JP2016175390A - 多層フィルムおよび包装体 - Google Patents
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Abstract
Description
先ず、本発明を適用した一実施形態である多層フィルム1の構成について説明する。
図1は、本発明を適用した一実施形態である多層フィルム1の断面模式図である。図1に示すように、本実施形態の多層フィルム1は、バリア層2と、柔軟層3と、を備え、バリア層2の両面に柔軟層3が積層されて概略構成されている。本実施形態の多層フィルム1は、食品や医薬品などを包装するために用いられる包装袋、包装容器のような包装体の材料として用いることができる。
バリア層2は、一対の柔軟層3,3の間に設けられており、多層フィルム1にガスバリア性を付与する樹脂層である。バリア層2は、複数の第1のフィルム4と、複数の第2のフィルム5と、を備え、第1のフィルム4と第2のフィルム5とが交互に繰り返し積層されて概略構成されている。
第1のフィルム4は、後述する第2のフィルム5と交互に積層されており、多層フィルム1に優れたガスバリア性を付与する。
第1のフィルム4は、結晶性樹脂を有した樹脂膜である。結晶性樹脂としては、結晶性を有する熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ポリメチルペンテン樹脂のようなポリオレフィン系樹脂、ナイロン6樹脂、ナイロン66樹脂のようなポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリエチレン‐2,6‐ナフタレート樹脂のようなポリエステル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリグリコール酸樹脂ポリカプロラクトン樹脂、および上記樹脂を形成するモノマーを含む共重合体樹脂などが挙げられる。これらのうちの1種または2種以上を組み合せて用いることができる。
なお、以下において、第1のフィルム4が有す結晶性樹脂を、「結晶性樹脂A」と記す。
なお、結晶成分の分子鎖軸の傾斜方向の測定については後述する。
第2のフィルム5は、上述した第1のフィルム4と交互に積層されている。第2のフィルム5で第1のフィルム4をはさむことにより、第1のフィルム4の膜厚を維持し、第1のフィルム4中において、結晶性樹脂Aの結晶成分の分子鎖軸が、フィルム平面に対して傾斜方向に配向した状態または水平方向に配向した状態で、結晶性樹脂Aを結晶化することができる。すなわち、第2のフィルム5により、第1のフィルム4を延伸させることなく結晶化することができるため、第1のフィルム4の優れたガスバリア性を発揮させることができる。さらに、第1のフィルム4を延伸させる必要がないため、多層フィルム1に優れた成形加工性を付与することができる。
なお、以下において、第2のフィルム5が有す熱可塑性樹脂を、「熱可塑性樹脂B」と記す。
柔軟層3は、バリア層2の両面に積層されている。柔軟層3は、多層フィルム1に柔軟性を付与する。柔軟層3により、多層フィルム1に柔軟性を付与する。
また、α―オレフィンコポリマーとしては、具体的には、例えば、三井化学社製のタフマーXM7080などが挙げられる。
また、多層フィルム1の厚みの上限値は、特に限定されないが、具体的には、例えば、1000μmが好ましく、500μmがより好ましく、250μmがさらに好ましい。厚みが上限値以下であることにより、結晶性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bの種類によっては、成膜が困難であったり、層の数が多くなりすぎるため生産効率が悪くなったり、厚すぎるため加工時などに取り扱い性が悪くなるのを防止することができる。
本実施形態の多層フィルム1では、第1のフィルム4および第2のフィルム5において、それぞれ、結晶性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bが結晶化することが好ましいが、これら結晶性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bの結晶成分の配向状態は、X線回折により評価する。また、配向結晶の傾きは広角散乱測定(wide angle X−ray scattering;WAXS)や小角散乱測定(small angle X−ray scattering;SAXS)により評価する。
なお、X線回折は、市販のX線回折装置(例えば、リガク社製、「NANO Viewer」など)を用いて測定することができる。
したがって、主に、円周方向(Φ)に強度分布のある点状、円弧上のいずれか1種類以上の形状に出現することがより好ましい。これにより、多層フィルム1が、球晶を多く有する従来の高分子材料よりも優れたバリア性を発揮することができる。
Π=(180−H)/180 ・・・(1)
次に、上述した多層フィルム1の製造方法について説明する。
