートの表裏において温度差が生じると大きな反りが発生し、断熱効果や保温効果が損なわれてしまうという問題を有していた。また、上記特許文献2に開示の積層シートでは、発泡体の全面に延伸オレフィン系樹脂シートが貼り合わされるので、積層シート自体の重量増加が大きくなり、軽量性という点でも問題があった。一方、上述の特許文献1には、一軸延伸された熱可塑性樹脂からなる布状体と、両面に非発泡層を有する発泡体とで構成される積層シートが開示されているが、このような積層シートも発泡体の両面の全面に非発泡層が積層されているので軽量性の点で課題がある。また、発泡体の反りの抑制については何ら考慮されておらず、この点でも問題を有するものであった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、表裏の温度差が生じても反りの発生が起こりにくく、軽量性にも優れる保温断熱用積層シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、坪量が20g/m以上である網状シートを発泡シートの両面に積層することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の保温断熱用積層シートに関する。
1.発泡シートの両面に坪量が20g/m以上である網状シートが積層されている、保温断熱用積層シート。
2.前記網状シートは、第1の方向に対する引張破断強度が150N/50mm以上であり、前記第1の方向に対して60°の角度をなす方向に対する引張破断強度が150N/50mm以上である、上記項1に記載の保温断熱用積層シート。
3.前記網状シートは、複数本のフラットヤーンが交差して網状に配列されて形成されている、上記項1又は2に記載の保温断熱用積層シート。
4.前記網状シートを構成する材料がポリプロピレンである、上記項1〜3のいずれか1項に記載の保温断熱用積層シート。
本発明に係る保温断熱用積層シートは、発泡シートの両面に網状シートが積層されており、この網状シートの坪量が20g/m以上である。このように形成される保温断熱用積層シートによれば、例えば保温断熱用積層シートの表裏で温度差が生じたとしてもシートの反りの発生を抑制することができる。従って、上記保温断熱用積層シートは、容器や浴槽・温水槽の蓋、住宅の断熱材として使用した場合に反りが起こりにくく、容器や浴槽・温水槽、住宅の保温性や断熱性を向上させることができる。また、発泡シートの両面に積層されている材料が網状シートであり、フィルム等に比べて軽量であるので、上記保温断熱用積層シートは軽量性も維持される。
本発明の保温断熱用積層シートを構成する網状シートの一例を示す概略の平面図である。 (a)〜(c)は、保温断熱用積層シートの反りの測定方法を説明する概略図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
保温断熱用積層シートは、発泡シートの両面に坪量が20g/m以上である網状シートが積層されている。これにより、本実施形態の保温断熱用積層シートは、例えば、シートの表裏で温度差が生じたとしても反りが発生しにくい。
上記発泡シートは、発泡体がシート状に成形された部材である。通常、発泡シートの形状は平面視で略矩形状であるが、矩形状以外の形状であってもよく、その形状は特に限定されるわけではない。
発泡シートの材質は特に限定されず、例えば、合成樹脂等が挙げられる。発泡シートが合成樹脂の発泡体で形成される場合、強度や断熱性能が高く、製造も容易である点で有利である。
上記合成樹脂の種類は、特に限定されず、汎用の合成樹脂を使用することができる。合成樹脂の具体例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
上記例示列挙した合成樹脂の中でも、網状シートとの熱融着性に優れることや、剛性に優れるという観点で、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂であることが好ましい。より好ましくはポリオレフィン系樹脂であり、その中でも特にポリプロピレンは、網状シートとの熱融着性に優れ、かつ、剛性も高いので、保温断熱用積層シートに使用する発泡シートとして適している。
