JP2016176912A - 加工形状決定方法及び補修方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋼構造物の補修作業においてより小さい加工量によって十分な疲労寿命を確保する。【解決手段】既設の鋼構造物の応力集中を緩和するために少なくとも一部に曲面形状を含む加工形状に基づいて当該鋼構造物の応力集中部位を切削加工する際の当該加工形状を決定する加工形状決定方法であって、応力集中部位を含む平面の中から一の平面を抽出するステップと、抽出された平面内において曲面形状に対応する円弧の半径を変化させながら疲労寿命評価を行うことにより所望の疲労寿命が得られる円弧の最小半径を決定するステップと、抽出された平面内において最小半径を有する円弧からなる加工形状が疲労亀裂が進展する最小応力以上の応力が負荷され得る領域である疲労蓄積部と過去の亀裂発生実績に基づいて加工時に存在することが予測される仮想的な亀裂である仮想亀裂とを含むように円弧の中心の位置を決定するステップと、を含む加工形状決定方法を提供する。【選択図】図6

Description

本発明は、既設の鋼構造物における応力集中を緩和して疲労寿命を延長するために当該鋼構造物の応力集中部位を切削加工する際の加工形状を決定する加工形状決定、及び当該加工形状決定方法を用いた当該鋼構造物の補修方法に関する。
圧延機やプレス等のハウジングに代表される既設の鋼構造物においては、繰り返し応力が負荷されることによる疲労破壊を防止するために、定期的に診断が行われ、必要に応じて補修が行われている。特に、大型の鋼構造物は、一般的に鋳造品であるため、当該鋼構造物内において気泡状の内部欠陥が不可避的に発生し得る。当該内部欠陥は、繰り返し応力を受けることにより、疲労亀裂の起点となる恐れがある。
そこで、例えば、特許文献1には、FEM(Finite Element method)解析を用いて疲労亀裂が進展する可能性のある鋼構造物内の欠陥の限界寸法を表層からの深さ別に求め、疲労亀裂が進展する可能性のある欠陥の有無を表層からの深さに応じて異なる探傷法によって検出する内部欠陥診断方法が開示されている。
更に、特許文献1には、鋼構造物の補修方法として、上記内部欠陥診断方法によって疲労亀裂が進展する可能性のある欠陥が表層部において検出された場合には、当該表層部を削り取る加工を行い、疲労亀裂が進展する可能性のある欠陥が表層部以外において検出された場合には、発生応力そのものを低下させるために応力集中部位(例えばコーナー部等)を円弧状に(曲面状に)切削加工することが記載されている。応力集中部位を曲面状に切削加工することにより、応力集中が緩和されるため、欠陥が表層部以外に存在する場合であっても、当該欠陥からの疲労亀裂の進展を抑制することができ、鋼構造物の疲労寿命を延長することができる。また、応力集中部位を曲面状に加工することにより、当該加工範囲内に欠陥が存在する場合であれば、当該欠陥を除去することもできる。
特開2010−8189号公報
ここで、特許文献1では、応力集中部位を曲面状に切削加工する際に、過剰な加工によって強度低下が生じないようにFEM解析等によって適切な切削代を確認することが必要である旨の記載はあるものの、その具体的な加工形状や、加工形状の決定方法については言及されていない。従って、応力集中部位に対する加工形状が必ずしも適切ではない可能性がある。例えば、加工量が小さ過ぎる場合には、鋼構造物の疲労寿命を十分に確保できない可能性がある。あるいは、加工量が大き過ぎる場合には、補修作業の工期が長大化したり、内部欠陥が表出する確率が高くなることが懸念される。
また、特許文献1に記載の技術では、疲労亀裂が進展する可能性のある鋼構造物内の欠陥の限界寸法を求める際に、FEM解析から求められる内部欠陥を含む断面内の最大応力が、許容応力(疲労強度)を超えなければ、当該断面内において疲労亀裂は発生しないと判断している。しかしながら、圧延機やプレスのように、不規則に変化する変動応力が繰り返し負荷される場合には、疲労強度以下の応力も疲労亀裂に関与することが知られている。よって、特許文献1に記載の技術において行われている亀裂進展の評価方法は、鋼構造物に応力が負荷される状況によっては、必ずしも適切なものとは言えない可能性がある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、既設の鋼構造物に対する補修作業において、より小さい加工量によって十分な疲労寿命を確保することが可能な、新規かつ改良された加工形状決定方法、及び当該加工形状決定方法を用いた鋼構造物の補修方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、既設の鋼構造物における応力集中を緩和するために少なくとも一部に曲面形状を含む加工形状に基づいて当該鋼構造物の応力集中部位を切削加工する際の、当該加工形状を決定する加工形状決定方法であって、前記応力集中部位を含む平面であって3次元的な前記加工形状を規定する平面の中から、最大応力が発生している部位を含む一の平面を抽出するステップと、抽出された前記平面内において、前記曲面形状に対応する円弧の半径を徐々に変化させながら、各半径に対応する前記加工形状での加工後の前記応力集中部位に対する疲労寿命評価を繰り返し行うことにより、所望の疲労寿命が得られる前記円弧の最小の半径を決定するステップと、抽出された前記平面内において、決定された最小の半径を有する前記円弧からなる前記加工形状に対応する領域が、疲労亀裂が進展する最小応力以上の応力が負荷され得る領域である疲労蓄積部と、過去の亀裂発生実績に基づいて加工時に存在することが予測される仮想的な亀裂である仮想亀裂と、を含むように、前記円弧の中心の位置を決定することにより、抽出された前記平面内における前記加工形状を決定するステップと、を含む、加工形状決定方法が提供される。
また、当該加工形状決定方法においては、前記疲労寿命評価は、修正マイナー則を用いて行われてもよい。
また、当該加工形状決定方法においては、抽出された前記平面内における前記加工形状は、前記円弧と、前記鋼構造物の壁面と所定の角度を有する直線と、が組み合わされた形状を有してもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記加工形状決定方法によって決定された加工形状に基づいて、前記鋼構造物の前記応力集中部位を加工する、補修方法が提供される。
以上説明したように本発明によれば、既設の鋼構造物に対する補修作業において、より小さい加工量によって十分な疲労寿命を確保することが可能になる。
本実施形態における加工対象装置である圧延機の概略構成を示す図である。 従来の加工形状の一例である、比較的大きな曲率半径の曲面形状を有する加工形状の一例を示す図である。 コーナー部のコーナー半径と、コーナー部の表面に発生する応力との関係を示すグラフ図である。 従来の加工形状の一例である、ナット受圧面への負荷に注目した加工形状の一例を示す図である。 従来の加工形状の一例である、亀裂の除去に注目した加工形状の一例を示す図である。 本実施形態に係る加工形状決定方法の処理手順の一例を示すフロー図である。 加工前のコーナー部の形状を示す図である。 コーナー部に設定された最大のコーナー半径を有する加工範囲の一例を示す図である。 修正マイナー則について説明するための説明図である。 疲労寿命の解析対象としている圧延機における圧延荷重及びパス回数の実績値の一例を示すグラフ図である。 マイナー則と修正マイナー則との違いについて説明するための説明図である。 縮小されたコーナー半径を有する加工範囲の一例を示す図である。 コーナー部における疲労蓄積部及び仮想亀裂の一例を示す図である。 最終的に決定されたコーナー部における加工形状の一例を示す図である。 本実施形態に係る情報処理装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
ここで、本発明は、応力集中を緩和して鋼構造物の疲労寿命を延長するための、当該鋼構造物の応力集中部位に対する加工に関するものである。以下では、本発明の好適な一実施形態として、鋼構造物が圧延機のハウジングである場合について説明する。ただし、本発明はかかる例に限定されず、鋼構造物であれば他の装置に対する加工が対象であってもよい。
ここで、本発明では、加工対象となる鋼構造物は既設のものであることが想定される。新設の鋼構造物では、例えば予め疲労寿命が十分大きくなるように各部の形状を設計すればよいからである。既設の鋼構造物において、例えば能力の増強等に応じてその疲労寿命を延長させる必要が生じた場合に、補修作業によってその要請に対応するために、本発明が好適に適用され得る。本実施形態においても、加工対象である圧延機のハウジングは既設のものであるとして以下の説明を行う。
以下では、まず、(1.加工対象部位について)において、鋼構造物である圧延機のハウジングの概略構成、及び本実施形態で扱う当該ハウジング内における加工対象部位について説明する。次いで、(2.従来技術についての検討)において、上記加工対象部位に対する従来の加工方法について検討する。次いで、(3.本実施形態に係る加工形状決定方法)において、本実施形態に係る加工形状決定方法の処理手順と、当該加工形状決定方法によって決定される加工形状の一例について説明する。最後に、(4.情報処理装置の機能構成)において、本実施形態に係る加工形状決定方法を実行する情報処理装置の機能構成の一例について説明する。
なお、本明細書において、「加工形状」とは、加工対象部位に対して加工を施す領域の形状のことを意味する。つまり、加工形状は、加工対象部位に対する加工範囲(切削範囲)を表すものであるとも言え、加工形状に対応する領域が切削加工により取り除かれることにより、加工対象部位に対する加工が行われる。
(1.加工対象部位について)