多層フィルム1の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、数台の押出機により、原料となる樹脂などを溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法などの共押出Tダイ法、空冷式または水冷式共押出インフレーション法が挙げられ、なかでも、共押出Tダイ法で製膜する方法が各層の厚み制御に優れる点で特に好ましい。
次に、マルチプライヤーにより、フィルムの切断と積層を繰り返して、樹脂を交互に積層し、積層フィルムを成形する。
次に冷却ロールにより積層フィルムを冷却固化することで、積層フィルムの結晶配向を制御し、多層フィルム1を作製する。
本実施形態により作製した多層フィルム1は、フィルムを延伸していないため、成形加工性に優れる。
また、柔軟層の両面にバリア層を積層して、多層フィルムを作製してもよい。
次に、本発明を適用した一実施形態である包装体11の構成について、図2および図3を参照して説明する。図2は、本発明を適用した一実施形態である包装体11の斜視図である。また、図3は、図2の包装体11のA−A線における模式断面図である。図3に示すように、本実施形態の包装体11は、バリア層2と、柔軟層3と、カバーフィルム12と、収納部13と、を備え概略構成されている。すなわち、本実施形態の包装体11は、上述した多層フィルム1と、カバーフィルム12と、収納部13と、を備えて概略構成されている。よって、重複する部分については説明を省略する。本実施形態の包装体11は、ブリスターパックとしてのPTPフィルム(包装容器)であり、収納部13に錠剤14を密封収納することができる。
多層フィルム1は、ガスバリア層として機能することにより、収納部13内にガス(水蒸気)が透過するのを防止することができる。
次に、上述した包装体11の製造方法について説明する。
包装体11の製造方法としては、特に限定されないが、一般的に使用されるPTP包装機が用いられる。
例えば、先ず、真空成形、圧空成形、またはプラグ成形などにより、多層フィルム1に収納部13を成形する。
次に、多層フィルム1およびカバーフィルム12に、ミシン刃やハーフカット刃を用いてスリット15を入れる。
以上の工程により、包装体11が製造される。
バリア層22a,22bとしては、上述したバリア層2と同様の樹脂層を用いてもよいし、単層または複数層からなり、少なくとも1層に結晶性樹脂が含まれる樹脂層を用いてもよい。
(実施例1)
実施例1では、バリア層に含まれる結晶性樹脂AとしてHDPE樹脂(プライムポリマー社製、「2100J」、密度:953kg/m3、重量平均分子量:63000)を用意した。
また、バリア層に含まれる熱可塑性樹脂BとしてPP樹脂(プライムポリマー社製、「J106G」、密度:910kg/m3、重量平均分子量:214000)を用意した。
また、柔軟層に含まれるエラストマーとしてオレフィン系エラストマー(三井化学社製、「ノティオSN0285」を用意した。
また、柔軟層に含まれるポリオレフィン系樹脂としてPP樹脂(プライムポリマー社製、「J106G」、密度:910kg/m3、重量平均分子量:214000)を用意した。
なお、多層フィルムの厚みは300μmであった。また、1層の柔軟層の厚みは、多層フィルムの厚みの1/10であった。よって、柔軟層の総厚は、多層フィルムの厚みの1/5であった。
実施例2では、バリア層としてポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)/ポリ塩化ビニル(PVC)2層フィルム(住友ベークライト社製、「FCL−1122」)を用いた。
また、柔軟層に含まれるエラストマーとしてオレフィン系エラストマー(三井化学社製、「ノティオSN0285」)を用意した。
また、柔軟層に含まれるポリオレフィン系樹脂としてPP樹脂(プライムポリマー社製、「J106G」、密度:910kg/m3、重量平均分子量:214000)を用意した。
なお、多層フィルムの厚みは375μmであった。また、1層の柔軟層の厚みは、多層フィルムの厚みの1/10であった。よって、柔軟層の総厚は、多層フィルムの厚みの1/5であった。
比較例1では、バリア層に含まれる結晶性樹脂AとしてHDPE樹脂(プライムポリマー社製、「2100J」、密度:953kg/m3、重量平均分子量:63000)を用意した。
また、バリア層に含まれる熱可塑性樹脂BとしてPP樹脂(プライムポリマー社製、「J106G」、密度:910kg/m3、重量平均分子量:214000)を用意した。
比較例1では、柔軟層を積層せずに、バリア層のみからなる多層フィルムを作製した。
なお、多層フィルムの厚みは300μmであった。
比較例2では、バリア層としてポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)/ポリ塩化ビニル(PVC)2層フィルム(住友ベークライト社製、「FCL−1122」)を用いた。
比較例2では、柔軟層を積層せずに、バリア層のみからなる多層フィルムを作製した。
なお、多層フィルムの厚みは301μmであった。