発泡シートの厚みは特に限定されないが、例えば、5〜50mmの厚みにすることができる。この厚みであれば、発泡シートの軽量性及び剛性が損なわれるおそれが小さいので、保温断熱用積層シートの軽量性及び剛性をバランスよく維持することができる。
発泡シートの発泡倍率は、特に限定されないが、10〜60倍あることが好ましい。この発泡倍率の範囲であれば、保温性や断熱性の低下が起こりにくく、また、剛性が低下しすぎるおそれも小さい。より好ましい発泡倍率は、20〜50倍である。
発泡シートを製造する方法については特に限定されず、公知の方法で製造することができる。例えば、発泡シートが合成樹脂の発泡体である場合は、合成樹脂を押出し発泡によって成形してもよいし、ビーズ発泡によって成形してもよい。発泡シートは市販されている汎用品を採用してもよい。
網状シートは、糸状又はテープ状の繊維が互いに交差して網目に形成された部材である。この網状シートは、不織布であってもよいし、織布であってもよい。
網状シートの質量は、坪量換算で20g/m以上である。網状シートの坪量が上記範囲であることで、保温断熱用積層シートの反りの発生を低減させることができる。網状シートの坪量が大きくなれば保温断熱用積層シートの反りを抑制しやすくなる反面、重量が増加して軽量化が阻害される。そのため、網状シートの坪量は20〜100g/mであることが好ましい。より好ましい網状シートの坪量は30〜90g/mである。
網状シートは、複数本の繊維が2軸方向、例えば、縦方向及び横方向に交差して格子目状に形成されていてもよいし、複数本の繊維が3軸方向又はそれ以上の方向(例えば、4軸方向)に交差して格子目状に形成されていてもよい。複数本の繊維が2軸方向に交差している場合、例えば、互いの軸が略直角に交差していてもよいし、直角よりも小さい角度で交差していてもよい。また、例えば、複数本の繊維が3軸方向に交差している場合は、網状シートの縦方向、横方向及び斜め方向の3方向に交差している場合や、網状シートの縦方向及びこの縦方向に対して両斜め方向の3方向に交差している場合が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。なお、本明細書では、複数本の繊維が2軸方向に交差して形成されている網状シートを「2軸網状シート」、複数本の繊維が3軸方向に交差して形成されている網状シートを「3軸網状シート」と表記する。
繊維の種類は特に限定されないが、例えば、フラットヤーンと称されるポリオレフィン系樹脂等の合成樹脂で形成される一軸延伸テープを挙げることができ、このフラットヤーンを用いて上記2軸網状シートや上記3軸網状シートを形成することができる。
網状シートが繊維を整列させ重ねあわせた組布(不織布)形状の場合は、織布(クロス)に見られるような糸のネジレの発生や機械的な強度の低下が起こるのを防止しやすく、フラットヤーン(一軸延伸テープ)の素材そのものの強度を発揮することができるので、保温断熱用積層シートの機械的強度をより向上させることができる。特に、網状シートの交点部分に曲がりやネジレが生じにくいので、引張り強度を高めやすい点で有利である。従って、網状シートは、複数本のフラットヤーンが交差して網状に配列されて形成されていることが好ましい一態様である。
上記フラットヤーンとしては、保温断熱用積層シートの軽量化の観点と、保温断熱用積層シートの反りがより低減されるという観点から、ポリオレフィン系樹脂で構成されていることが好ましく、特に、ポリプロピレンで構成されていることが好ましい。その他、上記フラットヤーンとしては、ポリエチレン樹脂、アラミド樹脂等が例示される。
網状シートを構成する繊維は、上記のような一軸延伸テープ以外の形態の有機繊維や無機繊維を適用することもできる。