図1を参照して、本実施形態における加工対象装置である圧延機の概略構成及び加工対象部位について説明する。図1は、本実施形態における加工対象装置である圧延機の概略構成を示す図である。図1では、圧延機10を、ロールの回転軸方向から見た様子を図示している。
図1を参照すると、本実施形態における加工対象装置である圧延機10は、ハウジング110内に、上ワークロール111a、下ワークロール111b、上バックアップロール112a及び下バックアップロール112bが備えられて構成される。本実施形態では、当該ハウジング110を加工対象としている。
上ワークロール111a及び下ワークロール111bは、所定のロール回転速度で回転するとともに上下から所定の圧力で圧延材を圧下することにより、当該圧延材を一方向(図中左右方向)に通板しながら所定の板厚に形成する。上バックアップロール112a及び下バックアップロール112bは、上ワークロール111a及び下ワークロール111bの上下にそれぞれ設けられる。上バックアップロール112a及び下バックアップロール112bは、上ワークロール111a及び下ワークロール111bを上下から支持することにより、圧延時における上ワークロール111a及び下ワークロール111bによる圧延材の圧下を補助する。
なお、以下の説明では、圧延機10における圧延材の通板方向に対応する方向をy軸方向とも呼称する。また、y軸方向と垂直な平面内において互いに直交する2方向を、それぞれx軸方向及びz軸方向とも呼称する。図1に示すように、圧延材の板幅方向に対応する方向をx軸方向とし、圧延材の厚み方向に対応する方向をz軸方向としている。更に、以下の説明では、x軸方向のことを左右方向、z軸方向のことを上下方向とも呼称することがある。
図示を省略するが、ハウジング110内には、各ロールを軸支する軸受(チョック)も格納されている。ハウジング110において、上バックアップロール112aの軸受の上方に対応する位置には、圧下ナット(図示せず。)が格納される略円筒形状の圧下ナット格納部115が形成される。圧下ナット格納部115に格納された圧下ナットには、外周面にねじ山が形成された棒状部材である圧下スクリューが螺合され、挿通される。圧延時には、圧下スクリューの下端で上バックアップロール112aのチョックの上部が押圧される。
ここで、圧延時には、圧延材から上ワークロール111a及び上バックアップロール112aに対して上向きに反力が負荷される。従って、圧下スクリューを介して圧下ナットにも上向きに力が加わるため、圧下ナット格納部115は圧下ナットで押圧されることとなる。このように、圧下ナット格納部115には、圧延時に多大な力が負荷されることとなる。その際、圧下ナット格納部115のコーナー部Xは応力集中部位となり得るため、当該コーナー部Xの形状を、応力が緩和されるような形状に加工することにより、ハウジング110の疲労寿命を延長することができる。
そこで、本実施形態では、一例として、疲労寿命を延長するために、当該コーナー部Xを加工する場合について説明することとする。ただし、本発明はかかる例に限定されず、疲労破壊に寄与し得る応力集中部位であれば、鋼構造物の他の部位が加工対象部位であってよい。
(2.従来技術についての検討)
圧延機10のハウジング110のコーナー部Xについては、亀裂や内部欠陥を除去することにより疲労寿命を延長するために、従来、様々な加工方法が検討されてきた。ここでは、コーナー部Xに対するいくつかの従来の加工方法について説明するとともに、本発明者らがこれらの加工方法について検討した内容について説明する。
(2−1.内部欠陥に注目した加工方法)
例えば圧延機10が厚板用の圧延機のように大型の圧延機である場合には、一般的に、ハウジング110は鋳造によって製造される。ハウジング110が鋳造によって製造される場合には、当該ハウジング110内に気泡状の内部欠陥が不可避的に発生し得る。これらの内部欠陥は疲労亀裂の起点となる可能性があるため、コーナー部Xの表層に内部欠陥が存在する場合には、当該内部欠陥を除去するようにコーナー部Xを加工することにより、ハウジング110の疲労寿命を延長することができる。
このような内部欠陥に注目してコーナー部Xを加工する方法の一例が、上記特許文献1に開示されている。上述したように、特許文献1には、FEM解析を用いて疲労亀裂が進展する可能性のある鋼構造物内の欠陥の限界寸法を表層からの深さ別に求め、疲労亀裂が進展する可能性のある欠陥の有無を表層からの深さに応じて異なる探傷法によって検出する内部欠陥診断方法が開示されている。また、特許文献1には、応力集中部位(すなわちコーナー部Xに対応する部位)に対する具体的な加工方法として、上記内部欠陥診断方法によって疲労亀裂が進展する可能性のある欠陥が表層部において検出された場合には、当該表層部を削り取る加工を行い、疲労亀裂が進展する可能性のある欠陥が表層部以外において検出された場合には、発生応力そのものを低下させるために当該応力集中部位を所定の曲率半径を有する曲面状に切削加工することが記載されている。
しかしながら、特許文献1では、応力集中部位を曲面状に切削加工する際に、過剰な加工によって強度低下が生じないようにFEM解析等によって適切な切削代を確認することが必要である旨の記載はあるものの、その具体的な加工形状や、当該加工形状の決定方法については言及されていない。従って、特許文献1に記載の方法によってコーナー部Xを加工したとしても、加工後の当該コーナー部Xの形状は、疲労寿命の観点からは必ずしも最適なものではない可能性がある。
また、特許文献1に記載の技術では、疲労亀裂が進展する可能性のある鋼構造物内の欠陥の限界寸法を求める際に、FEM解析から求められる内部欠陥を含む断面内の最大応力が、許容応力(疲労強度)を超えなければ、当該断面内において疲労亀裂は発生していないと判断している。しかしながら、圧延機10のように、不規則に変化する変動応力が繰り返し負荷される場合には、疲労強度以下の応力も疲労亀裂に関与することが知られている(詳細は下記図6に示すステップS105における処理についての説明を参照)。よって、特許文献1に記載の亀裂進展の評価方法では、必ずしも正確な評価が行われない可能性がある。
(2−2.加工後の形状における最大発生応力に注目した加工方法)
従来、コーナー部Xの加工形状を決定する際には、FEM解析等によって加工後の形状においてコーナー部Xの表面に生じる最大発生応力を算出し、当該最大発生応力が許容応力(疲労強度)以下ならば亀裂は発生しないと判定し、コーナー部Xの加工形状を評価している。ここで用いられる疲労強度の値は、通常、同一の大きさの応力が繰り返し作用する場合を想定して求められるものである。
しかしながら、圧延機10のハウジング110に作用する応力は、圧延材の板厚等、圧延条件に応じて変動し得る。このような変動応力が繰り返し作用する場合には、疲労強度以下の応力も疲労亀裂の発生に関与することが知られている。従って、圧延機10のハウジング110のように変動応力が作用し得る鋼構造物に対する加工形状を決定する際には、上記のような、最大発生応力が疲労強度以下ならば亀裂は発生しないとする判定基準は必ずしも適切ではなく、十分な疲労寿命を得られない恐れがある。
(2−3.応力集中の緩和に注目した加工方法)
一般的に、コーナー部における応力集中を緩和するためには、当該コーナー部を所定の曲率半径を有する曲面状に加工する手法が知られている。また、当該曲面の曲率半径が大きいほど、コーナー部に発生する応力は低下することも知られている。従って、単純に応力集中を緩和することを目的とする場合には、比較的大きな曲率半径を有するようにコーナー部Xを加工することが有効である。
図2に、このような、比較的大きな曲率半径の曲面形状を有する加工形状の一例を示す。図2は、従来の加工形状の一例である、比較的大きな曲率半径の曲面形状を有する加工形状の一例を示す図である。
なお、図2並びに後述する図4、図5、図7、図8、図12、図13及び図14では、いずれも、一例として、ハウジング110のコーナー部X周辺の領域のy−z平面での一断面の様子を拡大して示している。また、これらの図では、加工前の形状との違いを明確にするために、コーナー部Xにおける当該断面内での加工形状120を、ハッチングを付した領域として示している。つまり、ハウジング110から加工形状120に対応する領域が切削加工により取り除かれた形状が、当該断面内における加工後のコーナー部Xの形状である。
ここで、これらの図において一平面内での加工形状120を示しているのは、本実施形態では、コーナー部Xにおける、圧下ナット格納部115の円周の中心軸を通りz軸方向と平行な平面のうちの1つの平面内での加工形状120が決定されれば、自ずと、コーナー部Xに対する3次元的な加工形状120が決定され得るからである。本実施形態では、コーナー部Xを加工する加工装置として、剣バイト等の刃物を、z軸方向を回転軸方向として圧下ナット格納部115の円周方向に回転させながら、当該刃物によりコーナー部Xの壁面を切削するものを用いることを想定している。本実施形態では、このような加工装置を用いて、刃物をz軸方向を回転軸方向として圧下ナット格納部115の円周方向に回転させながら、圧下ナット格納部115の円周の中心軸を通りz軸方向と平行な各平面内において加工形状120に対応する範囲が切削されるように当該刃物をコーナー部Xの壁面に対して徐々に移動させることにより、コーナー部Xに対する3次元的な加工が行われる。
つまり、本実施形態では、圧下ナット格納部115の円周の中心軸を通りz軸方向と平行な平面は、3次元的な加工形状120を規定し得る平面(当該平面内における加工形状120によって、コーナー部Xに対する3次元的な加工形状120が規定され得る平面)であると言える。図2、図4、図5、図7、図8、図12、図13及び図14では、圧下ナット格納部115の円周の中心軸を通りz軸方向と平行な平面のうちの一平面内における加工形状120を図示しているが、これらの図に示す平面内での加工形状120に対応する形状が圧下ナット格納部115の円周方向に沿って連なった3次元的な形状が、実際の加工形状120の形状となる。