比較例3では、2055層のバリア層を作製した。また、柔軟層の1層の厚みを多層フィルムの厚みの1/40に調整し、バリア層の両面に積層した。つまり、柔軟層の総厚を1/20に調整した。
それ以外は実施例1と同様にして多層フィルムを作製した。
なお、多層フィルムの厚みは300μmであった。
比較例4では、柔軟層に含まれるエラストマーの含有率を10%に調整したこと以外は実施例1と同様にして多層フィルムを作製した。
なお、多層フィルムの厚みは300μmであった。
各実施例および各比較例で作製した多層フィルムの積層数は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM‐7500FA」)を用いて観察することにより求めた。また、各層の結晶構造について、上記電子顕微鏡を用いて観察することで、バリア層における傾斜方向におよび水平方向に配向した異方性結晶の有無を観察した。具体的には、フィルム断面を1000〜100000倍に拡大観察した。
各実施例および各比較例で作製したバリア層の第1のフィルムおよび第2のフィルムにおける配向度(Π)を、X線回折像を一次元化して得られる回折ピークの半値幅(H)を用いて下記式(1)により求めた。
Π=(180−H)/180 ・・・(1)
各実施例および各比較例で作製した多層フィルムの水蒸気バリア性は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、「PERMATRAN‐W(登録商標)3/33」)を用いて、JIS K7126(B法、等圧法)に記載の方法に準拠して評価した。
各実施例および各比較例で作製した多層フィルムを備えた包装体の水蒸気バリア性を評価した。具体的には、先ず、各実施例および各比較例の多層フィルムについて、それぞれ、ブリスタ包装機(CKD社製、「FBP−300E」)を用いて、長手方向に沿って5つ、短手方向に沿って2つずつ並ぶように計10つの収納部(φ10.0mm×4.5mm)を形成した。次に、10つの収納部にそれぞれゼオライト(φ7.0mm×7.0mm)を充填した状態で、アルミ製のカバーフィルムを用いて収納部の開口を密封することで包装体を作製した。
各実施例および各比較例で作製した多層フィルムを備えた包装体の錠剤押出性を評価した。具体的には、先ず、各実施例および各比較例の多層フィルムについて、それぞれ、ブリスタ包装機(CKD社製、「FBP−300E」)を用いて収納部(φ10.0mm×4.5mm)を形成した。次に、アルミ製のカバーフィルムを用いて収納部の開口を密封することで包装体を作製した。
具体的には、図5に示すように、収納部13に錠剤14を充填した状態で、直径5mmの円柱状の押し具31により、多層フィルム1の面側から収納部13が変形するように、50mm/minの速度で押圧することで、荷重と変位の関係を示すグラフを得た(図6)。なお、はじめに収納部13の先端と押し具31とが接した地点の変位をゼロとした。次にこのグラフから、最大荷重を読み取ることにより、錠剤押出性を評価した。また、最大荷重は複数回測定し、その平均を「平均最大荷重」とした。
以上の各実施例および各比較例の評価結果を表1に示す。
各実施例および各比較例で作製したバリア層を、X線回折装置(リガク社製、「NANO Viewer」)を用いて評価した。
2,22a,22b…バリア層
3,23…柔軟層
4…第1のフィルム
5…第2のフィルム
6…繰り返し部
11…包装体
12…カバーフィルム
13…収納部
14…錠剤
15…スリット
31…押し具
Claims (7)
- 結晶性樹脂を含むバリア層と、
エラストマーを含む柔軟層と、を備え、
前記バリア層の少なくとも一方の面側に前記柔軟層が積層されている、多層フィルム。 - 結晶性樹脂を含むバリア層と、
エラストマーを含む柔軟層と、を備え、
前記柔軟層の両方の面側に前記バリア層が積層されている、多層フィルム。 - 結晶性樹脂を含むバリア層と、
エラストマーを含む柔軟層と、を備え、
前記柔軟層の一方の面側に、第1のバリア層が積層され、
前記柔軟層の他方の面側に、前記第1のバリア層とは異なる結晶性樹脂を含む第2のバリア層が積層されている、多層フィルム。 - 前記柔軟層の総厚は、当該多層フィルムの厚みの1/10以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
- 前記柔軟層が、前記エラストマーを重量比で20%以上有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の多層フィルム。
- 前記エラストマーは、オレフィン系エラストマーである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の多層フィルム。
- 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の多層フィルムを備える包装体。
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