また、繊維は、1種単独の材料で構成されることに限定はされず、複数の材料(いわゆる、複合繊維)で構成されていてもよい。例えば、芯部にポリプロピレン層を有し、表層部に低融点のポリプロピレン層を備える3層構造のフラットヤーンといたような、複数の樹脂の層で形成される繊維であってもよい。
繊維の大きさは特に限定されないが、例えば、テープ状であれば、幅を0.5〜6.0mm、厚みを0.01〜0.4mm、繊度を300〜2000dt、糸幅を0.5〜6.0mmとすることができる。
網状シートを構成する各繊維どうしの間隔も本発明の効果を発揮できる限りは特に制限されない。
ここで、網状シートの代表例として、3軸網状シートの構造について説明する。
図1は、3軸網状シートの一例を示す模式的に表した平面図である。なお、この図1では、3軸網状シートに符号を付して「3軸網状シート1」としている。
上記3軸網状シート1では、複数本のテープ状繊維2,2,・・・が、第1の方向、第2の方向及び第3の方向、すなわち3軸方向に各々交差しながら形成されている。図1では、第1の方向、第2の方向及び第3の方向に沿って配置されている繊維2をそれぞれ、繊維21、繊維22及び繊維23とする。
上記3軸網状シート1では、第2の方向の繊維22と第3の方向の繊維23とは、第1の方向の繊維21の軸に対して対称に配置されている。第1の方向の繊維21と第2の方向の繊維22とがなす角度θ(ここでは劣角側の角度をいう)は特に限定されないが、例えば、30〜75°とすることができ、この範囲であれば、後述する理由により保温断熱用積層シートの反りの抑制効果を高めることができる。特に好ましい角度θは60°である。なお、第1の方向の繊維21と第3の方向の繊維23とがなす角度についても、上記同様の理由により、上記範囲に値に設定することができ、また、特に好ましい角度θは60°である。
また、図1において、隣り合う繊維21,21どうしの距離L1は、3〜20mm、隣り合う繊維22,22どうしの距離L2は、3〜20mm、隣り合う繊維23,23どうしの距離L3は3〜20mmとすることができる。
本発明で使用する網状シートは、2軸網状シートや3軸網状シート等、その構造にかかわらず、発泡シートの反りを抑制する作用を有するが、特に好ましい網状シートは、網状シートの第1の方向に対する引張破断強度が150N/50mm以上であり、前記第1の方向に対して60°の角度をなす方向に対する引張破断強度が150N/50mm以上であることである。以下、このような物性を有する網状シートを特に、網状シートAと略記する。
上記網状シートAが発泡シートに積層されている場合、保温断熱用積層シートの反りの抑制効果をさらに高めることができるからである。
通常、発泡シートが表裏の温度差などによって反る場合、発泡シートの縦横方向のみならず、斜め方向に対しても反りが発生する。そのため、このような反りをできるだけ抑制するには、発泡シートの縦及び横方向のみならず、斜め方向にも反りを抑えることが必要である。この点、上記のように、第1の方向及びこの第1の方向に対して60°の角度をなす方向に対する引張破断強度がいずれも150N/50mm以上である網状シートAであれば、発泡シートは、網状シートAによっての斜め方向に対しても大きな補強がなされる。例えば、従来から発泡シートの補強材として使用されている樹脂フィルム等では、発泡シートの斜め方向に対しては、十分に補強されていない。つまり、従来の補強材は、一方向もしくは互いに直交する2方向に対しては補強できるものであるが、一方向とこの方向に対して鋭角となる方向(斜め方向)に対しての補強については何ら考慮されていない。そのため、従来の補強材では発泡シートの斜め方向の反りに対しては抑制効果が小さく、このような補強材で補強された発泡シートを保温断熱積層シートとして使用しても、斜め方向に大きな反りが発生し、十分な保温断熱効果が得られない。