このように、本実施形態では、円筒形状の圧下ナット格納部115のコーナー部Xを加工対象部位とし、上述したような加工装置を用いることを想定しているために、実際には3次元形状である加工形状120について説明する際に、圧下ナット格納部115の円周の中心軸を通りz軸方向と平行な平面のうちの1つの平面内での加工形状120について説明すれば足りる。従って、本明細書では、特に記載のない限り、加工形状120について説明する際には、平面内での加工形状120について説明することとしている。平面内での加工形状120においては、加工形状120を構成する応力集中緩和のための曲面形状は、円弧として表現され得る。また、当該曲面形状の曲率半径は、当該円弧の半径(以下、コーナー半径とも呼称する)として表現され得る。また、当該曲面形状の曲率中心は、当該円弧の中心として表現され得る。
なお、詳しくは下記(3.本実施形態に係る加工形状決定方法)以降で説明するが、本実施形態では、このような加工形状120の特性を利用して、3次元的な加工形状120を直接求めるのではなく、一平面内での加工形状120を決定する処理が行われる。このとき、加工形状120を決定するための平面としては、例えばコーナー部Xを模擬した3次元の計算モデルに対するFEM解析により、圧下ナット格納部115の円周の中心軸を通りz軸方向と平行な平面(すなわち、3次元的な加工形状120を規定し得る平面)のうち、最も大きな応力が発生し得る部位を含む平面が抽出される。抽出された最も大きな応力が発生し得る部位を含む平面内において、十分な応力集中の緩和が実現される加工形状120が決定されれば、当該平面内での加工形状120に基づいて決定される3次元の加工形状120においても、十分な応力集中の緩和がなされると考えられるからである。
図2に戻り、比較的大きな曲率半径の曲面形状を有する(すなわち、比較的大きなコーナー半径を有する)加工形状120についての説明を続ける。
図2に示す例では、加工形状120は、外周がナット受圧面113(圧下ナット格納部115の上面)に接するような円弧形状を有している。すなわち、図2に示す加工形状120に基づく加工では、ナット格納部側面114(圧下ナット格納部115の側面)のみが切削され、ナット受圧面113は加工されないこととなる。ただし、図2に示す加工形状120は、あくまで一例であり、実際には、ナット受圧面113及びナット格納部側面114に跨るように加工形状120の領域が設けられる場合もある。
本発明者らは、図2に示す加工形状120の効果を確認するために、図2に示す加工形状120による加工後の構造を模擬した計算モデルを作成し、FEM解析によって、加工後のコーナー部Xのコーナー半径(すなわち、加工形状120のコーナー半径)と、コーナー部Xの表面に発生する応力との関係を求めた。この際、外周がナット受圧面113に接するように加工形状120のコーナー半径を変化させ(すなわち円弧の上端の位置は固定した状態でコーナー半径を変化させ)、各加工形状においてコーナー部Xの表面に発生する応力を計算した。
計算結果を図3に示す。図3は、コーナー部Xのコーナー半径と、コーナー部Xの表面に発生する応力との関係を示すグラフ図である。図3に示すように、従来知られているように、コーナー半径が大きくなるほど発生応力は低下することが確認できた。従って、比較的大きなコーナー半径の円弧形状を有するようにコーナー部Xを加工することにより、コーナー部Xにおける応力集中は大幅に緩和されるため、ハウジング110の疲労寿命を延長することができる可能性がある。
しかしながら、加工形状120が大きければ、それだけ、加工に時間を要することとなる。本実施形態では、既設のハウジング110に対する補修を想定しているため、加工工期が長ければ、それだけ設備を停止する期間が長くなり、生産性の低下につながる恐れがある。また、加工形状120が大きい場合には、それだけ不測の内部欠陥が表出する可能性が高まるため、かえって疲労亀裂の発生を引き起こしてしまう危険性がある。
(2−4.ナット受圧面への負荷に注目した加工方法)
ハウジング110では、ナット受圧面113に圧延時の荷重が負荷されることとなるため、コーナー部Xを加工する際には、ナット受圧面113の面積はできるだけ維持されることが好ましい。図4に、このような、ナット受圧面113への負荷に注目した加工形状の一例を示す。図4は、従来の加工形状の一例である、ナット受圧面113への負荷に注目した加工形状の一例を示す図である。
図4を参照すると、加工形状120は、図2に示す場合と同様に、外周がナット受圧面113に接するような円弧形状を有している。すなわち、図4に示す加工形状120に基づく加工では、ナット格納部側面114のみが切削され、ナット受圧面113は加工されないこととなる。このように、外周がナット受圧面113に接するような円弧形状を有する加工形状120を設定することにより、ナット受圧面113の面積を維持しつつ、ハウジング110の疲労寿命の延長を図ることが可能となる。
しかしながら、コーナー部Xには、疲労亀裂が生じやすいと考えられる疲労蓄積部130が存在し得る。図4では、コーナー部Xに存在し得る疲労蓄積部130の一例を概念的に図示している。なお、本明細書では、疲労亀裂が進展する最小応力以上の応力が負荷され得る領域のことを、疲労蓄積部130と呼んでいる。疲労蓄積部130の詳細については、後述する図6に示すステップS113における処理についての説明において詳述する。
疲労蓄積部130がナット格納部側面114から垂直にハウジング110内部に進んだ場所に位置していれば、ナット格納部側面114のみを切削するような加工形状120が設定された場合であっても当該疲労蓄積部130を除去できる可能性がある。しかしながら、実際には、例えば図4に示すように、疲労蓄積部130は、ナット受圧面113側とナット格納部側面114側とに跨った領域に存在し得る。このような場合には、図4に示すようなナット格納部側面114のみを切削するような加工形状120では、疲労蓄積部130を除去できない可能性がある。
このように、図4に示す加工形状120では、ナット受圧面113の面積は維持することができるものの、疲労蓄積部130を除去することができない可能性があり、疲労寿命を十分に延長することができない恐れがある。
(2−5.亀裂の除去に注目した加工方法)
従来、コーナー部Xを加工する際に、当該コーナー部Xにおいて発生した亀裂を除去するように加工形状120が設定されることがある。このとき、コーナー部Xでは、複数の亀裂、例えば、ナット受圧面113から内部に向かって進展する亀裂と、ナット格納部側面114から内部に向かって進展する亀裂と、が、同時に生じる場合がある。このように比較的広範囲に渡って複数の亀裂が生じた場合に、単一の円弧からなる加工形状120によって、これら複数の亀裂を除去しようとすると、コーナー半径の大きい加工形状120を設定する必要が生じる。これは、上記(2−3.応力集中の緩和に注目した加工方法)で説明したように、加工工期の観点から好ましくない。
従って、広範囲に渡って複数の亀裂が発生した場合に対応するコーナー部Xの加工形状として、図5に示す加工形状が提案されている。図5は、従来の加工形状の一例である、亀裂の除去に注目した加工形状の一例を示す図である。
図5に示す加工形状120は、複数の円弧が組み合わされて構成されている。これら複数の円弧は、互いに異なる中心及び互いに異なるコーナー半径を有し得る。このように、複数の円弧を組み合わせて加工形状120を設定することにより、加工時に、深く切り込むことなく、より広範囲を切削することができるため、広範囲に渡って複数の亀裂が発生している場合であっても、これらの亀裂を除去し得るような加工形状120を設定することが可能となる。よって、単一の円弧に基づいて加工形状120を決定する場合に比べて、加工工期を短縮しつつ、より疲労寿命を延長することができる。
しかしながら、複数の円弧を組み合わせて加工形状120を設定する場合には、これらの円弧が滑らかにつなぎ合わされるようにしなくてはならない。円弧のつなぎ目が滑らかでないと、当該つなぎ目が新たな応力集中部位となり得るからである。従って、実際に加工を行う際には、複雑な加工が必要となってしまい、結果的に加工工期をそれ程短縮することができない。
(2−6.まとめ)
以上、本発明者らが、圧延機10のハウジング110のコーナー部Xに対する従来の加工方法について検討した結果について説明した。まとめると、本発明者らは、従来技術について検討した結果、以下の知見を得た。
ハウジング110の疲労寿命をより長くしようとするためには、コーナー部Xにおける応力集中を緩和すればよいため、加工後のコーナー部Xのコーナー半径がより大きくなるように加工形状120を設定すればよいとする加工方法がある。しかしながら、加工形状120が過剰に大きいと、加工工期が長大化してしまうため、設備の停止に伴う生産性の低下を招く恐れがある。また、過剰に加工を行うことにより、意図せぬ内部欠陥が表出してしまい、かえって疲労亀裂の発生の可能性を高めてしまう恐れもある。従って、加工形状120を決定する際には、加工後に十分な疲労寿命を確保可能な最小限の体積を有する加工形状120を検討する必要がある。
加工後の疲労寿命を見積もるための方法として、従来、FEM解析等によって加工後のコーナー部Xの形状において当該コーナー部Xの表面に生じる最大発生応力を算出し、当該最大発生応力が疲労強度以下ならば亀裂は発生しないと判定する方法が用いられている。しかしながら、圧延機10のハウジング110のように変動応力が繰り返し作用する場合には、疲労強度以下の応力も疲労亀裂の発生に関与することが知られている。従って、圧延機10のハウジング110のように変動応力が作用し得る鋼構造物に対する加工形状120を決定する際には、上記のような従来の評価方法は必ずしも適切ではなく、正確な疲労寿命が算出されない恐れがある。結果的に、適切な加工形状120を決定することが困難となる可能性がある。