これに対し、網状シートAは、上記のように第1の方向と、第1の方向に対して60°の角度をなす方向に対する引張破断強度を大きくしているので、このような網状シートAであれば、縦方向及び横方向のみならず、斜め方向に対しても大きな補強をすることができる。これにより、発泡シート全体の反りが従来よりも抑制されるので、網状シートAで補強される発泡シートでは、シートの反りの発生が特に抑制される。従って、網状シートAで補強された積層シートを備える保温断熱用積層シートでは、容器や浴槽・温水槽の蓋、住宅の断熱材として使用した場合にも反りが起こりにくいので、容器や浴槽・温水槽、住宅の保温性や断熱性を特に向上させることが可能である点で有利である。
上述した第1の方向及びこの第1の方向に対して60°の角度をなす方向については、任意に決めることができるが、例えば、2軸網状シートであれば、一方の繊維の軸方向を第1の方向とすることができる。また、3軸網状シートであれば、3軸方向のうちのいずれか一つの軸方向を第1の方向とすることができる。
網状シートA以外の網状シート、例えば、2軸網状シートであっても、坪量が20g/m以上である網状シートである限りは、発泡シートの縦及び横方向のみならず、斜め方向の反りを抑制する効果もあるが、上述した理由により、本実施形態の保温断熱用積層シートにおいて網状シートAを備えるとその効果が特に顕著になる。
本実施形態の保温断熱用積層シートにおいて網状シートAが特に好ましいという観点から、2軸網状シートよりも3軸網状シートである網状シートが特に好ましいといえる。このような3軸網状シートは、2軸網状シートに比べて、第1の方向に対して60°の角度をなす方向に対する引張破断強度を150N/50mm以上に調節しやすいからである。
また、図1に示された3軸網状シートの網状シートにあっては、繊維21の軸方向(第1の方向)に対する引張破断強度が150N/50mm以上、該第1の方向に対して60°の角度をなす方向に対する引張破断強度が150N/50mm以上であることが好ましい。特に、図1における角度θが30〜75°、特に60°のときに、第1の方向に対して60°の角度をなす方向に対する引張破断強度が高くなりやすく、150N/50mm以上に調節しやすいので有利である。この場合において、繊維が上述したフラットヤーンであればさらに好ましい。
3軸網状シートにおいて、「第1の方向」とは任意の方向であってもよいが、通常は、3軸網状シートにおいて最大の引張破断強度を示す方向を「第1の方向」とすればよい。
本実施形態の保温断熱用積層シートに用いる網状シートは、公知の製造方法によって製造してもよいし、市販品を採用してもよい。
例えば、フラットヤーンを繊維として構成される3軸網状シート(いわゆる積層不織布)であれば、公知の方法や装置を採用することによって、次のように製造することができる(参考として、特許第1442884号公報や特許第1725947号公報を参照)。
まず、縦軸ヤーンを任意の間隔で整列させて1軸方向(縦軸方向)に巻き取る。これと並行して、横軸方向にも横軸ヤーンを任意の間隔で整列させ、該横軸ヤーンをトラバース移動により斜交配列に引き揃える。そして、積層装置を稼働させ、縦軸ヤーンと横軸ヤーンを上下に積層させる。次いで、約120℃の加熱ロール上で圧着させることで、各ヤーン(繊維)が一体化した3軸網状シートが形成される。
保温断熱用積層シートにおいて、網状シートは発泡シートの両面に貼り合わせられて積層されている。例えば、発泡シートが矩形状に形成されている場合、網状シートは発泡シートの全面に貼り合わせられていてもよい。網状シートの外形全体の大きさと発泡シートの外形全体の大きさとは必ずしも同一ではなく、例えば、網状シートの外形の方が、発泡シートの外形よりも小さくても問題ない。しかし、保温断熱用積層シートの反りの抑制効果がより高まるという観点では、両者の外形の大きさが略同一であることが好ましい。
発泡シートに貼り合わせられている網状シートの配置のされ方は特に限定されず、網状シートの繊維の軸がどの方向を向くように配置されてもよい。例えば、発泡シートが矩形状で、網状シートが互いの繊維が略直角に交差した2軸網状シートであれば、網状シートの2つの繊維の軸がそれぞれ、発泡シートの各々の辺(側端縁)に平行となるように配置されていてもよい。あるいは、網状シートの少なくとも一つの繊維の軸が発泡シートの対角線の方向と略平行になるように網状シートが配置されていてもよい。