その他の従来技術として、内部欠陥に注目した加工方法や、ナット受圧面113への負荷に注目した加工方法、亀裂の除去に注目した加工方法等が存在する。しかしながら、これらの加工方法においても、疲労寿命の評価が必ずしも適切なものとは言えなかったり、あるいは、加工工期が長大化してしまう恐れがある。
このように、従来、圧延機10のハウジング110のコーナー部Xに代表されるような鋼構造物の応力集中部位に対する加工については、加工後の形状における疲労寿命を適切に評価することにより、より小さい加工量によって十分な疲労寿命を確保可能な加工形状120を決定するための方法は、確立されていなかったと言える。そこで、本発明者らは、以上の検討結果に基づいて、より小さい加工量によって十分な疲労寿命を確保することが可能な加工形状決定方法について鋭意検討した結果、本明細書において開示する本発明の好適な実施形態に想到したものである。以下では、本発明者らが想到した、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。
(3.本実施形態に係る加工形状決定方法)
図6を参照して、本実施形態に係る加工形状決定方法の処理手順について説明する。図6は、本実施形態に係る加工形状決定方法の処理手順の一例を示すフロー図である。本実施形態に係る加工形状決定方法では、コーナー部Xを模擬した計算モデルを用いて、当該計算モデルに対する数値計算処理により、コーナー部Xに対する加工形状120が決定される。後述する図7、図8、図12、図13及び図14に示す構造は、計算の過程で用いられる、又は計算の結果である、コーナー部Xに対応する計算モデルの一断面を示している。
なお、本実施形態に係る加工形状決定方法は、大きく2つの段階に分けられる。具体的には、本実施形態に係る加工形状決定方法では、まず、第1の段階として、加工形状120を構成する円弧について、十分な疲労寿命が得られる最小のコーナー半径が決定される。以下では、当該第1の段階における処理のことを、コーナー半径決定処理(曲率半径決定処理)とも言う。次に、第2の段階として、疲労蓄積部や仮想亀裂(加工時に存在することが予測される仮想的な亀裂)が除去されるように、決定されたコーナー半径に対応する円弧の中心が決定される。以下では、当該第2の段階における処理のことを、円弧中心位置決定処理(曲率中心位置決定処理)とも言う。第1及び第2の段階によってコーナー半径及び当該コーナー半径に対応する円弧の中心が決定されることにより、当該円弧から構成される加工形状120の形状及び位置が決定される、すなわち、加工形状120が決定されることとなる。第1の段階が、後述するステップS103〜ステップS111に示す処理に対応し、第2の段階が、後述するステップS113〜ステップS117に示す処理に対応する。
(ステップS101)
図6を参照すると、本実施形態に係る加工形状決定方法では、まず、加工前のコーナー部Xの形状に対して、FEM解析が行われる(ステップS101)。ステップS101でFEM解析の対象となる、加工前のコーナー部Xの形状を、図7に示す。図7は、加工前のコーナー部Xの形状を示す図である。
ステップS101では、図7に示す構造を模擬した3次元の計算モデルを用いて、FEM解析により、ナット受圧面113に圧延機10における圧延荷重の実績値と同等の荷重が負荷された状態での、加工前のコーナー部Xにおける応力分布が計算される。なお、ステップS101では、FEM解析以外の他の解析手法によって、加工前のコーナー部Xにおける応力分布が計算されてもよい。
更に、ステップS101では、FEM解析の結果に基づいて、コーナー部Xを含む平面であって圧下ナット格納部115の円周の中心軸を通りz軸方向と平行な平面の中から、最も大きな応力が発生し得る部位を含む平面が抽出され、加工形状120を決定するための平面として設定される。以降のステップS103〜ステップS117に示す処理は、設定された当該平面内における加工形状120を決定するための処理である。加工対象部位において最も大きな応力が発生し得る部位を含む平面に対して、十分な疲労寿命が確保され得る加工形状120を設定することができれば、当該加工形状120に基づいて3次元的な加工が行われた当該加工対象部位においても、十分な疲労寿命を確保することができると考えられるからである。
本実施形態では、図1に示す圧下ナット格納部115のコーナー部Xを加工対象としているため、FEM解析の結果に基づいて、圧下ナット格納部115の円周の中心軸を通りz軸方向と平行な平面のうち、最も大きな応力が発生し得る部位を含む平面が、加工形状120を決定するための平面として設定される。これは、上述したように、コーナー部Xを加工する加工装置として、刃物を、z軸方向を回転軸方向として圧下ナット格納部115の円周方向に回転させながら、コーナー部Xの加工を行う装置が用いられ得るからである。加工対象部位が異なる場合には、当該加工対象部位の形状や実際に加工を施す加工装置の特性等を考慮して、当該加工対象部位を含む平面であって3次元的な加工形状120を規定し得る平面の中から、最も大きな応力が発生し得る部位を含む平面が、加工形状120を決定するための平面として適宜設定され得る。
(ステップS103)
ステップS103では、コーナー部Xに対して、最大のコーナー半径を有する加工形状120が設定される。ここで、最大のコーナー半径としては、周囲の構造の寸法に干渉しない、構造上許される最大のコーナー半径が設定される。最大のコーナー半径を有する加工形状120の一例を、図8に示す。図8は、コーナー部Xに設定された最大のコーナー半径を有する加工形状120の一例を示す図である。
図8に示す例では、加工形状120は、円弧の外周がナット受圧面113に接するように設定されている。また、加工形状120のコーナー半径は、例えばナット格納部側面114に設けられている段差と干渉しないような最大のコーナー半径として設定されている。当該段差は、圧下ナット格納部115の寸法を規定するものである。このように、加工形状120の最大のコーナー半径は、上記段差等の圧下ナット格納部115の周囲のあらゆる構造の寸法と干渉しないような最大のコーナー半径として設定される。
なお、上記のように、図8に示す例では、加工形状120は円弧の外周がナット受圧面113に接するように設定されているが、ステップS103では、加工形状120が設定される位置(すなわち円弧の中心の位置)は図8に示す例に限定されない。上述したように、本実施形態に係る加工形状決定方法では、後に加工形状120を構成する円弧の最適な位置を決定する処理が行われるため、ステップS103の段階では加工形状120の位置は特に限定されず、任意であってよい。
ここで、図示する例では、加工形状120は、所定の半径を有する円弧と、ナット格納部側面114と所定の角度をなす直線とが組み合わされた形状を有している(後述する図14も参照)。当該所定の角度は、例えば45度である。これは、実際に加工を行う加工装置の特性や加工時の作業手順等を考慮して、加工後における実際の形状を模擬したものである。
例えば、コーナー部Xの加工方法の一例として、剣バイト等の刃物を、z軸方向を回転軸方向として圧下ナット格納部115の円周方向に回転させながら、当該刃物を徐々にコーナー部Xの壁面内に侵入させていくことにより、コーナー部Xを3次元的に切削する方法が考えられる。当該方法によって加工が行われる場合において、圧下ナット格納部115の円周の中心軸を通りz軸方向と平行な平面内での加工形状について考えると、コーナー部Xの壁面に対して剣バイトが最初に挿入される部分については、当該平面内における加工形状は、円弧形状にはならず、直線的な形状になる。図8や、上述した図2、図4及び図5、並びに後述する図12、図13及び図14に示す例では、このような加工方法が用いられることを考慮して、加工形状の設計段階から、円弧と、ハウジング110に対する剣バイトの挿入角度に対応する角度を有する直線と、が組み合わされた加工形状120を設定しているのである。
図8等に示す加工形状120の形状はあくまで一例であり、本実施形態では、加工形状120は、疲労寿命の延長に寄与する円弧形状をその一部に含んでいればよく、加工形状120の具体的な形状は、上記のように、実際に加工を行う加工装置の特性や加工時の作業手順等を考慮して、適宜設定されてよい。例えば、上述した例とは異なる加工方法により、加工形状120の全域に渡って円弧状の加工が実行できる場合であれば、円弧のみからなる加工形状120が設定されてもよい。実際の加工時のことを考慮した形状を有する加工形状120を用いることにより、より正確に疲労寿命の評価を行い、より適切に加工形状120を決定することが可能になる。
(ステップS105)
次に、設定された加工形状120に対応する加工後のコーナー部Xの形状に対する疲労寿命評価が行われる(ステップS105)。本実施形態では、疲労寿命を評価する際に、修正マイナー則が好適に用いられる。
図9は、修正マイナー則について説明するための説明図である。修正マイナー則では、互いに異なる大きさの応力がランダムに負荷されている状態を、各応力が単独で繰り返し負荷されている状態とみなして、疲労寿命が評価される。例えば、互いに異なる大きさの応力σ,σ,・・・,σ,・・・,σが、それぞれ、n,n,・・・,n,・・・,n回繰り返し負荷される場合を考える。このとき、図9に示すように、応力σ,σ,・・・,σ,・・・,σが繰り返し負荷された際に破断に至る繰り返し数(破断繰り返し数)は、S−N線図から、それぞれ、N,N,・・・,N,・・・,Nである。修正マイナー則では、破断繰り返し数Nを用いて、応力σがn回負荷された場合の疲労損傷度ΔDを、下記数式(1)のように表す。
Figure 2016176912
そして、全体の疲労損傷度D(累積した疲労損傷度D)は、下記数式(2)のように、ΔDの線形和として表される。
Figure 2016176912
修正マイナー則では、上記数式(2)を用いて、全体の疲労損傷度Dが1以上になった場合に、疲労破壊が起きると判定する。
本実施形態では、ステップS105において修正マイナー則によって疲労寿命を評価する際に、応力σ及びその繰り返し回数nとして、解析の対象としている圧延機10における圧延荷重及びパス回数の実績値を用いる。図10に、圧延機10における圧延荷重及びパス回数の実績値の一例を示す。図10は、疲労寿命の解析対象としている圧延機10における圧延荷重及びパス回数の実績値の一例を示すグラフ図である。
例えば、ステップS103で設定された加工形状120に対応する加工後のコーナー部Xの形状に対して図10に示す圧延荷重が負荷された場合における、当該コーナー部Xにおける3次元的な応力分布をFEM解析によって算出し、当該応力分布から求められる対象としている平面内での最大応力値を応力σとして用いる。そして、各圧延荷重に対応するパス回数を、当該圧延荷重に対応する応力σに対する繰り返し回数nとして用いることにより、対象としている平面に対する疲労寿命評価を行う。このように、圧延機10における実績値を用いて修正マイナー則によって疲労寿命を評価することにより、圧延機10のハウジング110への実際の負荷が反映された疲労寿命を求めることができる。
また、対象としている圧延機10において能力の増強に伴う圧延荷重の増加が見込まれる場合には、圧延荷重の増加分を加味したFEM解析によって得られた応力分布から将来的に負荷され得る応力σを求め、当該応力σを用いて、修正マイナー則により疲労寿命が評価されてもよい。これにより、能力増強後においても十分な疲労寿命が確保されるコーナー半径が決定され得る。
ここで、図11を参照して、マイナー則と修正マイナー則との違いについて説明する。図11は、マイナー則と修正マイナー則との違いについて説明するための説明図である。図11では、疲労強度を考慮したS−N曲線を破線で示し、疲労強度を考慮しないS−N曲線を実線で示している。マイナー則では、疲労強度よりも小さい応力は疲労破壊に影響を与えないと考え、破線で示すS−N曲線を用いて上述したような累積された疲労損傷度Dの評価を行う。一方、修正マイナー則では、疲労強度よりも小さい応力が疲労破壊に与える影響も加味して、実線で示すS−N曲線を用いて累積された疲労損傷度Dの評価を行う。
上記(2.従来技術についての検討)で説明したように、圧延機10のように、不規則に変化する変動応力が繰り返し負荷される場合には、疲労強度以下の応力も疲労破壊に関与すると言われている。従って、通常のマイナー則ではなく、修正マイナー則を用いることにより、疲労寿命の評価をより正確に行うことができるのである。
更に、本実施形態では、上述した修正マイナー則を用いた疲労寿命評価において、ハウジング110内に存在することが想定される鋳造欠陥及び安全率を考慮して評価対象ごとに作成されたS−N曲線が用いられ得る。このように、評価対象ごとに作成される内部欠陥及び安全率を考慮したS−N曲線を用いて疲労寿命を評価することにより、より正確に疲労寿命を評価することが可能になる。
(ステップS107〜ステップS111)
図6に戻り、本実施形態に係る加工形状決定方法の処理手順についての説明を続ける。ステップS105で疲労寿命評価が行われると、次に、当該評価結果が妥当かどうかが判断される(ステップS107)。ステップS107では、ステップS105で算出された疲労寿命が、疲労寿命の目標値(以下、目標疲労寿命とも言う)に対して過剰な値になっているかどうかが判断される。目標疲労寿命は、例えば100年等、圧延機10の稼働に対して十分な疲労寿命が適宜設定され得る。
ステップS107で、算出された疲労寿命が目標疲労寿命に比べて過剰であると判断された場合には、現在疲労寿命評価の対象としている加工形状120におけるコーナー半径は、疲労寿命を過剰に延ばしてしまう適切ではない値であると考えられる。従って、この場合には、ステップS109に進み、図12に示すように、加工形状120のコーナー半径をより小さい値に再設定する処理が行われる。図12は、縮小されたコーナー半径を有する加工形状120の一例を示す図である。そして、ステップS105に戻り、設定されたコーナー半径が縮小された新たな加工形状120に対応する加工後のコーナー部Xの形状に対して、疲労寿命評価が再度行われる。
上記(2−3.応力集中の緩和に注目した加工方法)で説明したように、コーナー半径が大きいほど応力集中はより緩和されるため、加工形状120のコーナー半径を縮小することにより、疲労寿命は短縮される。従って、2回目以降のステップS105における疲労寿命評価では、1回前の疲労寿命評価の結果よりも短縮された、すなわち目標疲労寿命により近い疲労寿命が算出されることとなる。このように、本実施形態では、初めに最大のコーナー半径からなる加工形状120を設定し、徐々にそのコーナー半径を縮小させながら、各コーナー半径に対応する加工形状に対する疲労寿命評価を繰り返し行うことにより、十分な疲労寿命が得られる最小のコーナー半径が決定される。
ステップS107で、算出された疲労寿命が目標疲労寿命に比べて過剰なものではないと判断された場合には、そのときに設定されているコーナー半径が、十分な疲労寿命が得られる適切なコーナー半径であると考えられる。従って、この場合には、ステップS111に進み、目標疲労寿命に比べて過剰でない妥当な疲労寿命が得られた際の加工形状120におけるコーナー半径が、十分な疲労寿命が確保可能な最小のコーナー半径として決定される。
(ステップS113)
ステップS113以降の処理は、上述した第2の段階の処理に対応する。第2の段階では、ステップS111で決定されたコーナー半径を有する円弧の中心の位置が決定される。
ステップS113では、ステップS101で得られた加工前のコーナー部Xの形状に対するFEM解析の結果に基づいて、疲労蓄積部が推定される。ここで、本実施形態では、疲労蓄積部を、疲労亀裂が進展する最小応力以上の応力が負荷され得る領域として定義している。具体的には、ステップS113では、加工前のコーナー部Xにおいて疲労亀裂が進展する最小応力の値が、ハウジング110の材料の下限界応力拡大係数ΔKthから算出される。コーナー部Xにおいて、これまでに、疲労亀裂が進展する最小応力値以上の応力が負荷された領域は、加工前のコーナー部Xにおいて疲労が蓄積している領域であると言える。従って、本実施形態では、FEM解析の結果から得られる圧延荷重の実績値に応じた発生応力が、疲労亀裂が進展する最小応力値以上となる領域を特定し、当該領域を疲労蓄積部と推定する。
下限界応力拡大係数ΔKthは材料に応じて決定される定数であり、例えば実験値から求められる。亀裂に垂直な引っ張り応力σが加えられた際に亀裂長さaの亀裂が発生する際の応力拡大係数Kは下記数式(3)で表されることが知られているため、当該数式(3)の左辺に実験値から求められた下限界応力拡大係数ΔKthを代入することにより、疲労亀裂が進展する最小応力値σを算出することができる。
Figure 2016176912
なお、疲労蓄積部は、ステップS101で得られた加工前のコーナー部Xの形状を模擬した3次元の計算モデルに対するFEM解析の結果に基づいて求められるため、当該疲労蓄積部は3次元の領域として求められ得る。ステップS113では、このような3次元の疲労蓄積部に基づいて、ステップS101で設定された加工形状120を決定するための平面内における2次元的な疲労蓄積部が推定されることとなる。後述するように、本実施形態では、疲労蓄積部を除去するように加工形状120が設定されるが、疲労蓄積部の圧下ナット格納部115の円周方向での分布を考えれば、ステップS101で設定された加工形状120を決定するための平面、すなわち最も大きな応力が発生し得る部位を含む平面内において最も大きな領域を占めることが想定される。従って、当該平面内で疲労蓄積部が除去できていれば、加工形状120に基づく3次元の加工形状においてもほぼ疲労蓄積部が除去できていると考えられる。このように、疲労寿命を確保する観点からは、最も大きな応力が発生し得る部位を含む平面内における2次元での疲労蓄積部を考慮すれば十分であると考えられるため、ステップS113では、当該平面内での疲労蓄積部のみを対象としているのである。
(ステップS115)
次に、過去の亀裂発生実績に基づいて、加工時に存在することが予測される仮想的な亀裂(仮想亀裂)の位置及び長さが推定される(ステップS115)。例えば、ステップS115では、他の一般的な圧延機において過去に実際に生じた亀裂の位置及び長さに基づいて、圧延機10における仮想亀裂の位置及び長さが推定される。
図13は、コーナー部Xにおける疲労蓄積部及び仮想亀裂の一例を示す図である。図13では、図7、図8及び図12に示すコーナー部Xを拡大して示すとともに、ステップS111において決定されたコーナー半径を有する加工形状120と、ステップS113において推定された疲労蓄積部130と、ステップS115において推定された仮想亀裂140と、を図示している。図13に示す例では、疲労蓄積部130及び仮想亀裂140の一部は加工形状120に対応する領域内に含まれているものの、その大部分は加工形状120に対応する領域から外れた場所に位置している。
疲労蓄積部と同様に、仮想亀裂も、実際には、3次元的な亀裂として求められ得る。ステップS115では、このような3次元的な仮想亀裂に基づいて、ステップS101で設定された加工形状120を決定するための平面内における2次元的な仮想亀裂が推定されることとなる。これも疲労蓄積部と同様に、本実施形態では、仮想亀裂を除去するように加工形状120が設定されるが、ステップS101で設定された加工形状120を決定するための平面、すなわち最も大きな応力が発生し得る部位を含む平面内において、仮想亀裂が除去できていれば、加工形状120に基づく3次元の加工形状においても仮想亀裂がほぼ除去できていると考えられる。従って、疲労寿命を確保する観点からは、最も大きな応力が発生し得る部位を含む平面内における2次元での仮想亀裂を設定すれば十分であると考えられるため、ステップS115では、当該平面内での仮想亀裂のみを対象としているのである。