網状シートが図1に示したような3軸網状シート1である場合には、例えば、3軸網状シート1の第1の方向の繊維21が発泡シートの一つの側端縁に沿って配置され得る。この場合、第2の方向の繊維22及び第3の方向の繊維23は、発泡シートの斜め方向(すなわち、側端縁方向に対して鋭角に傾いた方向であり、例えば対角線の方向)に沿って配置されるので、発泡シートの斜め方向の反りを抑制しやすくなる。
網状シートが上述した網状シートAであれば、網状シートAの第1の方向の繊維が発泡シートの一方の端部に沿って配置されていれば、発泡シートの斜め方向の補強をより高めることができるので、反りを防止しやすくなる。
なお、網状シートは発泡シートの両面に貼り合わせられており、通常は、両面共に同一の網状シートが発泡シートの両面に貼り合わせられている事が望ましい。なお、これに限らず、異なる種類の網状シートが両面に貼り合わせられていてもよい。発泡シートの両面に貼り合わせられている網状シートが同一種である場合には、発泡シートの表裏で網状シートの繊維の軸方向が互いに異なっていてもよい。
本実施形態の保温断熱用積層シートは、上記発泡シートと網状シートとを積層させることで製造することができる。
積層させる方法は特に限定されないが、例えば、発泡シート及び網状シートのそれぞれの面いずれか一方の面を加熱溶融して圧着する方法、溶融した樹脂を発泡シートと網状シートの間に流し込んだ後に冷却させて接着させる押出ラミネート方法、発泡シート及び網状シートのそれぞれの面もしくはいずれか一方の面にアクリル系やウレタン系の接着剤を塗布し乾燥させ両者を接着させる方法、あるいは、発泡シートと網状シートを両面テープで接着する方法等が挙げられる。作業性の観点からは加熱溶融して圧着する方法によって発泡シートと網状シートとを積層させることが好ましい。
保温断熱用積層シートは、発泡シートの両面に上記網状シートが積層された積層シートのみで構成されていてもよいし、本発明の効果が阻害されない程度であれば、上記積層シートに他の部材(例えば、持ち手部材等)が設けられていてもよい。
保温断熱用積層シートの平面視の形状は、長方形や正方形等の矩形状に限定されず、円形、楕円形、その他多角形等の形状であってもよい。また、網状シートを発泡シートに積層した後に、所望の形状に切断加工して使用することも可能である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
(実施例1)
芯部にポリプロピレン層(以下、ポリプロピレンを「PP」と略記する)、表層部に低融点PP層を配した3層構造のフラットヤーンを準備した。このフラットヤーンは、糸幅1.1mm、繊度750dtである。上記フラットヤーンを、上述した公知の3軸装置を用いて約150℃にて積層圧着させることで、3軸方向積層不織布である3軸網状シート(TS705PP)を得た。該3軸網状シート(TS705PP)は、縦軸ヤーン間隔(すなわち、図1における第1の方向の繊維21どうしの隣接距離)が5mm、斜交3軸ヤーン間隔(すなわち、図1における第2の方向の繊維22どうしの隣接距離及び第3の方向の繊維23どうしの隣接距離)が5mmであった。また、該3軸網状シート(TS705PP)は、質量(坪量)50g/mであった。該3軸網状シート(TS705PP)の図1における角度θは約60°であった。
次いで、発泡シートとして厚みが15mmの発泡スチレンシート(発泡倍率50倍)を準備した。この発泡シートの両面の全面に、熱の影響を受けにくい紙性両面テープ(積水化学工業株式会社製「#570」)を貼り合せることで、発泡シートの両面に3軸網状シート(TS705PP)がそれぞれ積層された積層シートを得た。この積層シートをサンプルとし、後述の手順に従って反り量を測定した。
(実施例2)