(ステップS117)
次に、加工形状120に対応する領域がステップS113で推定された疲労蓄積部及びステップS115で推定された仮想亀裂を含むように、ステップS111で決定された最小のコーナー半径に対応する円弧の中心の位置が決定される(ステップS117)。ステップS117において円弧の中心の位置が決定されることにより、加工形状120が決定される。このように、本実施形態では、ステップS111で加工形状120を構成する円弧の最小の半径(すなわち最小のコーナー半径)が決定され、ステップS117で当該円弧の中心が決定されることにより、ステップS101で設定された平面内における加工形状120が決定されることとなる。
(ステップS119)
次に、ステップS117で決定された加工形状120に対応する加工後のコーナー部Xの形状に対してFEM解析が行われる(ステップS119)。ステップS119では、ステップS117で決定された加工形状120に基づいて3次元的な加工がなされた後のコーナー部Xを模擬した3次元の計算モデルを用いて、FEM解析により、ナット受圧面113に圧延機10における圧延荷重の実績値と同等の荷重が負荷された状態での、加工後のコーナー部Xにおける応力分布が計算される。ステップS119では、FEM解析の結果に基づいて、決定された加工形状120による応力集中緩和の効果、加工部位周辺における異常な発生応力の有無、加工後の形状における疲労寿命等が計算され、ステップS117で決定された加工形状120が妥当なものかどうかが確認される。
もしも、疲労寿命が想定よりも短かったり、予期せぬ異常な発生応力が生じていたりした場合には、ステップS117で決定された円弧の中心位置が調整され、平面内での加工形状120の位置及び形状が微調整される。加工形状120の微調整と、調整後の加工形状120に基づく加工後のコーナー部Xの形状に対するFEM解析と、を繰り返し行い、異常な発生応力等の無い、所望の疲労寿命が確保され得る最終的な加工形状120が決定される。
図14は、ステップS117又はステップS119において最終的に決定された、コーナー部Xにおける加工形状120の一例を示す図である。図14に示す例では、最小のコーナー半径rを有する円弧の中心が移動されることにより、加工形状120に対応する領域内に疲労蓄積部130及び仮想亀裂140が含まれている。当該加工形状120に従って加工が施されることにより、疲労蓄積部130及び仮想亀裂140がともに除去されることとなる。
なお、図14に示す例では、加工形状120は、最小のコーナー半径rを有する円弧と、ナット格納部側面114と所定の角度θ(例えば45度)をなす直線とが組み合わされた形状を有している。具体的には、半径rを有する円弧と、ナット格納部側面114と所定の角度θをなす直線と、が接するように、加工形状120の形状が設定されている。これは、上述したように、実際に加工に用いられる加工装置の特性や加工手順を反映したものである。
また、加工装置によっては、加工可能な深さが制限されている場合がある。ステップS117において円弧の中心の位置を決定する際には、このような加工装置による制約も考慮されてよい。例えば、加工装置の性能に起因する制約から、深さ10(mm)までしか切削加工を行えない場合であれば、加工形状120が、ナット受圧面113及びナット格納部側面114から10(mm)以上深い位置まで達しないように、円弧の中心の位置、すなわち、加工形状120の位置が決定され得る。
以上、図6を参照して、本実施形態に係る加工形状決定方法の処理手順について説明した。本実施形態では、以上説明した加工形状決定方法に従って決定された加工形状120に従ってコーナー部Xが加工されることにより、ハウジング110に対する補修が行われる。当該加工では、例えば、コーナー部Xのz軸と平行な一平面内において、剣バイトをナット格納部側面114から当該ナット格納部側面114に対して所定の角度θでハウジング110の内部に向かって所定の深さだけ挿入し、その位置において剣バイトをz軸方向を回転軸方向として圧下ナット格納部115の円周方向に回転させる。そして、剣バイトを圧下ナット格納部115の円周方向に回転させながら、圧下ナット格納部115の円周の中心軸を通りz軸方向と平行な各平面内において加工形状120に対応する範囲が切削されるように当該剣バイトをコーナー部Xの壁面に対して徐々に移動させることにより、決定された加工形状120に基づく、コーナー部Xにおける3次元的な加工が実現される。剣バイトによって大よその形状を加工する粗加工を行った後、切削した表面の形状を整える仕上げ加工やグラインダー等を用いた磨き加工を行うことにより、決定された加工形状120に則した加工が実現される。
以上説明したように、本実施形態に係る加工形状決定方法では、まず、コーナー部Xを含む平面であって圧下ナット格納部115の円周の中心軸を通りz軸方向と平行な平面の中から、最大応力が発生している部位を含む一の平面が抽出される。次いで、抽出された当該平面内において、加工形状120を構成する円弧の半径を徐々に変化させながら、各半径に対応する加工形状120での加工後のコーナー部Xに対する疲労寿命評価を繰り返し行うことにより、所望の疲労寿命が得られる円弧の最小半径が決定される。次いで、抽出された当該平面内において、決定された最小半径を有する円弧からなる加工形状120に対応する領域が、疲労蓄積部130と、仮想亀裂140と、を含むように、当該円弧の中心の位置を決定することにより、抽出された当該平面内における加工形状120が決定される。
従って、本実施形態によれば、最大応力が発生している部位を含む一の平面において、所望の疲労寿命を確保しつつ、より範囲の小さい加工形状120が決定され得る。当該平面内において、所望の疲労寿命を確保しつつ、より範囲の小さい加工形状120を設定することができれば、当該加工形状120に基づく3次元的な加工形状120も、所望の疲労寿命を確保しつつ、より範囲の小さい加工形状120になるはずである。よって、決定された一平面内での加工形状120に基づいてハウジング110のコーナー部Xに対する3次元的な補修が行われることにより、当該ハウジング110において、より小さい加工量によって十分な疲労寿命を確保することが可能になる。
(4.情報処理装置の機能構成)
図15を参照して、図6に示す本実施形態に係る加工形状決定方法を実行するための情報処理装置の機能構成の一例について説明する。図15は、本実施形態に係る情報処理装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図15を参照すると、本実施形態に係る情報処理装置30は、その機能として、制御部310を備える。また、制御部310は、その機能として、計算モデル作成部311と、FEM解析部312と、疲労寿命評価部313と、コーナー半径決定部314と、疲労蓄積部推定部315と、仮想亀裂推定部316と、円弧中心位置決定部317と、を有する。
制御部310は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等の各種のプロセッサによって構成される。当該プロセッサが所定のプログラムに従って動作することにより、上述した制御部310の各機能が実現され、図6に示す本実施形態に係る加工形状決定方法が実行される。
以下、制御部310の各機能について詳細に説明する。なお、図示される制御部310の各機能によって実行される処理は、図6に示す加工形状決定方法における各処理に対応している。従って、制御部310の各機能によって実行される処理の詳細については、上記(3.本実施形態に係る加工形状決定方法)で既に説明していることになるため、以下の制御部310の各機能についての説明では、各機能の概要を述べるに留め、その詳細な説明は省略する。
(計算モデル作成部)
計算モデル作成部311は、FEM解析を行うための3次元の計算モデルを作成する。具体的には、計算モデル作成部311は、加工前のコーナー部Xを模擬した3次元の計算モデルを作成し、作成した計算モデルについての情報をFEM解析部312に提供する。
また、計算モデル作成部311は、所定のコーナー半径を有する加工形状120に対応する加工後のコーナー部Xを模擬した3次元の計算モデルを作成し、作成した計算モデルについての情報をFEM解析部312に提供する。この際、計算モデル作成部311は、最初は、構造上許容される最大のコーナー半径を有する加工形状120に対応する計算モデルを作成し、当該計算モデルについての情報をFEM解析部312に提供する。その後は、計算モデル作成部311は、コーナー半径決定部314からの指示により、前回設定したコーナー半径よりも小さいコーナー半径を有する加工形状120に対応する計算モデルを作成し、当該計算モデルについての情報をFEM解析部312に提供する。
更に、計算モデル作成部311は、円弧中心位置決定部317からの指示により、円弧中心位置決定部317によって決定された加工形状120に対応する加工後のコーナー部Xを模擬した3次元の計算モデルを作成し、当該計算モデルについての情報をFEM解析部312に提供する。
なお、計算モデル作成部311によって実行される処理は、図6に示すステップS101に示す処理におけるFEM解析用の計算モデルを作成する処理、ステップS103における処理、ステップS109における処理、及びステップS119におけるFEM解析用の計算モデルを作成する処理に対応している。
(FEM解析部)