芯部にPP層、表層部に低融点PP層を配した3層構造のフラットヤーンを準備した。このフラットヤーンは、糸幅1.1mm、繊度500dtである。上記フラットヤーンに変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、3軸網状シート(TS505PP)を得た。該3軸網状シート(TS505PP)は、縦軸ヤーン間隔(すなわち、図1における第1の方向の繊維21どうしの隣接距離)が5mm、斜交3軸ヤーン間隔(すなわち、図1における第2の方向の繊維22どうしの隣接距離及び第3の方向の繊維23どうしの隣接距離)が5mmであった。また、該3軸網状シート(TS505PP)は、質量(坪量)35g/mであった。該3軸網状シート(TS505PP)の図1における角度θは約60°であった。
次いで、実施例1と同様の発泡シートを用いて同様の方法により、発泡シートの両面に3軸網状シート(TS505PP)がそれぞれ積層された積層シートを得た。この積層シートをサンプルとし、後述の手順に従って反り量を測定した。
(実施例3)
芯部に高密度ポリエチレン層(以下、高密度ポリエチレンを「HDPE」と略記する)、表層部に低密度ポリエチレン層(以下、低密度ポリエチレンを「LDPE」と略記する)を配した3層構造のフラットヤーンを準備した。このフラットヤーンは、糸幅1.2mm、繊度750dtである。上記フラットヤーンを、上述した公知の3軸装置を用いて約120℃にて積層圧着させることで、3軸方向積層不織布である3軸網状シート(TS705PE)を得た。該3軸網状シート(TS705PE)は、縦軸ヤーン間隔(すなわち、図1における第1の方向の繊維21どうしの隣接距離)が5mm、斜交3軸ヤーン間隔(すなわち、図1における第2の方向の繊維22どうしの隣接距離及び第3の方向の繊維23どうしの隣接距離)が5mmであった。また、該3軸網状シート(TS705PE)は、質量(坪量)50g/mであった。該3軸網状シート(TS705PE)の図1における角度θは約60°であった。
次いで、実施例1と同様の発泡シートを用いて同様の方法により、発泡シートの両面に3軸網状シート(TS705PE)がそれぞれ積層された積層シートを得た。この積層シートをサンプルとし、後述の手順に従って反り量を測定した。
(実施例4)
実施例1のフラットヤーンの代わりに、帝人テクノプロダクツ社製「アラミド繊維 テクノーラT200 1110」を繊維として用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で3軸方向積層不織布である3軸網状シート(TS1105AR)を得た。該3軸網状シート(TS1105AR)は、縦軸ヤーン間隔が5mm、斜交3軸ヤーン間隔が5mmであった。また、該3軸網状シート(TS1105AR)は、質量(坪量)85g/mであった。該3軸網状シート(TS1105AR)の図1における角度θは約60°であった。
次いで、実施例1と同様の発泡シートを用いて同様の方法により、発泡シートの両面に3軸網状シート(TS1105AR)がそれぞれ積層された積層シートを得た。
(実施例5)
HDPE層からなる単層構造のフラットヤーンを準備した。このフラットヤーンは、糸幅3.0mm、繊度1050dtである。上記フラットヤーンを用いて、2軸方向積層不織布である2軸網状シート(KZ66PE)を得た。該2軸網状シート(KZ66PE)は、縦糸6本/25.4mm、横糸6本/25.4mmの密度であった。また、該2軸網状シート(KZ66PE)は、質量(坪量)54g/mであった。
次いで、実施例1と同様の発泡シートを用いて同様の方法により、発泡シートの両面に2軸網状シート(KZ66PE)がそれぞれ積層された積層シートを得た。この積層シートをサンプルとし、後述の手順に従って反り量を測定した。
(実施例6)