FEM解析部312は、計算モデル作成部311によって作成された、加工前のコーナー部Xを模擬した3次元の計算モデルに対して、圧延機10における圧延荷重の実績値を加味したFEM解析を行い、加工前のコーナー部Xにおける応力分布を算出する。そして、FEM解析部312は、当該FEM解析の結果に基づいて、コーナー部Xを含む平面であって圧下ナット格納部115の円周の中心軸を通りz軸方向と平行な平面の中から、最も大きな応力が発生し得る部位を含む平面を抽出し、加工形状120を決定するための平面として設定する。以降の疲労寿命評価部313、コーナー半径決定部314、疲労蓄積部推定部315、仮想亀裂推定部316及び円弧中心位置決定部317における処理は、当該平面に対する処理となる。FEM解析部312は、算出した加工前のコーナー部Xにおける応力分布についての情報を、疲労蓄積部推定部315に提供する。
また、FEM解析部312は、計算モデル作成部311によって作成された、所定のコーナー半径を有する加工形状120に対応する加工後のコーナー部Xを模擬した3次元の計算モデルに対して、圧延機10における圧延荷重の実績値を考慮したFEM解析を行い、加工後のコーナー部Xにおける応力分布を算出する。なお、圧延機10における能力増強後の疲労寿命を評価したい場合には、FEM解析部312は、当該能力増強に伴う圧延荷重の増加分を考慮して、加工後のコーナー部Xに対するFEM解析を行ってもよい。FEM解析部312は、算出した当該加工後のコーナー部Xにおける応力分布についての情報を、疲労寿命評価部313に提供する。
更に、FEM解析部312は、計算モデル作成部311によって作成された、円弧中心位置決定部317によって決定された最終的な加工形状120に対応する加工後のコーナー部Xを模擬した3次元の計算モデルに対してFEM解析を行い、決定された加工形状120による応力集中緩和の効果、加工部位周辺における異常な発生応力の有無、加工後の形状における疲労寿命等を計算する。FEM解析部312は、FEM解析の結果得られた疲労寿命等についての情報を、円弧中心位置決定部317に提供する。
なお、FEM解析部312によって実行される処理は、図6に示すステップS101における処理、ステップS105において疲労寿命評価に用いられるコーナー部Xにおける応力分布を算出する処理、及びステップS119における処理に対応している。
(疲労寿命評価部)
疲労寿命評価部313は、計算モデル作成部311によって作成された、所定のコーナー半径を有する加工形状120に対応する加工後のコーナー部Xを模擬した計算モデルのうち、FEM解析部312によって設定された加工形状120を決定するための平面に対する疲労寿命評価を行う。例えば、疲労寿命評価部313は、修正マイナー則を用いて、当該計算モデルにおける疲労寿命を算出する。その際、疲労寿命評価部313は、FEM解析部312によって算出された、圧延機10における圧延実績を考慮した加工後のコーナー部Xの応力分布に基づいて、対象としている平面内での最大応力値を繰り返し応力σとして用いることができる。また、各圧延荷重に対応するパス回数の実績値を、当該圧延荷重に対応する応力σに対する繰り返し回数nとして用いることができる。疲労寿命評価部313は、算出した疲労寿命についての情報を、コーナー半径決定部314に提供する。
なお、疲労寿命評価部313によって実行される処理は、図6に示すステップS105における処理に対応している。
(コーナー半径決定部)
コーナー半径決定部314(曲率半径決定部314とも言う)は、疲労寿命評価部313によって算出された疲労寿命が妥当な値であるかどうかを判断し、当該判断結果に基づいて、十分な疲労寿命が得られる加工形状120の最小のコーナー半径を決定する。具体的には、コーナー半径決定部314は、疲労寿命評価部313によって算出された疲労寿命と、目標疲労寿命との比較を行うことにより、最小のコーナー半径を決定する。
算出された疲労寿命が、目標疲労寿命に対して過剰な値になっている場合には、現在疲労寿命評価の対象としている加工形状120におけるコーナー半径は、疲労寿命を過剰に延ばしてしまう適切ではない値であると考えられる。従って、この場合、コーナー半径決定部314は、計算モデル作成部311に対して、現在疲労寿命評価の対象としているコーナー半径よりも小さいコーナー半径を有する加工形状120に対応する計算モデルを作成するように指示する。そして、計算モデル作成部311によって作成された、縮小されたコーナー半径を有する加工形状120に対応する計算モデルを用いて、FEM解析部312によってFEM解析が行われ、当該FEM解析の結果を用いて疲労寿命評価部313によって疲労寿命が再度算出され、算出された疲労寿命が妥当かどうかの判断がコーナー半径決定部314によって再度行われる。
上記の処理が繰り返し行われた結果、算出された疲労寿命が、目標疲労寿命に近しい値になった場合には、コーナー半径決定部314は、当該疲労寿命が得られた際の加工形状120のコーナー半径を、十分な疲労寿命を確保可能な最小のコーナー半径として決定する。コーナー半径決定部314は、決定した最小のコーナー半径についての情報を、円弧中心位置決定部317に提供する。
なお、コーナー半径決定部314によって実行される処理は、図6に示すステップS107及びステップS111における処理に対応している。
(疲労蓄積部推定部)
疲労蓄積部推定部315は、FEM解析部312によって算出された加工前のコーナー部Xにおける応力分布に基づいて、コーナー部Xにおける疲労蓄積部130を推定する。本実施形態では、疲労蓄積部130は、疲労亀裂が進展する最小応力以上の応力が負荷され得る領域として定義される。疲労蓄積部推定部315は、加工前のコーナー部Xにおいて疲労亀裂が進展する最小応力の値を、ハウジング110の材料の下限界応力拡大係数ΔKthから算出する。そして、疲労蓄積部推定部315は、FEM解析によって得られた加工前のコーナー部Xにおける圧延荷重の実績値に基づく応力分布を用いて、発生応力が疲労亀裂が進展する最小応力値以上となる領域を、コーナー部Xにおける疲労蓄積部130と推定する。疲労蓄積部130は、3次元の領域として推定され得るが、疲労蓄積部推定部315は、FEM解析部312によって設定された加工形状120を決定するための平面内における2次元の領域として疲労蓄積部130を推定する。疲労蓄積部推定部315は、推定した疲労蓄積部130についての情報を、円弧中心位置決定部317に提供する。
なお、疲労蓄積部推定部315によって実行される処理は、図6に示すステップS113における処理に対応している。
(仮想亀裂推定部)
仮想亀裂推定部316は、過去の亀裂発生実績に基づいて、コーナー部Xにおける仮想亀裂140の位置及び長さを推定する。例えば、仮想亀裂推定部316は、他の一般的な圧延機において過去に実際に生じた亀裂の位置及び長さに基づいて、圧延機10における仮想亀裂140の位置及び長さを推定する。仮想亀裂140は、3次元の亀裂として推定され得るが、仮想亀裂推定部316は、FEM解析部312によって設定された加工形状120を決定するための平面内における仮想亀裂140の位置及び長さを推定する。仮想亀裂推定部316は、推定した仮想亀裂140の位置及び長さについての情報を、円弧中心位置決定部317に提供する。
なお、仮想亀裂推定部316によって実行される処理は、図6に示すステップS115における処理に対応している。
(円弧中心位置決定部)
円弧中心位置決定部317(曲率中心位置決定部317とも言う)は、コーナー半径決定部314によって決定された最小のコーナー半径を有する円弧からなる加工形状120に対応する領域が、疲労蓄積部推定部315によって推定された疲労蓄積部130と、仮想亀裂推定部316によって推定された仮想亀裂140と、を含むように、当該円弧の中心の位置を決定する。円弧中心位置決定部317によって円弧の中心の位置が決定されることにより、加工形状120が決定される。なお、用いる加工装置の性能に応じて加工可能な深さが制限されている場合には、円弧中心位置決定部317は、このような加工装置による制約も考慮して、円弧の中心の位置を決定してもよい。
このように、本実施形態では、コーナー半径決定部314によって、十分な疲労寿命が得られる加工形状120の円弧の最小の半径が決定され、円弧中心位置決定部317によって、加工形状120に対応する領域内に疲労蓄積部及び仮想亀裂が含まれるように当該円弧の中心の位置が決定されることにより、FEM解析部312によって設定された加工形状120を決定するための平面内における加工形状120が決定されることとなる。
円弧中心位置決定部317は、決定した加工形状120についての情報を、計算モデル作成部311に提供する。計算モデル作成部311では、円弧中心位置決定部317によって決定された加工形状120に対応する加工後のコーナー部Xを模擬した3次元の計算モデルが作成される。そして、FEM解析部312によって、当該加工後のコーナー部Xを模擬した計算モデルに対してFEM解析が行われ、決定された加工形状120による応力集中緩和の効果、加工部位周辺における異常な発生応力の有無、加工後の形状における疲労寿命等が計算される。円弧中心位置決定部317は、FEM解析部312による当該計算結果に基づいて、自身が決定した加工形状120が妥当なものかどうかを確認する。
例えば所望の疲労寿命が得られなかった等、加工形状120が不適当なものであった場合には、円弧中心位置決定部317は、円弧の中心位置を調整し、平面内での加工形状120の位置及び形状を微調整する。加工形状120の微調整と、調整後の加工形状120に基づく加工後のコーナー部Xの形状に対するFEM解析と、が繰り返し行われ、異常な発生応力等の無い、所望の疲労寿命が確保され得る最終的な加工形状120が決定される。
円弧中心位置決定部317によって決定された妥当な加工形状120についての情報は、例えば、コーナー部Xに対して加工を行う加工装置に送信される。当該加工装置によって、コーナー部Xに対して、円弧中心位置決定部317によって決定された加工形状120に応じた加工が施されることにより、ハウジング110の補修が行われる。
なお、円弧中心位置決定部317によって実行される処理は、図6に示すステップS117及びステップS119における処理に対応している。
以上、図15を参照して、図6に示す本実施形態に係る加工形状決定方法を実行するための情報処理装置30の機能構成の一例について説明した。なお、情報処理装置30は、上述した本実施形態に係る加工形状決定方法における各処理を少なくとも実行可能に構成されればよく、その具体的なハードウェア構成は限定されない。例えば、情報処理装置30は、各種のプロセッサであってもよいし、プロセッサとメモリ等の記憶装置とが一体的に構成されたいわゆるマイコンであってもよい。あるいは、情報処理装置30は、PC(Personal Computer)等の汎用的な情報処理装置であってもよいし、サーバのような数値計算処理に特化した情報処理装置であってもよい。
また、情報処理装置30は、そのハードウェア構成に応じて、図示しない各種の機能を更に有してもよい。例えば、情報処理装置30は、各種の情報を記憶する記憶部や、情報処理装置30に対して各種の情報を入力する入力部、情報処理装置30から各種の情報を出力する出力部、及び、外部機器との間で各種の情報をやり取りする通信部等、一般的な情報処理装置が備え得る各種の機能を有していてもよい。
上記記憶部は、例えば、HDD等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等の各種の記憶装置により構成され、制御部310において処理される各種の情報(例えば、計算モデルについての情報や、FEM解析の結果についての情報、疲労寿命評価の結果についての情報、疲労寿命評価に用いられる圧延実績についての情報、仮想亀裂の推定に用いられる亀裂発生実績についての情報、最終的な加工形状についての情報等)を記憶する。
上記入力部は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバー等の各種の入力装置により構成される。ユーザは、当該入力部を介して、情報処理装置30に対して、制御部310において用いられる各種の情報や、制御部310に各種の処理を実行する旨の指示を入力することができる。
上記出力部は、例えば、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置及びランプ等の各種の表示装置によって構成される。当該出力部は、表示装置の表示面に、制御部310の各機能による処理結果(例えば、FEM解析の結果や、最終的に決定された加工形状等)を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で表示することができる。
上記通信部は、外部機器との間で各種の情報をやり取りするための、有線又は無線の通信インターフェースである。通信部における通信規格としては、各種の公知のものが用いられてよい。例えば、制御部310の円弧中心位置決定部317によって決定された加工形状についての情報が、当該通信部を介して加工装置に送信され得る。
これらの図15に図示しない各機能は、一般的な情報処理装置に備えられている公知な機能と同様であってよいため、その詳細な説明は省略する。
以上説明した本実施形態に係る加工形状決定方法を用いて、実際に鉄鋼プラントで用いられている熱間圧延ラインのVSB(Vertical Scale Breaker)の応力集中部位に対する加工形状120を決定し、補修を行った結果について説明する。補修の対象であるVSBは、熱間圧延ラインの上流側に設けられ、スラブを幅方向に圧下する、ロールが縦方向に配置された圧延機である。当該VSBにおいて、処理能力の増強が計画されたため、本実施形態に係る加工形状決定方法を用いて、能力増強後においても十分な疲労寿命を確保可能な加工形状を決定し、当該加工形状に基づく補修を行った。補修の対象部位は、上述した実施形態と同様、圧下ナット格納部115のコーナー部Xである。
本発明者らは、まず、FEM解析により、能力増強前後におけるコーナー部Xの応力分布を算出し、当該応力分布に基づいて能力増強前後におけるコーナー部Xの疲労寿命を評価した。評価結果を下記表1に示す。
Figure 2016176912
評価の結果、上記表1に示すように、能力増強後のVSBにおいては、現状の構造では、十分な疲労寿命は得られないという結果になった。そこで、図6に示す本実施形態に係る加工形状決定方法の処理手順により、能力増強後においても十分な疲労寿命を確保可能な、コーナー部Xに対する加工形状120を決定した。
具体的には、ステップS105における疲労寿命評価では、対象としているVSBに対応するS−N線図を、当該VSBと同材料の試験片による片振り引張疲労試験の結果得られたS−N線図を安全率等を考慮して補正することにより求めた。また、VSBにおける能力増強後の圧延荷重を加味したFEM解析により、所定のコーナー半径を有するように加工された加工後のコーナー部Xにおける応力分布を算出した。そして、応力分布から得られる最大応力値と、上記補正されたS−N線図と、を用いて、修正マイナー則により、疲労寿命を算出した。
図6に示すステップS105〜ステップS109における処理手順に従って、コーナー部Xの加工形状120におけるコーナー半径を徐々に小さくしながら、上記の疲労寿命の計算を繰り返し行い、必要な疲労寿命(約10年以上)を確保可能な最小のコーナー半径を求めた。ただし、本実施例では、更なる能力増強や安全率等を考慮して、計算で求められた上記コーナー半径よりも若干大きいコーナー半径を、十分な疲労寿命を確保可能な最小のコーナー半径とすることにした(ステップS111における処理に対応)。
次に、図6に示すステップS113及びステップS115における処理に従って、加工前のコーナー部Xの形状に対するFEM解析の結果から疲労蓄積部130を推定し、各種の圧延機における過去の亀裂の発生実績から仮想亀裂140を推定した。そして、上述した十分な疲労寿命を確保可能な最小のコーナー半径を有する円弧からなる加工形状120が、これら疲労蓄積部130及び仮想亀裂140を含むように、また、加工装置の性能に応じた加工深さの限界も考慮して、当該円弧の中心の位置を決定した(ステップS117における処理に対応)。本実施例の場合には、疲労蓄積部130及び仮想亀裂140を含むように加工形状120の位置を決定することができ、最終的な加工形状は、図14に示す加工形状120とほぼ同様の形状になった。
その後、決定された加工形状120に従って、コーナー部Xに対して切削加工を行った。当該加工では、まず、コーナー部Xにおけるz軸と平行な一平面において、剣バイトをナット格納部側面114から当該ナット格納部側面114に対して角度45度でハウジング110の内部に向かって所定の深さだけ挿入し、その位置において剣バイトをz軸方向を回転軸方向として圧下ナット格納部115の円周方向に回転させた。そして、剣バイトを圧下ナット格納部115の円周方向に回転させながら、圧下ナット格納部115の円周の中心軸を通りz軸方向と平行な各平面内において加工形状120に対応する範囲が切削されるように当該剣バイトをコーナー部Xの壁面に対して徐々に移動させることにより、コーナー部Xに対する、決定された加工形状120に基づく3次元的な加工を行った。剣バイトによって粗加工を行った後、幅広の刃物を用いて切削した表面の形状を整える仕上げ加工を行い、更に、グラインダー及びペーパーホイールを用いた磨き加工を行った。
上記補修を行った結果、補修後約1年が経過した現在においても、VSBは、亀裂の発生がなく健全な状態が保たれている。
(5.補足)
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
10 圧延機
30 情報処理装置
110 ハウジング
115 圧下ナット格納部
120 加工範囲
130 疲労蓄積部
140 仮想亀裂
310 制御部
311 計算モデル作成部
312 FEM解析部
313 疲労寿命評価部
314 コーナー半径決定部(曲率半径決定部)
315 疲労蓄積部推定部
316 仮想亀裂推定部
317 円弧中心位置決定部(曲率中心位置決定部)

Claims (4)

  1. 既設の鋼構造物における応力集中を緩和するために少なくとも一部に曲面形状を含む加工形状に基づいて当該鋼構造物の応力集中部位を切削加工する際の、当該加工形状を決定する加工形状決定方法であって、
    前記応力集中部位を含む平面であって3次元的な前記加工形状を規定する平面の中から、最大応力が発生している部位を含む一の平面を抽出するステップと、
    抽出された前記平面内において、前記曲面形状に対応する円弧の半径を徐々に変化させながら、各半径に対応する前記加工形状での加工後の前記応力集中部位に対する疲労寿命評価を繰り返し行うことにより、所望の疲労寿命が得られる前記円弧の最小の半径を決定するステップと、
    抽出された前記平面内において、決定された最小の半径を有する前記円弧からなる前記加工形状に対応する領域が、疲労亀裂が進展する最小応力以上の応力が負荷され得る領域である疲労蓄積部と、過去の亀裂発生実績に基づいて加工時に存在することが予測される仮想的な亀裂である仮想亀裂と、を含むように、前記円弧の中心の位置を決定することにより、抽出された前記平面内における前記加工形状を決定するステップと、
    を含む、
    加工形状決定方法。
  2. 前記疲労寿命評価は、修正マイナー則を用いて行われる、
    請求項1に記載の加工形状決定方法。
  3. 抽出された前記平面内における前記加工形状は、前記円弧と、前記鋼構造物の壁面と所定の角度を有する直線と、が組み合わされた形状を有する、
    請求項1又は2に記載の加工形状決定方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工形状決定方法によって決定された加工形状に基づいて、前記鋼構造物の前記応力集中部位を加工する、
    補修方法。
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