芯部にPP層、表層部に低融点PP層を配した3層構造のフラットヤーンを準備した。このフラットヤーンは、糸幅1.1mm、繊度350dtである。上記フラットヤーンに変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、3軸網状シート(TS305PP)を得た。該3軸網状シート(TS305PP)は、縦軸ヤーン間隔(すなわち、図1における第1の方向の繊維21どうしの隣接距離)が5mm、斜交3軸ヤーン間隔(すなわち、図1における第2の方向の繊維22どうしの隣接距離及び第3の方向の繊維23どうしの隣接距離)が5mmであった。また、該3軸網状シート(TS305PP)は、質量(坪量)24g/mであった。該3軸網状シート(TS305PP)の図1における角度θは約60°であった。
次いで、実施例1と同様の発泡シートを用いて同様の方法により、発泡シートの両面に3軸網状シート(TS305PP)がそれぞれ積層された積層シートを得た。この積層シートをサンプルとし、後述の手順に従って反り量を測定した。
(実施例7)
芯部にPP層、表層部に低融点PP層を配した3層構造のフラットヤーンを準備した。このフラットヤーンは、糸幅1.1mm、繊度500dtである。上記フラットヤーンに変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、3軸網状シート(TS505PP)を得た。該3軸網状シート(TS505PP)は、縦軸ヤーン間隔(すなわち、図1における第1の方向の繊維21どうしの隣接距離)が5mm、斜交3軸ヤーン間隔(すなわち、図1における第2の方向の繊維22どうしの隣接距離及び第3の方向の繊維23どうしの隣接距離)が5mmであった。また、該3軸網状シート(TS505PP)は、質量(坪量)35g/mであった。該3軸網状シート(TS505PP)の図1における角度θは約60°であった。
次いで、発泡シートとして厚みが15mmの発泡PPシート(発泡倍率30倍)を準備した。実施例1と同様の方法により、発泡シートの両面に3軸網状シート(TS505PP)がそれぞれ積層された積層シートを得た。この積層シートをサンプルとし、後述の手順に従って反り量を測定した。
(比較例1)
網状シートを積層させず、実施例1で使用したものと同じ15mm厚みの発泡スチレンシートをサンプルとし、後述の手順に従って反り量を測定した。
(比較例2)
実施例1で得た3軸網状シート(TS705PP)を発泡シートの片面にのみ積層させるようにした以外は、実施例1と同様の方法で積層シートを得た。この積層シートをサンプルとし、後述の手順に従って反り量を測定した。
(比較例3)
実施例1で得た3軸網状シート(TS705PP)を発泡シートの片面にのみ積層させるようにした以外は、実施例1と同様の方法で積層シートを得た。なお、この比較例3では、比較例2の発泡シートと逆側の面に3軸網状シート(TS705PP)を積層させた。この積層シートをサンプルとし、後述の手順に従って反り量を測定した。
(比較例4)
芯部にHDPE層、表層部にLDPE層を配した3層構造のフラットヤーンを準備した。このフラットヤーンは、糸幅1.2mm、繊度750dtである。上記フラットヤーンを、上述した公知の3軸装置を用いて約120℃にて積層圧着させることで、3軸方向積層不織布である3軸網状シート(TS715PE)を得た。該3軸網状シート(TS715PE)は、縦軸ヤーン間隔(すなわち、図1における第1の方向の繊維21どうしの隣接距離)が15mm、斜交3軸ヤーン間隔(すなわち、図1における第2の方向の繊維22どうしの隣接距離及び第3の方向の繊維23どうしの隣接距離)が15mmであった。また、該3軸網状シート(TS715PE)は、質量(坪量)17g/mであった。
次いで、実施例1と同様の発泡シートを用いて同様の方法により、発泡シートの両面に3軸網状シート(TS715PE)がそれぞれ積層された積層シートを得た。この積層シートをサンプルとし、後述の手順に従って反り量を測定した。
(比較例5)
網状シートを積層させず、実施例7で使用したものと同じ15mm厚みの発泡PPシートをサンプルとし、後述の手順に従って反り量を測定した。
[評価方法]
(網状シートの引張破断強度の測定)
網状シートの引張破断強度は、JIS L1096に準拠して測定した。この測定では、網状シートの縦方向、縦方向と直交する横方向及び縦方向に対して60°の角度をなす方向の引張破断強度を計測した。なお、ここでいう網状シートの縦方向とは、3軸網状シートにあっては、図1における繊維21の軸方向を示し、2軸網状シートにあっては、一方の軸方向を示している。
(反り量の測定)
各実施例及び比較例の積層シート(ただし、比較例1は発泡スチレンシート)の反り量の測定は、次のように行った。
図2(a)に示すように、各実施例及び比較例の積層シートを測定サンプルSとして、45℃に設定したホットプレートD上に載置した。このとき、ホットプレートDが置かれている室温環境は5℃で一定とした。また、測定サンプルの大きさは300mm×350mmとした。なお、比較例2では、発泡スチレンシートの面がホットプレート側に面するように、比較例3ではTS705PPがホットプレート側に面するように載置した。
載置してから5分経過後、測定サンプルSをホットプレート上で、図2(b)の平面図に示すように積層シート上の3箇所(隣り合う側端縁の各々の中央部分の2箇所と、これら2箇所に最も近いコーナー部分に1箇所)に200gのおもりGを載置させた。
上記のようにおもりGを載置した後、縦、横及び斜め方向で反り量の測定を実施した。縦、横及び斜め方向の測定箇所は、図2(b)に示すように、各々のおもりGが、積層シートの中心に対して点対称となる位置K,L,Mのそれぞれの点について、ホットプレート上面から測定サンプルの下面までの高さH(図1(c)参照)を計測し、下記判定基準に従って判定した。
<評価基準>
A:シート全体において反りがほとんど目立たず、非常に良好であった。
B:シート全体においてわずかな反りが見られるだけで、実用上は問題ないレベルであった。
C:シート全体において大きな反りが見られた。
Figure 2016182815
表1には、各実施例及び比較例の網状シートの構成(繊維の材質、繊維の方向、坪量)、網状シートの各方向の引張破断強度、縦、横及び斜め方向の反り量、並びに反り測定の判定結果を示している。
実施例で得られた積層シートでは、網状シートが発泡シートの両面に積層されているので、縦、横及び斜めの全方向において反り量が4mm未満であり、反りの小さい積層シートであった。特に、実施例1〜4では、網状シートが第1の方向に対する引張破断強度が150N/50mm以上であり、第1の方向に対して60°の角度をなす方向に対する引張破断強度が150N/50mm以上であるので、縦、横及び斜めの全方向において反り量が3.5mmを下回り、シート全体において反りがほとんど目立たないものであった。
一方、比較例2及び3では、片面にのみ網状シートが設けられているものであったので、大きな反りが見られた。比較例4では、網状シートの坪量が小さいため、大きな反りが見られた。
以上より、保温断熱用積層シートは、発泡シートの両面に坪量が20g/m以上である網状シートが積層された積層シートを備えることで、積層シートの表裏で温度差が生じても、反りの発生が抑制されることが示された。
1 網状シート
2 繊維

Claims (4)

  1. 発泡シートの両面に坪量が20g/m以上である網状シートが積層されている、保温断熱用積層シート。
  2. 前記網状シートは、第1の方向に対する引張破断強度が150N/50mm以上であり、前記第1の方向に対して60°の角度をなす方向に対する引張破断強度が150N/50mm以上である、請求項1に記載の保温断熱用積層シート。
  3. 前記網状シートは、複数本のフラットヤーンが交差して網状に配列されて形成されている、請求項1又は2に記載の保温断熱用積層シート。
  4. 前記網状シートを構成する材料がポリプロピレンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の保温断熱用積層シート。
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